特開2021-66759(P2021-66759A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-66759(P2021-66759A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20210402BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20210402BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20210402BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C09J163/00
   C09J4/02
   C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-190760(P2019-190760)
(22)【出願日】2019年10月18日
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】阿須間 夕紀
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅史
【テーマコード(参考)】
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J036AD07
4J036AD08
4J036AF06
4J036AH07
4J036AH08
4J036DA04
4J036DC32
4J036EA01
4J036EA02
4J036EA04
4J036EA06
4J036FA10
4J036GA04
4J036GA06
4J036GA23
4J036JA06
4J036JA08
4J040EC001
4J040FA082
4J040GA20
4J040HB34
4J040HD23
4J040HD39
4J040JB02
4J040KA11
4J040KA16
4J040KA17
(57)【要約】
【課題】シアネートエステル化合物およびエポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物に関し、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性を維持しつつ、靱性を高めることができる、新たな熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)シアネートエステル化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化促進剤、(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤を含有し、(D)ラジカル重合性モノマーとして、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、単官能のラジカル重合性モノマーを0.5〜40質量%含み、且つ、多官能のラジカル重合性モノマーを10質量%以下含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シアネートエステル化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化促進剤、(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤を含有し、
(D)ラジカル重合性モノマーとして、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、単官能のラジカル重合性モノマーを0.5〜40質量%含み、且つ、多官能のラジカル重合性モノマーを10質量%以下含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)ラジカル重合性モノマーのうち、単官能のラジカル重合性モノマー:多官能のラジカル重合性モノマーの含有質量比が200:1〜1:1であることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、(D)ラジカル重合性モノマーを0.5〜40質量%含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(B)エポキシ樹脂が、1分子内にエポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)シアネートエステル化合物が1つ以上の芳香族環を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)硬化促進剤として、下記一般式(12)で表される4級ホスホニウムボレートを含有する、請求項1〜5の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(12)において、R13〜R16はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換の芳香族基、又は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、且つこれらは式中のリン原子とP−C結合を形成する。また、R17〜R20はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換の芳香族基、又は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、且つこれらは式中のホウ素原子とB−C結合を形成する。)
【請求項7】
(D)ラジカル重合性モノマーとして、スチレン系モノマー、マレイミド系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、ビニルエーテル系モノマー及びビニルアミド系モノマーのうちの1種又は2種以上の組合せを含有する、請求項1〜6の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(E)ラジカル開始剤として、有機過酸化物を含有する、請求項1〜7の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる硬化物。
【請求項10】
前記硬化物は、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂に由来する相と、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相とを有する相分離構造を備えたものであることを特徴とする請求項9に記載の硬化物。
【請求項11】
請求項1〜8の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物又は請求項9若しくは10記載の硬化物からなる半導体封止材。
【請求項12】
請求項1〜8の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物又は請求項9若しくは10記載の硬化物からなる、複合材におけるマトリックス樹脂。
【請求項13】
請求項1〜8の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物又は請求項9若しくは10記載の硬化物からなる接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアネートエステル化合物およびエポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層回路基板、高集積回路基板等の電気・電子機器材料については、機器の小型化、軽量化及び高機能化が進み、更なる多層化、高密度化、薄型化、軽量化、信頼性及び成形加工性等の向上が求められている。熱や活性エネルギー線によって硬化し得る硬化性樹脂組成物は、各種用途への適用が種々検討され、各用途で要求される特性に優れた硬化性樹脂組成物の開発がなされている。
【0003】
代表的な熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂は、従来から各種用途へ適用されており、より耐熱性、成型性、加工性、保存安定性等の向上の点から現在も改良が継続して実施されている。
また、電気・電子機器材料向けの代表的な樹脂としてシアネート樹脂を挙げることができる。シアネート樹脂は、熱硬化樹脂としての良好な耐熱性に加え、誘電率・誘電正接といった誘電特性が優れているため、近年要求が高まっている高周波領域での絶縁層として開発がなされている。
【0004】
近年、これらシアネート樹脂とエポキシ樹脂を併用することで、硬化物の特性を向上させる検討がなされている。
例えば特許文献1は、1分子中に2つ以上のシアネートエステル基を有するシアネートエステル化合物と、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、1分子中に2つ以上の不飽和二重結合を有し、かつ、分子中に炭素と水素とのみから形成される環構造を有すると共に分子中に水酸基を有しないラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを組み合わせることで、ラジカル重合性化合物の環構造が、硬化物の剛直化に寄与し、硬化物の機械的特性、特に曲げ弾性率及び曲げ強さの向上に寄与するばかりか、ラジカル重合性化合物が水酸基を有していないので、ラジカル重合禁止剤として作用することなく効率的に重合を進行させることができる。
【0005】
また、特許文献2は、特定の骨格を有する、エポキシ樹脂、シアネートエステル化合物及び硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物が、成型性、加工性及び保存安全性に優れ、かつ、低温で硬化しうると共に、硬化物が耐熱性に優れることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−46815号公報
