【課題】本発明の目的は、耐候性に優れ、成形品からのホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制でき、かつ、安定的に成形時のモ−ルドデポジットが抑制されたポリアセタ−ル樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
前記(F)ヒンダ−ドアミン化合物が、立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダ−ドアミン化合物である請求項1に記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
前記(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸カルシウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
前記(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物が1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインである請求項1〜4いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
前記(F)ヒンダ−ドアミン化合物が、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノ−ルとの縮合物、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノ−ルの重合物から選ばれた1種以上のものである請求項1〜5いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
前記(G)紫外線吸収剤が2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノ−ル及びN−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドから選ばれた1種以上のものである請求項1〜6いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
さらに(H1)脂肪酸エステル及び(H2)ポリアルキレングリコ−ルから選ばれた少なくとも一種以上を含有する請求項1〜7いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
請求項1〜9いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリアセタ−ル重合体が、トリオキサンを主モノマ−(a)とし、少なくとも一つの炭素−炭素結合を有する環状エ−テルおよび環状ホルマ−ルから選択される一種以上をコモノマ−(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させて得られたポリアセタ−ル共重合体であるポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタ−ル樹脂は優れた諸特性を有し、その成形品は広汎な分野に利用されているが、その化学構造上の特徴から、加熱酸化雰囲気下や、酸性或いはアルカリ性条件下では分解されやすいという性質を有する。その為、ポリアセタ−ル樹脂の課題として、熱安定性を高くし、成形加工過程又は成形品からのホルムアルデヒドの発生を抑制することが挙げられる。熱安定性が低いと、押出又は成形などの加工工程において加熱によりポリマ−が分解し、金型への付着物(モ−ルドデポジット)が発生したり、成形性や機械的物性などが低下したりする。
【0003】
また、通常の使用条件下においてポリアセタ−ル樹脂成形品から発生するホルムアルデヒドは極めて微量であるが、発生したホルムアルデヒドは化学的に活性であり、酸化により蟻酸となってポリアセタ−ル樹脂の耐熱性に悪影響を及ぼしたり、電気・電子機器の部品などに用いると、ホルムアルデヒド或いはその酸化物である蟻酸により金属製接点部品が腐蝕したり、有機化合物の付着により変色や接点不良を生じる要因になる場合がある。
【0004】
さらに、ポリアセタ−ル樹脂自体は太陽光および紫外線などの光エネルギ−や熱エネルギ−にも弱く、長期間大気に曝すと、成形品表面にクラックが発生し、強度低下を引き起こす。
【0005】
そこで、ポリアセタ−ル樹脂を安定化させるため、酸化防止剤やその他の安定剤が配合されている。ポリアセタ−ル樹脂に添加される酸化防止剤としては、立体障害を有するフェノ−ル化合物(ヒンダ−ドフェノ−ル)、立体障害を有するアミン化合物(ヒンダ−ドアミン)などが知られており、その他の安定剤として、メラミン、ポリアミド、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物などが使用されている。また、通常、酸化防止剤は他の安定剤と組み合わせて用いられる。
【0006】
しかしながら、このような汎用的な安定剤を通常のホルムアルデヒド品質を有するポリアセタ−ル樹脂に配合しただけでは、発生するホルムアルデヒド、特に、成形品から発生するホルムアルデヒドを大幅に低減させることは困難である。さらに、上記のような問題を解決しホルムアルデヒドの発生量を低減させるため、種々の化合物を配合したポリアセタ−ル樹脂組成物が開示されている。
【0007】
例えば、特定末端基のポリアセタ−ル樹脂、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドラジド化合物およびイソシアネ−ト化合物を併用する技術が開示されている(特許文献1)。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドラジド化合物および特定カルボン酸のアルカリ土類金属塩を共存させる技術も開示されている(特許文献2)。
【0008】
一方、ポリアセタ−ル樹脂の耐候性を向上させるために、例えばヒンダ−トアミン系光安定剤とベンゾトリアゾ−ル系紫外光吸収剤を添加共存させる技術が開示されている(特許文献3)。
さらに、耐候性を付与しながら、成形品からのホルムアルデヒドの発生を抑え、且つ、成形品からの配合成分の染み出しを抑制させる技術も開示されている(特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの文献1に開示された技術によれば、ポリアセタ−ル樹脂成形時のモ−ルドデポジットをかなりのレベルで低減することが可能である。しかしながら、モ−ルドデポジットを低減するためには有効ではあるが、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制できていないのが実情であった。
【0011】
