【解決手段】充填剤21は、固化することで、表面に凹凸のパターンが形成された基板1のパターン凹部11aを固化膜22で充填する充填剤であって、イミダゾール及びイミダゾール誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(充填剤)
本実施形態の充填剤は、固化することで、表面に凹凸のパターンが形成された基板の凹部を充填するものである。
本実施形態の充填剤は、典型的には、表面に凹凸のパターンが形成された基板をリンス液で洗浄した後、該パターンの凹部内に残留したリンス液を置換し、凹部を充填するために用いられる充填剤である。
【0013】
本実施形態の充填剤は、(N)成分:イミダゾール及びイミダゾール誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含有する。
【0014】
<(N)成分:イミダゾール及びイミダゾール誘導体>
本実施形態における(N)成分は、イミダゾール及びイミダゾール誘導体であり、昇華性物質である。本実施形態の充填剤は、(N)成分を含有するため、成膜性及び昇華性がいずれも良好である。
ここで、イミダゾール誘導体とは、5員環上に窒素原子を1,3位に含む環構造を有する化合物であり、イミダゾール環に結合している水素原子の一部又は全部がアルキル基等で置換された化合物等を意味する。
【0015】
(N)成分は、上記の中でも、下記一般式(n1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0016】
【化1】
[式中、Ra〜Rcは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基である。Rb及びRcは、互いに結合し、環を形成してもよい。]
【0017】
式(n1)中、Ra〜Rcは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基である。
Ra〜Rcにおける、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0018】
Ra〜Rcにおける、炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0019】
上記直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1〜10であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることがより好ましく、炭素原子数が1〜5であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
【0020】
上記分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3〜10であることが好ましく、炭素原子数3〜5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、2,2−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0021】
上記環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数が3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0022】
上記環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5〜30であることが好ましく、炭素原子数5〜20がより好ましく、炭素原子数6〜15がさらに好ましく、炭素原子数6〜12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0023】
Ra〜Rcにおける炭化水素基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。
【0024】
Rb及びRcは、互いに結合し、環を形成してもよい。
Rb及びRcが互いに結合して形成する環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0025】
Rb及びRcは、互いに結合し、環を形成する場合は、上記の中でも、芳香族炭化水素環を形成することが好ましく、ベンゼンを形成することがより好ましい。
【0026】
(N)成分は、上記の中でも、下記一般式(n1−1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0027】
【化2】
[式中、R
1〜R
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。]
【0028】
式(n1−1)中、R
1〜R
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。
該ハロゲン原子としては、上述した式(n1)中のRa〜Rcにおけるハロゲン原子と同様である。
該炭素原子数1〜5のアルキル基としては、上述した式(n1)中のRa〜Rcにおける炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基と同様である。
【0029】
本実施形態における(N)成分は、上記の中でも、イミダゾール、ベンゾイミダゾールがさらに好ましく、成膜性の観点から、ベンゾイミダゾールであることが特に好ましい。
【0030】
