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特開2021-196252演算装置、測定システム、演算方法、及び演算プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-196252(P2021-196252A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】演算装置、測定システム、演算方法、及び演算プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20211129BHJP
【FI】
   G01M11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-102602(P2020-102602)
(22)【出願日】2020年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】丸山 遼
(72)【発明者】
【氏名】渡部 仁貴
(72)【発明者】
【氏名】柴田 宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正治
(57)【要約】
【課題】マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を算出する技術を実現する。
【解決手段】演算装置(13)は、スペクトラムアナライザ(12)にて測定されたスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップ(S11)と、フーリエ変換ステップ(S11)にて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップ(S12)と、フィルタリングステップ(S12)にて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップ(S13)と、逆フーリエ変換ステップ(S13)にて得られた干渉波形から、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を算出する群遅延差算出ステップ(S14)と、を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出可能である演算装置であって、
前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップと、
前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップと、
前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差の波長依存性を算出する群遅延差算出ステップと、が実行可能である、
ことを特徴とする演算装置。
【請求項2】
更に、前記群遅延差算出ステップにて算出された各伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、その伝搬モードの波長分散の波長依存性を算出する波長分散算出ステップが実行可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
更に、前記群遅延差算出ステップにて算出された2つの伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、それらの伝搬モードのモード間群遅延差の波長依存性を算出するモード間群遅延差算出ステップが実行可能である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の演算装置。
【請求項4】
マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することによって、干渉光を生成する二光束干渉計と、
前記二光束干渉計にて生成された干渉光のスペクトルを測定するスペクトラムアナライザと、
請求項1〜3の何れか一項に記載の演算装置であって、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記スペクトラムアナライザにて得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する演算装置と、を含んでいる、
ことを特徴とする測定システム。
【請求項5】
マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する演算方法であって、
前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップと、
前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップと、
前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を算出する群遅延差算出ステップと、を含んでいる、
ことを特徴とする演算方法。
【請求項6】
マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する演算方法であって、
前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップと、
前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップと、
