特開2021-70592(P2021-70592A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金化学株式会社の特許一覧

特開2021-70592シリカ粒子、樹脂組成物、樹脂フィルム及び金属張積層板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-70592(P2021-70592A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】シリカ粒子、樹脂組成物、樹脂フィルム及び金属張積層板
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20210409BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20210409BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210409BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20210409BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210409BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20210409BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
   C01B33/18 Z
   C08L79/08
   C08K3/36
   C08G73/10
   C08J5/18CFG
   B32B15/088
   H05K1/03 610R
   H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-196674(P2019-196674)
(22)【出願日】2019年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095588
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 登
(74)【代理人】
【識別番号】100094422
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 惠子
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 宏遠
(72)【発明者】
【氏名】藤 麻織人
(72)【発明者】
【氏名】平石 克文
(72)【発明者】
【氏名】田中 睦人
(72)【発明者】
【氏名】出合 博之
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4G072
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AA60X
4F071AB26
4F071AD02
4F071AD06
4F071AE17
4F071AF17
4F071AF40
4F071AF62
4F071AG28
4F071AH13
4F071BB02
4F071BC02
4F071BC12
4F100AA20A
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE01A
4F100GB43
4F100JA02
4F100JG05A
4F100JK17
4F100YY00A
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB07
4G072BB13
4G072DD04
4G072DD05
4G072GG01
4G072TT01
4G072TT04
4G072TT05
4G072TT06
4G072TT19
4G072TT30
4G072UU07
4J002CM041
4J002DJ016
4J002EP017
4J002FA086
4J002FD016
4J002HA05
4J043PA19
4J043PC015
4J043PC145
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA34
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA43
4J043SA54
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA122
4J043UA13
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA672
4J043UB021
4J043UB062
4J043UB131
4J043UB401
4J043UB402
4J043XA16
4J043XA33
4J043XA34
4J043YA06
4J043ZA23
4J043ZA41
4J043ZA42
4J043ZA60
4J043ZB03
4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】 折り曲げ性などの機械的特性を損なうことなく、誘電特性の改善を図ることが可能なシリカ粒子及び該シリカ粒子の添加によって、誘電特性が改善された樹脂組成物及び樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】 シリカ粒子は、3〜20GHzの周波数領域で用いられるものであり、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる頻度分布曲線における累積値が50%となる平均粒子径D50が0.3〜3μmの範囲内、比表面積が5m/gを超え20m/g以下の範囲内であり、空洞共振器摂動法によって測定される誘電正接が0.004以下である。樹脂組成物は、上記シリカ粒子と、ポリアミド酸又はポリイミドと、を含有し、シリカ粒子の含有量が、ポリアミド酸又はポリイミドに対し、30〜70体積%の範囲内である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜20GHzの周波数領域で用いられるシリカ粒子であって、
レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる頻度分布曲線における累積値が50%となる平均粒子径D50が0.3〜3μmの範囲内、比表面積が5m/gを超え20m/g以下の範囲内であり、空洞共振器摂動法によって測定される誘電正接が0.004以下であることを特徴とするシリカ粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のシリカ粒子と、ポリアミド酸又はポリイミドと、を含有する樹脂組成物であって、
前記シリカ粒子の含有量が、前記ポリアミド酸又はポリイミドに対し、30〜70体積%の範囲内であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
単層又は複数層のポリイミド層を有する樹脂フィルムであって、
前記ポリイミド層の少なくとも1層が、請求項2に記載の樹脂組成物の硬化物からなるシリカ含有ポリイミド層であり、前記シリカ含有ポリイミド層の厚みが10〜200μmの範囲内であることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項4】
樹脂フィルムの全体の厚みが10〜200μmの範囲内であり、前記シリカ含有ポリイミド層の厚みの割合が50%以上であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が請求項3又は4に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波領域で使用される電気・電子機器に好ましく用いることが可能なシリカ粒子、該シリカ粒子を含有する樹脂組成物、それを用いる樹脂フィルム及び金属張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、LED照明器具、自動車エンジン周り関連部品に代表されるように電子機器の小型化、軽量化に対する要求が高まってきている。それに伴い、機器の小型化、軽量化に有利なフレキシブル回路基板が電子技術分野において広く使用されるようになってきている。そして、その中でもポリイミドを絶縁層とするフレキシブル回路基板は、その耐熱性、耐薬品性などが良好なことから、広く用いられている。
【0003】
一方、電気・電子機器の高性能化や高機能化に伴い、情報の高速伝送化が進展している。そのため、電気・電子機器に使用される部品や部材にも高速伝送への対応が求められている。そのような用途に使用される樹脂材料について、高速伝送化に対応した電気特性を有するように、低誘電率化、低誘電正接化を図る試みがなされている。例えば、ポリイミドに、粒径1μm以下のシリカなどのフィラーを全固形分の5〜70重量%となる量で配合した低誘電樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。また、低誘電正接化を図るべく、ビスマレイミド化合物由来の構造単位を有するポリイミド中にシリカなどの無機充填剤を60質量%以上配合した熱硬化性樹脂組成物も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3660501号公報
【特許文献2】特開2018−012747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリカ粒子は、その粒子径が大きいものほど誘電正接が低い傾向があり、ポリイミドなどの樹脂中に配合する場合でも、樹脂フィルムの誘電正接を下げる効果が大きい。その一方で、粒子径の大きなシリカ粒子の添加は、樹脂フィルムの折り曲げ性を低下させる、という問題があった。
【0006】
本発明の目的は、折り曲げ性などの機械的特性を損なうことなく、誘電特性の改善を図ることが可能なシリカ粒子を提供することであり、さらには、該シリカ粒子の添加によって、誘電特性が改善された樹脂組成物及び樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリカ粒子は、3〜20GHzの周波数領域で用いられるシリカ粒子であって、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる頻度分布曲線における累積値が50%となる平均粒子径D50が0.3〜3μmの範囲内、比表面積が5m/gを超え20m/g以下の範囲内であり、空洞共振器摂動法によって測定される誘電正接が0.004以下である。
【0008】
本発明の樹脂組成物は、上記シリカ粒子と、ポリアミド酸又はポリイミドと、を含有する樹脂組成物であって、前記シリカ粒子の含有量が、前記ポリアミド酸又はポリイミドに対し、30〜70体積%の範囲内である。
【0009】
本発明の樹脂フィルムは、単層又は複数層のポリイミド層を有する樹脂フィルムであって、前記ポリイミド層の少なくとも1層が、上記の樹脂組成物の硬化物からなるシリカ含有ポリイミド層であり、該シリカ含有ポリイミド層の厚みが10〜200μmの範囲内である。
【0010】
本発明の樹脂フィルムは、樹脂フィルムの全体の厚みが10〜200μmの範囲内であり、前記シリカ含有ポリイミド層の厚みの割合が50%以上であってもよい。
【0011】
本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であって、前記絶縁樹脂層が上記樹脂フィルムからなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリカ粒子は、平均粒子径D50が0.3〜3μmの範囲内と小さいにもかかわらず、比表面積が制御されていることによって誘電正接が低いため、高周波向けの絶縁材料として有用である。また、本発明の樹脂組成物は、上記シリカ粒子を含有することによって、折り曲げ性などの機械的特性を低下させずに誘電特性を改善することが可能となる。そのため、本発明の樹脂組成物を使用した電気・電子機器や電子部品において、高速伝送化への対応が可能になるとともに信頼性を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
[シリカ粒子]
本発明の一実施の形態のシリカ粒子は、3〜20GHzの周波数領域で用いられる。より具体的には、3〜20GHzの周波数領域で用いられる電気・電子機器における部品や部材の材料として用いられるシリカ粒子である。本実施の形態のシリカ粒子の形状は、球状であることが好ましい。なお、「球状」とは、形状が真球状に近い粒子で、平均長径と平均短径の比が1又は1に近いものをいう。
