【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
まず、本実施例で行った電気泳動において、共通して実施した項目について説明する。
【0061】
(1)電気泳動
電気泳動装置(Mupidミニゲル泳動槽、ミューピッド社(旧アドバンス社)製)にゲルをセットした。ゲルに形成されたウェルに、DNA分子量マーカーを3〜5μL加えた。DNA分子量マーカーとしては、以下の(a)〜(d)を用いた。
(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカー(Gene Ladder Fast 2, ニッポンジーン社製)
(b)0.1〜20kbpのDNA分子量マーカー(Gene Ladder Wide 2, ニッポンジーン社製)
(c)100bp ladder(Gene Ladder 100, ニッポンジーン社製)
(d)50bp ladder(50bp ladder, TAKARA社製)
100Vで40分、室温にて電気泳動を行った。なお、電気泳動は、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, T.Maniatis, EF Fritsch, J. Sambrook, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982を参考にして常法により実施した。
【0062】
(2)ゲルの染色
エチジウムブロマイド(1μg/mL)を溶かした電気泳動用緩衝液に、電気泳動後のゲルを15分間浸漬した。その後、当該ゲルを蒸留水に5分間、静置浸漬することにより染色した。
(3)ゲルの撮影
アガロースゲル撮影装置(UVイルミネーター;Model BioDoc-It(登録商標)Imaging system, UVP社製)を用いて染色したゲルを撮影した。
【0063】
〔試験1.アガロースを含む電気泳動用ゲルにおけるゲランガムおよびグルコマンナンの影響の評価〕
<比較例1>
ゲル作製用緩衝液として、ゲル中のアガロースの濃度が0.5重量%となるようにアガロース粉末(ニッポンジーン社製)とpH8.3に調整したTAE緩衝液とを混合した。なお、TAE緩衝液は、蒸留水、40mMのトリス酢酸塩、および1mMのエチレンジアミン四酢酸を含む。混合した水溶液は、マイクロウエーブオーブンを用いて加熱した後、撹拌した。これにより、ゲル作製用溶液を得た。当該ゲル作製用溶液においてアガロース粉末が完全に溶解されていることを確認した。
【0064】
上述の電気泳動装置に付属しているサンプルコーム(8ウェル用)およびゲルプレート(幅54mm、長さ60mm、高さ10mm)をゲル作製用トレーにそれぞれセットした。当該ゲル作製用トレーに上記のゲル作製用溶液12mLを流し込み、室温で1時間放置し、固化させた。
【0065】
固化したゲルの上にTAE緩衝液を少量入れ、サンプルコームを注意深く抜き取った。このようにしてゲルを作製した。なお、電気泳動用緩衝液としては、上述のTAE緩衝液を用いた。
【0066】
<比較例2>
上述のアガロース粉末およびTAE緩衝液に加えてゲランガム水溶液を用い、ゲル中のゲランガムの濃度が0.1重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は比較例1と同様にしてゲルを得た。
【0067】
<比較例3>
ゲル中のゲランガムの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は比較例2と同様にしてゲルを得た。
【0068】
<比較例4>
上述のアガロース粉末、TAE緩衝液およびゲランガム水溶液に加えてグルコマンナン水溶液を用い、ゲル中のグルコマンナンの濃度が0.1重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は比較例1と同様にしてゲルを得た。
【0069】
<比較例5>
ゲル中のグルコマンナンの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は比較例4と同様にしてゲルを得た。
【0070】
<実施例1>
ゲル中のアガロースの濃度が0.5重量%、ゲランガムの濃度が0.1重量%、そしてグルコマンナンの濃度が0.1重量%となるように、上述したTAE緩衝液、アガロース粉末、ゲランガム水溶液、およびグルコマンナン水溶液を混合した。混合した水溶液は、マイクロウエーブオーブンを用いて加熱した後、撹拌した。これにより、ゲル作製用溶液を得た。なお、当該ゲル作製用溶液においてアガロース粉末が完全に溶解されていることを確認した。
【0071】
上述のように調整したゲル作製用溶液を用いて比較例1と同様にしてゲルを得た。
【0072】
<実施例2>
ゲル中のグルコマンナンの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にしてゲルを得た。
【0073】
<実施例3>
ゲル中のグルコマンナンの濃度が0.3重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にしてゲルを得た。
【0074】
<実施例4>
ゲル中のアガロースの濃度が0.3重量%、およびゲランガムの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は実施例2と同様にしてゲルを得た。
【0075】
<実施例5>
ゲル中のアガロースの濃度が0.4重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は実施例4と同様にしてゲルを得た。
【0076】
<実施例6>
ゲル中のアガロースの濃度が0.5重量%なるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は実施例4と同様にしてゲルを得た。