また、文献2に開示された技術によれば、ホルムアルデヒド発生の抑制効果は発現されるものの、モ−ルドデポジット抑制効果が不十分であり、安定的な成形技術ではなかった。
文献3に開示された技術によれば、一定の耐候性を得られるが、ホルムアルデヒドの発生を全く抑制できていない。
【0012】
文献4に開示された技術によれば、ヒドラジド化合物を使用する場合、ホルムアルデヒド発生の抑制効果が大きく発現され、一定の耐候性が保持される。しかしながら、モ−ルドデポジット抑制効果が不十分であり、安定的な成形技術ではなかった。
【0013】
本発明の目的は、耐候性に優れ、成形品からのホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制でき、且つ、安定的に成形時のモ−ルドデポジットが抑制されたポリアセタ−ル樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、下記によって達成された。
【0015】
1. 少なくとも
(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.03〜0.30質量部、
(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド0.01〜0.50質量部、
(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物0.001〜0.50質量部、
(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩0.001〜0.30質量部、
(F)ヒンダ−ドアミン化合物0.2〜1.0質量部、
(G)紫外線吸収剤0.2〜1.0質量部
とを含有してなり、
該(C)と(D)の合計量が、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して0.03〜0.55質量部である、ポリアセタ−ル樹脂組成物。
2. 前記(F)ヒンダ−ドアミン化合物が、立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダ−ドアミン化合物である前記1に記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
3.前記(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドが、セバシン酸ジヒドラジドである前記1または2に記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
4. 前記(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸カルシウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である前記1〜3いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
5. 前記(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物が1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインである前記1〜4いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
6. 前記(F)ヒンダ−ドアミン化合物が、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノ−ルとの縮合物、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノ−ルの重合物から選ばれた1種以上のものである前記1〜5いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
7. 前記(G)紫外線吸収剤が2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノ−ル及びN−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドから選ばれた1種以上のものである前記1〜6いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
8. さらに(H1)脂肪酸エステル及び(H2)ポリアルキレングリコ−ルから選ばれた少なくとも一種以上を含有する前記1〜7いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
9. さらに(I)アルミニウム粉末1〜20質量部が配合されてなる前記1〜8いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物。
10. 前記1〜9いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリアセタ−ル重合体が、トリオキサンを主モノマ−(a)とし、少なくとも一つの炭素−炭素結合を有する環状エ−テルおよび環状ホルマ−ルから選択される一種以上をコモノマ−(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させて得られたポリアセタ−ル共重合体である前記1〜9いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐候性に優れ、成形品からのホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制でき、且つ安定的に成形時のモ−ルドデポジットが抑制されたポリアセタ−ル樹脂組成物及び成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
<(A)ポリアセタ−ル重合体>
本発明に使用される(A)ポリアセタ−ル重合体は、オキシメチレン基(−OCH
2−)を構成単位とするホモポリマ−でもよいし、オキシメチレン単位以外に他のコモノマ−単位を有する共重合体であってもよく、共重合体であることが好ましい。
【0018】
一般的にはホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの環状化合物を主モノマ−とし、環状エ−テルや環状ホルマ−ルから選ばれた化合物をコモノマ−として共重合させることによって製造され、通常、熱分解、(アルカリ)加水分解等によって末端の不安定部分を除去して安定化される。
【0019】
特に、主モノマ−としてはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンを用いるのが一般的である。トリオキサンは、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることにより得られ、これを蒸留などの方法で精製して使用される。重合に用いるトリオキサンは、水、メタノ−ル、蟻酸などの不純物の含有量が極力少ないものが好ましい。
