【課題】原料としてダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物を一定量以上使用しながら、誘電特性の改善によって電子機器の高周波化への対応が可能なポリイミド組成物及び樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】(A)テトラカルボン酸無水物成分と、全ジアミン成分に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物を40モル%以上含有するジアミン成分と、を反応させてなるポリイミドと、(B)芳香族縮合リン酸エステルを含有するとともに、(A)成分に対する(B)成分の重量比が0.05〜0.7の範囲内であるポリイミド組成物。
前記(A)成分中のダイマージアミン組成物に対する(B)成分由来のリンの重量比が0.01〜0.15の範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態のポリイミド組成物は、下記成分(A)及び(B);
(A)テトラカルボン酸無水物成分と、全ジアミン成分に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物を40モル%以上含有するジアミン成分と、を反応させてなるポリイミド、及び
(B)芳香族縮合リン酸エステル、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が0.05〜0.7の範囲内である。
【0022】
[(A)成分;ポリイミド]
(A)成分のポリイミドは、テトラカルボン酸無水物成分と、全ジアミン成分に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物を40モル%以上含有するジアミン成分と、を反応させて得られる前駆体のポリアミド酸をイミド化したものである。
【0023】
(テトラカルボン酸無水物成分)
本実施の形態のポリイミドは、一般に熱可塑性ポリイミドに使用されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を特に制限なく含むことができるが、全テトラカルボン酸残基に対して、下記の一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を、合計で90モル%以上含有することが好ましい。下記の一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を、全テトラカルボン酸残基に対して、合計で90モル%以上含有させることによって、ポリイミドの柔軟性と耐熱性の両立が図りやすく好ましい。下記の一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基の合計が90モル%未満では、ポリイミドの溶剤溶解性が低下する傾向になる。
【0025】
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示す。
【0027】
上記式において、Zは−C
6H
4−、−(CH
2)n−又は−CH
2−CH(−O−C(=O)−CH
3)−CH
2−を示すが、nは1〜20の整数を示す。
【0028】
なお、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10
8Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10
7Pa未満であるポリイミドをいう。また、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10
9Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10
8Pa以上であるポリイミドをいう。
【0029】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)などを挙げることができる。これらの中でも特に3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を使用する場合は、ポリイミドの接着性を向上させることができ、また分子骨格に存在するケトン基と、後述する架橋形成のためのアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成する場合があり、耐熱性を向上させる効果を発現しやすい。このような観点から、全テトラカルボン酸残基に対して、BTDAから誘導されるテトラカルボン酸残基を好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上含有することがよい。
【0030】
(A)成分のポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物以外の酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することができる。そのようなテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-又は2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0031】
(ジアミン成分)
(A)成分のポリイミドは、原料として、全ジアミン成分に対して、ダイマージアミン組成物を40モル%以上、より好ましくは60モル%以上含有するジアミン成分を用いる。つまり、(A)成分のポリイミドは、全ジアミン残基に対して、ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を、40モル%以上、好ましくは60モル%以上含有する。ダイマージアミン組成物を上記の量で使用することによって、ポリイミドの誘電特性を改善させるとともに、ポリイミドのガラス転移温度の低温化(低Tg化)による熱圧着特性の改善及び低弾性率化による内部応力を緩和することができる。
【0032】
(ダイマージアミン組成物)
ダイマージアミン組成物は、下記成分(a)を主成分として含有するとともに、成分(b)及び(c)の量が制御されているものである。
【0033】
(a)ダイマージアミン;
(a)成分のダイマージアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(−COOH)が、1級のアミノメチル基(−CH
2−NH
2)又はアミノ基(−NH
2)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11〜22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸、リノレン酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20〜54の他の重合脂肪酸を含有する。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。(a)成分のダイマージアミンは、炭素数18〜54の範囲内、好ましくは22〜44の範囲内にある二塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるジアミン化合物、と定義することができる。
【0034】
ダイマージアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性を付与することができる。すなわち、ダイマージアミンは、分子量約560〜620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマー酸型ジアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7〜9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対象的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化を図ることができると考えられる。
【0035】
ダイマージアミン組成物は、分子蒸留等の精製方法によって(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは98重量%以上にまで高めたものを使用することがよい。(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。なお、技術的に可能であれば、ダイマージアミン組成物のすべて(100重量%)が、(a)成分のダイマージアミンによって構成されていることが最もよい。
【0036】
(b)炭素数10〜40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
炭素数10〜40の範囲内にある一塩基酸化合物は、ダイマー酸の原料に由来する炭素数10〜20の範囲内にある一塩基性不飽和脂肪酸、及びダイマー酸の製造時の副生成物である炭素数21〜40の範囲内にある一塩基酸化合物の混合物である。モノアミン化合物は、これらの一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるものである。
【0037】
(b)成分のモノアミン化合物は、ポリイミドの分子量増加を抑制する成分である。ポリアミド酸又はポリイミドの重合時に、該モノアミン化合物の単官能のアミノ基が、ポリアミド酸又はポリイミドの末端酸無水物基と反応することで末端酸無水物基が封止され、ポリアミド酸又はポリイミドの分子量増加を抑制する。
【0038】
(c)炭素数41〜80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
