【解決手段】軸方向と半径方向と周方向とを有し、軸部(10)と、周方向に沿った搬送経路を形成する一対のガイド部(20)と、吸収性物品に係る資材を搬送する搬送ヘッド(33)を半径方向に沿った回転軸周りに回転可能に支持しつつ、ガイド部(20)に沿って搬送経路上を移動する移動部(30)と、移動部(30)が移動する際に、搬送ヘッド(33)を回転軸周りに回転させるカム機構(40)と、搬送経路に沿って設けられた導体(50)に電流を供給し、移動部(30)に設けられたマグネット(36)との間に推進力を発生させ移動部(30)を移動させる制御部(70)とを有し、軸方向において、カム機構(40)及びマグネット(36)が、一対のガイド部(20)の間に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
軸方向と、半径方向と、周方向とを有する軸部であって、垂直に起立する壁部から前記軸方向が水平となるように支持された軸部と、前記軸方向に所定の間隔を空けて前記軸部に設けられ、前記周方向に沿った周回軌道状の搬送経路を形成する一対のガイド部と、吸収性物品に係る資材を搬送するための搬送ヘッドを前記半径方向に沿った回転軸周りに回転可能に支持しつつ、前記ガイド部に沿って前記搬送経路上を移動する移動部と、前記移動部が前記搬送経路上を移動する際に、前記搬送ヘッドを前記回転軸周りに所定の角度回転させるカム機構と、前記搬送経路に沿って複数設けられた導体(コイル)に電流を供給し、前記移動部に設けられたマグネットとの間に推進力を発生させることにより、前記移動部を移動させる制御部と、を有する、リニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記軸方向において、前記カム機構及び前記マグネットが、前記一対のガイド部の間に配置されている、ことを特徴とするリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置。
【0011】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、移動部を駆動するための導体及びマグネットや搬送ヘッドを回転させるためのカム機構の各部が、一対のガイド部の外側(片側のみ)に配置されている場合と比較して、一対のガイド部の各々と上記各部との間の距離差が小さくなる。したがって、一対のガイド部に作用するモーメント負荷が低減され、一対のガイド部の耐久性が向上し、また、移動部の移動動作を安定しやすくすることができる。
【0012】
また、軸方向と、半径方向と、周方向とを有する軸部であって、垂直に起立する壁部から前記軸方向が水平となるように支持された軸部と、前記軸方向に所定の間隔を空けて前記軸部に設けられ、前記周方向に沿った周回軌道状の搬送経路を形成する一対のガイド部と、吸収性物品に係る資材を搬送するための搬送ヘッドを前記半径方向に沿った回転軸周りに回転可能に支持しつつ、前記ガイド部に沿って前記搬送経路上を移動する移動部と、前記移動部が前記搬送経路上を移動する際に、前記搬送ヘッドを前記回転軸周りに所定の角度回転させるカム機構と、前記搬送経路に沿って複数設けられた導体(コイル)に電流を供給し、前記移動部に設けられたマグネットとの間に推進力を発生させることにより、前記移動部を移動させる制御部と、を有するリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記一対のガイド部は、前記軸方向において、前記壁部よりも一方側に設けられた第1ガイド部と、前記第1ガイド部よりも前記一方側に設けられた第2ガイド部とを有し、前記軸方向において、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間に前記カム機構が配置され、前記壁部よりも前記一方側且つ前記第1ガイド部よりも他方側、及び、前記第2ガイド部よりも前記一方側に、それぞれ前記マグネットが配置されている、ことを特徴とするリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置が明らかとなる。
【0013】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、移動部を駆動するための導体及びマグネットや搬送ヘッドを回転させるためのカム機構の各部が、一対のガイド部の外側(片側のみ)に配置されている場合と比較して、一対のガイド部の各々と上記各部との間の距離差が小さくなる。したがって、一対のガイド部に作用するモーメント負荷が低減され、一対のガイド部の耐久性が向上し、また、移動部の移動動作を安定しやすくすることができる。
【0014】
かかるリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記ガイド部が、前記周方向に回転移動可能である、ことが望ましい。
【0015】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、移動部を所定の角速度で周方向に回転駆動させようとする際に、ガイド部が周方向に移動しない場合と比較して、ガイド部に対する移動部の相対速度を小さくすることができる。これにより、移動部とガイド部との間の摩擦抵抗が低減され、ガイド部の耐久性をより向上させることができる。
【0016】
かかるリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記導体が、前記周方向に回転駆動される、ことが望ましい。
【0017】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、移動部を所定の角速度で周方向に回転駆動させようとする際に、導体が周方向に移動しない場合と比較して、導体に対する移動部の相対速度を小さくすることができる。これにより、制御部による導体への供給電流の制御が容易になり、移動部の移動動作を安定させやすくすることができる。
【0018】
かかるリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記導体が、前記一対のガイド部のうち少なくとも一方と共に、前記周方向に回転駆動される、ことが望ましい。
【0019】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、導体及びガイド部が周方向に移動しない場合と比較して、導体及びガイド部に対する移動部の相対速度を小さくすることができる。したがって、移動部の移動動作を安定させやすくすると共に、ガイド部の耐久性を向上させることができる。
【0020】
かかるリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記一対のガイド部は、前記軸方向において、前記壁部よりも一方側に設けられた第1ガイド部と、前記第1ガイド部よりも前記一方側に設けられた第2ガイド部とを有し、前記軸方向において、前記第1ガイド部と前記壁部との間に、前記導体及び前記ガイド部を回転駆動させるための駆動機構が設けられている、ことが望ましい。
【0021】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、壁部と第1ガイド部の間の狭い空間に駆動機構を設け、当該駆動機構によって第1ガイド部を回転駆動し、同時に駆動部を回転駆動するために駆動入力も行うことができる。これにより、搬送装置を全体的にコンパクトに構成することが可能となり、また、搬送機構の設置スペースを最小化することで、設計の自由度を高めることができる。
【0022】
かかるリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記一対のガイド部のうち、一方の前記ガイド部は前記導体と共に前記周方向に回転駆動され、他方の前記ガイド部は前記周方向に自由に回転可能である、ことが望ましい。
【0023】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、制御部は、一対のガイド部のうち一方のガイド部のみの回転動作を制御すれば良く、他方のガイド部の回転動作については制御不要である。これにより、搬送装置全体の制御を容易にすることができる。
【0024】
かかるリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記一対のガイド部のうち両方が、前記導体と共に前記周方向に回転駆動される、ことが望ましい。
【0025】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、一対のガイド部を両方とも回転駆動させることにより、移動部との間の摩擦抵抗をより低減することができる。また、一対の導体部も共に回転駆動されるため、移動部の動作をより安定させやすくすることができる。
【0026】
かかるリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置であって、前記軸方向において、前記一対のガイド部の中間位置と前記カム機構との間の距離が、前記中間位置と前記導体との間の距離よりも小さい、ことが望ましい。
【0027】
このようなリニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によれば、軸方向において、カム機構を第1ガイド部と第2ガイド部との中間位置になるべく近くなるように配置することで、搬送ヘッドの回転動作時に発生する力を、第1ガイド部及び第2ガイド部に均等に分担させやすくなる。これにより、ガイド部のモーメント負荷をより低減しやすくすることができる。
【0028】
また、前記リニアモーター式吸収性物品資材搬送装置によって吸収性物品の資材を搬送方向に搬送し、搬送された前記資材を用いて吸収性物品を製造する、吸収性物品製造方法が明らかとなる。
【0029】
このような吸収性物品製造方法によれば、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造工程において、吸収体を搬送しつつ、吸収体の取り付け方向を調整することが可能となる。したがって、吸収性物品の製造を効率的に行うことができる。
【0030】
===第1実施形態===
<収性物品資材搬送装置の構成>
第1実施形態では、おむつやナプキン等の吸収性物品に係る資材(例えば吸収体等)を搬送するための吸収物品資材搬送装置1(以下、単に「搬送装置1」とも言う)について説明する。
図1は、第1実施形態に係る搬送装置1の全体構成を示す斜視図である。搬送装置1は、軸部10と、ガイド部20と、移動部30と、カム機構40と、導体50と、制御部70とを有し、地面や常盤等の水平面から垂直(
図1における鉛直方向)に起立する壁部100に固定されている。また、
図1に示されるように、搬送装置1は、軸方向と、半径方向と、周方向とを有している。以下では、壁部100に対して搬送装置1が設けられている側を軸方向の前側(一方側)とし、反対側を軸方向の後側(他方側)とする。
図2Aは、搬送装置1を軸方向の前側(一方側)から見た平面図であり、
図2Bは、
図2Aに示される搬送装置1を左右方向の一方側(右側)から見た側面図である。
図3は、搬送装置1の内部構造について説明するための断面斜視図である。
図4は、搬送装置1の断面模式図である。
【0031】
軸部10は、ガイド部20やカム機構40を支持する略円筒形状若しくは略円柱形状のコラムであり、その中心軸が軸方向に沿うように壁部100に固定され、支持されている。本実施形態において、軸部10の、軸方向における他方側の端にはフランジ面11が形成されており、該フランジ面11によって壁部100に固定されている。すなわち、軸部10は、壁部100から軸方向が水平となるように支持されている。
【0032】
ガイド部20は、移動部30の移動方向を規定するためのガイドレールであり、軸部10の外周面において、軸方向に所定の間隔を空けて一対設けられている。本実施形態では、一対のガイド部20のうち、軸方向の後側(他方側)に配置されている方のガイド部を第1ガイド部21と呼び、軸方向の前側(一方側)に配置されている方のガイド部を第2ガイド部22と呼ぶ(
図3及び
図4参照)。すなわち、軸方向において、第1ガイド部21は、壁部100よりも前側(一方側)に配置され、第2ガイド部22は、第1ガイド部21よりも前側(一方側)に配置されている。第1ガイド部21及び第2ガイド部22は、各々軸部10の外周面において周方向に沿ったリング状に構成されており、当該第1ガイド部21及び第2ガイド部22によって、軸部10の周方向に沿った周回軌道状の搬送経路が形成される。
【0033】
なお、
図4に示されるように、本実施形態におけるガイド部20と軸部10の外周面との間には、ボールベアリング25が設けられている。このボールベアリング25によって、ガイド部20自体が、軸部10の外周面上を周方向に回転移動可能となっている。ただし、ガイド部20は必ずしも軸部10に対して回転移動可能である必要はなく、軸部10に対してガイド部20が移動不能に固定されているのであっても良い。
【0034】
図5は、移動部30の構成について説明する概略斜視図である。移動部30は、ガイド部20に沿って搬送経路上を移動することにより、吸収性物品に係る資材を搬送方向に移動させる。移動部30は、本体部31と、スライド部32と、搬送ヘッド33と、搬送ヘッド接続軸34と、カムフォロワー35と、マグネット36とを有する。
【0035】
本体部31は、軸方向に長い略直方体状の部材であり、スライド部32〜マグネット36の各部を支持する。スライド部32は、本体部31の軸方向の両端部に一対設けられており、
図5の半径方向及び軸方向と垂直な方向(
図1では周方向に相当する方向)に延びる溝部32tを有している。そして、
図4に示されるように溝部32tによってガイド部20(第1ガイド部21,第2ガイド部22)を摺動可能に挟み込むことにより、移動部30がガイド部20に取り付けられると共に、ガイド部20に沿って搬送経路上をスライド移動可能となる。
【0036】