【0020】
コモノマ−としては、一般的な環状エ−テル及び環状ホルマ−ル、また分岐構造や架橋構造を形成可能なグリシジルエ−テル化合物などを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
上記の如きポリアセタ−ル重合体は、一般には適量の分子量調整剤を添加し、カチオン重合触媒を用いてカチオン重合することにより得ることができる。使用される分子量調整剤、カチオン重合触媒、重合方法、重合装置、重合後の触媒の失活化処理、重合によって得られた粗ポリアセタ−ル重合体の末端安定化処理法などは多くの文献によって公知であり、基本的にはそれらが何れも利用できる。
【0022】
ポリアセタ−ル重合体の特に好ましい製造方法として、以下のものが挙げられる。即ち、トリオキサンを主モノマ−(a)とし、少なくとも一つの炭素−炭素結合を有する環状エ−テルおよび環状ホルマ−ルから選択される一種以上をコモノマ−(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させるものである。本方法によるポリアセタ−ル重合体を使用することで、成形品からのホルムアルデヒド発生量、成型時のモ−ルドデポジット発生はより低減される。
【0023】
前記重合触媒(c)として使用するヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸の総称をいい、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を共有して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有している。
【0024】
上記へテロポリ酸の具体例として、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。中でも、重合の安定性、ヘテロポリ酸自体の安定性から考慮して、へテロポリ酸は、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸又はリンタングステン酸のいずれか一種以上であることが好ましい。
【0025】
上記へテロポリ酸の使用量は、その種類によっても異なり、また、適当に変えて重合反応を調節することができるが、一般には重合されるべきモノマ−の総量に対し0.05〜100ppm(以下、質量/質量ppmを示す。)の範囲であり、好ましくは0.1〜50ppmである。
【0026】
重合装置としては、バッチ式では一般に用いられる撹拌機付きの反応槽が使用でき、また、連続式としては、コニ−ダ−、2軸スクリュ−式連続押出混合機、2軸パドルタイプの連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサン等の連続重合装置が使用可能であり、また2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
重合方法は特に限定されるものではないが、先に提案されているように、トリオキサン、コモノマ−及び重合触媒としてのヘテロポリ酸を、あらかじめ液相状態を保ちつつ十分に混合し、得られた反応原料混合液を重合装置に供給して共重合反応を行えば、必要触媒量の低減が可能となり、結果としてホルムアルデヒド放出量のより少ないポリアセタ−ル共重合体を得るのに有利であり、より好適な重合方法である。重合温度は、60〜120℃の温度範囲で行なわれる。
【0028】
本発明において、上記の主モノマ−(a)とコモノマ−(b)とを重合してポリアセタ−ル共重合体を調製するにあたり、重合度を調節するため公知の連鎖移動剤、例えばメチラ−ルの如き低分子量の線状アセタ−ル等を添加することも可能である。
【0029】
また、重合反応は活性水素を有する不純物、例えば水、メタノ−ル、ギ酸等が実質的に存在しない状態、例えばこれらがそれぞれ10ppm以下の状態で行うのが望ましく、このためには、これらの不純物成分を極力含まないように調製されたトリオキサン、環状エ−テル及び/又は環状ホルマ−ルを、主モノマ−やコモノマ−として使用するのが望ましい。
【0030】
上記のように重合して得られた、重合触媒を含有すると共に、その末端に不安定な部分を有するポリアセタ−ル重合体(粗ポリアセタ−ル重合体)に、アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を溶融混練して、重合触媒の失活を行うと共にポリアセタ−ル重合体(粗ポリアセタ−ル重合体)が有する不安定末端基を低減して安定化する。
【0031】
本発明で使用する(A)ポリアセタ−ル重合体の分子量は特に限定されないが、SEC(サイズ排除クロマトグラフィ−)法にて決定したPMMA(ポリメタクリル酸メチル)相当の重量平均分子量が10、000〜400、000程度のものが好ましい。また、樹脂の流動性の指標となるメルトインデックス(ASTM−D1238に準じ190℃、荷重2.16kgで測定)が0.1〜100g/10分であるものが好ましく、さらに好ましくは0.5〜80g/10分である。
【0032】
本発明において使用する(A)ポリアセタ−ル重合体は、特定の末端特性を有していることが特に好ましい。具体的には、ヘミホルマ−ル末端基量が1.0mmol/kg以下、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下、不安定末端量が0.5質量%以下である。ここでヘミホルマ−ル末端基は−OCH
2OHで示されるものであり、ヒドロキシメトキシ基あるいはヘミアセタ−ル末端基とも称される。また、ホルミル末端基は−OCHOで示される。このようなヘミホルマ−ル末端基およびホルミル末端基の量は
1H−NMR測定により求めることができ、その具体的な測定方法は、特開2001−11143号公報に記載された方法を参照できる。
【0033】
また、不安定末端量とは、ポリアセタ−ル重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解し易い部分の量を示す。かかる不安定末端量は、ポリアセタ−ル重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノ−ル水溶液100mlとともに耐圧密閉容器に入れ180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリアセタ−ル重合体に対する質量%で表したものである。
【0034】
