【解決手段】有彩色インクを吐出するノズルが配列した有彩色インク吐出ノズル列と、無彩色インクを吐出するノズルが配列した無彩色インク吐出ノズル列と、有機溶剤を含むメタリックインクを吐出するノズルが配列したメタリックインク吐出ノズル列を有し、前記有彩色インクが樹脂を含み、前記無彩色インクが可塑剤を含み、記録媒体上に前記有彩色インクを吐出したあと、前記メタリックインクを吐出する領域に、前記無彩色インクを吐出し、前記無彩色インクを吐出した領域に前記メタリックインクを吐出することを特徴とする液体吐出装置。
前記無彩色インクに含まれる可塑剤が、リン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族多塩基酸エステル、トリメリット酸エステル、酢酸エステルおよびリシノール酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
前記有彩色インクで形成された有彩色インク層と、前記メタリックインクで形成されたメタリックインク層の間に、前記無彩色インクで形成された無彩色インク層を形成する請求項1〜9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
上述の課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、詳細な理由は不明であるが、無彩色インクが可塑剤を含むことにより、有彩色インクの樹脂を可塑化させ平滑化し、メタリックインクの下地として求められる平滑性を担保し、メタリックインクの十分な金属光沢を発現させることができる。また、無彩色インクが可塑剤を含むことにより、メタリックインクを良好に定着させることができ、メタリックインク中に定着樹脂が含まれなくても、あるいは少量であっても、良好な耐擦性を提供できる。
【0013】
(有彩色インク)
まず、有彩色インク(以下、カラーインクと呼ぶことがある)について説明する。
【0014】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0015】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されない。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0016】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0017】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0018】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、30質量%以上98質量%以下が好ましく、40質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0019】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0021】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0022】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0024】
本発明における有彩色インクは、樹脂を含有する。
【0025】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0027】
また、樹脂の含有量は、インク全量に対して、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がさらに好ましく、1質量%以上10質量%以下がとくに好ましい。
【0028】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0029】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0030】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH
4、NH
3CH
2CH
2OH、NH
2(CH
2CH
2OH)
2、NH(CH
2CH
2OH)
3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0033】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0034】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0036】
上記一般式(F−1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
C
nF
2n+1−CH
2CH(OH)CH
2−O−(CH
2CH
2O)
a−Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF
2m+1でmは1〜6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2−CmF
2m+1でmは4〜6の整数、又はCpH
2p+1でpは1〜19の整数である。nは1〜6の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0037】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0038】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0039】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0040】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0041】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0042】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
