特開2021-74215(P2021-74215A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-74215(P2021-74215A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】樹脂フォームおよび塗布液
(51)【国際特許分類】
   A47G 7/02 20060101AFI20210423BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20210423BHJP
   C08J 9/40 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
   A47G7/02 J
   A01G9/02 101U
   C08J9/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-202371(P2019-202371)
(22)【出願日】2019年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】519116517
【氏名又は名称】有限会社プアラニリミテッドカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】塚田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】望月 寛子
【テーマコード(参考)】
2B327
4F074
【Fターム(参考)】
2B327NC01
2B327NC02
2B327NC21
2B327NC25
2B327NC43
2B327NC44
4F074AA32
4F074AA78
4F074AA82
4F074CE16
4F074CE44
4F074CE66
4F074CE77
4F074CE98
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】本発明は、微粉の発生を抑制し、特にフラワーアレンジメントの作製作業をより快適に行うことができる樹脂フォームおよび塗布液を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂フォーム基材の表面の少なくとも一部が、カルボキシメチルセルロース、シリコーンオイル、デキストリン、ケイ酸ナトリウムおよび水溶性澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含有する被覆材により被覆されている、樹脂フォーム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フォーム基材の表面の少なくとも一部が、カルボキシメチルセルロース、シリコーンオイル、デキストリン、ケイ酸ナトリウムおよび水溶性澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含有する被覆材により被覆されている、樹脂フォーム。
【請求項2】
前記被覆材はカルボキシメチルセルロースを含み、前記カルボキシメチルセルロースの被覆量が0.0002〜0.002g/cmである、請求項1に記載の樹脂フォーム。
【請求項3】
前記被覆材はシリコーンオイルを含み、前記シリコーンオイルの被覆量が0.002〜0.02g/cmである、請求項1に記載の樹脂フォーム。
【請求項4】
前記樹脂フォーム基材は、フェノール樹脂、ウレタン樹脂およびポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1種の合成樹脂の発泡体からなる、請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂フォーム。
【請求項5】
樹脂フォーム基材を表面処理するための塗布液であって、
水と、カルボキシメチルセルロース、シリコーンオイル、デキストリン、ケイ酸ナトリウムおよび水溶性澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の物質とを含有する水溶液である、塗布液。
【請求項6】
前記物質は、カルボキシメチルセルロースであり、前記カルボキシメチルセルロースの含有量は、前記水100質量部に対して0.5〜3質量部である、請求項5に記載の塗布液。
【請求項7】
前記物質は、シリコーンオイルであり、前記シリコーンオイルの含有量は、前記水100質量部に対して5〜25質量部である、請求項5に記載の塗布液。
【請求項8】
前記物質は、デキストリンであり、前記デキストリンの含有量は、前記水100質量部に対して5〜25質量部である、請求項5に記載の塗布液。
