【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
制御対象の温度を制御する温度制御システムであって、
第1熱媒体が循環する第1循環回路と、
前記第1循環回路から独立しており、第2熱媒体が循環する第2循環回路と、
前記第1循環回路及び前記第2循環回路から独立しており、前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路と、を備え、
前記第1循環回路は、
液体状態の前記第1熱媒体を膨張させて霧化させる第1膨張部と、
前記第1熱媒体が流通する第1流通部と、
前記第1膨張部により霧化された第1温度の前記第1熱媒体を、前記第1流通部まで流通させる第1往路と、
気体状態の前記第1熱媒体を圧縮する第1圧縮部と、
前記第1流通部を流通して気化した前記第1熱媒体を、前記第1圧縮部まで流通させる第1復路と、
前記第1圧縮部により圧縮された気体状態の前記第1熱媒体を凝縮させて前記第1膨張部へ供給する第1凝縮部と、
を備え、
前記第2循環回路は、
前記第1温度よりも高い第2温度の前記第2熱媒体を供給する第2調整装置と、
前記第2熱媒体が流通する第2流通部と、
前記第2調整装置から供給された前記第2熱媒体を、前記第2流通部まで流通させる第2往路と、
前記第2流通部を流通した前記第2熱媒体を、前記第2調整装置まで流通させる第2復路と、を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3熱媒体が流通し、前記第2流通部と熱交換する第4流通部と、
前記第3流通部及び前記第4流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させる第3往路と、
前記熱交換部から前記第3流通部及び前記第4流通部まで前記第3熱媒体を流通させる第3復路と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記温度制御システムは、前記第1流通部と前記第3流通部とで交換する熱量、及び前記第2流通部と前記第4流通部とで交換する熱量を調整する調整部を備えている。
【0007】
上記構成によれば、温度制御システムは、制御対象の温度を制御する。温度制御システムは、第1熱媒体が循環する第1循環回路と、第1循環回路から独立しており、第2熱媒体が循環する第2循環回路と、第3循環回路とを備えている。第3循環回路は、第1循環回路及び第2循環回路から独立しており、第1熱媒体及び第2熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する。このため、第3熱媒体が高価であったとしても、第3循環回路にのみ第3熱媒体を循環させて、第3熱媒体の使用量を減少させることができる。しかも、第3循環回路は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。このため、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を、さらに減少させることができる。
【0008】
第1循環回路は、液体状態の第1熱媒体を膨張させ霧化させる第1膨張部と、第1熱媒体が流通する第1流通部と、第1膨張部により霧化された第1温度の第1熱媒体を、第1流通部まで流通させる第1往路と、を備えている。このため、膨張させられて霧化された第1温度の第1熱媒体を、第1往路を介して第1流通部まで流通させることができる。そして、第1流通部を蒸発器として機能させて、第1流通部で第1熱媒体を蒸発させることにより、第1流通部に熱エネルギを供給する(詳しくは第1流通部を冷却する)ことができる。また、第1循環回路は、気体状態の第1熱媒体を圧縮する第1圧縮部と、第1流通部を流通して気化した第1熱媒体を、第1圧縮部まで流通させる第1復路と、第1圧縮部により圧縮された気体状態の第1熱媒体を凝縮させて第1膨張部へ供給する第1凝縮部と、を備えている。このため、第1流通部を流通して気化した第1熱媒体を凝縮させて、液体状態の第1熱媒体を第1膨張部へ供給することができる。ここで、第3熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が狭い第1熱媒体を使用しているため、第1熱媒体として安価な熱媒体を使用することができる。