【0043】
(無彩色インク)
次に、無彩色インク(以下、クリアインクと呼ぶことがある)について説明する。
本発明で言う無彩色インクとは、色材を含まないインクを指す。
本発明で使用される無彩色インクは、可塑剤を含有する。
本発明で使用される無彩色インクは、色材を含まず、且つ可塑剤を含有すること以外は、前記有彩色インクで説明した有機溶剤、水、樹脂、添加剤を含有することができ、下記で示す形態を除いて、好ましい範囲もまた同様である。
【0044】
無彩色インクに含まれる可塑剤は、リン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族多塩基酸エステル、トリメリット酸エステル、酢酸エステルおよびリシノール酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。
リン酸エステルとしては、公知のものが使用できる。具体的には、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
フタル酸エステルとしては、公知のものが使用できる。具体的には、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
脂肪族多塩基酸エステルとしては、公知のものが使用できる。具体的にはアジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル等の脂肪族二塩基酸エステル等が挙げられる。
トリメリット酸エステルとしては、公知のものが使用できる。具体的には、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ−n−オクチル−n−デシルトリメリレート等が挙げられる。
酢酸エステルとしては、公知のものが使用できる。具体的には、グリセリルトリアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、ポリグリセリンの重合度2〜4、アセチル化率50〜100%のポリグリセリン酢酸エステル等が挙げられる。
リシノール酸エステルとしては、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレートなどのアルキルアセチルリシノレート(アルキル基:炭素数1〜10)等、公知のリシノール酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0045】
無彩色インク中の可塑剤の含有量は0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。この範囲内であると、先に画像形成した有彩色インク中の樹脂を可塑化して平滑化させ、その後に画像形成されるメタリックインクを平滑に欠損なく形成させることができ、高い金属光沢が得られる。また、無彩色インクの画像上にメタリックインクを良好に定着させることができ、良好な耐擦性を提供できる。
無彩色インク中の可塑剤の含有量が0.5質量%以上であることにより、当該効果がさらに高まり、5質量%以下であることにより、耐擦性を損ねることがない。
【0046】
本発明で使用される無彩色インクは、樹脂を含むのが好ましい。樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂等が好ましい。
また、無彩色インク中の樹脂は、メタリックインクの定着性の観点から、無彩色インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
また、有機溶剤の無彩色インク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の効果向上の観点から、30質量%以上95質量%以下が好ましく、40質量%以上90質量%以下がより好ましい。
【0047】
(メタリックインク)
次に、メタリックインクについて説明する。
本発明で言うメタリックインクとは、画像に金属光沢を付与するインクを指す。
本発明で使用される、メタリックインクは、色材としてメタリックインク用色材を含むこと以外は、前記有彩色インクで説明した有機溶剤、水、樹脂、添加剤を含有することができ、下記で示す形態を除いて、好ましい範囲もまた同様である。本発明で使用されるメタリックインクは、有機溶剤を含む。
【0048】
<メタリックインク用色材>
メタリックインク用色材は、顔料であることが好ましく、鱗片状である場合、平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.4μm〜3μm、粒子状である場合、その平均粒子径は0.05μm〜0.4μmが好ましい。この範囲であると自然な銀色の金属光沢を得ることができる。
メタリックインク用色材の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0049】
顔料としては、例えば、金属単体、合金、又は金属化合物を微粉砕してなる微粉末を用いることができる。より具体的には、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、シリコン、銅、又はプラチナよりなる一群の金属単体の何れか1種類若しくは複数よりなるもの、又はこれらの一群の金属を組み合わせて得られる合金、又はこれらの一群の金属単体若しくは合金の酸化物、窒化物、硫化物、又は炭化物の何れか1種類若しくは複数、を微粉砕して得られるものが挙げられる。中でもアルミニウムを含む顔料が好ましい。
