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特開2021-195541水性顔料分散体及びインクジェット印刷インク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195541(P2021-195541A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】水性顔料分散体及びインクジェット印刷インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20211129BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20211129BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20211129BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211129BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C09D11/322
   C09C3/08
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2021-87488(P2021-87488)
(22)【出願日】2021年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2020-101597(P2020-101597)
(32)【優先日】2020年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大橋 裕二
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FC01
2H186BA10
2H186DA14
2H186FB10
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB50
2H186FB55
4J037CB22
4J037EE11
4J037EE43
4J037FF23
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE22
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、高顔料濃度であっても吐出性に優れたインクジェット印刷インクと、その製造に使用可能な高顔料濃度の水性顔料分散体を提供することである。
【解決手段】本発明者は、顔料(A)が、リン酸エステル塩(B−1)、硫酸エステル塩(B−2)及びスルホン酸塩(B−3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(B)によって水性媒体(C)に分散された水性顔料分散体であって、前記水性顔料分散体の体積に対する前記顔料(A)の体積の割合が20体積%以上であることを特徴とする水性顔料分散体であれば、前記課題を解決できることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(A)が、リン酸エステル塩(B−1)、硫酸エステル塩(B−2)及びスルホン酸塩(B−3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(B)によって水性媒体(C)に分散された水性顔料分散体であって、前記水性顔料分散体の体積に対する前記顔料(A)の体積の割合が20体積%以上であることを特徴とする水性顔料分散体。
【請求項2】
前記リン酸エステル塩(B−1)が、下記一般式(I)で示される構造を有するものである請求項1に記載の水性顔料分散体。
(一般式(I)中のRは−Oで示される官能基であり、Rは水酸基、−Oで示される官能基、または、下記一般式(II)で示される官能基であり、Rは下記一般式(II)で示される官能基であり、Mは陽イオンである。)
(一般式(II)中のRはポリオキシアルキレン基であり、Rはアルキル基またはアルケニル基である。)
【請求項3】
前記一般式(II)中のRが、繰り返し単位2〜10のポリオキシアルキレン基であり、かつ、Rが炭素原子数8〜22のアルケニル基である請求項1に記載の水性顔料分散体。
【請求項4】
前記リン酸エステル塩(B−1)が、前記顔料(A)の全量に対して1質量%〜50質量%含まれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散体。
【請求項5】
有機溶剤の含有量が前記水性顔料分散体の全量に対して0質量%〜10質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性顔料分散体。
【請求項6】
顔料(A)が、リン酸エステル塩(B−1)、硫酸エステル塩(B−2)及びスルホン酸塩(B−3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(B)によって水性媒体(C)に分散されたインクジェット印刷インクであって、前記インクジェット印刷インクの全量に対する前記顔料(A)の質量割合が10〜30質量%の範囲であることを特徴とするインクジェット印刷インク。
【請求項7】
前記リン酸エステル塩(B−1)が、下記一般式(I)で示される構造を有するものである請求項6に記載のインクジェット印刷インク。
(一般式(I)中のRは−Oで示される官能基であり、Rは水酸基、−Oで示される官能基、または、下記一般式(II)で示される官能基であり、Rは下記一般式(II)で示される官能基であり、Mは陽イオンである。)
(一般式(II)中のRはポリオキシアルキレン基であり、Rはアルキル基またはアルケニル基である。)
【請求項8】
前記一般式(II)中のRが、繰り返し単位2〜10のポリオキシアルキレン基であり、かつ、Rが炭素原子数8〜22のアルケニル基である請求項6に記載のインクジェット印刷インク。
【請求項9】
前記リン酸エステル塩(B−1)が、前記顔料(A)の全量に対して1質量%〜50質量%含まれる請求項6〜8のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インク。
【請求項10】
さらにグリセリンを含有し、前記グリセリンの含有量が、前記インクジェット印刷インクの全量に対して1〜35質量%である請求項6〜9のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式の印刷方法で使用されるインクには、例えばインクジェット専用紙をはじめ、普通紙や軟包装フィルムなど種々の被記録媒体へ印刷した際に、高発色で鮮明な印刷画像を形成できることが求められている。
【0003】
前記普通紙への印刷に使用可能なインクとしては、例えば特定の自己分散顔料と特定の界面活性剤とを含有し、熱エネルギーの作用によりインクジェット方式の記録ヘッドから吐出される水性インクが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、前記普通紙は、インクジェット専用紙と比較して、水性インク中の溶媒等を浸透させやすい。そのため、従来の水性インクを普通紙へ印刷して得られた印刷物は、インクジェット専用紙へ印刷して得られた印刷物と比較して、色目が薄くなりやすく発色性等の低下を引き起こす場合があった。とりわけ、近年は、普通紙を用いて得られた印刷物にも高いレベルの発色性が求められるなかで、従来の水性インクと普通紙とを組み合わせて得られた印刷物では、前記要求性能にあと一歩及ばない場合があった。
【0005】
前記印刷物の色目を濃くすることで発色性を向上させる方法としては、インクジェット印刷インクの顔料濃度を高くする方法がある。しかし、単に顔料濃度の高いインクを製造し、微細な吐出ノズルからインクを吐出するインクジェット印刷方式に適用しても、前記吐出ノズルの詰まりを引き起こす場合があった。
【0006】
一方、前記軟包装フィルムのようにインク中の溶媒を浸透しない被記録媒体にインクジェット印刷法で印刷する場合には、インクの乾燥性をより一層高めるうえで、不揮発分の高いインクを用いることが検討されている。前記不揮発分の高いインクとしては、例えば顔料濃度の高いインクが挙げられる。
【0007】
しかし、顔料濃度の高いインクは、前記したとおり吐出ノズルの詰まりを引き起こす場合があった。
【0008】
以上のように、印刷物の高発色性や鮮明性を実現するために顔料濃度を高くすることと、優れた吐出性とはトレードオフの関係にあるため、これらを両立することはこれまで困難であった。
【0009】
また、前記したようなインクジェット印刷インクを製造する方法としては、一般に、高顔料濃度の水性顔料分散体を製造し、次いで前記水性顔料分散体と水や有機溶剤や各種添加剤とを混合する方法が知られている。そのため、前記したような高顔料濃度のインクジェット印刷インクを製造しようとする場合には、従来よりもより一層高顔料濃度の水性顔料分散体が必要とされる。
【0010】
しかし、いわゆる顔料分散樹脂を用いて顔料を水や有機溶剤を含む水性媒体中に分散させることによって水性顔料分散体を製造する方法では、その顔料濃度を25質量%程度(顔料の密度が2g/cmの場合、体積割合で15体積%前後)に調整できるのが限界で、それ以上の顔料濃度に調整することが困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017−218498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、高顔料濃度であっても吐出性に優れたインクジェット印刷インクと、その製造に使用可能な高顔料濃度の水性顔料分散体を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする第二の課題は、高顔料濃度であっても吐出性及び保存安定性に優れたインクジェット印刷インクと、その製造に使用可能な高顔料濃度で保存安定性に優れた水性顔料分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、顔料(A)が、リン酸エステル塩(B−1)、硫酸エステル塩(B−2)及びスルホン酸塩(B−3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(B)によって水性媒体(C)に分散された水性顔料分散体であって、前記水性顔料分散体の体積に対する前記顔料(A)の体積の割合が20体積%以上であることを特徴とする水性顔料分散体であれば、前記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高顔料濃度の水性顔料分散体を用いて得られたインクジェット印刷インクは、例えば普通紙等の浸透性の被記録媒体に印刷した場合であっても色目が濃く発色性に優れた印刷物の製造に使用でき、かつ、吐出性に優れる。
【0016】
また、本発明の高顔料濃度の水性顔料分散体を用いて得られたインクジェット印刷インクは、例えば軟包装フィルム等の非浸透性の被記録媒体に印刷した場合であっても乾燥性に優れ、鮮明性に優れた印刷物の製造に使用でき、かつ、吐出性に優れる。
【0017】
また、本発明の高顔料濃度の水性顔料分散体を用いて得られたインクジェット印刷インクは、保存安定性に優れる。とりわけ、本発明のインクジェット印刷インクは、温度変化の大きい環境下に保管された場合であっても、粘度上昇などを引き起こしにくく保存安定性に優れる。
【0018】
本発明の高顔料濃度の水性顔料分散体は、顔料(A)が、リン酸エステル塩(B−1)、硫酸エステル塩(B−2)及びスルホン酸塩(B−3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(B)によって水性媒体(C)に分散された水性顔料分散体であって、前記水性顔料分散体の体積に対する前記顔料(A)の体積の割合が20体積%以上であることを特徴とする。
【0019】
(顔料(A))
本発明で使用する顔料(A)としては、特に限定されず公知の有機顔料または無機顔料を使用することができる。前記顔料(A)としては、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、アゾ顔料、(モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、ピラゾロン顔料等の不溶性アゾ顔料やベンズイミダゾロン顔料、ベータナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料など)、フタロシアニン顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、アゾブラックなど有機顔料を使用することが発色が鮮やかで、着色力も強く、色相が豊富なため好ましい。前記顔料(A)としては、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0020】
また、前記顔料(A)としては、比重が1.2〜2.0g/cmの範囲のものを使用することが好ましく、1.2〜1.6g/cmの範囲のものを使用することが、顔料の沈降速度が小さく、保存安定性が高いため好ましい。
【0021】
前記顔料(A)としては、カーボンブラックであれば三菱ケミカル株式会社製のNo.2300、No.2200B、No.995、No.990、No.900、No.960、No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100等、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等、オリオン・エンジニアドカーボンズ株式会社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 1400U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4、Special Black 4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180、NIPEX95、NIPEX90、NIPEX85、NIPEX80、NIPEX75等を使用することができる。