【0015】
本実施の形態のシリカ粒子は、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる頻度分布曲線における累積値が50%となる平均粒子径D50が0.3〜3μmの範囲内であり、0.5〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、例えば樹脂フィルムに配合したときの折り曲げ性の低下を抑制しつつ、誘電特性を向上させることができる。シリカ粒子の平均粒子径D50が0.3未満であると、誘電正接を低下させる効果が十分に得られない。一方、平均粒子径D50が3μmを超えると、樹脂フィルムに配合したときに折り曲げ性が低下するなど機械的特性の維持が困難になる。
【0016】
また、本実施の形態のシリカ粒子は、比表面積が5m/gを超え20m/g以下の範囲内であり、好ましくは6〜15m/gの範囲内である。シリカ粒子の比表面積を上記範囲内にすることによって、シリカ粒子としての嵩密度を向上させることが可能となることから、平均粒子径D50が0.3〜3μmの範囲内と小さくても低い誘電正接が得られる。具体的には、空洞共振器摂動法によって測定されるシリカ粒子の誘電正接を0.004以下にすることができる。比表面積が5m/g以下である場合、又は20m/gを超える場合には、シリカ粒子の誘電正接が十分に低くならず、配合の効果が得られない。シリカ粒子の比表面席は、BET比表面積測定法により求めることができる。
【0017】
なお、シリカ粒子は、市販品を適宜選定して用いることができる。例えば、球状非晶質シリカ粉末(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;SP40−10)、球状非晶質シリカ粉末(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;SPH507)、球状非晶質シリカ粉末(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;SPH516M)などを好ましく使用できる。これらは2種以上を併用できる。
【0018】
[樹脂組成物]
本発明の一実施の形態に係る樹脂組成物は、ポリアミド酸又はポリイミドと、無機フィラーである上記シリカ粒子と、を含有する樹脂組成物である。樹脂組成物は、ポリアミド酸を含有するワニス(樹脂溶液)であってもよく、溶剤可溶性のポリイミドを含有するポリイミド溶液であってもよい。
【0019】
<ポリアミド酸又はポリイミド>
ポリイミドは、一般的に下記一般式(1)で表される。このようなポリイミドは、ジアミン成分と酸二無水物成分とを実質的に等モル使用し、有機極性溶媒中で重合させる公知の方法によって製造することができる。この場合、粘度を所望の範囲とするために、ジアミン成分に対する酸二無水物成分のモル比を調整してもよく、その範囲は、例えば0.980〜1.03のモル比の範囲内とすることが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
ここで、Arは芳香族環を1個以上有する4価の有機基であり、Arは芳香族環を1個以上有する2価の有機基である。そして、Arは酸二無水物の残基ということができ、Arはジアミンの残基ということができる。また、nは、一般式(1)の構成単位の繰返し数を表し、200以上、好ましくは300〜1000の数である。
【0022】
酸二無水物としては、例えば、O(OC)−Ar−(CO)Oによって表される芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、下記芳香族酸無水物残基をArとして与えるものが例示される。
【0023】
【化2】
【0024】
酸二無水物は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、及び4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)から選ばれるものを使用することが好ましい。
【0025】
ジアミンとしては、例えば、HN−Ar−NHによって表される芳香族ジアミンが好ましく、下記芳香族ジアミン残基をArとして与える芳香族ジアミンが例示される。
【0026】
【化3】
【0027】
これらのジアミンの中でも、ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m-TB)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、及び2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)が好適なものとして例示される。
【0028】
ポリイミドは、酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、前駆体であるポリアミド酸を生成したのち加熱閉環(イミド化)させることにより製造できる。例えば、酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜72時間撹拌し重合反応させることでポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0029】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換して樹脂組成物を形成することができる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0030】
<配合組成>
樹脂組成物におけるシリカ粒子の含有量は、ポリアミド酸又はポリイミドに対し30〜70体積%の範囲内であり、好ましくは30〜60体積%の範囲内である。シリカ粒子の含有割合が30体積%に満たないと、誘電正接を低下させる効果が十分に得られなくなる。また、シリカ粒子の含有割合が70体積%を超えると、樹脂フィルムを形成したときに脆くなり、折り曲げ性が低下するとともに、樹脂フィルムを形成しようとする場合、樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性も低下する。
【0031】
