【解決手段】材料の歪み速度と流動応力との関係式により構築された材料モデルを用いて数値解析する超高歪み速度衝突材料の熱力学挙動の解析方法であって、材料モデルが歪みの進行に伴う硬化および熱軟化を考慮して構築されていると共に、流動応力が、静的負荷による歪み硬化が支配的な第1の領域における流動応力、車が衝突した程度の負荷による歪み硬化が支配的な第2の領域における流動応力、原子間の転位による歪み硬化が支配的な第3の領域における流動応力に分けられており、下式に基づいて数値解析を行う。σ=(σ
超高速コールドスプレー固相積層において変化する超高歪み速度衝突材料の歪み速度と流動応力との関係を示す数式により構築された材料モデルを用いて、超高歪み速度衝突材料の熱力学挙動を数値解析する超高歪み速度衝突材料の熱力学挙動の解析方法であって、
前記材料モデルが、歪みの進行に伴う硬化および熱軟化を考慮して構築されていると共に、
前記材料モデルにおいて、前記流動応力が、静的負荷による歪み硬化が支配的な第1の領域における流動応力、車が衝突した程度の負荷による歪み硬化が支配的な第2の領域における流動応力、原子間の転位による歪み硬化が支配的な第3の領域における流動応力に分けられており、
下式に基づいて、前記数値解析が行われることを特徴とする超高歪み速度衝突材料の熱力学挙動の解析方法。
σ=(σI+σII+σIII)×σIV
σ :流動応力
σI :第1の領域における流動応力
σII :第2の領域における流動応力
σIII:第3の領域における流動応力
σIV :熱軟化ファクター
前記材料モデルに、さらに、固相積層により発生する前記超高歪み速度衝突材料の動的再結晶を数値解析する数式が組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の超高歪み速度衝突材料の熱力学挙動の解析方法。
前記材料モデルを有限要素法に組み込んで、数値解析することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の超高歪み速度衝突材料の熱力学挙動の解析方法。
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の超高歪み速度衝突材料の熱力学挙動の解析方法を用いて数値解析した結果に基づいて、超高速コールドスプレー固相積層の条件を決定して、超高速コールドスプレー固相積層の造形を行うことを特徴とする超高速コールドスプレー固相積層造形方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明における超高歪み速度衝突材料における熱力学挙動の解析方法について説明する。
【0024】
[1]材料モデルの構築
1.流動応力と歪み速度の関係について
まず、CS−AMにおける流動応力と歪み速度の関係について説明する。前記したように、CS−AMでは、材料粉末を超音速で基材に衝突させることにより、基材と結合させて積層するが、その際に生じる流動応力σは歪み速度
【数7】
に依存することが分かっている。
【0025】
図1は、様々な金属において、塑性歪み(ε
p)および温度(T)が一定の条件下で得られた流動応力と歪み速度との普遍的な関係を模式的に示す図である。なお、
図1において、縦軸は流動応力σであり、横軸は歪み速度
【数8】
の自然対数である。
【0026】
図1に示すように、流動応力σは、最初は、歪み速度
【数9】
の自然対数の増加に伴って緩やかに直線状に増加していくが、歪み速度
【数10】
が特定の臨界値
【数11】
を超えた後は、急速に流動応力σが増加していく。
【0027】
このマクロメカニカルな現象は、転位ダイナミクスとの関係から、以下のように、説明されている。即ち、流動応力の歪み速度依存性は、一般的に、熱活性化のメカニズムによって制御されるが、歪み速度が臨界値を超えると、原料粒子の結晶格子内の電子同士の相互作用による転位移動に対する抗力が、流動に伴う転位に対して無視できない大きさとなるため、
図1に示すように、流動応力の急速な増加を招いてしまう。
【0028】
このため、CS−AMにおいては、熱活性化と転位抗力メカニズムの双方について、歪み速度との関係を考慮して、材料モデルを構築する必要がある。
【0029】
図2は、上記したマクロメカニカルな現象と、転位ダイナミクスについてのミクロメカニカルな現象との関係に基づいて、流動応力と歪み速度の関係をより詳細に示す図である。
図2に示すように、流動応力σは、歪み速度
【数12】
と、歪み速度
【数13】
の2箇所でその傾斜が変化しており、それぞれを第一臨界点、第二臨界点とすることにより、RegionI〜IIIの3つの領域に分けることができる。なお、
図2において、σ
sは、RegionIにおける流動応力、σ
crは流動応力の臨界値を示しており、積層材の材質などに基づいて決定された値である。
【0030】
具体的に、RegionIは、静的負荷による歪み硬化のみが考慮される第一臨界点での歪み速度(10
−3s