前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を算出する群遅延差算出ステップと、を含んでいる、演算方法を、汎用計算機に実行させる演算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を算出する演算装置及び演算方法に関する。また、本発明は、そのような演算装置を含む測定システムに関する。また、本発明は、そのような演算方法を汎用計算機に実行させるための演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の伝搬モードを有するマルチモードファイバの開発が盛んに進められている。マルチモードファイバを伝送媒体とする伝送システムにおいては、各伝搬モードの波長分散、及び、各伝搬モード間の群遅延差が、信号品質に大きな影響を及ぼし得る。このため、マルチモードファイバに関して、各伝搬モードの波長分散の測定方法、及び、各伝搬モード間の群遅延差の測定方法が、それぞれ研究されている。例えば、非特許文献1には、マルチモードファイバに関して、各伝搬モードの波長分散の測定方法、及び、各伝搬モード間の群遅延差の測定方法が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】N. Shibata, M. Ohashi, R. Maruyama, and N. Kuwaki, “Measurements of differential group delay and chromatic dispersion for LP01 and LP11 modes of few-mode fibers with depressed claddings,” Opt. Review, Vol. 22, No. 1, pp 65 - 70, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチモードファイバに関して、各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差から、各伝搬モードの波長分散、及び、各伝搬モード間の群遅延差を算出できることが、本願発明者らの最新の研究から明らかになった。しかしながら、各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する技術は知られていなかった。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、そのマルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する技術(演算装置、測定システム、演算方法、又は演算プログラム)を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様1に係る演算装置は、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出可能である演算装置であって、前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップと、前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップと、前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップと、前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差の波長依存性を算出する群遅延差算出ステップと、を実行可能である。
【0007】
本発明の態様2に係る演算装置は、態様1に係る演算装置が実行するステップに加えて、前記群遅延差算出ステップにて算出された各伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、その伝搬モードの波長分散の波長依存性を算出する波長分散算出ステップを更に実行する。
【0008】
本発明の態様3に係る演算装置は、態様1又は2に係る演算装置が実行するステップに加えて、前記演算装置は、前記群遅延差算出ステップにて算出された2つの伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、それらの伝搬モードのモード間群遅延差の波長依存性を算出するモード間群遅延差算出ステップを更に実行する。
【0009】
本発明の態様4に係る測定システムは、マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することによって、干渉光を生成する二光束干渉計と、前記二光束干渉計にて生成された干渉光のスペクトルを測定するスペクトラムアナライザと、態様1〜3の何れかに係る演算装置であって、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記スペクトラムアナライザにて得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する演算装置と、を含んでいる。
【0010】
本発明の態様4に係る演算方法は、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する演算方法であって、前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップと、前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップと、前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップと、前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差の波長依存性を算出する群遅延差算出ステップと、を含んでいる。
