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特開2021-75438中空シリカ粒子とその製造方法およびそれを用いた樹脂複合組成物並びに樹脂複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-75438(P2021-75438A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】中空シリカ粒子とその製造方法およびそれを用いた樹脂複合組成物並びに樹脂複合体
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20210423BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20210423BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210423BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210423BHJP
   C08K 7/26 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
   C01B33/12 B
   C01B33/18 E
   C08L101/00
   C08K3/36
   C08K7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-205597(P2019-205597)
(22)【出願日】2019年11月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】楠 一彦
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 昌史
(72)【発明者】
【氏名】萩原 快朗
(72)【発明者】
【氏名】向井 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】矢木 克昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 睦人
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡史
【テーマコード(参考)】
4G072
4J002
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA30
4G072AA32
4G072BB05
4G072BB16
4G072DD02
4G072DD03
4G072DD04
4G072GG01
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH15
4G072HH16
4G072JJ02
4G072KK20
4G072MM02
4G072MM26
4G072MM31
4G072MM36
4G072QQ01
4G072QQ02
4G072QQ03
4G072TT01
4G072TT30
4G072UU09
4G072UU30
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002DJ016
4J002FA106
4J002FD016
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】周波数が60GHz〜80GHzのミリ波帯域において優れた誘電特性を有する複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子およびそれらを樹脂に混合した高周波デバイス用途の樹脂複合体の提供。
【解決手段】閉気孔率が1.0%以上70.0%以下であり、かつ結晶質シリカを50質量%以上含む、複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子を用いる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉気孔率が1.0%以上70.0%以下であり、かつ結晶質シリカを50質量%以上含むことを特徴とする複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子。
【請求項2】
前記閉気孔率が2.0%以上70.0%である請求項1に記載の中空のシリカ粒子。
【請求項3】
結晶質シリカを80質量%以上含む請求項1または2に記載の中空のシリカ粒子。
【請求項4】
前記結晶質シリカが、クリストバライトまたは石英の少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空のシリカ粒子。
【請求項5】
前記中空のシリカ粒子の平均粒径(D50)が3〜100μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空のシリカ粒子。
【請求項6】
前記中空のシリカ粒子の円形度が、0.80以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空のシリカ粒子。
【請求項7】
前記中空のシリカ粒子の周波数70GHzにおける誘電正接が、0.0042以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の中空のシリカ粒子。
