【解決手段】吸収性本体(10)と、腹側胴回り部(30a)及び背側胴回り部(30b)を有する外装体(30)と、を有する吸収性物品(10)であって、外装体(30)は、厚さ方向において、第1疎水性シート(301)と、第1疎水性シート(301)よりも非肌側に配置された第2疎水性シート(302)と、第1及び第2疎水性シート(301、302)の間に設けられた親水性シート(303)とを有し、外装体(30)は、少なくとも一部の領域において、親水性シート(303)の非肌側面(303a)と第2疎水性シート(302)の肌側面(302a)とが接触し、同領域において、第1疎水性シート(301)の密度は、前記第2疎水性シート(302)の密度よりも高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
展開状態において互いに交差する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液体を吸収する吸収性本体と、前記吸収性本体の前記長手方向の一端側に位置する腹側胴回り部と、前記吸収性本体の前記長手方向の他端側に位置する背側胴回り部とを有する外装体と、を有する吸収性物品であって、前記外装体は、前記厚さ方向において、肌側に配置された第1疎水性シートと、前記第1疎水性シートよりも非肌側に配置された第2疎水性シートと、前記第1疎水性シートと前記第2疎水性シートとの間に設けられた親水性シートとを有し、前記外装体は、少なくとも一部の領域において、前記親水性シートの非肌側面と前記第2疎水性シートの肌側面とが接触しており、前記少なくとも一部の領域において、前記第1疎水性シートの密度は、前記第2疎水性シートの密度よりも高いことを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
このような吸収性物品によれば、外装体の第1疎水性シートと第2疎水性シートとの間に親水性シートを設けた部分においては、肌から出た汗は、第1疎水性シートを通過し、親水性シートで吸収され、さらに非肌側に位置する第2疎水性シートを介して蒸散される。第1疎水性シートの密度よりも低密度である第2疎水性シートは、第1疎水性シートよりも通気性に優れ、第2疎水性シート側からの汗の蒸散・気化を起こり易くさせる。肌側のシートが疎水性を有する第1疎水性シートであることから、汗が通った後もシートの表面がべた付かず、また、第2疎水性シートからは汗が抜けやすいため、着用者は快適に過ごすことができる。
【0011】
かかる吸収性物品であって、前記第1疎水性シートは、ポリエチレン及びポリプロピレンのうち、少なくともいずれか一方を含むことが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、吸水率が低いポリエチレン及びポリプロピレンのうち、少なくともいずれか一方を含む第1疎水性シートによって、肌に接するシート表面をドライに保つことができる。これにより、着用者がべたつき感を感じることなく、快適に過ごすことができる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記第1疎水性シートの密度は、0.05〜0.15g/cm
3であることが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、肌側に配置される第1疎水性シートの密度を高くすることで、密度が低く通気性に優れた第2疎水性シート側(非肌側)からの汗の蒸散を促進できる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記親水性シートは、パルプ繊維を含むことが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、親水性シートの汗の吸収性が向上し、第1疎水性シートを通った汗が親水性シートに吸収されることで、肌側面である第1疎水性シートの表面のべたつきを抑制する。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記少なくとも一部の領域において、前記親水性シートの密度は、前記第1疎水性シートの密度よりも高いことが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、親水性シートの非肌側面と第2疎水性シートの肌側面とが接触する少なくとも一部の領域においては、各シートの密度の関係は、親水性シートが最も高く、第2疎水性シートが最も低くなる(すなわち、親水性シート、第1疎水性シート、第2疎水性シートの順で密度が低くなっている)。