炭素数41〜80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物は、ダイマー酸の製造時の副生成物である炭素数41〜80の範囲内にある三塩基酸化合物を主成分とする多塩基酸化合物である。また、炭素数41〜80のダイマー酸以外の重合脂肪酸を含んでいてもよい。アミン化合物は、これらの多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるものである。
【0039】
(c)成分のアミン化合物は、ポリイミドの分子量増加を助長する成分である。トリマー酸を由来とするトリアミン体を主成分とする三官能以上のアミノ基が、ポリアミド酸又はポリイミドの末端酸無水物基と反応し、ポリイミドの分子量を急激に増加させる。また、炭素数41〜80のダイマー酸以外の重合脂肪酸から誘導されるアミン化合物も、ポリイミドの分子量を増加させ、ポリアミド酸又はポリイミドのゲル化の原因となる。
【0040】
上記ダイマージアミン組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた測定によって各成分の定量を行う場合、ダイマージアミン組成物の各成分のピークスタート、ピークトップ及びピークエンドの確認を容易にするために、ダイマージアミン組成物を無水酢酸及びピリジンで処理したサンプルを使用し、また内部標準物質としてシクロヘキサノンを使用する。このように調製したサンプルを用いて、GPCのクロマトグラムの面積パーセントで各成分を定量する。各成分のピークスタート及びピークエンドは、各ピーク曲線の極小値とし、これを基準にクロマトグラムの面積パーセントの算出を行うことができる。
【0041】
また、本発明で用いるダイマージアミン組成物は、GPC測定によって得られるクロマトグラムの面積パーセントで、成分(b)及び(c)の合計が4%以下、好ましくは4%未満がよい。成分(b)及び(c)の合計を4%以下とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。
【0042】
また、(b)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下がよい。このような範囲にすることで、ポリイミドの分子量の低下を抑制することができ、更にテトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分の仕込みのモル比の範囲を広げることができる。なお、(b)成分は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
【0043】
また、(c)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、2%以下であり、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下がよい。このような範囲にすることで、ポリイミドの分子量の急激な増加を抑制することができ、更に樹脂フィルムの広域の周波数での誘電正接の上昇を抑えることができる。なお、(c)成分は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
【0044】
また、成分(b)及び(c)のクロマトグラムの面積パーセントの比率(b/c)が1以上である場合、テトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分のモル比(テトラカルボン酸無水物成分/ジアミン成分)は、好ましくは0.97以上1.0未満とすることがよく、このようなモル比にすることで、ポリイミドの分子量の制御がより容易となる。
【0045】
また、成分(b)及び(c)の前記クロマトグラムの面積パーセントの比率(b/c)が1未満である場合、テトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分のモル比(テトラカルボン酸無水物成分/ジアミン成分)は、好ましくは0.97以上1.1以下とすることがよく、このようなモル比にすることで、ポリイミドの分子量の制御がより容易となる。
【0046】
ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000〜200,000の範囲内が好ましく、このような範囲内であれば、ポリイミドの重量平均分子量の制御が容易となる。また、例えばFPC用の接着剤として適用する場合、ポリイミドの重量平均分子量は、20,000〜150,000の範囲内がより好ましく、40,000〜150,000の範囲内が更に好ましい。ポリイミドの重量平均分子量が20,000未満である場合、フロー耐性が悪化する傾向となる。一方、ポリイミドの重量平均分子量が150,000を超えると、過度に粘度が増加して溶剤に不溶になり、塗工作業の際に接着層の厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0047】
本発明で用いるダイマージアミン組成物は、(a)成分のダイマージアミン以外の成分を低減する目的で精製することが好ましい。精製方法としては、特に制限されないが、蒸留法や沈殿精製等の公知の方法が好適である。精製前のダイマージアミン組成物は、市販品での入手が可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)等が挙げられる。
【0048】
ポリイミドに使用されるダイマージアミン以外のジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物、脂肪族ジアミン化合物を挙げることができる。それらの具体例としては、1,4−ジアミノベンゼン(p−PDA;パラフェニレンジアミン)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート(APAB)、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン等のジアミン化合物が挙げられる。
【0049】
ポリイミドは、上記のテトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜50重量%の範囲内、好ましくは10〜40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5〜50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0050】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps〜100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
【0051】
ポリアミド酸をイミド化させてポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。また、温度は一定の温度条件で加熱しても良いし、工程の途中で温度を変えることもできる。
【0052】
本実施の形態のポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上のテトラカルボン酸無水物成分又はジアミン成分を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、誘電特性、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、本実施の形態のポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0053】
本実施の形態のポリイミドのイミド基濃度は、好ましくは22重量%以下、より好ましくは20重量%以下がよい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(−(CO)
2−N−)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が22重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化し、Tg及び弾性率が上昇する。
【0054】
本実施の形態のポリイミドは、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm
−1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm
−1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
【0055】
[(B)成分;芳香族縮合リン酸エステル]
本実施の形態のポリイミド組成物は、(B)成分の芳香族縮合リン酸エステルを含有する。ここで、「芳香族縮合リン酸エステル」とは、2つ以上のリン酸エステルユニットが芳香環を有する2価の有機基によって連結された化学構造を有するリン酸エステル化合物、又は、オキシ塩化リンと、二価のフェノール系化合物及びフェノールもしくはアルキルフェノールと、の反応生成物を意味する。芳香族縮合リン酸エステルを一定量以上のダイマージアミン組成物を使用して得られるポリイミドと組み合わせることによって、誘電特性を改善することができる。その理由は未だ明らかではないが、芳香族縮合リン酸エステルの特有の化学構造により、芳香族縮合リン酸エステル自体の誘電特性と、ダイマージアミン組成物を使用して得られるポリイミドとの相溶性はあるものの、分子鎖の運動性を過度に高めないため、低誘電率化、低誘電正接化に寄与するものと推測される。
【0056】
芳香族縮合リン酸エステルの好ましい例としては、以下の一般式(2)の構造の化合物を挙げることができる。
【0058】
