【課題】本発明の目的は、摺動性に優れ、ホルムアルデヒドの発生、成形時のモールドデポジットが抑制されたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
少なくとも(A)ポリアセタール重合体100質量部、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜1質量部、(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド0.01〜0.50質量部、(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物0.001〜0.50質量部、(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩0.001〜0.30質量部、(F)グラフト共重合体2〜10質量部、(G)脂肪酸エステル0.5〜5質量部とを配合してなり、該(C)と(D)の合計量が、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.03〜0.55質量部であり、該(F)グラフト共重合体は、主鎖がポリエチレンであり、側鎖としてアクリロニトリル−スチレン共重合体を含むものであり、該(G)脂肪酸エステルは、炭素数12〜32の脂肪酸と炭素数2〜30の一価もしくは多価アルコールとからなる脂肪酸エステルである、ポリアセタール樹脂組成物、によって達成された。
前記(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸カルシウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
前記(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物が、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインである請求項1〜4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
請求項1〜5いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリアセタ−ル重合体が、トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素−炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールから選択される一種以上をコモノマー(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を溶融混練して重合触媒(c)を失活させて得られたポリアセタール共重合体である、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、バランスのとれた機械的物性を有し、摩擦・摩耗特性、耐薬品性、耐熱性、電気特性等に優れる。このため、ポリアセタール樹脂は、自動車、電気・電子部品等の分野で広く利用されており、ポリアセタール樹脂の利用形態や加工技術の進歩は現在も続いている。このような状況の中、ポリアセタール樹脂に要求される特性は、高度化したり特殊化したりする傾向にある。その一例として、高面圧、高負荷の摺動条件下での摺動特性の向上がポリアセタール樹脂に要求されている。
【0003】
かかる課題に対し、ポリアセタール樹脂に特定のグラフト共重合体を含有させた樹脂組成物、さらに特定のグラフト共重合体と共に潤滑剤を配合した樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、ポリアセタール樹脂に特定のグラフト共重合体、潤滑剤及び特定粒径の無機粉末を添加配合してなる樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。
さらに成形品が耐摩擦・摩耗性に優れ、かつ成形品からのホルムアルデヒドの発生を抑える検討がなされ、その技術も開示されている(特許文献3)。
【0005】
通常の使用条件下においてポリアセタール樹脂成形品から発生するホルムアルデヒドは極めて微量であるが、発生したホルムアルデヒドは化学的に活性であり、酸化により蟻酸となってポリアセタール樹脂の耐熱性に悪影響を及ぼしたり、電気・電子機器の部品などに用いると、ホルムアルデヒド或いはその酸化物である蟻酸により金属製接点部品が腐蝕したり、有機化合物の付着により変色や接点不良を生じる要因になる場合がある。
【0006】
そこで、ポリアセタール樹脂を安定化させるため、酸化防止剤やその他の安定剤が配合されている。ポリアセタール樹脂に添加される酸化防止剤としては、立体障害を有するフェノール化合物(ヒンダードフェノール)、立体障害を有するアミン化合物(ヒンダードアミン)などが知られており、その他の安定剤として、メラミン、ポリアミド、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物などが使用されている。また、通常、酸化防止剤は他の安定剤と組み合わせて用いられる。
【0007】
しかしながら、このような汎用的な安定剤を通常のホルムアルデヒド品質を有するポリアセタール樹脂に配合しただけでは、発生するホルムアルデヒド、特に、成形品から発生するホルムアルデヒドを大幅に低減させることは困難である。さらに、上記のような問題を解決しホルムアルデヒドの発生量を低減させるため、種々の化合物を配合したポリアセタール樹脂組成物が開示されている。
【0008】
例えば、特定末端基のポリアセタール樹脂、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドラジド化合物およびイソシアネート化合物を併用する技術が開示されている(特許文献4)。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドラジド化合物および特定カルボン酸のアルカリ土類金属塩を共存させる技術も開示されている(特許文献5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの特許文献1,2に開示された技術によれば摺動特性の向上は見られるものの、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制できていない。
特許文献3に開示された技術によれば、一定の摩擦・摩耗特性を保持し、ホルムアルデヒド発生の抑制効果が大きく発現される条件では、モールドデポジット抑制効果が不十分であり、安定的な成形技術ではなかった。