本実施の形態の樹脂組成物は、有機溶媒を含有することができる。有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。有機溶媒の含有量としては特に制限されるものではないが、ポリアミド酸又はポリイミドの濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0032】
さらに、本実施の形態の樹脂組成物は、必要に応じて、発明の効果を損なわない範囲で、上記シリカ粒子以外の無機フィラーや、有機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば、上記条件を具備しないシリカ粒子や、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等の無機フィラー、フッ素系ポリマー粒子や液晶ポリマー粒子等の有機フィラーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。さらに必要に応じて、他の任意成分として可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、顔料、難燃剤などを適宜配合することができる。
【0033】
<粘度>
樹脂組成物の粘度は、樹脂組成粒を塗工する際のハンドリング性を高め、均一な厚みの塗膜を形成しやすい粘度範囲として、例えば3000cps〜100000cpsの範囲内とすることが好ましく、5000cps〜50000cpsの範囲内とすることがより好ましい。上記の粘度範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
【0034】
<樹脂組成物の調製>
樹脂組成物の調製に際しては、例えばポリアミド酸の樹脂溶液にシリカ粒子を直接配合してもよい。あるいは、フィラーの分散性を考慮し、ポリアミド酸の原料である酸二無水物成分及びジアミン成分のいずれか片方を投入した反応溶媒に予めシリカ粒子を配合した後、攪拌下にもう片方の原料を投入して重合を進行させてもよい。いずれの方法においても、一回でシリカ粒子を全量投入してもよいし、数回分けて少しずつ添加してもよい。また、原料も一括で入れてもよいし、数回に分けて少しずつ混合してもよい。
【0035】
[樹脂フィルム]
本実施の形態の樹脂フィルムは、単層又は複数層のポリイミド層を有する樹脂フィルムであって、ポリイミド層の少なくとも1層が、上記樹脂組成物の硬化物からなるシリカ含有ポリイミド層であればよい。
【0036】
樹脂フィルム中で、樹脂組成物によって形成されるシリカ含有ポリイミド層の厚みは、例えば10〜200μmの範囲内であることが好ましく、25〜100μmの範囲内であることがより好ましい。シリカ含有ポリイミド層の厚みが10μmに満たないと、樹脂フィルムが脆くなり、また樹脂フィルムの誘電特性を改善する効果が十分に得られない。反対に、シリカ含有ポリイミド層の厚みが200μmを超えると樹脂フィルムの折り曲げ性が低下するなどの点で不利になる傾向となる。
【0037】
樹脂フィルム全体の厚さは、例えば10〜200μmの範囲内であることが好ましく、25〜100μmμmの範囲内がより好ましい。樹脂フィルムの厚みが10μmに満たないと、金属張積層板の製造時の搬送工程で金属箔にシワが入り、また樹脂フィルムが破れるなどの不具合が生じやすくなる。反対に、樹脂フィルムの厚みが200μmを超えると樹脂フィルムの折り曲げ性が低下するなどの点で不利になる傾向となる。
【0038】
また、樹脂フィルムの全体の厚みに対するシリカ含有ポリイミド層の厚みの割合は、50%以上であることが好ましい。樹脂フィルムの全体の厚みに対するシリカ含有ポリイミド層の厚みの割合が50%未満では、誘電特性の改善効果が十分に得られない。
【0039】
シリカ含有ポリイミド層を形成する方法は、特に限定されるものではなく公知の手法を採用することができる。ここでは、その最も代表的な例を示す。
まず、樹脂組成物を任意の支持基材上に直接流延塗布して塗布膜を形成する。次に、塗布膜を150℃以下の温度である程度溶媒を乾燥除去する。樹脂組成物がポリアミド酸を含有する場合は、その後、塗布膜に対し、更にイミド化のために100〜400℃、好ましくは130〜360℃の温度範囲で5〜30分間程度の熱処理を行う。このようにして支持基材上にシリカ含有ポリイミド層を形成することができる。2層以上のポリイミド層とする場合、第一のポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、乾燥したのち、第二のポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、乾燥する。それ以降は、同様にして第三のポリアミド酸の樹脂溶液、次に、第4のポリアミド酸の樹脂溶液、・・・というように、ポリアミド酸の樹脂溶液を、必要な回数だけ、順次塗布し、乾燥する。その後、まとめて100〜400℃の温度範囲で5〜30分間程度の熱処理を行って、イミド化を行うことがよい。熱処理の温度が100℃より低いとポリイミドの脱水閉環反応が十分に進行せず、反対に400℃を超えると、ポリイミド層が劣化するおそれがある。
【0040】
また、シリカ含有ポリイミド層を形成する別の例を挙げる。
まず、任意の支持基材上に、樹脂組成物を流延塗布してフィルム状成型する。このフィルム状成型物を、支持基材上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとする。ゲルフィルムを支持基材より剥離した後、樹脂組成物がポリアミド酸を含有する場合は、更に高温で熱処理し、イミド化させてポリイミドの樹脂フィルムとする。
【0041】
シリカ含有ポリイミド層の形成に用いる支持基材は、特に限定されるものではなく、任意の材質の基材を用いることができる。また、樹脂フィルムの形成にあたっては、基材上で完全にイミド化を完了させた樹脂フィルムを形成する必要はない。例えば、半硬化状態のポリイミド前駆体状態での樹脂フィルムを支持基材から剥離等の手段で分離し、分離後イミド化を完了させて樹脂フィルムとすることもできる。
【0042】