【請求項8】
原料粒子としてシリカ微粉末を造粒し、または原料粒子として前記シリカ微粉末と黒鉛微粉末からなる混合微粉末を造粒して、造粒粉末を得る工程と、
前記造粒粉末を1200℃〜1600℃で熱処理して、閉気孔率1.0%以上70.0%以下であり、かつ結晶質シリカを50質量%以上含む複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とする複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記シリカ微粉末が、天然石英微粉末である請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記シリカ微粉末が、天然石英微粉末と非晶質シリカ微粉末の混合物である請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記造粒粉末の平均粒径(D50)が3〜100μmである請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
樹脂と、請求項1〜7のいずれか1項に記載の中空のシリカ粒子を少なくとも含む樹脂複合組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の樹脂複合組成物を硬化して得られる樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子およびその製造方法、ならびに当該中空シリカ粒子を含有する樹脂複合体に関する。本発明は、特に、周波数60GHz以上の高周波信号に対応した高周波用配線基板の絶縁膜の製造に用いることができる、複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子と、樹脂との樹脂複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信技術の高度化に伴う情報量の増大、ミリ波レーダ等のミリ波帯域の急速な利用拡大等により、周波数の高周波数化が進行している。これらの高周波信号を伝送する回路基板は、回路パターンとなる電極と誘電体基板から構成されている。高周波信号の伝送の際のエネルギー損失を抑えるためには、誘電体材料の誘電正接(tanδ)が小さいことが必要となる。低誘電損とするには、誘電性材料は低極性および低双極子モーメントを有していなければならない。
【0003】
誘電体材料としては、主にセラミックス粒子、樹脂およびそれらを複合させた複合体が用いられている。特に、近年のミリ波帯域の利用拡大に伴い、より一層の低誘電正接(tanδ)のセラミックス粒子、および樹脂が求められている。樹脂は、比誘電率(εr)は比較的小さく高周波デバイスに適しているが、誘電正接(tanδ)や熱膨張係数はセラミックス粒子より大きい。このため、ミリ波帯域用のセラミック粒子と樹脂との複合体には、(1)セラミックス粒子自体の低誘電正接(tanδ)化、(2)セラミックス粒子を高充填し大きな誘電正接(tanδ)を示す樹脂の量を減らすことが適している。
【0004】
セラミックス粒子としてシリカ(SiO)粒子が従来から用いられている。シリカ粒子の形状が、角張った形状であると、樹脂中での流動性、分散性、充填性が悪くなり、また製造装置の摩耗も進む。これらを改善するため、球状のシリカ粒子が広く用いられている。球状シリカ粒子は真球に近いほど、樹脂中の充填性、流動性、および耐金型磨耗性が向上すると考えられ、真円度の高い粒子が追求されてきた。さらに、粒子の粒度分布の適正化を図ることによる一層の充填性の向上も検討されてきた。
【0005】
球状シリカ粒子の製造法として溶射法が知られている。溶射法では、原料となる破砕シリカ粉末を2000℃以上の火炎中に通すことにより、シリカ粉末を溶融し、表面張力により形状を球状化する。溶融球状化された粒子同士が融着しないように気流搬送して回収し、溶射後の粒子は急冷される。溶融状態から急冷されるため、得られたシリカ粒子は、非晶質(アモルファス)構造を有する。
【0006】
溶射法による球状シリカ粒子は非晶質であるため、その熱膨張率および熱伝導率は低い。非晶質シリカ粒子の熱膨張率は、0.5ppm/Kであり、熱伝導率は1.4W/mKである。これらの物性は、結晶構造を有さず非晶質(アモルファス)構造を有する石英ガラスの熱膨張率と概ね同等である。このため、高熱膨張の樹脂に混合して半導体封止材用フィラーとして用いた場合、封止材自体の熱膨張を下げる効果が得られる。封止材の熱膨張率をSiに近い値とすることで、ICチップを封止する際の熱膨張挙動に起因する変形を抑えることができる。
【0007】
以上述べてきたとおり、封止材用シリカ粒子に求められる特性としては、樹脂に大量に配合して複合体としての性能を維持できる充填性、流動性、および耐金型磨耗性等に加えて、ミリ波帯域の高周波の優れた誘電特性である。誘電特性は、材質の物性値であるためシリカ粒子の誘電正接を低減させることは困難であった。
【0008】
特許文献1には、平均粒径が0.1〜20μmのシリカゲルに対して、Zn化合物をZnO換算で0.5質量%以上添加し、この混合物を900〜1100℃で熱処理することを特徴とする主結晶相がクオーツからなる多孔質粉末の製造方法が記載されている。得られた多孔質粉末は、微細な気孔を有し、低誘電率化用の骨材などに有用であるとの記載はあるが、ここでの微細な気孔は、開気孔であり、閉気孔は記載されていない。