−1以下)の準静的領域(第1の領域)(以下、「歪み硬化領域」ともいう)である。そして、RegionIIは、車が衝突した程度の負荷による歪み速度硬化(熱活性化効果)が考慮される第二臨界点の歪み速度(10
3s
−1〜10
4s
−1)までの領域(第2の領域)(以下、「歪み速度硬化領域」ともいう)であり、主として、ミクロ組織の転位による動的歪み速度の硬化に支配される領域である。また、RegionIIIは、超高歪み速度硬化(転位抗力効果)が考慮される第二臨界点の歪み速度(10
3s
−1〜10
4s
−1以上)の領域(第3の領域)(以下、「超高歪み速度硬化領域」ともいう)であり、原子間の転位に支配される領域である。
【0031】
2.材料モデル
次に、上記した流動応力と歪み速度の関係を数値解析するための材料モデル(数学モデル)について説明する。
【0032】
(1)従来の材料モデル
CSにおける材料モデルとしては、前記したように、これまで、JCモデルおよびTMモデルが提案されている。
【0033】
JCモデルは、下式によって示される材料モデルであり、歪み速度が10
3s
−1以下の領域において成立することが分かっている。
【0035】
一方、TMモデルは、下式によって示される材料モデルであり、歪み速度が10
5s
−1までの領域において適用可能であることが分かっている。
【0037】
しかしながら、金属粒子のCSにおいて、その歪み速度は、10
8〜10
9s
−1にも達するため、これらの材料モデルでは十分とは言えず、高い精度で数値解析することができない。
【0038】
(2)本発明の材料モデル
そこで、本発明者は、歪み速度10
8〜10
9s
−1においても適用可能な材料モデルについて、鋭意、実験と検討を行い、その結果、本発明の材料モデル(以下、「MWモデル」と称する)であれば、10
8〜10
9s
−1と大きな歪み速度の金属粒子のCSにおいても高い精度での数値解析が可能であることを見出した。
【0039】
具体的には、RegionIIIにおける積層材の硬化が急速に進んで流動応力が急速に増大する一方で、発熱に伴い積層材が軟化して流動応力が低下する現象を考慮して、下式に示すように、歪みの進行に伴う硬化(歪み硬化)と熱軟化の両方の影響を式に組み込むことにより、流動応力と歪み速度との関係を正確に把握して、高い精度での数値解析を可能とした。
【0041】
上記した式は、σ
I〜σ
IVの4つのパラメーターとして、以下のように記すこともでき、以下、各パラメーターについて、詳細に説明する。
σ=(σ
I+σ
II+σ
III)×σ
IV
【0042】
(a)σ
I
σ
Iは、RegionIにおける歪み硬化を表すパラメーターであり、準静的な条件下での引張り試験または圧縮試験によって決定することができ、下式のように表すことができる。
【0044】
ここで、σ
s(ε
p)は塑性歪みε
pに対する流動応力、σ
y0は初期降伏応力である。そして、A、nは、フィッティングパラメーターとして設けられた強度係数と指数係数である。
【0045】
(b)σ
II
σ
IIは、RegionIIにおける歪み速度硬化の効果を表すパラメーターであり、σ
Iからの増分として下式のように示すことができる。
【0047】
ここでは、通常の範囲における歪み速度硬化に関するパラメーターが、α、β、σ
crの3つだけとなることが示されているが、これは、特定の金属グループに限定されるものではない。
【0048】
(c)σ
III
σ
IIIは、RegionIIIにおける超高歪み速度硬化を表すパラメーターであり、σ
Iおよびσ
IIの和からのさらなる増分として表される。様々な金属に対する実験の結果より、流動応力の歪み速度の自然対数に対する依存性は、支配的なメカニズムが、熱活性化メカニズム(RegionII)から転位によるメカニズム(RegionIII)にかけて変化するにつれて、急激に変化する(但し、対数系の線形を保ったまま)ことが分かっている。
【0049】
このため、σ
IIIは、下式のように表すことができる。
【数19】
ここで、
【数20】
は、超高歪み速度硬化の開始を示す基準歪み速度であり、Bは、超高歪み速度硬化を制御するフィッティングパラメーターである。
【0050】
(d)σ
IV
σ
IVは、温度の影響を考慮して、熱軟化ファクターf(T)として、設けられており、σ
I〜σ
IIIの和と掛け算することにより、流動応力σを求めることができる。
【0051】
ここで、f(T)は、具体的には、f(T)=σ(T)/σ(T
R)で表すことができる。なお、Tは変数としての温度、T
Rは室温(25℃)を示し、また、σ(T)、σ(T
R)はそれぞれの温度T、T
Rにおける流動応力を示す。
【0052】
転位理論に従えば、金属の流動応力は、温度の上昇に伴って減少することが知られている。そして、温度の上昇は、原子の熱振動の促進や、転位密度の低減を招くため、転位に際しては、巨視的な流動応力とも関係している駆動力を減少させる必要がある。
【0053】
特に、温度Tが室温T
Rから融点T
mに向かって上昇することに伴って、殆どの金属の流動応力は、緩やかに低下した後、急激に低下し、最終的には一定の値に平坦化される。
