(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-23273(P2021-23273A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】パン
(51)【国際特許分類】
A21D 2/08 20060101AFI20210125BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20210125BHJP
【FI】
A21D2/08
A21D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-147061(P2019-147061)
(22)【出願日】2019年8月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501149411
【氏名又は名称】キユーピータマゴ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植田 貴子
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG02
4B032DK05
4B032DK55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便にもちもちとした食感の良いパンを提供する。
【解決手段】プテロスチルベンを含有するパンであって、穀粉100質量部に対して、プテロスチルベンを0.05質量部以上3質量部以下含有するパン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プテロスチルベンを含有することを特徴とする、
パン。
【請求項2】
穀粉100質量部に対して、プテロスチルベンを0.05質量部以上3質量部以下含有することを特徴とする、
パン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プテロスチルベンを含有する、もちもちとした食感の良いパンに関する。
【背景技術】
【0002】
もちもちとした食感のパンは大変人気であるが、一般的には「湯種法」という手法を用いて作られる。湯種法とは、あらかじめ小麦粉に熱湯を加えて練った「湯種」を原料として用いる手法であるため、手間がかかっていた。
【0003】
これまでもパンの食感向上の方法は検討されており、例えば、少なくとも卵黄を含有したパンにおいて、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させたふっくらとしたボリュームを有するパンが記載されているが、もとめるようなもちもちとした食感にはならなかった(特許文献1)。
また、クリーム、ソース類、マヨネーズ、ドレッシングなどの乳化組成物にプテロスチルベンを用いることは知られているが(特許文献2)、パンに用いることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−104343
【特許文献2】特開2016−101122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡便にもちもちとした食感の良いパンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、パンにプテロスチルベンを含有するならば、簡便にもちもちとした食感の良いパンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)プテロスチルベンを含有することを特徴とする、パン、
(2)穀粉100質量部に対して、プテロスチルベンを0.05質量部以上3質量部以下含有することを特徴とする、パン、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、もちもちとした食感の良いパンを得ることができ、さらなるパン市場の拡大が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。また、特にことわりのない限り、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
【0010】
<本発明の特徴>
本発明は、プテロスチルベンを含有することにより、もちもちとした食感の良いパンを提供することに特徴を有する。
【0011】
<パン>
本発明のパンとは、一般的なパンと称されるものであって、後述の穀粉に食塩、イースト、水等の原料を混捏し、発酵した生地を焼成等により加熱したものであれば、特に限定されるものではない。例えば、食パン、コッペパン、クロワッサン、テーブルロール、バターロール、フランスパン、ジャムパン、アンパン、クリームパン、グラハムパン、バンズパン、ブリオッシュ、イーストドーナツ、蒸しパン等が挙げられる。
【0012】
<穀粉>
本発明のパンに用いる穀粉は、一般的にパンに用いられる穀類の粉であればいずれのものでもよく、例えば、薄力粉、強力粉、全粒粉等の小麦粉、もち米粉、うるち米粉、上新粉等の米粉、大麦粉、ライ麦粉、玄米粉、そば粉、とうもろこし粉等が挙げられる。
【0013】
<プテロスチルベン>
本発明のプテロスチルベンは、4−[(E)‐2‐(3,5−ジメトキシフェニル)ビニル]フェノール、4−[(E)‐3,5−ジメトキシスチリル]フェノール、(E)‐3,5−ジメトキ‐4’−ヒドロキシスチルベン、又は(E)−3’,5’‐ジメトキシスチルベン‐4‐オールとも称するものである。
プテロスチルベンは市販されているものを用いればよく、例えば、PteroWhiteTM90%(Sabinsa社)が知られており、Sabinsa社から商業的に得ることができる。
【0014】
<プテロスチルベンの含有量>
本発明のパンに用いるプテロスチルベンの含有量は、穀粉100部に対して、プテロスチルベンの割合が0.05部以上3部以下であるとよく、さらに0.08部以上2部以下であるとよい。前述の配合量であると、もちもちとした食感の良いパンが得られやすい。
なお、プテロスチルベンは用いる原料により純度が異なるため、その純度に従って、パンに含有したい純粋なプテロスチルベンの配合量になるよう、原料プテロスチルベンの添加量を調整すればよい。
例えば、純度50%の原料プテロスチルベンを用い、穀粉100部に対して、プテロスチルベンの割合が0.1部となるパンを製する場合、原料プテロスチルベンの添加量は、穀粉100部に対し0.2部となる。
【0015】
<パンの製造方法>
本発明のパンの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、直捏法(ストレート法)や中種法等に準じて、原料を混合し、混捏し、必要に応じて発酵し、加熱調理することで本発明のパンが得られる。また、ホームベーカリーを用いて製造しても良い。
【0016】
<他の原料>
本発明のパンには、穀類とプテロスチルベン以外の食品素材を本発明の効果が損なわれない範囲で適宜添加することができる。
具体的には、イースト、生クリーム、動植物油、ショートニング、バター又はマーガリン等の油脂類、グラニュー糖、上白糖、三温糖又は黒糖等の糖類、カルシウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウム等のミネラル類又はその塩、アスコルビン酸又はビタミンE等の酸化防止剤、食塩、香辛料、香料、イーストフード、増粘剤、乳化剤、色素等が挙げられる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0018】
[実施例1]
表1に記載の配合に従って、全ての原料をホームベーカリー(象印製)に投入し、食パンコースで焼成まで行い、実施例1のパンを調製した。
この時に用いた原料プテロスチルベンの純度は90%であり、穀粉(強力粉)100部に対するプテロスチルベンの割合は0.25質量部であった。
【0019】
[実施例2〜5、比較例1、対照]
表1の配合に変更した以外は実施例1と同様に実施例2〜5、比較例1及び対照のパンを調製した。なお、比較例1はプテロスチルベンと構造が類似しているレスベラトロールを用いた。
各サンプルの穀粉100部に対するプテロスチルベンまたは、レスベラトロール(純度96%)の割合は表1に示した通りである。
【0020】
[表1]
【0021】
<評価方法>
訓練されたパネラー5名により、実施例1〜5及び比較例1のパンを以下の評価基準に従って評価した。
【0022】
<評価基準>
〇:対照と比較して、非常にもちもちとした食感になっている。
△:対照と比較して、もちもちとした食感になっている。
×:対照と同程度の食感である。
【0023】
<結果>
表1より、プテロスチルベンを含有することで、もちもちとした食感の良いパンが得られることが分かる。また、穀粉100部に対するプテロスチルベンの割合が0.08部以上2部以下であるとパンの食感がさらに向上することが分かる(実施例1、3、4)。
一方、比較例1の、レスベラトロールを配合したパンは、対照のパンと比較して食感に差はなく、パンの風味は悪くなっていた。