【0009】
第2循環回路は、第2調整装置を備えている。第2調整装置は、第1温度よりも高い第2温度の第2熱媒体を供給する。このため、熱交換に使用する第2温度の第2熱媒体を供給することができる。第2循環回路は、第2熱媒体が流通する第2流通部と、第2調整装置から供給された第2熱媒体を、第2流通部まで流通させる第2往路と、第2流通部を流通した第2熱媒体を、第2調整装置まで流通させる第2復路と、を備えている。このため、第2熱媒体を介して、第2流通部まで熱エネルギを供給することができる。ここで、第3熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が狭い第2熱媒体を使用しているため、第2熱媒体として安価な熱媒体を使用することができる。
【0010】
第3循環回路は、第3熱媒体が流通し、第1流通部と熱交換する第3流通部と、第3熱媒体が流通し、第2流通部と熱交換する第4流通部と、を備えている。このため、第1流通部まで供給された熱エネルギを、第1流通部と第3流通部との熱交換を通じて第3流通部に供給することができる。同様に、第2流通部まで供給された熱エネルギを、第2流通部と第4流通部との熱交換を通じて第4流通部に供給することができる。
【0011】
第3循環回路は、第3流通部及び第4流通部から、制御対象と熱交換する熱交換部まで第3熱媒体を流通させる第3往路と、熱交換部から第3流通部及び第4流通部まで第3熱媒体を流通させる第3復路と、を備えている。このため、第3熱媒体を介して、制御対象と熱交換する熱交換部まで熱エネルギを供給することができる。温度制御システムは、第1流通部と第3流通部とで交換する熱量、及び第2流通部と第4流通部とで交換する熱量を調整する調整部を備えている。このため、調整部により、第3流通部及び第4流通部に供給する熱エネルギを調整することができ、第3熱媒体を介して熱交換部に供給する熱エネルギ、ひいては制御対象の温度を制御することができる。ここで、上記のように、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を減少させることができる。したがって、第3熱媒体の温度を速やかに変化させることができ、制御対象の温度を制御する応答性を向上させることができる。
【0012】
第2調整装置が第2熱媒体の温度を第2温度に調整して供給する必要がある場合は、一般に第2調整装置は第1循環回路と同等の構成を有するユニットを内部に備える。そして、そのユニットで用いる熱媒体と第2熱媒体とで熱交換して、第2熱媒体の温度を第2温度に調整する。その場合、第2循環回路では、霧化、圧縮、及び凝縮が行われる熱媒体と第2熱媒体とで熱交換する構成と、第2流通部の第2熱媒体と第4流通部の第3熱媒体とで熱交換する構成とが必要になる。これに対して、第1循環回路では、霧化、圧縮、及び凝縮が行われる熱媒体と第1流通部まで流通させる熱媒体とが共通の第1熱媒体であり、霧化、圧縮、及び凝縮が行われる熱媒体と第1熱媒体とで熱交換する構成が必要ない。このため、上記の場合の第2循環回路と比較して、第1循環回路の構成を簡潔にすることができる。さらに、第1流通部と第3流通部とが熱交換する際には、第1熱媒体の潜熱を利用することができるため、熱交換の効率を向上させることができる。
【0013】
第2の手段では、前記調整部は、前記第1圧縮部の駆動状態を制御する駆動制御部を含む。
【0014】
上記構成によれば、第1圧縮部の駆動状態が駆動制御部により制御される。このため、第1圧縮部により気体状態の第1熱媒体を圧縮する度合、ひいては第1流通部に供給する熱エネルギの量を制御することができる。したがって、第1流通部へ流通させる第1熱媒体の流量を制御しなくても、第1流通部と第3流通部とで交換する熱量を調整することができ、制御対象の温度を制御することができる。
【0015】
第3の手段では、前記第1循環回路は、前記第1圧縮部をバイパスして前記第1復路から前記第1凝縮部へ前記気化した前記第1熱媒体を流通させるバイパス流路と、前記バイパス流路を開閉する開閉弁とを含み、前記駆動制御部は、前記開閉弁が開かれた場合に、前記第1圧縮部を停止させる。