【0011】
本発明の態様6に係る演算プログラムは、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する演算方法であって、前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップと、前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップと、前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップと、前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差の波長依存性を算出する群遅延差算出ステップと、を含んでいる演算方法を汎用計算機に実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、そのマルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出する技術(演算装置、測定システム、演算方法、又は演算プログラム)を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る測定システムの構成を示すブロック図である。
図2図1に示す測定システムに含まれる演算装置が実行する演算方法の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施例を示すグラフである。具体的には、図1に示す測定システムに含まれるスペクトラムアナライザにて測定された透過光強度スペクトルを示すグラフである。
図4】本発明の一実施例を示すグラフである。具体的には、図2に示す透過光強度スペクトルに対して、図3に示すフーリエ変換ステップを適用することにより得られた時間領域波形である。
図5】本発明の一実施例を示すグラフである。(a)は、図4に示す時間領域波形におけるLP01モードに対応するピークに対して、図2に示す逆フーリエ変換ステップを適用することにより得られた、周波数領域における干渉波形である。(b)は、図4に示す時間領域波形におけるLP11モードに対応するピークに対して、図2に示す逆フーリエ変換ステップを適用することにより得られた、周波数領域における干渉波形である。
図6】本発明の一実施例を示すグラフである。(a)は、図5の(a)に示す干渉波形に対して、図2に示す群遅延差算出ステップを適用することにより得られた、LP01モードの群遅延τ01と空気中を伝搬した光の群遅延τairとの群遅延差Δτ01-air(λ)の波長依存性を示すグラフである。(b)は、図5の(b)に示す干渉波形に対して、図2に示す群遅延差算出ステップを適用することにより得られた、LP11モードの群遅延τ11と空気中を伝搬した光の群遅延τairとの群遅延差Δτ11-air(λ)の波長依存性を示すグラフである。
図7】本発明の一実施例を示すグラフである。具体的には、図2に示す波長分散算出ステップにて算出された、LP01モードの波長分散D01及びLP11モードの波長分散D11の波長依存性を示すグラフである。
図8】本発明の一実施例を示すグラフである。具体的には、図2に示すモード間群遅延差算出ステップにて算出された、LP01モードとLP11モードとのモード間群遅延差DGD(τ0111)の波長依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る測定システム1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、測定システム1の構成を示すブロック図である。
【0015】
測定システム1は、マルチモードファイバMMFの各伝搬モードと波長分散、及び、マルチモードファイバMMFの各伝搬モード間の群遅延差の両方を測定するためのシステムである。測定システム1は、図1に示すように、二光束干渉計11と、スペクトラムアナライザ12と、演算装置13と、を備えている。
【0016】
二光束干渉計11は、マルチモードファイバMMF中を伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することによって、干渉光を生成するための構成である。本実施形態においては、二光束干渉計11として、光源LSと、2つのシングルモードファイバSMF1,SMF2と、2つの偏光子P1,P2と、2つのハーフミラーHM1,HM2と、3つのミラーM1,M2,M3と、により構成される光学系を用いている。
【0017】
光源LSは、測定に用いる光を生成する。本実施形態においては、光源LSとして、ブロードなスペクトルを有するSLD(Super Luminescent Diode)を用いている。光源LSにて生成された光は、シングルモードファイバSMF1に入射する。
【0018】
シングルモードファイバSMF1は、光源LSにて生成された光を導波する。シングルモードファイバSMF1を導波された光は、偏光子P1に入射する。偏光子P1は、シングルモードファイバSMF1を導波された光に含まれる偏光成分のうち、特定の偏光方向を有する偏光成分を選択的に透過させる。偏光子P1を透過した光は、ハーフミラーHM1に入射する。ハーフミラーHM1は、偏光子P1を透過した光の一部を透過させると共に、偏光子P1を透過した光の残りの部分を反射する。