【特許文献2】特開2017−149878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シアネートエステル化合物やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、三次元架橋構造を有する不溶不融の硬化として使用されるため、本質的に脆く、靭性に劣るという課題を抱えている。特に近年、エポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂の用途が、航空機の構造材料として使用される炭素繊維などの高性能複合材料や、半導体集積回路の封止材など、先端技術分野へ拡大しているため、熱硬化性樹脂組成物の硬化物に対して、より靭性を高めることが要求されている。
特許文献1においては、靱性や耐熱性について何ら検討がなされていない。また、特許文献2においては、耐熱性に改善が見られるが、熱硬化性樹脂特有の脆さについては改善がなされていない。
【0008】
本発明の目的は、シアネートエステル化合物およびエポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物に関し、前記特許文献2記載の発明をさらに発展させることで、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性を維持しつつ、具体的には、少なくとも当該硬化物のガラス転移温度(Tg)を220℃以上としつつ、靱性を高めることができる、新たな熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)シアネートエステル化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化促進剤、(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤を含有し、
(D)ラジカル重合性モノマーとして、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、単官能のラジカル重合性モノマーを0.5〜40質量%含み、且つ、多官能のラジカル重合性モノマーを10質量%以下含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提案する熱硬化性樹脂組成物によれば、少なくとも硬化物のガラス転移温度(Tg)220℃以上を維持しつつ、靱性を効果的に高めることができる。特に、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂との硬化と、(D)ラジカル重合性モノマーのラジカル重合を同時に行う方法(「in situ反応・重合法」とも称する)により、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂に由来する相と、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相とを有する相分離構造を備えた硬化物を作製することができ、硬化物の強靭化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、発明の実施形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<<本熱硬化性樹脂組成物>>
本発明の実施形態の一例に係る熱硬化性樹脂組成物(「本熱硬化性樹脂組成物」と称する)は、(A)シアネートエステル化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化促進剤、(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤、さらに必要に応じて(F)その他の成分を含有する熱硬化性樹脂組成物である。
【0013】
<(A)シアネートエステル化合物>
(A)シアネートエステル化合物は、1分子中に2つ以上のシアネートエステル基(−OCN)を有する化合物を含有する樹脂であり、中でも芳香族環を有するものが好ましい。芳香族環はその剛直性の高さから硬化物の耐熱性を向上させる効果がある。
【0014】
前記芳香族環としては、ベンゼン等の単環芳香族炭化水素;ナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、テトラセン、テトラフェン等の多環芳香族炭化水素を挙げることができる。
【0015】
また、シアネートエステル化合物は、部分構造として、上述の単環芳香族炭化水素および多環芳香族炭化水素に加えて、ビフェニル、トリフェニルメタン、各種ビフェノール類、フルオレン、キサンテンなどを有するものが好ましい。
【0016】
本熱硬化性樹脂組成物中に含まれるシアネートエステル化合物のシアネート当量(シアネートエステル化合物に含まれるシアネート基1モルあたりの質量(g))は、特に制限はない。加工性、耐熱性、電気特性等の各種バランスの観点から、50〜500g/eq.であることが好ましく、中でも80g/eq.以上或いは300g/eq.以下であることがより好ましく、その中でも100g/eq.以上或いは200g/eq.以下であることが特に好ましい。
【0017】
また、(A)シアネートエステル化合物の分子量は、組成物の粘度を低くして加工性を向上させる観点から、1000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、400以下であることが特に好ましい。
【0018】
かかる観点から、例えば、好ましいシアネートエステル化合物として、以下の構造のものを挙げることができる。
【0019】
【化1】
【0020】
本熱硬化性樹脂組成物に含まれるシアネートエステル化合物は、1分子中に少なくとも2個以上のシアネート基を有するものである。但し、シアネート基の一部が付加反応又は環化して、直線状の付加体やトリアジン環を形成する等の多量体(プレポリマーと称することがある)となっていてもよい。
【0021】
本熱硬化性樹脂組成物中に含まれるシアネートエステル化合物は、1種類のみ使用してもよく、2種類以上の組み合わせであってもよい。またそれらの組み合わせに用いるシアネートエステル化合物はプレポリマーであってもよい。
【0022】
<(B)エポキシ樹脂 >
(B)エポキシ樹脂は、組成物や硬化物に必要な物性に応じて適宜選択可能である。中でも、1分子内にエポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ樹脂を使用することがより好ましい。(B)エポキシ樹脂が、1分子内にエポキシ基を3個以上有していれば、高いガラス転移温度(Tg)を維持することができる。かかる観点から、1分子内にエポキシ基を4個以上有しているのがさらに好ましい。他方、8個以上有するものは未反応のエポキシ基が残存し、かえってTgや機械的特性の低下につながる可能性があるため、7個以下有しているのが好ましく、6個以下有しているのがさらに好ましい。
【0023】
本熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物のエポキシ当量(エポキシ化合物に含まれるエポキシ基1モルあたりの質量(g))は、特に制限はない。加工性、耐熱性、電気特性等の各種バランスの観点から、50〜500g/eq.であることが好ましく、中でも70g/eq.以上或いは300g/eq.以下であることがより好ましく、その中でも90g/eq.以上或いは250g/eq.以下であることが特に好ましい。
【0024】
また、エポキシ樹脂は、芳香族環を1つ以上有するものが好ましい。芳香族環はその剛直性の高さから硬化物の耐熱性を向上させる効果がある。
前記芳香族環としては、ベンゼン等の単環芳香族炭化水素;ナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、テトラセン、テトラフェン等の多環芳香族炭化水素を挙げることができる。
【0025】
エポキシ樹脂は、部分構造として、上述の単環芳香族炭化水素および多環芳香族炭化水素に加えて、ビフェニル、トリフェニルメタン、各種ビフェノール類、フルオレン、キサンテンなどを有するものが好ましい。
【0026】
かかる観点から、エポキシ樹脂の好ましい例として、以下の一般式(1)〜(11)で表されるエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0027】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂の構造は、以下の通りである。
【0028】
【化2】
【0029】
一般式(1)において、Aは単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO−、又は置換もしくは無置換の2価の有機基を表す。置換もしくは無置換の2価の有機基としては、例えば、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2−2−プロピレン基等の2価の脂肪族鎖状炭化水素基;例えば、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン基、シクロオクチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンタニレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、5−メチル−1,3−シクロヘキシレン基、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキシレン基、ジシクロペンタジエニレン基等の2価の脂肪族環状炭化水素基;ベンジルメチレン基、フリルメチレン基、フルオレニリデン基等の2価の芳香族環含有炭化水素基を挙げることができる。
【0030】
10及びR11はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜12の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基、又は炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。中でも、R10及びR11は置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基が特に好ましい。また、R10及びR11は互いに連結していてもよい。具体的には下記のような構造を挙げることができる。
