【解決手段】誘電体フィルムを製造するための組成物、及び化学蒸着方法が提供される。この組成物を含む気体状試薬が、基体が中に提供された反応チャンバ内へ導入される。気体状試薬は、ここで定義された式Iに基づくケイ素化合物を含むケイ素前駆体を含む。気体状試薬の反応を誘発するため、そしてこれにより基体上にフィルムを堆積するために、反応チャンバ内の気体状試薬にエネルギーが印加される。堆積されたままのフィルムは、堆積されたままのフィルムに任意の付加的な硬化工程を適用することなしに、フィルムを意図されたように使用するのに適している。組成物を製造する方法も開示される。
前記ケイ素化合物が、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,2,6,6−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
前記付加的なエネルギーが、熱処理、紫外線(UV)処理、電子ビーム処理、及びガンマ線処理から成る群から選択された少なくとも1種である、請求項9に記載の方法。
前記ケイ素化合物が、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,2,6,6−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された少なくとも1種である、請求項13に記載の組成物。
式Iによって表される化合物が、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,2,6,6−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
前記ケイ素化合物が、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,2,6,6−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−メトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−n−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2−メチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロポキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,5,5−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2−メチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,6,6−トリメチル−2−イソ−プロピル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された少なくとも1種である、請求項17に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に記載されているのは、誘電体フィルムを製造するための化学蒸着方法であって、前記方法が、基体を反応チャンバ内へ提供し、反応チャンバ内へ気体状試薬を導入し、前記気体状試薬が下記式I、すなわち、
【化5】
の構造を有するケイ素化合物を含むケイ素前駆体を含み、
R
1は水素、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルキニル基、C
3〜C
10環式アルキル基、C
3〜C
10ヘテロ環式アルキル基、C
5〜C
10アリール基、及びC
3〜C
10ヘテロアリール基から成る群から選択され、そしてR
2は、Si原子及び酸素原子とともに4員、5員、又は6員飽和環式リングを、前記リングに結合された任意のアルキル置換基を有する状態で形成するC
2〜C
4アルキルジラジカルであり、R
3は、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルキニル基、C
3〜C
10環式アルキル基、C
3〜C
10ヘテロ環式アルキル基、C
5〜C
10アリール基、C
3〜C
10ヘテロアリール基、及びアルコキシOR
4から成る群から選択され、R
4は、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルケニル基、及び直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルキニル基、少なくとも1種の酸素源から成る群から選択され、そして、前記基体上にフィルムを堆積するために前記気体状試薬の反応を誘発するように、前記反応チャンバ内の前記気体状試薬にエネルギーを印加することを含む、誘電体フィルムを製造するための化学蒸着方法である。フィルムは、堆積されたままの状態で使用することができ、或いは、続いて熱エネルギー(アニール)、プラズマ暴露、及びUV硬化から成る群から選択された付加的なエネルギーで処理することによって、フィルムの機械的強度を増大させ、そして3.3未満の誘電率をもたらすことにより、フィルムの化学的特性を改変することもできる。
【0015】
本明細書中に記載されたケイ素化合物は独自の属性を提供する。これらの属性により、従来技術の構造形成前駆体、例えばジエトキシメチルシラン(DEMS)と比較して、誘電体フィルム内により多くの炭素含量を取り込むことが可能になるとともに、low k誘電体フィルムの機械的特性に及ぼす影響は少ない。例えば、DEMSは混合リガンドシステムは、2つのアルコキシ基と、1つのケイ素−メチル(Si−Me)と、1つのケイ素−水素化物とを含む混合リガンドシステムを有する。混合リガンドシステムは反応性部位のバランスを提供し、そして所望の誘電率を維持しながら機械的により堅牢なフィルムの形成を可能にする。ケイ素化合物の使用は、機械的強度を低下させる傾向があるケイ素−メチル基が前駆体内に存在せず、その一方で、シラサイクリック(silacyclic)リング内の炭素がOSGフィルムに炭素を提供することにより、誘電率を低下させ、且つ疎水性を植え付ける(imbue)という利点をもたらす。
【0016】