汗は密度が高い方へと引き込まれることから、汗は、第1疎水性シートを通って親水性シート側へ引き込まれ易くなる。汗の移行性を向上させることで、肌側面のべたつき等の不快感や皮膚トラブルを防止できる。そして、最も密度の低い第2疎水性シートは、通気性に優れていることから、親水性シートに吸収された汗は、親水性シートよりも非肌側面に配置されている第2疎水性シート側から蒸散され、汗が抜け易くなる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記親水性シートは、抗菌剤を含み、前記抗菌剤は、塩化セチルピリジニウム又はカテキンを含むことが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、抗菌剤によって汗に含まれる雑菌の繁殖を抑え、汗を吸収した親水性シートを衛生的に保つことができる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、前記第1疎水性シートと前記親水性シートとは、ホットメルト接着剤により、線状または点状に接合されていることが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、第1疎水性シートと親水性シートとを線状または点状に接合することで一体化しつつも、第1疎水性シートからの汗の通過を必要以上に妨げず、また、親水性シートを構成するパルプ繊維の吸収性を阻害しない。したがって、第1疎水性シート及び親水性シート本来の機能を阻害せずに汗を吸収でき、着用者に不快感を与えない。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記第1疎水性シートと、前記第2疎水性シートと、前記親水性シートとが前記長手方向に重複する領域において、前記第1疎水性シートと前記第2疎水性シートとの間には、前記幅方向に伸縮する弾性部材が設けられていることが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、第1疎水性シート、親水性シート、及び第2疎水性シートが一体的に収縮することで、着用者の肌に直接接触する面積を減らし、弾性部材の跡が肌に付きにくくなり、不快感が軽減される。また、親水性シートに弾性部材が存在しない状態(シートが収縮せずに広がった状態)と比較して、親水性シートが幅方向に収縮することで汗を吸収する親水性シートの面積が増え、汗の吸収性が向上し、より快適に過ごすことができる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記弾性部材は、前記長手方向に並んで複数設けられており、前記長手方向に隣り合う二つの前記弾性部材の間の距離は、前記弾性部材自体の前記長手方向の長さの2倍よりも長いことが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、長手方向に隣り合う二つの弾性部材の間の距離を、弾性部材自体の長手方向の長さの2倍以下にする場合と比較して、弾性部材自体の長手方向の長さの2倍よりも長くする方が、長手方向において弾性部材35a、35a間に適度な空間が生まれ、各弾性部材によって汗の吸収や蒸散が阻害されない。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記親水性シートは、ティッシュであり、前記ティッシュは、前記第1疎水性シートと前記第2疎水性シートとの間において、前記幅方向の一端から他端にわたって連続して設けられ、前記腹側胴回り部の前記幅方向の一端部と前記背側胴回り部の前記幅方向の一端部とを接合する第1接合部と、前記腹側胴回り部の前記幅方向の他端部と前記背側胴回り部の前記幅方向の他端部とを接合する第2接合部とが設けられることが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、親水性シートが、薄く且つ繊維の短いティッシュからなることから、幅方向における端部の接合を阻害せず、接合部の強度を確保できる。つまり、第1疎水性シートと、親水性シートと、第2疎水性シートとを含む腹側及び背側胴回り部の幅方向の両端部を熱溶着(ヒートシール)等により接合させる際、接合部分でティッシュの繊維が容易に切断されるため、第1疎水性シートと第2疎水性シートとを確実に接合できる。これにより、接合部の接合強度の低下を防止できる。
【0029】