【0019】
ハーフミラーHM1を透過した光は、マルチモードファイバMMFに入射する。マルチモードファイバMMFは、ハーフミラーHM1を透過した光を導波する。マルチモードファイバMMFを導波された光は、ハーフミラーHM2に入射する。ハーフミラーHM2は、マルチモードファイバMMFを導波された光(の一部)を透過する。以上の光路を通った光のことを、以下、「マルチモードファイバMMFを伝搬した光」とも記載する。
【0020】
一方、ハーフミラーHM1にて反射された光は、ミラーM1に入射する。ミラーM1は、ハーフミラーHM1にて反射された光を更に反射する。ミラーM1にて反射された光は、ミラーM2に入射する。ミラーM2は、ミラーM1にて反射された光を更に反射する。ミラーM2にて反射された光は、ハーフミラーHM2に入射する。ハーフミラーHM2は、ミラーM2にて反射された光(の一部)を透過する。ハーフミラーHM2を透過した光は、ミラーM3に入射する。ミラーM3は、ハーフミラーHM2を透過した光を反射する。ミラーM3にて反射された光は、ハーフミラーHM2に再び入射する。ハーフミラーHM2は、ミラーM3にて反射された光(の一部)を反射する。以上の光路を通った光のことを、以下、「空気中を伝搬した光」とも記載する。
【0021】
ハーフミラーHM2は、マルチモードファイバMMFを伝搬した光と、空気中を伝搬した光とを合波することによって、干渉光を生成する。ハーフミラーHM2にて生成されて干渉光は、偏光子P2に入射する。偏光子P2は、ハーフミラーHM2にて生成された干渉光に含まれる偏光成分のうち、特定の偏光方向を有する偏光成分を選択的に透過させる。偏光子P2を透過した光は、シングルモードファイバSMF2に入射する。シングルモードファイバSMF2は、偏光子P2を透過した光を導波する。シングルモードファイバSMF2を導波された光は、スペクトラムアナライザ12に入射する。
【0022】
二光束干渉計11において、ミラーM3は、ハーフミラーHM2から遠ざかる方向及び近づく方向に変位可能である。本実施形態において、ミラーM3の位置は、マルチモードファイバMMFを伝搬した光の光路長と空気中を伝搬した光との光路長とが一致するように調整されている。また、二光束干渉計11において、偏光子P1,P2は、それぞれ、入射する光の光軸を回転軸として回転可能である。本実施形態において、偏光子P1,P2の回転角は、スペクトラムアナライザ12にて測定される干渉光のスペクトルのディップが最大になるように調整されている。
【0023】
スペクトラムアナライザ12は、二光束干渉計11にて生成された干渉光のスペクトルを測定するための構成である。スペクトラムアナライザ12にて測定される干渉光のスペクトルのことを、以下、透過光強度スペクトルIall(ω)と記載する。
【0024】
演算装置13は、スペクトラムアナライザ12にて測定された透過光強度スペクトルIall(ω)に基づいて、マルチモードファイバMMFの各伝搬モードと波長分散、及び、マルチモードファイバMMFの各伝搬モード間の群遅延差の両方を算出するための構成である。これらの物理量を算出するために演算装置13が用いる演算方法Sについては、その測定原理を説明した後に詳述する。
【0025】
〔測定原理〕
測定システム1において、スペクトラムアナライザ12にて測定される透過光強度スペクトルIall(ω)は、式(1)に示すように、マルチモードファイバMMFを伝搬した光の透過光強度スペクトルI(ω)と空気中を伝搬した光の透過強度スペクトルIc(ω)との和により与えられる。
【数1】
【0026】
まず、マルチモードファイバMMFを伝搬した光の透過強度スペクトルI(ω)について考える。マルチモードファイバMMFの第lモードの電界成分El(t、z)は、式(2)のように表すことができる。式(2)において、tは時間であり、zは伝搬距離であり、LはマルチモードファイバMMFのファイバ長であり、cは自由空間中の光速(=3×108m/s)であり、ωは角周波数であり、A(ω)は光源LSにて生成された光のスペクトル振幅であり、βl(ω)はマルチモードファイバMMFの第lモードの伝搬定数である。
【数2】
【0027】
干渉に寄与するN個の伝搬モードの電界成分El(t、z)の和ΣEl(t、z)は、式(3)のように表すことができる。式(3)は、J(ω)=A(ω)exp{i(ω/c)(z−L)}Σexp[i{βl(ω)L}]のフーリエ変換が和ΣEl(t、z)に等しいことを意味する。
【数3】
【0028】
簡単のためにN個の伝搬モードが均一に励振されていると仮定すると、透過強度スペクトルI(ω)は、式(4)のように表すことができる。
【数4】
【0029】
式(4)から明らかなように、透過強度スペクトルI(ω)は、伝搬定数差Δβlm(ω)=βl(ω)−βm(ω)の値に応じて周期的に変化する。
【0030】
式(4)に現れる伝搬定数βl(ω),βm(ω)をω=ωcの近傍でテイラー展開すると、式(5)が得られる。式(5)において、「´」はωで1階微分することを表し、「´´」はωで2階微分することを表す。
【数5】
【0031】
式(5)を用いると、伝搬定数差Δβlm(ω)は、式(6)のように表すことができる。式(6)において、AはA=βl(ωc)−βm(ωc)により定義される定数であり、BはB=βl´(ωc)−βm´(ωc)により定義される定数であり、CはC=(1/2){βl´´(ωc)−βm´´(ωc)}により定義される定数である。