また、n及びpは、それぞれ独立して0〜3の整数を表す。
【0031】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂の具体例としては、特に限定されないが、以下 挙げることができる。
【0032】
【化3】
【0033】
中でも、特に以下の化合物が耐熱性と合成の容易さの観点から好ましい。
【0034】
【化4】
【0035】
なお、R10及びR11が互いに連結している例として、以下を挙げることができる。
【0036】
【化5】
【0037】
一般式(2)〜(11)で表されるエポキシ樹脂の構造は、以下の通りである。
【0038】
【化6】
【0039】
一般式(2)〜(11)において、上記式中Rは、水酸基または炭素数1〜10の有機基である。具体的には、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などを挙げることができる。uは0〜4である。各芳香環に含まれるu個のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、tは、2以上99以下であり、好ましくは2以上19以下である。
【0040】
本熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、上述の通り1分子内にエポキシ基を3つ以上有していることが好ましい。また、硬化物の物性に応じて、1分子内にエポキシ基を3つ以上有しているエポキシ樹脂2種類以上の組み合わせであってもよく、1種類以上の1分子内にエポキシ基を2つのみ有しているエポキシ樹脂との組み合わせであってもよい。
【0041】
上述のエポキシ化合物の性状は、室温(25℃)でパウダー、フレーク、ペレット、シートなどの固形状;または液状のいずれでもよい。他の成分との相溶性や取り扱い性の点から、室温(25℃)で固形状であることが好ましい。
【0042】
また、上述のエポキシ樹脂を事前にフェノキシ樹脂へ誘導してから用いることもできる。フェノキシ樹脂とは、例えば特許公報第5348740号公報に記載されているような製法でエポキシ樹脂から誘導される直鎖状のエポキシオリゴマーである。
エポキシ樹脂をフェノキシ樹脂へ変換してから用いる場合、エポキシ樹脂の分子量は、特に制限はない。組成物としたときの加工性を良好に保つために、エポキシ樹脂の質量平均分子量は200〜5000であるのが好ましく、中でも300以上或いは2000以下がより好ましい。ここで質量平均分子量は、例えばポリスチレンを標準物質とする一般的なGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
【0043】
<(C)硬化促進剤 >
(C)硬化促進剤は、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂の硬化反応に寄与する物質であればよく、一般的にシアネートエステル化合物やエポキシ樹脂の硬化促進剤として知られているもの等を挙げることができる。
【0044】
本熱硬化性樹脂組成物においては、これらの硬化促進剤を単独で又は任意の組み合わせで使用することができる。さらにこれらの硬化促進剤を単独で又は任意の組み合わせで含むことにより、本熱硬化性樹脂組成物は、優れた強度、耐熱性を得ることができる。
【0045】
硬化促進剤の例としては、特に限定されないが、イミダゾール類、第3級アミン、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、金属系硬化促進剤、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等を挙げることができる。
【0046】
中でも好ましい(C)硬化促進剤として、下記一般式(12)で表される4級ホスホニウムボレートを挙げることができる。
一般式(12)で表される4級ホスホニウムボレートは、活性種であるホスホニウムカチオン及びボレートアニオンが、互いにイオン対を形成して保護されているために、常温では触媒活性が抑制されるが、硬化時の温度ではイオン対がアニオンとカチオンに解離して、急激に触媒活性を発現するため、シアネートエステル化合物及びエポキシ樹脂の常温保存性と硬化性の両立が可能となるまた、銅や亜鉛からなる従来の金属触媒と比較して、低温、短時間で硬化が可能となる。
以上の理由から、本熱硬化性樹脂組成物の(C)硬化促進剤としては、一般式(12)で表される4級ホスホニウムボレートが好ましい。
【0047】
【化7】
【0048】
一般式(12)において、Pはリン原子を表す。R13〜R16はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換の芳香族基、又は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、且つR13〜R16はリン原子と各置換基がP−C結合を形成するものである。また、R13〜R16は同一であっても異なってもよい。このような基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、t−ブチル基、アリル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、エチルフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。
【0049】
また、一般式(12)を構成するホスホニウム基としては、例えば、テトラフェニルホスホニウム基、テトラトリルホスホニウム基、テトラエチルホスホニウム基、テトラメチルホスホニウム基、テトラナフチルホスホニウム基、テトラベンジルホスホニウム基、エチルトリフェニルホスホニウム基、n−ブチルトリフェニルホスホニウム基、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム基、トリメチルフェニルホスホニウム基、メチルジエチルフェニルホスホニウム基、メチルジアリルフェニルホスホニウム基、テトラ-n-ブチルホスホニウム基等を挙げることができる。好ましくは、テトラフェニルホスホニウム基である。
【0050】
一般式(12)において、Bはホウ素原子を表す。ボレート側のR17〜R20はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換の芳香族基、又は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、且つR17〜R20はホウ素原子と各置換基がB−C結合を形成するものである。R17〜R20は同一であっても異なってもよい。このような基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、t−ブチル基、アリル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、エチルフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはトリル基である。
【0051】
また、前記一般式(12)を構成するボレート基としては、例えば、テトラフェニルボレート基、テトラトリルボレート基、テトラエチルボレート基、テトラナフチルボレート基、テトラベンジルボレート基等を挙げることができる。好ましくは、テトラトリルボレート基である。
【0052】
さらに、シアネートエステル化合物とエポキシ樹脂等とを効率的に硬化させる好適な硬化促進剤として、金属系硬化促進剤を挙げることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0053】
金属系硬化促進剤としては、特に限定されない。例えばコバルト 、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩を挙げることができる。
有機金属錯体の具体例としては、特に限定されないが、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等を挙げることができる。
有機金属塩としては、特に限定されない。例えばオクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
金属系硬化促進剤としては、硬化性、溶剤溶解性の観点から、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、鉄(III)アセチルアセトナートが好ましく、特にコバルト(III)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛が好ましい。金属系硬化促進剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
金属系硬化促進剤の添加量の上限値は、樹脂組成物の保存安定性、絶縁性の低下を防止するという観点から、シアネートエステル化合物及びエポキシ樹脂との総量100質量%に対する、金属系硬化促進剤に含まれる金属元素換算の含有量が、500ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましい。一方、樹脂組成物中の金属系硬化促進剤の添加量の下限値は、低粗度の絶縁層表面へのピール強度に優れる導体層の形成が困難となるのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、金属系硬化促進剤に含まれる金属元素換算の含有量が、20ppm以上が好ましく、30ppm以上がより好ましい。
【0055】
硬化促進剤の種類の選択は、硬化条件、硬化物の形状、硬化物の接着性や曲げ強度等の物性等のバランスに応じて行えばよい。またこれらの硬化促進剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