【0022】
前記カーボンブラックとしては、例えばコンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたものを使用することができる。
【0023】
前記顔料(A)としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等のイエロー顔料を使用することができる。
【0024】
前記顔料(A)としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、150、168、176、184、185、202、209、213、269、282等のマゼンタ顔料を使用することができる。
【0025】
前記顔料(A)としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、63、66等のシアン顔料を使用することができる。
【0026】
前記顔料(A)としては、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、64、71等のオレンジ顔料を使用することができる。
【0027】
前記顔料(A)としては、C.I.ピグメントバイオレット1、3、5:1、16、19、23、38等のバイオレット顔料を使用することができる。
【0028】
前記顔料(A)としては、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等のグリーン顔料を使用することができる。
【0029】
前記顔料(A)としては、ドライパウダーの状態のものや、ウェットケーキの状態のものを使用することができる。前記顔料(A)としては、2種以上を含む混合物や固溶体を使用することができる。また、前記顔料(A)としては、顔料誘導体によって表面処理されたものや、顔料の表面を酸化させたもの等を使用することができる。
【0030】
前記顔料(A)としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、マイカ、タルク、パールなどの白色顔料を使用することができる。
【0031】
前記白色顔料としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムまたは酸化亜鉛を使用することが好ましく、二酸化チタンを使用することがより好ましい。
【0032】
前記二酸化チタンの結晶系は、アナタース、ブルッカイト、ルチル何れの結晶系も用いることができるが、入手が容易で安定な結晶系のアナタース、ルチルが好ましく、隠蔽性が高い点でルチルが最も好ましい。
【0033】
前記白色顔料としては、光沢や分散性の付与などの目的でシリカやアルミナなどの無機酸化物や有機物などで表面処理された二酸化チタンを用いることができ、例えば、石原産業株式会社製のCR−50、CR−57、CR−90、R−550、R−820、R−930などを使用することができる。
【0034】
前記顔料(A)としては、一次粒子径が1.0μm以下であるものを使用することが好ましく、0.01μm〜0.5μmであるものを使用することがより好ましい。前記した範囲内の一次粒子径を有する顔料を使用することによって、顔料(A)の経時的な沈降をより一層効果的に抑制することができる。一次粒子径の測定は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して測定した数平均粒子径の値を指す。
【0035】
また、前記顔料(A)として白色顔料を用いた水性顔料分散体やインクジェット印刷インクは、例えば被記録媒体の表面を隠蔽することを目的とした下地の形成に使用される場合がある。その場合、前記白色顔料としては、良好な隠蔽性を備えた下地を形成するうえで、一次粒子径が150nm以上のものを使用することが好ましい。また、前記白色顔料としては、良好な吐出性と前記隠蔽性とを両立するうえで、一次粒子径0.4μm以下のものを使用することが好ましく、0.25μm〜0.35μmのものを使用することがより好ましい。
【0036】
本発明の水性顔料分散体は、前記水性顔料分散体の体積に対する前記顔料(A)の体積濃度(顔料体積濃度、PVC)が20体積%以上となる範囲で前記顔料(A)を含有する。本発明では、前記顔料(A)を後述する化合物(B)によって水性媒体(C)に分散させる方法を採用することによって、水性顔料分散体中に存在する顔料(A)の体積濃度が、従来よりも高い20体積%以上の場合であっても、顔料(A)の凝集や沈降などを引き起こしにくく吐出性に優れた水性顔料分散体を得ることができる。
なお、顔料の体積濃度(顔料体積濃度、PVC)は、、顔料とビヒクル混合物に対する顔料の体積百分率であり、[100×(顔料の体積)/(水性顔料分散体の体積)]の式に基づいて算出する。前記顔料(A)の体積は、前記顔料(A)の質量をその密度で除すことにより算出することができる。また、前記水性顔料分散体の体積は実測値を用いても良く、便宜上、前記方法で算出した顔料(A)の体積と、水性顔料分散体に含まれるビヒクル混合物(顔料(A)以外の成分)の比重を1.1とし算出した体積とに基づいて算出することもできる。
【0037】
また、前記水性顔料分散体の質量に対する前記顔料(A)の質量割合は、21質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。
【0038】
なお、上記方法で算出した顔料体積濃度(PVC)と、顔料の質量濃度(PWC)との対応関係の一例を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
使用する顔料(A)の性質や密度、前記化合物(B)の構造や溶解性、水性媒体(C)の組成や比重や粘度にもよるが、前記水性顔料分散体の全量に対する前記顔料(A)の体積濃度(PVC)は、臨界顔料体積濃度(CPVC)以下であることが好ましい。
【0041】
上記臨界顔料体積濃度(CPVC)は、水性顔料分散体が含有することのできる顔料(A)の体積の最大濃度を表す。上記臨界顔料体積濃度(CPVC)は、下記式に基づいて算出することができる。
【0042】
臨界顔料体積濃度(CPVC)=100×(顔料の体積(ml))/[(顔料の体積(ml))+(顔料の吸油量(ml))]
前記顔料の体積は、本発明の水性顔料分散体の製造に用いた顔料(A)の質量と、下記に示す顔料の密度に基づき、下記式で算出した値を指す。
顔料の体積(ml)=(顔料の質量(g))/(顔料の密度(g/ml))
なお、本発明では、前記顔料(A)の密度と吸油量は、T.C.Patton、1971年、「塗料の流動と顔料分散」150〜151頁の表に記載の値を用いた。
【0043】
また、前記表に記載されていない顔料(A)の吸油量は、JIS K5101−13−1(吸油量)に従って測定した。
【0044】
本発明の水性顔料分散体としては、還元顔料容積濃度が90%以下であるものを使用することが好ましく、水性顔料分散体の良好な流動性を維持するうえで80%以下であるものを使用することが好ましく、水性顔料分散体の良好なハンドリングを維持するうえで70%以下であるものを使用することが特に好ましい。
【0045】
ここで、前記還元顔料容積濃度は、下記式に基づいて算出された値を指す。
還元顔料容積濃度=100×(顔料体積濃度(PVC))/(臨界顔料体積濃度(CPVC))
本発明の水性顔料分散体としては、還元顔料容積濃度の下限値が30%以上であるものを使用することが好ましく、40%以上であるものを使用することが、インクジェット印刷インクの配合の自由度を高めるうえで好ましい。
【0046】
また、前記顔料(A)として好適に使用可能な比重1.2〜2.0g/cmの有機顔料を使用する場合、水性顔料分散体としては、前記顔料体積濃度(PVC)が20〜50体積%であるものを使用することが好ましく、20〜45体積%の範囲であることが、インクジェット印刷インクの配合自由度が高く、ハンドリングしやすいため好ましい。また、前記顔料(A)として好適に使用可能な比重1.2〜2.0g/cmの有機顔料を使用する場合、水性顔料分散体としては、前記顔料質量濃度が21〜65質量%であるものを使用することが好ましく、25〜60質量%の範囲であることが、インクジェット印刷インクの配合自由度が高く、ハンドリングしやすいため好ましい。
【0047】
また、前記顔料(A)は、後述する化合物(B)の全量に対して100〜10000質量%の範囲内で使用することが好ましく、200質量%〜5000質量%の範囲であることがより好ましく、500質量%〜2000質量%の範囲であることが、発色性や鮮明性に優れた印刷物を製造でき、かつ、保存安定性や吐出性にも優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで特に好ましい。また、前記顔料(A)を前記化合物(B)の全量に対して上記した範囲内で使用した水性顔料分散体を用いて得られたインクジェット印刷インクは、例えば軟包装フィルムのような非浸透性の被記録媒体への印刷に使用した場合の優れた乾燥性と優れた保存安定性や吐出性とを両立することができる。
【0048】
前記顔料誘導体としては、前記顔料(A)に後述する特定の官能基を導入したものを使用することができる。前記官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、ニトロ基、酸アミド基、カルボニル基、カルバモイル基、フタルイミドメチル基、スルホニル基が挙げられる。
【0049】
また、前記顔料(A)は、後述するインクジェット印刷インクの全量に対して10質量%〜30質量%の範囲内で使用することが好ましい。顔料(A)を前記範囲内で使用することによって、発色性や鮮明性に優れた印刷物を製造可能なインクジェット印刷インクを得ることができる。一方、前記顔料(A)を前記インクジェット印刷インクの全量に対して10質量%〜30質量%使用したインクジェット印刷インクは、顔料濃度が非常に高いため、従来技術では経時的な吐出不良を引き起こす場合があった。しかし、本発明のように、前記顔料(A)を水性媒体(C)中に分散させるために化合物(B)を使用した前記水性顔料分散体を用いることによって、顔料濃度が高い場合であっても、優れた吐出性を維持したインクジェット印刷インクを得ることができる。また、前記顔料(A)を前記範囲内で使用したインクジェット印刷インクは、例えば軟包装フィルムのような非浸透性の被記録媒体への印刷に使用した場合の優れた乾燥性と優れた保存安定性や吐出性とを両立することができる。
【0050】
前記顔料(A)は、前記インクジェット印刷インクの全量に対して10質量%〜25質量%の範囲であることが好ましく、15質量%〜25質量%の範囲であることが、より一層高いレベルで上記効果を両立するうえで特に好ましい。
【0051】
次に、化合物(B)について説明する。
【0052】
前記化合物(B)は、前記顔料(A)を水性媒体(C)中に分散させるために使用する。一般に、前記顔料(A)を水性媒体(C)中に分散させるためには、いわゆる顔料分散樹脂を使用することが多い。顔料分散樹脂は、前記顔料(A)の表面を被覆または前記表面に吸着することで、顔料(A)に良好な水分散性を付与する。前記顔料分散樹脂を用いる場合、前記顔料分散樹脂の溶解を目的として、例えば、グリコールエーテル等の有機溶剤を使用することが知られているものの、前記有機溶剤には、生殖毒性や環境への影響等が懸念されるものも存在するため、その使用量をできるだけ減らすことが求められている。
【0053】
本発明では、前記顔料分散樹脂の代わりに前記化合物(B)を用いることによって、例えば普通紙等の浸透性の被記録媒体に印刷した場合であっても色目が濃く発色性に優れた印刷物の製造に使用でき、かつ、保存安定性や吐出性に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得ることができる。また、前記顔料分散樹脂の代わりに前記化合物(B)を用いることによって、例えば軟包装フィルム等の非浸透性の被記録媒体に印刷した場合であっても乾燥性に優れ、鮮明性に優れた印刷物の製造に使用でき、かつ、保存安定性や吐出性に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得ることができる。
【0054】
また、前記顔料分散樹脂の代わりに前記化合物(B)を用いることによって、前記水性顔料分散体を製造する際に、前記有機溶剤を使用せずに、保存安定性に優れた水性顔料分散体を提供することができる。
【0055】
前記有機溶剤としては、水性顔料分散体の表面張力や粘度の調整などの目的に応じて、例えば水溶性有機溶剤を使用しても良いが、環境負荷を低減する観点から、その使用量はできるだけ少ないことが好ましく、水性顔料分散体の質量に対して好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
【0056】
前記化合物(B)としては、リン酸エステル塩(B−1)、硫酸エステル塩(B−2)及びスルホン酸塩(B−3)からなる群より選ばれる1種以上を使用する。
【0057】
なかでも、前記化合物(B)としては、リン酸エステル塩(B−1)を使用することが、色目が濃く発色性や鮮明性に優れた印刷物を得ることができ、かつ、保存安定性や吐出性に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。
【0058】
(リン酸エステル塩(B−1))
前記化合物(B)として使用可能なリン酸エステル塩(B−1)としては、例えば下記一般式(I)及び(III)で示される構造を有するものを使用することができる。なかでも前記リン酸エステル塩(B−1)としては、下記一般式(I)で示される構造を有するものを使用することが好ましい。
【0059】
前記一般式(I)で示されるリン酸エステル塩として、アルキルエーテルリン酸エステル塩やアルケニルエーテルリン酸エステル塩を使用することが、色目が濃く発色性や鮮明性に優れた印刷物を得ることができ、かつ、保存安定性や吐出性に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。
【0060】
【化1】
【0061】
(一般式(I)中のRは−Oで示される官能基であり、Rは水酸基、−Oで示される官能基、または、下記一般式(II)で示される官能基であり、Rは下記一般式(II)で示される官能基であり、Mは陽イオンである。)
【0062】
