【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づき、各種高分子化合物の合成、高分子化合物を用いた有機薄膜太陽電池の特性について説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
原料となる5,5’−ビス(5−ブロモ−2ブチルオクチル−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾールは、「I. Osaka et al., Adv. Mater, 26, 331-338 (2014)」に基づいて合成し、用いた。
また、5,5’−2,6−ビス(トリメチルスタニル)ベンゾ(1,2−b:4,5−b’)ジチオフェン−4,8−ジイル)ビス(チオフェン−5,2−ジイル)ビス(トリプロピルシラン)、及び、5,5’−2,6−ビス(トリメチルスタニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジイル)ビス(チオフェン−5,2−ジイル)ビス(トリブチルシラン)は、「H. Bin et al., Nat. Commun, 7, 13651 (2016)」に基づいて合成し、用いた。
【0030】
(高分子化合物P1の合成)
【0031】
【化10】
【0032】
5,5’−2,6−ビス(トリメチルスタニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジイル)ビス(チオフェン−5,2−ジイル)ビス(トリプロピルシラン)(97.4mg,0.10mmol)、5,5’−ビス(5−ブロモ−2ブチルオクチル−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(80.0mg,0.10mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.0mg,0.001mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(2.44mg,0.008mmol)、トルエン(4ml)を反応用バイアルに入れ、窒素封入し、密栓した。
マイクロウェーブ反応装置を用いて、200℃で2時間反応させた。
その後、室温まで冷却後、反応液をメタノール溶液に注ぎ込み、1時間撹拌した。
沈殿した固体をろ取し、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、n−ヘキサン、クロロホルムで洗浄した後、クロロベンゼンで抽出した。
得られた溶液を一部濃縮し、メタノールに注ぎ込み、ろ取することで、高分子化合物P1(119mg,Y=91%)を暗赤色固体として得た(数平均分子量70,700)。
【0033】
(高分子化合物P2の合成)
【0034】
【化11】
【0035】
5,5’−2,6−ビス(トリメチルスタニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジイル)ビス(チオフェン−5,2−ジイル)ビス(トリブチルシラン)(107.7mg,0.10mmol)、5,5’−ビス(5−ブロモ−2ブチルオクチル−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(80.0mg,0.10mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.0mg,0.001mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(2.44mg,0.008mmol)、トルエン(4ml)を反応用バイアルに入れ、窒素封入し、密栓した。
マイクロウェーブ反応装置を用いて、200℃で2時間反応させた。
その後、室温まで冷却後、反応液をメタノール溶液に注ぎ込み、1時間撹拌した。
沈殿した固体をろ取し、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、n−ヘキサン、クロロホルムで洗浄した後、クロロベンゼンで抽出した。
得られた溶液を一部濃縮し、メタノールに注ぎ込み、ろ取することで、高分子化合物P2(92mg,Y=66%)を暗赤色固体として得た(数平均分子量46,900)。
【0036】
続いて合成した高分子化合物P1、を用いて太陽電池素子を作製し、光電変換効率を評価した。
【0037】
(高分子化合物P1を用いた有機薄膜太陽電池素子の評価)
ITO膜がパターンニングされたガラス基板を十分に洗浄した後、UVオゾン処理を行った。
次に、酢酸亜鉛(II)二水和物0.5gとエタノールアミン0.142mlを2−メトキシエタノール5mlに溶解した溶液を3000rpmで30秒間、基板上にスピンコートした。
200℃で30分間基板を加熱することで、電子取り出し層を形成した。
電子取り出し層を成膜した基板をグローブボックス内に持ち込み、高分子化合物P1及びn型低分子材料であるIT−4F(3,9−ビス(2−メチレン−((3−1,1−ジシアノメチレン)−6,7,−ジフルオロ)−インダノン))−5,5,11,11,−テトラキス(4−ヘキシルフェニル)−ジチエノ[2,3−d:2’,3’ −d’]−s−インダセノ[1,2−b:5,6 −b’]ジチオフェン)を含むクロロベンゼン溶液(高分子化合物P1/IT−4Fの重量比=1/1.5)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した(膜厚150nm)。
さらに、活性層上に、正孔取り出し層として厚さ7.5nmの三酸化モリブデン(MoO
3)膜を、次いで電極層として厚さ100nmの銀膜を、抵抗加熱型真空蒸着法により順次成膜し、12.56mm
2の有機薄膜太陽電池素子を作製した。
【0038】
得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm
2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定した。
図1に電流密度−電圧特性のグラフを示す。
【0039】
得られた
図1から、短絡電流密度Jsc(mA/cm
2)、開放電圧Voc(V)、形状因子FFを求めたところ、Jsc=18.6mA/cm
2、Voc=0.92V、FF=0.76であった。光電変換効率(η)を、式η=(Jsc×Voc×FF)/100より算出したところ、13.0%であった。
【0040】
(高分子化合物P2を用いた有機薄膜太陽電池素子の評価)
高分子化合物P2及びn型低分子材料であるIT−4F(3,9−ビス(2−メチレン−((3−1,1−ジシアノメチレン)−6,7,−ジフルオロ)−インダノン))−5,5,11,11,−テトラキス(4−ヘキシルフェニル)−ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]−s−インダセノ[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン)を含むクロロベンゼン溶液(高分子化合物P1/IT−4Fの重量比=1/1.5)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した(膜厚150nm)。さらに、活性層上に、正孔取り出し層として厚さ7.5nmの三酸化モリブデン(MoO
3)膜を、次いで電極層として厚さ100nmの銀膜を、抵抗加熱型真空蒸着法により順次成膜し、12.56mm
2の有機薄膜太陽電池素子を作製した。
【0041】
作製した有機薄膜太陽電池について、上記と同様の手法にて発生電流及び電圧を測定した。その測定結果のグラフを
図2に示す。
図2から求めた特性値は、Jsc=16.9mA/cm
2、Voc=0.92V、FF=0.74、ηは11.9%であった。
【0042】
また、比較例として高分子化合物P3を合成し、高分子化合物P3を用いる以外、上記と同様にして有機薄膜太陽電池素子を作製し、光電変換効率を評価した。
【0043】
上記と同様の手法にて発生電流及び電圧を測定した。その測定結果を
図3に示す。
図2から求めた特性値は、Jsc=12.6mA/cm
2、Voc=0.90V、FF=0.59、ηは6.7%であった。
【0044】
上記の高分子化合物P1〜P3に加え、他の比較例として「B. Guo et al., Adv. Mater, 29, 1702291 (2017)」に開示されている以下の高分子化合物P4、及び、「G. Xu et al., J. Mater. Chem. A, 7, 4145-4152 (2019)」に開示されている以下の高分子化合物P5を用いた有機太陽電池特性を抜粋して表1にまとめた。なお、高分子化合物P4及び高分子化合物P5においては、光活性層の形成後、アニール処理が行われている。
【0045】
【化12】
【0046】
【表1】
【0047】
本発明の高分子化合物P1、P2を用いた有機薄膜太陽電池は、比較例と比べて高い光電変換効率が得られることが示された。
【0048】
また、高分子化合物P1、P3、P5について、それぞれのクロロベンゼン溶液における吸収スペクトルを
図4〜
図6に示す。高分子化合物P1では、高分子化合物P3、P5に比べてピークが長波長側にシフトしており、高分子化合物P1は、平面性が非常に高く、剛直な構造であることがわかる。このような高分子化合物P1の構造より、高分子化合物P1を用いて得られる有機薄膜太陽電池における良好な光電変換効率に寄与していることが推察される。