一般式(12)で表される4級ホスホニウムボレートを含め、金属系硬化促進剤以外の上記硬化促進剤の添加量は、特に限定されない。シアネートエステル化合物及びエポキシ樹脂との総量100質量部に対して0.001質量以上20質量部以下の範囲で用いることが好ましい。より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上であり、一方、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0057】
<(D)ラジカル重合性モノマー >
(D)ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合条件下において、ラジカル重合することができるモノマーであればよく、通常、ラジカル重合可能な官能基、例えば炭素‐炭素二重結合を、分子内に有するモノマーが好ましい。
このようなラジカル重合性モノマーとして、例えばスチレン系モノマー、マレイミド系モノマー、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル及びビニルアミドなどを挙げることができ、構造によって単官能のラジカル重合性モノマーと多官能のラジカル重合性モノマーに分類される。
【0058】
(D)ラジカル重合性モノマーは、硬化物全体に改質剤としての効果を発現させる観点から、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、(D)ラジカル重合性モノマーを0.5質量%以上含むのが好ましく、中でも3質量%以上、その中でも10質量%以上含むのがさらに好ましい。他方、(A)(B)を由来とする硬化物の耐熱性や機械的特性の高さを維持する観点から、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、(D)ラジカル重合性モノマーを40質量%以下の割合で含むのが好ましく、中でも35質量%以下、その中でも30質量%以下の割合で含むのがさらに好ましい。
【0059】
(D)ラジカル重合性モノマーのうちの単官能のラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合条件下において、ラジカル連鎖重合を行う官能基(ここで、官能基には原子団も含まれる)を1つのみ有するものであればよい。より詳細には、ラジカル重合条件下において、架橋構造を生成しないか、または、ほとんど生成しないモノマーであるのが好ましい。
【0060】
他方、多官能のラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合条件下において、ラジカル連鎖重合を行う官能基(ここで、官能基には原子団も含まれる)を2つ以上、好ましくは2つのみ有するものであればよい。より詳細には、ラジカル重合条件下において、架橋構造を生成するものが好ましい。
【0061】
(D)ラジカル重合性モノマーは、硬化物の作製中にラジカル重合を起こす。そうして生成したポリマーは、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂からなる硬化物に対し、靱性を付与するための改質剤として働く。この時、硬化物中で、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂に由来する相と、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する改質剤から成る相とを有する相分離構造を形成することにより、機械的物性を低下させることなく、靱性を付与することが可能となる。
【0062】
さらに靱性を効果的に向上させるには、(A)シアネートエステル化合物、(B)エポキシ樹脂及び(C)硬化促進剤からなる組成物に対し、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する改質剤を、事前に重合したポリマーの状態ではなく、(E)ラジカル開始剤と共にモノマーの状態で加え、本熱硬化性樹脂組成物の硬化の過程で改質剤の重合を同時に行う“in situ反応・重合法”を用いるのが好ましい。これにより、改質剤をポリマーの状態で加えるよりも、改質剤成分が硬化物中に均一に分散し、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相を硬化物の靭性を高めるのに適したサイズに調整することが可能となることから、より効果的に硬化物の靭性を高めることができる。
但し、“in situ反応・重合法”を用いると、(D)ラジカル重合性モノマーの種類によっては相分離構造の無い、均一な硬化物となり、靱性の向上が見込めないばかりか、Tgおよび機械的特性の低下を招く可能性がある。この観点から、(D)ラジカル重合性モノマーとして、単官能のラジカル重合性モノマーを主成分とするものについて“in situ反応・重合法”を用いること好ましい。該主成分とは、ラジカル重合性モノマーを構成するモノマーの中で、最も質量割合の多いモノマーの意味である。
【0063】
その中でも、(D)ラジカル重合性モノマーは、単官能のラジカル重合性モノマーのみからなるか、若しくは、単官能のラジカル重合性モノマーと、それよりも少ない多官能のラジカル重合性モノマーとの組み合わせからなるものが好ましい。
その中でも、単官能のラジカル重合性モノマーと、微量の多官能のラジカル重合性モノマーとの組み合わせからなるものがさらに好ましい。
単官能のラジカル重合性モノマーに、微量の多官能のラジカル重合性モノマーを加えることにより、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相が硬化の過程で適当なサイズ以上に大きく成長する前に、ラジカル重合性モノマー同士が架橋反応を起こして、それ以上の相分離構造の変化を抑えることができるため、シアネートエステル化合物及びエポキシ樹脂に由来する相の中に、ラジカル重合性モノマーに由来する適度な大きさの相を形成することができ硬化物の靱性をさらに高めることができる。
【0064】
かかる観点から、単官能のラジカル重合性モノマーは、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中0.5〜40質量%の割合で含まれ、且つ、多官能のラジカル重合性モノマーは、10質量%以下の割合で含まれるのが好ましい。
中でも、単官能のラジカル重合性モノマーは、硬化物全体に改質剤としての効果を発現させるためには(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中1質量%以上の割合で含まれるのがさらに好ましく、中でも2質量%以上、その中でも5質量%以上の割合で含まれるのが特に好ましい。他方、(A)(B)を由来とする硬化物の耐熱性や機械的特性の高さを維持するためには、35質量%以下の割合で含まれるのがさらに好ましく、中でも30質量%以下、その中でも25質量%以下の割合で含まれるのが特に好ましい。さらに、上述の通り、微量の多官能のラジカル重合性モノマーを加えることで、硬化物中にラジカル重合性モノマーに由来する適度な大きさの相を形成し、硬化物の靱性をさらに高められることから、多官能のラジカル重合性モノマーは、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中0.01質量%以上の割合で含まれるのが好ましく、0.05質量%以上の割合で含まれるのがさらに好ましく、0.1質量%以上の割合で含まれるのが特に好ましい。他方、相分離構造を形成する前に硬化が進行することを避けるためには、5質量%以下の割合で含まれるのがさらに好ましく、中でも3質量%以下、その中でも2質量%以下の割合で含まれるのが特に好ましい。
【0065】
また、同様の観点から、(D)ラジカル重合性モノマーのうち、単官能のラジカル重合性モノマーと多官能のラジカル重合性モノマーとの含有質量比は、単官能のラジカル重合性モノマー:多官能のラジカル重合性モノマーの含有質量比が200:1〜1:1であるのが好ましく、中でも180:1〜2:1、その中でも150:1〜3:1、その中でも100:1〜5:1、その中でも50:1〜8:1であるのが特に好ましい。
【0066】
(D)ラジカル重合性モノマーの好ましい例として、スチレン系モノマー、マレイミド系モノマー、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル及びビニルアミドのうちの1種又は2種以上の組合せを挙げることができ、これらの単官能のラジカル重合性モノマー乃至多官能のラジカル重合性モノマーを好ましく用いることができる。
【0067】
(スチレン系モノマー)
単官能のラジカル重合性モノマーである単官能スチレン系モノマーとしては、ラジカル反応に関与しない基で置換されたスチレン誘導体等などを挙げることができる。例えばスチレン;α−メチルスチレン等のα−アルキルスチレン(アルキルの炭素数は、好ましくは1〜4である);p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン;4−メチルスチレン、4−エチルスチレン等のアルキル置換スチレン;p−メトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン(アルキル、アルコキシの炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜4である);ビニルベンジル−ω−メチルポリオキシエチレンオキサイド等のスチレン−ポリオキシアルキレン付加体;ヒドロキシスチレン等のヒドロキシル基置換スチレンを挙げることができる。
【0068】
多官能のラジカル重合性モノマーである多官能スチレン系モノマーとしては、1,3−ジビニルベンゼンや1,4−ジビニルベンゼン等のビニル基置換スチレンを挙げることができる。
【0069】
(マレイミド系モノマー)
単官能のラジカル重合性モノマーである単官能マレイミド系モノマーとしては、マレイミド基を1つ有するマレイミド類を挙げることができ、例えばマレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド、フェニルマレイミド等の芳香環含有マレイミドを挙げることができる。
【0070】