【化2】
【0063】
(一般式(II)中のRはポリオキシアルキレン基であり、Rはアルキル基またはアルケニル基である。)
【0064】
前記RまたはRが示す−Oで示される官能基は、水酸基の一部が塩基性化合物で中和され塩を形成したものであり、例えば塩基性化合物として後述する水酸化ナトリウムを用いた場合であれば、
−ONaの官能基である。
【0065】
前記Rのポリオキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン単位またはオキシプロピレン単位のいずれか一方または両方を有する官能基を使用することができる。
【0066】
前記ポリオキシアルキレン基としては、オキシアルキレン単位からなる繰り返し単位を2個〜10個有するポリオキシアルキレン基を使用することが好ましく、3個〜5個有するポリオキシアルキレン基を使用することが、色目が濃く発色性や鮮明性に優れた印刷物を得ることができ、かつ、保存安定性や吐出性に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。とりわけ、前記ポリオキシアルキレン基としては、オキシエチレン単位を2個〜10個有するポリオキシアルキレン基を使用することが好ましく、3個〜5個有するポリオキシアルキレン基を使用することが、色目が濃く発色性や鮮明性に優れた印刷物を得ることができ、吐出性に優れ、かつ、温度変化の大きい環境下でも凝集等を引き起こしにくく保存安定性(分散安定性)に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。
【0067】
また、前記一般式(II)中のRはアルキル基またはアルケニル基である。前記アルキル基またはアルケニル基は、それらを構成する水素原子の一部または全部がフッ素原子等のハロゲン原子に置換されたものであってもよい。前記アルキル基またはアルケニル基は、直鎖構造であっても分岐構造を有するものであってもよい。
【0068】
前記アルキル基としては、例えばオクチル基(炭素原子数8)、2−エチルヘキシル基(炭素原子数8)、ノニル基(炭素原子数9)、デシル基(炭素原子数10)、ドデシル基(ラウリル基)(炭素原子数12)、セチル基(炭素原子数16)、ステアリル基(炭素原子数18)が挙げられる。
【0069】
前記アルケニル基としては、例えばオレイル基(炭素原子数18、不飽和二重結合数1個)、リノール基(炭素原子数18、不飽和二重結合数2個)、リノレニル基(炭素原子数18、二重結合数3個)が挙げられる。
【0070】
前記Rは、前記したなかでも炭素原子数8個以上のアルキル基またはアルケニル基であることが、前記顔料(A)により一層優れた水分散性を付与するうえで好ましく、炭素原子数8個〜22個のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましく、炭素原子数8個〜22個のアルケニル基であることが、インクジェット印刷インクや水性顔料分散体の保存安定性(特に低温環境をはじめとする温度変化の大きい環境下での保存安定性)に優れるため好ましい。一方、前記Rは、酸化に起因した印刷物の変色を防止するうえでアルキル基であることが好ましい。
【0071】
前記Rとしては、低温環境をはじめとする温度変化の大きい環境下での良好な保存安定性と、酸化に起因した印刷物の変色を防止する効果とを両立するうえで、オレイル基であることが特に好ましい。
【0072】
前記一般式(I)で示されるリン酸エステル塩としては、より具体的にはリン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルが塩基性化合物によって中和され塩を形成したものを使用することができる。なかでも、前記リン酸エステル塩としては、リン酸モノエステル塩を使用することが、前記顔料(A)により一層優れた水分散性を付与するうえで好ましい。
【0073】
前記リン酸エステル塩は、例えばアルケニルエーテルアルコールと、ポリリン酸や無水リン酸などのリン酸化剤とを反応させることによって前記アルケニルエーテルリン酸モノエステルまたはアルケニルエーテルリン酸ジエステルを製造し、次いで、前記アルケニルエーテルリン酸モノエステルまたはアルケニルエーテルリン酸ジエステルを塩基性化合物で中和し塩を形成することによって製造することができる。前記リン酸エステル塩のリン酸モノエステル塩とリン酸ジエステル塩の比率は、例えばアルケニルエーテルアルコールと、リン酸化剤との反応時に生成する、アルケニルエーテルリン酸モノエステルとアルケニルエーテルリン酸ジエステルとの比率によって決まり、両者の分離精製や選択的反応条件を採用しない限りにおいて、変わることはない。
【0074】
前記塩基性化合物としては、無機系塩基性化合物、有機系塩基性化合物を使用することができる。
【0075】
前記塩基性化合物としては、公知のものを使用でき、例えばカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属などの炭酸塩;水酸化アンモニウム等の無機系塩基性化合物や、トリエタノールアミン、N,N−ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−N−ジブチルエタノールアミンなどのアミノアルコール類、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのモルホリン類、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ピペラジンヘキサハイドレートなどのピペラジン等の有機系塩基性化合物が挙げられる。なかでも、前記塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムに代表されるアルカリ金属水酸化物を使用することが、インクジェット印刷インクの保存安定性をより一層向上させるうえで好ましく、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用することが、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体の保存安定性をより一層向上させることができ、かつ、入手しやすいためより好ましい。
【0076】
前記塩基性化合物は、前記リン酸エステルと塩を形成する。例えば前記塩基性化合物として水酸化ナトリウムを用い、かつ、前記リン酸エステルとしてアルケニルエーテルリン酸モノエステルを用いた場合、前記アルケニルエーテルリン酸モノエステル塩は、アルケニルエーテルリン酸モノエステル一ナトリウム塩またはアルケニルエーテルリン酸モノエステル二ナトリウム塩である。
【0077】
前記リン酸エステルとしてアルケニルエーテルリン酸モノエステルを用いた場合、前記アルケニルエーテルリン酸モノエステルの一中和塩は、普通紙に印刷して得られる印刷物の発色性を高めるうえで好適に使用することができる。一方、前記アルケニルエーテルリン酸モノエステルの二中和塩は、より一層優れた保存安定性を備えたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好適に使用することができる。
【0078】
前記リン酸エステルに対する前記塩基性化合物の種類と添加量を調整することにより、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体の水素イオン濃度(pH)を制御し、一中和塩と二中和塩の比率と濃度を制御することができる。前記塩基性化合物の種類は一つに限られることはなく、複数用いても良い。前記塩基性化合物として2種以上を用い、かつ、前記リン酸エステルとしてリン酸モノエステルを用いた場合、2種以上の陽イオンと前記リン酸モノエステルとからなる複塩を用いることもできる。複数の塩基性化合物の種類と添加量により、生成する中和塩の種類と比率、濃度を制御することができる。
【0079】
前記リン酸エステルに対する前記塩基性化合物の添加量は、目的に応じて設定できる。前記リン酸エステルに対し、過剰の塩基性化合物を添加した場合、リン酸エステルの中和に使われなかった余剰の塩基性化合物はインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体中に残存し、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、純粋なリン酸エステル二中和塩水溶液のpHより高くなる。また、塩基性化合物の塩基性強度により、リン酸エステル中和塩のpHは決まり、アルケニルエーテルリン酸モノエステル一中和塩とアルケニルエーテルリン酸モノエステル二中和塩が混在する場合、水性インクのpHは、アルケニルエーテルリン酸モノエステル一中和塩単独時のpHとアルケニルエーテルリン酸モノエステル二中和塩単独時のpHとの中間の値を示す。前記リン酸エステルと前記塩基性化合物の種類と添加量の他、顔料(A)、水性媒体(C)や添加剤の種類と添加量にもよるが、前記化合物(B)としてリン酸エステル塩を含有するインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、概ね5以上であることが好ましい。
【0080】
前記リン酸エステル塩(B−1)としては、下記一般式(III)で示される構造を有するものを使用することができる。
【0081】
【化3】
【0082】
(一般式(III)中のRは−Oで示される官能基であり、Rは水酸基、−Oで示される官能基、または、下記一般式(IV)で示される官能基であり、Rは下記一般式(IV)で示される官能基であり、Mは陽イオンである。)
【0083】
【化4】
【0084】
(一般式(IV)中のRはアルキル基またはアルケニル基である。)
【0085】
前記RまたはRが示す−Oで示される官能基は、酸基の一部が塩基性化合物で中和され塩を形成したものであり、例えば塩基性化合物として水酸化ナトリウムを用いた場合であれば、
−ONaの官能基である。
【0086】
前記一般式(IV)中のRは、前記一般式(II)中のRと同様のものを使用することができる。
【0087】
前記一般式(III)で示されるリン酸エステル塩としては、アルキルリン酸エステル塩やアルケニルリン酸エステル塩が挙げられ、アルケニルリン酸エステル塩を使用することが、色目が濃く発色性や鮮明性に優れた印刷物を得ることができ、かつ、保存安定性や吐出性に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。入手しやすい点でラウリルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩を使用することが特に好ましい。
【0088】
前記一般式(III)で示されるリン酸エステル塩としては、より具体的にはリン酸モノエステルまたはルリン酸ジエステルが塩基性化合物によって中和され塩を形成したものを使用することができる。なかでも、前記一般式(III)で示されるリン酸エステル塩としては、リン酸モノエステル塩を使用することが、前記顔料(A)により一層優れた水分散性を付与するうえで好ましい。
【0089】
前記一般式(III)で示されるリン酸エステル塩は、例えばアルキルアルコールと、リン酸とを反応させることによって前記アルキルリン酸モノエステルまたはアルキルリン酸ジエステルを製造し、次いで、前記アルキルリン酸モノエステルまたはアルキルリン酸ジエステルを塩基性化合物で中和し塩を形成することによって製造することができる。前記リン酸エステル塩のリン酸モノエステル塩とリン酸ジエステル塩の比率は、例えばアルキルアルコールと、リン酸化剤との反応時に生成する、アルキルリン酸モノエステルとアルキルリン酸ジエステルとの比率によって決まり、両者の分離精製や選択的反応条件を採用しない限りにおいて、変わることはない。
【0090】
前記リン酸エステルとしては、例えば入手しやすいラウリルリン酸エステル、オレイルリン酸エステルを使用することが好ましい。前記ラウリルリン酸エステルとしては、フォスファノール ML−200(東邦化学工業株式会社製)などを使用することができる。
【0091】
前記塩基性化合物としては、前記一般式(I)で示されるリン酸エステル塩の製造に使用可能なものとして例示した塩基性化合物と同じものを使用することができる。
【0092】
前記塩基性化合物は、前記リン酸エステルの水酸基の少なくとも1つと塩を形成すればよい。例えば前記塩基性化合物として水酸化ナトリウムを用い、かつ、前記リン酸エステルとしてアルケニルリン酸モノエステルを用いた場合、前記アルケニルリン酸モノエステルの塩は、アルケニルリン酸モノエステル一ナトリウム塩またはアルケニルリン酸モノエステル二ナトリウム塩である。
【0093】
前記リン酸エステルとしてアルケニルリン酸モノエステルを用いた場合、前記アルケニルリン酸モノエステルの一中和塩は、普通紙に印刷して得られる印刷物の発色性を高めるうえで好適に使用することができる。一方、前記アルケニルリン酸モノエステルの二中和塩は、より一層優れた保存安定性を備えたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好適に使用することができる。
【0094】
前記リン酸モノエステルに対する前記塩基性化合物の種類と添加量を調整することにより、インクジェット印刷インクや水性顔料分散体の水素イオン濃度(pH)を制御し、一中和塩と二中和塩の比率と濃度を制御することができる。前記塩基性化合物の種類は一つに限られることはなく、複数用いても良い。前記塩基性化合物として2種以上を用い、かつ、前記リン酸エステルとしてアルケニルリン酸モノエステルを用いた場合、2種以上の陽イオンと前記アルケニルリン酸モノエステルとからなる複塩を用いることもできる。複数の塩基性化合物の種類と添加量により、生成する中和塩の種類と比率、濃度を制御することができる。
【0095】
前記リン酸エステルに対する前記塩基性化合物の添加量は、目的に応じて設定できる。前記リン酸エステルに対し、過剰の塩基性化合物を添加した場合、リン酸エステルの中和に使われなかった余剰の塩基性化合物はインクジェット印刷インクや水性顔料分散体中に残存し、インクジェット印刷インクや水性顔料分散体のpHは、純粋なリン酸エステル二中和塩水溶液のpHより高くなる。また、塩基性化合物の塩基性強度により、リン酸エステル中和塩のpHは決まり、リン酸モノエステル一中和塩とリン酸モノエステル二中和塩が混在する場合、インクジェット印刷インクや水性顔料分散体のpHは、リン酸モノエステル一中和塩単独時のpHとリン酸モノエステル二中和塩単独時のpHとの中間の値を示す。使用する前記リン酸モノエステルと前記塩基性化合物の種類と添加量の他、顔料(A)、水性媒体(C)や添加剤の種類と添加量にもよるが、前記化合物(B)としてリン酸エステル塩を含有するインクジェット印刷インクや水性顔料分散体のpHは、概ね5以上であることが好ましい。