かかる吸収性物品であって、前記第1疎水性シートと、前記親水性シートと、前記第2疎水性シートとが前記厚さ方向に見て重複する領域において、前記第1疎水性シート及び前記第2疎水性シートの少なくとも一方は、開口を有していることが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、第1疎水性シートのみが開口を有する場合、開口部分から汗を引き込み、親水性シート側への汗の移行性を向上させる。それにより、第1疎水性シートの表面のべたつき感が生じ難くなり、肌を快適に保つことができる。第2疎水性シートのみが開口を有する場合、汗の蒸散がより促され、蒸れを防止できる。また、第1及び第2疎水性シートの両方が開口を有する場合には、汗の吸収と蒸散の両方が促進され、着用者の肌をより快適に保つことができる。
【0031】
かかる吸収性物品であって、前記親水性シートは、前記第1疎水性シート又は前記第2疎水性シートの色とは異なる色の着色領域を有することが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、親水層(親水性シート)の存在が視認でき、おむつとしての審美性も高めることができる。
【0033】
かかる吸収性物品であって、前記外装体の少なくとも一部の領域は、前記第1疎水性シート、前記第2疎水性シート及び前記親水性シートのみを有する領域であることが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、第1疎水性シート、第2疎水性シート及び親水性シートのみで構成される領域では、汗の吸収率及び汗の蒸散機能が最も高まり、肌側面のべたつきを抑制し、非肌側面から汗も蒸散され易くなるため、着用者はより快適に過ごすことができる。
【0035】
===実施形態===
<おむつ1の基本構成>
以下、本発明に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて実施形態を説明する。
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1(おむつ1)の概略斜視図である。
図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図である。
図3は、
図2中のC−C概略断面図である。
【0036】
ここで、上述の「展開状態」とは、おむつ1の幅方向における、腹側胴回り部(後述する腹側胴回り部30a)の両端部と、背側胴回り部(後述する背側胴回り部30b)の両端部との接合を解き、腹側胴回り部と背側胴回り部とを分離するとともに、おむつ1をその長手方向に開くことで、おむつ1を平面上に展開した状態のことである。また、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する吸収性本体10や,胴回り部30等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。
【0037】
おむつ1は、
図1に示されるパンツ型状態において、互いに交差する上下方向と幅方向と前後方向とを有している。また、同おむつ1は、所謂3ピースタイプであり、着用者の股間部にあてがわれ排泄液等の液体を吸収する吸収性本体10と、同着用者の胴回りを覆う外装体30とを有する。また、外装体30は、腹側を覆う腹側胴回り部30aと、背側を覆う背側胴回り部30bとを有している。上下方向の上側が外装体30側に対応し、下側が股間部側に対応する。また、前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。
【0038】
そして、
図2の展開状態において、おむつ1は、互いに交差する長手方向と、幅方向と、厚さ方向とを有する。以下では、この展開状態における長手方向の一方側のことを「腹側」若しくは「前側」とも呼び、長手方向の他方側のことを「背側」若しくは「後側」とも呼ぶ。展開状態の長手方向は、パンツ型状態の上下方向に沿った方向である。また、厚さ方向は、
図3に示すように、おむつ1を構成する資材が積層された方向である。厚さ方向において着用者に接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0039】
図2の展開状態では、腹側胴回り部30a(図の長手方向前側)と背側胴回り部30b(図の長手方向後側)とが互いに長手方向に間隔をあけて平行に並んだ状態で、これらの間に吸収性本体10が掛け渡されつつ、同吸収性本体10の長手方向の各端部10ea,10ebがそれぞれ最寄りの胴回り部30a,30bに接合固定されており、その外観形状は平面視略H形状をなしている。そして、この状態から、吸収性本体10がその長手方向の略中央部C10を折り位置として二つ折りされる。この二つ折りの状態において互いに対向する腹側胴回り部30aと背側胴回り部30bとが、着用者の脇腹に当接すべき部分である腹側胴回り部側縁部30aesと、背側胴回り部側縁部30besと(つまり、幅方向の各端部)にて接合・連結されると、これら胴回り部30a,30b同士が環状に成形される。これにより、