本発明において用いる(A)ポリアセタ−ル重合体は、ヘミホルマ−ル末端基量が1.0mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.6mmol/kg以下である。またホルミル末端基量は0.5mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.1mmol/kg以下である。また不安定末端量は0.5質量%以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以下である。ヘミホルマ−ル末端基量、ホルミル末端基量、不安定末端量の下限は特に限定されるものではない。
【0035】
前記の如く特定の末端特性を有する(A)ポリアセタ−ル重合体は、モノマ−及びコモノマ−に含まれる不純物の低減、製造プロセスの選択およびその製造条件の最適化などを行うことにより製造できる。
【0036】
以下に本件の発明の要件を満たす特定の末端特性を有する(A)ポリアセタ−ル重合体を製造する方法は、例えば特開2009−286874号公報記載の方法を使用することができる。ただし、この方法に限定されるものではない。
【0037】
本発明において、(A)ポリアセタ−ル重合体に分岐又は架橋構造を有するポリアセタ−ル重合体を添加して使用してもよく、その場合配合量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対し0.01〜20質量部であり、特に好ましくは0.03〜5質量部である。
【0038】
<(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明で使用可能な(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、特に限定されるものでなく、例えば、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](別名:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート])、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド)、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート等が例示される。
【0039】
本発明においては、これらの酸化防止剤から選ばれた少なくとも一種又は二種以上を使用することができる。
【0040】
本発明における(B)ヒンダードフェノ−ル系酸化防止剤の含有量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対し、0.03〜0.30質量部である。配合量がこの量より少ないと効果が不十分であり、この量より多い場合は、ヒンダ−ドアミン化合物との拮抗作用により、耐候性が劣ってしまう。
【0041】
<(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド>
本発明において使用する(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドとしては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド等が挙げられる。好ましくは、セバシン酸ジヒドラジドが挙げられ、ホルムアルデヒドを捕捉し、更にヒドラジド基を有するヒダントイン化合物と併用することで本来発生するモ−ルドデポジットを著しく抑えることができる。
【0042】
本発明において、(C)の添加量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して0.01〜0.50質量部であり、好ましくは0.02〜0.30質量部である。
【0043】
<(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物>
本発明の(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物(以下、ヒダントイン化合物と略すこともある)としては1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)ヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−メチルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等が挙げられ、ヒダントインの5位には1又は2つの置換基(メチル基などの直鎖又は分岐鎖状炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基などの炭素数6〜10のアリ−ル基など)を有していてもよく、5位の2つの置換基は5位の炭素原子とともに環を形成してもよい。好ましくは1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインが用いられる。
【0044】
本発明の(D)ヒダントイン化合物は、ホルムアルデヒドを捕捉し、本発明の(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドと併用することによって、モ−ルドデポジットを抑制する。とくに、セバシン酸ジヒドラジドとの併用で効果が大きい。
【0045】
本発明において(D)ヒダントイン化合物の添加量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して0.001〜0.50質量部であり、好ましくは0.01〜0.30質量部である。
【0046】
また本発明において(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドと(D)ヒダントイン化合物の両方が含有されていれば本発明の効果が得られるが、合計量として、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して、0.03〜0.55質量部であることが好ましい。そして(C)と(D)の含有質量比は(C):(D)=10:90〜99:1であることが好ましい。
【0047】
<(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩>