一般式(2)中、複数のRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、Arは芳香環を有する2価の有機基であり、nは1以上の整数を意味する。一般式(2)で表される芳香族縮合リン酸エステルは、nが1である二量体のほか、nが2以上の多量体でもよい。また、単独の化合物に限らず、混合物であってもよい。
【0059】
一般式(2)においてRで表される、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜15のアリール基を挙げることが可能であり、より具体的には、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基などを挙げることができる。
また、一般式(2)において、Arで表される2価の有機基の好ましい例としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基などを挙げることが可能であり、これらは置換基を有していてもよい。より好ましいものとして、例えばフェニレン基や、次の式(3)で表される基などを挙げることができる。
【0061】
式(3)中、Yは単結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−SO
2−、−C
5H
10−、−C
6H
12−、−C
7H
14−、−C
8H
16−などを意味する。
式(3)で表される基の中でも、Yが単結合であるビフェニルジイル基がより好ましい。
【0062】
芳香族縮合リン酸エステルとしては、例えばレゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェートなどを挙げることができる。これらの芳香族縮合リン酸エステルとしては、市販品を入手可能であり、例えば、CR−733S(商品名)、CR−741(商品名)、CR−747(商品名)、PX−200(商品名)、PX−200B(商品名)[以上、大八化学工業株式会社製]等を挙げることができる。これらの芳香族縮合リン酸エステルは、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
[配合量]
本実施の形態のポリイミド組成物における(A)成分に対する前記(B)成分の重量比は、0.05〜0.7の範囲内であり、樹脂フィルムを形成したときの引張り弾性率などのフィルム物性を考慮すると0.2〜0.5の範囲内であることが好ましい。(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が0.05未満では、誘電特性の改善が不十分となる場合があり、0.7を超えるとポリイミドの形成が困難になる場合があり、また得られるポリイミドフィルムの脆弱化が生じる場合がある。(B)成分の配合量を上記範囲内とすることで、誘電特性を改善することができる。
【0064】
また、本実施の形態のポリイミド組成物において、(B)成分は、(A)成分のポリイミドに対する(B)成分由来のリンの重量比が0.01〜0.1の範囲内となるように配合されることが好ましい。(B)成分由来のリンの重量比が0.01未満では、誘電特性の改善が不十分となり、0.1を超えるとポリイミドフィルム(又はポリイミド層)の脆弱化が生じる場合がある。
【0065】
本実施の形態のポリイミド組成物における(B)成分は、(A)成分中に含まれるダイマージアミン組成物に対する(B)成分由来のリンの重量比{(B)成分由来のリン/(A)成分中のダイマージアミン組成物}が0.01〜0.15の範囲内であることが好ましい。上記下限未満では、誘電特性の改善が不十分となる場合があり、上記上限を超えると、ポリイミドの形成が困難になる場合があり、また、得られるポリイミドフィルムの脆弱化が生じる場合がある。
【0066】
<架橋形成>
(A)成分のポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物(以下、「架橋形成用アミノ化合物」と記すことがある)のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。架橋構造の形成によって、接着層を形成する熱可塑性ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有する熱可塑性ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸無水物としては、例えば3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’―ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0067】
架橋構造を形成させる目的において、本実施の形態のポリイミド組成物は、特に、全テトラカルボン酸残基に対して、BTDAから誘導されるBTDA残基を、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上含有する上記(A)成分のポリイミド、及び架橋形成用アミノ化合物、を含むことが好ましい。なお、本発明において、「BTDA残基」とは、BTDAから誘導された4価の基のことを意味する。
【0068】
架橋形成用アミノ化合物としては、(I)ジヒドラジド化合物、(II)芳香族ジアミン、(III)脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。このように、ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ二酸ジヒドラジド、4,4−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
【0069】
また、上記(I)ジヒドラジド化合物、(II)芳香族ジアミン、(III)脂肪族アミン等のアミノ化合物は、例えば(I)と(II)の組み合わせ、(I)と(III)との組み合わせ、(I)と(II)と(III)との組み合わせのように、カテゴリーを超えて2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0070】
また、架橋形成用アミノ化合物による架橋で形成される網目状の構造をより密にするという観点から、本発明で使用する架橋形成用アミノ化合物は、その分子量(架橋形成用アミノ化合物がオリゴマーの場合は重量平均分子量)が5,000以下であることが好ましく、より好ましくは90〜2,000、更に好ましくは100〜1,500がよい。この中でも、100〜1,000の分子量をもつ架橋形成用アミノ化合物が特に好ましい。架橋形成用アミノ化合物の分子量が90未満になると、架橋形成用アミノ化合物の1つのアミノ基がポリイミド樹脂のケトン基とC=N結合を形成するにとどまり、残りのアミノ基の周辺が立体的に嵩高くなるために残りのアミノ基はC=N結合を形成しにくい傾向となる。
【0071】
(A)成分のポリイミド中のケトン基と架橋形成用アミノ化合物とを架橋形成させる場合は、(A)成分を含む樹脂溶液に、上記架橋形成用アミノ化合物を加えて、ポリイミド中のケトン基と架橋形成用アミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、架橋形成用アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モル、好ましくは0.005モル〜1.2モル、より好ましくは0.03モル〜0.9モル、最も好ましくは0.04モル〜0.6モルとすることができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるような架橋形成用アミノ化合物の添加量では、架橋形成用アミノ化合物による架橋が十分ではないため、硬化後の耐熱性が発現しにくい傾向となり、架橋形成用アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応の架橋形成用アミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着剤層としての耐熱性を低下させる傾向がある。
【0072】
架橋形成のための縮合反応の条件は、(A)成分のポリイミドにおけるケトン基と上記架橋形成用アミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は(A)成分のポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120〜220℃の範囲内が好ましく、140〜200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、30分〜24時間程度が好ましい。反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm
−1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm
−1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
【0073】
(A)成分のポリイミドのケトン基と上記架橋形成用アミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、
(1)(A)成分のポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、架橋形成用アミノ化合物を添加して加熱する方法、
(2)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、(A)成分のポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、イミド化若しくはアミド化に関与しない残りのアミノ化合物を架橋形成用アミノ化合物として利用してポリイミドとともに加熱する方法、又は、