本実施形態における(N)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(N)成分の含有量は、充填剤全量(100質量%)に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、8質量%以上が特に好ましい。
一方、(N)成分の含有量は、充填剤全量(100質量%)に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
本実施形態における(N)成分の含有量は、充填剤全量(100質量%)に対して、例えば、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましく、8質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
【0032】
(N)成分の含有量が上記好ましい下限値以上であれば、よりパターン倒壊抑制効果に優れる。
(N)成分の含有量が上記好ましい上限値以下であれば、固化膜の除去性により優れる。また、上記好ましい上限値以下であっても、十分に成膜性に優れる。
【0033】
本実施形態における充填剤は、(N)成分のみからなるものでもよい。
一方で、(N)成分以外の成分(その他の成分)と混合して用いてもよい。
【0034】
<その他の成分>
本実施形態の充填剤は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上述の成分以外の、その他の成分を含むことができる。
本実施形態の充填剤における、その他の成分としては、(S)成分:溶媒、界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
≪(S)成分:溶媒≫
本実施形態の充填剤は、(S)成分の中でも、(N)成分との相溶性の観点から、(S1)成分:極性有機溶媒を含有することが好ましい。
【0036】
(S1)成分:極性有機溶媒としては、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、モノアルコール系溶媒等のプロトン性極性溶媒;エステル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0037】
グリコール系溶媒として、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒として、具体的には、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジイソプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
モノアルコール系溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。
【0038】
エステル系溶媒として、具体的には、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、シュウ酸ジエチル、酒石酸ジエチル、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
アミド系溶媒として、具体的には、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ブチルプロルドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒として、具体的には、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
スルホン系溶媒として、具体的には、スルホラン等が挙げられる。
ニトリル系溶媒として、具体的には、アセトニトリル等が挙げられる。
【0039】
(S1)成分は、上記の中でも、プロトン性極性溶媒が好ましく、モノアルコール系溶媒がより好ましい。具体的には、イソプロパノールが好ましい。
【0040】
本実施形態における(S1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(S1)成分の含有量は、特に限定されず、充填剤を基板に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。
(S1)成分の含有量は、充填剤全量(100質量%)に対して、10〜99質量%が好ましく、30〜95質量%がより好ましく、50〜92質量%がさらに好ましい。
【0041】
(N)成分と(S1)成分との混合比(質量比)(N)成分:(S1)成分は、1:99〜50:50が好ましく、5:95〜30:70がより好ましく、8:92〜20:80がさらに好ましい。
【0042】
本実施形態における(S)成分全体のうち、上記(S1)成分の割合は、例えば、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。なお、100質量%であってもよい。
【0043】
本実施形態における(S)成分は上述した(S1)成分以外の溶媒を含有してもよい。(S1)成分以外の溶媒としては、水、無極性有機溶媒(炭化水素系溶媒等)などが挙げられる。
該水としては、純水、イオン交換水等を用いることができる。
該炭化水素系溶媒として、具体的には、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
【0044】
≪界面活性剤≫
界面活性剤としては、たとえば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0045】