本発明の(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩を構成する脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸であってもよく、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。このような脂肪族カルボン酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪族カルボン酸、例えば、炭素数10以上の1価の飽和脂肪族カルボン酸[カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の炭素数10〜34飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは炭素数10〜30飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の1価の不飽和脂肪族カルボン酸[オレイン酸、リノ−ル酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸等の炭素数10〜34不飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは炭素数10〜30不飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の2価の脂肪族カルボン酸(二塩基性脂肪族カルボン酸)[セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸等の2価の炭素数10−30飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは2価の炭素数10〜20飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の2価の不飽和脂肪族カルボン酸[デセン二酸、ドデセン二酸等の2価の炭素数10〜30不飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは2価の炭素数10〜20不飽和脂肪族カルボン酸)等]が例示できる。
【0048】
また、上記の脂肪族カルボン酸には、その一部の水素原子がヒドロキシル基等の置換基で置換され、分子内に1又は複数のヒドロキシル基等を有する脂肪族カルボン酸(例えば、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ飽和炭素数10〜26脂肪族カルボン酸)も含まれ、また精製の精度により炭素数が若干相違する脂肪族カルボン酸も含まれるものである。
【0049】
本発明においてアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。特に好ましい脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムである。
【0050】
ポリアセタ−ル樹脂組成物中の脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩の添加量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して、0.001〜0.30質量部であり、好ましくは0.01〜0.25質量部である。
【0051】
<(F)ヒンダ−ドアミン化合物>
本発明において使用するヒンダードアミン化合物に特に制限がなく、隣接する炭素にメチル基等の立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級または3級であるヒンダ−ドアミン化合物が好ましく用いられる。立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダ−ドアミン化合物が特に好ましく用いられる。
【0052】
本発明において使用する立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級であるヒンダードアミン安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物などが挙げられる。
【0053】
本発明において使用する立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダ−ドアミン化合物としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペ−ト、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセパケ−トなどの脂肪族ジ又はトリカルボン酸−ビス又はトリスピペリジルエステル(炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸−ビスピペリジルエステルなど)、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノ−ルの重合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネ−ト、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケ−ト、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとトリデシルアルコ−ルとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)−ジエタノ−ルとの縮合物、過酸化処理した4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、及びシクロヘキサン、N,N'−エタン−1,2−ジイルビス(1,3−プロパンジアミン)との反応生成物、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒロドキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
【0054】
特に好ましいものとしては、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)−ジエタノ−ルとの縮合物、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノ−ルの重合物が挙げられる。
【0055】
本発明において、(F)ヒンダ−ドアミン化合物の添加量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して0.2〜1.0質量部、であり、好ましくは0.4〜0.8質量部である。
【0056】
(F)ヒンダ−ドアミン化合物の配合量が過少の場合は、耐候性に優れたポリアセタ−ル樹脂組成物を得ることができず、逆に配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、染み出しによる外観不良などの問題が生じる。
【0057】
<(G)紫外線吸収剤>
本発明の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物が挙げられ、これらの光安定剤は一種又は二種以上組合せて使用できる。
【0058】