【0011】
特許文献4に開示された技術によれば、ポリアセタール樹脂成形時のモールドデポジットをかなりのレベルで低減することが可能である。しかしながら、モールドデポジットを低減するためには有効な技術ではあるが、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制できていないのが実情であり、また、摩擦・摩耗特性は改善が必要であった。
【0012】
また、特許文献5に開示された技術によれば、ホルムアルデヒド発生の抑制効果は発現された。しかしながら、モールドデポジット抑制効果が不十分であり、安定的な成形技術ではなかった。また、摩擦・摩耗特性の改善が必要であった。
【0013】
本発明の目的は、摩擦・摩耗特性に優れ、成形品からのホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制でき、かつ、安定的に成形時のモールドデポジットが抑制されたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、下記によって達成された。
【0015】
1. 少なくとも
(A)ポリアセタール重合体100質量部、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜1質量部、
(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド0.01〜0.50質量部、
(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物0.001〜0.50質量部、
(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩0.001〜0.30質量部、
(F)グラフト共重合体2〜10質量部、
(G)脂肪酸エステル0.5〜5質量部とを配合してなり、
該(C)と(D)の合計量が、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.03〜0.55質量部であり、
該(F)グラフト共重合体は、主鎖がポリエチレンであり、側鎖としてアクリロニトリル−スチレン共重合体を含むものであり、
該(G)脂肪酸エステルは、炭素数12〜32の脂肪酸と炭素数2〜30の一価もしくは多価アルコールとからなる脂肪酸エステルである、ポリアセタール樹脂組成物。
2. さらに(H)紡錘状炭酸カルシウム2〜18質量部を含む前記1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
3. 前記(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドが、セバシン酸ジヒドラジドである前記1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
4. 前記(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸カルシウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である前記1〜3いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
5. 前記(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物が、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインである前記1〜4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
6. 前記1〜5いずれかに記載のポリアセタ−ル樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリアセタ−ル重合体が、トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素−炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールから選択される一種以上をコモノマー(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を溶融混練して重合触媒(c)を失活させて得られたポリアセタール共重合体である、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、摩擦・摩耗特性に優れ、ホルムアルデヒドの発生量が著しく低減され、かつ、安定的に成形時のモールドデポジットが抑制されたポリアセタール樹脂組成物及び成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
<(A)ポリアセタール重合体>
本発明に使用される(A)ポリアセタール重合体は、オキシメチレン基(−OCH
2−)を構成単位とするホモポリマーでもよいし、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を有する共重合体であってもよく、共重合体であることが好ましい。
【0018】
一般的にはホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの環状化合物を主モノマーとし、環状エーテルや環状ホルマールから選ばれた化合物をコモノマーとして共重合させることによって製造され、通常、熱分解、(アルカリ)加水分解等によって末端の不安定部分を除去して安定化される。
【0019】
特に、主モノマーとしてはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンを用いるのが一般的である。トリオキサンは、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることにより得られ、これを蒸留などの方法で精製して使用される。重合に用いるトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸などの不純物の含有量が極力少ないものが好ましい。
コモノマーとしては、一般的な環状エーテル及び環状ホルマール、また分岐構造や架橋構造を形成可能なグリシジルエーテル化合物などを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