図1に示すような胴周り開口BH及び一対の脚周り開口LHが形成された着用状態のおむつ1となる。また、以下の説明では、開口BHの環状開口部を形成する腹側胴回り部30aの長手方向の端を腹側胴回り部上端30aetとし、開口BHの環状開口部を形成する背側胴回り部30bの長手方向の端を背側胴回り部上端30betとする。
【0040】
以下、
図1乃至
図3を参照しつつ、おむつ1の3つの構成部品である吸収性本体10、腹側胴回り部30a、及び背側胴回り部30bについて説明する。
【0041】
<吸収性本体10の構成>
図2及び
図3に示すように、吸収性本体10は、肌側面を形成する液透過性の表面シート部材13と、非肌側面を形成する液不透過性の裏面シート部材15と、これら両シート部材13、15間に介在するように配置された吸収性コア11とを備えている。おむつ1では、吸収性コア11は、液透過性のコアラップシート12を有しているが、有さなくても良い。
【0042】
吸収性コア11は、液体吸収性素材を積層してなる部材であり、尿等の排泄物を吸収することができる。液体吸収性素材としては、例えば、パルプ繊維等の液体吸収性繊維を使用することができる。なお、吸収性コア11は、液体吸収性粒状物として例えば高吸収性ポリマーを含有していても良いし、または、液体吸収性繊維及び液体吸収性粒状物以外の液体吸収性素材を含んでいても良い。
【0043】
本実施形態の吸収性コア11は、
図2における長手方向の一方側に腹側端11aと、
図2における長手方向の他方側に背側端11bとを有する。そして、腹側端11aと背側端11bとの間に、腹側端11a及び背側端11bよりも幅方向の幅が狭いくびれ部11cを有する。これにより、吸収性コア11は
図2に示されるような平面視略砂時計形状となるように構成され、吸収性コア11が着用者の股間にフィットしやすくなる。なお、吸収性コア11の形状は、上記の平面視略砂時計形状に限らず、例えば、平面視略矩形形状でもよい。
【0044】
表面シート部材13は、吸収性コア11を肌側から覆うシート状の部材であり、例えば吸収性コア11よりも大きい平面サイズの液透過性の不織布である。また、裏面シート部材15は、吸収性コア11を非肌側から覆うシート状の部材であり、吸収性コア11よりも大きい平面サイズのシートである。裏面シート部材15の一例としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等の液不透過性の防漏シート15aと、不織布等の外装シート15bとが貼り合わされた二層構造のシートが挙げられる。そして、これら裏面シート部材15と表面シート部材13との間に吸収性コア11を挟んだ状態において、吸収性コア11の四辺から外側にはみ出す部分にて、裏面シート部材15の防漏シート15aと表面シート部材13とが額縁状に貼り合わされ、これにより、吸収性本体10が概ね形成されている。
【0045】
また、おむつ1では、
図1乃至
図3に示すように、外装シート15bによって所謂立体ギャザーLSG及び脚回りギャザーLGが形成される。立体ギャザーLSGは、表面シート部材13の幅方向の各端部にそれぞれ起立して設けられた防漏壁部であり、他方、脚回りギャザーLGは、おむつ1の各脚周り開口LH、LHに形成される脚周り伸縮部のことである。かかる外装シート15bについて詳説すると、先ず、
図3に示すように、外装シート15bの幅方向の寸法は、防漏シート15aよりも十分大きくされており、すなわち、外装シート15bは、防漏シート15aの幅方向の両側から幅方向に大きくはみ出している。そして、このはみ出した部分15bfが、吸収性本体10の幅方向の端部10esをなす位置を折り返し位置として幅方向の中央側に折り返されて、同折り返し位置の近傍に長手方向に沿って糸ゴム等の脚周り弾性部材17が長手方向に伸長された状態で固定され、これにより、上記の脚回りギャザーLGが形成されている。
【0046】
そして、幅方向の中央側に折り返された部分15bgは、更に幅方向の中央側へと延びていき、表面シート部材13の幅方向の端部を覆う位置で、同端部に接合されている。そして、この端部に接合された部分よりも更に幅方向の先端側の部分が自由端部分LSGfとして表面シート部材13から起立可能となっている。また、自由端部分LSGfの先端部には、長手方向に沿って糸ゴム等のLSG弾性部材18が長手方向に伸長された状態で固定されている。自由端部分LSGfは、同LSG弾性部材18から付与される収縮力によって長手方向に収縮して表面シート部材13から起立し、これにより、同自由端部分LSGfは立体ギャザーLSGとして機能する。