low k誘電体フィルムは有機シリカガラス(「OSG」)フィルム又は材料である。有機ケイ酸塩がlow k材料の候補である。有機ケイ素前駆体のタイプは、フィルムの構造及び組成に強い影響を与えるので、所望の誘電率に達するために所要量の炭素を添加することにより、機械的に堅固でないフィルムが製造されはしないことを保証するのに必要とされるフィルム特性を提供する前駆体を使用することが有益である。本明細書中に記載された方法及び組成物は、電気的及び機械的な特性の望ましいバランス、並びに他の有益なフィルム特性、例えば高い炭素含量を有することにより、集積プラズマ損傷抵抗を改善するlow k誘電体フィルムを生成するための手段を提供する。
【0017】
本明細書中に記載された方法及び組成物のある特定の実施態様の場合、ケイ素含有誘電材料層が、化学蒸着(CVD)法又はプラズマ支援型化学蒸着(PECVD)法、好ましくはPECVD法を介して、反応チャンバを採用して基体の少なくとも一部上に堆積される。好適な基体の一例としては、半導体材料、例えば砒化ガリウム(「GaAs」)、ケイ素、及びケイ素含有組成物、例えば結晶シリコン、ポリシリコン、非晶質シリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(「SiO
2」)、ケイ素ガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、クオーツ、ホウケイ酸塩ガラス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。他の好適な材料は、クロム、モリブデン、及び半導体、集積回路、フラット・パネル・ディスプレイ、フレキシブル・ディスプレイ用途において一般に採用される他の金属を含む。基体は付加的な層、例えばケイ素、SiO
2、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、フッ素化ケイ酸塩ガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、有機−無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質の有機及び無機材料及び複合体、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、及び酸化ゲルマニウムを有してよい。さらに別の層はゲルマノシリケート、アルミノシリケート、銅及びアルミニウム、及び拡散バリア材料、一例としてはTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWNであってもよい。
【0018】
ある特定の実施態様では、ケイ素含有誘電材料層は、ポロゲン前駆体を有しない状態でケイ素化合物を含む少なくとも1種のケイ素前駆体を含む気体状試薬を反応チャンバ内へ導入することによって、基体の少なくとも一部上に堆積される。別の実施態様では、ケイ素含有誘電材料層は、硬化添加剤を有する状態でケイ素化合物を含む少なくとも1種のケイ素前駆体を含む気体状試薬を反応チャンバ内へ導入することによって、基体の少なくとも一部上に堆積される。
【0019】
本明細書中に記載された方法及び組成物は、
下記式I、すなわち、
【化6】
を有するケイ素化合物を含み、
R
1は水素、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルキニル基、C
3〜C
10環式アルキル基、C
3〜C
10ヘテロ環式アルキル基、C
5〜C
10アリール基、及びC
3〜C
10ヘテロアリール基から成る群から選択され、そしてR
2は、Si原子及び酸素原子とともに4員、5員、又は6員飽和環式リングを、前記リングに結合された任意のアルキル置換基を有する状態で形成するC
2〜C
4アルキルジラジカルであり、R
3は、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルキニル基、C
3〜C
10環式アルキル基、C
3〜C
10ヘテロ環式アルキル基、C
5〜C
10アリール基、及びC
3〜C
10ヘテロアリール基、及びアルコキシOR
4から成る群から選択され、R
4は、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルケニル基、及び直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルキニル基から成る群から選択される。
【0020】
上記式において、そして説明全体を通して、「アルキル」という用語は、炭素原子数1〜10の直鎖状又は分枝状官能基を意味する。模範的な直鎖状アルキル基の一例としては、メチル、エチル、n−プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル基が挙げられる。模範的な分枝状アルキル基の一例としては、イソ−プロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソ−ペンチル、tert−ペンチル、イソ−ヘキシル、及びネオ−ヘキシルが挙げられる。ある特定の実施態様では、アルキル基は、これに結合された1種又は2種以上の官能基を有していてよい。このような官能基の一例としては、アルキル基に結合された、アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、イソ−プロポキシ、及びn−プロポキシ、ジアルキルアミノ基、例えばジメチルアミノ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。他の実施態様では、アルキル基は、これに結合された1種又は2種以上の官能基を有していない。アルキル基は飽和型であってよく、或いは不飽和型であってもよい。
【0021】
上記式Iにおいて、そして説明全体を通して、「環式アルキル」という用語は、炭素原子数3〜10の環式官能基を意味する。模範的な環式アルキル基の一例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0022】
上記式Iにおいて、そして説明全体を通して、「ヘテロ環式」という用語は、C