上記の如きポリアセタール重合体は、一般には適量の分子量調整剤を添加し、カチオン重合触媒を用いてカチオン重合することにより得ることができる。使用される分子量調整剤、カチオン重合触媒、重合方法、重合装置、重合後の触媒の失活化処理、重合によって得られた粗ポリアセタール重合体の末端安定化処理法などは多くの文献によって公知であり、基本的にはそれらが何れも利用できる。
【0021】
ポリアセタール重合体の特に好ましい製造方法として、以下のものが挙げられる。即ち、トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素−炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールから選択される一種以上をコモノマー(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させるものである。本方法によるポリアセタール重合体を使用することで、成形品からのホルムアルデヒド発生量、成型時のモールドデポジット発生はより低減される。
【0022】
前記重合触媒(c)として使用するヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸の総称をいい、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を共有して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有している。
【0023】
上記へテロポリ酸の具体例として、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。中でも、重合の安定性、ヘテロポリ酸自体の安定性から考慮して、へテロポリ酸は、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸又はリンタングステン酸のいずれか一種以上であることが好ましい。
【0024】
上記へテロポリ酸の使用量は、その種類によっても異なり、また、適当に変えて重合反応を調節することができるが、一般には重合されるべきモノマーの総量に対し0.05〜100ppm(以下、質量/質量ppmを示す。)の範囲であり、好ましくは0.1〜50ppmである。
【0025】
重合装置としては、バッチ式では一般に用いられる撹拌機付きの反応槽が使用でき、また、連続式としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混合機、2軸パドルタイプの連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサン等の連続重合装置が使用可能であり、また2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
重合方法は特に限定されるものではないが、先に提案されているように、トリオキサン、コモノマー及び重合触媒としてのヘテロポリ酸を、あらかじめ液相状態を保ちつつ十分に混合し、得られた反応原料混合液を重合装置に供給して共重合反応を行えば、必要触媒量の低減が可能となり、結果としてホルムアルデヒド放出量のより少ないポリアセタール共重合体を得るのに有利であり、より好適な重合方法である。重合温度は、60〜120℃の温度範囲で行なわれる。
【0027】
本発明において、上記の主モノマー(a)とコモノマー(b)とを重合してポリアセタール共重合体を調製するにあたり、重合度を調節するため公知の連鎖移動剤、例えばメチラールの如き低分子量の線状アセタール等を添加することも可能である。
【0028】
また、重合反応は活性水素を有する不純物、例えば、水、メタノール、ギ酸等が実質的に存在しない状態、例えばこれらがそれぞれ10ppm以下の状態で行うのが望ましく、このためには、これらの不純物成分を極力含まないように調製されたトリオキサン、環状エーテル及び/又は環状ホルマールを、主モノマーやコモノマーとして使用するのが望ましい。
【0029】
上記のように重合して得られた、重合触媒を含有すると共に、その末端に不安定な部分を有するポリアセタール重合体(粗ポリアセタール重合体)に、アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を溶融混練して、重合触媒の失活を行うと共にポリアセタール重合体(粗ポリアセタール重合体)が有する不安定末端基を低減して安定化する。
【0030】
本発明で使用するポリアセタール重合体の分子量は特に限定されないが、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法にて決定したPMMA(ポリメタクリル酸メチル)相当の重量平均分子量が10,000〜400,000程度のものが好ましい。また、樹脂の流動性の指標となるメルトインデックス(ASTM−D1238に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定)が0.1〜100g/10分であるものが好ましく、さらに好ましくは0.5〜80g/10分である。
【0031】
本発明において使用する(A)ポリアセタール重合体は、特定の末端特性を有していることが特に好ましい。具体的には、ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下、不安定末端量が0.5質量%以下である。ここでヘミホルマール末端基は−OCH
2OHで示されるものであり、ヒドロキシメトキシ基あるいはヘミアセタール末端基とも称される。また、ホルミル末端基は−OCHOで示される。このようなヘミホルマール末端基およびホルミル末端基の量は
1H−NMR測定により求めることができ、その具体的な測定方法は、特開2001−11143号公報に記載された方法を参照できる。
【0032】
また、不安定末端量とは、ポリアセタール重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解し易い部分の量を示す。かかる不安定末端量は、ポリアセタール重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノール水溶液100mlとともに耐圧密閉容器に入れ、180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリアセタール重合体に対する質量%で表したものである。
【0033】