【0047】
なお、不図示であるが、場合によっては、表面シート部材13と吸収性コア11との間、又は、裏面シート部材15と吸収性コア11との間に、セカンドシートとしてティッシュペーパー等の液透過性シートを介装しても良い。
【0048】
<腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bの構成>
図2に示すように、外装体30の腹側胴回り部30aは、吸収性本体10の長手方向の前側(一端側)に位置し、背側胴回り部30bは、吸収性本体10の長手方向の後側(他端側)に位置している。
図4Aは、
図1中のA−A線に沿った腹側の概略断面図であり、
図4Bは、
図1中のA−A線に沿った背側の概略断面図である。
図5Aは、
図1中のB−B線に沿った腹側の概略断面図であり、
図5Bは、
図1中のB−B線に沿った背側の概略断面図である。
【0049】
図4A及び
図4Bに示すように、外装体30の腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bは、それぞれ、厚さ方向において肌側に配置された第1疎水性シート301と、第1疎水性シート301よりも非肌側に配置された第2疎水性シート302と、第1疎水性シート301と第2疎水性シート302との間に設けられた親水性シート303とを備えている。第1疎水性シート301は、疎水性の繊維で構成された疎水性を有するシートであり、着用者の汗を透過させる。親水性シート303は、汗を吸収可能な親水性のシートであり、詳細については後述する。第2疎水性シート302は、第1疎水性シート301と同様に疎水性の繊維で構成された疎水性を有するシートであり、親水性シート303よりも非肌側に配置されることによって、汗の蒸散を促している。尚、本実施形態においては、腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bの双方に親水性シート303を設けているが、親水性シート303は、腹側胴回り部30aのみに、或いは、背側胴回り部30bのみに設けてもよい。
【0050】
ここで、上記の「疎水性」とは、各第1及び第2疎水性シート301、302の表面において液体が拡がらず、そして第1及び第2疎水性シート301、302の表面が90°よりも大きい接触角を有することを意味する。接触角とは、水平面(水平な表面)を有する各第1及び第2疎水性シート301、302と当該水平面上に滴下された水(液滴)とを接触させた状態において、液体の輪郭曲線と当該水平面との交点における当該輪郭曲線の接線と、当該水平面とがなす角度である。各第1及び第2疎水性シート301、302の接触角は、90°よりも大きく、疎水性の表面を有している。逆に、接触角が90°よりも小さければ、親水度の高い親水性と判断され、親水性シート303は、その表面が90°よりも小さい接触角を有している。
【0051】
また、第2疎水性シート302は、
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、腹側胴回り部上端30aet及び背側胴回り部上端30betから上下方向の上側に延出し、腹側胴回り部上端30aet及び背側胴回り部上端30betをそれぞれ折り返し位置として、胴周り開口BHの周縁部に沿って第1疎水性シート301の肌対向面側に折り返される折り返し部分302Fを有している。本実施形態では、折り返し部分302Fは、吸収性本体10の長手方向の前端及び後端を被覆しているが、被覆しないように折り返し部分302Fを短くしてもよい。
【0052】
上述のように、親水性シート303を第1疎水性シート301と第2疎水性シート302との間に設けることで、まず、着用者の肌から出た汗は、第2疎水性シート302の折り返し部分302Fを通り、第1疎水性シート301を通過し、親水性シート303で吸収される。そして、吸収された汗は、さらに非肌側に位置する第2疎水性シート302を介して蒸散される。
【0053】
また、外装体30は、厚さ方向において、最も非肌側に配置される第2疎水性シート302と親水性シート303との間の一部に、液体は通さないが通気性のある素材からなる通気性フィルム(不図示)を設けてもよい。特に
図4A及び