【0050】
メタリックインク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
【0051】
メタリックインクにおいて、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
<メタリックインク用顔料分散体>
顔料に、有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、顔料、顔料分散剤、水、有機溶剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、上述のように、鱗片状である場合、平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.4μm〜3μm、粒子状である場合、その平均粒子径は0.05μm〜0.4μmが好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0053】
本発明で使用されるメタリックインクは、樹脂を含有することができる。本発明の効果が向上するという観点から、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂等が好ましい。
また、メタリックインク中の樹脂の含有量は、金属光沢の点から、メタリックインク全量に対して、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がとくに好ましい。メタリックインク中の樹脂の含有量が5質量%を超えると、十分な金属光沢が発現しない場合がある。
【0054】
また、本発明で使用されるメタリックインクは、水の含有量が3質量%以下、好ましくは1質量%以下である溶剤系インクであることが好ましく、また有機溶剤としてエーテル系溶剤を含むことが好ましい。この形態によれば、無彩色インク中の樹脂を可塑化させ、有彩色インクの凹凸をさらに低減できるものと考えられ、一層優れた金属光沢を発現できる。エーテル系溶剤としては、有彩色インクの項で説明したエーテル類が挙げられ、グリコールエーテル化合物が好ましい。
【0055】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec
1/2までの水吸収量が10mL/m
2以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0056】
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【0057】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0058】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0059】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0060】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0061】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0062】
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0063】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
液体吐出装置、画像形成装置は同義語とする。
【0064】
本発明の液体吐出装置は、有彩色インクを吐出するノズルが配列した有彩色インク吐出ノズル列(カラーノズル列)と、無彩色インクを吐出するノズルが配列した無彩色インク吐出ノズル列(クリアノズル列)と、有機溶剤を含むメタリックインクを吐出するノズルが配列したメタリックインク吐出ノズル列(メタルノズル列)を有し、前記有彩色インクが樹脂を含み、前記無彩色インクが可塑剤を含み、記録媒体上に前記有彩色インクを吐出したあと、前記メタリックインクを吐出する領域に、前記無彩色インクを吐出し、前記無彩色インクを吐出した領域に前記メタリックインクを吐出することを特徴とし、有彩色インク層と、メタリックインク層の間に、無彩色インク層を形成するように構成されるのが好ましい。
また本発明のインクセットは、有彩色インク、無彩色インクおよびメタリックインクを備え、前記有彩色インクが樹脂を含み、前記無彩色インクが可塑剤を含み、前記メタリックインクが有機溶剤を含むとともに、前記本発明の液体吐出装置に使用されるものである。
また本発明の画像形成方法は、有彩色インク、無彩色インクおよびメタリックインクを使用し、前記有彩色インクが樹脂を含み、前記無彩色インクが可塑剤を含み、前記メタリックインクが有機溶剤を含み、記録媒体上に前記有彩色インクを吐出する有彩色インク吐出工程と、前記有彩色インク吐出工程の後、前記メタリックインクを吐出する領域に、前記無彩色インクを吐出する無彩色インク吐出工程と、前記無彩色インクを吐出した領域に前記メタリックインクを吐出するメタリック吐出工程と、を有する。
【0065】
図11は、本発明の液体吐出装置の一例のブロック図である。液体吐出装置10は、画像処理部12と画像形成部30とを有する。
画像処理部12は、主制御部13と、記録制御部28と、を含む。主制御部13は、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成されるコンピュータであり、画像処理部12全体を制御する。なお、主制御部13は、汎用のCPU以外で構成してもよい。例えば、主制御部13は、回路などで構成してもよい。記録制御部28も、主制御部13と同様にCPU(Central Processing Unit)などを含んで構成されるコンピュータであり、主制御部13と同一のコンピュータであっても、別途設けられたものであってもよい。