【0054】
そして、上式は、T=T
Rのときにはf=1となり、T=T
mのときにはf=0となることを示している。
【0055】
これらの点を考慮したとき、上記したf(T)として、下式に示す古典的な成長曲線(シグモイド関数)が導かれる。
【0056】
【数21】
なお、Ta、bは、それぞれ、熱軟化についてのフィッティングパラメーターである。
【0057】
この式によれば、f(T)は1と0の間の値をとるが、T=T
mでは、0には接近するものの0にはならない。これは、流動応力0であると有限要素法(FEM)においてエラーとなることを考えれば、好ましいことということができる。
【0058】
図4は、上式に基づいて作成されたTとf(T)との関係を示す図であり、熱軟化を制御する際、Ta、bの変化により、f(T)がどのように変化するかを説明する図である。
図4より、Taの増減はカーブの勾配が最大になる温度を左右し、bの増減は勾配の大きさを反映していることが分かる。
【0059】
3.動的再結晶について
次に、CS結合における材料粉末の動的再結晶について説明する。
【0060】
超音速で基材と衝突した際に発生する材料粉末の著しい変形は、容易に動的再結晶化を招いて結晶を微細化させる恐れがあり、これがCS結合を生じる原因と推測される。
【0061】
そこで、本発明者は、動的再結晶化によって引き起こされる粒径の変化を説明する下記の理論的方程式を、上記MWモデルに組み込んだ。
【0062】
【数22】
ここで、Dは過渡段階積層途中(過渡段階)における結晶粒のサイズ、D
0は元の結晶粒のサイズ、D
fは最終的に再結晶化された後の結晶粒のサイズである。そして、εは過渡段階における歪み(過渡歪み)、ε
rは臨界歪みである。また、uは動的再結晶における結晶率をコントロールするパラメーターである。
【0063】
そして、これらのパラメーターの内、D
f、ε
r、uは、歪み速度
【数23】
および温度Tに依存しているため、それぞれ、下式のように表すことができる。
【0065】
なお、上記各式において、C
Z、m、ε
i(i=0,1,2,3)およびu
j(j=1,2,3,4)は粒子サイズの変化を予測するために設けられたフィッティングパラメーターであり、Zは格子の自己拡散の活性化エネルギーQおよびガス定数Rを用いて、以下のように定義されたZener−Hollomonパラメーターである。
【数27】
【0066】
図5は、上記した再結晶化における結晶粒のサイズの微細化のMWモデルへの組み込みを説明する図である。
図5より、上段に示すMWモデルによるマクロメカニズムの解析後、下段に進むことにより、サイズが大きな結晶粒同士が粒界を形成していたものが、動的再結晶によりサイズが小さな微結晶となり、粒界を形成することなく合体して、一体的に積層されることが分かる。
【0067】
4.フィッティングパラメーターの決定
本発明において、上記したMWモデルにおけるフィッティングパラメーターの各々は、
図6に示す手順に従って、具体的に決定することができる。
【0068】
まず、室温下で得られた準静的な流動応力−歪み曲線から、歪み硬化の領域(RegionI)におけるフィッティングパラメーターσ
y0、A、nを決定することができる。
【0069】
次に、異なる塑性歪みと室温の下で得られた様々な流動応力−歪み速度(10
3〜10
4s
−1)曲線から、通常の範囲の歪み速度硬化の領域(RegionII)におけるフィッティングパラメーターα、β、σ
crを決定することができる。なお、これらのフィッティングパラメーターは、金属グループとして区分けすることができ、各グループでは同じ値を使用することができる。
【0070】
次に、室温下で、split Hopkinson pressure bar techniqueを用いて得られた流動応力−歪み速度(10
4〜10
9s
−1)曲線から、超高速歪み速度硬化の領域(RegionIII)におけるフィッティングパラメーターBを決定することができる。
【0071】
次に、流動応力−温度曲線から、熱軟化に関するフィッティングパラメーターT
a、bを決定することができる。
【0072】
最後に、動的再結晶化に関するフィッティングパラメーターとして、異なる塑性歪みεおよび温度Tで得られた2つの曲線、すなわち、流動応力−塑性歪み曲線および粒子サイズ−歪み曲線のセットから、C
Z、m、ε
i、u
jを決定することができる。
【0073】
5.MWモデルの有用性について
以上述べてきたように、各フィッティングパラメーターを適切に設定して、σ
I〜σ
IVを組み合わせることにより、RegionI〜RegionIIIのすべての領域における流動応力を解析することが可能となるため、
【数28】
で表される材料モデル(MWモデル)を、動的再結晶化についても考慮して適用することで、流動応力と歪み速度との関係を正確に把握して、高い精度での数値解析が可能となる。
【0074】