本発明において用いる(A)ポリアセタール重合体は、ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.6mmol/kg以下である。またホルミル末端基量は0.5mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.1mmol/kg以下である。また不安定末端量は0.5質量%以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以下である。ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、不安定末端量の下限は特に限定されるものではない。
【0034】
前記の如く特定の末端特性を有する(A)ポリアセタール重合体は、モノマー及びコモノマーに含まれる不純物の低減、製造プロセスの選択およびその製造条件の最適化などを行うことにより製造できる。
【0035】
以下に本件の発明の要件を満たす特定の末端特性を有する(A)ポリアセタール重合体を製造する方法は、例えば特開2009−286874号公報記載の方法を使用することができる。ただし、この方法に限定されるものではない。
【0036】
本発明において、(A)ポリアセタール重合体に分岐又は架橋構造を有するポリアセタール重合体を添加して使用してもよく、その場合配合量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対し0.01〜20質量部であり、特に好ましくは0.03〜5質量部である。
【0037】
<(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明で使用可能な(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、特に限定されるものでなく、例えば、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](別名:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート])、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド)、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート等が例示される。
【0038】
本発明においては、これらの酸化防止剤から選ばれた少なくとも一種又は二種以上を使
用することができる。
【0039】
本発明における(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)ポリアセ
タール重合体100質量部に対し、0.01質量部以上1質量部以下である。
<(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド>
本発明において使用する(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドとしては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド等が挙げられる。好ましくは、セバシン酸ジヒドラジドが挙げられ、ホルムアルデヒドを捕捉し、更にヒドラジド基を有するヒダントイン化合物と併用することで本来発生するモールドデポジットを著しく抑えることができる。
【0040】
本発明において、(C)の添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.01〜0.50質量部であり、好ましくは0.02〜0.30質量部である。
【0041】
<(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物>
本発明の(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物(以下、ヒダントイン化合物と略すこともある)としては、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)ヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−メチルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等が挙げられ、ヒダントインの5位には1又は2つの置換基(メチル基などの直鎖又は分岐鎖状炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基などの炭素数6〜10のアリール基など)を有していてもよく、5位の2つの置換基は5位の炭素原子とともに環を形成してもよい。好ましくは、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインが用いられる。
【0042】
この本発明の(D)ヒダントイン化合物は、本発明の(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドと併用することによって、モールドデポジットを抑制する。とくに、セバシン酸ジヒドラジドとの併用で効果が大きい。
【0043】
本発明において(D)ヒダントイン化合物の添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.001〜0.50質量部であり、好ましくは0.01〜0.30質量部である。
【0044】
また本発明において(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドと(D)ヒダントイン化合物の両方が含有されていれば本発明の効果が得られるが、合計量として、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して、0.03〜0.55質量部であることが好ましい。そして(C)と(D)の含有質量比は(C):(D)=10:90〜99:1であることが好ましい。
【0045】
<(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩>