搬送ヘッド33は、被搬送媒体である吸収性物品の資材(例えば吸収体)を保持するための部位であり、本体部31の半径方向の外側に設けられている。本実施形態では、搬送ヘッド33の表面(半径方向における外側の表面)に不図示の吸引機構が設けられており、被搬送媒体(吸収体の資材)を吸着して保持することが可能である。また、搬送ヘッド33は、搬送ヘッド接続軸34によって本体部31の軸方向の略中央部に接続されている。搬送ヘッド接続軸34は、搬送装置1の半径方向に沿って配置される軸部材であり、本体部31に対して半径方向周りに回転可能に設けられている。
図4に示されるように、搬送ヘッド接続軸34の半径方向の外側端は搬送ヘッド33に連結され、搬送ヘッド接続軸34の半径方向の内側端はカムフォロワー35に連結されている。すなわち、搬送ヘッド33とカムフォロワー35とは、搬送ヘッド接続軸34を介して一体的に連結され、搬送ヘッド接続軸34を回転軸として半径方向周りに回転可能となるように本体部31に取り付けられている。
【0037】
カムフォロワー35は、搬送ヘッド33を半径方向に沿った回転軸周りに回転させるための部位であり、本体部31の半径方向の内側(すなわち、本体部31に対して搬送ヘッド33の反対側)に設けられている。
図4に示されるように、カムフォロワー35は、搬送ヘッド接続軸34の軸心(すなわち搬送ヘッド33の回転軸)から、軸部10の軸方向に所定距離だけ偏心して設けられており、次に説明するカム機構40のカム溝41の形状に追従することで、搬送ヘッド33(及び搬送ヘッド接続軸34)を回転軸周りに所定の角度だけ回転させる。
【0038】
マグネット36は、永久磁石であり、半径方向において導体50(後述)と対向する配置となるように、本体部31の半径方向における内側の面に設けられている(
図4参照)。
【0039】
また、移動部30に、不図示の位置検出器(例えば、リニアエンコーダー)を設け、搬送経路上における移動部30の位置情報を制御部70に伝達することができるようにしても良い。
【0040】
カム機構40は、軸部10の外周面上に周方向に沿って連続的に設けられた、所謂円筒カムであり、カムの原節に相当するカム溝41を有している。カム溝41の軸方向における位置は、周方向における位置に応じて変化している。すなわち、カム溝41は周方向に沿って湾曲するように配置されている。したがって、移動部30が周方向に沿った搬送経路上を移動すると、カム溝41の形状に追従してカムフォロワー35の軸方向における位置が変動し、これにより、搬送ヘッド接続軸34を介して搬送ヘッド33が半径方向周りに回転する。
図1及び
図2では、搬送装置1の周方向における所定位置毎に、搬送ヘッド33が半径方向周りに所定の角度だけ回転した状態について示されている。
【0041】
本実施形態では、搬送ヘッド33(移動部30)が搬送経路を一周する間に、搬送ヘッド33が半径方向周りに90度回転するように、カム機構40が調整されている。これにより、搬送経路上の所定位置において受け取った被搬送媒体(吸収性物品の資材)を、搬送経路上の他の位置において90度回転させた状態で次工程に引き渡す等の搬送動作が可能となる。例えば、吸収性物品(例えば使い捨ておむつ)の資材としては略長方形状の吸収体を搬送する場合、吸収体の製造ラインから搬送されてくる吸収体を搬送装置1で受け取り、長手方向の向きを90度回転した後、次工程(例えば吸収体をおむつ外装体に転写する工程)に引き渡す。このようにすることで、吸収性物品(使い捨ておむつ)の製造工程において、吸収体を搬送しつつ、吸収体の取り付け方向を調整することが可能となる。したがって、吸収性物品の製造を効率的に行うことができる。
【0042】
導体50は、電流を流すことによって磁場を発生するコイルであり、軸部10の外周面上に周方向に沿って複数設けられている。当該導体50に供給される電流を制御することによって周方向に沿って磁極を順次変化させることができる。これにより、移動部30のマグネット36との間で推進力(引力と斥力)を発生させ、リニアモーターの原理で移動部30を搬送方向に推進させることが可能となる。つまり、導体50は、リニアモーターの固定子としての機能を有する。
【0043】
制御部70は、導体50に供給する電流を制御することによって、搬送経路上に配置されている複数の移動部30のそれぞれについて搬送方向に移動させたり停止させたりして移動部30の位置や移動速度を制御する。
【0044】
<搬送装置1の動作について>