3〜C
10ヘテロ環式アルキル基、例えばエポキシ基を意味する。
【0023】
上記式Iにおいて、そして説明全体を通して、「アルケニル基」という用語は、1つ又は2つ以上の炭素−炭素二重結合を有し、炭素原子数が2〜10、又は2〜10、又は2〜6である基を意味する。
【0024】
上記式Iにおいて、そして説明全体を通して、「アルキニル基」という用語は、1つ又は2つ以上の炭素−炭素三重結合を有し、炭素原子数が3〜10、又は2〜10、又は2〜6である基を意味する。
【0025】
上記式Iにおいて、そして説明全体を通して、「アリール基」という用語は、炭素原子数5〜10、又は炭素原子数6〜10の芳香族環式官能基を意味する。模範的なアリール基の一例としては、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、及びo−キシリルが挙げられる。
【0026】
上記式Iにおいて、そして説明全体を通して、「ヘテロ−アリール基」という用語は、C
3〜C
10ヘテロ環式アリール基、1,2,3−トリアゾリル、ピロリル、及びフラニルを意味する。
【0027】
上記式Iにおいて、置換基R
2は、Si原子及び酸素原子とともに4員、5員、又は6員環式リングを形成するC
3〜C
10アルキルジラジカルである。
当業者には明らかなように、R
2は、置換型又は無置換型炭化水素鎖であり、この炭化水素鎖は、Si原子及び酸素原子とリンクすることにより、式Iのリングを形成し、このリングは4員、5員、又は6員リングである。これらの実施態様では、リング構造は飽和リング、例えば環式アルキルリングであってよい。模範的な飽和リングの一例としては、シラシクロブタン、シラシクロペンタン、及びシラシクロヘキサン、好ましくはシラシクロペンタン、又はアルキル、例えばメチル置換型のシラシクロペンタンが挙げられる。
【0028】
説明全体を通して、「アルコキシ」という用語は、少なくとも1つの炭素原子を有するアルコールから誘導された基を意味する。模範的なアルコキシ基の一例としては、メトキシ、エトキシ、イソ−プロポキシ、ノルマル−プロポキシが挙げられる。
【0029】
説明全体を通して、「酸素源」という用語は、酸素(O
2)、水素とヘリウムとの混合物、酸素とアルゴンとの混合物、二酸化炭素、一酸化炭素、及びこれらの組み合わせを含む気体を意味する。
【0030】
説明全体を通して、「誘電体フィルム」という用語は、ケイ素原子及び酸素原子を有する組成物Si
vO
wC
xH
yF
zを含むフィルムであって、v+w+x+y+z=100%であり、vは10〜35原子%であり、wは10〜65原子%であり、xは5〜40原子%であり、yは10〜50原子%であり、そしてzは0〜15原子%である、フィルムを意味する。
【0031】
式Iのある特定の実施態様では、R
1は、水素、メチル、及びエチルから成る群から選択され、R
3はメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、メトキシ、エトキシ、イソ−プロポキシ、及びn−プロポキシから成る群から選択され、そしてR
2は、Si原子及び酸素原子と4員、5員、又は6員飽和環式リングを形成する。いくつかの実施態様では、Si原子を有する4員、5員、又は6員飽和環式リングは、少なくとも1つのアルキル置換基、例えばメチル基をリング構造上に有していてよい。これらの実施態様の例は下記の通りである。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
式Iを有するケイ素化合物は、例えば触媒の存在において不飽和アルコールでアルコキシシランをヒドロシリル化し、続いて、70%以上、好ましくは80%以上の収率で、溶媒がある状態又はない状態で5員、又は6員飽和環式リングを製造するように環化を行うことによって合成することができる(例えば反応式(1)又は(2))。合成ルートの例を以下に示す。
【化8】
R
1,R
3及びR
4は、上述のものと同じであり、R
5−8は、水素、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基から成る群から選択され、好ましくは水素、又はメチルである。
【0032】
本明細書中に記載されたケイ素化合物、並びにこれらの化合物を含む方法及び組成物は、1種又は2種以上の不純物、一例としてはハロゲン化物イオン及び水をほとんど含まない。本明細書中に使用されるように、それぞれの不純物に関する「ほとんど含まない」という用語は、100万部当たり100部(ppm)以下、50ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、及び1ppm以下のそれぞれの不純物、一例としては塩化物又は水を意味する。
【0033】
本発明による式Iを有するケイ素化合物、及び本発明による式Iを有するケイ素前駆体化合物を含む組成物はハロゲン化物をほとんど含まないことが好ましい。本明細書中に使用されるように、ハロゲン化物イオン(又はハロゲン化物)、例えば塩化物(すなわち塩化物含有種、例えばHCl、又は少なくとも1つのSi−Cl結合を有するケイ素化合物)、及びフッ化物、臭化物、及びヨウ化物に関する「ほとんど含まない」という用語は、ICP−MSによって測定して5ppm(重量)未満、好ましくはICP−MSによって測定して3ppm未満、そしてより好ましくはICP−MSによって測定して1ppm未満、そして最も好ましくはICP−MSによって測定して0ppmであることを意味する。塩化物は、式Iを有するケイ素化合物のための分解触媒として作用することが知られている。最終生成物中の有意なレベルの塩化物は、ケイ素前駆体化合物を劣化させることがある。ケイ素化合物の漸次の劣化は、フィルム堆積プロセスに直接に影響を及ぼすことがあり、これにより、半導体製造業者はフィルムの仕様を満たすのが難しくなる。加えて、貯蔵寿命又は安定性が、式Iを有するケイ素化合物のより高い劣化速度によって不都合な影響を及ぼされ、これにより1〜2年の貯蔵寿命を保証することが難しくなる。従って、式Iを有するケイ素化合物の分解の加速は、可燃性且つ/又は自然発火性の気体状副生成物の形成に関連する安全上及び性能上の懸念をもたらす。式Iを有するケイ素化合物は、金属イオン、例えばLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+、Fe