【0077】
<結果>
図1は、試験1における電気泳動の結果を示す図である。比較例1の結果をレーン1および2に示し、比較例2の結果をレーン3および4に示し、比較例3の結果をレーン5および6に示し、比較例4の結果をレーン7および8に示し、比較例5の結果をレーン9および10に示す。
【0078】
また、実施例1の結果をレーン11および12に示し、実施例2の結果をレーン13および14に示し、実施例3の結果をレーン15および16に示し、実施例4の結果をレーン17および18に示し、実施例5の結果をレーン19および20に示し、実施例6の結果をレーン21および22に示す。
【0079】
図1において、奇数レーン(1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、および21)は(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、偶数レーン(2、4、6、8、10、12、14,16、18、20および22)は(c)100bp ladderを用いた結果を示す。
【0080】
実施例1〜6の電気泳動用ゲルは、比較例1〜4の電気泳動用ゲルに比べ、0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーおよび100bp ladderどちらを用いた場合であっても分離能が向上したことがわかる。
【0081】
比較例1、比較例2および比較例3を比較すると、アガロースにゲランガムを加えることによりDNAの分離能が向上することがわかる。
【0082】
比較例1、比較例4および比較例5を比較すると、アガロースにグルコマンナンを加えることによりDNAの分離能が向上することがわかる。
【0083】
実施例1、実施例2および実施例3を比較すると、グルコマンナンの容量依存的にDNAの分離能が向上することがわかる。
【0084】
実施例4、実施例5および実施例6を比較すると、DNAの分離能は、アガロースの濃度が0.3〜0.5重量%の間で大きく変動しないことがわかる。
【0085】
〔試験2.精製寒天およびゲル作製用緩衝液による影響の評価〕
<実施例7>
アガロースの代わりに精製寒天を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は実施例6と同様にしてゲルを得た。なお、精製寒天の濃度が実施例6のアガロースの濃度と同じになるように精製寒天を加えた。
【0086】
<実施例8>
ゲル作製用緩衝液としてTAE緩衝液の代わりに、89mMのトリス、89mMのホウ酸、および2mMのエチレンジアミン四酢酸を含むpH8.3に調整されたTBE緩衝液を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例6と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としてもTAE緩衝液の代わりにTBE緩衝液を用いた。
【0087】
<結果>
図2は、試験2における電気泳動の結果を示す図である。実施例6の結果をレーン1および2に示し、実施例7の結果をレーン3および4に示し、実施例8の結果をレーン5および6に示す。
【0088】
図2において、奇数レーン(1、3、および5)は(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、偶数レーン(2、4、および6)は(c)100bp ladderを用いた結果を示す。
【0089】
実施例6および実施例7を比較すると、アガロースとして精製寒天を用いた場合であっても良好なDNAの分離能を有することがわかる。
【0090】
実施例6および8を比較すると、ゲル作製用緩衝液としてTBE緩衝液を用いた場合であってもTAE緩衝液を用いた場合と同様に良好なDNAの分離能を有することがわかる。
【0091】
〔試験3.アガロースを含まない電気泳動用ゲルの評価〕
<実施例9>
ゲル作製用緩衝液として、50mMのトリス、384mMのグリシン、8mMの硫酸マグネシウムおよび16.7mMの塩化ナトリウムを含むpH8.3に調整されたTGMN緩衝液を用い、かつアガロースを用いずゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例4と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としてもTGMN緩衝液を用いた。
【0092】
<結果>
図3は、試験3における電気泳動の結果を示す図である。実施例9の結果をレーン1〜4に示し、実施例2の結果をレーン5および6に示す。
【0093】
図3において、1レーンは(b)0.1〜20kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、2および5レーンは(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、3および6レーンは(c)100bp ladderを用いた結果を示し、4レーンは(d)50bp ladderを用いた結果を示す。
【0094】
実施例2および実施例9を比較すると、実施例9の0.1〜10kbpのDNAサイズマーカーおよび100bp ladderともに実施例2と同様の分離パターンであることがわかる。また、実施例9の0.1〜20kbpのDNAサイズマーカーおよび50bp ladderの電気泳動の結果から、実施例9は良好なDNA分離能を有することがわかる。
【0095】
〔試験4.アガロースを含まない電気泳動用ゲルにおけるゲル作製用緩衝液の評価〕
<実施例10>