【0096】
前記化合物(B)として使用可能な硫酸エステル塩(B−2)としては、一般式(V)または一般式(VII)で示される構造を有するものを使用することができ、なかでもアルキルエーテル硫酸エステル塩やアルキル硫酸エステル塩等を使用することができる。
【0097】
【化5】
【0098】
(一般式(V)中のRは−Oで示される官能基であり、Rは下記一般式(VI)で示される官能基であり、Mは陽イオンである。)
【0099】
(一般式(VI)中のRはポリオキシアルキレン基であり、Rはアルキル基またはアルケニル基である。)
【0100】
前記Rが示す−Oで示される官能基は、例えば塩基性化合物として水酸化ナトリウムを用いた場合であれば、
−ONaの官能基である。
【0101】
前記一般式(VI)中のRは、前記一般式(II)中のRと同様のものを使用することができる。また、前記一般式(VI)中のRは、前記一般式(II)中のRと同様のものを使用することができる。
【0102】
前記アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、具体的には、ラウリルエーテル硫酸エステル塩が入手しやすいため使用することが好ましい。前記ラウリルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばアルスコープ TH−370(東邦化学工業株式会社製)等を使用することができる。
【0103】
前記一般式(V)で示される硫酸エステル塩は、例えばアルキルエーテルアルコールと、硫酸や発煙硫酸等とをエステル化反応させることによって前記アルキルエーテル硫酸モノエステルを製造し、次いで、前記アルキルエーテル硫酸モノエステルを塩基性化合物で中和し塩を形成することによって製造することができる。
【0104】
前記塩基性化合物としては、前記一般式(I)で示されるリン酸エステル塩の製造に使用可能なものとして例示した塩基性化合物と同じものを使用することができる。
【0105】
前記硫酸エステルに対する前記塩基性化合物の種類と添加量を調整することにより、水性インクなどの水性媒体中の水素イオン濃度(pH)を制御することができる。前記塩基性化合物の種類は一つに限られることはなく、複数用いても良く、複数の塩基性化合物の種類と添加量により、生成する中和塩の種類と比率、濃度を制御することができる。
【0106】
前記硫酸エステルに対する前記塩基性化合物の添加量は、目的に応じて設定できる。前記一般式(V)で示される硫酸エステルに対し、過剰の塩基性化合物を添加した場合、一般式(V)で示される硫酸エステルの中和に使われなかった余剰の塩基性化合物はインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体中に残存し、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、純粋な硫酸エステル中和塩水溶液のpHより高くなる。また、塩基性化合物の塩基性強度により、硫酸エステル中和塩のpHは決まる。前記一般式(V)で示される硫酸エステルと前記塩基性化合物の種類と添加量の他、顔料(A)、水性媒体(C)や添加剤の種類と添加量にもよるが、前記化合物(B)として一般式(V)で示される硫酸エステル塩を含有するインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、概ね7であるものを使用することが好ましい。
【0107】
【化6】
【0108】
(一般式(VII)中のRは−Oで示される官能基であり、Rは下記一般式(VIII)で示される官能基であり、Mは陽イオンである。)
【0109】
(一般式(VIII)中のR3はアルキル基またはアルケニル基である。)
【0110】
前記Rが示す−Oで示される官能基は、例えば塩基性化合物として水酸化ナトリウムを用いた場合であれば、
−ONaの官能基である。
【0111】
前記一般式(VIII)中のRは、前記一般式(II)中のRと同様のものを使用することができる。
【0112】
前記アルキル硫酸エステル塩としては、具体的には、ドデシル硫酸エステル塩(ラウリル硫酸エステル塩)が入手しやすいため使用することが好ましい。前記ドデシル硫酸エステル塩としては、例えばアルスコープ LN−90PW(東邦化学工業株式会社製)等を使用することができる。
【0113】
前記一般式(VII)で示される硫酸エステル塩としては、より具体的には硫酸モノエステルが塩基性化合物によって中和され塩を形成したものを使用することができる。
【0114】
前記一般式(VII)で示される硫酸エステル塩は、例えばアルキルアルコールと、硫酸や発煙硫酸等とをエステル化反応させることによって前記アルキル硫酸モノエステルを製造し、次いで、前記アルキル硫酸モノエステルを塩基性化合物で中和し塩を形成することによって製造することができる。
【0115】
前記塩基性化合物としては、前記一般式(I)で示されるリン酸エステル塩の製造に使用可能なものとして例示した塩基性化合物と同じものを使用することができる。
【0116】
前記硫酸エステルに対する前記塩基性化合物の種類と添加量を調整することにより、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体の水素イオン濃度(pH)を制御し、硫酸エステルの中和塩の種類を制御することができる。前記塩基性化合物の種類は一つに限られることはなく、複数用いても良く、複数の塩基性化合物の種類と添加量により、生成する中和塩の種類と比率、濃度を制御することができる。
【0117】
前記一般式(VII)で示される硫酸エステル塩に対する前記塩基性化合物の添加量は、目的に応じて設定できる。前記硫酸エステルに対し、過剰の塩基性化合物を添加した場合、硫酸エステルの水酸基の中和に使われなかった余剰の塩基性化合物はインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体中に残存し、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、純粋なアルキル硫酸エステル中和塩水溶液のpHより高くなる。また、塩基性化合物の塩基性強度により、アルキル硫酸エステル中和塩のpHは決まる。前記硫酸エステルと前記塩基性化合物の種類と添加量の他、顔料、水性媒体(C)や添加剤の種類と添加量にもよるが、前記化合物(B)として一般式(VII)で示される硫酸エステル塩を含有するインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、概ね7であることが好ましい。
【0118】
前記化合物(B)として使用可能なスルホン酸塩(B−3)としては、一般式(IX)で示される構造を有するものを使用することができる。
【0119】
【化7】
【0120】
(一般式(IX)中のRはアルキル基であり、Rは−Oで示される官能基であり、Mは陽イオンである。)
【0121】
前記一般式(IX)中のRは、前記一般式(II)中のRと同様のものを使用することができる。
【0122】
前記Rが示す−Oで示される官能基は、例えば塩基性化合物として水酸化ナトリウムを用いた場合であれば、
−ONaの官能基である。
【0123】
前記一般式(IX)で示されるスルホン酸塩は、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸が塩基性化合物によって中和され塩を形成したものである。
【0124】
前記一般式(IX)で示されるスルホン酸塩としては、具体的には、ラウリルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸塩)を使用することが好ましい。前記ラウリルベンゼンスルホン酸塩としては、例えばルノックス S−40TD(東邦化学工業株式会社)等を使用することができる。
【0125】
前記塩基性化合物としては、前記一般式(I)で示されるリン酸エステル塩の製造に使用可能なものとして例示した塩基性化合物と同じものを使用することができる。
【0126】
前記スルホン酸塩(B−3)としてアルキルベンゼンスルホン酸を使用する場合、アルキルベンゼンスルホン酸に対する前記塩基性化合物の種類と添加量を調整することにより、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体中の水素イオン濃度(pH)を制御し、前記アルキルベンゼンスルホン酸中のスルホン酸基の中和塩の種類を制御することができる。前記塩基性化合物の種類は一つに限られることはなく、複数用いても良く、複数の塩基性化合物の種類と添加量により、生成する中和塩の種類と比率、濃度を制御することができる。
【0127】
前記アルキルベンゼンスルホン酸に対する前記塩基性化合物の添加量は、目的に応じて設定できる。前記アルキルベンゼンスルホン酸に対し、過剰の塩基性化合物を添加した場合、アルキルベンゼンスルホン酸の中和に使われなかった余剰の塩基性化合物はインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体中に残存し、インクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、純粋なアルキルベンゼンスルホン酸中和塩水溶液のpHより高くなる。また、塩基性化合物の塩基性強度により、アルキルベンゼンスルホン酸中和塩のpHは決まる。使用する前記アルキルベンゼンスルホン酸と前記塩基性化合物の種類と添加量の他、顔料(A)、水性媒体(C)や添加剤の種類と添加量にもよるが、前記化合物(B)として前記アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩を含有するインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な水性顔料分散体のpHは、概ね7であることが好ましい。
【0128】
前記化合物(B)は、本発明の水性顔料分散体の全量に対して1〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、2〜20質量%の範囲で使用することが、発色性や鮮明性がより一層高い印刷物の製造に使用可能で、かつ、保存安定性や吐出性にも優れたインクジェット印刷インクの製造に使用可能な高顔料濃度であっても保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえでより好ましい。
【0129】
前記化合物(B)は、本発明のインクジェット印刷インクの全量に対して1〜30質量%の範囲で使用することが好ましく、2〜10質量%の範囲で使用することが、発色性や鮮明性がより一層高い印刷物の製造に使用可能で、かつ、保存安定性や吐出性にも優れたインクジェット印刷インクを得るうえでより好ましい。
【0130】
(水性媒体(C))
前記水性媒体(C)としては、例えば水や水溶性有機溶剤等を使用することができる。
【0131】
前記水性媒体(C)は、本発明の水性顔料分散体の全量に対して25〜80質量%の範囲で使用することが好ましく、35〜75質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0132】
前記水としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることができる。また、前記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、本発明のインクジェット印刷インク中にカビまたはバクテリアが発生することを防止できるため好ましい。
【0133】
前記水溶性有機溶剤としては、例えばグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどのトリオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオールなどのアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、カルビトールなどのジエチレングリコールエーテル類、プロピレングリコールエーテル類、ジプロピレングリコールエーテル類、およびトリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのトリエチレングリコールエーテル類、エチセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール類、糖類や糖アルコール類、スルホランなどのスルホン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチルなどのエステル類、2−ブタノンなどのケトン類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類、グリセリンやジグリセリン、トリグリセリンなどのポリグリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物などを単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0134】
なかでも、前記水溶性有機溶剤としては、湿潤剤として機能する高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類、及び、グリセリンの誘導体類を使用することが好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、及び、グリセリンのポリエチレンオキサイド付加物等のグリセリンのポリオキシアルキレン付加物を使用することが好ましい。
【0135】
前記水溶性有機溶剤としては、本発明のインクジェット印刷インクを例えば食品包装への印刷に使用する場合には、食品添加物として認可されているエタノールやグリセリン、プロピレングリコール等を使用することができる。