【請求項9】
前記物質は、ケイ酸ナトリウムであり、前記ケイ酸ナトリウムの含有量は、前記水100質量部に対して5〜25質量部である、請求項5に記載の塗布液。
【請求項10】
前記物質は、水溶性澱粉であり、前記水溶性澱粉の含有量は、前記水100質量部に対して15〜30質量部である、請求項5に記載の塗布液。
【請求項11】
前記水は、塩素イオンを15〜30ppm含有し、pH5〜7に調整された電解水である、請求項5乃至10のいずれかに記載の塗布液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フォーム、およびその樹脂フォームを表面処理するための塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、花材をカゴなどの容器に盛って装飾する技法およびその作製物として、フラワーアレンジメントが知られている。フラワーアレンジメントでは、生け花(華道)において用いられる剣山などの花留めの代わりに、フェノール樹脂またはウレタン樹脂などを発泡状または多孔質形状に成形した樹脂フォームが使用される。この樹脂フォームは、吸水性を有しており、切断加工し易く、花材を挿して固定することができる程度の硬さである。
【0003】
樹脂フォームに関する技術として、例えば、特許文献1には、フラワーアレンジメント装置に備えられるものであって、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレンなどの合成樹脂の発泡体からなり、花の茎部などの植物樹枝を容易に穿刺できる程度の脆さと、任意の角度で穿刺させた状態を保持しながら該植物樹枝を支持する程度の硬さを有する素材からなる支持ブロック体が、開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、発泡ポリウレタン樹脂または発泡ポリエチレン樹脂などからなる連続気泡の合成スポンジからなり、上面側に不織布層とスリットを有する所定形状の基体部を備えた生け花用支持具が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3117914号公報
【特許文献2】特開2019−047857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の樹脂フォームは、乾燥状態のまま手に持った場合など、持ったときの摩擦などにより外表面の一部が微粉となって剥がれ落ちる。そして、その発生した微粉が舞い散ってあらゆるところに付着するため、作業者の手、衣服、または作業部屋などを汚してしまうという不都合がある。例えば、生花店やフラワーアレンジメント業者などは、通常、乾燥状態の樹脂フォームをカゴなどの各容器に適した形状および大きさに予めカットし、カット後に吸水させた樹脂フォームに花材を挿して装飾していく。このとき、乾燥状態の樹脂フォームのカット面からは、作業をしている机の上に明らかに視認できる程度の量の微粉がこぼれ落ちており、作業環境を悪化させているという実情がある。
【0007】
また、最近では、フラワーアレンジメントに使用される花材として、生花以外にも、造花、プリザーブドフラワーまたはドライフラワーなどの人工植物を使用することも増えてきている。しかし、花材として人工植物を使用した場合、生花とは異なり水分が必要とされないため、樹脂フォームを乾燥状態のまま使用することとなり、上述の微粉の問題が顕在化する。
【0008】
一方、乾燥状態のまま使用することを前提とした造花専用の樹脂フォームも、複数業者から製造販売されており、一応は存在する。しかし、造花専用の樹脂フォームにおいても、微粉が発生しにくいと謳われてはいるが、その抑制効果は不十分であり、到底満足できる域まで達していない。実際に、それら造花専用の樹脂フォームを手に持っただけでも、微粉が指に付いてしまう程である。また、花材を長時間固定する必要があるため、従来の樹脂フォームよりも硬く設計されており、力の弱い作業者にとっては、装飾作業の際にストレスを感じることもあり得る。さらに、造花専用の樹脂フォームは、従来の樹脂フォームと比べて高価であり、コストパフォーマンスの面でも劣っている。
【0009】
さらに、最近では、園芸療法の一環として、フラワーアレンジメントを利用した認知リハビリテーションが注目されており、医療や福祉の現場でフラワーアレンジメントを行う機会も増加している。そのため、特に、医療や福祉の現場では、呼吸器系の疾患患者への配慮からも、微粉の発生を極力抑制した樹脂フォームが必要とされている。
【0010】