【0009】
特許文献2には、球状の非晶質シリカからなる粒子材料を加熱し(加熱工程)、結晶化する製造方法が記載されているが、得られた樹脂組成物添加用球状結晶質シリカ粉体は、気孔を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−20111号公報
【特許文献2】特開2018−145037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、周波数が60GHz〜80GHzのミリ波帯域において優れた誘電特性を有する複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の探求と、それらを樹脂に混合した高周波デバイス用途の樹脂複合体の作製を目指した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は上記課題を解決することを目的とし鋭意研究しその結果、低誘電正接の樹脂複合体を得るには、先ず、球状の溶融(非晶質)シリカを、熱処理し結晶化させることが有効であることを見出した。すなわち結晶質シリカは、ミリ波帯域(60GHz〜80GHZ)での誘電正接が、従来広く使用されてきた非晶質シリカに比べて大幅に低下することを初めて確認した。この結果、球状の結晶質シリカ粒子は、高周波デバイス用途として優れた誘電特性を示すシリカ粒子となる。
【0013】
本願発明者らは更に高周波デバイス用途の優れたシリカ粒子を得るべく検討を行った。空気は誘電正接の小さい物質として知られている。このためシリカ粒子へ空気相を導入することが有効である。しかし、溶射法で製造される結晶質シリカ粒子に空気相を導入することは不可能であった。本発明者らは、シリカ造粒粉末を熱処理して、シリカ造粒粉末の焼結挙動と結晶化挙動を制御することで、複数の閉気孔を有する中空の球状結晶質シリカ粒子を製造できることを見出し本発明に至った。
【0014】
かくして、本発明によれば、下記を提供する:
(1)閉気孔率が1.0%以上70.0%以下であり、かつ結晶質シリカを50質量%以上含むことを特徴とする複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子。
(2)前記閉気孔率が2.0%以上70.0%である前記(1)に記載の中空のシリカ粒子。
(3)結晶質シリカを80質量%以上含む前記(1)または(2)に記載の中空のシリカ粒子。
(4)前記結晶質シリカが、クリストバライトまたは石英の少なくとも1種である前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の中空のシリカ粒子。
(5)前記中空のシリカ粒子の平均粒径(D50)が3〜100μmである前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の中空のシリカ粒子。
(6)前記中空のシリカ粒子の円形度が、0.8以上である前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の中空のシリカ粒子。
(7)前記中空のシリカ粒子の周波数70GHzにおける誘電正接が、0.0042以下である(1)〜(6)のいずれか1つに記載の中空のシリカ粒子。
(8)原料粒子としてシリカ微粉末を造粒し、または原料粒子として前記シリカ微粉末と黒鉛微粉末からなる混合微粉末を造粒して、造粒粉末を得る工程、そして
前記造粒粉末を1200℃〜1600℃で熱処理して、閉気孔率1.0%以上70.0%以下であり、かつ結晶質シリカを50質量%以上含む複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子を得る工程
を含むことを特徴とする複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の製造方法。
(9)前記結晶質シリカ微粉末が、天然石英微粉末である前記(8)に記載の製造方法。
(10)前記シリカ微粉末が、天然石英微粉末と非晶質シリカ微粉末の混合物である前記(8)に記載の製造方法。
(11)前記造粒粉末の平均粒径(D50)が3〜100μmである前記(8)〜(10)に記載の製造方法。
(12)樹脂と、前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の中空のシリカ粒子とを少なくとも含む樹脂複合組成物。
(13)前記(12)に記載の樹脂複合組成物を硬化して得られる樹脂複合体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂複合体は、結晶質シリカを含有するために低い誘電正接を有する。また本発明の中空の球状シリカは、誘電正接の低い空気相を含む気孔を、閉気孔率1%以上含むことから、従来の非晶質シリカ粒子に比べて誘電特性が優れ高周波デバイス向けの半導体分野に好適なシリカ粒子となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、平均粒径が3μm未満のシリカ微粉末をスプレードライヤーで造粒した造粒粉末の断面SEM像である。
図2図2は、図1に示す造粒粉末を大気雰囲気で、1500℃で熱処理して得られた本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のシリカ粒子は、閉気孔率が1.0%以上70.0%以下であり、かつ結晶質シリカを50質量%以上含むことを特徴とする複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子である。