樹脂フィルムは、無機フィラーを含有するポリイミド層(上記シリカ含有ポリイミド層を含む)のみからなっていてもよく、無機フィラーを含有しないポリイミド層を有してもよい。樹脂フィルムを複数層の積層構造とする場合、誘電特性の改善を考慮するとすべての層に無機フィラーを含有させることが好ましい。ただし、無機フィラーを含有するポリイミド層の隣接層を、無機フィラーを含有しない層とするか、あるいはその含有量が低い層とすることにより、加工時等の無機フィラーの滑落が防止できるという有利な効果をもたせることができる。無機フィラーを含有しないポリイミド層を有する場合、その厚みは、例えば、無機フィラーを含有するポリイミド層の1/100〜1/2の範囲内、好ましくは1/20〜1/3の範囲内とすることがよい。無機フィラーを含有しないポリイミド層を有する場合、そのポリイミド層が金属層に接するようにすれば、金属層と絶縁樹脂層の接着性が向上する。
【0043】
樹脂フィルムの熱膨張係数(CTE)は、特に限定されないが、例えば10×10−6〜60×10−6/K(10〜60ppm/K)の範囲内にあることが好ましく、20×10−6〜50×10−6/K(20〜50ppm/K)の範囲内がより好ましい。樹脂フィルムの熱膨張係数が10×10−6/Kより小さいと、金属張積層板とした後でカールが生じやすくハンドリング性に劣る。一方、樹脂フィルムの熱膨張係数が60×10−6/Kを超えると、フレキシブル基板など電子材料としての寸法安定性に劣り、また耐熱性も低下する傾向にある。
【0044】
<誘電正接>
樹脂フィルムは、例えば、回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、高周波信号の伝送時における誘電損失を低減するために、フィルム全体として、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの3〜20GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.006以下であることが好ましく、0.004以下であることがより好ましい。回路基板の伝送損失を改善するためには、特に絶縁樹脂層の誘電正接を制御することが重要であり、誘電正接を上記範囲内とすることで、伝送損失を下げる効果が増大する。従って、樹脂フィルムを、例えば高周波回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合、伝送損失を効率よく低減できる。3〜20GHzにおける誘電正接が0.006を超えると、樹脂フィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。3〜20GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、樹脂フィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合の物性制御を考慮する必要がある。
【0045】
<比誘電率>
樹脂フィルムは、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、フィルム全体として、3〜20GHzにおける比誘電率が4.0以下であることが好ましい。3〜20GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、樹脂フィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。
【0046】
<金属張積層板>
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であり、絶縁樹脂層の少なくとも1層が上記樹脂フィルムからなる。金属張積層板は、絶縁樹脂層の片面側のみに金属層を有する片面金属張積層板であってもよいし、絶縁樹脂層の両面に金属層を有する両面金属張積層板であってもよい。
【0047】
本実施の形態の金属張積層板は、無機フィラーを含有するポリイミド層と金属箔とを接着するための接着剤を用いることを除外するものではない。ただし、絶縁樹脂層の両面に金属層を有する両面金属張積層板において接着層を介在させる場合には、接着層の厚みは、誘電特性を損なわないように、全絶縁樹脂層の厚みの30%未満とすることが好ましく、20%未満とすることがより好ましい。また、絶縁樹脂層の片面のみに金属層を有する片面金属張積層板において接着層を介在させる場合には、接着層の厚みは、誘電特性を損なわないように、全絶縁樹脂層の厚みの15%未満とすることが好ましく、10%未満とすることがより好ましい。また、接着層は絶縁樹脂層の一部を構成するので、ポリイミド層であることが好ましい。絶縁樹脂層の主たる材質であるシリカ含有ポリイミドのガラス転移温度は、耐熱性を付与する観点から300℃以上とすることが好ましい。ガラス転移温度を300℃以上とするには、ポリイミドを構成する上記の酸二無水物やジアミン成分を適宜選択することで可能となる。
【0048】
樹脂フィルムを絶縁樹脂層とする金属張積層板を製造する方法としては、例えば、樹脂フィルムに直接、又は任意の接着剤を介して金属箔を加熱圧着する方法や、金属蒸着等の手法によって樹脂フィルムに金属層を形成する方法などを挙げることができる。なお、両面金属張積層板は、例えば、片面金属張積層板を形成した後、互いにポリイミド層を向き合わせて熱プレスによって圧着し形成する方法や、片面金属張積層板のポリイミド層に金属箔を圧着し形成する方法等により得ることができる。
【0049】
<金属層>
金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。金属層は、金属箔からなるものであってもよいし、フィルムに金属蒸着したものであってもよい。また、樹脂組成物を直接塗布可能な点から、金属箔でも金属板でも使用可能であり、銅箔若しくは銅板が好ましい。
【0050】
金属層の厚みは、金属張積層板の使用目的に応じて適宜設定されるため特に限定されないが、例えば5μm〜3mmの範囲内が好ましく、12μm〜1mmの範囲内がより好ましい。金属層の厚みが5μmに満たないと、金属張積層板の製造等における搬送時にシワが入るなどの不具合が生じるおそれがある。反対に金属層の厚みが3mmを超えると硬くて加工性が悪くなる。金属層の厚みについては、一般的に、車載用回路基板などの用途では厚いものが適し、LED用回路基板などの用途などでは薄い金属層が適する。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0052】
[粒子径の測定]