そこで、本発明は、微粉の発生を抑制し、特にフラワーアレンジメントの作製作業をより快適に行うことができる樹脂フォームおよび塗布液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
[1] 樹脂フォーム基材の表面の少なくとも一部が、カルボキシメチルセルロース、シリコーンオイル、デキストリン、ケイ酸ナトリウムおよび水溶性澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含有する被覆材により被覆されている、樹脂フォーム。
[2] 上記被覆材はカルボキシメチルセルロースを含み、上記カルボキシメチルセルロースの被覆量が0.0002〜0.002g/cmである、[1]に記載の樹脂フォーム。
[3] 上記被覆材はシリコーンオイルを含み、上記シリコーンオイルの被覆量が0.002〜0.02g/cmである、[1]に記載の樹脂フォーム。
[4] 上記樹脂フォーム基材は、フェノール樹脂、ウレタン樹脂およびポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1種の合成樹脂の発泡体からなる、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂フォーム。
【0013】
[5] 樹脂フォーム基材を表面処理するための塗布液であって、水と、カルボキシメチルセルロース、シリコーンオイル、デキストリン、ケイ酸ナトリウムおよび水溶性澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の物質とを含有する水溶液である、塗布液。
[6] 上記物質は、カルボキシメチルセルロースであり、上記カルボキシメチルセルロースの含有量は、上記水100質量部に対して0.5〜3質量部である、[5]に記載の塗布液。
[7] 上記物質は、シリコーンオイルであり、上記シリコーンオイルの含有量は、上記水100質量部に対して5〜25質量部である、[5]に記載の塗布液。
[8] 上記物質は、デキストリンであり、上記デキストリンの含有量は、上記水100質量部に対して5〜25質量部である、[5]に記載の塗布液。
[9] 上記物質は、ケイ酸ナトリウムであり、上記ケイ酸ナトリウムの含有量は、上記水100質量部に対して5〜25質量部である、[5]に記載の塗布液。
[10] 上記物質は、水溶性澱粉であり、上記水溶性澱粉の含有量は、上記水100質量部に対して15〜30質量部である、[5]に記載の塗布液。
[11] 上記水は、塩素イオンを15〜30ppm含有し、pH5〜7に調整された電解水である、[5]〜[10]のいずれかに記載の塗布液。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微粉の発生を抑制し、特にフラワーアレンジメントの作製作業をより快適に行うことができる樹脂フォームおよび塗布液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
[樹脂フォーム]
本発明の樹脂フォームは、樹脂フォーム基材の表面の少なくとも一部が、カルボキシメチルセルロース、シリコーンオイル、デキストリン、ケイ酸ナトリウムおよび水溶性澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含有する被覆材により被覆されている、樹脂フォームである。本発明の樹脂フォームは、特に、フラワーアレンジメントの土台として用いられる他、交通用緩衝材、カセット燃料の充填素材または育苗用マット等の培地素材等としても用いることができる。
【0017】
ここで、フラワーアレンジメントとは、花材をカゴなどの容器に盛って装飾する技法およびその作製物をいう。一般的に、フラワーアレンジメントにおいては、容器内に収容または容器上に載置などした樹脂フォームに、一本または複数本の花材を挿していくことによって、容器に花材が飾り付けられる。
【0018】
また、花材とは、生花の他にも、造花、プリザーブドフラワーまたはドライフラワーなどの人工植物を含む概念をいう。すなわち、本発明の樹脂フォームは、生花および人工植物のどちらを用いたフラワーアレンジメントにも使用できるものである。
また、花材は、花冠を有するものに限らず、植物または人工植物の茎、葉または根などであっても花材として用いることができる。
【0019】
花材が人工植物の場合、茎などの樹脂フォームに挿す部位は、例えば、金属製のワイヤーなどからなる芯材の周囲に紙粘土や樹脂粘土などを巻き付けることにより構成されている。
【0020】
上述した被覆材で被覆される対象、すなわち、樹脂フォーム基材は特に限定されないが、合成樹脂からなる発泡体(以下、「合成樹脂発泡体」と略す。)であることが好ましい。