2+、Fe
2+、Fe
3+、Ni
2+、Cr
3+をほとんど含まないことが好ましい。本明細書中に使用されるように、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関する「ほとんど含まない」という用語は、ICP−MSによって測定して5ppm(重量)未満、好ましくは3ppm未満、そしてより好ましくは1ppm未満、そして最も好ましくは0.1ppm未満を意味する。いくつかの実施態様では、式I又はIAを有するケイ素化合物は、金属イオン、例えばLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+、Fe
2+、Fe
2+、Fe
3+、Ni
2+、Cr
3+を含まない。本明細書中に使用されるように、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、貴金属、例えば合成中に使用されるルテニウム又は白金触媒に由来する揮発性のRu又はPt錯体に関連して、金属不純物を「含まない」という用語は、ICP−MS又は金属を測定するための他の分析方法によって測定して1ppm未満、好ましくは0.1ppm(重量)未満を意味する。式Iを有するケイ素化合物は、好ましくはまた、水又は有機シラン不純物、例えば出発材料に由来するアルコキシシラン、又は合成に由来する副生成物をほとんど含まない。水に関する「ほとんど含まない」という用語は、100ppm(重量)未満、好ましくは50ppm未満、そしてより好ましくは10ppm未満である。全ての有機シラン不純物、例えばメチルトリエトキシシラン、又はジメチルジエトキシシランの合計はガスクロマトグラフィ(GC)によって分析して、1.0wt%未満、好ましくは0.5wt%未満、そして好ましくは0.1wt%未満である。
【0034】
ハロゲン化物をほとんど含まない本発明による組成物は、(1)化学合成中に塩化物源を低減又は排除することにより、且つ/又は(2)最終精製済生成物が塩化物をほとんど含まないように、粗生成物から塩化物を除去するために効果的な精製プロセスを実施することにより、得ることができる。塩化物源は、ハロゲン化物、例えばクロロシラン、ブロモシラン、又はヨードシランを含有していない試薬を使用することにより合成中に低減し、これにより、ハロゲン化物イオンを含有する副生成物の生成を回避することができる。加えて、上述の試薬は、結果として生じる粗生成物が塩化物不純物をほとんど含まないように、塩化物不純物をほとんど含まないものであるべきである。同様に、合成はハロゲン化物を基剤とする溶媒、触媒、又は許容し得ない高レベルのハロゲン化物汚染物を含有する溶媒を使用するべきではない。粗生成物は、最終生成物が塩化物のようなハロゲン化物をほとんど含まないようにするために種々の精製方法によって処理することもできる。このような方法は従来技術分野において充分に記載されており、その一例としては蒸留、又は吸着のような精製プロセスが挙げられる。蒸留は、沸点の差を活用することにより、所望の生成物から不純物を分離するために一般に用いられる。吸着を用いて、最終生成物がハロゲン化物をほとんど含まないように、分離を生じさせるために成分の吸着特性差を利用することもできる。吸着剤、例えば商業的に利用可能なMgO−Al
2O
3ブレンドを使用して、塩化物のようなハロゲン化物を除去することができる。
【0035】
従来技術のケイ素含有ケイ素前駆体、例えばDEMSは反応チャンバ内でひとたび励起されると、ポリマー主鎖内の−O−リンケージ(例えば−Si−O−Si−又は−Si−O−C−)を有する構造を形成するように重合するのに対して、式Iを有するケイ素化合物は、主鎖内の−O−ブリッジのいくつかが−CH
2−メチレン又は−CH
2CH
2−エチレンブリッジと置換される構造を形成するように重合すると考えられる。炭素が主に末端Si−Me基の形で存在する構造形成前駆体としてDEMSを使用して堆積されたフィルムの場合、%Si−Me(%Cに直接に関連する)と、機械的強度との間に関係があり、架橋用Si−O−Si基を2つの末端Si−Me基と置換すると機械的特性が低下する。なぜならば、ネットワーク構造が破壊されるからである。ケイ素化合物の場合、環式構造がフィルム堆積プロセス中、又はSiCH
2Si又はSiCH
2CH
2Si架橋基を形成するための(堆積されたままのフィルム内に含有されるポロゲン前駆体の少なくとも一部、又はほぼ全てを除去するための)硬化プロセス中に破断されると考えられる。このように、機械的強度の観点から、フィルム内の炭素含量を増大させることにより、ネットワーク構造が破壊されないように炭素を架橋基の形で組み込むことができる。特定の理論に縛られるつもりはないが、この属性は炭素をフィルムに加え、これにより、フィルムはフィルムのエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング、及び銅表面のNH
3プラズマ処理のようなプロセスから生じる多孔質OSGフィルムの炭素欠乏に対してより高い回復力を有することが可能になる。OSGフィルム内の炭素欠乏は、フィルムの不良の誘電率、並びにフィルムエッチング及び湿式清浄化工程中のフィーチャボーイングの問題、及び/又は銅拡散バリアを堆積するときの集積上の問題を増大させるおそれがある。
【0036】
本明細書中に含まれる方法及び組成物のある特定の実施態様では、構造形成前駆体はさらに硬化添加剤を含む。硬化添加剤は機械的強度を高める。硬化添加剤の例は、テトラアルコキシシラン(Si(OR
9))であって、R
9が、直鎖状又は分枝状C
1〜C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2〜C
10アルキニル基、C
3〜C
10環式アルキル基、C
3〜C
10ヘテロ環式アルキル基、C
5〜C
10アリール基、及びC
3〜C