多官能のラジカル重合性モノマーである多官能マレイミド系モノマーとしては、マレイミド基を2つ有するビスマレイミド類を挙げることができ、1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,4−ビス(マレイミド)ブタン、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルマレイミド) 等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、1,1’−(メチレンジ−4,4’−フェニレン)ビスマレイミド等の芳香環含有マレイミドを挙げることができる。
【0071】
((メタ)アクリルモノマー)
単官能のラジカル重合性モノマーである単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル基を1つ有する(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリル基を1つ有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等の無置換の鎖状アルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、γ−(メタアクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ペルフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、等の置換基を有する鎖状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の置換または無置換の脂肪族環状アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート等の置換または無置換の芳香環含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸−エチレンオキシド付加体等を挙げることができる。
【0072】
多官能のラジカル重合性モノマーである多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸無水物や(メタ)アクリル基を2つ以上有する(メタ)アクリルモノマーを挙げることができ、(メタ)アクリル基を2つ以上有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジアクリレート、2−エチル−2(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールトリ(メタ)アクリレート等のトリアクリレートを挙げることができる。
【0073】
(ビニルエーテル)
単官能のラジカル重合性モノマーである単官能のビニルエーテルとしては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、トリフルオロエチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールエチルビニルエーテル等の鎖状ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、2−(ビニルオキシ)テトラヒドロピラン等の脂肪族環含有ビニルエーテル;フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、4−メトキシベンジルビニルエーテル等の芳香族環含有ビニルエーテルを挙げることができる。
【0074】
多官能のラジカル重合性モノマーである多官能のビニルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ビス(ビニルオキシブチル)スクシネート等の鎖状ビニルエーテル;1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の脂肪族環含有ビニルエーテル;ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]テレフタレート等の芳香族環含有ビニルエーテルを挙げることができる。
【0075】
(ビニルアミド)
単官能のラジカル重合性モノマーである単官能のビニルアミドとしては、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等の鎖状ビニルアミド;N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、5−メチル−3−ビニルオキサゾリジン−2−オン等の脂肪族環含有ビニルアミドを挙げることができる。
【0076】
(その他)
その他、ラジカル重合性モノマーとして、例えばペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、ビニリデンフルオリド等のフッ素含有ビニルモノマー;
例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニルモノマー;
例えば 無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどのモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;
フマル酸、ならびにフマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;
ニトリル含有ビニルモノマー、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等;
アミド含有ビニルモノマー、例えばアクリルアミド、メタアクリルアミド等;
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル等;
アルケン、例えばエチレン、プロピレン等;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリルおよびアリルアルコール等を挙げることができる。
【0077】
これらのモノマーは、上述の通り相分離構造を形成するものである組み合わせとなれば、単独で用いても、複数のモノマーを使用してもよい。相分離構造を形成するか否かは、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂との相溶性に影響を受けることから、使用する(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂の組み合わせや比率に合わせて適切な(D)ラジカル重合性モノマーを選択するのが好ましい。
【0078】
本熱硬化性樹脂組成物において、ラジカル重合した成分が、ラジカル重合性モノマーを共硬化性樹脂成分との混合物中で、ラジカル重合して得られるならば、どのような形態のポリマーが生成されてもよく、ホモポリマー、ブロックコポリマーでないコポリマー、またはブロックポリマーを含むことができる。好ましくはホモポリマーまたは、ブロックコポリマーでないコポリマーである。ここで、「ブロックコポリマーでないコポリマー」とは、ランダムコポリマー、交互共重合体、その他複数の種類のモノマーを同時に重合した場合に得られる全てのコポリマーを含む。
【0079】
なお、上記および下記において、「(メタ)アクリル」および「(メタ)アクリレート」等の記載は、慣用されるように「メタクリルまたはアクリル」および「メタクリレートまたはアクリレート」等を意味する。
【0080】
これらの中でも、単官能のラジカル重合性モノマーとしては、特に耐熱性に優れるポリマーを与えるモノマーが好ましい。例えばスチレン系モノマー、マレイミド系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、ニトリル含有ビニルモノマー、アミド含有ビニルモノマー等およびこれらの混合物が好ましく、特にはスチレン系モノマー、芳香環含有マレイミド、置換または無置換の芳香環含有(メタ)アクリレート、芳香族環含有ビニルエーテル等の芳香族環を分子内に有するモノマーおよびそれを含む混合物が好ましい。好ましい具体的な化合物として、スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、α−メチルスチレン、フェニルマレイミド、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルメタクリレート、フェニルアクリレートおよびこれらの混合物が好ましい。
【0081】
また、これらの中でも、多官能のラジカル重合性モノマーとしては、特に反応性に優れるビニル基を有するモノマーが好ましい。例えばスチレン系モノマー、マレイミド系モノマー、(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
【0082】
多官能のラジカル重合性モノマーは、組成物の粘度を下げて成型性を向上させる観点から、その質量平均分子量が1000以下であることが好ましく、中でも500以下であることがより好ましく、その中でも350以下であることがさらに好ましい。なお、質量平均分子量の下限値としては、通常100以上である。
【0083】
<(E)ラジカル開始剤>
(E)ラジカル開始剤としては、例えば熱ラジカル発生剤、光開始剤、レドックス型開始剤等の種々のラジカル開始剤を使用することができる。中でも、簡便性の観点から、熱ラジカル発生剤が好ましい。例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシドのような有機過酸化物、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物を挙げることができる。
【0084】
本熱硬化性樹脂組成物は、(A)から(E)およびその他の成分を混合し、必要に応じで加熱を行い均一にすることが好ましく、さらに、加熱による(D)ラジカル重合性モノマーの重合を抑制し、粘度上昇による成型性の悪化を防ぐ必要がある。この観点から、(E)ラジカル開始剤の一時間半減期温度は80℃ 以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましく、130℃以上が特に好ましい。具体的にはジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシドが好ましい。