【0136】
なかでも、前記グリセリンは、エタノール等と比較して皮膚刺激性が小さく、湿潤効果が高くインクの保存安定性や吐出性の向上に効果的であり、かつ、普通紙等のインクを浸透させやすい被記録媒体への印刷に適用した際に乾燥性に優れたインクを得るうえで使用することが好ましい。前記グリセリンはインクジェット印刷インクの全量に対して1質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%〜35質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0137】
一方、インクジェット印刷インクの乾燥性を向上させる場合、前記水溶性有機溶剤としては、比較的揮発しやすいものを使用することができる。具体的には、水溶性有機溶剤としては、沸点が150℃未満の水溶性有機溶剤が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類が挙げられる。
【0138】
前記水性媒体(C)中の水溶性有機溶剤は、インクジェット印刷インクの配合自由度を高める上で、本発明の水性顔料分散体全量に対して10質量%以下含まれることが好ましく、5質量%以下含まれることが特に好ましく、0〜5質量%であることが特に好ましい。
【0139】
前記水性媒体(C)中の水溶性有機溶剤は、本発明のインクジェット印刷インクの全量に対して5質量%〜50質量%含まれることが好ましく、10質量%〜40質量%含まれることが特に好ましい。
【0140】
次に、本発明の水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクの製造方法について説明する。
【0141】
本発明のインクジェット印刷インクは、例えばあらかじめ水性顔料分散体を製造し、次いで、水や水溶性有機溶剤等の水性媒体(C)や各種添加剤と混合することによって製造することができる。
【0142】
前記水性顔料分散体は、例えば顔料(A)と前記化合物(B)と水性媒体(C)の混合物を分散機によって分散処理することによって製造することができる。
【0143】
前記水性顔料分散体の製造方法としては、具体的には顔料(A)と前記化合物(B)とを乾式処理した後、水性媒体(C)を添加して水性顔料分散体を製造する方法が挙げられる。
【0144】
また、前記水性顔料分散体の製造方法としては、顔料(A)と前記化合物(B)と水性媒体(C)とを湿式処理することによって水性顔料分散体を製造する方法が挙げられる。
【0145】
本発明では、前記方法のうち、湿式処理法によって水性顔料分散体を製造することが、製造工程数が少なく、水性顔料分散体の製造効率を向上できるため好ましい。
【0146】
前記湿式処理法としては、例えば(i)あらかじめ前記化合物(B)と水性媒体(C)とを混合することによって前記化合物(B)が水性媒体(C)に溶解または分散した水性液を製造する工程、(ii)前記水性液と顔料(A)とを混合することによって処理液を製造する工程、及び、(iii)前記処理液を後述する分散機で処理する工程を経る方法が挙げられる。
【0147】
また、前記湿式処理法としては、(iv)あらかじめ顔料(A)と水性媒体(C)とを含有する、一般にウェットケーキといわれる半固体状の含水物を製造する工程、(v)前記含水物と前記化合物(B)とを混合することによって処理液を製造する工程、及び、(vi)前記処理液を後述する分散機で処理する工程を経る方法が挙げられる。
【0148】
前記処理液や前記湿式処理法で得られる水性顔料分散体の粘度は、前記化合物(B)の代わりに顔料分散樹脂を用いて得られた処理液や水性顔料分散液の粘度と比較して極めて低い。そのため、本発明であれば、水性顔料分散体やインクジェット印刷インクに含まれる顔料(A)の濃度を従来より大幅に高くすることができる。
【0149】
前記処理液としては、後述する分散機でせん断力などの機械的力を効率的に処理液に与えることによって、処理時間を短縮し、かつ、水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクに含まれる顔料(A)の濃度を高くし、その結果、色目の濃い発色性に優れた印刷物を得るうえで、顔料(A)の濃度が高いものを使用することが好ましい。
【0150】
前記湿式処理法で使用可能な装置としては、例えば、高速の回転翼と外筒との狭い間隙へ前記処理液を通す高速回転せん断型撹拌機、狭い間隙での高せん断流れを利用するコロイドミル、ロール間の間隙を利用したせん断力と圧縮力を利用するロールミル、前記処理液を高圧噴射し、固定板に衝突または前記処理液同士を衝突させる高速噴射式分散機、超音波振動やキャビテーションを利用する超音波分散機、回転容器内などに挿入された媒体(ボールなど)の衝突や摩擦を利用する容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル)、媒体としてボールやビーズを使用し、媒体の衝撃力とせん断力を利用する媒体攪拌ミル(アトライター、ビーズミル)などが挙げられる。前記装置としては、バッチ式に限らず、フロー式などの連続式装置を使用しても良い。前記連続式の装置では、高圧で流量の大きなポンプを用いることにより、単位時間当たりの分散処理量を増やすことができる。
【0151】
前記処理液の粘度が高く、流動性の低い半固体状の場合、前記湿式処理法で使用可能な装置としては、前記処理液に強いせん断力を与えることのできる混練装置を使用することが好ましく、具体的にはロールミル、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、トリミックス、プラネタリーミキサー等を使用することができる。
【0152】
本発明のインクジェット印刷インクを製造する際に使用する前記処理液の粘度は、前記したとおり、前記化合物(B)の代わりに顔料分散樹脂を用いて得られた処理液の粘度と比較して極めて低く、高顔料濃度の前処理液の粘度も低い。前記処理液の粘度が低く、流動性の高い液状の場合、前記湿式処理法で使用可能な装置としては、ディスパー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、高速インペラー分散機の他、超音波分散機、ジルコニアやガラスなどの分散メディアビーズを用いる、ペイントシェイカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を用いることができる。
【0153】
また、前記処理液の粘度が1Pa・s以下で、流動性の高い液状の場合、前記湿式処理法で使用可能な装置としては、およそ10MPa以下の圧力をかけることのできる低圧湿式分散装置を使用することができる。
【0154】
前記低圧湿式分散装置としては、スタティックミキサーや乳化用ミキサーが挙げられる。前記低圧湿式分散装置は、一般に高圧湿式分散装置と比較して、装置の部品の摩耗や、前記摩耗に伴う異物の水性顔料分散体やインクジェット印刷インクへの混入を防止することができる。
【0155】
また、前記低圧湿式分散装置は、前記乾式処理や、粘度が高く流動性の低い半固体状の処理液に湿式処理を適用した場合に発生しうる前記顔料(A)の破砕と凝集を抑制できるため、湿式処理後の粘度が低く、破砕した顔料の凝集が粗大粒子を形成しにくく、その結果、吐出性に優れたインクジェット印刷インク及びその製造に使用可能な保存安定性に優れた水性顔料分散体を得ることができるため好ましい。
【0156】
前記低圧湿式分散装置をはじめとする前記装置を用いて行う湿式処理は、室温で実施しても良いが、前記装置内における処理液の温度や粘度、流動性や流速の変動を抑制するため、予め処理液や装置を加温し、一定の温度で行うことが好ましい。前記処理液や前記装置の温度は、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。
【0157】
また、前記乾式処理法としては、例えば、乾式摩砕法や乾式粉砕法が挙げられる。
【0158】
前記乾式処理法で使用可能な装置としては、例えば、エジェクター型、ベンチュリー型、オリフィスなどの気流の加速やせん断流れを利用する装置、凝集粒子同士を衝突させる障害物衝突型装置、機械的に解砕する流動層型分散機や回転ドラム式分散機、外力の複合作用による回転翼型分散機、速度変動や攪拌翼への衝突を利用する攪拌槽型分散機などが挙げられる。前記装置としては、バッチ式に限らず、フロー式などの連続式装置を使用しても良い。前記連続式の装置では、高圧で流量の大きなポンプを用いることにより、単位時間当たりの分散処理量を増やすことができる。
【0159】
上記した湿式処理及び乾式処理に用いる装置は、単独または2種以上を組み合わせ使用してもよい。
【0160】
前記水性顔料分散体の製造は、前記した水溶性有機溶剤の存在下で行うことが、顔料(A)の濡れ性を向上し、前記分散助剤や添加剤の一部もしくは全部を溶解または膨潤させやすく、その結果、分散時間を短縮し、水性顔料分散体を効率的に作製することができるため好ましい。一方、本発明のインクジェット印刷インクに高い安全性や低コストが求められる場合、前記水性顔料分散体の製造は、前記水溶性有機溶剤の非存在下で行うことが好ましい。前記水溶性有機溶剤を使用せずに製造された水性顔料分散体は、例えば医薬品や食品の包装材料への印刷に使用可能なインクジェット印刷インクを製造する際に好適に使用することができる。
【0161】
前記顔料(A)の濡れ性を向上し、水性顔料分散体やインクジェット印刷インクの生産効率の向上を図るための前記水溶性有機溶剤は、前記顔料(A)の全量に対して、10質量%〜200質量%の範囲で使用することが好ましく、15質量%〜150質量%の範囲で使用することより好ましい。
【0162】
前記方法で得られた水性顔料分散体には、一般に粗大粒子といわれる顔料(A)や前記化合物(B)等の凝集物が含まれる場合がある。前記凝集物は、インク吐出ノズルの詰まり等を引き起こす場合があるため、除去することが好ましい。
【0163】
なお、前記粗大粒子は、Particle Sizing Systems社製の個数カウント方式による粒度分布計(Accusizer 780 APS)を用いて測定された粒子径が直径0.5μm以上のものを指す。
【0164】
前記粗大粒子を除去する方法としては、例えば前記方法で得られた水性顔料分散体を遠心分離する方法が挙げられる。
【0165】
前記遠心分離は、40℃〜65℃の範囲で行うことが、効率よく、かつ、実用上十分に粗大粒子を除去するうえでより好ましい。なお、前記温度は、遠心分離される前記水性顔料分散体の温度を指す。
【0166】
前記水性顔料分散体は、遠心分離装置に供給される前に、例えば熱交換装置等を用いて予め30℃〜70℃に温度調整されていてもよく、遠心分離装置として温度設定機能を有するものを使用する場合には、遠心分離装置に供給された後、前記温度範囲に調整されてもよい。
【0167】
前記遠心分離処理される前記水性顔料分散体としては、25℃での粘度が13mPa・s以下であるものを使用することが、前記水性顔料分散体から粗大粒子を一層効率よく、かつ、実用上十分に取り除くことができるため好ましい。
【0168】
とりわけ、遠心分離装置として、後述する円筒型の遠心分離装置を使用する場合には、前記水性顔料分散体として25℃での粘度が10.5mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s〜10.5mPa・sであるものことが、前記水性顔料分散体から粗大粒子をより一層効率よく、かつ、実用上十分に取り除くことができるためより好ましい。
【0169】
一方、本発明の水性顔料分散体は、前記顔料体積濃度(PVC)が高くなるほど、粘度が高くなる傾向にある。そのため、本発明の水性顔料分散体として、前記顔料体積濃度(PVC)が非常に高い水性顔料分散体を使用する場合、その粘度が非常に高くなり、上記遠心分離を効率よく行うことができない可能性がある。このような場合には、前記水性顔料分散体を水等で希釈し、それを遠心分離処理した後、減圧蒸留法等で前記水を留去することによって、顔料体積濃度の高い水性顔料分散体を得ることができる。
【0170】
前記遠心分離装置としては、ローターの形状が円筒型の遠心分離装置を使用することが、前記粗大粒子を含む粘土状のスラッジがローター内に堆積したことに起因する遠心分離効率の低下を効果的に抑制できるため好ましい。
【0171】
水性顔料分散体には、前記顔料の粗大粒子、前記顔料の未粉砕物等のさまざまな大きさの粗大粒子が含まれやすい。前記円筒型遠心分離装置を用いて前記遠心分離を行うことによって、生産性を損ねることなく、上記の粗大粒子を効率よく、かつ、継続的に除去でき、その結果、経時的な粗大粒子の発生抑止と、顔料等の経時的な沈降発生の防止とを両立可能な優れた保存安定性を得ることができる。
【0172】
また、前記遠心分離は、前記円筒型遠心分離機が備えるローターに前記水性顔料分散体を供給し、前記水性顔料分散体の温度を30℃〜70℃の範囲内に維持した状態で行う工程であることが、安定的に好適な遠心分離効率を長期間維持でき、前記水性顔料分散体から粗大粒子をより一層効率的かつ十分に取り除くことができるため好ましい。その際、前記ローターの容積に対する前記水性顔料分散体の供給量(体積)の比率[水性顔料分散体の供給量(体積)/ローターの容積]×100は、1000%〜8000%であることが好ましく、2000〜7000%であることが、粗大粒子ではない顔料等の成分が取り除かれることを抑制できる一方で、前記水性顔料分散体から粗大粒子をより一層効率的に取り除くことができためより好ましい。
【0173】
前記遠心分離装置の遠心加速度は、8000×G〜20000×Gの範囲であることが好ましく、9000×G〜20000×Gの範囲であることが、前記水性顔料分散体から粗大粒子を効率良く取り除くことができるためより好ましい。
【0174】
なお、前記遠心加速度は、相対遠心加速度を意味し、下記式により定義される。
【0175】
遠心加速度(×G)=r×(2πN/60)/g
(式中、Nは1分当たりの回転数(rpm)、rは回転半径(m)、gは重力加速度(9.8m/s)、πは円周率を指す)
【0176】
以上のとおり、遠心分離を経ることによって得られた水性顔料分散体は、経時的な粗大粒子の発生を防止でき、かつ、顔料等の経時的な沈降の発生を防止可能な保存安定性を備え、かつ、優れた保存安定性や吐出性を備えたインクの製造に使用可能な水性顔料分散体である。