即ち、CSにおける積層粒子の初期速度や初期温度などの積層条件の設定に合わせて、積層材の塑性変形の状況、積層材と基材との結合の良否などを正確にシミュレーションすることができるため、積層条件の最適化を可能にして、高品質な超高速コールドスプレー固相積層造形を行うことができる。
【0075】
[2]数値解析について
前記した通り、CSにおいて、固相積層の結合は、積層粒子の動的再結晶化による微細化と関係している。
【0076】
このため、CSにおいては、金属粒子の初期速度が最も重要な条件であり、その他、考慮すべき点として、微粒子の衝突角度、イニシャル温度、形状・サイズ、表面酸化物の有無、基材の特性などを挙げることができる。
【0077】
即ち、金属粒子の初期速度が遅い場合には、衝突後に結合せず、リバウンドしてしまうため、結合を起こさせることができる速度(臨界速度)を予め知ることが最重要である。
【0078】
この臨界速度は、金属粒子の種類によって異なっており、初期温度にも依存することが分かっている。このため、金属粒子の臨界初期速度と初期温度を、MWモデルを用いた数値解析により予測することが、CS技術において重要となる。
【0079】
この数値解析において、好ましい手法として、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた解析方法を挙げることができる。即ち、MWモデルは、汎用のFEM解析ソフトにおけるユーザー定義のサブルーティンにMWモデルを組み込むことが容易であるため、好ましい。
【0080】
具体的には、有限要素法を用いることにより、衝突材料の歪みの発生状況および温度を衝突材料の部分毎に局所的に評価することができ、また、衝突時における材料粒子の噴出(ジェッティング)の発生状況を予測することができる。このため、臨界速度を適切に特定して、最適な積層条件を設定することにより、衝突後の結晶粒径の分布や結合の成否を正確に予測することができる。
【0081】
[3]その場ピーニングとの併用について
次に、MWモデルのその場ピーニングを伴うCSへの適用、即ち、CSとその場ピーニングとの併用について説明する。その場ピーニングは、ショットピーニング微粒子を用いて、積層と同時にピーニングを行う手法であり、CSと並行して行うことにより、積層密度の向上や、表面圧縮残留応力の生成を図ることができる。
【0082】
図7は、その場ピーニングを伴うCSを説明する図である。
図7より、堆積用微粒子よりも粒径が大きいショットピーニング微粒子を用いてその場ピーニングすることにより、ショットピーニング微粒子が、固相積層の表面から跳ね返されるだけではなく、堆積された微粒子を固相積層の表面から押し込んでいることが分かる。
【0083】
図8は、このとき得られた積層材の積層界面近傍を示すEBSD(Electron Back Scatter Diffraction:電子線後方散乱)画像である。
図8より、その場ピーニングを伴うことにより、結晶粒が超微細化されて、基材に押し込まれていることが分かる。この結果、上記したように、積層密度の向上や、表面圧縮残留応力の生成を図ることができる。
【0084】
このその場ピーニングを伴うCSにおいても、上記したMWモデルに基づく数値解析を適用することができ、最適な積層条件を、実験での決定よりも短時間、かつ正確に行うことができる。
【0085】
図9は、固相積層の数値解析結果を模式的に示す図であり、(a)はその場ピーニングを伴わない固相積層の数値解析結果、(b)はその場ピーニングを伴う固相積層の数値解析結果である。
【0086】
図9(a)より、その場ピーニングを伴わない固相積層の場合には、単体金属粉末が十分に微粒子化されないまま固相積層変形して結合されていることが分かる。一方、
図9(b)より、その場ピーニングを伴う固相積層の場合には、積層金属粉末が十分に微粒子化されて積層されると共に、基材に押し込まれていることが分かる。これにより、基材側に引張応力、堆積微粒子側に圧縮応力が発生し、疲労強度が上昇することが分かる。
【0087】
[4]MWモデルと他の材料モデルとの比較
上記した各内容を纏めて、MWモデルを用いる数値解析技術と、従来のJCモデル、TMモデルを用いる数値解析技術との対比として、表1に示す。
【0089】
[5]本発明についてのまとめ
上記各記載に基づけば、本発明は、以下(1)〜(4)に記載の発明と捉えることができる。
【0090】
(1)コールドスプレー固相積層に利用されている超音速衝突の金属粒子における、超大塑性変形、超高ひずみ速度および温度上昇を考慮した相当流動応力とひずみ、並びにひずみ速度の関係を記述する高精度なMWモデルを開発し、MWモデルに利用する材料特性の諸パラメーターを精度高く同定することを可能とする発明である。
【0091】
(2)MWモデルを用いる数値解析技術を構築し、コールドスプレー固相積層の金属粒子における塑性ひずみ、ひずみ速度、温度上昇、応力を精度高く計算することを可能とする発明である。
【0092】
さらに、金属ジェット現象を再現することにより、実験の代わりに固相結合に必要なコールドスプレーの施工条件(初期衝突速度と初期温度)を決定することを可能とする発明である。