続いて、搬送装置1が被搬送媒体(吸収性物品の資材)を搬送する際の動作について説明する。上述したように、搬送装置1では、搬送ヘッド33に被搬送媒体を保持した状態で、移動部30が一対のガイド部21,22に沿って搬送経路上を周方向に移動する。その間に、カム機構40によって搬送ヘッド33が半径方向に所定の角度(例えば90度)回転し、被搬送媒体の方向を変更しつつ搬送が行われる。搬送装置1では、軸方向において一対のガイド部21,22の間の空間に、搬送ヘッド33を回転させるためのカム機構40と、移動部30を移動させるための駆動力を入力する導体50及びマグネット36が設けられている。そのため、従来の搬送装置と比較して、一対のガイド部21,22に作用するモーメント負荷を小さくすることが可能である。以下、その原理について説明する。
【0045】
図6Aは、従来の搬送装置において搬送時に作用する力の関係について説明する模式図である。
図6Bは、第1実施形態の搬送装置1において搬送時に作用する力の関係について説明する模式図である。
【0046】
一対のガイドレール(搬送装置1のガイド部20に相当)を跨ぐようにして設置された移動部(搬送装置1の移動部30に相当)を有する従来の搬送装置において、搬送ヘッドを回転させるための回転機構(搬送装置1のカム機構40に相当)と、移動部を移動させるための加減速を行う駆動入力部(例えばサーボモーター等)を設ける場合には、回転機構及び駆動入力部の少なくとも一方は、一対のガイドレールの軸方向における外側に配置する必要があった。
図6Aの例では、軸方向において、一対のガイドレールの間に回転機構が配置され、一対のガイドレールよりも外側(軸方向の前側)に、駆動入力部が設けられている。また、駆動入力部が一対のガイドレールの間に配置される場合には、回転機構が一対のガイドレールよりも外側に設けられる。これは、従来の一般的な搬送装置では、一対のガイドレール間のスペースが制限されるため、カム機構及び駆動入力部の両方を配置可能な十分なスペースが確保できないためである。
【0047】
この場合、一対のガイドレールのうち、駆動入力部に近い側(
図6Aにおける軸方向の前側)のガイドレールと、駆動入力部から遠い側(
図6Aにおける軸方向の後側)のガイドレールとでは、異なるモーメント負荷が作用することになる。その結果、一対のガイドレールの耐久性が悪化しやすく、また、移動部を安定的に移動させることが難しくなるという問題が生じていた。
【0048】
これに対して、本実施形態の搬送装置1では、
図6Bの様に、搬送ヘッド33を回転させるためのカム機構40や、移動部30を移動させるための駆動力を入力する導体50及びマグネット36が、軸方向において一対のガイド部21,22の間に配置されている。つまり、
図6Aの従来例と比較して、駆動入力部(導体50及びマグネット36)と一対のガイド部21,22のそれぞれとの間の軸方向における距離の差が小さくなる。したがって、一対のガイド部21,22に作用するモーメント負荷が低減され、一対のガイド部21,22の耐久性が向上し、また、移動部30の移動動作を安定させやすくなる。
【0049】
また、本実施形態の搬送装置1では、一対のガイド部21,22が各々ボールベアリング25を介して軸部10の外周面上に設置されている。すなわち、一対のガイド部21,22は、各々周方向に移動可能な状態で配置されている。したがって、搬送装置1の搬送動作では、移動部30が周方向に移動するのに伴ってガイド部20(21,22)も周方向に移動可能である。例えば、移動部30が所定の速度(角速度)V1で周方向に移動する場合、ガイド部20は、速度V1よりも遅い速度(角速度)V2で周方向に移動可能であり、このとき、ガイド部20に対する移動部30の相対速度はV1−V2で表される。そのため、ガイド部20が周方向に移動しない場合(すなわちV2=0である場合)と比較して、ガイド部20に対する移動部30の相対速度を小さくすることができる。これにより、移動部30(スライド部32)とガイド部20(21,22)との間の摩擦抵抗が低減され、ガイド部20の耐久性をより向上させることができる。後述する搬送装置2〜4についても同様である。
【0050】
また、搬送装置1では、軸方向において、カム機構40(カムフォロワー35)の方が、導体50よりも中央寄りに配置されている。言い換えると、軸方向において、第1ガイド部21と第2ガイド部22との中間位置Cとカム機構40との間の距離が、中間位置Cと導体50との間の距離よりも小さい(
図4参照)。なお、軸方向におけるカム機構40の位置は、カムフォロワー35の半径方向における回転中心位置(すなわち、搬送ヘッド接続軸34の軸中心位置)とする。また、軸方向における導体50の位置は、導体50の軸方向における中心の位置とする。
【0051】