図4Bに示すような、おむつ1の幅方向の略中央部においては汗をかきやすく、且つ上下方向の下側に吸収性本体10も存在することから蒸れやすいため、このような通気フィルムを設けることによって汗の蒸散をより促すこともできる。
【0054】
通常、疎水性を有する各シート(ここでは疎水性シート301,302)の間に汗を吸収する親水性のシート(ここでは、親水性シート303)を配することによって、汗の吸収を速やかに行いつつ、親水性のシートが直接肌と接触しないことから、肌に対するべたつき感を低減できる。しかしながら、親水性のシートの汗の吸収量が多くなる場合等には、汗戻りする虞があった。
【0055】
そこで、汗の吸収及び蒸散をさらに向上させるため、本発明に係る外装体30は、例えば以下の構成を採用する。
図5A及び
図5Bに示すように、外装体30の少なくとも一部の領域においては、親水性シート303の非肌側面303aと第2疎水性シート302の肌側面302aとが接触している。そして、当該領域では、第1疎水性シート301の密度が、第2疎水性シート302の密度よりも高いことが好ましい。第1疎水性シート301よりも密度が低い第2疎水性シート302は通気性に優れ、親水性シート303で吸収された汗は、第2疎水性シート302側(非肌面側)から蒸散・気化され易くなる。また、肌側に配置される第1疎水性シート301および折り返し部分302Fは疎水性を有しているため、汗が通った後も肌側の表面がべたつかず、着用者は快適に過ごすことができる。
【0056】
本実施形態でいう「密度」は、上述の通り、外装体30の少なくとも一部の領域における密度であり、好ましくは、外装体30のより広い領域で同様の密度関係を有する。当該少なくとも一部の領域は、例えば、腹側胴回り部30a(背側胴回り部30b)において、
図1又は
図2に示すB−B線と親水性シート303とが交差する部分近傍の領域である。その領域にて、第1疎水性シート301、第2疎水性シート302及び親水性シート303からそれぞれ1cm角の試験片を採取し、密度の測定を行う。本実施形態では、各シートの密度の大小関係が確認できれば良いため、厳密な値を求める必要はなく、測定値に多少の誤差があっても許容される。
【0057】
また、本実施形態において、第1疎水性シート301の密度は、0.05〜0.15g/cm
3の範囲内であることが望ましい。第1疎水性シート301の密度を高くすることにより、親水性シート303で吸収した汗を、肌側に位置する第1疎水性シート301側からでなく、粗密である故に通気性の優れた第2疎水性シート302側(非肌側)から蒸散させることを促進できる。
【0058】
また、本実施形態において、親水性シート303の密度は、第1疎水性シート301の密度よりも高いことが望ましい。具体的には、親水性シート303の密度は、0.15〜0.6g/cm
3の範囲内であることが望ましい。このようにすることで、親水性シート303の非肌側面303aと第2疎水性シート302の肌側面302aとが接触する領域においては、親水性シート303の密度が最も高く、第2疎水性シート302の密度が最も低くなる。すなわち、親水性シート303、第1疎水性シート301、第2疎水性シート302の順で密度が低くなっている。通常、汗は密度が高い方へと引き込まれることから、着用者の汗は、まず、第1疎水性シート301を通って親水性シート303側へ引き込まれ易くなる。汗の移行性を向上させることで、肌側面のべたつき等の不快感や皮膚トラブルを防止できる。そして、最も密度の低い第2疎水性シート302は通気性に優れているため、親水性シート303に吸収された汗は、親水性シート303よりも非肌側面に配置されている第2疎水性シート302側から蒸散され易い。そのような密度の関係により、汗がおむつ1から抜け易くなり、着用者は、汗をかいても快適に過ごすことができる。
【0059】
また、第1疎水性シート301は、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)のうち、少なくともいずれか一方を含むことが望ましい。ポリエチレン及びポリプロピレンは吸水率が極めて低く、それらのいずれかを含むことで、汗が第1疎水性シート301を通過した後も第1疎水性シート301の表面はドライに保たれる。これにより、着用者がべたつき感を感じることなく、快適に過ごすことができる。
【0060】
そして、汗の吸収を促すために、親水性シート303は、パルプ繊維を含むことが望ましく、親水性シート303として、パルプシートやティッシュ等を例示できる。それにより、親水性シート303の汗吸収性が向上し、第1疎水性シート301を通った汗が親水性シート303に速やかに吸収され、肌側に配置されている第1疎水性シート301の表面のべたつきを抑制できる。