【0085】
<(F)その他の成分 >
本熱硬化性樹脂組成物は、その効果を妨げることのない範囲において、必要に応じてその他の成分として、例えば通常エポキシ樹脂やシアネートエステル化合物の硬化に用いられる硬化剤を含有することができる。
【0086】
用いてもよい硬化剤の例としては、特に限定されないが、フェノール系硬化剤、エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、有機ホスフィン系硬化剤等を挙げることができる。またフェノキシ樹脂を硬化剤として用いることも可能である。
これらの硬化剤は1種のみで用いてもよく、また、それ以外の1種以上の硬化剤を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0087】
本熱硬化性樹脂組成物に用いることができる硬化剤の含有量は、組成物に含まれるエポキシ基が未反応のまま残留させない点では多いことが好ましいが、本熱硬化性樹脂組成物の硬化を妨げることを防ぐため、及び硬化剤のエポキシ基と反応する部位が未反応のまま残留させない点では少ないことが好ましい。硬化剤を用いる場合には、これらの観点から適宜調整することが望ましい。例えば、本熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ基と、硬化剤における反応部位(フェノール系硬化剤の水酸基、エステル系硬化剤のエステル基、ベンゾオキサジン系硬化剤のNO基、酸無水物系硬化剤の酸無水物基、アミン系硬化剤のアミノ基等)との当量比で、0.05以上となるように用いることが好ましく、0.1以上となるように用いることがさらに好ましく、また、一方で、1.5以下となるように用いることが好ましく、1.2以下となるように用いることがさらに好ましい。
【0088】
硬化剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。2種以上の硬化剤を用いた場合におけるその含有量は、合計量が上記の好ましい範囲であることが好ましい。
【0089】
その他、本熱硬化性樹脂組成物に含まれていてもよいものとしては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、タルク、クレイ等の無機充填剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、表面処理剤等の公知の添加剤を挙げることができ、使用用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、半導体封止材用途であれば、シリカを含んでいることが好ましい。
【0090】
さらに本熱硬化性樹脂組成物は加工時の粘度調整及び硬化させるときの取り扱い性等のための希釈剤、溶媒を含有していてもよい。
希釈剤としては、エポキシ基を1つのみ有する反応性希釈剤や溶媒が使用できる。反応性希釈剤としては例えばブチルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類;フェニルグリシジルエーテル等のアルキルフェニルグリシジルエーテル類を挙げることができる。
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン等の芳香族類等を挙げることができる。
これらの希釈剤及び溶媒は、1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
なお、溶媒を用いる場合、溶媒の含有量は、溶媒残留により硬化物中にボイドが形成され難い点では用いない又は少ないことが好ましい。一方、組成物の高粘度化に伴うクラックが発生し難い点では多いことが好ましい。溶媒を用いる場合には、これらの観点からその使用量を適宜調整することが望ましい。
【0091】
<本熱硬化性樹脂組成物>
本熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性、すなわち加熱されることにより硬化反応する性質を備えた樹脂組成物であればよく、その形態は、液状であっても、固体状であっても、ゲル状であっても、その他の形態であってもよい。
【0092】
本熱硬化性樹脂組成物において、(A)シアネートエステル化合物の含有量は、耐熱性の高さや誘電特性に優れている点など、シアネート樹脂の利点を活かす観点では、本熱硬化性樹脂組成物の総量に対して30〜99質量%であるのが好ましく、中でも40質量%以上或いは95質量%以下、その中でも50質量%以上或いは80質量%以下であるのがさらに好ましい。
なお、本発明において、本熱硬化性樹脂組成物の総量に対する含有成分の含有量とは、上述した(A)〜(E)5成分の合計量を100質量%とするものとする。
【0093】
本熱硬化性樹脂組成物において、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂との含有割合は、シアネート樹脂の有する高いガラス転移温度を維持しつつ、シアネート樹脂単独の場合と比較して良好な加工性と低い温度での硬化が可能となるという観点から、シアネート基1モルに対してエポキシ基0.01モル以上1.0モル以下であることが好ましく、中でもエポキシ基0.03モル以上或いは0.7モル以下であることがさらに好ましい。
【0094】
本熱硬化性樹脂組成物は、(C)硬化促進剤を、硬化開始温度を下げ、よりエネルギーコストを下げる目的で、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂の合計含有量100質量部に対して0.01質量部以上の割合で含有するのが好ましく、中でも0.1質量部以上、その中でも0.5質量部以上の割合で含有するのがさらに好ましい。他方、硬化に関わる各反応の暴走を抑制し、適度な硬化度の硬化物を安全に取得するためには、10質量部以下の割合で含有するのが好ましく、中でも5質量部以下、その中でも2質量部以下の割合で含有するのがさらに好ましい。
【0095】
本熱硬化性樹脂組成物は、(D)ラジカル重合性モノマーを、硬化物全体に改質剤としての効果を発現させる観点から、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、(D)ラジカル重合性モノマーを0.5質量%以上含むのが好ましく、中でも3質量%以上、その中でも10質量%以上含むのがさらに好ましい。他方、(A)(B)を由来とする硬化物の耐熱性や機械的特性の高さを維持する観点から、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、(D)ラジカル重合性モノマーを40質量%以下の割合で含むのが好ましく、中でも35質量%以下、その中でも30質量%以下の割合で含むのがさらに好ましい。
【0096】
本熱硬化性樹脂組成物は、(E)ラジカル開始剤を、(D)ラジカル重合性モノマーの重合を十分に進行させる観点から、(D)ラジカル重合性モノマー100質量部に対して0.001質量部以上の割合で含有するのが好ましく、中でも0.01質量部以上、その中でも0.05質量部以上の割合で含有するのがさらに好ましい。他方、本熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を高め、かつ硬化時の急激な反応による熱暴走を防ぐ観点から、10質量部以下の割合で含有するのが好ましく、中でも5質量部以下、その中でも1質量部以下の割合で含有するのがさらに好ましい。
【0097】
<本熱硬化性樹脂組成物の作製方法>
本熱硬化性樹脂組成物は、(A)シアネートエステル化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化促進剤、(D)ラジカル重合性モノマー、(E)ラジカル開始剤及び(F)その他の成分を混合し、必要に応じて攪拌、分散、加熱などを行うことにより得ることができる。
この際、混合は、全て同時に混合して作製してもよいし、順次混合するようにしてもよい。例えば、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂を混合した後、(C)硬化促進剤を加え、次に、(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤を加えるようにしてもよい。この際、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂を混合して50〜200℃に加熱することで一部のシアネートエステル化合物及びエポキシ樹脂を反応させるプレポリマー化を行ってもよい。他方でプレポリマー化が進行し過ぎると次に加える(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤が均一に分散し難くなることから150℃以下で加熱するのが好ましいまた、(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤を加えた後、組成物が均一になるよう、50〜200℃に加熱するようにしてもよい。他方で、ラジカル開始剤の分解温度以上で加熱すると、ラジカル重合が始まることで組成物の粘度が上昇し、成型性の低下に繋がる恐れがあるため、使用するラジカル開始剤の分解温度以下で加熱を行うのが好ましく、具体的には150℃以下で加熱を行うのが好ましい。なお、(F)その他の成分は適宜タイミングで加えればよい。
【0098】
<<本硬化物>>
本発明の実施形態の一例に係る硬化物(「本硬化物」と称する)は、本熱硬化性樹脂組成物を加熱して硬化させることにより得ることができる。
【0099】
本硬化物は、(A)シアネート樹脂及び(B)エポキシ樹脂に由来する相と、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相と、を有する相分離構造を備えた硬化物であるのが好ましい。
本硬化物がこのような相分離構造を備えていれば、マトリックス樹脂すなわち(A)シアネート樹脂及び(B)エポキシ樹脂の優れた性質、例えば高Tgや高強度を維持しつつ、靭性を高めることができる。