【0177】
本発明のインクジェット印刷インクは、前記したとおり、前記方法で得られた水性顔料分散体と、水や水溶性有機溶剤等の水性媒体(C)とを混合することによって製造することができる。
【0178】
本発明のインクジェット印刷インクは、前記顔料(A)や前記化合物(B)や前記水性媒体(C)の他に、必要に応じて、アクリル系樹脂やポリウレタン系樹脂等のバインダー樹脂、乾燥抑止剤、浸透剤、界面活性剤、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有するものを使用することができる。
【0179】
前記乾燥防止剤としては、揮発性の低い水溶性有機溶剤が好ましく、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。なかでも、前記乾燥防止剤としては、グリセリン、トリエチレングリコールを使用することが、安全性を有し、かつインクが乾燥しにくく、吐出性能に優れたインクを得ることができる。
【0180】
なお、前記乾燥防止剤は、前記水性媒体(C)として例示した水溶性有機溶剤と同じものを使用することができる。
【0181】
前記浸透剤としては、被記録媒体へのインクの浸透性の改良や被記録媒体上でのドット径の調整を目的として使用することができる。
【0182】
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのグリコールモノエーテルが挙げられる。前記浸透剤は、インクジェット印刷インクの全量に対して0.01〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0183】
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために使用することができる。界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤がアニオン性界面活性剤を不安定化させる可能性が低い点で好ましい。
【0184】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0185】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0186】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0187】
前記界面活性剤は、単独または2種類以上を組み合わせ使用することができる。前記界面活性剤の使用量は、前記インクの全質量に対し0.001質量%〜2質量%の範囲であることが好ましく、0.001質量%〜1.5質量%の範囲であることがより好ましく、0.01質量%〜1質量%の範囲であることが、印刷画像のにじみ等をより効果的に防止するうえでさらに好ましい。
【0188】
上記方法で得られた本発明のインクジェット印刷インクに多価金属イオン等の不純物が含まれる場合、必要に応じて、キレート樹脂を用いて不純物を除去する処理を行っても良い。一方、本発明において前記化合物(B)として前記リン酸エステル塩(B−1)を使用した場合であれば、前記リン酸エステル(B−1)が前記多価金属イオンと結合し補足するため、前記キレート処理を行うことなく、インクジェット印刷インクの吐出性を向上させることができる。
【0189】
また、本発明のインクジェット印刷インクは、インクカートリッジに充填する前に遠心分離操作やフィルター濾過によって粗大粒子や異物を除去しても良い。
【0190】
上記方法で得られた本発明のインクジェット印刷インクは、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)等のインクジェット方式に適用することができる。なかでも、本発明のインクジェット印刷インクは、一般に、マルチパス方式(スキャン方式)のインクジェット印刷法と比較して吐出ノズルの目詰まり等に起因した画像品質の低下を引き起こしやすいラインヘッドによるシングルパス方式でのインクジェット記録方式と組み合わせ使用することが、吐出ノズルの目詰まり等に起因した画像品質の低下を引き起こしにくく、スジ等の発生が抑制された印刷物を得るうえで好ましい。
【0191】
一般に、ピエゾ方式に比べ、サーマル方式のインクジェットヘッドの吐出性は低いため、インクジェット印刷インクの粘度は、低いことが好ましい。インクジェット印刷インクの粘度は、20mPa・s以下であることが好ましく、サーマル方式では15mPa・sであることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0192】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0193】
(実施例1)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30ml/100g、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 20質量部、クロダホスO3A(クローダ社製、アルケニルエーテルリン酸エステル、モノエステル及びジエステルの混合物) 2質量部、グリセリン 10質量部、48質量%水酸化カリウム水溶液 0.58質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度47.0%、顔料体積濃度39.4%、還元顔料容積濃度58%の水性顔料分散体を作製した。
【0194】
前記水性顔料分散体に、水 24.07質量部を加え、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、一般式(I)中のRが−Oであり、Rが水酸基であり、Rが一般式(II)で示される官能基であり、前記一般式(II)のRがオレイル基であり、Rがトリオキシエチレン基であるアルケニルエーテルリン酸エステル塩を含有する顔料濃度32.2質量%、顔料体積濃度25.8%、還元顔料容積濃度38%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 3.886質量部にグリセリン 0.125質量部、水 0.964質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0195】
(実施例2)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30ml/100g、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 20質量部、ドデシル硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製、一般式(VII)中のRは−ONaであり、Rは一般式(VIII)で示される官能基であり、前記一般式(VIII)中のRはドデシル基である。) 2質量部、グリセリン 10質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度47.6%、顔料体積濃度40.0%、還元顔料容積濃度59%の水性顔料分散体を作製した。
【0196】
前記水性顔料分散体に、水 24.65質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度33.2質量%、顔料体積濃度26.7%、還元顔料容積濃度40%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 3.764質量部にグリセリン 0.125質量部、水 1.086質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0197】
(実施例3)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30ml/100g、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 20質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(東京化成工業株式会社製、62質量%ウエット品) 3.23質量部、グリセリン 10質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度46.3%、顔料体積濃度38.7%、還元顔料容積濃度57%の水性顔料分散体を作製した。
【0198】
前記水性顔料分散体に、水 23.42質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度33.3質量%、顔料体積濃度26.8%、還元顔料容積濃度40%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 3.752質量部にグリセリン 0.125質量部、水 1.098質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0199】
(比較例1)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30ml/100g、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 20質量部、オレイン酸ナトリウム(関東化学株式会社製) 2質量部、グリセリン 10質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度47.6%、顔料体積濃度40.0%、還元顔料容積濃度59%の水性顔料分散体を作製した。
【0200】
前記水性顔料分散体に、水 24.65質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度32.1質量%、顔料体積濃度25.7%、還元顔料容積濃度38%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 3.895質量部にグリセリン 0.125質量部、水 0.955質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0201】
(実施例4)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30ml/100g、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 20質量部、リン酸オレイル(関東化学株式会社製、モノエステル及びジエステルの混合物) 2質量部、グリセリン 10質量部、48質量%水酸化カリウム水溶液 0.79質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度46.7%、顔料体積濃度39.2%、還元顔料容積濃度58%の水性顔料分散体を作製した。
【0202】
前記水性顔料分散体に、水 23.81質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度30.6質量%、顔料体積濃度24.4%、還元顔料容積濃度36%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 4.087質量部にグリセリン 0.125質量部、水 0.763質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0203】
(比較例2)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30ml/100g、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 20質量部、スチレン−アクリル酸共重合体(酸価180、重量平均分子量12,000、数平均分子量3,200) 6質量部、グリセリン 10質量部、48質量%水酸化カリウム水溶液 2.22質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度41.5%、顔料体積濃度34.2%、還元顔料容積濃度51%の水性顔料分散体を作製した。
【0204】
前記水性顔料分散体に、水 18.38質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度30.7質量%、顔料体積濃度24.5%、還元顔料容積濃度36%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 4.078質量部にグリセリン 0.125質量部、水 0.772質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0205】
(実施例5)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、密度1.4g/cm、吸油量38ml/100g、臨界顔料体積濃度64%、Y74) 20質量部、ドデシル硫酸ナトリウム(関東化学株式会社) 2質量部、グリセリン 10質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度47.6%、顔料体積濃度41.7%、還元顔料容積濃度65%の水性顔料分散体を作製した。
【0206】
前記水性顔料分散体に、水 24.65質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度24.6質量%、顔料体積濃度20.4%、還元顔料容積濃度32%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 4.071質量部に水 0.904質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度20質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0207】