【0016】
上記構成によれば、開閉弁を閉じることにより、気化した第1熱媒体を、バイパス流路へ流通させず、第1復路により第1圧縮部へ流通させることができる。一方、開閉弁を開くことにより、バイパス流路によって第1圧縮部をバイパスして、第1復路から第1凝縮部へ気化した第1熱媒体を流通させることができる。そして、駆動制御部は、開閉弁が開かれた場合に、第1圧縮部を停止させる。このため、第1流通部へ供給する必要のある熱エネルギが少ない場合に、第1圧縮部を停止させて温度制御システムの消費エネルギを減少させることができる。
【0017】
第1圧縮部は、気体状態の第1熱媒体を圧縮するため、液体状態の第1熱媒体を圧縮すると破損するおそれがある。第1流通部と第3流通部とで交換する熱量が少ない場合は、第1流通部を流通した第1熱媒体が充分に蒸発せず、液体状態の第1熱媒体が第1圧縮部へ供給されるおそれがある。
【0018】
この点、第4の手段では、前記第1循環回路は、前記第1圧縮部と前記第1凝縮部との間を前記第1往路に接続して、前記第1圧縮部により圧縮された気体状態の前記第1熱媒体を前記第1往路に流通させる接続流路と、前記接続流路を開閉する開閉弁とを含む。こうした構成によれば、開閉弁を開くことにより、第1圧縮部により圧縮されて温度が上昇した気体状態の第1熱媒体を、接続流路によって第1往路に流通させることができる。このため、第1流通部と第3流通部とで交換する熱量が少ない場合であっても、第1流通部を流通した第1熱媒体を充分に蒸発させることができ、液体状態の第1熱媒体が第1圧縮部へ供給されることを抑制することができる。
【0019】
第5の手段では、前記第2調整装置は、液体状態の前記第2熱媒体を膨張させ霧化させて前記第2往路へ供給する第2膨張部と、前記第2流通部を流通して気化した前記第2熱媒体が前記第2復路を介して供給され、気体状態の前記第2熱媒体を圧縮する第2圧縮部と、前記第2圧縮部により圧縮された気体状態の前記第2熱媒体を凝縮させて前記第2膨張部へ供給する第2凝縮部と、を備えている。
【0020】
上記構成によれば、第1の手段の第1循環回路と同様に、第2循環回路では、霧化、圧縮、及び凝縮が行われる熱媒体と第2流通部まで流通させる熱媒体とが共通の第2熱媒体であり、霧化、圧縮、及び凝縮が行われる熱媒体と第2熱媒体とで熱交換する構成が必要ない。このため、第2循環回路の構成を簡潔にすることができる。さらに、第2流通部と第4流通部とが熱交換する際には、第2熱媒体の潜熱を利用することができるため、熱交換の効率を向上させることができる。
【0021】
第6の手段では、前記第2調整装置は、気体状態の前記第2熱媒体を圧縮して前記第2往路へ供給する第2圧縮部と、前記第2流通部を流通して液化した前記第2熱媒体が前記第2復路を介して供給され、液体状態の前記第2熱媒体を膨張させ霧化させる第2膨張部と、前記第2膨張部により霧化された前記第2熱媒体を蒸発させて前記第2圧縮部へ供給する蒸発部と、を備えている。
【0022】
第2調整装置は、気体状態の第2熱媒体を圧縮して第2往路へ供給する第2圧縮部を備えている。このため、気体状態の第2熱媒体を、第2往路を介して第2流通部まで流通させることができる。そして、第2流通部を凝縮器として機能させて、第2流通部で第2熱媒体を凝縮させることにより、第2流通部に熱エネルギを供給する(詳しくは第2流通部を加熱する)ことができる。また、第2調整装置は、第2流通部を流通して液化した第2熱媒体が第2復路を介して供給され、液体状態の第2熱媒体を膨張させ霧化させる第2膨張部と、第2膨張部により霧化された第2熱媒体を蒸発させて第2圧縮部へ供給する蒸発部と、を備えている。このため、第2流通部を流通して液化した第2熱媒体を蒸発させて、気体状態の第2熱媒体を第2圧縮部へ供給することができる。
【0023】
この場合、第2循環回路では、圧縮、霧化、及び気化が行われる熱媒体と第2流通部まで流通させる熱媒体とが共通の第2熱媒体であり、圧縮、霧化、及び気化が行われる熱媒体と第2熱媒体とで熱交換する構成が必要ない。したがって、第2循環回路の構成を簡潔にすることができる。さらに、第2流通部と第4流通部とが熱交換する際には、第2熱媒体の潜熱を利用することができるため、熱交換の効率を向上させることができる。