ゲル作製用緩衝液として40mMのトリス酢酸塩、4mMの硫酸マグネシウム、および16.7mMの塩化ナトリウムを含むpH8.3に調製されたTAMN緩衝液を用い、ゲル中のゲランガムの濃度が0.1重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例9と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としては、20mMのトリス酢酸塩、および2mMの硫酸マグネシウムを含むpH8.3に調製された0.5×TAM緩衝液緩衝液を用いた。
【0096】
<実施例11>
アガロース粉末を用い、ゲル中のアガロースの濃度が0.5重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0097】
<比較例6>
ゲランガムおよびグルコマンナンを用いずにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例11と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0098】
<比較例7>
ゲル中のアガロースの濃度が1.0重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、比較例6と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0099】
<比較例8>
ゲル中のアガロースの濃度が2.0重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、比較例6と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0100】
<比較例9>
ゲル中のアガロースの濃度が3.0重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、比較例6と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0101】
<結果>
図4は、試験4における電気泳動の結果を示す図である。実施例10の結果をレーン1〜4に示し、実施例11の結果をレーン5〜8に示し、比較例6の結果をレーン9〜12に示し、比較例7の結果をレーン13〜16に示し、比較例8の結果をレーン17〜20に示し、比較例9の結果をレーン21〜24に示す。
【0102】
図4において、1、6、9、13、17、および21レーンは(b)0.1〜20kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、2、5、10、14、18、および22レーンは(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、3、7、11、15、19、および23レーンは(c)100bp ladderを用いた結果を示し、4、8、12、16、20、および24レーンは(d)50bp ladderを用いた結果を示す。
【0103】
実施例10および11を比較すると、どちらも100bp〜2kbpまでのDNAを高い分離能で分離できることがわかる。
【0104】
比較例6、7、8、および9を比較すると、アガロースの濃度を上昇させることにより、50bp〜20kbpにおけるDNAの分離能が低下することがわかる。
【0105】
〔試験5.ゲランガムおよびグルコマンナンの添加量の変化による電気泳動用ゲルの評価〕
<比較例10>
ゲル中のアガロースの濃度が0.1重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、比較例6と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0106】
<比較例11>
ゲル中のアガロースの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、比較例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0107】
<比較例12>
ゲル中のアガロースの濃度が0.3重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、比較例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0108】
<比較例13>
ゲランガムを用いずにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0109】
<実施例12>
ゲル中のグルコマンナンの濃度が0.1重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したしたこと以外は、実施例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0110】
<実施例13>
ゲル中のゲランガムの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例12と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0111】
<実施例14>
ゲル中のゲランガムを0.3重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例12と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0112】
<実施例15>
ゲル中のゲランガムの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0113】
<実施例16>
ゲル中のゲランガムの濃度が0.3重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0114】