主制御部13は、データ受理部12Aと、データ作成部12Bと、データ出力部12Cと、データ判定部12Dとを含む。データ受理部12A、データ作成部12B、データ出力部12C、データ判定部12D、記録制御部28の一部または全ては、例えば、CPUなどの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
データ受理部12Aは、画像データを受理する。画像データは、形成する画像の形状や色などの情報である。データ受理部12Aは、通信部を介して、外部装置から画像データを取得してもよいし、画像処理部12に設けられた記憶手段から画像データを取得してもよい。受理したデータを、データ判定部12Dとデータ作成部12Bに出力する。
データ判定部12Dは、データ受理部12Aで受理した画像データ中の色情報に基づき、メタリックインク使用有無を判定する。判定結果をデータ作成部12Bに出力する。
データ作成部12Bは、受け取った画像データと判定結果に基づいて、マスク処理などの所定のデータ処理を行い、吐出データを作成する。吐出データには、有彩色インクにより形成される有彩色画像を作成するための有彩色インク吐出データ、クリアインクにより形成されるクリア画像を作成するためのクリアインク吐出データ、メタリックインクにより形成されるメタリック画像を作成するためのメタリックインク吐出データがあげられる。なお、画像データの色情報として無彩色が含まれていない場合には、メタリック色情報に基づいて、メタリック画像を形成する領域を含むようにクリアインク画像を作成するためのクリアインク吐出データを作成する。作成した吐出データをデータ出力部12Cに出力する。
データ出力部12Cは、データ作成部12Bにて作成された吐出データを記録制御部28に出力する。
記録制御部28は、データ出力部12Cから受け取った吐出データに基づいて、吐出ヘッドから各画素に対応する液滴を吐出するように、画像形成部30の記録部14、駆動部25を制御する。
記録部14は、複数のノズルが設けられた複数の吐出ヘッドを備えたインクジェット方式のキャリッジであり、液滴をヘッドのノズルから吐出することによってドットを記録する。
駆動部25は、第1駆動部23および第2駆動部24を備え、第1駆動部23は記録部14を、鉛直方向Z、主走査方向X、および副走査方向Yに移動させる。第2駆動部24は記録媒体を鉛直方向Z、主走査方向X、および副走査方向Yに移動させる。
本発明では、メタリックインク層を形成する領域に、無彩色インクが吐出されるように制御される。例えば、メタリックインク層を形成する領域の全てをカバーするように、無彩色インクが吐出されるように制御される。
【0066】
図12は、本発明における画像形成のフローチャートである。
まず、データ受理部12Aが画像データを取得し(S100)、データ作成部12B及びデータ判定部12Dに出力する。次にステップS101に進む。
【0067】
受け取った画像データに基づいてデータ判定部12Dがメタリックインクの使用有無を確認する(S101)。使用有りの場合にはステップS102に進む。使用無しの場合にはステップS106に進む。
【0068】
受け取った画像データと判定結果に基づいて、データ作成部12Bは、有彩色インク吐出データを作成し(S102)、ステップS103に進む。
【0069】
データ作成部12Bは、無彩色(クリア)インク吐出データを作成し(S103)、ステップS104に進む。
【0070】
データ作成部12Bは、メタリックインク吐出データを作成し(S104)、作成した吐出データをデータ出力部12Cに出力する。データ出力部12Cは記録制御部28に吐出データを出力する。ステップS105に進む。
【0071】
記録制御部28は受け取った吐出データに基づいて、画像を形成する(S105)。
【0072】
一方、受け取った画像データに基づいてデータ判定部12Dがメタリックインクの使用有無を確認し(S101)、使用無しの場合にはステップS106に進み、ステップS106では、吐出データが作成され、画像が形成される。
【0073】
図13は、本発明の液体吐出装置により形成された画像の断面模式図である。
図13(a)は、記録媒体上に有彩色インク層が設けられ、有彩色インク層のすべてが覆われるように無彩色インク層が設けられ、無彩色インク層の上部にメタリックインク層が設けられている。
図13(b)は、記録媒体上に有彩色インク層上に、無彩色インク層およびメタリックインク層のベタ画像が設けられている。
図13(c)は、(b)とほぼ同様の形態であるが、無彩色インク層の一部に、メタリックインク層が積層されている。
図13(d)は、無彩色インク層上に、複数箇所、メタリックインク層が積層されている。
図13(e)は、有彩色インク層上に、複数箇所、無彩色インク層が設けられ、個々の無彩色インク層上にメタリックインク層が積層されている。
図13(f)は、記録媒体上に有彩色インク層が複数箇所設けられ、有彩色インク層それぞれのすべてが覆われるように無彩色インク層が設けられ、無彩色インク層の上部にメタリックインク層が設けられている。
なお、本発明は、
図13の形態に制限されない。
また
図13に示されるように、無彩色インク層は、メタリックインク層の作成領域に形成され、メタリックインク層の下部をすべて支持することができれば、記録媒体上全域にわたって無彩色インク層を設けてもよく、もうけなくてもよい。
【0074】
図3(a)は、本発明の液体吐出装置を説明するための平面図であり、(b)は吐出ヘッドにインクセットを装填した形態を示すための図である。