【数6】
【0032】
式(4)に現れる光源LSの発光スペクトルS(ω)=|A(ω)|2は、a=1/2Δω2として、式(7)に示すように、ガウス型であることを仮定する。
【数7】
【0033】
透過強度スペクトルI(ω)のフーリエ変換p(t)=F[I(ω)]の絶対値|p(t)|は、式(8)のように表すことができる。
【数8】
【0034】
0(t)、p1(t)、p2(t)を式(9)のように定義すると、透過強度スペクトルI(ω)のフーリエ変換p(t)は、式(10)のように表すことができる。
【数9】
【数10】
【0035】
式(9)により定義されるp0(t)、p1(t)、p2(t)は、それぞれ、式(11)、(12)、(13)のように変形することができる。
【数11】
【数12】
【数13】
【0036】
ここで、式(14)に注意すると、式(12)から式(15)を得ることができ、式(13)から式(16)を得ることができる。
【数14】
【数15】
【数16】
【0037】
式(11)、(15)、(16)を用いると、式(10)は、式(17)のように変形することができる。
【数17】
【0038】
式(18)により定義される複素コヒーレンス度γlm(t−ΔτlmL)を用いると、式(17)は、更に、式(19)のように変形することができる。なお、式(19)において「*」は複素共役を表す。
【数18】
【数19】
【0039】
式(19)の右辺は、位相を含む。また、式(17)の第3式において、[]内の第1項、第2項、及び第3項は、時間領域において互いに重なり合うことはない。したがって、時間領域t>0においては、式(19)の第2項のみを考えれば良い。このため、p(t)の絶対値|p(t)|は、式(20)のように表すことができる。
【数20】
【0040】
光パルス波形は、複素コヒーレンス度の2乗|γlm(t−ΔτlmL)|2で表されるので、|p(t)|2は、式(21)のように表すことができる。
【数21】
【0041】
γlm(t−ΔτlmL)とγpq(t−ΔτpqL)とが互いに重なり合うことがない場合(すなわち、干渉が生じない場合)、Σγlm(t−ΔτlmL)γpq(t−ΔτpqL)=0が成り立つので、式(21)は、式(22)のように変形することができる。
【数22】
【0042】
次に、空気中を伝搬した光の透過強度スペクトルIc(ω)について考える。光源LSのスペクトル振幅A(ω)と第lモードの伝搬定数βl(ω)を用いると、透過強度スペクトルIc(ω)は、式(23)のように表すことができる。
【数23】
【0043】
式(23)に現れる伝搬定数βl(ω)をω=ωcの近傍でテイラー展開すると、式(24)が得られる。なお、式(24)においては、Ic(ω)をゼロ色分散領域に適用することを考えて、3次の群速度分散の項まで考慮している。
【数24】
透過強度スペクトルIc(ω)のフーリエ変換pc(t)=F[Ic(ω)]の絶対値の2乗|pc(t)|2は、式(25)のように表すことができる。式(25)において、γlc(t−ΔτlaL)は、l番目の伝搬モードと空気中を伝搬する光との複素コヒーレンス度であり、γmc(t−ΔτmaL)は、m番目の伝搬モードと空気中を伝搬する光との複素コヒーレンス度である。
【数25】
【0044】
複素コヒーレンス度γlc(t−ΔτlaL)は、ゼロ色分散領域、すなわち、β´´(ω)≒0となる周波数領域において、式(26)のように表すことができる。式(26)において、Ai(s)は第1種エアリー関数である。また、T=2d/c−(1/vgl−1/c)L、p={(τc2−iβ2L)/2}1/2、X=β3L/(2p3)、s=(p−XT)/pX4/3である。また、vpl及びvglは、それぞれ、l番目の伝搬モードの位相速度及び群速度であり、τcは、低コヒーレンス光源のコヒーレンス時間であり、2dは、l番目の伝搬モードと空気中を伝搬する光との光路長差である。
【数26】
【0045】
γlc(t−ΔτlcL)とγmc(t−ΔτmcL)とが互いに重なり合うことがない場合(すなわち、干渉が生じない場合)、Σγlc(t−ΔτlcL)γmc(t−ΔτmcL)=0が成り立つので、式(25)は、式(27)のように変形することができる。
【数27】
【0046】
式(25)及び式(27)からゼロ色分散波長領域において|pc(t)|2は、エアリ―関数で表される波形を持つことが分かる。式(22)から、|p(t)|2についても、同様にエアリ―関数で表される波形を持つことが分かる。
【0047】
以上のように、スペクトラムアナライザ12により測定される透過光強度スペクトルIall(ω)は、マルチモードファイバMMFを伝搬した光の透過強度スペクトルI(ω)と空気中を伝搬した光の透過強度スペクトルIc(ω)との和である。そして、マルチモードファイバMMFを伝搬した光の透過強度スペクトルI(ω)のフーリエ変換をp(t)とすると、|p(t)|2は、エアリ―関数で表される波形を持つ。また、空気中を伝搬した光の透過強度スペクトルIc(ω)のフーリエ変換をpc(t)とすると、|pc(t)|2は、エアリ―関数で表される波形を持つ。したがって、透過光強度スペクトルIall(ω)をフーリエ変換して得られる時間領域波形には、マルチモードファイバMMFの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形のフーリエ変換に相当するピークが含まれる。このため、マルチモードファイバMMFの各伝搬モードについて、(1)透過光強度スペクトルIall(ω)をフーリエ変換して得られる時間領域波形からその伝搬モードに対応するピークの波形を抽出し、(2)抽出したピークの波形を逆フーリエ変換すれば、その伝搬モードと空気中を伝搬した光との周波数領域における干渉波形が得られる。