【0024】
一般に工場等では、冷却水を利用可能であり、複数の温度の冷却水を利用可能な場合もある。
【0025】
この点、第7の手段では、前記第1凝縮部は、第1水温の冷却水と前記第1熱媒体とで熱交換させて前記第1熱媒体を凝縮させ、前記蒸発部は、前記第1水温よりも高い第2水温の冷却水と前記第2熱媒体とで熱交換させて前記第2熱媒体を蒸発させる。こうした構成によれば、複数の温度の冷却水を利用可能な場合に、第1水温の冷却水を第1凝縮部に利用し、第1水温よりも高い第2水温の冷却水を蒸発部に利用することができる。したがって、複数の温度の冷却水を有効に利用することにより、温度制御システムの消費エネルギを減少させることができる。
【0026】
第8の手段では、前記第2水温の冷却水は、前記第1水温の冷却水が所定部材の冷却に使用されることで加熱された冷却水である。
【0027】
上記構成によれば、所定部材の冷却に使用されることで第1水温から第2水温まで上昇した冷却水を、第2水温の冷却水として有効に利用することができる。このため、工場等において第1水温の冷却水のみが供給されている場合であっても、第2水温の冷却水を温度制御システムに供給することができる。
【0028】
第9の手段では、前記第1凝縮部は、冷却水と前記第1熱媒体とで熱交換させて前記第1熱媒体を凝縮させ、前記蒸発部は、冷却水と前記第2熱媒体とで熱交換させて前記第2熱媒体を蒸発させ、前記第1凝縮部に供給される前記冷却水を、前記蒸発部を流通した前記冷却水により冷却するプレクーラと、前記蒸発部に供給される前記冷却水を、前記第1凝縮部を流通した前記冷却水により加熱するプレヒータと、を備える。
【0029】
上記構成によれば、第1凝縮部は、冷却水と第1熱媒体とで熱交換させて第1熱媒体を凝縮させるため、第1凝縮部では温度の低い冷却水が要求され、第1凝縮部を流通する前後で冷却水の温度が上昇する。蒸発部は、冷却水と第2熱媒体とで熱交換させて第2熱媒体を蒸発させるため、蒸発部では温度の高い冷却水が要求され、蒸発部を流通する前後で冷却水の温度が下降する。
【0030】
ここで、温度制御システムは、第1凝縮部に供給される冷却水を、蒸発部を流通した冷却水により冷却するプレクーラを備えている。このため、蒸発部を流通して温度が下降した冷却水を、第1凝縮部に供給される冷却水を冷却するために有効利用することができる。また、温度制御システムは、蒸発部に供給される冷却水を、第1凝縮部を流通した冷却水により加熱するプレヒータを備えている。このため、第1凝縮部を流通して温度が上昇した冷却水を、蒸発部に供給される冷却水を加熱するために有効利用することができる。したがって、温度制御システムの消費エネルギを減少させることができる。
【0031】
第10の手段では、前記第2調整装置は、発熱量を制御可能なヒータを含む。
【0032】
上記構成によれば、第2調整装置は、発熱量を制御可能なヒータを含むため、第2熱媒体の温度を第2温度に調整して供給することができる。この場合、第2循環回路では、ヒータにより加熱される熱媒体と第2流通部まで流通させる熱媒体とを共通の第2熱媒体にすることができるため、圧縮、霧化、及び気化が行われる熱媒体と第2熱媒体とで熱交換する構成が必要ない。したがって、第2循環回路の構成を簡潔にすることができる。
【0033】
第11の手段では、前記第1循環回路は、
前記第1熱媒体が流通し、第3温度において第1蓄熱材の状態変化に基づいて熱エネルギを蓄える第1蓄熱部を備え、
前記第1往路は、前記第1膨張部により霧化された前記第1熱媒体を、前記第1流通部及び前記第1蓄熱部まで流通させ、
前記第1復路は、前記第1流通部及び前記第1蓄熱部を流通して気化した前記第1熱媒体を、前記第1圧縮部まで流通させ、
前記第2循環回路は、
前記第2熱媒体が流通し、前記第3温度よりも高い第4温度において第2蓄熱材の状態変化に基づいて熱エネルギを蓄える第2蓄熱部を備え、
前記第2往路は、前記第2調整装置から供給された前記第2熱媒体を、前記第2流通部及び前記第2蓄熱部まで流通させ、