フッ素系界面活性剤として、具体例には、BM−1000、BM−1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれもDIC社製)、フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145(いずれも旭硝子社製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0046】
シリコーン系界面活性剤として、具体例には、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL−121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK−310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の充填剤は、除去性の観点から、(N)成分と(S1)成分を含むものであることが好ましく、(N)成分を(S1)成分に溶解した溶液であることがより好ましい。この溶液中の(N)成分の濃度は、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
【0048】
以上説明した本実施形態の充填剤は、(N)成分を含有するため、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する際、パターン倒壊を抑制することができる。また、本実施形態の充填剤は、(N)成分を含有するため成膜性及び昇華性が良好である。
【0049】
(基板の処理方法)
本実施形態の基板の処理方法は、上述した第1の態様に係る充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する、基板の処理方法であり、前記充填剤を固化させて、少なくとも前記パターンの凹部内を固化膜で充填する、固化膜充填工程と、前記固化膜を除去する、固化膜除去工程とを有する、基板の処理方法である。
【0050】
<第一の実施形態に係る基板の処理方法>
第一の実施形態に係る基板の処理方法は、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面をリンス液でリンスするリンス工程と、前記パターンの凹部内に残留したリンス液を上述した第1の態様に係る充填剤で置換し、前記パターンの凹部内を充填する置換充填工程と、前記充填剤を固化させ、少なくとも前記パターンの凹部内を固化膜で充填する、固化膜充填工程と、前記固化膜を除去する、固化膜除去工程とを有する、基板の処理方法である。
第一の実施形態に係る基板の処理方法について、
図1を用いて、詳細に説明する。
【0051】
図1(a)は表面に凹凸のパターンが形成された基板を模式的に示す図である。基板1の表面には凹凸のパターン11(複数のピラーを含むパターン)が形成されており、パターンの凹部11aとパターンの凸部11bとを備える。
【0052】
基板1としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウエハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
上記の中でも、基板1は、シリコンウエハ(シリコン基板)が好ましい。シリコン基板は、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が表面に形成されたものであってもよく、前記酸化ケイ素膜にパターンが形成されたものであってもよい。
【0053】
このようなパターンの形成は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、基板上に公知のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜を現像・露光してレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして基板をエッチング処理することにより、パターンを形成することができる。
【0054】
[リンス工程]
リンス工程は、基板1の表面を、後述するリンス液20でリンスする工程である。
図1(b)は、基板1の表面にリンス液20が接触している図である。
リンスの方法は、特に限定されず、半導体製造工程において、基板の洗浄に一般的に用いられる方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、後述するスピンコート法、浸漬法(ディップ法)、スプレー法、液盛り法(パドル法)等が挙げられる。その中でも、リンス方法としては、スピンコート法が好ましい。スピンの回転速度としては、100rpm以上5000rpm以下が例示される。
【0055】
スピンコート法は、基板をスピンコーター等を用いて回転させ、該回転した基板にリンス液をたらす又は噴霧する方法である。
浸漬法(ディップ法)は、基板をリンス液に浸漬させる方法である。
スプレー法は、基板を所定の方向に搬送させ、その空間にリンス液を噴射する方法である。
液盛り法(パドル法)は、基板にリンス液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法である。
【0056】
・リンス液
リンス工程に用いるリンス液20としては、特に限定されず、半導体基板のリンス工程に一般的に用いられるものを使用することができる。リンス液20としては、例えば、上述した極性有機溶媒及び無極性有機溶媒を含有するものが挙げられる。