また、樹脂フォーム(厳密には、外表面を被覆されている樹脂フォーム基材。)には、水分を吸水させることも可能である。
【0021】
樹脂フォーム基材を構成する合成樹脂としては、例えば、フェノール樹脂(phenol formaldehyde resins、phenolic resins)、ウレタン樹脂(polyurethane)およびポリスチレン(polystyrene)などが挙げられる。
【0022】
また、被覆材を構成する物質としては、上述した通り、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シリコーンオイル(silicone oil)、デキストリン(dextrin)、ケイ酸ナトリウム(sodium silicate)および水溶性澱粉(soluble starch)からなる群から選択される少なくとも1種の物質を用いる。
【0023】
ここで、カルボキシメチルセルロースは、例えば、カルボキシメチルセルロースの塩であることが好ましい。
カルボキシメチルセルロースの塩としては、例えば、カルボキシメチルセルロース金属塩が挙げられ、具体的には、安全性に優れる理由から、ナトリウム塩のカルボキシメチルセルロースナトリウム(別名CMC−Naまたは繊維素グリコール酸ナトリウム)が好適に挙げられる。
【0024】
また、シリコーンオイルは、ハンドクリームまたは頭髪用コンディショナーなどの化粧品にも利用される材料であり、カルボキシメチルセルロースと同様、人体に対して安全な物質である。
【0025】
被覆材の被覆量は、その成分にもよるが、カルボキシメチルセルロースの場合は、0.0002〜0.002g/cmであることが好ましく、0.0003〜0.0015g/cmであることがより好ましい。
シリコーンオイルの場合は、0.002〜0.02g/cmであることが好ましく、0.005〜0.015g/cmであることがより好ましい。
被覆量が上述した範囲であれば、樹脂フォームの外表面がベタつくこともなく、その外表面からの微粉発生を抑制する効果がより向上する。特に、被覆材の成分としてカルボキシメチルセルロースを用いた場合は、ベタつきをより抑制することができ、触り心地が良いため、好適である。
【0026】
ここで、上述した被覆量は、被覆材を被覆する前の樹脂フォーム基材と被覆材を被覆した後の樹脂フォームとの質量の差分を、樹脂フォームの表面積で除することにより算出した値をいう。
なお、被覆量は、樹脂フォームの表面を水などの溶媒で洗い流して所定時間乾燥させた後、洗い流す前の樹脂フォームと洗い流した後の樹脂フォーム基材との質量の差分をもとに算出してもよい。また、その洗い流した溶媒の中に含まれる上記成分の質量から算出した値であってもよい。さらに、樹脂フォームの表面を含む部分を所定面積(例えば1cm)切り取って、その切り取った部分に含まれる上記成分の質量をもとに算出した値であってもよい。
【0027】
樹脂フォームの硬さは、樹脂フォーム基材である合成樹脂発泡体の素材または密度などを変更することによって任意に設定することができる。具体的には、特別な道具を使用せずに人の力で花材を挿すことができ、且つ、その挿した花材を固定した状態で維持できる程度の硬さに設定することが好ましい。このような硬さであれば、カッターナイフなどで簡単に切断することができるため、作業者が任意の形状に加工することも容易である。なお、樹脂フォーム基材の外表面を被覆する被覆材は、非常に薄く形成されているため、被覆材により樹脂フォームが硬くなることもなく、樹脂フォームに花材を挿す際または切断する際に影響することもない。
【0028】
この樹脂フォームの製造方法としては、例えば、樹脂フォーム基材として任意の大きさに成形または切断した合成樹脂発泡体の外表面に対し、スプレーなどにより被覆材を含む塗布液を噴霧し、その後所定時間乾燥させて作成する方法が挙げられる。
【0029】
スプレーは、電動ポンプなどを駆動源とした電動スプレー、缶内の高圧ガスを利用した缶スプレーまたは外部の空気圧を利用したエアスプレーなどのいずれであってもよい。スプレーによる塗布液の噴霧回数は、1回でもよいし、複数回に分けてもよい。複数回に分ける場合、例えば、立方体に成形した樹脂フォーム基材に対しては、30cm程度離れた位置から、上面を5回、側面および底面を3回ずつに分けて満遍なく噴霧すると好適である。このとき、上面の噴霧回数が他の面よりも多い(塗布量が多い)のは、上面により多くの花材を挿すことを想定しているためである。
【0030】
また、噴霧後の乾燥は、熱風乾燥機、近赤外線ヒーターまたは遠赤外線ヒーターなどを利用して人工的に乾燥させる強制乾燥であってもよいし、常温の空気中でそのまま所定時間放置して乾燥させる自然乾燥であってもよい。なお、乾燥時には、樹脂フォームを網などの上に載せて乾燥させることにより、底面も十分に乾燥させることができるので好適である。