(実施例6)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、密度1.4g/cm、吸油量38ml/100g、臨界顔料体積濃度64%、Y74) 20質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社、62質量%ウエット品) 3.23質量部、グリセリン 10質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度46.3%、顔料体積濃度40.4%、還元顔料容積濃度63%の水性顔料分散体を作製した。
【0208】
前記水性顔料分散体に、水 23.42質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度24.1質量%、顔料体積濃度20.0%、還元顔料容積濃度31%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 4.148質量部に水 0.827質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度20質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0209】
(比較例3)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、密度1.4g/cm、吸油量38ml/100g、臨界顔料体積濃度64%、Y74) 20質量部、オレイン酸ナトリウム(関東化学株式会社) 2質量部、グリセリン 10質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度47.6%、顔料体積濃度41.7%、還元顔料容積濃度65%の水性顔料分散体を作製した。前記水性顔料分散体に、水 23.42質量部を加え、た後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度22.0質量%、顔料体積濃度18.1%、還元顔料容積濃度28%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 4.555質量部に水 0.420質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度20質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0210】
(比較例4)
200mLのポリ容器に2mmΦのジルコニアビーズ 180質量部、C.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、密度1.4g/cm、吸油量38ml/100g、臨界顔料体積濃度64%、Y74) 20質量部、スチレン−アクリル酸共重合体(酸価180、重量平均分子量12,000、数平均分子量3,200) 6質量部、グリセリン 10質量部、48質量%水酸化カリウム水溶液 2.22質量部、水 10質量部を仕込み、ペイントシェイカーで2時間分散し、顔料質量濃度41.5%、顔料体積濃度35.8%、還元顔料容積濃度56%の水性顔料分散体を作製した。
【0211】
前記水性顔料分散体に、水 23.42質量部を加えた後、ペイントシェイカーで5分間分散した。ビーズから分離した上澄み液を、バッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度14.7質量%、顔料体積濃度11.9%、還元顔料容積濃度19%の顔料分散体の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 4.975質量部にサーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.025質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度14.6質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0212】
(実施例7)
アデカコール PS−810E(株式会社ADEKA社製、アルキルエーテルリン酸エステル) 20質量部、水 200質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液 6.88質量部を1Lポリ容器に仕込み、振とうしてアデカコール PS−810Eの水分散液を作製した後、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30ml/100g、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 200質量部を加え、振とうしてシアン顔料スラリー液を作製した。大河原化工機製の乳化用ミキサー装置フリーマイクロミキサーFMM−1で上記シアン顔料スラリー液を0.3L/分の流速で5分間循環した後、1L/分の流速で120分間循環した。圧力を2.8MPaから3.1MPaまで上昇した後、1.8MPaに低下した。得られたシアン顔料分散液をバッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に分け入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、一般式(I)中のRが−Oであり、Rが水酸基であり、Rが一般式(II)で示される官能基であり、前記一般式(II)のRがステアリル基であり、Rがポリオキシエチレン基であるアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する顔料濃度43.1質量%、顔料体積濃度35.7%、還元顔料容積濃度53%の水性顔料分散体を得た。
この水性顔料分散体 11.602質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 20.898質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度10質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0213】
(実施例8)
実施例7で作製した顔料濃度43.1質量%、顔料体積濃度35.7%、還元顔料容積濃度53%の水性顔料分散体 17.403質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 15.097質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度15質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0214】
(実施例9)
実施例7で作製した顔料濃度43.1質量%、顔料体積濃度35.7%、還元顔料容積濃度53%の水性顔料分散体 23.204質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 9.296質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度20質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0215】
(実施例10)
実施例7で作製した顔料濃度43.1質量%、顔料体積濃度35.7%、還元顔料容積濃度53%の水性顔料分散体 29.004質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 3.496質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0216】
(実施例11)
実施例7で作製した顔料濃度43.1質量%、顔料体積濃度35.7%、還元顔料容積濃度53%の水性顔料分散体 34.805質量部、グリセリン 1.714質量部を含むビヒクル15.0質量部、水 0.195質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度30質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0217】
(実施例12)
アデカコール PS−810E(株式会社ADEKA社製、アルキルエーテルリン酸エステル) 15質量部、水 204.45質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液 5.16質量部を1Lポリ容器に仕込み、振とうしてアデカコール PS−810Eの水分散液を作製した後、C.I.ピグメントブルー15:3(DIC株式会社製、密度1.5g/cm、吸油量30、臨界顔料体積濃度68%、B15:3) 150質量部、プロキセルGXL(ロンザグループAG社製のベンツイソチアゾリン−3−オン) 0.37質量部を加え、振とうしてシアン顔料スラリー液を作製した。大河原化工機製の乳化用ミキサー装置フリーマイクロミキサーFMM−1で上記シアン顔料スラリー液を0.6L/分の流速で20分間循環した後、1L/分の流速で100分間循環した。圧力は2.7MPaから2.1MPaに低下した後、1.4MPaまで低下した。得られたシアン顔料分散液をバッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に分け入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、一般式(I)中のRが−Oであり、Rが水酸基であり、Rが一般式(II)で示される官能基であり、前記一般式(II)のRがステアリル基であり、Rがポリオキシエチレン基であるアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する顔料濃度40.6質量%、顔料体積濃度33.4%、還元顔料容積濃度49%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体 12.324質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 20.176質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度10質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0218】
(実施例13)
実施例12で作製した顔料濃度40.6質量%、顔料体積濃度33.4%、還元顔料容積濃度49%の水性顔料分散体 18.486質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 14.014質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度15質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0219】
(実施例14)
実施例12で作製した顔料濃度40.6質量%、顔料体積濃度33.4%、還元顔料容積濃度49%の水性顔料分散体 24.649質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 7.851質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度20質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0220】
(実施例15)
実施例12で作製した顔料濃度40.6質量%、顔料体積濃度33.4%、還元顔料容積濃度49%の水性顔料分散体 30.811質量部、グリセリン 2質量部を含むビヒクル17.5質量部、水 1.689質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0221】
(実施例16)
実施例12で作製した顔料濃度40.6質量%、顔料体積濃度33.4%、還元顔料容積濃度49%の水性顔料分散体 33.892質量部、グリセリン 1.714質量部を含むビヒクル15.0質量部、水 1.108質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度27.5質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0222】
(実施例17)
アデカコール PS−810E(株式会社ADEKA社製、アルキルエーテルリン酸エステル) 20質量部、水 217.12質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液 6.88質量部を1Lポリ容器に仕込み、振とうしてアデカコール PS−810Eの水分散液を作製した後、C.I.ピグメントレッド122(DIC株式会社製、密度1.6g/cm、吸油量40、臨界顔料体積濃度59%、R122) 200質量部、プロキセルGXL(ロンザグループAG社製のベンツイソチアゾリン−3−オン) 0.44質量部を加え、振とうしてシアン顔料スラリー液を作製した。大河原化工機製の乳化用ミキサー装置フリーマイクロミキサーFMM−1で上記シアン顔料スラリー液を0.6L/分流速で150分間循環した後、1L/分の流速で100分間循環した。圧力は3.8MPaから2.8MPaに低下した後、3.3MPaまで再び上昇した後、2.9MPaに低下した。得られたシアン顔料分散液をバッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に分け入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、一般式(I)中のRが−Oであり、Rが水酸基であり、Rが一般式(II)で示される官能基であり、前記一般式(II)のRがステアリル基であり、Rがポリオキシエチレン基であるアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する顔料濃度37.8質量%、顔料体積濃度29.5%、還元顔料容積濃度50%の水性顔料分散体を得た。
【0223】
この水性顔料分散体 26.443質量部、グリセリン 4質量部を含むビヒクル35.0質量部、水 38.557質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度10質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0224】