リンス液20は、該有機溶媒に代えて、又は該有機溶媒とともに水を含有していてもよい。
リンス液20は、公知の添加物等を含有していてもよい。公知の添加剤としては例えば、上述したフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0057】
[置換充填工程]
置換充填工程は、パターンの凹部11a内に残留したリンス液20を上述した第1の態様に係る充填剤21で置換し、充填する工程である。
図1(c)は、パターンの凹部11a内に残留したリンス液20が充填剤21で置換され、パターンの凹部11a内及びパターンの凸部11b上を充填剤21で充填及び被覆している図である。
ここで充填剤21としては、(N)成分の溶融物、(N)成分とその他任意成分との混合物((N)成分と(S)成分との混合物等)が挙げられる。
【0058】
パターンの凹部11a内に残留したリンス液20を上述した第1の態様に係る充填剤21で置換し、充填する方法としては、充填剤21をスピンコート法、浸漬法(ディップ法)、スプレー法、液盛り法(パドル法)等を用いて、パターンの凹部11a内に接触させる方法が挙げられる。
【0059】
充填剤21が常温下で固体である場合は、パターンの凹部11a内に充填剤21を接触させる際の温度は、充填剤21の融点以上の加熱下で行う。例えば(N)成分の溶融物である場合は、(N)成分の融点よりも10℃高い温度であることが好ましい。
一方、充填剤21が(N)成分と(S)成分とその他任意成分との混合物であり、常温下で液体である場合は、とくに温度条件を設定することなく、常温(25℃)付近で当該工程を行えばよい。
【0060】
[固化膜充填工程]
固化膜充填工程は、充填剤21を固化させ、パターンの凹部11a内を固化膜22で充填する工程である。
図1(d)は、パターンの凹部11a内及びパターンの凸部11b上を固化膜22で充填及び被覆している図である。
【0061】
充填剤21を固化させる方法としては、充填剤21が(N)成分のみからなる場合は、(N)成分の凝固点以下に冷却することにより、充填剤((N)成分)を固化させることができる。
【0062】
充填剤21が、(N)成分と(S)成分との混合物、又は、(N)成分と(S)成分とその他の任意成分との混合物である場合は、乾燥工程によって(S)成分を除去することにより、充填剤((N)成分)を固化させることができる。
乾燥工程としては、スピンドライ、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥等の公知の方法を用いることができる。例えば、不活性ガス(窒素ガスなど)ブロー下でのスピン乾燥が好適に例示される。なお、乾燥工程においては、(S)成分は蒸発するが、(N)成分は昇華しない温度に維持されるような条件で行う。
【0063】
[固化膜除去工程]
固化膜除去工程は、固化膜22を除去する工程である。
固化膜22を除去する方法としては、固化膜22((N)成分)を昇華させることにより除去することが好ましい。
図1(e)は、固化膜22が昇華して、除去される過程を示す図である。
図1(f)は、固化膜22が除去された図である。
【0064】
固化膜22((N)成分)を昇華させる際の温度は、固化膜22((N)成分)の融点よりも低い温度であり、固化膜22((N)成分)が融解しない温度であれば特に限定されないが、例えば、(N)成分の融点より10〜20℃低い温度で、固化膜22((N)成分)を昇華させることが好ましい。
また、上記昇華は減圧下で行ってもよい。
【0065】
また、固化膜除去工程の変形例としては、たとえば固化膜22((N)成分)が分解する温度まで加熱し、固化膜22((N)成分)を除去する、といった態様が挙げられる。このような態様においても、減圧条件を採用することができる。
【0066】
<その他実施形態>
上述した第一の実施形態に係る基板の処理方法では、リンス工程と、置換充填工程とを有していたが、本実施形態の基板の処理方法はリンス工程と、置換充填工程とを有していなくともよく、第1の態様に係る充填剤でリンスし、上記パターンの凹部内を固化膜で充填し、該固化膜を除去する方法であってもよい。
すなわち、その他の実施形態としては、上述した第1の態様に係る充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する、基板の処理方法であって、前記充填剤を用いて、基板の前記表面をリンスするリンス工程と、前記充填剤を固化させ、少なくとも前記パターンの凹部内を固化膜で充填する、固化膜充填工程と、前記固化膜を除去する、固化膜除去工程とを有する、基板の処理方法である。
【0067】
図1(a)において、複数のピラーを含むパターンが形成された基板について説明したが、凹凸のパターンの形状は、特に限定されず、半導体製造工程で一般的に形成されるパターン形状とすることができる。パターン形状は、ラインパターンであってもよく、ホールパターンであってもよく、複数のピラーを含むパターンであってもよい。パターン形状は、好ましくは、複数のピラーを含むパターンである。ピラーの形状は、特に限定されないが、例えば、円柱形状、多角柱形状(四角柱形状など)等が挙げられる。
【0068】
図1(c)及び(d)では、充填剤21及び固化膜22が、パターンの凹部11a及びパターンの凸部11b上を充填及び被覆するような態様であるが、これに限定されず、少なくとも基板1からパターンの凸部11bの途中までの高さにおいて、パターンの凹部11aが充填剤21及び固化膜22で充填されていればよい。
【0069】