カム機構40では、移動部30が周方向に移動する間に、カムフォロワー35がカム溝41に追従して搬送ヘッド33を半径方向周りに回転させる。上述したように搬送ヘッド33は吸引機構(不図示)を備える等、ある程度大きな質量を有していることから、搬送ヘッド33の回転動作における慣性モーメント(イナーシャ)も大きくなりやすい。特に、カム機構40と第1ガイド部21及び第2ガイド部22との距離の差が異なると、第1ガイド部21及び第2ガイド部22に対して作用する力の差が大きくなりやすい。そこで、軸方向において、カム機構40を第1ガイド部21と第2ガイド部22との中間位置Cのなるべく近くに配置することにより、搬送ヘッド33が回転する際に生じる力を第1ガイド部21及び第2ガイド部22に均等に分担させやすくする。これにより、ガイド部20のモーメント負荷をより低減しやすくすることができる。後述する搬送装置2〜4についても同様である。
【0052】
===第2実施形態===
第2実施形態では、導体50を軸方向の2カ所に有する搬送装置2について説明する。
図7は、第2実施形態に係る搬送装置2の断面模式図である。同
図7は、第1実施形態の
図4に対応する図である。
【0053】
図7に示される搬送装置2では、軸方向において、第1ガイド部21よりも後側且つ壁部100よりも前側に第1導体51が設けられ、第2ガイド部22よりも前側に第2導体52が設けられている。また、移動部30の本体部31には、第1導体51と半径方向において対向する位置に第1マグネット36aが設けられ、第2導体52と半径方向において対向する位置に第2マグネット36bが設けられている。導体50及びマグネット36以外の各構成については、第1実施形態の搬送装置1と略同様であるため、説明を省略する。第2実施形態の搬送装置2でも、従来の搬送装置と比較して、一対のガイド部21,22に作用するモーメント負荷を小さくすることが可能である。
【0054】
図8は、第2実施形態の搬送装置2において搬送時に作用する力の関係について説明する模式図である。第2実施形態の搬送装置2では、
図8のように、搬送ヘッド33を回転させるためのカム機構40が軸方向において一対のガイド部21,22の間に設けられている。一方、移動部30を移動させるための駆動力を入力する導体50(51,52)及びマグネット36(36a,36b)は、軸方向において一対のガイド部20(21,22)の両側にそれぞれ設けられている。したがって、第1導体51及び第1マグネット36aによって発生する推進力と、第2導体52及び第2マグネット36bによって発生する推進力とを、移動部30に対して均等に作用させやすくなる。すなわち、一対のガイド部21,22に作用するモーメントが均等になりやすい。また、カム機構40が一対のガイド部21,22の軸方向における中央位置C付近に配置されているため、搬送ヘッド33が回転する際に生じる力も一対のガイド部21,22に均等に作用しやすい。したがって、
図6Aで説明したような従来型の搬送装置と比較して、ガイド部20のモーメント負荷をより低減しやすくすることができる。
【0055】
特に、搬送装置2では、移動部30を駆動するための駆動力を、導体50とマグネット36との間に生じる推進力によって得ている(所謂リニアサーボ)。すなわち、従来のサーボモーターのようにローターを回転させるための機構を移動部毎に設ける必要がなく、搬送経路上に設けられた導体50に供給する電流を制御することによって、複数の移動部の動作を一括して制御することが可能である。したがって、小さなスペースでも駆動入力を行うことが可能となり、
図7に示されるように、壁部100と第1ガイド部21との間の狭い空間でも移動部30に駆動入力を行うことができる。これにより、ガイド部20の耐久性が向上し、移動部30による搬送動作をより安定して行うことができる。
【0056】
===第3実施形態===
第3実施形態では、導体50が周方向に回転駆動される搬送装置3について説明する。
図9Aは、第3実施形態に係る搬送装置3の一例について全体構成を示す斜視図である。
図9Bは、
図9Aに示される搬送装置3を鉛直方向の上側から見た状態について表す図である。
図10は、搬送装置3の断面模式図である。
【0057】
搬送装置3は、第1実施形態の搬送装置1若しくは第2実施形態の搬送装置2の構成に加えて、導体50を周方向に回転駆動させるための導体駆動部60を有している。導体駆動部60は、駆動モーター61と、駆動出力プーリ62と、駆動入力プーリ63と、動力伝達ベルト64とを有する。駆動モーター61は、軸方向において壁部100よりも後側に固定され、導体50を回転駆動するための駆動力を発生させる。駆動出力プーリ62は、軸方向において壁部100よりも前側に配置された円盤状の部材であり、駆動モーター61の出力軸に連結され、駆動モーター61の回転に応じて回転することによって、回転駆動力を出力する。駆動入力プーリ63は、壁部100よりも軸方向の前側において、軸部10と同心となるように配置されたリング状の部材であり、軸部10の外周面上に設けられている。動力伝達ベルト64は、駆動出力プーリ62及び駆動入力プーリ63の外周面に掛け渡され、駆動出力プーリ62から出力された回転駆動力を駆動入力プーリ63に入力する。これにより、軸部10の外周面上において、駆動入力プーリ63を所定の角速度で周方向に回転させることが可能となる。