レーザ回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製、商品名;Master Sizer 3000)を用いて、水を分散媒とし粒子屈折率1.54の条件で、レーザ回折・散乱式測定方式による粒子径の測定を行った。
【0053】
[真比重の測定方法]
連続自動粉体真密度測定装置(セイシン企業社製、商品名;AUTO TRUE DENSERMAT‐7000)を用いて、ピクノメーター法(液相置換法)による真比重の測定を行った。
【0054】
[比表面積の測定]
JIS Z 8830:2013に準拠し、BET比表面積測定法により比表面積測定装置(マウンテック社製、商品名;Macsorb210)を用いて、比表面積を測定した。
【0055】
[比誘電率及び誘電正接の測定]
<シリカ粒子>
空洞共振器摂動法による関東電子応用開発社製の誘電率測定装置を用い、所定の周波数におけるシリカ粒子の比誘電率(ε1)及び誘電正接(Tanδ1)を測定した。なお、試料管チューブの内径は1.68mm、外径は2.28mm、高さは8cmである。
<樹脂フィルム>
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いて、所定の周波数における樹脂フィルム(硬化後の樹脂フィルム)の比誘電率(ε1)および誘電正接(Tanδ1)を測定した。なお、測定に使用した樹脂フィルムは、温度;24〜26℃、湿度;45〜55%の条件下で、24時間放置したものである。
【0056】
[粘度の測定]
樹脂溶液の粘度はE型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0057】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら10℃/分の昇温速度で30℃から250℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数、CTE)を求めた。
【0058】
[折り曲げ性の評価]
1)180°折り曲げ性:
JISK5600−1に準拠し、5cm×10cmサイズの樹脂フィルムの長辺の中心を、5mmφの金属棒に巻きつけるように1〜2秒かけて均一に曲げ、樹脂フィルムが180℃折り曲がっても破断又はクラックが入らないものを「良」とし、破断又はクラックが発生するものを「不可」とした。
2)はぜ折り性:
5cm×5cmサイズの樹脂フィルムを、対角線に三角に折りたたんだ後、元に戻して、樹脂フィルムが破断又はクラックが入らないものを「可」とし、破断又はクラックが発生するものを「不可」とした。
【0059】
実施例等に用いた略号は、以下の化合物を示す。
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2‐ビス(4‐アミノフェノキシフェニル)プロパン
TFMB:2,2'‐ビス(トリフルオロメチル)‐4,4'‐ジアミノビフェニル
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
6FDA:2,2‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)‐ヘキサフルオロプロパン二無水物
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
フィラー1:日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;SP40−10(球状非晶質シリカ粉末、真球状、シリカ含有率;99.9重量%、真比重;2.21、比表面積;8.6m/g、D50;2.5μm、D100;30μm)
フィラー2:日鉄ケミカル&マテリアル社製。商品名;SPH507(球状非晶質シリカ粉末、真球状、シリカ含有率;99.99重量%、真比重;2.21、比表面積;6.4m/g、D50;0.83μm、D100;8.7μm)
フィラー3:日鉄ケミカル&マテリアル社製。商品名;SPH516M(球状非晶質シリカ粉末、真球状、シリカ含有率;99.98重量%、真比重;2.21、比表面積;12.7m/g、D50;0.64μm、D100;1.3μm)
フィラー4:アドマテック社製、商品名;SE4050(球状非晶質シリカ粉末、真球状、シリカ含有率;99.99重量%、真比重;2.2、比表面積;4.6m/g、D50;1.5μm、D100;6.0μm)
【0060】
フィラー1〜4の比誘電率及び誘電正接は、次のとおりであった。
<フィラー1>
1)3GHzにおける比誘電率ε;3.05、誘電正接Tanδ;0.0028
2)5GHzにおける比誘電率ε;2.97、誘電正接Tanδ;0.0028
3)10GHzにおける比誘電率ε;2.78、誘電正接Tanδ;0.003
<フィラー2>
1)3GHzにおける比誘電率ε;2.98、誘電正接Tanδ;0.0025
2)5GHzにおける比誘電率ε;2.99、誘電正接Tanδ;0.0026
3)10GHzにおける比誘電率ε;2.88、誘電正接Tanδ;0.0027
<フィラー3>
1)3GHzにおける比誘電率ε;2.88、誘電正接Tanδ;0.004
2)5GHzにおける比誘電率ε;2.82、誘電正接Tanδ;0.0039
3)10GHzにおける比誘電率ε;2.76、誘電正接Tanδ;0.004
<フィラー4>
1)3GHzにおける比誘電率ε;3.10、誘電正接Tanδ;0.0049
2)5GHzにおける比誘電率ε;3.06、誘電正接Tanδ;0.0049
3)10GHzにおける比誘電率ε;2.92、誘電正接Tanδ;0.0052
【0061】
(合成例1〜4)
ポリアミド酸の溶液A〜Dを合成するため、窒素気流下で、3000mlのセパラブルフラスコの中に、表1で示した固形分濃度となるように溶剤のDMAcを加え、表1に示したジアミン成分及び酸無水物成分を10分間攪拌しながら室温で溶解させた。その後、溶液を室温で10時間攪拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸の粘稠な溶液A〜Dを調製した。
【0062】
【表1】
【0063】
[実施例1]
100.24gのポリアミド酸溶液A及び9.37gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液1(粘度;27,500cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;30体積%)を調製した。