【0031】
なお、被覆材の形成方法は、スプレーなどにより塗布液を樹脂フォーム基材に噴霧する方法に限定されない。他の方法としては、例えば、塗布液を刷毛などで樹脂フォーム基材の外表面に塗った後乾燥させる方法であってもよい。また、樹脂フォーム基材を塗布液に所定時間含浸させた後乾燥させる方法であってもよい。
【0032】
[塗布液]
本発明の塗布液は、樹脂フォーム基材を表面処理するための塗布液であって、水と、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シリコーンオイル(silicone oil)、デキストリン(dextrin)、ケイ酸ナトリウム(sodium silicate)および水溶性澱粉(soluble starch)からなる群から選択される少なくとも1種の物質とを含有する水溶液である、塗布液である。
この塗布液は、樹脂フォーム基材に付着して乾燥した後は樹脂フォームの被覆材部分となるものであるため、被覆材を構成する物質と同様の物質を含有する。
【0033】
塗布液の濃度は、低濃度では被覆材として樹脂フォームの外表面を被覆したときに微粉を抑えられない一方、高濃度過ぎると噴霧する際にスプレーノズルが詰まったり、乾燥後も樹脂フォーム自体にベタつきが生じてしまったりするなどという理由から、それぞれの物質に応じて以下の濃度が好適である。
すなわち、カルボキシメチルセルロースの場合は、水100質量部に対して0.5〜3質量部であることが好ましく、0.75〜1質量部であることがより好ましい。
シリコーンオイルの場合は、水100質量部に対して5〜25質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。
デキストリンの場合は、水100質量部に対して5〜25質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。
ケイ酸ナトリウムの場合は、水100質量部に対して5〜25質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。
水溶性澱粉の場合は、水100質量部に対して15〜30質量部であることが好ましい。
【0034】
塗布液に用いる水は特に限定されない。例えば、水道水、蒸留水、精製水または電解水などをコスト面なども考慮しつつ適宜選択して使用することができる。中でも、例えば、塩素イオン15〜30ppmを含有しpH5〜7程度に調整された弱酸性電解水(微酸性電解水)が好ましい。弱酸性電解水は高い殺菌効果が認められているため、溶媒としてこの弱酸性電解水を用いることにより、防腐剤などを別途添加せずとも、汚れ、雑菌の繁殖またはカビの発生などを防止することができるため衛生的である。そのため、特に、医療や福祉の現場などでも安心して使用することができ、後述する園芸療法で利用する場合などにも好適である。
【0035】
塗布液は、上述した任意の物質以外に、さらに他の成分を含んでいてもよい。ここでいう他の成分としては、例えば、着色料、肥料、界面活性剤、凍結防止剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤などが挙げられる。他の成分の種類、および、含有量は特に限定されず、目的に応じて選択可能である。
【0036】
上記構成からなる本発明の樹脂フォームによれば、微粉の発生を好適に抑制することができる。そのため、特に、フラワーアレンジメントの土台として用いれば、フラワーアレンジメントの作製作業時に作業者の手、衣服、または作業部屋などを汚すこともなく、フラワーアレンジメントの作製作業を快適に行うことができる。
また、本発明の樹脂フォームは、樹脂フォーム基材の外表面に塗布液を噴霧などするだけなので、従来の造花専用の樹脂フォームと比べて安価に製造することができ、コストパフォーマンスの良い樹脂フォームを提供することができる。
【0037】
微粉発生を抑制するという本発明の効果は、樹脂フォームが乾燥状態のときにより発揮される。すなわち、従来の樹脂フォームでは、乾燥状態のときには微粉が発生し易かったが、本発明の樹脂フォームであれば、乾燥状態のときでさえも殆ど微粉を発生させることがない。そのため、乾燥状態で使用することを前提とした人工植物用の樹脂フォームとして特に好適である。また、吸水させて使用することを前提した生花用の樹脂フォームとしても、従来であれば微粉が発生していた樹脂フォームの製造時、流通時および使用前などの乾燥状態のときに微粉の発生を抑制することができるので、本発明の効果が発揮されることとなる。
【0038】