【0058】
また、
図10に示される搬送装置3では、第1導体51が軸部10の外周面上に固定されておらず、周方向に回転移動可能となっている。具体的に、第1導体51は、駆動入力プーリ63及び第1ガイド部21と一体的に連結され、ボールベアリング25を介して軸部10の外周面上に配置されている。これにより、駆動入力プーリ63の回転に応じて第1導体51が第1ガイド部21と共に、所定の角速度で周方向に回転駆動される。
【0059】
第1導体51自体が回転駆動されることにより、第1導体51が静止している場合と比較して、第1導体51に対する移動部30の相対度(角速度)を遅くすることが可能となる。例えば、軸部10に対する移動部30の周方向の移動速度(角速度)がV1である場合、搬送装置2のように第1導体51が静止している場合には、第1導体51に対する移動部30の相対速度もV1とする必要がある。一方、第1導体51自体が周方向に移動速度(角速度)V3で移動していた場合、第1導体51に対する移動部30の相対速度はV1−V3となる。したがって、第1導体51の移動速度V3の分だけ第1導体51に対する移動部30の相対速度を遅くすることができる。これにより、制御部70による制御が容易になり、リニアモーターによる移動部30の移動動作を安定させやすくすることができる。
【0060】
さらに、搬送装置3では、第1導体51と共に第1ガイド部21も周方向に移動可能な構成となっている。したがって、ガイド部20(第1ガイド部21)が周方向に移動しない場合と比較して、ガイド部20に対する移動部30の相対速度も小さくすることができる。これにより、移動部30とガイド部20との間の摩擦抵抗が低減され、ガイド部20の耐久性をより向上させることができる。すなわち、搬送装置3では移動部30の移動動作を安定させやすくしつつ、ガイド部20の耐久性を向上させることができる。
【0061】
また、
図10の例では、一対のガイド部21,22のうち、軸方向において、壁部100に近い方のガイド部である第1ガイド部21と、壁部100との間の空間に、導体50(第1導体51)及びガイド部20(打1ガイド部21)を回転駆動させるための駆動機構として、駆動入力プーリ63が配置されている。円盤状の駆動入力プーリ63によって第1導体51と共に第1ガイド部21を一括して回転駆動することが可能なため、壁部100と第1ガイド部21との間の狭い空間内であっても、駆動機構を収容可能となる。
【0062】
従来の搬送装置においてガイド部を回転駆動しようとする場合、移動部を回転駆動させるための駆動入力部(例えばモーター)と、ガイド部を回転駆動するための駆動入力部(例えばモーター)とが別個に必要となるため、駆動機構が大型化し、壁部100と壁部100に近い方の第1ガイド部21との間に駆動機構を収容することは困難であった。これに対して、搬送装置3では、リニアサーボによって導体50に電流を供給することによって移動部30が回転駆動されため、少なくとも移動部30を回転駆動するためにモーター等を設ける必要がない。したがって、壁部100と第1ガイド部21との間の狭い空間に駆動機構(駆動入力プーリ63)を設け、当該駆動機構によって第1ガイド部21を回転駆動し、同時に移動部30を回転駆動するために駆動入力(導体50への電流供給)も行うことができる。これにより、搬送装置3を全体的にコンパクトに構成することが可能となり、また、搬送機構の設置スペースを最小化することで、設計の自由度を高めることができる。
【0063】
なお、
図10に示される搬送装置3では、軸方向の後側において第1導体51及び第1ガイド部21を周方向に回転駆動する構成であったが、搬送装置3は、軸方向の前側において第2導体52及び第2ガイド部22を周方向に回転駆動する構成であっても良い。
図11は、搬送装置3の変形例について表す断面模式図である。
【0064】
図11の搬送装置3では、
図10の場合と比較して、駆動入力プーリの構成が異なる。すなわち、
図10における駆動入力プーリ63の代わりに、駆動入力プーリ65と駆動伝達ディスク66と接続軸67とが設けられ、これらによって、第2導体52及び第2ガイド部22が周方向に回転駆動される。
【0065】
具体的に、駆動入力プーリ65は、
図11に示されるように、壁部100よりも軸方向の後側において、軸部10と同心となるように配置された円盤状の部材である。また、本変形例では駆動出力プーリ62(