10ヘテロ−アリール基から成る群から選択されるもの、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)又はテトラメトキシシラン(TMOS)を含む。硬化添加剤が使用される実施態様では、構造形成部分の組成は、約30〜約95重量パーセントの、式Iを有するアルキル−アルコキシシラサイクリック化合物を含む構造形成前駆体と、約5〜約70重量パーセントの硬化添加物と、総前駆体流の約40〜約95重量パーセントのポロゲン前駆体、例えばアルファテルピネン又はシクロオクタンとを含む。
【0037】
「気体状試薬」という表現は試薬を記述するように本明細書中に使用されるときがあるものの、この表現は、反応器へ気体として直接に送達される試薬、気化された液体、昇華された固体として送達される試薬、及び/又は不活性キャリアガスによって反応器内へ搬送される試薬を包含するように意図されている。
【0038】
加えて、試薬は、区別可能な源から別個に、又は混合物として反応器内へ運ぶことができる。試薬は、好ましくはプロセス反応器への液体の送達を可能にするための適宜の弁とフィッティングとを備えた加圧可能なステンレス鋼容器を使用して、任意の数の手段によって反応器システムへ送達することができる。
【0039】
構造形成種(すなわち式Iの化合物)に加えて、堆積反応前、堆積反応中、及び/又は堆積反応後に、反応チャンバ内へ付加的な材料を導入することができる。このような材料は例えば、不活性ガス(例えばHe、Ar、N
2、Kr、Xeなど。これらはより低揮発性の前駆体のためのキャリアガスとして採用することができ、且つ/又は堆積されたままの材料の硬化を促進し、そしてより安定な最終フィルムを提供することができる)、及び反応性物質、例えば酸素含有種、例えばO
2、O
3、及びN
2O、気体状又は液体状有機物質、NH
3、H
2、CO
2、又はCOを含む。1つの特定の実施態様では、反応チャンバ内へ導入された反応混合物は、O
2、N
2O、NO、NO
2、CO
2、水、H
2O
2、オゾン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された少なくとも1種のオキシダントを含む。別の実施態様では、反応混合物はオキシダントを含まない。
【0040】
気体状試薬にエネルギーを印加することにより、気体が反応して基体上にフィルムを形成するように誘導する。このようなエネルギーは、例えばプラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、遠隔プラズマ、熱フィラメント、及びサーマル(すなわち非フィラメント)法によって提供することができる。二次rf周波数源を使用して、基体表面におけるプラズマ特性を改変することができる。好ましくは、フィルムは、プラズマ支援型化学蒸着(「PECVD」)によって形成される。
【0041】
気体状試薬のそれぞれの流量は、単一200mmウェハー当たり、10〜5000sccm、より好ましくは30〜1000sccmであることが好ましい。個々の速度は、所望の量のケイ素、炭素、及び酸素をフィルム内に提供するように選択される。必要とされる実際の流量は、ウエハーサイズ及びチャンバ形態に依存してよく、200mmウエハー又は単一ウエハーチャンバに決して限定されない。
【0042】
いくつかの実施態様では、フィルムは1分当たりの堆積速度約50ナノメートル(nm)で堆積される。
【0043】
堆積中の反応チャンバ内の圧力は約0.01〜約600torr又は約1〜15torrである。
【0044】
フィルムは厚さ0.002〜10ミクロンに堆積されるのが好ましいが、必要に応じて厚さを変えることができる。パターン化されていない表面上に堆積されるブランケットフィルムは優れた均一性を有しており、基体全体にわたる1標準偏差を超える厚さの変動は、妥当なエッジ排除を行った状態で2%未満である。例えば、基体の最も外側の5mmのエッジは均一性の統計的計算には含まれていない。
【0045】
本発明の好ましい実施態様は、当業者に知られた他の構造形成前駆体を使用して堆積された他の多孔質low k誘電体フィルムと比較して、低い誘電率、及び改善された機械的特性、熱安定性、及び(酸素、酸化性材料に対する)耐薬品性を有する薄膜材料を提供する。式Iを有するアルキル−アルコキシサイクリック化合物を含む、本明細書中に記載された構造形成前駆体は、フィルム内へより多くの炭素取り込み量を(好ましくは大部分が有機炭素、−CH
x(xは1〜3である)の形態で)提供する。この場合、フィルムを堆積するために、特定の前駆体又はネットワーク形成化学物質が使用される。ある特定の実施態様の場合、フィルム内の水素の大部分が炭素に結合される。
【0046】
本明細書中に記載された組成物及び方法に従って堆積されたlow 誘電体フィルムは、(a)約10〜約35原子%、より好ましくは約20〜約30原子%のケイ素、(b)約10〜約65原子%、より好ましくは約20〜約45原子%の酸素、(c)約10〜約50原子%、より好ましくは約15〜約40原子%の水素、(d)約5〜約40原子%、より好ましくは約10〜約45原子%の炭素を含む。フィルムは、材料特性のうちの1つ又は2つ以上を改善するために、約0.1〜約15原子%、より好ましくは約0.5〜約7.0原子%のフッ素を含有してもよい。本発明のある特定のフィルム内には、より僅かな比率の他の元素が存在していてもよい。OSG材料は、これらの誘電率が、業界内で伝統的に使用されている標準的な材料、すなわちシリカガラスの誘電率よりも低いので、low k材料であると考えられる。
【0047】
フィルムの総有孔率は、プロセス条件及び所望の最終フィルム特性に応じて0〜15%又は15%超であってよい。本発明のフィルムの密度は好ましくは2.3g/ml、或いは2.0g/ml未満又は1.8g/ml未満であることが好ましい。OSGフィルムの総有孔率には、熱硬化又はUV硬化用のプラズマ源に晒すことを含む堆積後処理によって影響を与えることができる。本発明の好ましい実施態様は、フィルム堆積中にポロゲンを添加することを含まないものの、堆積後処理、例えばUV硬化によって多孔性を誘発することができる。例えば、UV処理は、約15〜約20%に近似する、好ましくは約5〜約10%の有孔率をもたらすことができる。
【0048】
本発明のフィルムはフッ素を、無機フッ素(例えばSi−F)の形態で含有してもよい。フッ素はこれが存在するときには、約0.5〜約7原子%の量で含有されることが好ましい。