<実施例17>
ゲル中のグルコマンナンの濃度が0.3重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0115】
<実施例18>
ゲル中のグルコマンナンの濃度が0.3重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例16と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0116】
<実施例19>
グルコマンナンの代わりに、ガラクトマンナンとしてタラガム(ユニテックフーズ社製)を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例15と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0117】
<結果>
図5および
図6は、試験5における電気泳動の結果を示す図である。
図5では、比較例10の結果をレーン1〜3に示し、比較例11の結果をレーン4〜6に示し、比較例12の結果をレーン7〜9に示し、実施例12の結果をレーン10〜13に示し、実施例13の結果をレーン14〜17に示し、実施例14の結果をレーン18〜21に示す。
【0118】
また、
図6は、実施例10の結果をレーン1〜4に示し、実施例15の結果をレーン5〜8に示し、実施例16の結果をレーン9〜12に示し、実施例17の結果をレーン13〜16に示し、実施例18の結果をレーン17〜20に示し、実施例19の結果をレーン21〜24に示す。
【0119】
図5において、1、4、7、10、14、および18レーンは(b)0.1〜20kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、2、5、8、11、15、および19レーンは(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、3、6、9、12、16、および20レーンは(c)100bp ladderを用いた結果を示し、13、17、および21レーンは(d)50bp ladderを用いた結果を示す。
【0120】
図6において、1、5、9、13、17、および21レーンは(b)0.1〜20kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、2、6、10、14、18、および22レーンは(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、3、7、11、15、19、および23レーンは(c)100bp ladderを用いた結果を示し、4、8、12、16、20、および24レーンは(d)50bp ladderを用いた結果を示す。
【0121】
比較例10〜13および実施例10、12〜18の電気泳動用ゲルにおける、移動度(100bp Rf)、およびDNA分離能(50bp〜500bpの分離、および100bp〜2kbpの分離)について評価した。評価した結果を表1に示す。
【0122】
表1において、100bp Rfは、100bpのバンドの移動距離を電気泳動用ゲルの全長で除した値であり、値が大きいほど、分離能が高い傾向にあることを示す。表1では、(c)100bp ladderをDNA分子量マーカーとして用いた場合における100bp Rfの値を示す。なお、100bpのバンドの移動距離が測定できなかった場合は「ND」とした。
【0123】
表1において、DNA分離能は、50bp ladderの電気泳動の結果から50bp〜500bpの分離を評価し、0.1〜20kbpおよび100bp ladderの電気泳動の結果から100bp〜2kbpの分離を評価した。電気泳動の結果、極めて明瞭に分離された場合は「◎(良好)」、分離された場合は「○(適)」、全く分離されない場合は「×(不適)」とした。また、電気泳動を実施できなかった場合は「ND(不適)」とした。
【0124】
【表1】
【0125】
比較例10、11、および12では、DNA分子量マーカーの長短は区別できるが、明確なDNA分子量マーカーの分離は認められなかった。また、比較例13では、ゲル化せず、電気泳動を行うことができなかった。
【0126】
ゲランガムとグルコマンナンと含む実施例12では、DNA分子量マーカーが明確に分離された。特に、100bp〜2kbpまでのDNAの分離に優れることがわかる。
【0127】
実施例12、13および14を比較すると、グルコマンナンの添加量を0.1重量%に固定した場合において、ゲランガムの添加量を減少させることにより、100bp〜2kbpまでのDNA分離能が向上することがわかる。ただし、ゲランガムを0.3重量%含む実施例14においても良好なDNA分離能を有することがわかる。
【0128】
実施例10、15、および16を比較すると、グルコマンナンの添加量を0.2重量%に固定した場合において、ゲランガムの添加量を減少させることにより、100bp〜2kbpまでのDNA分離能が向上することがわかる。ただし、ゲランガムを0.3重量%含む実施例16においても良好なDNA分離能を有することがわかる。
【0129】
実施例17および18を比較すると、グルコマンナンの添加量を0.3重量%に固定した場合において、ゲランガムの添加量を減少させることにより、100bp〜2kbpまでのDNA分離能が向上することがわかる。ただし、ゲランガムを0.3重量%含む実施例18においても良好なDNA分離能を有することがわかる。
【0130】
実施例10および17を比較すると、グルコマンナンの添加量を増加させることにより、100bp〜2kbpまでのDNA分離能の低下を抑制する効果が認められた。
【0131】
実施例15および19を比較すると、グルコマンナンをガラクトマンナンの1つであるタラガムへ変更した場合でも、タラガムを用いたゲルは、グルコマンナンを用いたゲルと同様に良好なDNA分離能を有することがわかる。