(実施例18)
実施例17で作製した顔料濃度37.8質量%、顔料体積濃度29.5%、還元顔料容積濃度50%の水性顔料分散体 39.664質量部、グリセリン 4質量部を含むビヒクル35.0質量部、水 25.336質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度15質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0225】
(実施例19)
実施例17で作製した顔料濃度37.8質量%、顔料体積濃度29.5%、還元顔料容積濃度50%の水性顔料分散体 52.885質量部、グリセリン 4質量部を含むビヒクル35.0質量部、水 12.115質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度20質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0226】
(実施例20)
クロダホスO3A(クローダ社製、アルケニルエーテルリン酸エステル、モノエステル及びジエステルの混合物) 20質量部、水 174.75質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液 4.85質量部を1Lポリ容器に仕込み、振とうしてクロダホスO−3Aの水分散液を作製した後、C.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、密度1.4g/cm、吸油量38ml/100g、臨界顔料体積濃度64%、Y74) 200質量部、プロキセルGXL(ロンザグループAG社製のベンツイソチアゾリン−3−オン) 0.40質量部を加え、振とうしてイエロー顔料スラリー液を作製した。大河原化工機製の乳化用ミキサー装置フリーマイクロミキサーFMM−1で上記イエロー顔料スラリー液を0.3L/分の流速で5分間循環した後、0.6L/分の流速で280分間循環し、さらに1.0L/分の流速で15分循環した。圧力は5.2MPaから2.6MPaに低下した後、3.3MPaまで再び上昇した後、3.2MPaに低下した。得られたイエロー顔料分散液をバッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に分け入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、一般式(I)中のRが−Oであり、Rが水酸基であり、Rが一般式(II)で示される官能基であり、前記一般式(II)のRがオレイル基であり、Rがトリオキシエチレン基であるアルケニルエーテルリン酸エステル塩を含有する顔料濃度35.8質量%、顔料体積濃度30.5%、還元顔料容積濃度48%の水性顔料分散体を得た。
【0227】
この水性顔料分散体 27.930質量部、グリセリン 4質量部を含むビヒクル35.0質量部、水 37.070質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度10質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0228】
(実施例21)
実施例20で作製した顔料濃度35.8質量%、顔料体積濃度30.5%、還元顔料容積濃度48%の水性顔料分散体 41.895質量部、グリセリン 4質量部を含むビヒクル35.0質量部、水 23.105質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度15質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0229】
(実施例22)
実施例20で作製した顔料濃度35.8質量%、顔料体積濃度30.5%、還元顔料容積濃度48%の水性顔料分散体 55.860質量部、グリセリン 4質量部を含むビヒクル35.0質量部、水 9.14質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度20質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0230】
(実施例23)
ドデシル硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製) 20質量部、水 179.60質量部を1Lポリ容器に仕込み、振とうしてドデシル硫酸ナトリウムの水分散液を作製した後、C.I.ピグメントホワイト6(石原産業株式会社製、密度4.2g/cm、吸油量18ml/100g、臨界顔料体積濃度55%、W6) 200質量部、プロキセルGXL(ロンザグループAG社製のベンツイソチアゾリン−3−オン) 0.40質量部を加え、振とうしてホワイト顔料スラリー液を作製した。大河原化工機製の乳化用ミキサー装置フリーマイクロミキサーFMM−1で上記ホワイト顔料スラリー液を0.3L/分の流速で5分間循環した後、0.6L/分の流速で100分間循環した。圧力は4.0MPaから2.2MPaに低下した。得られたホワイト顔料分散液をバッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に分け入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度48.5質量%、顔料体積濃度19.8%、還元顔料容積濃度36%の水性顔料分散体を得た。
【0231】
この水性顔料分散体 61.856質量部、グリセリン 15質量部、水 22.644質量部、サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.5質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度30質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0232】
(実施例24)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、62質量%ウエット品) 24.19質量部、水 200.44質量部を1Lポリ容器に仕込み、振とうしてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの水分散液を作製した後、C.I.ピグメンブラック7(キャボット社製、密度1.82g/cm、吸油量65ml/100g、臨界顔料体積濃度44%、BK7) 150質量部、プロキセルGXL(ロンザグループAG社製のベンツイソチアゾリン−3−オン) 0.375質量部を加え、振とうしてブラック顔料スラリー液を作製した。大河原化工機製の乳化用ミキサー装置フリーマイクロミキサーFMM−1で上記ブラック顔料スラリー液を0.3L/分の流速で5分間循環した後、0.6L/分の流速で60分間循環した。圧力は3.5MPaから1.8MPaに低下した。得られたブラック顔料分散液をバッチ式遠心分離機(株式会社コクサン製、H−600S型)用のローター(容積約100ml)に分け入れ、13000rpmで22000×Gの遠心加速度で5分間遠心分離することによって、顔料濃度39.2質量%、顔料体積濃度28.0%、還元顔料容積濃度64%の水性顔料分散体を得た。
【0233】
この水性顔料分散体 63.776質量部、グリセリン 15質量部、水 20.724質量部サーフィノール440(エボニックインダストリーズAG社製の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加体) 0.5質量部を加えて振とう攪拌し、顔料濃度25質量%のインクジェット印刷インクを得た。
【0234】
〔インクジェット印刷インクの吐出性〕
インクジェット印刷インクの吐出性を、市販のインクジェットプリンターENVY4500(HP社製)を用いて下記基準により評価した。前記インクジェット印刷用水性インクを、ブラックカートリッジに充填し、インクジェットヘッドのクリーニング操作後、普通紙に、印刷品質レポート(A4)を印刷し、2cm×20cmの長方形の印刷濃度100%のベタ印刷物を得た。
【0235】
前記印刷物のうち、印刷濃度100%のベタ印刷が形成された領域の面積を測定した。前記2cm×20cmの長方形の面積(40cm)に対する前記印刷濃度100%のベタ印刷部が形成された領域の面積の割合を算出し、前記割合と下記評価基準に基づいて吐出性を評価した。『◎』または『〇』評価であったものは吐出ノズルの詰まりを引き起こさない、または、引き起こしにくいものであると判断した。一方、『△』『×』または『××』評価であったものは吐出ノズルの詰まりを引き起こす、または、引き起こしやすいものであって実用上課題があるものと判断した。
◎ 前記割合が90%以上であった。
〇 前記割合が80%以上90%未満であった。
△ 前記割合が10%以上80%未満であった。
× 前記割合が1%以上10%未満であった。
×× 前記割合が1%未満であった。
【0236】
〔体積平均粒子径の測定方法〕
実施例及び比較例で得られたインクジェット印刷インクをイオン交換水で2500倍に希釈したものを測定試料とした。また、実施例及び比較例で得られた水性顔料分散体をイオン交換水で2500倍から5000倍に希釈したものを測定試料とした。前記測定試料の25℃における体積平均粒子径を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製:Microtracモデル名Nanotrac−UPA150)を用いて測定した。水性顔料分散体の希釈倍率は、ローディングインデックスの適性範囲内に入る様、適宜調整した。
【0237】
〔インクジェット印刷インク、水性顔料分散体の保存安定性(熱安定性)〕
インクジェット印刷インク、水性顔料分散体を、60℃の環境下に8週間放置した。次に、前記放置前後のインクジェット印刷インクを、イオン交換水で2500倍に希釈したものを測定試料とした。また、前記放置前後の顔料分散体を、イオン交換水で2500倍から5000倍に希釈したものを測定試料とした。顔料分散体の希釈倍率は、ローディングインデックスの適性範囲内に入る様、適宜調整した。次に、前記測定試料の25℃における体積平均粒子径を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製:Microtracモデル名Nanotrac−UPA150)を用いて測定した。前記測定結果と、下記式に基づいて体積平均粒子径の変化率を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。
式 [{(前記放置後のインクジェット印刷インク、水性顔料分散体の体積平均粒子径)−(前記放置前のインクジェット印刷インク、水性顔料分散体の体積平均粒子径)}/(前記放置前のインクジェット印刷インク、水性顔料分散体の体積平均粒子径)]×100
下記評価基準に基づいて体積平均粒子径の変化率を評価したときに『◎』または『〇』評価であったものは、熱の影響によって吐出ノズルの詰まりを引き起こさない、または、引き起こしにくいものであると判断した。一方、『△』『×』または『××』評価であったものは吐出ノズルの詰まりを引き起こす、または、引き起こしやすいものであって実用上課題があるものと判断した。また、表中の空欄は未評価を示す。
【0238】
◎ 体積平均粒子径の変化率は10%未満
〇 体積平均粒子径の変化率は10%以上20%未満
△ 体積平均粒子径の変化率は20%以上50%未満
× 体積平均粒子径の変化率は50%以上100%未満
×× 体積平均粒子径の変化率は100%以上
【0239】
〔インクジェット印刷インクの保存安定性(冷熱サイクル安定性)〕
インクジェット印刷インクを、70℃の環境に4時間放置し、次に−40℃の環境に4時間放置するのを1サイクルとし、これを6サイクル繰り返し行った(冷熱サイクル試験)。
【0240】
次に、前記冷熱サイクル試験前後のインクジェット印刷インクを、イオン交換水で2500倍に希釈したものを測定試料とした。次に、前記測定試料の25℃における体積平均粒子径を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製:Microtracモデル名Nanotrac−UPA150)を用いて測定した。前記測定結果と、下記式に基づいて体積平均粒子径の変化率を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。
式 [{(冷熱サイクル試験後のインクジェット印刷インクの体積平均粒子径)−(冷熱サイクル試験前のインクジェット印刷インクの体積平均粒子径)}/(冷熱サイクル試験前のインクジェット印刷インクの体積平均粒子径)]×100
下記評価基準に基づいて体積平均粒子径の変化率を評価したときに『◎』または『〇』評価であったものは、温度変化の影響によって吐出ノズルの詰まりを引き起こさない、または、引き起こしにくいものであると判断した。一方、『△』『×』または『××』評価であったものは吐出ノズルの詰まりを引き起こす、または、引き起こしやすいものであって実用上課題があるものと判断した。
【0241】
◎ 体積平均粒子径の変化率は10%未満
〇 体積平均粒子径の変化率は10%以上20%未満
△ 体積平均粒子径の変化率は20%以上50%未満
× 体積平均粒子径の変化率は50%以上100%未満
×× 体積平均粒子径の変化率は100%以上
【0242】
[水性顔料分散体の粘度の測定方法]
水性顔料分散体を1時間以上25℃恒温水槽に静置した後、25℃恒温室内でコーン・プレート型粘度計(東機産業株式会社製:TV−20形粘度計モデル名TVE−20L)を用いて水性顔料分散体の粘度を測定した。
【0243】
実施例及び比較例で得た水性顔料分散体の顔料濃度と粘度測定結果、熱安定性試験結果を表2に示す。表中の顔料体積濃度(PVC)は、顔料の質量をその密度で除すことにより算出した顔料の体積と、水性顔料分散体に含まれるビヒクル混合物(顔料以外の成分)の比重を1.1とし算出した体積と、[100×(顔料の体積)/(水性顔料分散体の体積)]の式とに基づいて算出した。
【0244】
【表2】

【0245】
実施例及び比較例で得たインクジェット印刷インクの顔料濃度、グリセリン濃度と吐出性、熱安定性、冷熱サイクル安定性試験結果等を表3及び4に示す。
【0246】
【表3】

【0247】
【表4】