銅箔1(電解銅箔、厚み;12μm)の上にポリアミド酸溶液1を塗布し、130℃で3分間乾燥させた。その後、155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板1を調製した。
金属張積層板1の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム1を調製した。樹脂フィルム1(厚み;40μm)のCTEは33ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム1の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0047
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0054
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0056
【0064】
[実施例2]
100.36gのポリアミド酸溶液A及び21.88gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液2(粘度;28,400cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;50体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板2及び樹脂フィルム2を調製した。樹脂フィルム2(厚み;42μm)のCTEは31ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は不可であった。また、樹脂フィルム2の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0043
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0047
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0049
【0065】
[実施例3]
99.92gのポリアミド酸溶液B及び9.33gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液3(粘度;29,000cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;30体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板3及び樹脂フィルム3を調製した。樹脂フィルム3(厚み;41μm)のCTEは35ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム3の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0029
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0033
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0035
【0066】
[実施例4]
100.00gのポリアミド酸溶液B及び21.81gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液4(粘度;31,000cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;50体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板4及び樹脂フィルム4を調製した。樹脂フィルム4(厚み;44μm)のCTEは30ppm/Kであり、180°折り曲げ性は可、はぜ折り性は不可であった。また、樹脂フィルム4の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0028
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0030
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0031
【0067】
[実施例5]
80.00gのポリアミド酸溶液C及び7.88gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液5(粘度;24,000cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;30体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板5及び樹脂フィルム5を調製した。樹脂フィルム5(厚み;46μm)のCTEは41ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム5の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0046
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0052
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0055
【0068】
[実施例6]
80.00gのポリアミド酸溶液D及び7.92gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液6(粘度;23,000cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;30体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板6及び樹脂フィルム6を調製した。樹脂フィルム6(厚み;45μm)のCTEは46ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム6の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0046
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0052