本発明の(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩を構成する脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸であってもよく、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。このような脂肪族カルボン酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪族カルボン酸、例えば、炭素数10以上の1価の飽和脂肪族カルボン酸[カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の炭素数10〜34飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは炭素数10〜30飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の1価の不飽和脂肪族カルボン酸[オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸等の炭素数10〜34不飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは炭素数10〜30不飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の2価の脂肪族カルボン酸(二塩基性脂肪族カルボン酸)[セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸等の2価の炭素数10−30飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは2価の炭素数10〜20飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の2価の不飽和脂肪族カルボン酸[デセン二酸、ドデセン二酸等の2価の炭素数10〜30不飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは2価の炭素数10〜20不飽和脂肪族カルボン酸)等]が例示できる。
【0046】
また、上記の脂肪族カルボン酸には、その一部の水素原子がヒドロキシル基等の置換基で置換され、分子内に1又は複数のヒドロキシル基等を有する脂肪族カルボン酸(例えば、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ飽和炭素数10〜26脂肪族カルボン酸)も含まれ、また精製の精度により炭素数が若干相違する脂肪族カルボン酸も含まれるものである。
【0047】
本発明においてアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。
本発明において、特に好ましい脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムである。
【0048】
ポリアセタール樹脂組成物中の脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩の添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して、0.001〜0.30質量部であり、好ましくは0.01〜0.25質量部である。
【0049】
<(F)グラフト共重合体>
本発明における(F)グラフト共重合体は、主鎖がポリエチレンであり、側鎖としてアクリロニトリル−スチレン共重合体を含むものである。
【0050】
(F)グラフト共重合体を構成するポリエチレン(d1)とアクリロニトリル−スチレン共重合体(d2)の割合は、d1:d2=80:20〜20:80(質量比)が好ましく、特に好ましくはd1:d2=60:40〜40:60である。
【0051】
本発明において上記(F)グラフト共重合体の配合量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して2〜10質量部である。(F)成分の配合量が2質量部未満では本発明の目的とする摩擦・摩耗特性の改良効果が不十分なものになる。また、(F)成分の配合量が10質量部を超えると剛性等の機械的物性を阻害し、また摩擦・摩耗特性を悪化させるため好ましくない。
【0052】
<(G)脂肪酸エステル>
本発明で用いる(G)脂肪酸エステルは、炭素数12〜32の脂肪酸と炭素数2〜30の一価もしくは多価アルコールとの脂肪酸エステルである。
【0053】
(G)脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸や、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0054】
また、(G)脂肪酸エステルを構成するアルコールとしては、プロピル、イソプロピル、ブチル、オクチル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、ベヘニル等の一価アルコール及びエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価アルコールが挙げられる。
【0055】
(G)脂肪酸エステルとして好ましいのは、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸から選ばれる脂肪酸と、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールから選ばれる一価のアルコールもしくはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタンから選ばれる多価アルコールとのエステルであり、具体例としては、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。
【0056】
本発明において、かかる(G)脂肪酸エステルの配合量は(A)ポリアセタール重合体100質量部に対し0.5〜5質量部である。(G)成分の配合量が0.5質量部より少ない量では十分な摺動性改良効果は期待できず、(G)成分の配合量が5質量部より多い量では基体樹脂であるポリアセタール樹脂の性質が損なわれる場合がある。
【0057】
<(H)紡錘状炭酸カルシウム>
本発明において、さらに、成形品の表面性(表面硬さ、平滑性等)や機械物性を向上させたい場合、(H)紡錘状炭酸カルシウムを配合して達成される。
本発明において(A)ポリアセタール重合体に配合される(H)紡錘状炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムに属し、その形状が紡錘状をなしている粒子である。紡錘状とは、糸をつむぐ際に使用される紡錘に似た形、すなわち円柱状で中央部が太く、両端が次第に細くなっている形を言うが、本発明で使用する(H)紡錘状炭酸カルシウムは、概ねこれに類似する形状を有するものであればよい。
【0058】