【0048】
マルチモードファイバMMFの任意の伝搬モード(lmモードとする)について、その伝搬モードと空気中を伝搬した光との周波数領域における干渉波形を考える。この干渉波形のピーク波長間隔(周波数領域におけるピーク間隔を波長に換算したもの)Δλlm、及び、この干渉波形の中心波長(周波数領域における中心周波数を波長に換算したもの)λlmを用いると、その伝搬モードの群遅延τlmと空気中を伝搬した光の群遅延τairとの群遅延差Δτlm-airは、式(28)のように表すことができる。式(28)において、2dは2経路間の光路長差であり、LはマルチモードファイバMMFのファイバ長であり、cは自由空間中の光速(=3×108m/s)である。
【数28】
【0049】
2経路の光路長が等しい場合、すなわち、2経路間の光路長差2dが0である場合、式(29)が成り立つ。
【数29】
【0050】
各波長における群遅延差Δτlm-airを式(29)に従って算出した後、多項式によるフィッティングを行えば、群遅延差Δτlm-airを波長λの関数Δτlm-air(λ)として求めることができる。
【0051】
マルチモードファイバMMFの任意の2つの伝搬モード(lmモード及びxyモードとする)に関するモード間群遅延差DGD(τlmxy)は、lmモードに関する群遅延差Δτlm-air(λ)及びxyモードに関する群遅延差τxy-air(λ)から、式(30)に従って求めることができる。なお、モード間群遅延差DGD(τlmxy)としては、通常、高次モードの群遅延から低次モードの群遅延を引いた差を用いる。
【数30】
【0052】
また、マルチモードファイバMMFの任意の伝搬モード(lmモードとする)に関する波長分散Dlmは、群遅延τlm(λ)の微分dτlm(λ)/λである。また,局所波長域における空気中の光速は一定と見なせる。したがって、波長分散Dlmは式(31)に従って求めることができる。
【数31】
【0053】
以上のように、マルチモードファイバMMFの任意の伝搬モード(lmモードとする)について、その伝搬モードと空気中を伝搬した光との周波数領域における干渉波形から、式(29)に従って、その伝搬モードの群遅延τlmと空気中を伝搬した光の群遅延τairとの群遅延差Δτlm-air(λ)を算出することができる。そして、マルチモードファイバMMFの任意の2つの伝搬モード(lmモード及びxyモードとする)について、それら2つの伝搬モードの群遅延差τlm-air(λ),τxy-air(λ)から、式(30)に従って、モード間群遅延差DGD(τlmxy)を算出することができる。また、マルチモードファイバMMFの任意の伝搬モード(lmモードとする)について、その伝搬モードの群遅延差Δτlm-air(λ)から、式(31)に従って、波長分散Dlmを算出することができる。
【0054】
〔演算装置が実行する演算処理〕
測定システム1に含まれる演算装置13が実行する演算処理S1について、図2を参照して説明する。図2は、演算処理S1の流れを示すフローチャートである。なお、演算装置13のメモリには、透過光強度スペクトルIall(ω)が記憶されているものとする。
【0055】
演算処理S1は、図2に示すように、フーリエ変換ステップS11、フィルタリングステップS12、逆フーリエ変換ステップS13、群遅延差算出ステップS14、波長分散算出ステップS15、及びモード間群遅延差算出ステップS16を含んでいる。演算処理S1に含まれる各ステップは、例えば、演算装置13のメモリに格納されたプログラムに従って、演算装置13のプロセッサが実行する処理である。
【0056】
なお、フィルタリングステップS12、逆フーリエ変換ステップS13、群遅延差算出ステップS14、及び波長分散算出ステップS15は、対象とする伝搬モードを尽くすまで繰り返される。例えば、3つの伝搬モードを対象とする場合、フィルタリングステップS12、逆フーリエ変換ステップS13、群遅延差算出ステップS14、及び波長分散算出ステップS15は、3回繰り返される。
【0057】
フーリエ変換ステップS11は、透過光強度スペクトルIall(ω)をフーリエ変換することによって、時間領域波形を得るステップである。フーリエ変換は、例えば既存の数値計算ライブラリを用いて実現することができるので、そのアルゴリズムについての説明は割愛する。
【0058】
フィルタリングステップS12は、フーリエ変換ステップS11にて得られた時間領域波形から、対象とする伝搬モード(lmモードとする)に対応するピークの波形を抽出するステップである。lmモードに対応するピークの波形の抽出は、例えば、フーリエ変換ステップS11にて得られた時間領域波形において、lmモードに対応するピーク以外のピークをマスクすることによって実現される。
【0059】
逆フーリエ変換ステップS13は、フィルタリングステップS12にて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、lmモードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得るステップである。逆フーリエ変換は、例えば既存の数値計算ライブラリを用いて実現することができるので、そのアルゴリズムについての説明は割愛する。
【0060】