ベンゾトリアゾ−ル系化合物としては、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−p−クレゾ−ル、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノ−ル、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノ−ル、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾ−ル−2−イル)フェノ−ル、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノ−ル、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−イソアミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル等のヒドロキシル基及びアルキル(炭素数1〜6のアルキル)基置換アリ−ル基を有するベンゾトリアゾ−ル類2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾ−ルなどのヒドロキシル基及びアラルキル(又はアリ−ル)基置換アリ−ル基を有するベンゾトリアゾ−ル類2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ルなどのヒドロキシル基及びアルコキシ(C1〜12のアルコキシ)基置換アリ−ル基を有するベンゾトリアゾ−ル類等が挙げられる。
【0059】
これらのベンゾトリアゾ−ル化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
これらのベンゾトリアゾ−ル系化合物のうち、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノ−ル、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノ−ル、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノ−ルなどが好ましい。
【0061】
シュウ酸アニリド系化合物としては、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)シュウ酸ジアミド、窒素原子上に置換されていてもよいアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。シュウ酸アニリド化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
本発明において、(G)紫外線吸収剤の添加量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して、0.2〜1.0質量部である。好ましくは、0.4〜0.8質量部である。(G)紫外線吸収剤の配合量が過少の場合は、耐候性に優れたポリアセ−ル樹脂組成物を得ることができず、逆に配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、染み出しによる外観不良などの問題が生じる。
【0063】
<(H1)脂肪酸エステル及び(H2)ポリアルキレングリコ−ル>
本発明の(H1)脂肪酸エステルの構成成分である脂肪酸は1種または2種以上の飽和または不飽和脂肪酸であり、このような脂肪酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ヒバリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシ酸、イソトリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、グノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、レイン酸、エライジン酸、リノ−ル酸、リノレン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エカ酸等があり、好ましくは炭素数が12以上の脂肪酸である。
【0064】
一方、(H1)脂肪酸エステルの構成成分であるアルコ−ルとしては1価アルコ−ル(例えば、ステアリルアルコ−ル等)及び多価アルコ−ルの何れもが可能であるが、多価アルコ−ルであることが好ましい。多価アルコ−ルとしては、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、テトメチレングリコ−ルなどのC2〜6のアルキレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、グリセリン、ペンタエリスリト−ル等が挙げられる。
【0065】
また、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ルなどのポリC2〜6のオキシアルキレングリコ−ル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ランダム又はブロック共重合体など)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエ−テル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエ−テルなどの共重合体類も、(H1)脂肪酸エステルを構成するための好ましい多価アルコ−ルとして挙げられる。
【0066】
より好ましいポリオキシアルキレングリコ−ルは、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコ−ル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体及びそれらの誘導体などである。
【0067】
好ましい(H1)脂肪酸エステルとしては、炭素数12以上の脂肪酸と、平均重合度が20から300程度のポリアルキレングリコ−ルとのエステルが挙げられる。
【0068】
また、(H2)ポリアルキレングリコ−ルとしては、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリグリセリン等のホモポリマ−及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ランダム又はブロック共重合体など)等のコポリマ−から選ばれた少なくとも1種類を用いることができ、平均重合度が20から300程度のポリアルキレングリコ−ルが好ましい。
【0069】