【0093】
(3)MWモデルおよび数値解析技術により得られたコールドスプレー固相積層の金属粒子における塑性ひずみ、ひずみ速度、温度上昇、応力に加えて、一般的な動的再結晶の数式モデルと統合して、コールドスプレー固相結合の結晶粒径を予測することを可能とする発明である。
【0094】
(4)コールドスプレー固相積層の金属粒子とその場ピーニング用の金属粒子を混合した数値解析技術を開発し、積層粒子における変形状態、結晶粒の微細化現象および積層表面に圧縮残留の生成を予測する技術を開発した発明である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。
【0096】
[1]流動応力の解析と検証
1.検証用サンプルの作製
最初に、純銅材を用いてCSを行い、MWモデルの精度検証用サンプルを作製した。ここで、MWモデルの精度を検証するためには、理想的には、1個のCu粒子を堆積させて積層させる必要があるが、実際には難しいため、複数のCu粒子をCu基材上に積層させた。
【0097】
具体的には、安川電機社製のCS装置PS−1000を用いて、Tianjiu Metal Production社製のCu基材(30mm×20mm×5mm、鏡面研磨処理済、純度99%超)上に、BGRIMM Advanced Materials Science & Technology社製のCu粒子(平均粒径36μm、純度99%超)を、800mms
−1の高速走査速度でシングルパスの下、積層させてCSサンプルを作製した。
【0098】
このとき、CSのパラメーターは、Cu粒子の速度をTECNAR Automation社製の飛行粒子解析機DPV2000を用いて、平均衝突速度が約500ms
−1となるように設定した。そして、Cu粒子の温度は、流体力学シミュレーションから約200℃に設定し、Cu基材の温度は25℃とした。
【0099】
図10は、(a)元のCu粒子の微細形態を示す電子顕微鏡写真、および(b)作製されたCSサンプルの表面状態を示す電子顕微鏡写真である。なお、電子顕微鏡写真の撮影は、電子線後方散乱(EBSD:Electron BackScatter Diffraction)システムを備えた日立製作所社製の高密度焦点式イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)/走査型電子顕微鏡装置(FE−SEM:Field Emission−Scanning Electron Microscope)を用いて行った。
【0100】
図10(a)より、元のCu粒子は、良好な真球度を備えていることが分かる。
【0101】
そして、
図10(b)より、1個のCu粒子を破線に沿って切断して、その断面を観察した場合(上部挿入図参照)、堆積厚みが正規分布して(右挿入図参照)、シングルパス堆積物の外縁にあることが分かる。
【0102】
2.MWモデルに基づく有限要素モデルの構築
次に、作製されたCSサンプルについて、有限要素法(FEM)を用いて解析するために、MWモデルに基づく有限要素モデル(FEモデル)を構築した。
【0103】
具体的には、市販のFEMソフトウエアLS−DYNA(JSOL販売)におけるユーザー定義のサブルーティンにMWモデルを組み込むことにより、FEモデルを作製した。
【0104】
図11は、上記したCSサンプルにおいて、1個のCu粒子がCu基材に衝突するときのFEモデルを示す図である。前記したように、このとき、Cu粒子の平均衝突速度は500m
s−1、温度は200℃とし、Cu基材の温度は25℃とした。
【0105】
なお、計算コストの低減化を図るために、Cu基材を、直径および高さがCu粒子の直径の4倍の円盤にモデル化した。そして、Cu粒子、Cu基材は、低減積分および標準粘性のアワーグラス制御を備えた8節六面体の要素とした。また、シミュレーションの結果において、Cu粒子とCu基材との比較ができるように、Cu粒子については1μmの均一なメッシュとし、Cu基材については衝突する領域の近傍のCu粒子と同じメッシュサイズとした。さらに、X方向およびY方向へのCu基材外表面の自由度は、実際の巨視的なサイズ位置に固定し、Z方向への底表面の自由度は固定した。
【0106】
ここで、衝突のプロセスは、ナノ秒スケールの短時間であるため、断熱プロセスと考えることができ、以下のように表現することができる。
【0107】
【数29】
ここで、ΔTは上昇温度、ε
pは塑性歪み、ρは密度、cは比熱であり、ηは塑性歪みの仕事の熱への変換係数(=0.9)である。
【0108】
このとき、衝突角度について注意する必要がある。即ち、シングルパス堆積中におけるCSガンの走査速度は800mms
−1にも達するが、そのときのCSガンの傾きの変化は、
図12(a)に示すように、僅かに0.09°であり無視することができる。しかし、Cu粒子は、通常CSガンから発散して発射されるため、シングルパス堆積したときの厚み分布が正規分布となり、外縁におけるCu粒子の衝突角度は、
図12(b)に示すように、約8°となる。なお、