群遅延差算出ステップS14は、逆フーリエ変換ステップS13にて得られた干渉波形から、lmモードの群遅延τlmと空気中を伝搬した光の群遅延τairとの群遅延差Δτlm-air(λ)を算出するステップである。より具体的に言うと、まず、各波長について、干渉波形から、その干渉波形のピーク波長間隔Δλlm及び中心波長λlmを特定する。次に、各波長について、干渉波形のピーク波長間隔Δλlm及び中心波長λlmから、上述した式(29)に従って群遅延差Δτlm-airを算出する。次に、群遅延差Δτlm-air(λ)として、各波長についての群遅延差Δτlm-airを最良近似するλの多項式をフィッティングにより求める。
【0061】
波長分散算出ステップS15は、群遅延差算出ステップS14にて得られた各伝搬モード(lmモードとする)の群遅延差Δτlm-air(λ)から、その伝搬モードに関する波長分散Dlmを算出するステップである。より具体的に言うと、群遅延差Δτlm-air(λ)から、上述した式(31)に従って波長分散Dlmを算出する。
【0062】
モード間群遅延差算出ステップS16は、群遅延差算出ステップS14にて得られた2つの伝搬モード(lmモード及びxyモードとする)の群遅延差Δτlm-air(λ),Δτxy-air(λ)から、それらの伝搬モードに関するモード間群遅延差DGD(τlmxy)を算出するステップである。より具体的に言うと、群遅延差Δτlm-air(λ),Δτxy-air(λ)から、上述した(30)式に従ってモード間群遅延差DGD(τlmxy)を算出する。例えば、3つの伝搬モードを対象とする場合、モード間群遅延差算出ステップS16においては、1番目のモードと2番目のモードとのモード間群遅延差DGD(τ12)、1番目のモードと3番目のモードとのモード間群遅延差DGD(τ13)、及び、2番目のモードと3番目のモードとのモード間群遅延差DGD(τ23)を算出する。
【0063】
なお、マルチモードファイバMMFの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を算出する技術を実現するという課題は、群遅延差算出ステップS14を実行することにより解決される。したがって、その後のステップ、すなわち、波長分散算出ステップS15及びモード間群遅延差算出ステップS16は、省略することも可能である。ただし、波長分散算出ステップS15を実行することによって、マルチモードファイバMMFの各伝搬モードの波長分散を容易に測定することが可能になるという効果を奏する。また、モード間群遅延差算出ステップS16を実行することによって、マルチモードファイバMMFの各伝搬モード間の群遅延差を容易に測定することが可能になるという効果を奏する。また、波長分散算出ステップS15及びモード間群遅延差算出ステップS16の両方を実行することによって、各伝搬モードの波長分散及び各伝搬モードのモード間群遅延差の両方を容易に測定することが可能になるという効果を奏する。
【0064】
〔実施例〕
測定システム1の一実施例について、図3図8を参照して説明する。本実施例においては、測定対象(図1におけるマルチモードファイバMMF)として、1.3μm帯でLP01モードとLP11モードとを伝搬する2モードファイバを用いた。
【0065】
図3は、スペクトラムアナライザ12にて測定された透過光強度スペクトルIall(ω)である。図4は、図3に示す透過光強度スペクトルIall(ω)に対して、フーリエ変換ステップS11を適用することにより得られた時間領域波形である。図4に示す時間領域波形は、LP01モードに対応するピークとLP11モードに対応するピークとを含んでいることが確かめられる。なお、伝搬モードは,一般的に,高次のモードほど曲げ損失が大きいため,曲げ印加によって各ピークと伝搬モードの対応を同定することができる。
【0066】
図5の(a)は、図4に示す時間領域波形におけるLP01モードに対応するピークに対して、逆フーリエ変換ステップS13を適用することにより得られた、周波数領域における干渉波形である。図5の(b)は、図4に示す時間領域波形におけるLP11モードに対応するピークに対して、逆フーリエ変換ステップS13を適用することにより得られた、周波数領域における干渉波形である。図5の(a)及び(b)においては、それぞれ、横軸を波長として周波数領域における干渉波形を示している。
【0067】
図6の(a)は、図5の(a)に示す干渉波形に対して群遅延差算出ステップS14を適用することにより得られた、LP01モードの群遅延τ01と空気中を伝搬した光の群遅延τairとの群遅延差Δτ01-air(λ)の波長依存性を示すグラフである。図6の(b)は、図5の(b)に示す干渉波形に対して群遅延差算出ステップS14を適用することにより得られた、LP11モードの群遅延τ11と空気中を伝搬した光の群遅延τairとの群遅延差Δτ11-air(λ)の波長依存性を示すグラフである。
【0068】
図7は、波長分散算出ステップS15にて算出された、LP01モードの波長分散D01及びLP11モードの波長分散D11の波長依存性を示すグラフである。図8は、モード間群遅延差算出ステップS16にて算出された、LP01モードとLP11モードとのモード間群遅延差DGD(τ0111)の波長依存性を示すグラフである。
【0069】
以上のように、スペクトラムアナライザ12にて測定された透過光強度スペクトルIall(ω)から、マルチモードファイバMMFの各伝搬モードと波長分散D01,D11、及び、マルチモードファイバMMFの各伝搬モード間の群遅延差DGD(τ0111)の両方を算出することができた。
【0070】
〔ソフトウェアによる実現例〕