図3(a)に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー(不図示)とで、キャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって、
図3(a)の矢印で示す方向に移動走査する。
キャリッジ133には、有彩色インク、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するカラーノズル列31と、無彩色インクのインク滴を吐出するクリアノズル列32と、メタリックインクのインク滴を吐出するメタルノズル列33とを有する記録ヘッド134が装着され、各ノズル列は、記録媒体142に対向している。
【0075】
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどが使用できる。
【0076】
また
図3(b)に示すように、記録ヘッド134における各ノズル列は、キャリッジ131の走査方向において、カラーノズル列31の上流にクリアノズル列32が配置され、クリアノズル列32の上流にメタルノズル列33が配置されている。なお好適な形態では、キャリッジの走査方向に対して下流から上流に向かって、メタルノズル列、クリアノズル列、カラーノズル列、クリアノズル列、メタルノズル列の順でノズル列が配置されているのがよく(
図4)、このような配置にすれば、カラーインク、クリアインク、メタリックインクの順に色重ねする場合の印字速度が速くなり、生産性が向上する。
なお、
図3、4の形態では、各ノズル列が1つの記録ヘッドに並べて配置された例であるが、本発明はこれに制限されず、下記で説明するように、各ノズル列がそれぞれ複数のヘッドに並べて配置されていてもよい。
【0077】
図5の形態では、カラーノズル列31とクリアノズル列32とメタルノズル列31とが複数のヘッドに並べて配置され、
図5下方の記録ヘッド134では、キャリッジ133の走査方向において、カラーノズル列31の上流にクリアノズル列32が配置され、クリアノズル列32の上流にメタルノズル列33が配置されている。
【0078】
図6の形態では、カラーノズル列31を有する記録ヘッドと、クリアノズル列32およびメタルノズル列31を有する記録ヘッドとが並べて配置され、
図6上方の記録ヘッド134では、キャリッジ133の走査方向において、クリアノズル列32の下流にメタルノズル列33が配置されている。
【0079】
図7の形態では、本発明の液体吐出装置は記録媒体を搬送する搬送手段を備え、複数のカラーノズル列31を有する記録ヘッドと、クリアノズル列32を有する記録ヘッドと、メタルノズル列33を有する記録ヘッドとが、複数(3つ)並べて配置され、記記録媒体の搬送方向において、カラーノズル列31の下流にクリアノズル列32が配置され、クリアノズル列32の下流に前記メタルノズル列33が配置されている。
【0080】
図8の形態では、本発明の液体吐出装置は記録媒体を搬送する搬送手段を備え、複数のカラーノズル列31を有する記録ヘッドと、クリアノズル列32およびメタルノズル列33を有する記録ヘッドとが、複数(2つ)配置され、記記録媒体の搬送方向において、カラーノズル列31の下流にクリアノズル列32およびメタルノズル列33が配置され、キャリッジ133の走査方向において、少なくとも1箇所、クリアノズル列32の上流にメタルノズル列33が配置されている。
【0081】
図9の形態では、本発明の液体吐出装置は記録媒体を搬送する搬送手段を備え、複数のカラーノズル列31を有する記録ヘッドと、クリアノズル列32およびメタルノズル列33を有する記録ヘッドとが、複数(2つ)配置され、記記録媒体の搬送方向において、カラーノズル列31の下流にクリアノズル列32およびメタルノズル列33が配置され、カラーノズル列31、クリアノズル列32およびメタルノズル列33を備えた記録ヘッドの一つは、記録媒体の搬送方向の上流から下流に向かって、カラーノズル列31、クリアノズル列32およびメタルノズル列33がこの順で設けられている。
【0082】
図10の形態では、本発明の液体吐出装置は記録媒体を搬送する搬送手段を備え、記録ヘッド134が、記録媒体の搬送方向の上流から下流に向かって、カラーノズル列31、クリアノズル列32およびメタルノズル列33をこの順で備える。
【0083】
このようにして、記録媒体上にカラーインク、クリアインクおよびメタリックインクがそれぞれの画像上に形成される。
記録媒体へのインクの付着量はとくに制限されないが、カラーインクは1色あたり5〜20g/m
2が好ましく、8〜15g/m
2がさらに好ましく、クリアインクは5〜20g/m
2が好ましく、8〜15g/m
2がさらに好ましく、メタリックインクは5〜15g/m
2が好ましく、8〜12g/m
2がさらに好ましい。
【0084】
なお、本発明で使用される各種成分の分析方法について以下、説明する。
【0085】
<樹脂の定量方法>
樹脂の定量方法としては、例えばTG-DTAを用いて、加熱に伴う質量減衰を観測する方法が挙げられる。水、溶剤成分を先に全て蒸発させその減量を計測した後、固形分の加熱に伴う質量減量を再度測定することにより、樹脂の定量が可能である。その他、樹脂成分を分離し、質量を測定する方法などもある。
【0086】
<有機溶剤の定性、定量方法>
有機溶剤の定性、定量方法にはいくつかの方法があるが、例えばGC-MSによる方法が挙げられる。また検量線を作成することにより、絶対量を定量することが可能である。
【0087】
<色材の定性方法>
インク中の色材の定性方法にはいくつかの方法があるが、例えばSEM-EDXによる定性法が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例および比較例のよってさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、「部」は質量部を、成分の量(%)は質量%を示している。