図11では不図示)が壁部100よりも軸方向の後側に配置されている。そして、動力伝達ベルト64によって、駆動出力プーリ62から出力された回転駆動力が駆動入力プーリ65に入力される。駆動伝達ディスク66は、軸部10の軸方向における前側端よりも前側に配置され、軸部10と同心の円盤状の部材である。また、本変形例における軸部10は円筒形状であり、軸部10の円筒の内部(中空部)には、軸方向に沿った接続軸67が周方向に回転可能に配置されている。この接続軸67は、軸方向の後側端部において駆動入力プーリ65と接続され、軸方向の前側端部において駆動伝達ディスク66と接続されている。つまり、駆動入力プーリ65と駆動伝達ディスク66とは、接続軸67によって一体的に構成されており、接続軸67を回転軸として周方向に回転可能に構成されている。
【0066】
そして、駆動伝達ディスク66は、
図11のように、導体50及びガイド部20(第2ガイド部22)と連結されている。したがって、駆動モーター61による回転駆動力が、動力伝達ベルト64を介して駆動出力プーリ62から駆動入力プーリ65に入力されると、駆動入力プーリ65及び駆動伝達ディスク66が一体的に周方向に回転駆動され、駆動伝達ディスク66に連結された導体50及び第2ガイド部22も周方向に回転駆動される。これにより、
図10の場合と同様に、導体50に対する移動部30の相対度(角速度)を遅くすることが可能となり、移動部30の移動動作を安定させやすくすることができる。また、ガイド部20(第2ガイド部22)に対する移動部30の相対速度も小さなり、移動部30とガイド部20との間の摩擦抵抗が低減され、ガイド部20の耐久性をより向上させることができる。
【0067】
なお、第3実施形態の搬送装置3では、一対のガイド部21,22のうち、一方が導体と共に周方向に回転駆動されるが、他方は回転駆動されずに周方向に自由に回転移動可能となっている。例えば、
図11の例では、軸方向前側の第2ガイド部22が周方向に回転駆動されるのに対して、軸方向後側の第1ガイド部21は駆動されておらず周方向を自由に回転できるように構成されている。したがって、制御部70は、一対のガイド部21,22のうち一方のみの回転動作を制御すれば良く、他方の回転動作については制御不要である。これにより、搬送装置3による搬送動作の制御を容易にすることができる。
【0068】
===第4実施形態===
第4実施形態では、一対のガイド部21,22のうち両方が周方向に回転駆動される搬送装置4について説明する。
図12は、搬送装置4の断面模式図である。
【0069】
第4実施形態の搬送装置4は、第3実施形態の搬送装置3と同様に導体駆動部60を有し、該導体駆動部60によって一対のガイド部21,22及び一対の導体部51,52を駆動する。具体的に、導体駆動部60は、駆動モーター61と、駆動出力プーリ62と、第1駆動入力プーリ63と、動力伝達ベルト64と、第2駆動入力プーリ65と駆動伝達ディスク66と接続軸67とを有する。また、搬送装置4における駆動出力プーリ62は、壁部100よりも軸方向の前側に配置され第1駆動入力プーリ63に対して回転駆動力を出力する第1駆動出力プーリ62aと、壁部100よりも軸方向の後側に配置され第2駆動入力プーリ65に対して回転駆動力を出力する第2駆動出力プーリ62bと(いずれも不図示)を有する。また、動力伝達ベルト64は、第1駆動出力プーリ62aから第1駆動入力プーリ63に回転駆動力を伝達する第1動力伝達ベルト64aと、第2駆動出力プーリ62bから第2駆動入力プーリ65に回転駆動力を伝達する第2動力伝達ベルト64bと(いずれも不図示)を有する。
【0070】
搬送装置4で搬送動作を行う際には、駆動モーター61が発生する回転駆動力を第1駆動入力プーリ63に入力して所定の角速度で周方向に回転させることによって、第1駆動入力プーリ63と一体的に連結された第1導体51及び第1ガイド部21を所定の角速度で周方向に回転駆動する。同様に、駆動モーター61が発生する回転駆動力を第2駆動入力プーリ65に入力して所定の角速度で周方向に回転させることによって、駆動伝達ディスク66(及び接続軸67)を回転させ、駆動伝達ディスク66と一体的に連結された第2導体52及び第2ガイド部22を所定の角速度で周方向に回転駆動する。
【0071】
一対のガイド部21,22を両方とも回転駆動させることにより、移動部30との間の摩擦抵抗をより低減することができる。また、一対の導体部51,52も共に回転駆動されるため、移動部30の動作を安定させやすくすることができる。
【0072】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。