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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-48521(P2021-48521A)
(43)【公開日】2021年3月25日
(54)【発明の名称】音場生成装置及び音場生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20210226BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   H04R3/00 310
   G10K11/178
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-170554(P2019-170554)
(22)【出願日】2019年9月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】堤 公孝
(72)【発明者】
【氏名】今泉 健太
(72)【発明者】
【氏名】中平 篤
(72)【発明者】
【氏名】野村 英之
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA44
5D220AB06
(57)【要約】
【課題】可聴域の音場において特定領域のみを限定的に抑圧可能なエリア消音技術を提供する。
【解決手段】音場生成装置1は、周波数が同じ及び異なる複数のキャリア信号を発生する発生部11と、前記複数のキャリア信号を制御対象の可聴音信号でそれぞれ変調する変調部12と、変調した前記複数のキャリア信号に対応する複数の変調超音波を送出する複数の再生ユニット部14a〜14gと、を備え、前記変調部12は、一部の変調超音波が生成する同一位置の音場において、互いの周波数及び振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、前記複数のキャリア信号のうち少なくとも2つのキャリア信号を変調する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が同じ及び異なる複数のキャリア信号を発生する発生部と、
前記複数のキャリア信号を制御対象の可聴音信号でそれぞれ変調する変調部と、
変調した前記複数のキャリア信号に対応する複数の変調超音波を送出する複数の再生部と、を備え、
前記変調部は、
一部の変調超音波が生成する同一位置の音場において、互いの周波数及び振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、前記複数のキャリア信号のうち2つのキャリア信号を変調する音場生成装置。
【請求項2】
前記複数の再生部は、
各再生部が入れ子構造で多層に同心円状に配置されている請求項1の音場生成装置。
【請求項3】
前記複数の再生部は、
奇数層目の各再生部が第1周波数の変調超音波を送出し、偶数層目の各再生部が前記第1周波数と異なる第2周波数の変調超音波を送出する請求項2に記載の音場生成装置。
【請求項4】
前記発生部は、
前記再生部を構成する超音波素子の公称周波数と同じ周波数の前記キャリア信号を発生する請求項1乃至3のいずれかの音場生成装置。
【請求項5】
音場生成装置で行う音場生成方法において、
前記音場生成装置が、
周波数が同じ及び異なる複数のキャリア信号を発生する第1ステップと、
前記複数のキャリア信号を制御対象の可聴音信号でそれぞれ変調する第2ステップと、
変調した前記複数のキャリア信号に対応する複数の変調超音波を送出する第3ステップと、を行い、
前記第2ステップでは、
一部の変調超音波が生成する同一位置の音場において、互いの周波数及び振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、前記複数のキャリア信号のうち2つのキャリア信号を変調する音場生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音場生成装置及び音場生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パラメトリックスピーカが知られている。パラメトリックスピーカは、超音波素子を振動させて超音波を送出することで、公共施設の案内掲示板等、特定エリアの方向にのみ可聴域の音場を生成する。また、超音波の指向性が強いことで生じる影響を防止するため、可聴域の音場を抑圧する方法も知られている(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−239047号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.M.Hedberg、外2名、“A Self-Silenced Sound Beam”、Acoustical Physics、Vol.56、No.5、2010年、p.637-p.639
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1は、パラメトリックスピーカが生成した可聴域の音場において、音場生成の設定位置である制御点よりも後方の音場を抑圧するにすぎず、特定領域のみを限定的に抑圧することは困難であった。また、特許文献1は、受聴者に本来聞かせたいパラメトリックスピーカと制御点との間の領域内の音も抑圧してしまう場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、可聴域の音場において特定領域のみを限定的に抑圧可能なエリア消音技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の音場生成装置は、周波数が同じ及び異なる複数のキャリア信号を発生する発生部と、前記複数のキャリア信号を制御対象の可聴音信号でそれぞれ変調する変調部と、変調した前記複数のキャリア信号に対応する複数の変調超音波を送出する複数の再生部と、を備え、前記変調部は、一部の変調超音波が生成する同一位置の音場において、互いの周波数及び振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、前記複数のキャリア信号のうち2つのキャリア信号を変調する。