また、最近では、園芸療法の一環として、フラワーアレンジメントを利用した認知リハビリテーションも行われている。例えば、フラワーアレンジメントを利用した認知リハビリテーションでは、空間的なバランスに気を配りながら、花材を樹脂フォームの予め指定された箇所に挿して配置すること繰り返し行うことにより、脳機能の改善などを図っている。このように、デリケートな環境が必要とされる医療や福祉の現場でもフラワーアレンジメントを行なう機会が増加しているが、微粉の発生を抑制することができる本発明の樹脂フォームは、医療機関、福祉施設または教育施設などでも快適に使用することができるので、当該分野における利用についても、今後ますます期待される。
【0039】
さらにまた、本発明の塗布液は、生花店やフラワーアレンジメント業者などが業務用として使用すれば、業者の作業環境を改善させることができる。具体的には、塗布液を樹脂フォーム基材に噴霧しながら樹脂フォームを整形すれば、樹脂フォームの整形作業の際およびその後のフラワーアレンジメント作製作業の際に微粉の発生を抑制することができ、作業環境を改善することができる。なお、本発明の塗布液は、フラワーアレンジメント用の樹脂フォーム以外に対しても、微粉を抑制する手法として応用してもよい。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0041】
[試験1]
〔塗布液の調製〕
<塗布液A>
スプレー容器内に、弱酸性電解水(株式会社レドックステクノロジー製(販売元:フラワーアグリビジョナリージャパン株式会社)、クラルスアクア)と、カルボキシンメチルセルロースナトリウム(株式会社マルゴコーポレーション製)とを添加し、カルボキシンメチルセルロースの濃度が1.0%となる塗布液Aを調製した。
<塗布液B>
スプレー容器内に、弱酸性電解水(株式会社レドックステクノロジー製(販売元:フラワーアグリビジョナリージャパン株式会社)、クラルスアクア)と、カルボキシンメチルセルロースナトリウム(株式会社マルゴコーポレーション製)とを添加し、カルボキシンメチルセルロースの濃度が1.5%となる塗布液Bを調製した。
【0042】
〔樹脂フォーム〕
樹脂フォーム基材として、以下の発泡体を用いた。
フェノール樹脂発泡体(スミザースオアシスジャパン株式会社製、standard)〔形状:略立方体、表面積:約329cm
フェノール樹脂発泡体(スミザースオアシスジャパン株式会社製、soft)〔形状:略立方体、表面積:約329cm
フェノール樹脂発泡体(松村工芸株式会社製、supersoft)〔形状:略立法体、表面積:約329cm
【0043】
〔実施例1〜7〕
下記表1に示す樹脂フォーム基材の上面、側面および底面に対して、下記表1に示す質量となるように、下記表1に示す塗布液をスプレーで噴霧した。
ここで、実施例1および4においては、噴霧を2回行い、いずれも、2回目の噴霧は、1回目の噴霧から48時間後に行った。
また、1回目および2回目の噴霧ともに、上面に対してはスプレーを5回噴霧し、側面と底面に対してはスプレーを3回噴霧した。
なお、噴霧後の乾燥は、25℃の室内で自然乾燥させて行った。
また、被覆量の測定については、噴霧前の樹脂フォーム基材の質量と、最後の噴霧から72時間、25℃の室内で自然乾燥させた後の樹脂フォームの質量とから、質量の増加分を算出し、質量の増加分を樹脂フォームの表面積で除することにより算出した。
また、実施例1〜7は、いずれも2つのサンプルで行い、それぞれ、表1中に、「実施例1−1」および「実施例1−2」などと示した。
【0044】
〔比較例1〕
塗布液を用いた表面処理を行わず、フェノール樹脂発泡体(スミザースオアシスジャパン株式会社製、standard)〔形状:略立方体、表面積:329cm〕をそのまま下記評価に用いた。
【0045】
〔評価〕
実施例1〜7の表面処理後の樹脂フォームおよび比較例1の樹脂フォーム基材について、微粉の有無、ベタつき、および、挿し易さについて、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
評価は、5名の評価者により行った。
「微粉の有無」については、樹脂フォームおよび樹脂フォーム基材の表面を乾いた指で触って微粉が付着する程度を観察した。
「ベタつき」については、樹脂フォームおよび樹脂フォーム基材の表面を乾いた指で触ってベタつく程度を観察した。
「挿し易さ」については、机上に置いた樹脂フォームおよび樹脂フォーム基材に対し、人工植物を鉛直方向に20mm程度の深さまで挿す際における力の入れ具合を比較した。なお、ここでは、金属製の芯材(直径約1mm)の周囲に紙粘土を巻いて成る直径約4mm、長さ約100mmの棒状の茎部分を有する人工植物を用いた。
<微粉の有無>