図12は、このCu粒子の衝突角度を説明する図である。
【0109】
この点を考慮して、
図11に示したFEモデルにおいては、
図12(b)に示すように、Cu粒子の衝突角度を、Cu基材の法線に対して、意図的に、8°傾けている。
【0110】
3.JCモデル、TMモデル、MWモデルにおける流動応力の比較
次に、JCモデル、TMモデル、MWモデルにおける流動応力について、実験の結果と比較した。
【0111】
ここで、JCモデルは、前記したように、以下の式で表すことができる。
【数30】
【0112】
そして、TMモデルは、前記したように、以下の式で表すことができる。
【数31】
【0113】
また、MWモデルは、前記したように、以下の式で表すことができる。
【数32】
【0114】
純銅の上記各式におけるパラメーターを表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
具体的には、以下に示す3つの実験による結果と、各モデルから得られた曲線とを比較した。
【0117】
(a)第1の実験
歪み速度を10
−3s
−1にして静的引張試験を行ったときの相当流動応力と相当塑性歪みとの関係を求めた。
【0118】
(b)第2の実験
異なる歪み速度を設定して動的引張試験を行い、各ひずみ速度における相当流動応力と塑性ひずみのデータを取得した。そして、これらのデータから塑性歪みが10%になったときの相当歪み速度と相当流動応力との関係を求めた。
【0119】
(c)第3の実験
異なる温度を設定して静的引張試験を行い、各設定温度における相当流動応力と塑性ひずみのデータを取得した。そして、これらのデータから相当流動応力と温度との関係を求めた。
【0120】
結果を、
図13に示す。なお、(a)が第1の実験、(b)が第2の実験、(c)が第3の実験結果である。
【0121】
図13(a)より、MWモデルとTMモデルは、実験結果と良い一致が見られ、精度が高いことが分かる。これに対して、JCモデルでは、実験結果とのずれがあり、精度が高くないことが分かる。
【0122】
図13(b)より、JCモデルでは、特に高歪み速度において、実験結果とのずれが非常に大きくなっていることが分かる。一方、MWモデルおよびTMモデルでは、歪み速度10
5s
−1近くまでは、実験結果と良い一致が見られ、精度が高いことが分かる。しかし、歪み速度10
5s
−1を超える測定範囲外の超高歪み速度の場合には、MWモデルとTMモデルの間に、明確な優位差が出ている。
【0123】
図13(c)より、MWモデルでは、実験結果と良い一致が見られ、精度が高いことが分かる。一方、JCモデルでは、実験結果とのずれが大きく、かなり精度が低いことが分かる。なお、TMモデルは、温度による熱軟化を考慮に入れていないモデルであるため、記載していない。
【0124】
[2]実CSサンプルへのMWモデルの適用について
上記の結果より、MWモデルの有用性が確認できたため、次に、MWモデルの実CSサンプルへの適用について、塑性変形挙動の予測の観点から、JCモデル、TMモデルと併せて検討した。
【0125】
まず、Cu粒子IとCu粒子IIの2つのCu粒子を用いて、CSを行い、CSサンプルI、CSサンプルIIを得た後、作製された各CSサンプルのCu粒子をFIBを用いてカットし、その断面における変形をEBSDにより観察した。このとき、金属ではCS中の変形は非圧縮性であるため、Cu粒子IおよびCu粒子IIの元の直径は、変形した断面の大きさから、それぞれ、36μm、42μmと計算した。
【0126】
併せて、MWモデル、JCモデル、TMモデルによりシミュレートすることにより、各CSサンプルにおける変形を予測した。
【0127】
図14に、CSサンプルIにおける観察結果および各モデルによる予測結果を示す。また、
図15に、CSサンプルIIにおける観察結果および各モデルによる予測結果を示す。なお、各図において、EPSは相当塑性歪み(Effective Plastic Strain)の程度を示す指標であり、破線はそれぞれの材料モデルで予測されたCu粒子の外縁を示している。
【0128】
図14(a)および
図14(d)、
図15(a)および
図15(d)より、MWモデルのシミュレーションと実験結果とはよく一致していることが分かる。これに対して、JCモデルの場合には、
図14(b)、
図15(b)に示すように、実際の変形よりも大きな変形が表れると共に、境界エッジ部に大きな噴射が見られ、超高歪み速度硬化の効果が考慮されていないことが分かる。そして、TMモデルの場合には、
図14(c)、
図15(c)に示すように、熱軟化の影響が考慮されず、実際の変形よりも大きな変形が表れていることが分かる。
【0129】
これらのことは、
図14(a)〜
図14(d)、
図15(a)〜
図15(d)を纏めて示した
図14(e)、
図15(e)において、より明確に示されている。
【0130】
そして、
図14(a)および
図15(a)における挿入図に示されている噴射(ジェッティング現象)が、
図14(d)、