【0008】
本発明の一態様の音場生成方法は、音場生成装置で行う音場生成方法において、前記音場生成装置が、周波数が同じ及び異なる複数のキャリア信号を発生する第1ステップと、前記複数のキャリア信号を制御対象の可聴音信号でそれぞれ変調する第2ステップと、変調した前記複数のキャリア信号に対応する複数の変調超音波を送出する第3ステップと、を行い、前記第2ステップでは、一部の変調超音波が生成する同一位置の音場において、互いの周波数及び振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、前記複数のキャリア信号のうち2つのキャリア信号を変調する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可聴域の音場において特定領域のみを限定的に抑圧可能なエリア消音技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態の音場生成装置を示す構成図である。
図2図2は、再生ユニット部の超音波送出面の構成の一例を示す図である。
図3図3は、再生部の超音波送出面の構成の一例を示す図である。
図4図4は、音場生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、可聴域の音場の生成方法の一例を示す図である。
図6図6は、可聴域の音場の抑圧方法の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態による音場の音圧分布を示す図である。
図8図8は、従来による音場の音圧分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0012】
[実施形態の概要]
本実施形態に係る音場生成装置は、周波数が同一及び異なる複数の変調超音波を送出する複数の再生ユニット部(スピーカ)を用いる。例えば、複数の再生ユニット部を周波数毎に階層化した多層構造で構成し、各層から周波数が同一及び異なる複数の変調超音波をそれぞれ送出する。これにより、複数の制御点(音場生成の設定位置)を設定可能とし、複数の可聴域の音場を生成できる。
【0013】
また、本実施形態に係る音場生成装置は、一部の変調超音波が生成する同一位置の制御点において、互いの振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、複数のキャリア信号のうち2つのキャリア信号を変調する。これにより、生成した複数の可聴域の音場のうち、当該同一位置の制御点における音場のみを限定的に抑圧できる。
【0014】
その結果、可聴域の音場において特定領域のみを限定的に抑圧可能なエリア消音技術を提供可能となる。
【0015】
[音場生成装置の構成]
図1は、本発明の実施形態の音場生成装置1を示す構成図である。音場生成装置1は、パラメトリックスピーカに相当する装置であり、発生部11と、変調部12と、増幅部13と、再生部14と、を備える。本実施形態では、音場生成装置1において、周波数が異なる2種類の変調超音波S1,S2を7つ送出する場合について説明する。
【0016】
発生部11は、周波数が同じ及び異なる7つのキャリア信号を発生する機能を備える。当該周波数は、再生部14を構成する超音波素子の公称周波数と同じ周波数である。具体的には、発生部11は、第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gをそれぞれ構成する各超音波素子群の超音波素子の公称周波数fc(40kHz、75kHz)で駆動される第1超音波信号〜第7超音波信号を出力する。
【0017】
つまり、発生部11は、再生部14の公称周波数fcと同じ周波数(40kHz、75kHz)の第1超音波信号〜第7超音波信号を出力する。超音波信号は、キャリア信号と同義である。尚、発生部11は、正弦波のキャリア波又は搬送波を発信する既存の発信器で実現可能である。
【0018】
変調部12は、上記7つのキャリア信号を、音場生成装置1に入力された制御対象の可聴音信号でそれぞれ変調する機能を備える。具体的には、変調部12は、上記周波数(4
0kH、75kHz)の第1超音波信号〜第7超音波信号を、制御対象の音の信号である可聴音信号(例えば、音声、楽音等)でそれぞれ変調し、当該第1超音波信号〜第7超音波信号の総数と同数である7つの第1変調超音波信号〜第7変調超音波信号を出力する。
【0019】
また、変調部12は、一部の変調超音波S1,S2が生成する同一位置の音場において、互いの周波数及び振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、上記7つのキャリア信号のうち周波数が同じ少なくとも2つのキャリア信号を変調する機能を備える。尚、変調部12は、既存の変調器で実現可能である。
【0020】
増幅部13は、変調した7つのキャリア信号をそれぞれ増幅する機能を備える。具体的には、増幅部13は、変調部12から出力された第1変調超音波信号〜第7変調超音波信号をそれぞれ増幅(例えば、逓倍等)し、再生部14を構成する第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gにそれぞれ出力する。増幅は、可聴域の音場において自然復調される可聴音信号の音圧レベルを調整することに繋がる。
【0021】