その平均粒子径は0.1〜1μm、平均粒子長さは0.5〜10μm、粒子長さ/粒子径の平均値は、2〜10のものが好ましい。ここで、粒子径とは紡錘状粒子の最大直径部(通常は長さ方向のほぼ中央部)の直径、粒子長さとは紡錘状粒子の長さを指し、平均粒子径及び平均粒子長さは、紡錘状炭酸カルシウを電子顕微鏡で撮影し、写真から無作為に選択した50個の粒子についてその粒子径及び粒子長さを読み取り、その平均値を求める方法で測定した値を指す。
【0059】
このような特定の(H)紡錘状炭酸カルシウムとしては白石工業(株)製のシルバーW、PC、PCX、カルライトSA等が例示される。本発明において使用する(H)紡錘状炭酸カルシウムは、表面処理剤で表面処理されたものが好ましく、特に、アミノシランで表面処理されたものが好ましい。このような表面処理された(H)紡錘状炭酸カルシウムとしては白石工業(株)製のSL−101が例示される。表面処理を行なうことで、樹脂と炭酸カルシウムの密着性が向上し、動摩擦抵抗が改善される。
【0060】
本発明において、(H)紡錘状炭酸カルシウムの配合量は(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して2〜18質量部、好ましくは3〜15質量部である。(H)成分の配合量が2質量部未満の場合には、過酷な摺動条件も含む幅広い摺動条件下での優れた摩擦・摩耗特性を達成することはできず、機械的物性(特に剛性や表面硬さ等)の向上も期待できない。(H)成分の配合量が18質量部を超える場合には、成形品表面の平滑性等が不十分なものとなり、摩耗量の増大や摩擦係数の上昇(悪化)を起こし易くなる。
【0061】
<その他の添加剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、本発明を阻害しない限り、必要に応じて、さらに、耐候性改良剤、耐衝撃性改良剤、光沢性制御剤、充填剤、着色剤、核剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、抗カビ剤、芳香剤、発泡剤、相溶化剤、物性改良剤(ホウ酸又はその誘導体など)、香料などを一種または二種以上配合することができる。
<ポリアセタール樹脂組成物の製造方法>
【0062】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、樹脂組成物の調製法として従来から知られた各種の方法により調製することができる。例えば、(1)組成物を構成する全成分を混合し、これを押出機に供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(2)組成物を構成する成分の一部を押出機の主フィード口から、残余成分をサイドフィード口から供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(3)押出し等により一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを混合して所定の組成に調整する方法などが採用できる。
【0063】
押出機を用いた組成物の調製においては、一カ所以上の脱揮ベント口を有する押出機を用いるのが好ましく、さらに、主フィード口から脱揮ベント口までの任意の場所に水や低沸点アルコール類をポリアセタール重合体100質量部に対して0.1〜10質量部程度供給し、押出工程で発生するホルムアルデヒド等を水や低沸点アルコール類と共に脱揮ベント口から脱揮除去するのが好ましい。これにより、ポリアセタール樹脂組成物およびその成形品から発生するホルムアルデヒド量をさらに低減することができる。
【0064】
このようにして調製された本発明のポリアセタール樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形等、従来から知られた各種の成形方法によって成形することができる。
【0065】
本発明には、前記ポリアセタール樹脂組成物及び上記による着色されたポリアセタール樹脂組成物からなる成形品のリサイクルも含まれる。具体的には、これらの樹脂組成物からなる成形品又はその粉砕物を、単独で、或いは同一又は異なる組成の樹脂材料又は成形品と共に、溶融混練し押出してなるリサイクル樹脂組成物、及び、これらの樹脂組成物からなる成形品又はその粉砕物を、単独で、或いは同一又は異なる組成の樹脂材料又は成形品と共に、溶融混練し成形してなるリサイクル成形品である。
【0066】
このように、溶融熱履歴の繰返しを受けて調製されたリサイクル樹脂組成物及びリサイクル成形品も、それらの基になるポリアセタール樹脂組成物と同様に、ホルムアルデヒド発生量が極めて低レベルに保持されたものである。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」はすべて質量部を表す。また、実施例及び比較例において評価した諸特性及びその評価方法は以下の通りである。表1、2に記載の数値の単位は、質量部である。
【0068】
表1、2に示す各種成分を表1、2に示す割合で添加混合し、ベント付き二軸の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。
実施例で使用した表1、2に記載の各成分は以下のものである。
【0069】
・(A)ポリアセタ−ル重合体
A−1:二軸パドルタイプの連続式重合機を用いて、全モノマ−(トリオキサンおよび1,3−ジオキソラン)に対し1,3−ジオキソラン3.3質量%、メチラ−ル1000ppm添加したトリオキサンを連続的に供給し、同時に同じところへ三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート(触媒濃度:全モノマ−に対して20ppm(三フッ化ホウ素として)のシクロヘキサン溶液)を供給し重合した。
重合機吐出口より排出された重合体について、排出直後にトリエチルアミン1000ppm含有する水溶液を加え混合粉砕を行うと共に、撹拌処理を行った。その後、遠心分離、乾燥を行い触媒失活された重合体を得た。この重合体を、ベント口を有するニ軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練させて、ベント口で減圧脱揮を行いながら、不安定末端の除去を行いペレット状の重合体を得た。その後、乾燥を行い、所望の重合体を得た。(メルトインデックス(190℃、荷重2.16kgで測定):9g/10分)
【0070】