【0132】
〔試験6.電気泳動用緩衝液およびゲル作製用緩衝液の変更による電気泳動用ゲルの評価〕
<実施例20>
ゲル作製用緩衝液としてTGMN緩衝液を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例10と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としては、50mMのトリス、384mMのグリシン、および8mMの硫酸マグネシウムを含むpH8.3に調整されたTGM緩衝液を用いた。
【0133】
<実施例21>
ゲル中のゲランガムの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例20と同様にして電気泳動用ゲルを得た。
【0134】
<実施例22>
ゲル作製用緩衝液として40mMのトリス、40mMのホウ酸、4mMの硫酸マグネシウム、および16.7mMの塩化ナトリウムを含むpH8.3に調製されたTBMN緩衝液を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例20と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としては、20mMのトリス、20mMのホウ酸、および2mMの硫酸マグネシウムを含むpHを8.3に調製された0.5×TBM緩衝液を用いた。
【0135】
<実施例23>
ゲル作製用緩衝液として上述のTBMN緩衝液を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例21と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としては、上述の0.5×TBM緩衝液を用いた。
【0136】
<結果>
図7は、試験6における電気泳動の結果を示す図である。実施例20の結果をレーン1〜4に示し、実施例21の結果をレーン5〜8に示し、実施例22の結果をレーン9〜12に示し、実施例23の結果をレーン13〜16に示し、実施例10の結果をレーン17〜20に示し、実施例15の結果をレーン21〜24に示す。
【0137】
図7において、1、5、9、13、17、および21レーンは(b)0.1〜20kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、2、6、10、14、18および22レーンは(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、3、7、11、15、19および23レーンは(c)100bp ladderを用いた結果を示し、4、8、12、16、20および24レーンは(d)50bp ladderを用いた結果を示す。
【0138】
実施例20および21から、TGMN緩衝液を用いたゲルは、どちらも良好なDNA分離能を示すことがわかる。
【0139】
実施例22および23から、ゲル作製用緩衝液および電気泳動用緩衝液をTAE緩衝液からTBE緩衝液に変更した場合であっても、実施例10および15と同様に良好なDNA分離能を示すことがわかる。
【0140】
〔試験7.電気泳動用緩衝液の評価〕
<実施例24>
ゲル作製用緩衝液として、40mMのトリス、40mMの酢酸、および4mMの硫酸マグネシウムを含むpH8.3に調製されたTAM緩衝液を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例17と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としても、当該TAM緩衝液を用いた。
【0141】
<実施例25>
ゲル中のゲランガムの濃度が0.2重量%となるようにゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例24と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としては、0.5×TAM緩衝液を用いた。
【0142】
<実施例26>
ゲル作製用緩衝液として40mMのトリス、40mMのホウ酸、および4mMの硫酸マグネシウムを含むpH8.3に調製されたTBM緩衝液を用いてゲル作製用溶液を調製したこと以外は、実施例17と同様にして電気泳動用ゲルを得た。電気泳動用緩衝液としては、0.5×TBM緩衝液を用いた。
【0143】
<結果>
図8は、試験7における電気泳動の結果を示す図である。実施例24の結果をレーン1〜4に示し、実施例25の結果をレーン5〜8に示し、実施例10の結果をレーン9〜12に示し、実施例26の結果をレーン13〜16に示し、実施例23の果をレーン17〜20に示す。
【0144】
図8において、1、5、9、13、および17レーンは(b)0.1〜20kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、2、6、10、14、および18レーンは(a)0.1〜10kbpのDNA分子量マーカーを用いた結果を示し、3、7、11、15、および19レーンは(c)100bp ladderを用いた結果を示し、4、8、12、16、および20レーンは(d)50bp ladderを用いた結果を示す。
【0145】
実施例24および25を比較すると、電気泳動用緩衝液に含まれるトリス、酢酸および硫酸マグネシウムの濃度が、ゲル作製用緩衝液に含まれる濃度の約半分であった場合でも、DNA分離能は良好であることがわかる。
【0146】
実施例10および25、または実施例23および26を比較すると、ゲル作製用緩衝液に一価の金属イオンとして塩化ナトリウムが含まれる場合であっても、DNA分離能は良好であることがわかる。