(3)上記の架橋形成用アミノ化合物を添加した(A)成分のポリイミドの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法、等によって行うことができる。
【0074】
(A)成分のポリイミドの耐熱性付与のため、架橋構造の形成でイミン結合の形成を説明したが、これに限定されるものではなく、(A)成分のポリイミドの硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、マレイミドや活性化エステル樹脂やスチレン骨格を有する樹脂等の不飽和結合を有する化合物等を配合し硬化することも可能である。
【0075】
[任意成分]
本実施の形態のポリイミド組成物には、さらに任意成分として架橋形成用アミノ化合物の他に無機フィラーを含有することが好ましい。さらに必要に応じて、他の任意成分として可塑剤、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、オレフィン系樹脂などの他の樹脂成分、硬化促進剤、カップリング剤、有機フィラー、顔料、難燃剤などを適宜配合することができる。ただし、可塑剤には、極性基を多く含有するものがあり、それが銅配線からの銅の拡散を助長する懸念があるため、可塑剤は極力使用しないことが好ましい。
さらに、本実施の形態のポリイミド組成物は、有機溶媒などの溶剤を含有することができる。有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。有機溶媒の含有量としては特に制限されるものではないが、ポリアミド酸又はポリイミドの濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0076】
[ポリイミド組成物の調製]
ポリイミド組成物の調製に際しては、例えば、任意の溶剤を用いて作製したポリアミド酸又はポリイミドの樹脂溶液に(B)成分を直接配合してもよい。あるいは、(B)成分の溶解性や、混合・分散性を考慮し、ポリアミド酸の原料である酸二無水物成分及びジアミン成分のいずれか片方を投入した反応溶媒に予め(B)成分を配合した後、攪拌下にもう片方の原料を投入して重合を進行させてもよい。いずれの方法においても、一回で(B)成分を全量投入してもよいし、数回分けて少しずつ添加してもよい。また、原料も一括で入れてもよいし、数回に分けて少しずつ混合してもよい。
【0077】
本実施の形態のポリイミド組成物は、これを用いて接着剤層を形成した場合に優れた柔軟性と熱可塑性を有するものとなり、例えばFPC、リジッド・フレックス回路基板などの配線部を保護するカバーレイフィルム用の接着剤として好ましい特性を有している。
【0078】
[樹脂フィルム]
本実施の形態の樹脂フィルムは、ポリイミド層を含む樹脂フィルムであり、該ポリイミド層が、上記ポリイミド組成物の固形分(溶剤を除いた残部)を主要成分としてフィルム化してなるものである。つまり、本実施の形態の樹脂フィルムは、(A)成分及び(B)成分を含有するとともに、(A)成分に対する(B)成分の重量比が0.05〜0.7の範囲内である。本実施の形態の樹脂フィルムは、優れた高周波特性と湿度に対する安定性を付与するために、樹脂成分として、テトラカルボン酸無水物成分と、全ジアミン成分に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物を40モル%以上含有するジアミン成分と、を反応させてなるポリイミドを含有する。なお、本実施の形態の樹脂フィルムは、樹脂成分以外の任意成分として、例えばフィラーなどを含有してもよい。
【0079】
本実施の形態の樹脂フィルムは、上記のポリイミド組成物から形成されるポリイミド層を含む絶縁樹脂のフィルムであれば特に限定されるものではなく、絶縁樹脂からなるフィルム(シート)であってもよく、銅箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂シート等の基材に積層された状態の絶縁樹脂のフィルムであってもよい。
【0080】
(誘電特性)
本実施の形態の樹脂フィルムは、下記式(i)、
E
1=√ε
1×Tanδ
1 ・・・(i)
[ここで、ε
1は、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ
1は、23℃、50%RHの恒温恒湿条件のもと24時間調湿後に、SPDRにより測定される10GHzにおける誘電正接を示す。なお、「√ε
1」は、ε
1の平方根を意味する。]
に基づき算出される、23℃、50%RHの恒温恒湿条件のもと24時間調湿後の10GHzにおける誘電特性を示す指標であるE
1値が0.010以下、好ましくは0.009以下がよく、より好ましくは0.008以下がよい。E
1値が、上記上限を超えると、例えばFPC等の回路基板に使用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0081】
(誘電率)
本実施の形態の樹脂フィルムは、例えばFPC等の回路基板に使用した際のインピーダンス整合性を確保するため、また電気信号のロス低減のために、23℃、50%RHの恒温恒湿条件のもと24時間調湿後の10GHzにおける誘電率(ε
1)は、好ましくは3.2以下がよく、より好ましくは3.0以下がよい。この誘電率が3.2を超えると、例えばFPC等の回路基板に使用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0082】
(誘電正接)
また、本実施の形態の樹脂フィルムは、例えばFPC等の回路基板に使用した際の電気信号のロス低減のために、23℃、50%RHの恒温恒湿条件のもと24時間調湿後の10GHzにおける誘電正接(Tanδ
1)は、好ましくは0.005未満がよく、より好ましくは0.004以下がよい。この誘電正接が0.005以上であると、例えばFPC等の回路基板に使用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0083】
(吸湿依存性)
本実施の形態の樹脂フィルムは、例えばFPC等の回路基板に使用した際の乾燥時及び湿潤時での電気信号のロス低減やインピーダンス整合性を確保するために、下記式(ii)、
E
2=√ε
2×Tanδ
2 ・・・(ii)
[ここで、ε
2は、23℃、24時間吸水後に、SPDRにより測定される10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ
2は、23℃、24時間吸水後に、SPDRによって測定される10GHzにおける誘電正接を示す。なお、「√ε
2」は、ε
2の平方根を意味する。]
に基づき算出される、23℃、24時間吸水後の10GHzにおける誘電特性を示す指標であるE
2値において、上記式(i)に基づき算出されるE
1値に対するE
2値の比(E
2/E
1)が3.0〜1.0の範囲内であり、好ましくは2.5〜1.0の範囲内がよく、より好ましくは2.2〜1.0の範囲内がよい。E
2/E
1が、上記上限を超えると、例えばFPC等の回路基板に使用した際に、湿潤時での誘電率及び誘電正接の上昇を招き、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0084】
(吸湿率)
また、本実施の形態の樹脂フィルムは、例えばFPC等の回路基板に使用した際の湿度による影響を低減するために、樹脂フィルムの吸湿率が、好ましくは0.5重量%以下がよく、より好ましくは0.3重量%未満がよい。ここで、「吸湿率」は、23℃、50%RHの恒温恒湿条件のもと24時間以上経過後の吸湿率を意味する(本明細書において同様の意味である)。樹脂フィルムの吸湿率が0.5重量%を超えると、例えばFPC等の回路基板に使用した際に、湿度の影響を受けやすくなり、高周波信号の伝送速度の変動などの不都合が生じやすくなる。つまり、樹脂フィルムの吸湿率が上記範囲を上回ると、誘電率の高い水を吸収しやすくなるので、誘電率及び誘電正接の上昇を招き、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0085】
(貯蔵弾性率)
本実施の形態の樹脂フィルムは、40〜250℃の範囲に、温度上昇に伴って貯蔵弾性率が急勾配で減少する温度域が存在するものであってもよい。このような樹脂フィルムの特性が、例えば熱圧着時の内部応力を緩和し、回路加工後の寸法安定性を保持する要因であると考えられる。樹脂フィルムは、前記温度域の上限温度での貯蔵弾性率が、5×10
7[Pa]以下であることが好ましい。このような貯蔵弾性率とすることによって、仮に上記温度範囲の上限としても、250℃以下での熱圧着が可能となり、密着性を担保し、回路加工後の寸法変化を抑制することができる。
なお、本実施の形態の樹脂フィルムは高熱膨張性であるが低弾性であるため、CTEが30ppm/Kを超えても、積層時に発生する内部応力を緩和することができる。
【0086】
(ガラス転移温度)
本実施の形態の樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が250℃以下であることが好ましく、40℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましい。樹脂フィルムのTgが250℃以下であることによって、低温での熱圧着が可能になるため、積層時に発生する内部応力を緩和し、回路加工後の寸法変化を抑制できる。樹脂フィルムのTgが250℃を超えると、接着温度が高くなり、回路加工後の寸法安定性を損なう恐れがある。
【0087】
(厚み)
本実施の形態の樹脂フィルムは、厚みが、例えば5μm以上125μm以下の範囲内が好ましく、8μm以上100μm以下の範囲内であることがより好ましい。樹脂フィルムの厚みが5μmに満たないと、樹脂フィルムの製造等における搬送時にシワが入るなどの不具合が生じるおそれがあり、一方、樹脂フィルムの厚みが125μmを超えると樹脂フィルムの生産性低下の虞がある。