A−2:二軸パドルタイプの連続式重合機を用いて、全モノマ−(トリオキサンおよび1,3−ジオキソラン)に対し1,3−ジオキソラン3.3質量%、メチラ−ル1000ppm添加したトリオキサンを連続的に供給し、同時に同じところヘテロポリ酸触媒としてリンタングステン酸(触媒濃度:全モノマ−に対して3ppmのギ酸メチル溶液)を供給し重合した。重合機吐出口より排出された重合体にステアリン酸ナトリウム20ppm添加し、ベント口を有するニ軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練させて、ベント口で減圧脱揮を行いながら、触媒の失活および不安定末端の除去を行いペレット状の重合体を得た。その後、乾燥を行い、所望の重合体を得た。(メルトインデックス(190℃、荷重2.16kgで測定):9g/10分)
【0071】
・(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
B−1:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](BASF社製、IRGANOX245)
B−2:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、IRGANOX1010)
・(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド
C−1:セバシン酸ジヒドラジド
C−2:アジピン酸ジヒドラジド
C−3:ドデカン二酸ジヒドラジド
・(D)ヒダントイン化合物
D−1:1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素ファインテクノ(株)製、「アミキュア」VDH)
・(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩
E−1:ステアリン酸カルシウム
E−2:12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
・(F)グラフト共重合体
F−1:PE−g−AS(日油(株)製、モディパーA1401)ポリエチレンとアクリロニトリル・スチレン共重合体からなるグラフト共重合体)
・(G)脂肪酸エステル
G−1:グリセリンモノベヘネート(理研ビタミン(株)製、リケマールB−100)
G−2:グリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、リケマールS−100)
G−3:ステアリルステアレート(日油(株)製、ユニスターM−9676)
・(H)紡錘状炭酸カルシウム
H−1:紡錘状炭酸カルシウム(白石工業(株)製、SL−101(アミノシラン表面処理品)
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
<評価>
実施例における特性評価項目及び評価方法は以下の通りである。結果を表3、4に示す。
【0075】
<成形品からのホルムアルデヒド発生量(VOC)評価>
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件で平板状試験片(100mm×40mm×2mmt)を成形した。この平板状試験片2枚を、10Lのポリフッ化ビニル製サンプリングバッグに封入し脱気して、4Lの窒素を入れ、65℃で2時間加熱した後、サンプリングバッグ内の窒素を0.5ml/minで3L抜き取り、発生したホルムアルデヒドをDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)捕集管(Waters社製、Sep―PakDNPH―Silica)に吸着させた。
【0076】
その後、DNPH捕集管からDNPHとホルムアルデヒドとの反応物をアセトニトリルで溶媒抽出し、高速液体クロマトグラフでDNPHとホルムアルデヒドとの反応物の標準物質を用いた検量線法により、発生したホルムアルデヒド量を求め、試験片単位質量あたりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
【0077】
*成形機:FANUC ROBOSHOT α―S100ia (ファナック(株))
*成形条件:シリンダー温度(℃) ノズル−C1− C2− C3
190 190 180 160℃
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
金型温度 80(℃)
【0078】
<モールドデポジット(MD)の評価>
実施例および比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件でモールドデポジット試験片(33mm×23mm×1mmt)を成形した。
[評価方法]
5000shot連続成形した後、金型内のキャビティ部表面を目視にて観察し、以下の基準に従って付着物量を目視で判定した。
◎:付着物は全く確認されない
○:付着物はほとんど確認されない
△:一部付着物が確認される。
×:全体に付着物が確認される
××:全体に多量の付着物が確認される
【0079】
*成形機:FANUC ROBOSHOT S−2000i 50B(ファナック(株))
*成形条件:シリンダー温度(℃) ノズル−C1− C2− C3
205 215 205 185℃
射出圧力 40(MPa)
射出速度 1.5(m/min)
金型温度 80(℃)
【0080】
<摩擦・摩耗特性の評価>
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件で円筒状試験片(外径25.6mm、内径20mm)を成形した。そして、鈴木式摩擦摩耗試験にしたがって、相手材として2種の試験片を用いて動摩擦係数、比摩耗量(×10
−3mm
3/(N・km))を測定した。2種の試験片の1種は、ポリアセタール樹脂成形体(製品名:ジュラコン(登録商標)M90−44、ポリプラスチックス社製)であり、もう1種は、炭素鋼S45Cとした。
測定条件は、相手材がポリアセタール樹脂成形体(対POM)である場合は、面圧:0.06MPa、速度:15cm/sとし、相手材が炭素鋼(対金属)である場合は、面圧:0.98MPa、速度:30cm/sとした。測定は23℃55RH%の雰囲気下で行った。
*成形機:FANUC ROBOSHOT α―S50ia (ファナック(株))
*成形条件:シリンダー温度(℃) ノズル−C1− C2− C3
200 200 180 170℃
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
金型温度 80(℃)
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
上記の通り、本発明の組成の範囲では、優れた摩擦・摩耗特性を有し、ホルムアルデヒド発生量およびモールドデポジットの発生量も安定的に抑制されることが明らかである。