本発明において、(H1)脂肪酸エステル及び(H2)ポリアルキレングリコ−ルから選ばれた化合物の配合は必須ではないが、これらの化合物を配合すると、耐候性の改善を助長する効果が生じる。化合物(H1及び/又はH2)を配合する場合の配合量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して0.01〜5.0質量部であり、好ましくは、0.05〜2.0質量部である。(H1)および(H2)を併用する場合は、90:10〜5:95の質量比であることが好ましい。
【0070】
<(I)アルミニウム粉末顔料>
本発明において使用するメタリック顔料としては、アルミニウム粉末が好ましく使用できる。また、これらをポリエチレン樹脂もしくはポリエチレンワックス等に分散させたものも使用できる。
【0071】
(I)アルミニウム粉末の配合量は、(A)ポリアセタ−ル重合体100質量部に対して1〜20質量部であり、好ましくは、3〜10質量部である。配合量が過少の場合は、色調がよいポリアセタ−ル樹脂組成物を得ることができず、逆に配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、外観不良などの問題が生じることがある。
<その他の添加剤>
【0072】
本発明のポリアセタ−ル樹脂組成物には、本発明を阻害しない限り、必要に応じて、さらに、耐衝撃性改良剤、光沢性制御剤、摺動性改良剤、充填剤、着色剤、核剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、抗カビ剤、芳香剤、発泡剤、相溶化剤、物性改良剤(ホウ酸又はその誘導体など)、香料などを一種または二種以上配合することができる。
<ポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法>
【0073】
本発明のポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、樹脂組成物の調製法として従来から知られた各種の方法により調製することができる。例えば、(1)組成物を構成する全成分を混合し、これを押出機に供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(2)組成物を構成する成分の一部を押出機の主フィ−ド口から、残余成分をサイドフィ−ド口から供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(3)押出し等により一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを混合して所定の組成に調整する方法などが採用できる。
【0074】
押出機を用いた組成物の調製においては、一カ所以上の脱揮ベント口を有する押出機を用いるのが好ましく、さらに、主フィ−ド口から脱揮ベント口までの任意の場所に水や低沸点アルコ−ル類をポリアセタ−ル樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部程度供給し、押出工程で発生するホルムアルデヒド等を水や低沸点アルコ−ル類と共に脱揮ベント口から脱揮除去するのが好ましい。これにより、ポリアセタ−ル樹脂組成物およびその成形品から発生するホルムアルデヒド量をさらに低減することができる。
【0075】
このようにして調製された本発明のポリアセタ−ル樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形等、従来から知られた各種の成形方法によって成形することができる。
【0076】
本発明には、前記ポリアセタ−ル樹脂組成物及び上記による着色されたポリアセタ−ル樹脂組成物からなる成形品のリサイクルも含まれる。具体的には、これらの樹脂組成物からなる成形品又はその粉砕物を、単独で、或いは同一又は異なる組成の樹脂材料又は成形品と共に、溶融混練し押出してなるリサイクル樹脂組成物、及び、これらの樹脂組成物からなる成形品又はその粉砕物を、単独で、或いは同一又は異なる組成の樹脂材料又は成形品と共に、溶融混練し成形してなるリサイクル成形品である。
【0077】
このように、溶融熱履歴の繰返しを受けて調製されたリサイクル樹脂組成物及びリサイクル成形品も、それらの基になるポリアセタ−ル樹脂組成物と同様に、ホルムアルデヒド発生量が極めて低レベルに保持されたものである。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」はすべて質量部を表す。また、実施例及び比較例において評価した諸特性及びその評価方法は以下の通りである。表1、2に記載の数値の単位は、質量部である。
【0079】
表1、2に示す各種成分割合で添加混合し、ベント付き二軸の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。実施例で使用した表1、2に記載の各成分は以下のものである。
【0080】
・(A)ポリアセタ−ル重合体
A−1:二軸パドルタイプの連続式重合機を用いて、全モノマ−(トリオキサンおよび1,3−ジオキソラン)に対し1、3−ジオキソラン3.3質量%、メチラ−ル1000ppm添加したトリオキサンを連続的に供給し、同時に同じところへ三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート(触媒濃度:全モノマ−に対して20ppm(三フッ化ホウ素として)のシクロヘキサン溶液)を供給し重合した。
重合機吐出口より排出された重合体について、排出直後にトリエチルアミン1000ppm含有する水溶液を加え混合粉砕を行うと共に、撹拌処理を行った。その後、遠心分離、乾燥を行い触媒失活された重合体を得た。この重合体を、ベント口を有するニ軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練させて、ベント口で減圧脱揮を行いながら、不安定末端の除去を行いペレット状の重合体を得た。その後、乾燥を行い、所望の重合体を得た。(メルトインデックス(190℃、荷重2.16kgで測定):9g/10分)
【0081】
A−2:二軸パドルタイプの連続式重合機を用いて、全モノマ−(トリオキサンおよび1,3−ジオキソラン)に対し1,3−ジオキソラン3.3質量%、メチラ−ル1000ppm添加したトリオキサンを連続的に供給し、同時に同じところヘテロポリ酸触媒としてリンタングステン酸(触媒濃度:全モノマ−に対して3ppmのギ酸メチル溶液)を供給し重合した。重合機吐出口より排出された重合体にステアリン酸ナトリウム20ppm添加し、ベント口を有するニ軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練させて、ベント口で減圧脱揮を行いながら、触媒の失活および不安定末端の除去を行いペレット状の重合体を得た。その後、乾燥を行い、所望の重合体を得た。(メルトインデックス(190℃、荷重2.16kgで測定):9g/10分)
【0082】
・(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