【0089】
銀粒子水分散液の調製
硝酸銀68.1部、カルボキシル基を有する高分子分散剤(ビッグケミー製、「ディスパービック190」、溶媒:水、不揮発成分40%、酸価10mgKOH/g、アミン価0)7.2部、及びコール酸(和光純薬製)1.7部を、イオン交換水100部に投入し、激しく撹拌し、懸濁液を得た。この懸濁液に対して、ジメチルアミノエタノール(和光純薬製)100部を水温が50℃を超えないように徐々に加えたのち、水温50℃のウォーターバス中で3時間加熱撹拌した。得られた反応液を、ガラスフィルタ(ADVANTEC製GC−90、ポアサイズ0.8マイクロメートル)でろ過し、銀を14.5%、高分子分散剤を0.6%、ジメチルアミノエタノールを47.3%含む銀粒子分散液を得た。
【0090】
鱗片状アルミニウムジエチレングリコールジエチルエーテル分散液の調製
ステンレス容器内に、ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)94部、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学社製)3.1部を投入し、高速ディスパーにて十分混合させた。これをPETフィルム上に均一にバーコートし、70℃、10分間乾燥させた。次に、真空蒸着装置(真空デバイス社製VE−1010型真空蒸着装置)を用いて、上記のセルロースアセテートブチレート樹脂1部に対し、16部となるように設定をしたのち、アルミニウム蒸着を行った。この積層物を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて14時間剥離、微細化、分散させた。得られた溶液をジエチレングリコールジエチルエーテルを使って濃度調整を行い、アルミニウムを20%、セルロースアセテートブチレート樹脂を1.4%、ジエチレングリコールジエチルエーテルを77.2%含む鱗片状アルミニウムジエチレングリコールジエチルエーテル分散液を得た。
【0091】
鱗片状アルミニウム2-アミノエタノール分散液の調製
ステンレス容器内に、ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)94部、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学社製)3.1部を投入し、高速ディスパーにて十分混合させた。これをPETフィルム上に均一にバーコートし、70℃、10分間乾燥させた。 次に、真空蒸着装置(真空デバイス社製VE−1010型真空蒸着装置)を用いて、上記のセルロースアセテートブチレート樹脂1部に対し、16部となるように設定をしたのち、アルミニウム蒸着を行った。この積層物を、2-アミノエタノール(東京化成工業社製)中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて14時間剥離、微細化、分散させた。得られた溶液を2-アミノエタノールを使って濃度調整を行い、アルミニウムを20%、セルロースアセテートブチレート樹脂を1.4%、2-アミノエタノールを76.9%含む鱗片状アルミニウム2-アミノエタノール分散液を得た。
【0092】
ポリカーボネート系ウレタン樹脂水分散液の調製
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物)1450部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)230部及び2-アミノエタノール1370部を窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを1420部、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を2.7部加え90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。
反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン142部を添加・混合したものの中から4100部を抜き出して、強攪拌下のもと水5200部及びトリエチルアミン15部の混合溶液の中に加えた。
次いで、氷1500部を投入し、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626部を加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネート系ウレタン樹脂水分散液(ウレタン樹脂成分30%、2-アノエタノール6%)を得た。
【0093】
メタクリル酸樹脂ジエチレングリコールジエチルエーテル分散液の調製
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300部中に、メチルメタクリレート100部、n-ブチルメタクリレート50部、ε-カプロラクトン50部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.3部との混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、ジエチレングリコールジエチルエーテルを用いて固形分濃度が30%、ジエチレングリコールジエチルエーテル70%となるよう調整し、メタクリル酸樹脂ジエチレングリコールジエチルエーテル分散液を得た。
【0094】
メタクリル酸樹脂2-アミノエタノール分散液の調製
100℃に保たれた2-アミノエタノール300部中に、メチルメタクリレート100部、n-ブチルメタクリレート50部、ε-カプロラクトン50部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.3部との混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、2-アミノエタノールを用いて固形分濃度が30%、2-アミノエタノール70%となるよう調整し、メタクリル酸樹脂2-アミノエタノール分散液を得た。