本硬化物がこのような相分離構造を備えるためには、後述するようなin situ反応・重合法を採用し、(A)シアネート樹脂と(B)エポキシ樹脂との反応、さらにはこれらの硬化反応と同時に、(D)ラジカル重合性モノマーのラジカル重合を行うようにすればよい。但し、この方法に限定するものではない。
【0100】
前記相分離構造において、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相のサイズが小さければ、改質剤としての(D)ラジカル重合性モノマーが重合したポリマーの分散性が良くなり、改質効果を高めることができる。但し、当該相の大きさが小さくなり過ぎ均一状態に近づくと改質効果を得られない可能性がある。よって(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相の大きさは、0.01μm以上であるのが好ましく、中でも0.05μm以上であるのが好ましい。また、5μm以下であるのが好ましく、中でも3μm以下、その中でも1μm以下であるのがさらに好ましい。
前記相分離構造において(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相の大きさを前記範囲に調整するには、(D)ラジカル重合性モノマーをモノマー状態で加えるin situ反応・重合法を採用し、さらに(A)シアネート樹脂及び(B)エポキシ樹脂の種類や比率に対して適切な(D)ラジカル重合性モノマーを選択することで、硬化速度を適度な速さに調整することができ、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相の大きさを前記範囲に調整することができる。
【0101】
本硬化物は、耐熱性の観点から、そのガラス転移温度(Tg)が220℃以上であるのが好ましく、中でも230℃以上、その中でも240℃以上であるのがさらに好ましい。
本硬化物濃度のガラス転移温度(Tg)を前記範囲に調整するには、例えば(A)シアネートエステル化合物のうち芳香族環を有するものを用いたり、(B)エポキシ樹脂として多官能のエポキシ樹脂を用いたり、組成物中の(A)シアネートエステル化合物の比率を高めたり、適当なシアネート当量やエポキシ当量の樹脂を選択することで架橋密度を調整すればよい。
【0102】
本硬化物の破壊靱性値(KIC)は、(A)シアネート樹脂と(B)エポキシ樹脂の種類や混合比率にもよるが、0.5MN/m3/2以上であるのが好ましく、中でも0.6MN/m3/2以上、その中でも0.7MN/m3/2以上であるのがさらに好ましく、0.8MN/m3/2以上が特に好ましい。
【0103】
本硬化物の破壊靱性値(KIC)は、改質剤として(D)を加えない場合の硬化物K1Cと比較して、0.1MN/m3/2以上向上するのが好ましく、中でも0.2MN/m3/2以上、その中でも0.3MN/m3/2以上向上するのがさらに好ましい。
【0104】
<本硬化物の作製方法>
本硬化物は、本熱硬化性樹脂組成物を用途に応じて加熱成型することにより得ることができる。
この際、硬化温度は、組成物中の各成分の反応性に応じて適宜選択すればよいが、硬化度の低下に起因する耐熱性や機械的特性の低下を抑制するためには150℃以上が好ましく、160℃以上がさらに好ましく、190℃以上が特に好ましい。他方で、プロセス合理性の観点からは、300℃以下が好ましく、250℃以下がさらに好ましく、220℃以下が特に好ましい。
また、硬化のための加熱は多段階で実施してもよい。
【0105】
本硬化物の好ましい作製方法として、例えば、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂とを反応させ、(C)硬化促進剤を添加し溶解させると共に、さらに、ラジカル重合可能な改質剤としての(D)ラジカル重合性モノマーと(E)ラジカル開始剤を添加して溶解させ、さらに加熱硬化させることで、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂との反応、さらにはこれらの硬化反応と同時に、(D)ラジカル重合性モノマーのラジカル重合を行う方法(「in situ反応・重合法」とも称する)を挙げることができる。
このようにin situ反応・重合法により本硬化物を作製すれば、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂に由来する相と、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相とを有する相分離構造を備えた硬化物とすることができ、硬化物の強靭化を図ることができる。従来法、すなわち、ポリマー状態の改質剤を未硬化樹脂に添加して硬化させる方法と比べ、改質剤相のドメインサイズをより小さい状態で相分離構造を形成することができ、より優れた改質効果を得ることができる。また、モノマー状態で添加して溶解させるため、金型への注入時さらには成形時の樹脂粘度が低く、ハンドリング性が容易である。
さらに、適切な(D)ラジカル重合性モノマーを選択して使用することで、すなわち、単官能のラジカル重合性モノマー乃至若干の多官能のラジカル重合性モノマーを主成分とする改質剤を選択することで、硬化速度を適度な早さに調整することができ、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する相の大きさを適度な大きさに調整できるから、靱性をさらに向上させることができる。
【0106】
<本熱硬化性樹脂組成物及び本硬化物の特徴及び用途>
シアネートエステル化合物は、含有するシアネート基が付加反応により自己三量化してトリアジン環を形成しながらネットワーク化していくことで、高い強度や熱安定性と良好な誘電特性を示すことが知られている。他方、エポキシ樹脂は架橋密度が高いことが知られている。
このようなシアネートエステル化合物とエポキシ樹脂とを併用して互いに反応させることで、(1)オキサゾリンやオキサゾリジノン誘導体、及び(2)イソシアヌレート誘導体等の相互反応生成物を形成させることができる。よって、シアネートエステル化合物及びエポキシ樹脂を混合して硬化させることにより、前記複数の相互反応生成物等を含む架橋ネットワーク形成がより密に進行するため、本硬化性成形材料には、高い熱安定性が付与されて、優れた耐熱性を示すと考えられる。
【0107】
さらに本熱硬化性樹脂組成物及び本硬化物では、相分離構造を備えた硬化物を形成することができ、耐熱性を維持しつつ、靱性を特に優れたものとすることができる。よって、本熱硬化性樹脂組成物乃至本硬化物は、電気・電子材料、例えば、半導体デバイスなどの封止材として好適に用いることができる。
また、本硬化物は、特に靱性に優れているから、炭素繊維などの複合材におけるマトリックス樹脂、或いは、接着剤として、本熱硬化性樹脂組成物乃至本硬化物を好適に使用することができる。
【0108】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0109】
次に、本発明について、以下の実施例により更に説明する。但し、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0110】
実施例及び比較例における各種分析方法は以下の通りである。
【0111】
(エポキシ当量)
JIS K7236:2001に準じて測定した。
【0112】
(ガラス転移温度(Tg))
実施例・比較例で得た硬化物(サンプル)から、長さ41.5mm、幅10mm、厚さ2mmの短冊状に切り出し、測定用サンプルとした。
ガラス転移温度は、動的粘弾性測定におけるTanδピークの極大点の温度とした。ただし、Tanδピークが複数存在する場合には、それらの極大点のうち最も大きな極大値をとるときの温度をガラス転移温度とした。
装置:SIIナノテクノロジー社製 DMS−6100
昇温速度:5℃/min
周波数:1Hz
【0113】
(相分離構造の有無)
実施例・比較例で得た硬化物(サンプル)の破断面を、走査型電子顕微鏡(JSM−6390LV、日本電子(株)製)で観察し、相分離構造の有無を判定した。また、相分離構造が微細で走査型電子顕微鏡で観察できない場合にも、動的粘弾性測定において、ラジカル重合性モノマーに由来する相に対応するTanδピークが観察された場合には相分離構造が有るものとして判定した。
【0114】
(破壊靱性値)
実施例・比較例で得た硬化物(サンプル)について、ASTM D5045に基づき3点曲げ試験により破壊靭性値KIC[MN/m3/2]を求めた。
試験片の大きさは長さ:61.6[mm](=4.4W)、幅(W):14.0[mm]、厚さ(B):7.0[mm](=W/2)とした。ダイヤモンドカッターを用いて試験片に5.3〜5.6[mm]のノッチを入れたのちに60℃のオーブンで3時間乾燥させた。その後、カッターの刃をノッチの先端に当てて木槌で数回たたくことにより約1.5[mm]クラックを挿入した。このとき、「ノッチ+クラックの長さ」(a)が0.45<a/W<0.55となるようにした。また、3点曲げ試験の際のスパン長(S)はS=4W、クロスヘッドスピードは10mm/minとした。3点曲げ試験は、島津製作所製:精密万能試験機AGX−10kNを用いて行った。
【0115】
実施例及び比較例で用いた製造原料は以下の通りである。
【0116】
(シアネートエステル化合物(BAD))
BADは、ビスフェノールA型シアネートエステルであり、下記式(1)で表される2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(三菱ガス化学社製)であり、理論分子量と理論官能基数から計算されるシアネート当量は139g/eq.である。
【0117】
【化8】
【0118】
(エポキシ樹脂EP−1)
EP−1は、下記式(2)で表されるjER1032H60(三菱ケミカル社製)であり、エポキシ当量は167g/eq.である。
【0119】
【化9】
【0120】
(エポキシ樹脂EP−2)
EP−2は、下記式(3)で表される3,3’−ジグリシジルビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテルであり、エポキシ当量は104g/eq.である。
【0121】
【化10】
【0122】
EP−2は、次のようにして製造することができる。