前記第2復路は、前記第2流通部及び前記第2蓄熱部を流通した前記第2熱媒体を、前記第2調整装置まで流通させる。
【0034】
上記構成によれば、第1蓄熱部と、第1膨張部により霧化された第1熱媒体を、第1流通部及び第1蓄熱部まで流通させる第1往路と、第1流通部及び第1蓄熱部を流通して気化した第1熱媒体を、第1圧縮部まで流通させる第1復路と、を備えている。このため、第1熱媒体を介して、第1流通部及び第1蓄熱部まで熱エネルギを供給することができる。第1蓄熱部は、第1熱媒体が流通し、第3温度において第1蓄熱材の状態変化に基づいて熱エネルギを蓄える。このため、制御対象の温度を変化させる時等に備えて、第1蓄熱部に熱エネルギを蓄えておくことができる。また、第2循環回路では、第2調整装置が第1温度よりも高い第2温度の第2熱媒体を供給し、第1循環回路に準じた作用効果を奏することができる。
【0035】
そして、調整部により、第3流通部及び第4流通部に供給する熱エネルギを調整する際に、第1蓄熱部及び第2蓄熱部に蓄えておいた熱エネルギも使用することができる。このため、第3流通部及び第4流通部に供給する熱エネルギを増加させることができ、第3熱媒体の温度を速やかに変化させることができる。したがって、制御対象の温度を制御する応答性をさらに向上させることができる。
【0036】
第12の手段では、前記調整部は、前記第1往路に設けられ、前記第1膨張部により霧化された前記第1熱媒体を、前記第1流通部と前記第1蓄熱部とに分配する比率を変更する第1分配弁と、前記第2往路に設けられ、前記第2調整装置から供給された前記第2熱媒体を、前記第2流通部と前記第2蓄熱部とに分配する比率を変更する第2分配弁と、を含む。
【0037】
上記構成によれば、第1往路には、第1膨張部により霧化された第1熱媒体を、第1流通部と第1蓄熱部とに分配する比率を変更する第1分配弁が設けられている。このため、第1膨張部から、第1流通部に供給する熱エネルギと、第1蓄熱部に供給する熱エネルギとの比率を、第1分配弁により変更することができる。したがって、第1流通部と第3流通部との熱交換に使用する熱エネルギと、第1蓄熱部に蓄える熱エネルギとの比率を変更することができる。同様に、第2流通部と第4流通部との熱交換に使用する熱エネルギと、第2蓄熱部に蓄える熱エネルギとの比率を変更することができる。
【0038】
第13の手段では、前記第1分配弁及び前記第2分配弁を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1膨張部により霧化された前記第1熱媒体を前記第1分配弁により前記第1流通部に流通させる場合に、前記第2調整装置から供給された前記第2熱媒体を前記第2分配弁により前記第2蓄熱部に流通させ、前記第2調整装置から供給された前記第2熱媒体を前記第2分配弁により前記第2流通部に流通させる場合に、前記第1膨張部により霧化された前記第1熱媒体を前記第1分配弁により前記第1蓄熱部に流通させる。
【0039】
上記構成によれば、温度制御システムは、第1分配弁及び第2分配弁を制御する制御部を備えている。そして、制御部は、第1膨張部により霧化された第1熱媒体を第1分配弁により第1流通部に流通させる場合に、第2調整装置から供給された第2熱媒体を第2分配弁により第2蓄熱部に流通させる。このため、第1膨張部により霧化された第1熱媒体を第1流通部に流通させる場合、すなわち第2流通部と第4流通部とで熱交換を行う必要が小さい場合に、第2蓄熱部に熱エネルギを蓄えることができる。一方、第2調整装置から供給された第2熱媒体を第2流通部に流通させる場合、すなわち第1流通部と第3流通部とで熱交換を行う必要が小さい場合に、第1蓄熱部に熱エネルギを蓄えることができる。
【0040】
第14の手段では、前記調整部は、前記第3復路に設けられ、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第3分配弁を含む。
【0041】