【0061】
また、親水性シート303は、汗を吸収した後でもシートの衛生を保つために、抗菌剤を含むことが望ましく、抗菌剤の例としては、塩化セチルピリジニウム又はカテキン等を含むことが望ましい。本実施形態では、親水性シート303を構成するパルプ繊維に上述の塩化セチルピリジニウム等を吸着させることで、抗菌性を付与している。これにより、汗に含まれる雑菌の繁殖を抑え、汗を吸収した親水性シート303を衛生的に保つことができる。
【0062】
そして、第1疎水性シート301と親水性シート303とは、ホットメルト接着剤により、線状または点状に接合されている。ここで言うホットメルト接着剤とは、加熱によって溶融して流動状態で塗布可能となる熱可塑性接着剤のことである。第1疎水性シート301と親水性シート303とを接合することで両シートを一体化しつつも、線状又は点状に塗布されたホットメルト接着剤は、第1疎水性シート301からの汗の通過を必要以上に妨げず、また、親水性シート303を構成するパルプ繊維の吸収性を阻害しない。したがって、第1疎水性シート301及び親水性シート303本来の機能を阻害せずに汗を吸収でき、着用者に不快感を与えにくくすることができる。
【0063】
図4A及び
図4Bに示す腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bは、第2疎水性シート302が、腹側胴回り部上端30aet及び背側胴回り部上端30betをそれぞれ折り返し位置として折り返した折り返し部分302Fを有しているが、折り返さない構成であってもよい。つまり、第2疎水性シート302の上下方向の上端が、第1疎水性シート301の上下方向の上端と同じ位置で終端してもよい。そのような場合、外装体30の腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bには、第1疎水性シート301、第2疎水性シート302及び親水性シート303のみを有する領域が形成される。第1疎水性シート301、第2疎水性シート302及び親水性シート303のみで構成される領域では、汗の吸収性及び汗の蒸散機能が最も高まり、肌側面(第1疎水性シート301の肌側面)のベタつきを抑制し、非肌側面(第2疎水性シート302の非肌側面)から汗も蒸散されやすくなるため、着用者はより快適に過ごすことができる。
【0064】
また、
図2に示すように、腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bには、幅方向に沿って糸ゴム等の複数本の弾性部材35、35・・・が幅方向に伸長された状態で配置されている。これにより、腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bには、それぞれ幅方向の伸縮性が付与されている。また、かかる複数本の弾性部材35、35・・・は、長手方向に間隔を空けて長手方向に並んで設けられている。本明細書中では、腹側胴回り部30aに設けられる弾性部材35を腹側弾性部材35aとし、背側胴回り部30bに設けられる弾性部材35を背側弾性部材35bとする。
【0065】
図4A及び
図4Bに示すように、第1疎水性シート301と、第2疎水性シート302と、親水性シート303とが上下方向(長手方向)に重複する領域において、第1疎水性シート301と第2疎水性シート302との間に親水性シート303が位置し、各腹側弾性部材35a及び各背側弾性部材35bは、第1疎水性シート301と第2疎水性シート302との間に設けられている。このように各弾性部材35a及び35bを配置することで、第1疎水性シート301、親水性シート303、及び第2疎水性シート302が一体的に収縮し、着用者の肌に直接接触する面積を減少でき、弾性部材35a及び35bの跡が肌に付きにくくなり、不快感が軽減される。また、親水性シート303と上下方向に重なる領域に弾性部材が存在しない状態(親水性シート303が収縮せずに広がった状態)と比較して、親水性シート303が幅方向に収縮することで汗を吸収する親水性シート303の面積が増え、汗吸収性が向上し、着用者はより快適に過ごすことができる。
【0066】
また、長手方向に並んで設けられる複数の弾性部材35(35a、35b)においては、