【0018】
シリカ(SiO)の結晶構造としては、クリストバライト、石英等がある。これらの結晶構造を有するシリカは非晶質シリカと比べると、高い熱膨張率および熱伝導率を有する。このため、溶融(非晶質)シリカを、結晶質シリカに適切な量、置き換えることで、ICチップ等との熱膨張差異を抑制しつつ、熱伝導率を向上させることができる。結晶質シリカはミリ波帯域での誘電特性が優れる。さらに結晶シリカに空気相を導入することで、高周波デバイス用途のシリカ粒子として適する。
【0019】
結晶質シリカへの空気相の導入は、多ければ多いほど、誘電特性は優れるが、一方で、熱伝導の低下や、機械的特性低下のため閉気孔率は70%以下、より好ましくは50%以下である。閉気孔率は1.0%未満となると、空気相導入による誘電特性の改善効果が小さく期待できなくなるため、1.0%以上である。閉気孔率は好ましくは2.0%以上である。気孔には、外気と接続している開気孔と粒子内部に孤立している閉気孔とがある。本発明で規定する空気相の含有量は閉気孔に含まれる空気である。
【0020】
本発明のシリカ粒子の誘電正接の測定方法を以下に示す。シリカ粒子に対して直接、誘電正接を測定することができないため本発明では、樹脂との複合体を作製し当該樹脂複合体の誘電正接を測定した。シリカ粒子の誘電正接は、樹脂に対するシリカ粒子の含有量を変動させてシリカ粒子含有率と誘電正接との関係を求めた後、シリカ粒子が含有率100%の誘電正接を外挿して求めることができる。本発明では、樹脂複合体を、遮断円筒導波管法(JIS R1660−1:2004)に基づき、ネットワークアナライザー「N5227A(キーサイト・テクノロジー社製)」を用いて70GHz周波数で測定した。エポキシ樹脂に対して0および80質量%のシリカ粒子との複合化体と誘電正接との関係から、シリカ粒子100%の数値を外挿し、得られた数値をシリカ粒子の誘電正接とした。
【0021】
本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の70GHz周波数での誘電正接は、閉気孔率が1.0%を超える0.0042以下が好ましく、また0.0013未満であると、閉気孔率が70%を超え、機械的強度が低下する可能性があるため、0.0013〜0.0042であることが好ましい。誘電正接が0.0013〜0.0040の範囲が、より好ましく、0.0013〜0.0037の範囲がさらに好ましい。
【0022】
本発明のシリカ粒子は複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子である。シリカ粒子内の閉気孔が単一である場合、不可避的に気孔は粒子内で偏在する。その結果、粒子の機械的強度に不均一性が生じる。閉気孔率が高くなると強度低下部を起点として閉気孔が潰れる不具合が生じることから、閉気孔が単一で存在することは好ましくない。一方、複数の閉気孔を有するシリカ粒子では機械的強度は平準化されるので上述する不具合は生じることがない。
【0023】
本発明のシリカ粒子が複数の閉気孔を有することは、シリカ粒子の断面組織観察を行えばよい。断面組織の観察は、例えば、複数のシリカ粒子を、エポキシ樹脂に埋め込んだのちシリカ断面が観察面に露出するようにダイヤモンドスラリーで研磨を施し、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すればよい。
【0024】
閉気孔率の計算方法を以下に示す。シリカ粒子内に存在する気孔は、閉気孔である。シリカ粒子の密度を、アルキメデス法を用いて求める場合、得られる密度は開気孔を考慮せず、閉気孔のみを考慮しており、「見かけ密度」と呼ばれる。アルキメデス法とは、液体中に固体が同体積の液体の質量と同じだけ浮力を受けることを用いて試料の密度を求める方法である。シリカ粒子の見かけ密度を実在の材料に対する理想的な密度である真密度で除することで閉気孔率を求めることができる。本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の閉気孔率は液体に水を用いたアルキメデス法によって測定した。
閉気孔率=100×{1−(見かけ密度/真密度)}(%)
【0025】
シリカ粒子の真密度は、粒子が非晶質シリカおよび結晶質シリカから構成される場合、それぞれのシリカの真密度に存在割合を乗じることで求めることができる。例えば、非晶質シリカが66.2%であり、結晶質シリカ33.2%(クリストバライト32.0%、石英1.8%)である場合、このシリカ粒子の真密度は、非晶質シリカ真密度×0.662+クリストバライト真密度×0.320+石英真密度×0.018で求めることができる。非晶質シリカ、クリストバライト、石英の真密度は、25℃、常圧において、それぞれ、2.196g/cm、2.334g/cm、2.648g/cmである。シリカ粒子が非晶質および結晶質から構成される場合の存在割合は、XRDで求めることができる。
【0026】
本発明の構成は、クリストバライトまたは石英の少なくとも1種類の結晶質シリカを含む複数の閉気孔を有する中空の球状シリカ粒子である。球状シリカ粒子中の結晶質シリカの含有量は、50%以上である。50%以上であれば、閉気孔を有しない非晶質シリカに比べて優れた誘電特性が発現する。より好ましくは80%以上の結晶質シリカを含有するとよい。結晶質シリカの割合は多ければ多いほど誘電特性は向上する。