【0088】
[積層体]
本発明の一実施の形態に係る積層体は、基材と、この基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有し、接着剤層が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、積層体は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。積層体における基材としては、例えば、銅箔、ガラス板などの無機材料の基材や、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂材料の基材を挙げることができる。
積層体の好ましい態様として、カバーレイフィルム、樹脂付き銅箔などを挙げることができる。
【0089】
[カバーレイフィルム]
積層体の一態様であるカバーレイフィルムは、基材としてのカバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層の片側の面に積層された接着剤層とを有し、接着剤層が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、カバーレイフィルムは、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
【0090】
カバーレイ用フィルム材層の材質は、特に限定されないが、例えばポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系フィルムや、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを用いることができる。これらの中でも、優れた耐熱性を持つポリイミド系フィルムを用いることが好ましい。また、カバーレイ用フィルム材は、遮光性、隠蔽性、意匠性等を効果的に発現させるために、黒色顔料を含有することもでき、また誘電特性の改善効果を損なわない範囲で、表面の光沢を抑制するつや消し顔料などの任意成分を含むことができる。
【0091】
カバーレイ用フィルム材層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば5μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。
また、接着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば10μm以上75μm以下の範囲内が好ましい。
【0092】
本実施の形態のカバーレイフィルムは、以下に例示する方法で製造できる。
まず、第1の方法として、カバーレイ用のフィルム材層の片面に、溶剤を含有するワニス状のポリイミド組成物を塗布した後、例えば80〜180℃の温度で乾燥させて接着剤層を形成することにより、カバーレイ用フィルム材層と接着剤層を有するカバーレイフィルムを形成できる。
【0093】
また、第2の方法として、任意の基材上に、溶剤を含有するワニス状のポリイミド組成物を塗布し、例えば80〜180℃の温度で乾燥した後、剥離することにより、接着剤層用の接着剤フィルムを形成し、この接着剤フィルムを、カバーレイ用のフィルム材層と例えば60〜220℃の温度で熱圧着させることによってカバーレイフィルムを形成できる。
【0094】
[樹脂付き銅箔]
積層体の別の態様である樹脂付き銅箔は、基材としての銅箔の少なくとも片側に接着剤層を積層したものであり、接着剤層が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、本実施の形態の樹脂付き銅箔は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
【0095】
樹脂付き銅箔における接着剤層の厚みは、例えば2〜125μmの範囲内にあることが好ましく、2〜100μmの範囲内がより好ましい。接着剤層の厚みが上記下限値に満たないと、十分な接着性が担保出来なかったりするなどの問題が生じることがある。一方、接着剤層の厚みが上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる。また、低誘電率化及び低誘電正接化の観点から、接着剤層の厚みを3μm以上とすることが好ましい。
【0096】
樹脂付き銅箔における銅箔の材質は、銅又は銅合金を主成分とするものが好ましい。銅箔の厚みは、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5〜25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から、銅箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔は圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
【0097】
樹脂付き銅箔は、例えば、樹脂フィルムに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えば銅メッキによって銅層を形成することによって調製してもよく、あるいは、樹脂フィルムと銅箔とを熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。さらに、樹脂付き銅箔は、銅箔の上に接着剤層を形成するため、ポリイミド組成物の塗布液をキャストし、乾燥して塗布膜とした後、必要な熱処理を行って調製してもよい。
【0098】
[金属張積層板]
(第1の態様)
本発明の一実施の形態に係る金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備え、絶縁樹脂層の少なくとも1層が、上記樹脂フィルムからなるものである。なお、本実施の形態の金属張積層板は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
【0099】
(第2の態様)
本発明の別の実施の形態に係る金属張積層板は、例えば絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、この接着剤層を介して絶縁樹脂層に積層された金属層と、を備えた、いわゆる3層金属張積層板であり、接着剤層が、上記樹脂フィルムからなるものである。なお、3層金属張積層板は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。3層金属張積層板は、接着剤層が、絶縁樹脂層の片面又は両面に設けられていればよく、金属層は、接着剤層を介して絶縁樹脂層の片面又は両面に設けられていればよい。つまり、3層金属張積層板は、片面金属張積層板でもよいし、両面金属張積層板でもよい。3層金属張積層板の金属層をエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCを製造することができる。
【0100】
3層金属張積層板における絶縁樹脂層としては、電気的絶縁性を有する樹脂により構成されるものであれば特に限定はなく、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFEなどを挙げることができるが、ポリイミドによって構成されることが好ましい。絶縁樹脂層を構成するポリイミド層は、単層でも複数層でもよいが、非熱可塑性ポリイミド層を含むことが好ましい。
【0101】
3層金属張積層板における絶縁樹脂層の厚みは、例えば1〜125μmの範囲内にあることが好ましく、5〜100μmの範囲内がより好ましい。絶縁樹脂層の厚みが上記下限値に満たないと、十分な電気絶縁性が担保出来ないなどの問題が生じることがある。一方、絶縁樹脂層の厚みが上記上限値を超えると、金属張積層板の反りが生じやすくなるなどの不具合が生じる。
【0102】
3層金属張積層板における接着剤層の厚みは、例えば0.1〜125μmの範囲内にあることが好ましく、0.3〜100μmの範囲内がより好ましい。本実施の形態の3層金属張積層板において、接着剤層の厚みが上記下限値に満たないと、十分な接着性が担保出来なかったりするなどの問題が生じることがある。一方、接着剤層の厚みが上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる。また、絶縁樹脂層と接着剤層との積層体である絶縁層全体の低誘電率化及び低誘電正接化の観点から、接着剤層の厚みは、3μm以上とすることが好ましい。
【0103】
また、絶縁樹脂層の厚みと接着剤層との厚みの比(絶縁樹脂層の厚み/接着剤層の厚み)は、例えば0.1〜3.0の範囲内が好ましく、0.15〜2.0の範囲内がより好ましい。このような比率にすることで、3層金属張積層板の反りを抑制することができる。また、絶縁樹脂層は、必要に応じて、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、有機ホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0104】
[回路基板]
本発明の実施の形態に係る回路基板は、上記いずれかの実施の形態の金属張積層板の金属層を配線加工してなるものである。金属張積層板の一つ以上の金属層を、常法によってパターン状に加工して配線層(導体回路層)を形成することによって、FPCなどの回路基板を製造できる。なお、回路基板は、配線層を被覆するカバーレイフィルムを備えていてもよい。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0106】
[アミン価の測定方法]