このとき、増幅部13は、上記周波数(40kHz、75kHz)の第1変調超音波信号〜第7変調超音波信号を、当該周波数と同じ公称周波数fcの超音波素子を有する第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gに出力する。尚、増幅部13は、既存の増幅器で実現可能である。
【0022】
再生部14は、互いに独立に動作する7つの第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gを備える。第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gは、それぞれ、図2に示すように、複数の超音波素子15を並列、格子状、千鳥状等に配置した超音波素子群で構成される。各超音波素子群における各超音波素子は、再生ユニット部毎に共通の公称周波数fcを備える。
【0023】
本実施形態では、第1再生ユニット部14a、第3再生ユニット部14c、第5再生ユニット部14e、第7再生ユニット部14gは、公称周波数fcが40kHzの超音波素子を備える。第2再生ユニット部14b、第4再生ユニット部14d、第6再生ユニット部14fは、公称周波数fcが75kHzの超音波素子を備える。
【0024】
また、再生部14は、増幅した7つのキャリア信号に対応する周波数が異なる2種類の7つの変調超音波S1,S2を外部に送出して外部空間内で再生する機能を備える。具体的には、第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gが、それぞれ、増幅部13から出力された第1変調超音波信号〜第7変調超音波信号で、自身の再生ユニット部を構成する複数の超音波素子を振動させることにより、周波数が異なる2種類の7つの第1変調超音波〜第7変調超音波を音場生成装置1の外部空間へ送出する。尚、再生部14は、超音波素子で構成される既存の超音波放射器で実現可能である。
【0025】
図3は、再生部14の超音波送出面の構成の一例を示す図である。第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gは、Y−Z平面の同一平面上に配置される。第1変調超音波〜第7変調超音波によって生成される可聴域の音場は、Y−Z平面と直交するX軸方向に生成される。X軸方向の可聴域の音場とY−Z平面とが交わってできる領域の中心を原点とすると、第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gは、それぞれ、当該原点を中心とする同心円状に複数の超音波素子を配置して構成される。また、第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gは、入れ子構造で多層に同心円状に配置される。
【0026】
本実施形態では、奇数層目の4つの再生ユニット部14a,14c,14e,14gは、それぞれ、40kHz(第1周波数)の超音波素子を備え、40kHzの変調超音波S
1を送出する。偶数層目の3つの再生ユニット部14b,14d,14fは、それぞれ、75kHz(第2周波数)の超音波素子を備え、75kHzの変調超音波S2を送出する。
【0027】
[音場生成装置の動作]
図4は、音場生成装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0028】
ステップS1;
まず、発生部11が、再生部14の超音波素子の公称周波数fcと同じ周波数(40kHz、75kHz)の第1超音波信号〜第7超音波信号を発生する。具体的には、発生部11は、40kHzの第1超音波信号、75kHzの第2超音波信号、40kHzの第3超音波信号、75kHzの第4超音波信号、40kHzの第5超音波信号、75kHzの第6超音波信号、40kHzの第7超音波信号を発生して変調部12に出力する。
【0029】
ステップS2;
次に、変調部12が、上記第1超音波信号〜第7超音波信号を、音場生成装置1に入力された可聴音信号でそれぞれ変調する。そして、変調部12は、変調後の40kHzの第1変調超音波信号、75kHzの第2変調超音波信号、40kHzの第3変調超音波信号、75kHzの第4変調超音波信号、40kHzの第5変調超音波信号、75kHzの第6変調超音波信号、40kHzの第7変調超音波信号を増幅部13に出力する。
【0030】
ステップS3;
次に、増幅部13が、変調した7つの変調超音波信号をそれぞれ増幅する。そして、増幅部13は、増幅後の40kHzの第1変調超音波信号、75kHzの第2変調超音波信号、40kHzの第3変調超音波信号、75kHzの第4変調超音波信号、40kHzの第5変調超音波信号、75kHzの第6変調超音波信号、40kHzの第7変調超音波信号を、それぞれ、第1再生ユニット部14a〜第7再生ユニット部14gに出力する。
【0031】
ステップS4;
最後に、第1再生ユニット部14aは、増幅部13から出力された40kHzの第1変調超音波信号で、自身の超音波素子(公称周波数fc=40kHz)を振動させることにより、40kHzの第1変調超音波S1を出力する。同一の公称周波数で構成された第3再生ユニット部14c、第5再生ユニット部14d、第7再生ユニット部14gも、第1再生ユニット部14aと同様に、40kHzの第3変調超音波S1、第5変調超音波S1、第7変調超音波S1をそれぞれ出力する。
【0032】
第2再生ユニット部14bは、増幅部13から出力された75kHzの第2変調超音波信号で、自身の超音波素子(公称周波数fc=75kHz)を振動させることにより、75kHzの第2変調超音波S2を出力する。同一の公称周波数で構成された第4再生ユニット部14d、第6再生ユニット部14fも、第2再生ユニット部14bと同様に、75kHzの第4変調超音波S2、第6変調超音波S2をそれぞれ出力する。
【0033】