【0027】
結晶相の割合は、X線回折(XRD)により測定した。XRDで測定では、結晶性ピークの積分強度の和(Ic)と非晶質のハロー部分の積分強度(Ia)から、以下の式で計算することにより結晶相の割合を求めた。
X(結晶相割合)=Ic/(Ic+Ia)×100 (%)
さらに、クリストバライト、石英等の結晶相の含有量は、X線回折により定量分析することで求めた。X線回折による定量分析では、リートベルト法などの解析方法を用い、標準試料を用いずに定量分析を行った。本発明では、X線回折装置「D2 PHASER」(ブルカー社製)を用いた。リードベルト法による結晶相の定量分析は、結晶構造解析ソフトウエア「TOPAS」(ブルカー社製)にて行った。
【0028】
本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の平均粒径(D50)は、3〜100μmであることが好ましい。平均粒径が3μm未満であると、粒子の凝集性が大きくなり流動性が著しく低下するため、好ましくない。平均粒径が100μmを超えると粒子間の空隙が残存しやすく充填性を上げることが困難となり、好ましくない。平均粒径が10〜80μmの範囲が、より好ましい。
【0029】
平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定した、体積基準の粒度分布において、累積体積が50%のメジアン径D50を求めた。なお、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法は、シリカ粒子を分散させた分散液にレーザー光を照射し、分散液から発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから粒度分布を求める方法である。本発明では、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「CILAS920」(シーラス社製)を用いた。
【0030】
本発明の中空の球状シリカ粒子は、円形度が0.80以上であることが好ましい。円形度が0.80未満であると、半導体封止材用の樹脂複合組成物のシリカ粒子等として利用する場合に、流動性、分散性、充填性が十分でなく、また封止材作製用機器の摩耗が促進される場合がある。
【0031】
円形度は、「撮影粒子投影面積相当円の周囲長÷撮影粒子像の周囲長」で求められ、この値が1に近づくほど真球に近づくことを意味する。本発明の円形度はフロー式粒子像分析法により求めた。フロー式粒子像分析法では、シリカ粒子を液体に流して粒子の静止画像として撮像し、得られた粒子像を基に画像解析を行い、シリカ粒子の円形度を求める。これら複数の円形度の平均値を平均円形度とした。フロー式粒子像分析法により平均円形度を測定する際の粒子個数は、少なすぎると正しく平均値を得ることができない。少なくとも粒子100個以上は必要で、好ましくは500個以上、よりこの好ましくは、1000個以上である。本発明では、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(スペクトリス社製)を用いて、約500個の粒子を用いた。
【0032】
本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子は、原料粒子としてシリカ微粉末を造粒するか、または原料粒子として前記シリカ微粉末と黒鉛微粉末からなる混合微粉末を造粒して、造粒粉末を得る工程と、前記造粒粉末を1200℃〜1600℃で熱処理する工程を含む。
【0033】
結晶質シリカは、通常、球状の非晶質シリカを大気雰囲気下で熱処理を行い、結晶化させることで得られる。熱処理温度、時間を変えることで、結晶質シリカの含有量を変動・制御させることが可能である。
本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子は、閉気孔率が1.0%以上70.0%以下であり、かつ結晶質シリカを50質量%以上含むことを特徴とする。シリカ粒子に空気相を導入するために、原料粒子としてシリカ微粉末またはシリカ微粉末と黒鉛微粉末からなる混合微粉末を造粒する。
【0034】
結晶質シリカへの空気相導入は、原料粒子として、平均粒径がサブミクロン〜数ミクロンのシリカ微粉末を球状に造粒し、その後、造粒粉末を容器に充填し熱処理することで行われる。容器は、熱処理温度で安定な酸化物系の材質であれば良く、例えばアルミナを用いることができる。造粒方法には、流動層造粒、撹拌造粒、スプレードライ、押し出し造粒等がある。本発明の製造方法では、球形に近い造粒粉末が得られれば特に、造粒方法は問わない。図1は、平均粒径が3μm未満のシリカ微粉末を、スプレードライヤーを用いて造粒した造粒粉末の断面SEM像である。
【0035】
使用するシリカの原料粒子の大きさ、および造粒条件により平均粒径3μm〜100μmの造粒粉を作り分けることができる。原料粒子には、結晶質シリカ微粉末の他に、非晶質の微粉末、またその混合物の微粉末を使用することもできる。天然石英の微粉末と非晶質シリカの微粉末の混合微粉末から造粒粉末を作製すると、天然石英微粉末のみから成る原料粒子を用いる場合に比べて閉気孔を多く導入することができる。
【0036】