約2gのダイマージアミン組成物を200〜250mLの三角フラスコに秤量し、指示薬としてフェノールフタレインを用い、溶液が薄いピンク色を呈するまで、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液を滴下し、中和を行ったブタノール約100mLに溶解させる。そこに3〜7滴のフェノールフタレイン溶液を加え、サンプルの溶液が薄いピンク色に変わるまで、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で攪拌しながら滴定する。そこへブロモフェノールブルー溶液を5滴加え、サンプル溶液が黄色に変わるまで、0.2mol/Lの塩酸/イソプロパノール溶液で攪拌しながら滴定する。
アミン価は、次の式(1)により算出する。
アミン価={(V
2×C
2)−(V
1×C
1)}×M
KOH/m ・・・(1)
ここで、アミン価はmg−KOH/gで表される値であり、M
KOHは水酸化カリウムの分子量56.1である。また、V、Cはそれぞれ滴定に用いた溶液の体積と濃度であり、添え字の1、2はそれぞれ0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液、0.2mol/Lの塩酸/イソプロパノール溶液を表す。さらに、mはグラムで表されるサンプル重量である。
【0107】
[ポリイミドの重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC−8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いた。
【0108】
[GPC及びクロマトグラムの面積パーセントの算出]
GPCは、20mgのダイマージアミン組成物を200μLの無水酢酸、200μLのピリジン及び2mLのTHFで前処理した100mgの溶液を、10mLのTHF(1000ppmのシクロヘキサノンを含有)で希釈し、サンプルを調製した。調製したサンプルを東ソー株式会社製、商品名;HLC−8220GPCを用いて、カラム:TSK−gel G2000HXL,G1000HXL、 フロー量:1mL/min、カラム(オーブン)温度:40℃、注入量:50μLの条件で測定した。なお、シクロヘキサノンは流出時間の補正のために標準物質として扱った。
【0109】
このとき、シクロヘキサノンのメインピークのピークトップがリテンションタイム27分から31分になるように、且つ、前記シクロヘキサノンのメインピークのピークスタートからピークエンドが2分になるように調整し、シクロヘキサノンのピークを除くメインピークのピークトップが18分から19分になるように、且つ、前記シクロヘキサノンのピークを除くメインピークのピークスタートからピークエンドまでが2分から4分30秒となる条件で、各成分(a)〜(c);
(a)メインピークで表される成分;
(b)メインピークにおけるリテンションタイムが遅い時間側の極小値を基準にし、それよりも遅い時間に検出されるGPCピークで表される成分;
(c)メインピークにおけるリテンションタイムが早い時間側の極小値を基準にし、それよりも早い時間に検出されるGPCピークで表される成分;
を検出した。
【0110】
[誘電特性の評価]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いてポリイミドフィルム(硬化後のポリイミドフィルム)を温度;23℃、湿度;50%の条件下で、24時間放置した後、周波数10GHzにおける誘電率(ε
1)および誘電正接(Tanδ
1)を測定した。また、23℃、24時間吸水後、ポリイミドフィルム(硬化後のポリイミドフィルム)の周波数10GHzにおける誘電率(ε
2)および誘電正接(Tanδ
2)を測定した。
【0111】
[吸湿率の測定]
ポリイミドフィルムの試験片(幅4cm×長さ25cm)を2枚用意し、80℃で1時間乾燥した。乾燥後直ちに23℃/50%RHの恒温恒湿室に入れ、24時間以上静置し、その前後の重量変化から次式により求めた。
吸湿率(重量%)=[(吸湿後重量−乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
【0112】
[吸水率の測定]
ポリイミドフィルムの試験片(幅4cm×長さ25cm)を2枚用意し、80℃で1時間乾燥した。乾燥後直ちに23℃の純水に入れ、24時間以上静置し、その前後の重量変化から次式により求めた。
吸水率(重量%)=[(吸水後重量−乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
【0113】
[ガラス転移温度(Tg)及び貯蔵弾性率]
ガラス転移温度(Tg)及び貯蔵弾性率は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行った。弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。
【0114】
[引張り弾性率]
引張り弾性率は、テンションテスター(オリエンテック社製、商品名テンシロン)を用いて、幅12.7mm×長さ127mmの試験片を用い、50mm/minで引張り試験を行い、25℃における引張り弾性率を求めた。
【0115】
[ハンダ耐熱試験(乾燥)]
ポリイミド銅張積層板(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名:エスパネックスMB12−25−12UEG)を回路加工して、配線幅/配線間隔(L/S)=1mm/1mmの回路が形成されたプリント基板を用意した。試験片の接着剤面をプリント基板の配線の上に置き、温度160℃、圧力3.5MPa、時間60分間の条件でプレスした。この銅箔付きの試験片を105℃で乾燥した後、各評価温度に設定したハンダ浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。耐熱性は不具合が生じない上限の温度で表現し、例えば「320℃」は320℃のハンダ浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
【0116】
[ハンダ耐熱試験(吸湿)]
ポリイミド銅張積層板(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名:エスパネックスMB12−25−12UEG)を回路加工して、配線幅/配線間隔(L/S)=1mm/1mmの回路が形成されたプリント基板を用意した。試験片の接着剤面をプリント基板の配線の上に置き、温度160℃、圧力3.5MPa、時間60分の条件でプレスした。この銅箔付きの試験片を40℃、相対湿度80%で72時間放置した後、各評価温度に設定したハンダ浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。耐熱性は不具合が生じない上限の温度で表現し、例えば「260℃」は260℃のハンダ浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
【0117】
[ピール強度の測定]
ピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE−10)を用いて、幅1mmのサンプル(基材/樹脂層で構成された積層体)の樹脂層側を両面テープによりアルミ板に固定し、基材を180°方向に50mm/分の速度で、樹脂層と基材を剥離するときの力を求めた。
【0118】
[反りの評価]
厚さ25μmのポリイミドフィルム材(東レ・デュポン社製、商品名;カプトン100EN)の上、又は12μmの銅箔の上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにポリイミド溶液を塗布し、試験片を作製した。この状態でポリイミドフィルム材又は銅箔が下面になるように置き、試験片の4隅の反り上がっている高さの平均を測定し、5mm以下を「良」、5mmを超える場合を「不可」とした。
【0119】
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
DDA1:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(a成分;98.2重量%、b成分:0%、c成分;1.9%、アミン価:206mg KOH/g)
DDA2:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(a成分;99.2重量%、b成分:0%、c成分;0.8%、アミン価:210mg KOH/g)
APB:1,3-ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
N‐12:ドデカン二酸ジヒドラジド
NMP:N‐メチル‐2‐ピロリドン
PX‐200:リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名;PX‐200、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;9.0%)
PX‐202:リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名;PX‐202、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;8.1%)
SR‐3000:リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名;SR‐3000、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;7.0%)
DA‐850:リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名;DAIGUARD‐850、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;16.0%以上)
TPP(大八化学工業株式会社製、商品名;TPP、非ハロゲンリン酸エステル、リン含有量;9.5%)