【0049】
本発明のフィルムは熱安定性であるとともに良好な耐薬品性を有する。具体的には、アニール後の好ましいフィルムの平均重量損失は、N
2下で425℃の等温において1.0wt%/hr未満である。さらに、フィルムの平均重量損失は好ましくは、空気下で425℃の等温において1.0wt%/hr未満である。
【0050】
フィルムは種々の用途に適している。フィルムは半導体基板上の堆積に特に適しており、例えば絶縁層、層間誘電体層、及び/又は金属間誘電体層としての使用に特に適している。フィルムはコンフォーマルコーティングを形成することができる。これらのフィルムによって示される機械的特性はこれらのフィルムを、Alサブトラクティブ技術、及びCuダマシン又はデュアルダマシン技術における使用に特に適したものにする。
【0051】
フィルムは化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチングと相容性を有し、そして種々の材料、例えばケイ素、SiO
2、Si
3N
4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止被膜、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質有機及び無機材料、銅及びアルミニウムのような金属、並びに拡散バリア層、一例としてはTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、WN、又はW(C)Nに付着させることができる。フィルムは、コンベンショナルな引張試験、例えばASTM D3359−95aテープ引張試験に合格するのに充分に前記材料のうちの少なくとも1種に付着させ得ることが好ましい。フィルムの認識し得る剥がれがなければ、試料は試験に合格したと考えられる。
【0052】
このように、ある特定の実施態様では、フィルムは集積回路における絶縁層、層間誘電体層、及び/又は金属間誘電体層、キャッピング層、化学機械平坦化(CMP)又はエッチングストップ層、バリア層又は付着層である。
【0053】
本明細書中に記載されたフィルムは均一に堆積された誘電体フィルムではあるものの、完全集積構造において使用されるようなフィルムは実際にはいくつかのサンドイッチ層であって、例えば、堆積されるポロゲンをほとんど又は全く含有しない薄層を底部又は上部に有するサンドイッチ層から成っていてよく、又は、より低いポロゲン前駆体流量比が存在する条件下で層を堆積してもよく、或いは、UV処理によって全てのポロゲン前駆体を除去し得るわけではないように、より高いプラズマ出力で層を堆積してもよい。これらのサンドイッチ層を利用して、二次集積化特性、例えば付着性能、エッチング選択性、又は電子移動性能を高めることができる。
【0054】
本発明は、フィルムを提供するのに特に適しており、本発明の製品は主としてフィルムとして記載されてはいるものの、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の製品は、CVDによって堆積することのできる任意の形態で、例えば被膜、多層状アセンブリ、及び必ずしも平坦ではなく又は薄くはない他のタイプの物体、並びに必ずしも集積回路内で使用されるわけではない数多くの物体の形態で提供することができる。好ましくは、基体は半導体である。
【0055】
本発明のOSG製品に加えて、本開示は、製品を製造するプロセス、製品を使用する方法、並びに製品を調製するのに有用な化合物及び組成物を含む。例えば、半導体デバイス上に集積回路を形成するプロセスが米国特許第6,583,049号に開示されている。これは参照することにより本明細書中に援用される。
【0056】
本発明の組成物はさらに、例えば硬化添加剤、及び式Iを有するケイ素前駆体、例えばDESCAPのプロセス反応器への送達を可能にするために適宜の弁とフィッティングとを備えた少なくとも1つの加圧可能な(好ましくはステンレス鋼から成る)容器を含むことができる。容器の内容物は予混合することができる。或いは、硬化添加剤及び前駆体は別個の容器内で、又は硬化添加剤と前駆体とを貯蔵中に別々に維持するための分離手段を有する単一の容器内に維持することもできる。このような容器は所望の場合にはポロゲンと前駆体とを混合する手段を有することもできる。
【0057】
仮(又は堆積されたままの)フィルムは、硬化工程、すなわち付加的なエネルギー源をフィルムに印加する工程によって、さらに処理することができる。この硬化工程は、熱アニーリング、化学的処理、現場又は遠隔プラズマ処理、光硬化(例えばUV)及び/又はマイクロ波処理を含むことができる。他の現場処理又は堆積後処理を用いて、硬度、(収縮、空気暴露、エッチング、湿式エッチングなどに対する)安定性、完全性、均一性、及び付着力のような材料特性を向上させることができる。このように、本明細書中に使用される「後処理」という用語は、ポロゲンを除去し、そして任意には材料特性を向上させるために、エネルギー(例えば、熱、プラズマ、光子、電子、マイクロ波など)、又は化学薬品でフィルムを処理することを意味する。
【0058】
後処理が行われる条件は大きく変化することができる。例えば後処理は高圧下又は真空雰囲気下で行うことができる。
【0059】
UVアニーリングは好ましい硬化方法であり、典型的には以下の条件下で行われる。
【0060】
環境は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば希薄又は濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖状又は分枝状、芳香族)など)であってよい。圧力は好ましくは約1Torr〜約1000Torr、より好ましくは大気圧である。しかしながら、熱アニーリング並びに任意の他の後処理手段のために、真空雰囲気も可能である。温度は好ましくは200〜500℃であり、そして温度傾斜率は0.1〜100deg℃/minである。総UVアニーリング時間は好ましくは0.01分〜12時間である。
【0061】
OSGフィルムの化学的処理が以下の条件下で行われる。
【0062】
フッ素化(HF、SIF