1.5名の評価者中、5〜4名の評価者が指に微粉が付着しないと評価した場合
2.5名の評価者中、3〜2名の評価者が指に微粉が付着しないと評価した場合
3.5名の評価者中、1〜0名の評価者が指に微粉が付着しないと評価した場合、すなわち、4〜5名の評価者が指に微粉が付着すると評価した場合
<ベタつき>
1.5名の評価者中、5〜4名の評価者が指にベタつきを感じないと評価した場合
2.5名の評価者中、3〜2名の評価者が指にベタつきを感じないと評価した場合
3.5名の評価者中、1〜0名の評価者が指にベタつきを感じないと評価した場合、すなわち、4〜5名の評価者が指にベタつきを感じると評価した場合
<挿し易さ>
1.5名の評価者中、5〜4名の評価者が抵抗なく挿せると評価した場合
2.5名の評価者中、3〜2名の評価者が抵抗なく挿せると評価した場合
3.5名の評価者中、1〜0名の評価者が抵抗なく挿せると評価した場合、すなわち、4〜5名の評価者が力を入れなければ挿せないと評価した場合
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1に示す結果から、樹脂フォーム基材の表面の少なくとも一部が、カルボキシメチルセルロースで被覆されていると、ベタつき、および、挿し易さに影響を与えることなく、微粉の発生を抑制できることが分かった(実施例1〜7)。
【0048】
[試験2]
〔塗布液の調製〕
<塗布液X>
スプレー容器内に、弱酸性電解水(株式会社レドックステクノロジー製(販売元:フラワーアグリビジョナリージャパン株式会社)、クラルスアクア)と、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−96−350CS)とを添加し、ジメチルシリコーンオイルの濃度が20%となる塗布液Xを調製した。
<塗布液Y>
スプレー容器内に、弱酸性電解水(株式会社レドックステクノロジー製(販売元:フラワーアグリビジョナリージャパン株式会社)、クラルスアクア)と、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−96−350CS)とを添加し、ジメチルシリコーンオイルの濃度が10%となる塗布液Yを調製した。
<塗布液A>
スプレー容器内に、弱酸性電解水(株式会社レドックステクノロジー製(販売元:フラワーアグリビジョナリージャパン株式会社)、クラルスアクア)と、カルボキシンメチルセルロースナトリウム(株式会社マルゴコーポレーション製)とを添加し、カルボキシンメチルセルロースの濃度が1.0%となる塗布液Aを調製した。
<塗布液B>
スプレー容器内に、弱酸性電解水(株式会社レドックステクノロジー製(販売元:フラワーアグリビジョナリージャパン株式会社)、クラルスアクア)と、カルボキシンメチルセルロースナトリウム(株式会社マルゴコーポレーション製)とを添加し、カルボキシンメチルセルロースの濃度が1.5%となる塗布液Bを調製した。
【0049】
〔樹脂フォーム〕
樹脂フォーム基材として、以下の発泡体を用いた。
フェノール樹脂発泡体(スミザースオアシスジャパン株式会社製、standard)〔形状:略立方体、表面積:329cm
【0050】
〔実施例8〜14〕
樹脂フォーム基材の上面、側面および底面に対して、下記表2に示す塗布液をスプレーで噴霧した。
ここで、実施例9〜14のように複数回噴霧する場合は、直前の噴霧から48時間経過した後に噴霧した。
また、各回の噴霧は、塗布液X、Y、AおよびBのいずれについても、5〜7回噴霧して行った。
また、噴霧後の乾燥は、最後の噴霧から72時間、25℃の室内で自然乾燥させて行った。なお、実施例8については、噴霧前の樹脂フォーム基材の質量と、最後の噴霧から72時間、25℃の室内で自然乾燥させた後の樹脂フォームの質量とを測定したところ、質量の増加分が3.11gであったため、被覆量は0.0095g/cmと算出できた。
【0051】
〔比較例2〕
塗布液を用いた表面処理を行わず、フェノール樹脂発泡体(スミザースオアシスジャパン株式会社製、standard)〔形状:略立方体、表面積:329cm〕をそのまま下記評価に用いた。
【0052】
〔評価〕
実施例8〜14の表面処理後の樹脂フォームおよび比較例2の樹脂フォーム基材について、微粉の有無、ベタつき、および、挿し易さについて、実施例1〜7と同様の基準で評価した。結果を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
上記表2に示す結果から、樹脂フォーム基材の表面の少なくとも一部が、シリコーンオイルで被覆されていると、ベタつき、および、挿し易さに影響を与えることなく、微粉の発生を抑制できることが分かった(実施例8〜14)。