図15(d)にも示されており、MWモデルの有用性が確認できた。
【0131】
[3]MWモデルにおける歪み、歪み速度および温度の影響の評価
上記より、MWモデルによれば、CS中における変形挙動を精度高く予測できることが分かったが、そのメカニズムは不明のままである。そこで、次に、4つのMWモデルを比較することにより、歪み硬化、通常の範囲の歪み速度硬化、超高歪み速度硬化、および熱軟化のそれぞれ独立した効果について、
図16に示す各モデルにより検討した。なお、ここでは、上記したCu粒子Iについて検討を行った。
【0132】
具体的には、
図14(d)に基づいて、(a)歪み硬化の効果を考慮しないモデル1、(b)通常の範囲の歪み速度硬化の効果を考慮しないモデル2、(c)超高歪み速度硬化の効果を考慮しないモデル3、(d)熱軟化の効果を考慮しないモデル4のそれぞれからシミュレートした全体的な変形が、
図16に示されている。
【0133】
図16(a)、
図16(b)より、モデル1とモデル2のように、歪み硬化や通常の範囲の歪み速度硬化がない場合には、ジェッティングがわずかに大きく予測されることを除いて、
図14(d)と大きく異ならず、歪み硬化と通常の範囲の歪み速度硬化は、著しい塑性変形に対して殆ど影響しないことが分かる。
【0134】
そして、
図16(c)より、モデル3の場合には、変形と基材への浸透深度が大きく、
図14(d)とは大きく異なっており、
図14(b)に示したJCモデルと同様に、境界エッジ部での大きな噴射が予測されることが分かる。これにより、超高歪み速度硬化がCSにおける変形挙動において、重要な役割を果たすことが確認できた。
【0135】
また、
図16(d)より、熱軟化を考慮しない場合には、ジェッティングが生じないことが分かり、熱軟化が主としてジェッティングの発生を制御していることが確認できた。
【0136】
[4]MWモデルにおける結晶微細化の予測
前記したように、CSにおいては、著しい変形によって動的再結晶が、必然的に発生する。このため、MWモデルを用いることにより、Cu粒子の動的再結晶化によって引き起こされる粒径の変化を予測することができる。
【0137】
具体的には、独立したCu粒子I、Cu粒子IIにおいて、変形したCu粒子の粒径は、各CSサンプルにおける粒径分布から、約5μm、および約10μmとなることが分かり、この結果をMWモデルでシミュレートされた粒径の変化と比較した。
【0138】
図17にCu粒子Iにおける粒度分布を、また、
図18にCu粒子IIにおける粒度分布を示す。なお、
図17(a)、
図18(a)はEBSDによって観測された実験結果であり、
図17(b)、
図18(b)はMWモデルでシミュレートされた結果である。
【0139】
図17(a)、
図18(a)の左図より、Cu粒子の微細化は、Cu粒子の全体ではなく、Cu粒子とCu基材との界面付近でのみ生じていることが分かるが、
図17(b)、
図18(b)の左図にも同様の現象が現れており、MWモデルでシミュレートすることにより、正確な予測が可能であることが確認できた。
【0140】
また、
図17(a)、
図18(a)の右下段に、
図17(a)、
図18(a)の左図にi、ii、iii、iv、vとラベリングされた箇所の局所拡大図を示すが、これにより、界面付近の結晶粒径分布が不均一であり、界面の中央領域では、界面の外縁領域よりも結晶粒径が大きいことが分かる。一方、
図17(b)、
図18(b)の右側に示すように、MWモデルでのシミュレートによっても、動的再結晶化により、結晶の微細化が主に界面エッジ付近で発生していることが分かり、実験結果とシミュレーションとの間に良い一致が見られることが確認できた。なお、この結果は、結晶微細化が、Cu粒子とCu基材との結合の根本原因であるか否かを判断するために重要であることを示している。
【0141】
図17(a)、
図18(a)の右上段に、Cu粒子IとCu基材との界面をSEMにより観察した結果を示す。
図17(a)においては、界面の中央付近にのみ黒い曲線が検出されており、中央部分の結合が他の領域ほどには良くないことが分かる。そして、
図17(b)の左図には、グレインの微細化の領域が基材側よりCu粒子側で遙かに大きいことも示されており、このことは、基材の上面とCu粒子の底面における結晶粒径分布を比較した
図17(b)の右側にも明確に示されている。そして、これと同じ傾向が、
図17(a)に、i、ii、iii、iv、vとラベリングされた拡大図においても観察され、これらのことから、CSにおける結晶微細化は、主に動的再結晶化によるものであって、MWモデルで正確に予測できることが確認できた。
【0142】
一方、
図18(a)においては、Cu粒子IIの粒子径がCu粒子Iよりも大きいことにより、動的再結晶後の粒子径も大きくなり、その結果、界面中心に顕著なギャップを生じていることが分かり、結晶微細化がCSの界面接合において重要な役割を果たすことが確認できた。
【0143】