この理由は、次のように考えられる。例えば、天然石英微粉末のみからなる原料粒子を、1200℃以上の熱処理でクリストバライトに相転移させる場合、空気相は、原料粒子である造粒粉末中の空隙が合体しながら形成される。この際、石英と相転移したクリストバライトの真密度の違いから、得られる複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子は、粒子全体としては、膨張しながら、空隙の合体と気孔の形成が進む。図2は、図1に示す造粒粉末を大気雰囲気で、1500℃で熱処理して得られた本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の断面SEM像である。
一方、天然石英微粉末以外に非晶質シリカ微粉末が原料粒子内に存在する場合は、相転移したクリストバライトと非晶質シリカは真密度がほぼ同じであるため、非晶質シリカ部分は膨張せずに結晶化が進行する。造粒粉末全体として膨張するなかで、非晶質シリカ原料粒子部分は膨張しないので、非晶質シリカ原料粒子部分の周辺には新たな空隙が生成する。
【0037】
原料粒子としてシリカ微粉末と同様の平均粒径を有する黒鉛微粉末を添加し造粒する場合、この造粒粉末を熱処理すると、黒鉛微粉末が燃焼しガス化するので、黒鉛微粉末が存在していた箇所に新たな空間が形成される。黒鉛微粉末の燃焼により導入される空隙量は大きく、これにより最大70%程度の閉気孔率の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子を得ることができる。
【0038】
造粒粉末を1200℃〜1600℃で熱処理することで、閉気孔率1%以上の中空の球状結晶質シリカを得ることができる。黒鉛微粉末を含んだシリカ造粒粉末を用いる場合、黒鉛は、熱処理工程において700℃以上の温度で酸素と反応し燃焼してCOとなり、放出されて無くなる。このため、シリカ粒子内に気孔を多く導入することができる。熱処理工程で、結晶化挙動とともに焼結挙動を制御することにより、黒鉛のガス化により作られた粒子表面の穴は、熱処理中に閉じることができ、閉気孔を生成させることができる。後述する樹脂との混練時にシリカ粒子に開気孔が残存していると、開気孔内に樹脂が侵入してしまうので、シリカ粒子への空気導入が妨げられる。またシリカ粒子と樹脂との相互作用が強くなりすぎるため樹脂複合組成物の流動性が低下することから好ましくない。
【0039】
本発明では、最終的に得られた複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子と樹脂との複合組成物、さらには樹脂複合組成物を硬化した樹脂複合体を製造することができる。樹脂複合組成物の組成について、以下に説明する。
【0040】
複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子と樹脂とを含むスラリー組成物を用いて、半導体封止材(特に固形封止材)、層間絶縁フィルム等の樹脂複合組成物を得ることができる。さらには、これらの樹脂複合体組成物を硬化させることで、封止材(硬化体)、半導体パッケージ用基板等の樹脂複合体を得ることができる。
前記樹脂複合組成物を製造する場合、例えば、複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子及び樹脂の他に、硬化剤、硬化促進剤、難燃剤等を必要により配合し、混錬等の公知の方法で複合化する。そして、ペレット状、フィルム状等、用途に応じて成型する。
さらに、前記樹脂複合組成物を硬化して樹脂複合体を製造する場合、例えば、樹脂複合組成物に熱を加えて溶融して、用途に応じた形状に加工し、溶融時よりも高い熱を加えて完全に硬化させる。この場合、トランスファーモールド法等の公知の方法を使用することができる。
【0041】
パッケージ用基板や層間絶縁フィルム等の半導体関連材料を製造する場合には、樹脂複合組成物に使用する樹脂組成物として、エポキシ樹脂を採用することが好ましい。エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる分子量を有する2種類以上を併用することもできる。これらのエポキシ樹脂中でも特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0042】
前記硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤を使用することができる。フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類等を、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記フェノール硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂との当量比(フェノール性水酸基当量/エポキシ基当量)が0.1以上、1.0未満が好ましい。これにより、未反応のフェノール硬化剤の残留がなくなり、吸湿耐熱性が向上する。
【0044】
樹脂組成物に配合される本発明の複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の量は、耐熱性、熱膨張率の観点から、多いことが好ましい。樹脂組成物の全体質量に対して、一般に80質量%以上95質量%未満であることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下の実施例・比較例を通じて、本発明について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0046】