TCP(大八化学工業株式会社製、商品名;TCP、非ハロゲンリン酸エステル、リン含有量;8.4%)
TXP(大八化学工業株式会社製、商品名;TXP、非ハロゲンリン酸エステル、リン含有量;7.6%)
CR‐733(大八化学工業株式会社製、商品名;CR‐733S、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;10.9%)
CR‐741(大八化学工業株式会社製、商品名;CR‐741、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;8.9%)
CM‐6R:リン・窒素化合物(大和化学工業株式会社製、商品名;フランCM‐6R、平均粒径5μm)
MC−6000:(日産化学株式会社製、商品名;MC−6000、非ハロゲンメラミンシアヌレート)
なお、上記DDA1及びDDA2において、b成分、c成分の「%」は、GPC測定におけるクロマトグラムの面積パーセントを意味する。また、DDA1及びDDA2の分子量は下記式(1)により算出した。
分子量=56.1×2×1000/アミン価・・・(1)
【0120】
(合成例1)
1000mlのセパラブルフラスコに、55.51gのBTDA(0.1721モル)、94.49gのDDA1(0.1735モル)、210gのNMP及び140gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、10時間加熱、攪拌し、125gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液a(固形分濃度;30重量%、重量平均分子量;82,900、アミン価;206mgKOH/g)を調製した。
【0121】
(合成例2〜3)
表1に示す原料組成とした他は、合成例1と同様にしてポリイミド溶液b〜cを調製した。
【0122】
【表1】
【0123】
(作製例1)
合成例1で得られたポリイミド溶液aの169.49g(固形分として50g)に2.7gのN−12(0.0105モル;BTDAのケトン基1モルに対して第1級のアミノ基が0.35モルに相当)を配合し、6.0gのNMPを加えて希釈し、更に1時間攪拌することでポリイミド溶液1aを得た。
【0124】
得られたポリイミド溶液1aを離型PETフィルム(東山フィルム社製、商品名;HY−S05、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行って離型PETフィルムから剥離することによって、厚さが25μmのポリイミドフィルム1a’を調製した。このポリイミドフィルム1a’を温度160℃、圧力3.5MPa、時間60分の条件でプレスを行い、ポリイミドフィルム1aを得た。
ポリイミドフィルム1aの各種評価結果は以下のとおりである。
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0024、誘電率(ε
2);2.7、誘電正接(Tanδ
2);0.0034、吸湿率;0.07%、吸水率;0.6%、Tg;54℃、200℃貯蔵弾性率;5.0×10
6Pa、引張り弾性率;0.7GPa、ハンダ耐熱(乾燥);280℃、ハンダ耐熱(吸湿);260℃、ピール強度;1.0kN/m以上
【0125】
(作製例2、3)
ポリイミド溶液aに代えて、ポリイミド溶液b、cを使用した以外、作製例1と同様にしてポリイミド溶液1b、1c及びポリイミドフィルム1b、1cを得た。
ポリイミドフィルム1b、1cの各種評価結果は以下のとおりである。
<ポリイミドフィルム1b>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0024、誘電率(ε
2);2.7、誘電正接(Tanδ
2);0.0034、吸湿率;0.07%、吸水率;0.2%、Tg;54℃、200℃貯蔵弾性率;未測定、引張り弾性率;0.7GPa
<ポリイミドフィルム1c>
誘電率(ε
1);2.9、誘電正接(Tanδ
1);0.0028、誘電率(ε
2);2.9、誘電正接(Tanδ
2);0.0052、吸湿率;0.17%、吸水率;0.7%、Tg;106℃、200℃貯蔵弾性率;1.0×10
6Pa未満、引張り弾性率;1.4GPa
【0126】
[実施例1]
作製例1で得られたポリイミド溶液1a(固形分として100重量部)に対して、SR‐3000の10重量部を配合し、ポリイミド組成物1を得た。得られたポリイミド組成物1を離型PETフィルムの片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行って離型PETフィルムから剥離することによって、厚さが25μmのポリイミドフィルム1’を調製した。
このポリイミドフィルム1’をオーブンにて温度160℃、2時間の条件で加熱し、ポリイミドフィルム1を得た。
ポリイミドフィルム1の各種評価結果は以下のとおりである。
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0022
【0127】
[実施例2〜16]
表2に記載の割合(重量部)で各成分を配合し、実施例1と同様にして、ポリイミド組成物2〜16を得た。なお、表2中の「DDA組成物」は、ダイマージアミン組成物を意味する(表3において同様である)。
【0128】
【表2】
【0129】
得られたポリイミド組成物2〜16を使用し、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム2〜16を調製した。
ポリイミドフィルム2〜16の各種評価結果は以下のとおりである。
<ポリイミドフィルム2>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0022、引張り弾性率;0.7GPa、ピール強度;1.4kN/m
<ポリイミドフィルム3>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0020、誘電率(ε
2);2.6、誘電正接(Tanδ
2);0.0021、吸水率;0.1%、Tg;54℃、引張り弾性率;0.7GPa、ピール強度;1.4kN/m
<ポリイミドフィルム4>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0024、引張り弾性率;0.5GPa、ピール強度;1.5kN/m
<ポリイミドフィルム5>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0022、引張り弾性率;0.7GPa
<ポリイミドフィルム6>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0023、引張り弾性率;0.1GPa、ピール強度;1.6kN/m
<ポリイミドフィルム7>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0022、吸水率;0.29%、引張り弾性率;0.5GPa、ピール強度;1.6kN/m
<ポリイミドフィルム8>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0021、吸水率;0.54%、引張り弾性率;0.4GPa、ピール強度;1.3kN/m
<ポリイミドフィルム9>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0021、吸水率;0.91%、引張り弾性率;0.3GPa、ピール強度;1.4kN/m
<ポリイミドフィルム10>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0020、ピール強度;0.7kN/m
<ポリイミドフィルム11>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0022
<ポリイミドフィルム12>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0021
<ポリイミドフィルム13>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0020
<ポリイミドフィルム14>
誘電率(ε
1);2.8、誘電正接(Tanδ
1);0.0027
<ポリイミドフィルム15>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0026
<ポリイミドフィルム16>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0025
【0130】
[参考例1〜18]
表3に記載の割合(重量部)で各成分を配合し、実施例1と同様にして、ポリイミド組成物17〜34を得た。
【0131】
【表3】
【0132】
得られたポリイミド組成物17〜34を使用し、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム17〜34を調製した。
ポリイミドフィルム17〜34の各種評価結果は以下のとおりである。
<ポリイミドフィルム17>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0024、誘電率(ε
2);2.7、誘電正接(Tanδ
2);0.0034、吸水率;0.2%、引張り弾性率;0.9GPa、ピール強度;1.2kN/m
<ポリイミドフィルム18>
誘電率(ε
1);2.9、誘電正接(Tanδ
1);0.0025、引張り弾性率;0.6GPa、ピール強度;0.4kN/m
<ポリイミドフィルム19>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0031、引張り弾性率;0.3GPa
<ポリイミドフィルム20>
誘電率(ε