図4Aに例として示すように、長手方向(上下方向)に隣り合う二つの弾性部材35a、35aの間の距離(L2)が、一つの弾性部材35a自体の上下方向(長手方向)の長さ(L1)の2倍よりも長いことが望ましい。このような構成によれば、長手方向に隣り合う二つの弾性部材35a、35aの間の距離(L2)を、弾性部材35a自体の長手方向の長さ(L1)の2倍以下にする場合と比較して、弾性部材35a自体の長手方向の長さ(L1)の2倍よりも長くする方が、長手方向において弾性部材35a、35a間に適度な空間が生まれ、各弾性部材35aが汗の吸収や蒸散を阻害せず、汗が抜け易くなる。
【0067】
上述のように、親水性シート303は、パルプ繊維を含むことが望ましく、当該親水性シート303がティッシュである場合、
図2に示すように、第1疎水性シート301と第2疎水性シート302との間において、ティッシュを幅方向の一端から他端にわたって連続して設けることができる(
図2において網掛けのハッチングで示す領域を参照)。そして、着用状態のおむつ1(
図1)を形成するために、腹側胴回り部30aの幅方向の一端部(腹側胴回り部側縁部30aesの一方)と、背側胴回り部30bの幅方向の一端部(背側帯部材側縁部30besの一方)とを接合する第1接合部31(
図1)と、腹側胴回り部30aの幅方向の他端部(腹側胴回り部側縁部30aesの他方)と、背側胴回り部30bの幅方向の他端部(背側帯部材側縁部30besの他方)とを接合する第2接合部32(
図1)が設けられる。第1接合部31及び第2接合部32を設ける際、幅方向の一端から他端にわたって連続して設けられている親水性シート303も一緒に接合されることとなるが、第1疎水性シート301と第2疎水性シート302との間に異素材である親水性シート303が存在すると、通常は、接合強度が低下することも考えられる。しかしながら、親水性シート303は、薄く、繊維の短いティッシュからなるため、腹側及び背側胴回り部30a、30bの幅方向の両端部を熱溶着(ヒートシール)等により接合させる際、接合部分でティッシュの繊維が容易に切断されることから、第1疎水性シート301と第2疎水性シート302とを確実に接合することができる。これにより、第1疎水性シート301と第2疎水性シート302との接合強度の低下を防止できる。
【0068】
また、
図5A及び
図5Bに示すような第1疎水性シート301と、親水性シート303と、第2疎水性シート302とが厚さ方向に見て重複する領域においては、第1疎水性シート301及び第2疎水性シート302の少なくとも一方は、開口(不図示)を有していてもよい。上述の「厚さ方向に見て重複する領域」とは、厚さ方向に見た場合に、
図2の腹側胴回り部30a及び背側胴回り部30bにおいて親水性シート303が配置されている部分(網掛けのハッチングで示した親水性シート303の領域)と重複する領域を意味する。当該領域において、第1疎水性シート301のみが開口を有する場合、開口部分から汗を引き込み、親水性シート303側への汗の移行性を向上させる。それにより、第1疎水性シート301の表面のべたつき感が生じ難くなり、肌を快適に保つことができる。当該領域において、非肌側面である第2疎水性シート302のみが開口を有する場合には、汗の蒸散がより促され、肌を快適に保つことができる。また、第1疎水性シート301及び第2疎水性シート302の両方が開口を有する場合には、汗の吸収と蒸散の両方が促進され、着用者の肌をより快適に保つことができる。
【0069】
また、望ましくは、親水性シート303が、第1疎水性シート301又は第2疎水性シート302の色とは異なる色の着色領域(不図示)を有していると良い。当該着色領域によって、汗を吸収可能な親水性シート303の存在を視覚的に認識させることができ、おむつとしての審美性も高めることができる。また、当該着色領域は、単に着色させた領域だけでなく、デザイン性のある絵柄や模様等を有していてもよい。
===その他の実施の形態===
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0071】
上述の実施形態では、吸収性物品の一例としてパンツ型使い捨ておむつ1を例示したが、何等これに限らない。例えば、テープ式の使い捨ておむつでも良い。また、パンツ型の使い捨ておむつ1として、展開状態において腹側胴回り部30aと背側胴回り部30bとの間に吸収性本体10が掛け渡されてなる所謂3ピースタイプのおむつを例示したが、展開状態において略砂時計形状の外装シートの肌側面に吸収性本体が載置されてなる所謂2ピースタイプのおむつでも良い。
【0072】
上述の実施形態では、親水性シート303を幅方向の一端から他端にわたって連続して設けていたが、これに限定されない。親水性シート303は、幅方向の両端部(30aes、30bes)から離間していてもよい。また、親水性シート303は、幅方向に連続的ではなく、間欠的に複数並んで設けられても良い。