以下の実施例、比較例で作製された複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子の閉気孔率、円形度、平均粒径および結晶質シリカ割合(%)は、上述の説明にしたがって測定した。誘電正接の値が0.0042以下のものを合格とした。
【0047】
(シリカ粒子と樹脂との複合体作製)
シリカ粒子とエポキシ樹脂(三菱化学製YX−4000H)を用い、エポキシ樹脂に対して0質量%(無添加)および80質量%のシリカ粒子を、温度100℃、二本ロールミルで混練した。混練後の試料を乳鉢・乳棒で粉砕した。金型(50φ)に粉砕後の試料を充填しプレス機にセットした。成形温度175℃で約1分間1MPaにて加圧した後、5MPaで9分間保持した。その後、金型を水冷プレスに移し、約10分間冷却した後、硬化したシリカ粒子−樹脂板を金型から取り出した。作製したシリカ粒子−樹脂板を外周刃切断し、約10mm×10mmに加工した。硬化したシリカ粒子−樹脂板の厚みを変えるために、高精度平面研削(秀和工業製SGM−5000)で研削し、厚みを0.2mm〜1.0mmの間で変動させた。
【0048】
(実施例1〜4)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末をスプレードライヤー(大川原化工機株式会社製CL−8)で造粒し、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度が1400℃(実施例1)、1450℃(実施例2)、1500℃(実施例3)、1550℃(実施例4)で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。平均粒径はそれぞれ84μmであった。得られた複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子を使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0049】
(実施例5〜7)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末と平均粒径2μmの球状非晶質シリカ微粉末を質量比75:25で混合しスプレードライヤー(大川原化工機株式会社製CL−8)で造粒し、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度をそれぞれ表1に示す1450℃〜1550℃で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。平均粒径はそれぞれ78μmであった。得られた結晶質を含むシリカを使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0050】
(実施例8〜10)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末と平均粒径2μmの球状非晶質シリカ微粉末を質量比65:35で混合しスプレードライヤー(大川原化工機株式会社製CL−8)で造粒し、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度をそれぞれ表1に示す1450℃〜1550℃で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。得られたシリカ粒子を、XRDを用いて結晶性シリカの含有量を定量化した。平均粒径はそれぞれ75μmであった。得られた結晶質を含むシリカを使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0051】
(実施例11〜13)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末と平均粒径2μmの球状非晶質シリカ微粉末を質量比45:55で混合しスプレードライヤー(大川原化工機株式会社製CL−8)で造粒し、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度をそれぞれ表1に示す1450℃〜1550℃で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。得られたシリカ粒子を、XRDを用いて結晶性シリカの含有量を定量化した。平均粒径はそれぞれ76μmであった。得られた結晶質を含むシリカを使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0052】
(実施例14)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末と平均粒径2μmの球状非晶質シリカ微粉末を質量比25:75で混合しスプレードライヤー(大川原化工機株式会社製CL−8)で造粒し、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度をそれぞれ表1に示す1450℃で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。得られたシリカ粒子を、XRDを用いて結晶性シリカの含有量を定量化した。平均粒径は77μmであった。得られた結晶質を含むシリカを使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0053】