1);2.8、誘電正接(Tanδ
1);0.0041、引張り弾性率;0.1GPa
<ポリイミドフィルム21>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0028、引張り弾性率;0.2GPa
<ポリイミドフィルム22>
誘電率(ε
1);2.8、誘電正接(Tanδ
1);0.0033、引張り弾性率;0.0GPa
<ポリイミドフィルム23>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0026、引張り弾性率;0.3GPa
<ポリイミドフィルム24>
誘電率(ε
1);2.8、誘電正接(Tanδ
1);0.0028、引張り弾性率;0.0GPa
<ポリイミドフィルム25>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0028、引張り弾性率;0.3GPa
<ポリイミドフィルム26>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0034、引張り弾性率;0.1GPa
<ポリイミドフィルム27>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0027、引張り弾性率;0.4GPa
<ポリイミドフィルム28>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0031、引張り弾性率;0.2GPa
<ポリイミドフィルム29>
誘電率(ε
1);2.7、誘電正接(Tanδ
1);0.0031
<ポリイミドフィルム30>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0027
<ポリイミドフィルム31>
誘電率(ε
1);2.8、誘電正接(Tanδ
1);0.0035
<ポリイミドフィルム32>
誘電率(ε
1);2.9、誘電正接(Tanδ
1);0.0031
<ポリイミドフィルム33>
誘電率(ε
1);3.0、誘電正接(Tanδ
1);0.0140
<ポリイミドフィルム34>
誘電率(ε
1);2.6、誘電正接(Tanδ
1);0.0021
【0133】
以上の結果をまとめて、ポリイミドフィルム1〜34の誘電特性の評価結果を表4及び表5に示す。
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
[実施例17]
表2に記載の割合(重量部)で各成分を配合し、実施例1と同様にして、調製したポリイミド組成物2をポリイミドフィルム材P1(東レ・デュポン社製、商品名;カプトン50EN、周波数10GHzにおける誘電率=3.6、周波数10GHzにおける誘電正接=0.0084、縦×横×厚さ=200mm×300mm×12μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが25μmのカバーレイフィルム17を得た。得られたカバーレイフィルム17の反りの状態は「良」であった。
【0137】
[実施例18]
カバーレイフィルム17の接着剤層側に離型PETフィルムが接するように積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した。その後、離型PETフィルムが圧着された状態のカバーレイフィルム17のポリイミドフィルム材P1側にポリイミド組成物2を乾燥後の厚みが25μmになるように塗布して80℃で15分間乾燥を行った。そしてポリイミド組成物2を塗布乾燥した面に離型PETフィルムが接するように積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着して、ポリイミドフィルム材P1の両面に接着剤層を備えた積層体18を得た。
【0138】
[実施例19]
ポリイミド組成物2を厚み12μmの電解銅箔の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが25μmの樹脂付き銅箔19を得た。得られた樹脂付き銅箔19の反りの状態は「良」であった。
【0139】
[実施例20]
ポリイミド組成物2を厚み12μmの電解銅箔の片面に塗布し、80℃で30分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが50μmの樹脂付き銅箔20を得た。得られた樹脂付き銅箔20の反りの状態は「良」であった。
【0140】
[実施例21]
樹脂付き銅箔19の接着剤層の表面に、更にポリイミド組成物2を塗布し、80℃30分間乾燥を行い、接着剤層の合計の厚さが100μmの樹脂付き銅箔21を得た。得られた樹脂付き銅箔21の反りの状態は「良」であった。
【0141】
[実施例22]
ポリイミド組成物2を離型PETフィルムの片面に塗布し、80℃で30分間乾燥を行い、離型PETフィルムから剥離することによって、厚さが50μmのポリイミドフィルム35を得た。
【0142】
[実施例23]
厚み12μmの電解銅箔上に、ポリイミドフィルム2、ポリイミドフィルム材P2(デュポン社製、商品名;カプトン100−EN、厚み25μm、周波数10GHzにおける誘電率=3.6、周波数10GHzにおける誘電正接=0.0084)、ポリイミドフィルム2及び厚み12μmの電解銅箔を順次積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で4時間熱処理して、銅張積層板23を得た。
【0143】
[実施例24]
厚み12μmの電解銅箔上に、カバーレイフィルム17の接着剤層側が銅箔に接するよう積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で2時間熱処理して、銅張積層板24を得た。
【0144】
[実施例25]
厚み12μmの圧延銅箔上に、ポリイミドフィルム2を積層し、カバーレイフィルム17のポリイミドフィルム材P1側がポリイミドフィルム2に接するように積層し、更にカバーレイフィルム17の接着剤層側に厚み12μmの圧延銅箔を順次積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で2時間熱処理して、銅張積層板25を得た。
【0145】
[実施例26]
樹脂付き銅箔19を2枚用意し、2枚の樹脂付き銅箔19の接着剤層側にポリイミドフィルム材P3(デュポン社製、商品名;カプトン200−EN、厚み50μm、周波数10GHzにおける誘電率=3.6、周波数10GHzにおける誘電正接=0.0084)が接するように積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、5分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で4時間熱処理して、銅張積層板26を得た。
【0146】
[実施例27]
ポリイミド組成物2を片面銅張積層板M1(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;エスパネックスMC12−25−00UEM、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の樹脂層側の面に塗布し、80℃で30分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが50μmの接着剤付銅張積層板27を得た。接着剤付銅張積層板27の接着剤層側に、片面銅張積層板M1の樹脂層側の面が接するように積層して、小型精密プレス機を用いて温度160℃、圧力4.0MPa、120分間圧着して、銅張積層板27を得た。
【0147】
[実施例28]
片面銅張積層板M1の樹脂層側に、ポリイミドフィルム2を積層し、更にその上に片面銅張積層板M1の樹脂層側がポリイミドフィルム2と接するように積層して、小型精密プレス機を用いて温度160℃、圧力4.0MPa、120分間圧着して、銅張積層板28を得た。
【0148】
[実施例29]
ポリイミド組成物2を離型PETフィルムの片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層を離型PETフィルムから剥離することによって、厚さが15μmのポリイミドフィルム36を得た。
【0149】
[実施例30]
両面銅張積層板M2(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;エスパネックスMB12−25−00UEG)を準備し、一方の面の銅箔にエッチングによる回路加工を施し、導体回路層を形成した配線基板1Aを得た。
【0150】
両面銅張積層板M2の一方の面の銅箔をエッチング除去し、銅張積層板1Bを得た。
【0151】
配線基板1Aの導体回路層側の面と、銅張積層板1Bの樹脂層側の面との間にポリイミドフィルム2を挟み、積層した状態で、温度160℃、圧力4.0MPa、120分間熱圧着して、多層回路基板30を得た。
【0152】
[実施例31]
液晶ポリマーフィルム(クラレ社製、商品名;CT−Z、厚さ;50μm、CTE;18ppm/K、熱変形温度;300℃、周波数10GHzにおける誘電率=3.40、周波数10GHzにおける誘電正接=0.0022)を絶縁性基材とし、その両面に厚さ18μmの電解銅箔が設けられた銅張積層板1Cを準備し、一方の面の銅箔にエッチングによる回路加工を施し、導体回路層を形成した配線基板1Cを得た。
【0153】
銅張積層板1Cの片面の銅箔をエッチング除去し、銅張積層板1Dを得た。
【0154】
配線基板1Cの導体回路層側の面と、銅張積層板1Dの絶縁性基材層側の面との間にポリイミドフィルム2を挟み、積層した状態で、温度160℃、圧力4.0MPa、120分間熱圧着して、多層回路基板31を得た。
【0155】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。