以上説明した本実施形態の基板の処理方法は、上述した第1の態様に係る充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する方法である。上述した成膜性及び昇華性が良好な第1の態様に係る充填剤を用いているため、パターン倒壊を抑制することができる。また、上述した第1の態様に係る充填剤は成膜性及び昇華性が良好であるため、生産性にも優れる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0071】
<充填剤の調製>
(実施例1、2、比較例1〜4)
表1に示す各成分を混合し、各例の充填剤を調製した。
【0072】
【表1】
【0073】
表1中、略号は以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量%)である。
IPA:イソプロピルアルコール
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
ポリスチレン:GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)は2000、分子量分散度(Mw/Mn)は1.10
【0074】
[成膜性の評価]
<固化膜の形成>
基板としては、6インチシリコンウエハを用いた。
該シリコンウエハ上に各例の充填剤を、スピンコート法を用いてそれぞれ塗布し、該シリコンウエハ上に固化膜を形成した。具体的には、該シリコンウエハ上にSLOPE 10秒、1500rpmで各例の充填剤を10秒間吐出した。次いで、スピンドライで30秒間乾燥させ、イソプロピルアルコールで10秒間エッジリンスした。次いで、さらにスピンドライ10秒、SLOPE 10秒の条件で乾燥させた。その後、充填剤が固化し、該シリコンウエハ上に固化膜が形成されるまで静置した(温度25℃)。
【0075】
≪固化時間の評価≫
上記<固化膜の形成>において、スピンコート法により各例の充填剤を塗布したときのスピンが静止してから、シリコンウエハ上に塗布された各例の充填剤の全域が固化するまでの時間を計測した。なお、固化が完了したことの判断は、目視及び光学顕微鏡で観察して判断し、以下の基準で固化時間を評価した。その結果を表2に示す。
〇:5分以内に固化が完了している
×:5分以内に固化が完了していない
生産性の点から固化時間は短いほど好ましく、5分以内を〇として評価した。
【0076】
≪固化膜の充填性の評価≫
上記<固化膜の形成>によって形成された固化膜について、目視及び光学顕微鏡(倍率5倍)で観察し、以下の評価基準で固化膜の充填性を評価した。その結果を表2に示す。
〇:目視及び光学顕微鏡観察で基板露出が観察されない
△:目視では基板露出が確認されないが、光学顕微鏡観察では基板露出が確認される
×:目視で塗布領域での基板露出が観察される
【0077】
[昇華性の評価]
上記<固化膜の形成>によって形成された固化膜を、常圧下で各(N)成分及び他の成分(以下、(N)成分等という)のそれぞれの融点よりも20度低い温度で加熱したときの、固化膜が昇華する工程を目視で観察した。加熱開始から昇華が完了するまでの時間を計測し、以下の評価基準で昇華時間を評価した。その結果を表2に示す。
〇:5分以内に昇華が完了している
×:5分以内に昇華が完了していない
生産性の点から昇華時間は短いほど好ましく、5分以内を〇として評価した。
【0078】
[パターン倒壊抑制効果の評価]
<基板の処理>
[固化膜充填工程]
基板としては、ピラー構造を有するシリコンパターンチップ(2cm×2cm)を用いた。
各例の充填剤をスピンコート法により、該シリコンパターンチップの表面に塗布した。次いで、該充填剤をスピンドライで30秒間乾燥させ、各例の充填剤を該シリコンパターンチップの凹部内で固化させ、該シリコンパターンチップの凹部内を各固化膜で充填した。
【0079】
[固化膜除去工程]
上記[充填工程]により、シリコンパターンチップの凹部内を充填している各(N)成分等の固化膜を、常圧下で各(N)成分等の融点よりも20度低い温度で加熱し、各(N)成分等を昇華させ、各(N)成分等の固化膜を除去した。
【0080】
≪倒壊率の評価≫
上記<基板の処理方法>によって処理したシリコンパターンチップをSEMで観察し、該シリコンパターンチップのパターン倒壊の発生率(倒壊率)を算出し、以下の基準で倒壊率を評価した。その結果を表2に示す。
なお、イソプロピルアルコールのみで上記基板の処理を行った際の倒壊率は100%であった。
〇:倒壊率が30%未満
×:倒壊率が30%以上
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示す通り、実施例1及び実施例2の充填剤は、比較例1〜4の充填剤に比べて、パターン倒壊抑制効果にも優れていた。また、固化時間が短く、固化膜の充填性が高く、昇華時間が短かった。
【0083】
一方で比較例1の充填剤は、パターン倒壊抑制効果には優れるが、固化時間及び昇華時間が5分以上であり、実施例1及び実施例2の充填剤に比べ、成膜性、昇華性が悪く、実用上では生産性に劣る。
比較例2及び比較例3の充填剤は、実施例1及び実施例2の充填剤に比べ、パターン倒壊抑制効果が劣っていた。また、目視での基板露出が散見された。
比較例4の充填剤は、固化膜除去工程での1時間の加熱でも昇華しておらず、該充填剤がパターン内に残っている状態にあり、実用上では生産性に劣る。
【0084】
以上より、本実施形態の充填剤は、パターン倒壊抑制効果に優れるとともに成膜性及び昇華性が良好であることが確認できる。