【0095】
有彩色顔料分散ポリマー溶液の調製
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18.0gの混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。 滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加して、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364.0gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液を800g得た。
【0096】
ブラック顔料分散体の調製
ポリマー溶液を28g、カーボンブラック(NIPEX150、デグサ社製)を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20.0g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。
得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くために平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料15質量%含有、樹脂成分5質量%、固形分20質量%のブラック顔料分散体を得た。
【0097】
メタリックインク、ブラックインク、クリアインクの作成
表1記載の処方(質量部)にて混合攪拌し、それぞれのメタリックインク、ブラックインク、クリアインクを得た。
【0098】
<プリンタの準備>
インクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSiO GXe5500)の外装を外し、背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、記録ヘッドを含めたインク供給経路に評価インクを通液することで洗浄した。その作業を全部で6回繰り返した後、洗浄に用いたインクを全て抜ききった状態で、評価用印刷装置とした。
評価インクを5Pa〜10Paの減圧条件で30分間攪拌することで評価インク中の気体を脱気し、インク収容袋に充填した後カートリッジに設置し、評価インクが充填されたことを確認した。次に、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印刷モードとした。 この印刷モードでベタ画像の記録媒体上への各インク付着量が20g/m
2となるようにヘッドの駆動電圧を変更することで吐出量を調整した。
【0099】
<評価用画像の作成>
上記準備を行った後、記録媒体として光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)に対してMicrosoft Word2003(Microsoft社製)を用い、その上に150mm×150mmのベタ画像を25℃で10枚印刷し、評価に用いた。評価結果を表3に示した。
なお実施例のベタ画像は、記録媒体上に前記有彩色インクを吐出する有彩色インク吐出工程と、前記有彩色インク吐出工程の後、前記メタリックインクを吐出する領域に、前記無彩色インクを吐出する無彩色インク吐出工程と、前記無彩色インクを吐出した領域に前記メタリックインクを吐出するメタリック吐出工程と、を経て形成されたものである。比較例のベタ画像は、実施例と同様に、表2に示す印字順で作成されたものである。
【0100】
<金属光沢の評価>
ベタ画像の20°光沢度を光沢度計(BYK Gardener社製、マイクロトリグロス)により測定し、下記の基準で評価した。C以上が実用可能の水準である。
[評価基準]
A:20°光沢度が400以上
B:20°光沢度が300以上、400未満
C:20°光沢度が200以上、300未満
D:20°光沢度が100以上、200未満
E:20°光沢度が100未満
【0101】
<耐擦性の評価>
乾燥後の印刷物を学振型磨耗堅牢度試験機AB−301(テスター産業株式会社製)にセットし、接触部に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子(荷重;300g)にて10回擦り、その劣化具合を目視にて観察し、下記の基準で評価した。C以上が実用可能の水準である。
[評価基準]
A:傷の数が3本未満であり、下地も見えない。
B:傷の数が3本以上7本未満であり、下地も見えない。
C:傷の数が7本以上10本未満であり、下地も見えない。
D:傷の数が10本以上あり、下地の露出がある。
【0102】
結果を表3に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
なお表2においてクリアメタル両端配置とは、
図4(a)、(b)に示す形態において、8列のノズル列を備えたヘッド134をキャリッジに搭載した液体吐出装置で、キャリッジ走査方向一端側から、メタリックインク1列、クリアインク1列、カラーインク4列、クリアインク1列、メタリックインク1列を配置した構成であり、往復印字可能である。
また、クリアメタル片側配置とは、
図3(b)において、6列のノズル列を備えたヘッド2をキャリッジに搭載した液体吐出装置でキャリッジ走査方向上流側からメタリックインク1列、クリアインク1列、カラーインク4列を配置した構成であり、片側方向印字である。
【0107】
表3の結果から、各実施例では、メタリックインクを使用した加飾印刷を行う際に、優れた金属光沢および耐擦性を両立できることが分かった。