図5に示すように、40kHzの第1変調超音波S1(1)が出力されることで、制御点X1において、音場が生成される。同様に、制御点X2には、75kHzの第2変調超音波S2(2)により音場が生成される。制御点X3には、40kHzの第3変調超音波S1(3)により音場が生成される。制御点X4には、75kHzの第4変調超音波S2(4)により音場が生成される。制御点X5には、40kHzの第3変調超音波S1(5)により音場が生成される。制御点X6には、75kHzの第4変調超音波S2(6)により音場が生成される。制御点X7には、40kHzの第3変調超音波S1(7)により音場が生成される。
【0034】
送出された7つの変調超音波のうち例えば2つの変調超音波(例えば、40kHzの第1変調超音波S1(1)と75kHzの第2変調超音波S2(2))を目標点である制御点Xで干渉させることで、差音に相当する可聴域以上の音場が生成される。そして、当該2つの音場が干渉(交差)する制御点Xの空間において、可聴音信号が自然復調され、減衰しない可聴域の音場が生成(再生)される。
【0035】
このように、周波数が同一及び異なる複数の変調超音波を送出する複数の再生ユニット部14a〜14gを用いるので、複数の制御点を設定可能となり、複数の可聴域の音場を生成可能となる。
【0036】
また、ステップS2において、変調部12は、予め設定した制御点Xに生成される可聴域の音場が打ち消されるように変調を行う。例えば、変調部12は、図6に示すように、40kHzの第1変調超音波S1(1)が制御点X10で復調される可聴音信号Aと、40kHzの第3変調超音波S1(3)が制御点X20で復調される可聴音信号Bと、が互いに同一振幅で同一位相の可聴域の音場を生成するように変調する。同時に、変調部12は、75kHzの第2変調超音波S2(2)が制御点X10で復調される可聴音信号Cと、40kHzの第7変調超音波S1(7)が制御点X20で復調される可聴音信号Dと、が第1変調超音波S1(1)の可聴音信号Aと同一振幅で逆位相の可聴域の音場を生成するように変調を行う。
【0037】
これにより、制御点X10においては、2つの可聴音信号A,Cは互いに逆位相であるものの周波数(40kHzに対応する可聴域の周波数と75kHzに対応する可聴域の周波数)が異なるので、可聴域の音場が生成される。一方、制御点X20においては、2つの可聴音信号B,Dは互いに逆位相であり周波数(共に40kHzに対応する可聴域の周波数)及び振幅は同じであるため、可聴域の音場は打ち消される。つまり、生成した複数の可聴域の音場のうち、同一位置の制御点における音場のみを限定的に抑圧可能となる。
【0038】
変調部12が行う変調方法については、任意の既存の変調方法を用いて実現できる。予め設定した制御点Xで可聴域の音場が生成されるように変調を行う変調方法の一例について説明する。例えば、超音波素子Aと超音波素子Bに対して、入力音声(あ)で変調した変調超音波aと変調超音波bをそれぞれ入力する。また、設定すべき制御点Xに配置したマイクで可聴音の音圧が最小になるように変調超音波bに用いる入力音声「あ」を制御する。当該制御とは、可聴音信号の振幅に−1をかけて遅延量を制御する等の処理である。そして、算出した遅延量を記録しておき、実際に音声を再生する際に当該遅延量を適用した入力音声「あ’」で変調超音波bを生成する。その他、特許文献1のようにフィードバック制御を用いてもよいし、非特許文献1にように実験的に求めて行う方法もある。
【0039】
[音場の測定結果]
図7は、本実施形態の音場生成装置1を用いて測定した音場の音圧分布を示す図である。1kHzの純音を用いた。再生部14から制御点Xまでの距離は4mである。図8は、従来のパラメトリックスピーカを用いて測定した音場の音圧分布を示す図である。1kHzの純音を用いた。図7図8を比較すると、本実施形態の音場生成装置1を用いることで、制御点Xにおいてエリア消音されている様子を把握できる。
【0040】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、音場生成装置1が、周波数が同じ及び異なる複数のキャリア信号を発生する発生部11と、前記複数のキャリア信号を制御対象の可聴音信号でそれぞれ変調する変調部12と、変調した前記複数のキャリア信号に対応する複数の変調超音波を送出する複数の再生ユニット部14a〜14gと、を備え、前記変調部12は、一部の変調
超音波が生成する同一位置の音場において、互いの周波数及び振幅が同一となり位相が互いに逆位相となる2つの可聴音信号が生成されるように、前記複数のキャリア信号のうち周波数が同じ少なくとも2つのキャリア信号を変調するので、複数の制御点を設定可能となり、複数の可聴域の音場を生成可能となるとともに、生成した複数の可聴域の音場のうち、同一位置の制御点における音場のみを限定的に抑圧可能となる。その結果、可聴域の音場において特定領域のみを限定的に抑圧可能なエリア消音技術を提供できる。
【0041】
[変形例1]
本実施形態では、2つの周波数を用いる場合を説明したが、2つ以外の数の周波数を用いてもよい。
【0042】
[変形例2]
本実施形態では、7つの再生ユニット部を用いる場合を説明したが、7つ以外の数の再生ユニット部を用いてもよい。
【0043】
[変形例3]
本実施形態では、変調部12と再生部14との間に増幅部13を接続した場合を説明したが、増幅部13を用いないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 :音場生成装置
11:発生部
12:変調部
13:増幅部
14:再生部
14a:第1再生ユニット部
14b:第2再生ユニット部
14c:第3再生ユニット部
14d:第4再生ユニット部
14e:第5再生ユニット部
14f:第6再生ユニット部
14g:第7再生ユニット部
15:超音波素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8