演算方法Sの各ステップは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0071】
前者の場合、演算装置13は、演算方法Sの各ステップを実行する論理回路を備えた専用計算機として実現される。後者の場合、演算装置13は、演算プログラムを記憶した少なくとも1つのメモリ(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)と、演算プログラムの命令に従って演算方法Sの各ステップを実行する少なくとも1つのプロセッサと、を備えた汎用計算機として実現される。メモリとしては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)を用いることができる。また、演算装置13は、演算プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを更に備えていてもよい。また、演算プログラムは、該演算プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して演算装置13に供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、演算プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0072】
〔付記事項1〕
上述した演算装置13は、以下のように表現することもできる。
【0073】
すなわち、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出可能である演算装置であって、前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリング手段と、前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換手段と、前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差の波長依存性を算出する群遅延差算出手段と、を備えている演算装置である。なお、前記演算装置は、前記群遅延差算出手段にて算出された各伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、その伝搬モードの波長分散の波長依存性を算出する波長分散算出手段を更に備えていてもよい。また、前記演算装置は、前記群遅延差算出手段にて算出された2つの伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、それらの伝搬モードのモード間群遅延差の波長依存性を算出するモード間群遅延差算出手段を更に備えていてもよい。
【0074】
また、上述した演算装置13は、以下のように表現することもできる。
【0075】
すなわち、マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差を、前記マルチモードファイバを伝搬した光と空気中を伝搬した光とを合波することにより得られた干渉光のスペクトルに基づいて算出可能である演算装置であって、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、前記干渉光のスペクトルをフーリエ変換するフーリエ変換ステップと、前記フーリエ変換ステップにて得られた時間領域波形から、各伝搬モードに対応するピークの波形を抽出するフィルタリングステップと、前記フィルタリングステップにて得られた波形を逆フーリエ変換することによって、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との干渉波形を得る逆フーリエ変換ステップと、前記逆フーリエ変換ステップにて得られた干渉波形から、前記マルチモードファイバの各伝搬モードと空気中を伝搬した光との群遅延差の波長依存性を算出する群遅延差算出ステップと、を実行する演算装置である。なお、前記プロセッサは、前記群遅延差算出ステップにて算出された各伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、その伝搬モードの波長分散の波長依存性を算出する波長分散算出ステップを更に実行してもよい。また、前記プロセッサは、前記群遅延差算出ステップにて算出された2つの伝搬モードの群遅延差の波長依存性から、それらの伝搬モードのモード間群遅延差の波長依存性を算出するモード間群遅延差算出ステップを更に実行してもよい。
【0076】
なお、この場合、前記演算装置は、前記プロセッサに加えて少なくとも1つのメモリを備え、前記プロセッサは、前記メモリに格納されたプログラムに従って、前記フーリエ変換ステップ、前記フィルタリングステップ、前記逆フーリエ変換ステップ、及び前記群遅延差算出ステップを実行してもよい。
【0077】
〔付記事項2〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態に含まれる各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 測定システム
11 二光束干渉計
12 スペクトラムアナライザ
13 演算装置
S 演算方法
S11 フーリエ変換ステップ
S12 フィルタリングステップ
S13 逆フーリエ変換ステップ
S14 群遅延差算出ステップ
S15 波長分散算出ステップ
S16 モード間群遅延差算出ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8