上記構成によれば、第3復路には、熱交換部から第3流通部まで流通する第3熱媒体と、熱交換部から第4流通部まで流通する第3熱媒体との比率を変更する第3分配弁が設けられている。このため、第3流通部が第1流通部から受け取る熱エネルギと、第4流通部が第2流通部から受け取る熱エネルギとの比率を、第3分配弁により変更することができる。さらに、例えば熱交換部から第4流通部にのみ第3熱媒体を流通させることにより、第3流通部に第3熱媒体が流通することによる第1流通部と第3流通部との熱交換を抑制することができる。なお、第3流通部に第3熱媒体が流通する場合は、第1流通部に第1熱媒体が流通していなくても、第1流通部に残留する熱エネルギが第3流通部に供給されるおそれがある。この点、上記構成によれば、制御対象の温度を制御する応答性をさらに向上させることができる。
【0042】
第15の手段では、前記調整部は、前記第3復路に設けられ、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第3分配弁を含み、前記第1分配弁、前記第2分配弁、及び前記第3分配弁を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記熱交換部から前記第3流通部まで前記第3分配弁により前記第3熱媒体を流通させない場合に、前記第1膨張部により霧化された前記第1熱媒体を前記第1分配弁により前記第1蓄熱部に流通させ、前記熱交換部から前記第4流通部まで前記第3分配弁により前記第3熱媒体を流通させない場合に、前記第2調整装置から供給された前記第2熱媒体を前記第2分配弁により前記第2蓄熱部に流通させる。
【0043】
上記構成によれば、温度制御システムは、第1分配弁、第2分配弁、及び第3分配弁を制御する制御部を備えている。そして、制御部は、熱交換部から第3流通部まで第3分配弁により第3熱媒体を流通させない場合に、第1膨張部により霧化された第1熱媒体を第1分配弁により第1蓄熱部に流通させる。このため、熱交換部から第3流通部まで第3熱媒体を流通させない場合、すなわち第1流通部と第3流通部とで熱交換を行う必要がない場合に、第1蓄熱部に熱エネルギを蓄えることができる。一方、熱交換部から第4流通部まで第3熱媒体を流通させない場合、すなわち第2流通部と第4流通部とで熱交換を行う必要がない場合に、第2蓄熱部に熱エネルギを蓄えることができる。
【0044】
第16の手段では、前記第3復路は、前記熱交換部から前記第1蓄熱部を介して前記第3流通部まで前記第3熱媒体を流通させる第1仲介復路と、前記熱交換部から前記第2蓄熱部を介して前記第4流通部まで前記第3熱媒体を流通させる第2仲介復路と、を含む。
【0045】
上記構成によれば、第3復路は、熱交換部から第1蓄熱部を介して第3流通部まで第3熱媒体を流通させる第1仲介復路を含んでいる。このため、熱交換部から第3流通部まで第3熱媒体を流通させる場合に、第1蓄熱部から第3熱媒体へ熱エネルギを直接供給することができる。同様に、熱交換部から第4流通部まで第3熱媒体を流通させる場合に、第2蓄熱部から第3熱媒体へ熱エネルギを直接供給することができる。したがって、制御対象の温度を制御する応答性をさらに向上させることができる。
【0046】
第17の手段では、前記調整部は、前記第3復路に設けられ、前記熱交換部から前記第3流通部まで流通する前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第3流通部及び前記第4流通部を介さず前記熱交換部まで戻る前記第3熱媒体と、前記熱交換部から前記第4流通部まで流通する前記第3熱媒体との比率を変更する第4分配弁を含む。
【0047】
上記構成によれば、第3復路には、熱交換部から第3流通部まで流通する第3熱媒体と、熱交換部から第3流通部及び第4流通部を介さず熱交換部まで戻る第3熱媒体と、熱交換部から第4流通部まで流通する第3熱媒体との比率を変更する第3分配弁が設けられている。このため、第3流通部が第1流通部から受け取る熱エネルギと、熱交換部に戻す熱エネルギと、第4流通部が第2流通部から受け取る熱エネルギとの比率を、第4分配弁により変更することができる。さらに、熱交換部から第3流通部及び第4流通部まで第3熱媒体を流通させず、熱交換部から流出した第3熱媒体を熱交換部にそのまま戻す状態を実現することができる。