4、NF
3、F
2、COF
2、CO
2F
2など)、酸素化(H
2O
2、O
3など)、化学的乾燥、メチル化、又は最終材料の特性を向上させる他の化学的処理を用いる。このような処理に使用される化学薬品は固体、液体、気体、及び/又は超臨界状態であってよい。
【0063】
有機ケイ酸塩フィルムからポロゲンを選択的に除去するための超臨界流体後処理が下記条件下で行われる。
【0064】
流体は二酸化炭素、水、亜酸化窒素、エチレン、SF
6、及び/又は他のタイプの化学薬品であってよい。プロセスを向上させるために、超臨界流体に他の化学薬品を添加することができる。化学薬品は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば希薄又は濃縮炭化水素、水素、水素を含むプラズマなど)であってよい。温度は好ましくは周囲温度〜500℃である。化学薬品はより大きい化学種、例えば界面活性剤を含むこともできる。総暴露時間は好ましくは0.01分〜12時間である。
【0065】
不安定な基を選択的に除去し、そしてOSGフィルムに可能な化学的改変を施すためのプラズマ処理が、下記条件下で行われる。
【0066】
環境は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば希薄又は濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖状又は分枝状、芳香族)など)であってよい。プラズマ出力は好ましくは0〜5000Wである。温度は好ましくはおよそ周囲温度〜約500℃である。圧力は好ましくは10mtorr〜大気圧である。総硬化時間は好ましくは0.01分〜12時間である。
【0067】
有機ケイ酸塩フィルムの化学架橋のためのUV硬化が、典型的には下記条件下で行われる。
【0068】
環境は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば希薄又は濃縮炭化水素、水素など)であってよい。温度は好ましくはおよそ周囲温度〜約500℃である。出力は好ましくは0〜約5000Wである。波長は好ましくはIR、可視、UV、又は深UV(波長<200nm)である。総硬化時間は好ましくは0.01分〜12時間である。
【0069】
有機ケイ酸塩フィルムのマイクロ波後処理が、典型的には下記条件下で行われる。
【0070】
環境は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば希薄又は濃縮炭化水素、水素など)であってよい。温度は好ましくはおよそ周囲温度〜約500℃である。出力及び波長は多様であり、具体的な結合に合わせて調和することができる。総硬化時間は好ましくは0.01分〜12時間である。
【0071】
有機ケイ酸塩フィルムからポロゲン又は特定の化学種を選択的に除去し、且つ/又はフィルム特性を改善するための電子ビーム後処理が典型的には、以下の条件下で行われる。
【0072】
環境は真空、不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば希薄又は濃縮炭化水素、水素など)であってよい。温度は好ましくはおよそ周囲温度〜約500℃である。電子密度及びエネルギーは多様であり、具体的な結合に合わせて調和することができる。総硬化時間は好ましくは0.001分〜12時間であり、そして連続的又はパルス状であってよい。電子ビームの一般的な使用に関する付加的な指針は、刊行物、例えばChattopadhyay et al., Journal of Materials Science, 36 (2001) 4323-4330、G. Kloster et al., Proceedings of IITC, June 3-5, 2002, SF, CA,及び米国特許第6,207,555号、同第6,204,201号、及び6,132,814号において入手することができる。電子ビーム処理を利用することにより、ポロゲンを除去し、マトリックス内の結合形成プロセスを通してフィルム機械的特性を改善することができる。
【0073】
下記実施例を参照しながら本発明を詳述する。しかしながら、言うまでもなく、本発明はこれらの実施例に限定されるものとは見なされない。
【0074】
作業実施例1
2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタンであって、反応式(1)においてR
1=Me、R
3=OEt、R
4=Et、R
5=R
6=Meであるものの合成
【0075】
内部サーモカップル及び還流凝縮器を備えた3首丸底フラスコ内で50℃まで加熱された741.0g(8.6mol)の2−メチル−3−ブテン−2−オール中の1.50mLのKarstedt触媒(キシレン中2%の白金)に、付加的な漏斗を介して1155.0g(8.6mol)のジエトキシメチルシランを液滴状に添加した。発熱があり、混合物の温度は85℃まで徐々に上昇した。85℃になったら加熱を止めた。DEMSを添加しながら温度を75〜85℃に維持した。添加が完了したら、反応物を冷却して室温まで戻しておき、そして一晩にわたって攪拌させておいた。周囲圧力で蒸留し、そして蒸気温度153℃まで加熱することにより、エタノール副生成物を除去した。生成物を純度97%の1235gの量で105〜108Torrの圧力下で、93〜94℃で真空蒸留した。収率は82%であった。
【0076】
作業実施例2
2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタンであって、反応式(1)においてR
1=R
3=Me、R
4=Et、R
5=R
6=Meであるものの合成
【0077】
内部サーモカップル及び還流凝縮器を備えた3首丸底フラスコ内で50℃まで加熱された1731.0g(20.1mol)の2−メチル−3−ブテン−2−オール中の2.00mLのKarstedt触媒(キシレン中2%の白金)に、付加的な漏斗を介して2095.0g(20.1mol)のジメチルエトキシシランを液滴状に添加した。漸次的な発熱があり、混合物の温度は87℃に達した。その後、温度は60℃まで漸減した。DEMSの添加量を増大させると、温度は徐々に上昇し始め、次いで急な発熱があり、反応混合物は95℃で還流した。第2温度スパイクは第1温度スパイクよりも急激であった。