(実施例15〜18)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末と平均粒径2μmの球状非晶質シリカ微粉末と平均粒径が2μmの黒鉛微粉末を質量比で59:32:9(実施例15)、54:29:17(実施例16)、46:25:29(実施例17)、40:22:38(実施例18)で混合し、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製CL−8)で造粒し、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度が1500℃で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、得られたシリカ粒子は、複数の閉気孔を有していた。また、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。得られたシリカ粒子を、XRDを用いて結晶質シリカの含有量を定量化した。平均粒径はそれぞれ、82μm、84μm、79μm、80μmであった。得られた結晶質を含むシリカを使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0054】
(実施例19〜21)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末をスプレードライヤーで造粒し、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度が1500℃(実施例19,20)、1400℃(実施例21)で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、得られた各シリカ粒子は、複数の閉気孔を有していた。また、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。平均粒径はそれぞれ、21μm、98μm、11μmであった。得られた複数の閉気孔を有する中空のシリカ粒子を使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0055】
(比較例1〜比較例3)
比較例1〜比較例3では、球状の非晶質シリカ微粉末を、アルミナ容器に入れ、1400℃(比較例1)、1450℃(比較例2)、1100℃(比較例3)で)6時間、大気雰囲気で熱処理した。SEM観察の結果、得られた各シリカ粒子は、複数の閉気孔を有していた。また、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。得られた球状シリカ粒子を、XRDを用いて結晶性シリカの含有量を定量化した。平均粒径はそれぞれ35μmであった。得られた結晶質を含むシリカを使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0056】
(比較例4)
平均粒径2μmの破砕状シリカ(石英)微粉末をスプレードライヤー(大川原化工機株式会社製CL−8)で造粒した。この後、アルミナ製の容器に充填し、電気炉SUPER−BURN(株式会社モトヤマ社製)を用いて熱処理温度が1200℃で、6時間、大気雰囲気下で処理した。SEM観察の結果、得られた各シリカ粒子は、複数の閉気孔を有していた。また、熱処理に伴う、融着によるシリカ粒子同士の固着や形状の変化は見られなかった。得られた球状シリカは、XRDで結晶質シリカの含有量を定量化した。平均粒径は84μmであった。また、得られたシリカ粒子を使用して樹脂との複合体を作製した。結晶質シリカの割合を表1に示す。
【0057】
実施例、比較例で得られたシリカ粒子の閉気孔率、円形度、および誘電正接の値を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
比較例1、2では、得られたシリカ粒子は、結晶質シリカを50質量%以上含むが、閉気孔率が0.0%であったため誘電正接の値が0.0042を超過した。比較例3、4では、閉気孔率が1.0%未満であることに加えて、結晶質シリカの含有量が50質量%未満であったため、誘電正接の値は0.0050を超過していることが分かる。
一方、本発明の実施例では、得られたシリカ粒子は、結晶質シリカが50質量%以上、閉気孔率が1.0%以上とであったために誘電正接の値が0.0042以下となりミリ波帯域において優れた誘電特性を有することが分かる。
【0060】
結晶質シリカを50質量%以上含み、閉気孔率が1.0%以上2.0%未満である実施例1〜4および実施例19〜21では、誘電正接の値は0.0041〜0.0042であった。
特に、原料粒子として結晶質シリカ微粉末と非晶質シリカ微粉末の混合物を造粒した実施例5〜14、原料粒子として前記シリカ微粉末と黒鉛粉末からなる混合微粉末を造粒した実施例17〜20では、これらの造粒粉末を1200〜1600℃で熱処理することで、複数の閉気孔を有する閉気孔率が2.0%以上の中空粒子が得られ、誘電正接の値は0.0040以下であり、誘電特性が更に優れることが分かる。黒鉛粉末を用いて造粒すると、気孔率は8%を上回り70%まで増加させることができた。この結果、誘電正接の値が0.0037以下となり、誘電特性としてさらに好ましいことが分かった。
図1
図2