10LのオートクレーブにN,N−ジメチルホルムアミド840mL、アリルクロライド575g(7.51mol)、炭酸カリウム1245g(9.01mol)、ビフェノール280g(1.50mol)を加えて密閉し、40℃まで加熱した後、1時間かけて65℃まで昇温した。65℃で5時間熟成した後、室温まで冷却してオートクレーブを開放した。ここに、水1678gとメチルイソブチルケトン1600gを加えて無機塩と結晶を溶解させ、分液操作にて水相を除去した。残ったメチルイソブチルケトン相に水1678gを加えて60℃で水洗する操作を3回繰り返した後、メチルイソブチルケトンを留去し、4,4−ジアリロキシビフェニルを得た。
次に上述の方法で得られた4,4−ジアリロキシビフェニル165g(620mmol)とN,N−ジエチルアニリン825mLを2Lの四つ口フラスコに入れ、200℃で6時間加熱した後、室温まで冷却した。続いて2Lのセパラブルフラスコに水495mlと50質量%水酸化ナトリウム水溶液149mL(1.86mol)を入れ10℃に冷却したところに、先のN,N−ジエチルアニリン溶液を15分かけて滴下し、30分撹拌した後静置し、上相と下相をそれぞれ抜出した。次に2Lのセパラブルフラスコに水495mLと濃硫酸93.1g(1.86mol)を入れ10℃に冷却した後、前の操作で抜き出した下相を滴下し、1時間撹拌した。析出した固体をろ過によって回収し、水洗した後減圧乾燥したところ、灰色固体として3,3−ジアリル−4,4−ビフェノールを148g(1.19mol、2段階収率80.4%)得た。
【0123】
次に、3Lの四口フラスコに、前記の通り合成した3,3−ジアリル−4,4−ビフェノール105g(394mmol)、エピクロルヒドリン1028g(11.1mol)、イソプロパノール400g及び水143gを仕込み、40℃に昇温して均一に溶解した後、濃度48質量%の水酸化ナトリウム水溶液76g(912mmol)を90分かけて滴下しながら65℃まで昇温した。滴下終了後、65℃で30分間熟成した後、66gの水を加えて水洗し、無機塩を除去した。次いで、減圧下でエピクロルヒドリンとイソプロパノールを留去し、茶色油状物質を得た。ここにメチルイソブチルケトン191gを加えて均一にした後、濃度48質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.8g(69.6mmol)を加え、75℃で2時間反応させた。得られた反応液にメチルイソブチルケトン223gを加えた後、水525gを用いて70℃で4回水洗した。続いてメチルイソブチルケトンを留去して、黄色油状物として3,3−ジアリル−4,4−ジグリシジルオキシビフェニルを142g得た。 得られた3,3−ジアリル−4,4−ジグリシジルオキシビフェニルのうち56.1gを1Lのナスフラスコに入れ、メタノール224mLと2−メトキシエタノール101mLを加えて50℃に加熱した。この溶液を徐々に冷却し、4℃で1時間撹拌したところで析出した白色結晶をろ過にて回収した。白色結晶をメタノールで洗浄した後、50℃で減圧乾燥し、3,3−ジアリル−4,4−ジグリシジルオキシビフェニルの精製品を29.8g(収率57%)得た。
【0124】
続いて、前記と同様の方法で合成した3,3−ジアリル−4,4−ジグリシジルオキシビフェニルの精製品40.0g(106mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物1.74g(5.30mmol)、20%(質量/体積)リン酸水溶液3.63mL(7.42mmol)、N−ブチル−N,N−ジ[2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシ)エチル]−N−メチルアンモニウムモノメチル硫酸塩 1.69g (2.65mmol)、トルエン80mL、及び水1.10mLの混合溶液を調製した。この混合溶液を、窒素気流下、60℃に加熱した後、35質量%過酸化水素水26.8mL(318mmol)を5時間かけて滴下した後、2時間熟成した。反応終了後、トルエン34mLを加えて、分離した水相を抜出した。残った有機相を水、5質量%チオ硫酸ナトリウム水溶液各40Lで洗浄した後、有機相にメタノール40mL、炭酸カリウム7.30g(530mmol)を加え、40℃で1時間撹拌した。ここに水40mLを加えて無機塩を溶解し、水相を排出した後、有機相を1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液40mLで1回、55℃の温水200mLで3回洗浄した。得られた有機相を濃縮したところ、トルエンを10質量%含む、3,3−ジグリシジル−4,4−ジグリシジルオキシビフェニルが得られた。
【0125】
次に、前記のようにして得たトルエンを10質量%含む3,3−ジグリシジル−4,4−ジグリシジルオキシビフェニルに、メチルイソブチルケトン24mLとメタノール12mLを加え、50℃で加熱して均一な溶液にした後、徐々に冷却すると17℃で析出が始まった。ここにメタノールを24mL加えて氷冷し、析出した薄黄色結晶をろ過にて回収した。この結晶をメタノール20mLで洗浄して50℃で減圧乾燥したところ、3,3−ジグリシジル−4,4−ジグリシジルオキシビフェニルを含有するエポキシ樹脂が薄黄色結晶として41.6g(収率78%)得られた。この薄黄色結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、EP−2を得た。
【0126】
(硬化促進剤(TPP−MK))
TPP−MKは、下記式(4)で表される北興化学工業社製(化学名:テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート)である。
【0127】
【化11】
【0128】
(単官能のラジカル重合性モノマー(PMI))
PMIは、下記式(5)で表されるN−フェニルマレイミド(富士フイルム和光純薬(株)製)である。
【0129】
【化12】
【0130】
(単官能のラジカル重合性モノマー(St))
Stは、下記式(6)で表されるスチレンモノマー(富士フイルム和光純薬(株)製)である。
【0131】
【化13】
【0132】
(単官能のラジカル重合性モノマー(EVB)、多官能のラジカル重合性モノマー(DVB))
EVBは下記式(7)で表されるエチルビニルベンゼン、DVBは下記一般式(8)で表されるジビニルベンゼンである。エチルビニルベンゼンを45%、ジビニルベンゼンを55%含む富士フイルム和光純薬(株)製ジビニルベンゼンを、混合物のまま使用した。
【0133】
【化14】
【0134】
【化15】
【0135】
(単官能のラジカル重合性モノマー(BzMA))
BzMAは、下記式(9)で表されるベンジルメタクリレート(富士フイルム和光純薬(株)製)である。
【0136】
【化16】
【0137】
(単官能のラジカル重合性モノマー(EGDMA))
EGDMAは、下記式(10)で表されるエチレングリコールジメタクリレート(シグマアルドリッチジャパン社製)である。
【0138】
【化17】
【0139】
(ラジカル開始剤(DCP))
DCPは、下記式(11)で表されるジクミルパーオキサイド(シグマアルドリッチジャパン社製)である。
【0140】
【化18】
【0141】
<実施例1>
シアネートエステル化合物(BAD)56.3質量部にエポキシ樹脂(EP−1)20.3質量部(官能基当量比でBAD:EP−1=1.0:0.3)を加えて、120℃で5時間撹拌して、さらに硬化促進剤(TPP−MK)0.8質量部(前記BAD及びEP−1の合計質量100質量部に対して1.0質量部相当)を加えて120℃で20分撹拌し、さらに単官能のラジカル重合性モノマー(PMI)13.9質量部及び単官能のラジカル重合性モノマー(St)8.4質量部と、ラジカル開始剤(DCP)0.4質量部(前記ラジカル重合性モノマー総量の1mol%)を加えて、120℃でさらに20分間撹拌することにより熱硬化性樹脂組成物(サンプル)を得た。
【0142】
上記のようにして得た熱硬化性樹脂組成物(サンプル)を型枠へ流し込み、120℃で20分間真空脱気を行った後、120℃1時間、160℃2時間、180℃2時間、200℃2時間の加熱硬化を行い、厚み約8mmの硬化物(サンプル)を得た。
【0143】
<実施例2〜7>
実施例1において、ラジカル重合性モノマーの種類と量を、表1に示すように変更した以外、実施例1に準じて熱硬化性樹脂組成物(サンプル)及び硬化物(サンプル)を得た。なお、各成分の正確な量は表1に示した。
【0144】
<比較例1>
実施例1において、ラジカル重合性モノマー及びラジカル開始剤を加えなかった以外、実施例1に準じて熱硬化性樹脂組成物(サンプル)及び硬化物(サンプル)を得た。なお、各成分の正確な量は表1に示した。
【0145】
<実施例8、比較例2>
実施例1において、エポキシ樹脂の種類をEP−2に変更した以外、実施例1に準じて熱硬化性樹脂組成物(サンプル)及び硬化物(サンプル)を得た。なお、各成分の正確な量は表2に示した。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
(考察)
上記実施例及びこれまで本発明が行ってきた試験結果から、(A)シアネートエステル化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化促進剤、(D)ラジカル重合性モノマー及び(E)ラジカル開始剤を含有し、(D)ラジカル重合性モノマーとして、(A)(B)(C)(D)及び(E)の合計質量中、単官能のラジカル重合性モノマーを0.5〜40質量%含み、且つ、多官能のラジカル重合性モノマーを10質量%以下含む熱硬化性樹脂組成物によれば、硬化物のガラス転移温度(Tg)220℃以上を維持しつつ、靱性を効果的に高めることができることが分かった。
【0149】
また、前記熱硬化性樹脂組成物乃至硬化物を作製する際は、(A)シアネートエステル化合物と(B)エポキシ樹脂との反応、さらにはこれらの硬化反応、さらには(D)ラジカル重合性モノマーのラジカル重合を同時に行う方法(「in situ反応・重合法」)を採用することにより、(A)シアネートエステル化合物及び(B)エポキシ樹脂に由来する相と、(D)ラジカル重合性モノマーに由来する適切なサイズの相とを有する相分離構造を備えた硬化物を作製することができ、硬化物の靭性をより一層高めることができることも分かった。