上記の実験においては、基材側よりも積層Cu粒子側で結晶微細化が顕著であることが分かったが、Cu粒子の温度を200℃とCu基材の温度25℃より高く設定したことが影響している恐れがある。そこで、続いて、Cu粒子の温度をCu基材と同じ25℃に設定して、Cu粒子IについてMWモデルを用いてシミュレーションを行った。シミュレーションの結果を
図19に示す。
【0144】
図19(b)より、この場合にも、
図17(b)と同様の結果が得られており、Cu粒子の温度は、塑性変形に殆ど影響しないことが分かる。一方、粒子径が4μm以上の場合には、結晶微細化領域の大きさが、Cu基材表面とCu粒子の底面とで同程度であることが分かる。この結果から、Cu粒子の温度を高くすることで、グレインの微細化を促進し、積層材と基材との結合強度を高めることが可能であることが確認できた。
【0145】
[5]結合・積層条件の最適化
次に、金属粒子の初期速度と初期温度との関係から、結合・積層条件の最適化について検討した。
【0146】
1.第1のシミュレーション
最初に、Cu粒子Iを材料として、初期速度を350ms
−1、450ms
−1、550ms
−1、650ms
−1と変化させる一方で、初期温度を25℃、100℃、200℃、300℃と変化させたMWモデルに基づくシミュレーションに基づき、EPSの分布およびCu粒子の温度分布について評価した。なお、基材温度は25℃に固定した。
【0147】
EPSの分布についての評価結果の一例を
図20に、Cu粒子の温度分布についての評価結果の一例を
図21に示す。なお、
図20、
図21において、上段は、Cu粒子Iの初期温度を25℃に固定して初期速度を変化させたときの結果であり、下段は、初期速度を550ms
−1に固定して初期温度を変化させたときの結果である。そして、これらの図には、ジェッティングの発生状況を、右上部に併せて記載している。また、
図21に対応したCu粒子表面の評価結果を
図22に示す。
【0148】
図20〜
図22より、初期温度が25℃、初期速度が550ms
−1以上の場合、ジェッティングが発生し、また、適切なEPS分布、温度分布となっており、高い結合強度を期待できることが確認できた。
【0149】
2.第2のシミュレーション
次に、粒子径50μm、初期温度25℃のCu粒子を用いて、初期速度を変化させたときのEPS分布(衝突後35ns経過後)を観察した。
【0150】
結果を
図23に示す。また、カット断面において塑性変形が発生した部分の左端からの距離とEPSとの関係を
図24に示し、塑性変形が発生した部分の左端からの距離と基材の界面温度との関係を
図25に示す。
【0151】
図23より、初期速度が大きくなるに伴って、Cu粒子の基材中に押し込まれる距離(深さ)が大きくなっていき、結合強度が高くなることが分かる。なお、図にはないが、初期速度を1000ms
−1とした場合には、Cu粒子が基材を貫通してしまい、結合が形成されなかった。
【0152】
このCu粒子の基材中に押し込まれる距離に基づいて、下式からCSに伴うCu粒子の圧縮比R
cを求めた。
R
c=(d
p−h
p)/d
p×100(%)
d
p:Cu粒子の初期粒径
h
p:押し込まれCu粒子の機材表面からの距離
【0153】
表3に、得られた初期速度と圧縮比の関係を示す。
【0154】
【表3】
【0155】
これらの結果より、Cu粒子の初期速度は、CSにおける基材とCu粒子との結合と関係していることが確認できた。
【0156】
3.第3のシミュレーション
次に、Cu粒子の初期速度および初期温度を変えて、MWモデルを用いたシミュレーションにより、EPSの分布およびCu粒子の温度分布について評価した。
【0157】
具体的には、Cu粒子Iの初期速度を350ms
−1、450ms
−1、550ms
−1、650ms
−1と変化させると共に、初期温度を25℃、200℃、400℃、600℃、800℃と変化させて、各条件下での数値解析を行い、Cu粒子の変形状態をシミュレートした。
【0158】
前記した
図20および
図21が、その結果を示す図である。
【0159】
図20、
図21より、ジェッティングが発生していない条件(太線で示した境界の左下側)では、固相結合積層を達成できないことが確認できた。
【0160】
このように、ジェッティングの発生は、結合状態を象徴するものと見ることができるため、
図20および
図21に基づいて、Cu粒子の変形状態とジェッティングの発生の有無を確認することにより、臨界速度(初期速度と関係)と初期温度との関係を知ることができる。
【0161】
図26は、この考えに基づいて、初期速度と初期温度とが、結合にどのように影響するかを示す図である。なお、四角の表示は固相結合積層が達成されることを表し、三角は達成できないことを表している。
【0162】
そして、この図に基づけば、1週間程度で容易に初期速度と初期温度とを適切に決定することができ、実験により決定する場合(数か月単位の時間が必要)に比べて、効率的かつ高い精度のCSが可能となる。
【0163】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。