B−1:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネ−ト](IRGANOX245:BASF社製)
B−2:ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト](IRGANOX1010:BASF社製)
・(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド
C−1:セバシン酸ジヒドラジド
C−2:アジピン酸ジヒドラジド
C−3:ドデカン二酸ジヒドラジド
・(D)ヒダントイン化合物
D−1:1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(「アミキュア」VDH:味の素ファインテクノ(株)製)
・(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩
E−1:ステアリン酸カルシウム
E−2:12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
【0083】
・(F)ヒンダ−ドアミン化合物
F−1:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノ−ルとの縮合物(アデカスタブLA−63P:(株)ADEKA製)
F−2:テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト(アデカスタブLA−52:(株)ADEKA製)
F−3:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとトリデシルアルコ−ルとの縮合物(アデカスタブLA−62:(株)ADEKA製)
以上、立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダ−ドアミン化合物
F−4:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト(TINUVIN770DF:BASF社製)立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級であるヒンダ−ドアミン化合物
【0084】
・(G)紫外線吸収剤
G−1:2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノ−ル(TINUVIN234:BASF社製)
G−2:N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミド(SanduvorVSU:クラリアント(株)製)
・(H1)脂肪酸エステル及び(H2)ポリアルキレングリコ−ル
H1−1:ポリエチレングリコ−ルモノステアリン酸エステル(ポリエチレングリコ−ルの平均重合度90)(ノニオンS−40:日油(株)製)
H2−1:ポリエチレングリコ−ル(平均分子量約8300)(PEG−6000S)
・(I)アルミニウム粉末顔料
I−1:アルミニウム粉末をポリエチレンに分散させたもの(アルミニウム70質量%/ポリエチレン30質量%)
【0085】
<評価>
実施例における特性評価項目及び評価方法は以下の通りである。結果を表3、4に示す。
【0086】
<成形品からのホルムアルデヒド発生量(VOC)評価>
実施例及び比較例で調製したポリアセタ−ル樹脂組成物を用い、下記条件で平板状試験片(100mm×40mm×2mmt)を成形した。この平板状試験片2枚を10Lのポリフッ化ビニル製サンプリングバッグに封入し脱気して4Lの窒素を入れ、65℃で2時間加熱した後、サンプリングバッグ内の窒素を0.5ml/minで3L抜き取り、発生したホルムアルデヒドをDNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)捕集管(Sep−Pak DNPH−Silica:Waters社製)に吸着させた。
【0087】
その後、DNPH捕集管からDNPHとホルムアルデヒドとの反応物をアセトニトリルで溶媒抽出し、高速液体クロマトグラフでDNPHとホルムアルデヒドとの反応物の標準物質を用いた検量線法により、発生したホルムアルデヒド量を求め、試験片単位質量あたりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
【0088】
*成形機:FANUC ROBOSHOT α−S100ia (ファナック(株))
*成形条件:シリンダ−温度(℃) ノズル−C1− C2− C3
190−190−180−160℃
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
金型温度 80(℃)
【0089】
<モ−ルドデポジット(MD)の評価>
実施例および比較例で調製したポリアセタ−ル樹脂組成物を用い、下記条件でモ−ルドデポジット試験片(33mm×23mm×1mmt)を成形した。
[評価方法]
5000shot連続成形した後、金型内のキャビティ部表面を目視にて観察し、以下の基準に従って付着物量を目視で判定した。
◎:付着物は全く確認されない
○:付着物はほとんど確認されない
△:一部付着物が確認される
×:全体に付着物が確認される
××:全体に多量の付着物が確認される
【0090】
*成形機:FANUC ROBOSHOT S−2000i 50B(ファナック(株))
*成形条件:シリンダ−温度(℃) ノズル−C1− C2− C3
205−215−205−185℃
射出圧力 40(MPa)
射出速度 1.5(m/min)
金型温度 80(℃)
【0091】
<耐候性の評価>
平板状成形品(70mm×40mm×3mmt)をUVフェードメータ[紫外線オートフェードメータ FAL−AU−H・B・EM:スガ試験機(株)製]を用いて、83℃のフェ−ド条件で800時間照射したのちに取り出し、以下の方法にて、試験片表面のクラックの有無、照射前後における色相の変化(ΔE)を調べた。
・クラックの有無
試験片表面を目視観察し、クラックの発生の有無を判定した。
・色相の変化(ΔE)
成形品の色相(L*、a*、b*)を日本電色工業(株)製Z−300A型カラ−センサ−
で測定し、色相の変化(ΔE)を次の式を用いて計算した。
ΔE={(L*
1−L*
0)
2+(a*
1−a*
0)
2+(b*
1−b*
0)
2}
1/2
なお、L*
0、a*
0、b*
0は初期の色相を示し、L*
1、a*
1、b*
1は照射後の色相を示す。
【0092】
値が小さいほど色相の変化が少ないことを示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
上記の通り、本発明の組成の範囲では、優れた耐候性を有し、ホルムアルデヒド発生量およびモ−ルドデポジットの発生量も安定的に抑制されることが明らかである。