【0048】
第18の手段は、
制御対象の温度を制御する温度制御システムであって、
第1熱媒体が循環する第1循環回路と、
前記制御対象を加熱し、発熱量を制御可能なヒータと、
前記第1循環回路から独立しており、前記第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する第3循環回路と、を備え、
前記第1循環回路は、
液体状態の前記第1熱媒体を膨張させて霧化させる第1膨張部と、
前記第1熱媒体が流通する第1流通部と、
前記第1膨張部により霧化された第1温度の前記第1熱媒体を、前記第1流通部まで流通させる第1往路と、
気体状態の前記第1熱媒体を圧縮する第1圧縮部と、
前記第1流通部を流通して気化した前記第1熱媒体を、前記第1圧縮部まで流通させる第1復路と、
前記第1圧縮部により圧縮された気体状態の前記第1熱媒体を凝縮させて前記第1膨張部へ供給する第1凝縮部と、
を備え、
前記第3循環回路は、
前記第3熱媒体が流通し、前記第1流通部と熱交換する第3流通部と、
前記第3流通部から、前記制御対象と熱交換する熱交換部まで前記第3熱媒体を流通させる第3往路と、
前記熱交換部から前記第3流通部まで前記第3熱媒体を流通させる第3復路と、を備え、前記第3熱媒体を貯留するタンクを備えておらず、
前記温度制御システムは、前記第1流通部と前記第3流通部とで交換する熱量、及び前記ヒータの発熱量を調整する調整部を備えている。
【0049】
上記構成によれば、第3循環回路は、第1循環回路から独立しており、第1熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が広い第3熱媒体が循環する。このため、第3熱媒体が高価であったとしても、第3循環回路にのみ第3熱媒体を循環させて、第3熱媒体の使用量を減少させることができる。しかも、第3循環回路は、第3熱媒体を貯留するタンクを備えていない。このため、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を、さらに減少させることができる。
【0050】
第1循環回路は、第1の手段と同様の作用効果を奏する。そして、第3熱媒体の使用可能な温度範囲よりも使用可能な温度範囲が狭い第1熱媒体を使用しているため、第1熱媒体として安価な熱媒体を使用することができる。ヒータは、制御対象を加熱し、発熱量を制御可能である。このため、熱媒体を用いずに、制御対象を直接加熱することができる。
【0051】
温度制御システムは、第1流通部と第3流通部とで交換する熱量、及びヒータの発熱量を調整する調整部を備えている。このため、調整部により、第3流通部に供給する熱エネルギ、及び制御対象に直接供給する熱エネルギを調整することができ、制御対象の温度を制御することができる。ここで、上記のように、第3循環回路を循環する第3熱媒体の量を減少させることができる。したがって、第3熱媒体の温度を速やかに変化させることができ、制御対象の温度を制御する応答性を向上させることができる。
【0052】
第19の手段は、統合温度制御システムであって、第1〜第18のいずれか1つの温度制御システムを複数備え、前記第1膨張部、前記第1圧縮部、及び前記第1凝縮部は、複数の前記温度制御システムに対して1組設けられている。こうした構成によれば、霧化された第1温度の第1熱媒体を供給するための第1膨張部、第1圧縮部、及び第1凝縮部を、複数の温度制御システムにおいて1組にまとめることができる。このため、複数の温度制御システムを備える統合温度制御システムの構成を簡潔にすることができる。
【0053】
ここで、温度制御システムは、第1流通部と第3流通部とで交換する熱量を調整部により調整して、制御対象の温度を制御する。このため、第1膨張部は霧化された一定の第1温度の第1熱媒体を供給すればよく、制御対象の目標温度の変化に応じて第1熱媒体の温度を変化させる必要がない。したがって、複数の温度制御システムに対して1組の第1膨張部、第1圧縮部、及び第1凝縮部が設けられた構成であっても、各温度制御システムの制御対象の温度を制御することができる。なお、制御対象の温度に代えて、制御対象の温度に相関する物理量を制御してもよい。