添加が完了した後、反応物を室温まで冷却し、そして一晩にわたって攪拌した。試料をGCで走行させ、生成物とジエトキシジメチルシランとの比3:1を示した。周囲圧力で蒸留を行うことにより、エタノール及び残留2−メチル−3−ブテン−2−オール出発材料を除去した。蒸気温度が107℃に達したら、除去を終了させた。生成物を周囲圧力下で純度97%の566gの量で蒸留した。収率は20%であった。
【0078】
作業実施例3
2,5,5−トリメチル−2−イソプロピル−1−オキサ−2−シラシクロペンタンであって、反応式(1)においてR
1=Me、R
3=イソプロピル、R
4=Et、R
5=R
6=Meであるものの合成
【0079】
ヘキサンとTHFとの350mL混合物中に、24.6g(186.0mmol)のイソプロピルエトキシメチルシランを含有する1首丸底フラスコに、16.0g(186.0mmol)の2−メチル−3−ブテン−2−オールを、続いて0.03mLのKarstedt触媒(キシレン中2%の白金)を添加した。反応物を一晩にわたって攪拌した。GC−MSはm/z172で所望の生成物のエビデンスを示した。
【0080】
作業実施例4(フィルム実施例)
誘電体2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタンを使用したケイ素含有誘電体フィルムのPECVD
【0081】
2つのウエハー上にフィルムを同時に堆積するApplied Materials Producer SEシステムを使用して、プラズマ支援型CVD(PECVD)を介して、300mmウエハー処理のための模範的フィルムを形成した。従って、前駆体及び気体の流量は、2つのウエハー上にフィルムを同時に堆積するのに必要な流量に相当する。それぞれのウエハー処理ステーションがそれ自体の独立したRF出力供給部を有しているので、1ウエハー当たりの規定PF出力は正確である。異なるプロセス条件下で2つの異なる化学的前駆体から得られたフィルムを堆積した。PECVDプロセスは大まかに言えば、下記の基礎工程、すなわちガス流の初期設定及び安定化、シリコンウエハー基体上へのフィルムの堆積、及び基体取り出し前のチャンバのパージ/排気を伴った。p型Siウエハー上で試験を実施した(抵抗率=8〜12オーム−cm)。
【0082】
SCI FilmTek 2000反射率計上で厚さ及び屈折率を測定した。中度抵抗率p型ウエハー(8〜12オーム−cmの範囲)上でHgプローブ技術を用いて誘電率を判定した。ナノインデンテーション技術を用いて機械的特性(弾性率及び硬度、GPa)を判定し、X線光電子分光法によって炭素含量(原子%)を判定し、そして赤外線分光法によって、SiO
Xネットワーク内部の種の組成を判定した。後者は、Si(CH
3)
1に帰属するケイ素メチル密度と、ジシリルメチレン架橋密度(SiCH
2Si/SiO
x*1E4)とを含んだ。
【0084】
下記条件下で、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン前駆体を使用して低誘電率フィルムを堆積した。総前駆体流量は2000mg/minであり、酸素流量は15sccmであり、堆積温度は390℃で維持し、RF出力は230〜500Wで変化させ、圧力は7.5torrで維持し、電極間隔は380ミルで維持し、前駆体をプロセスチャンバへ送達するために使用されるHeキャリア流量は1500sccmであった。下記表1は、3つの異なるRF出力で2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン前駆体から得られたフィルム特性を示す。堆積されたフィルムは、より高い機械強度、より高い誘電率、及びFTIRスペクトルにおける積分Si−CH
2−Siバンドと積分Si−Oバンドとの比から得られるSi−CH
2−Si/SiOx比の増大によって示される、より高いネットワーク炭素量を示した。Si−CH
2−Siのようなより高いネットワーク炭素密度を取り込むことは、続いて行われる集積工程、例えばエッチング、アッシング、平坦化、及び金属化の工程中に発生するフィルム損傷の深さを低減するので、望ましい。
【表1】
【0085】
作業実施例6(フィルム実施例)
2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタンを使用した誘電体を用いたケイ素含有誘電体フィルムのPECVD
【0086】
下記条件下で、2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン前駆体を使用して低誘電率フィルムを堆積した。総前駆体流量は2000〜2500mg/minで変化させ、酸素流量は25〜50sccmであり、堆積温度は390℃で維持し、RF出力は315〜515Wで変化させ、圧力は7.5torrで維持し、電極間隔は380ミルで維持し、前駆体をプロセスチャンバへ送達するために使用されるHeキャリア流量は1500sccmであった。下記表2は、3つの異なるプロセス条件で2,5,5−トリメチル−2−エトキシ−1−オキサ−2−シラシクロペンタン前駆体から得られたフィルム特性を示す。堆積されたフィルムは、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタンに対して同様の機械的強度及び誘電率を示しはしたが、しかし、FTIRスペクトルにおける積分Si−CH
2−Siバンドと積分Si−Oバンドとの比から得られるSi−CH
2−Si/SiOx比の減少によって示される、より低いネットワーク炭素量を示した。エトキシ基によるメチル基の置換は、フィルム内に取り込むことができるネットワーク炭素量を低減した。
【0088】
ある特定の実施態様及び実施例に関連して上に例示し説明してきたが、本発明は示された詳細に限定されるものでは決してない。むしろ、本発明の思想を逸脱することなしに、請求項と同等のものの領域及び範囲内で、詳細に種々の変更を加えてよい。例えば、本文書に幅広く示されたあらゆる範囲が、これらの領域内で、より広い範囲内にあらゆるより狭い範囲を含むことが明示的に意図される。