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0055
【0069】
[実施例7]
80.00gのポリアミド酸溶液D及び18.49gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液7(粘度;31,000cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;50体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板7及び樹脂フィルム7を調製した。樹脂フィルム7(厚み;48μm)のCTEは28ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム7の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0051
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0054
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0055
【0070】
(比較例1)
銅箔1の上にポリアミド酸溶液Aを塗布し、130℃で3分間乾燥させた。その後、155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板8を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板8及び樹脂フィルム8を調製した。樹脂フィルム8(厚み;42μm)のCTEは17ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム8の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0052
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0062
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0065
【0071】
(比較例2)
銅箔1の上にポリアミド酸溶液Bを塗布し、130℃で3分間乾燥させた。その後、155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板9を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板9及び樹脂フィルム9を調製した。樹脂フィルム9(厚み;43μm)のCTEは18ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム9の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0032
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0037
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0040
【0072】
(比較例3)
銅箔1の上にポリアミド酸溶液Cを塗布し、130℃で3分間乾燥させた。その後、155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板10を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板10及び樹脂フィルム10を調製した。樹脂フィルム10(厚み;41μm)のCTEは51ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム10の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0055
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0062
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0068
【0073】
(比較例4)
銅箔1の上にポリアミド酸溶液Dを塗布し、130℃で3分間乾燥させた。その後、155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板11を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板11及び樹脂フィルム11を調製した。樹脂フィルム11(厚み;42μm)のCTEは71ppm/Kであり、180°折り曲げ性は良、はぜ折り性は可であった。また、樹脂フィルム11の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0069
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0077
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0079
【0074】
[比較例5]
100.24gのポリアミド酸溶液A及び9.37gのフィラー4を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液12(粘度;28,000cps、ポリアミド酸に対するフィラーの含有率;30体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板12及び樹脂フィルム12を調製した。樹脂フィルム12(厚み;44μm)のCTEは34ppm/Kであり、180°折り曲げ性及びはぜ折り性はいずれも不可であった。また、樹脂フィルム12の誘電正接は、次のとおりであった。
1)5GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0051
2)10GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0054
3)20GHzにおける誘電正接Tanδ;0.0055
【0075】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。