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特開2021-77468燃料電池用の電極触媒材料、触媒インク、電極触媒層及び膜電極接合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-77468(P2021-77468A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】燃料電池用の電極触媒材料、触媒インク、電極触媒層及び膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20210423BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20210423BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20210423BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20210423BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20210423BHJP
【FI】
   H01M4/86 M
   H01M4/90 X
   H01M4/86 B
   H01M4/88 K
   B01J23/72 M
   H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-201187(P2019-201187)
(22)【出願日】2019年11月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀和
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169CC32
4G169EB15X
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018DD05
5H018EE05
5H018EE12
5H018HH03
5H018HH06
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】本発明は、触媒成分として白金を用いずに、酸素還元反応において高い触媒活性を有する新たな燃料電池用の電極触媒材料、並びにこれを用いた触媒インク、電極触媒層及び膜電極接合体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る燃料電池用の電極触媒材料は、金属酸化物と、導電性材料とを有する。前記金属酸化物は、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体であり、複数の前記ナノ結晶片は、前記主表面間に、前記連結集合体の外側に開口して配置された間隙を有している。前記導電性材料は、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物と、導電性材料と、を有する燃料電池用の電極触媒材料であって、
前記金属酸化物が、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体であり、
複数の前記ナノ結晶片が、前記主表面間に、前記連結集合体の外側に開口して配置された間隙を有し、
前記導電性材料が、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と接触している電極触媒材料。
【請求項2】
前記ナノ結晶片の平均厚さが、10nm未満である請求項1に記載の電極触媒材料。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化銅である請求項1または2に記載の電極触媒材料。
【請求項4】
前記特定の結晶面が、(001)結晶面である請求項3に記載の電極触媒材料。
【請求項5】
前記導電性材料が、導電性物質が連なった連続構造体を有する炭素材料である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電極触媒材料。
【請求項6】
前記導電性物質が、繊維状炭素及び炭素粒子から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の電極触媒材料。
【請求項7】
電極上に形成した前記電極触媒材料の電気伝導度が、該電極上に前記導電性材料により形成した層の電気伝導度に対して0.5%以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電極触媒材料。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電極触媒材料と、高分子電解質と、溶媒とを含む、燃料電池用の電極触媒層を形成するための触媒インク。
【請求項9】
請求項8に記載の触媒インクを用いて形成された燃料電池用の電極触媒層。
【請求項10】
正極用電極触媒層を有する正極と、負極用電極触媒層を有する負極と、前記正極用電極触媒層と前記負極用電極触媒層との間に配置された固体高分子電解質層と、を有し、
前記正極用電極触媒層及び前記負極用電極触媒層の少なくとも一方の電極触媒層が、請求項1乃至7までのいずれか1項に記載の電極触媒材料を含む、燃料電池用の膜電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極触媒材料に関し、特に、燃料電池の空気触媒材料として高い触媒活性を有する電極触媒材料、並びにこれを用いた触媒インク、電極触媒層及び膜電極接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化の観点から、発電装置や電池性能の改善要求がさらに高まっている。また、発電装置や電池に搭載する電極について、環境負荷や生産コストの低減の観点から、従来の性能を維持、向上しつつ、新たな材料を開発することが要求されている。また、排ガスや温室効果ガスの削減の観点から、燃料電池等の発電装置を用いて自動車等の輸送機器を駆動させることも提案されている。
【0003】
燃料電池に用いられる空気極触媒材料として、従来、炭素粒子表面に白金(Pt)の微粒子を担持させた触媒材料が使用されている。白金は酸素還元反応(以下、「ORR」ということがある。)の触媒として優れ、炭素粒子は導電性に優れていることから、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた触媒材料が、燃料電池の空気極触媒材料として、一般的に使用されている。しかし、白金は、埋蔵量の少ない希少金属であり、高価でもあることから、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた触媒材料に代わる、新たな触媒材料が必要である。
【0004】
特許文献1には、シルク材料を焼成及び賦活処理して得られた、シルク材料由来の窒素を含有する粉状炭化物に白金等の触媒金属を担持した触媒は、酸素還元反応能を有し、燃料電池のカソード層の触媒として有用であることが開示されている。しかしながら、触媒金属として、従来と同様に白金が使用されているため、白金を用いた触媒材料に代わる、新たな触媒材料は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−063952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、触媒成分として白金を用いずに、酸素還元反応において高い触媒活性を有する新たな燃料電池用の電極触媒材料、並びにこれを用いた触媒インク、電極触媒層及び膜電極接合体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題に対して鋭意検討を行った結果、触媒成分として、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状のナノ結晶片が相互に連結された連結集合体である触媒活性を有する金属酸化物と、導電性付与成分としての導電性材料と、を備え、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と前記導電性材料とが接触している触媒材料を、燃料電池用の電極触媒材料として使用することによって、高価な白金を用いなくとも、酸素還元反応において高い触媒活性が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 金属酸化物と、導電性材料と、を有する燃料電池用の電極触媒材料であって、
前記金属酸化物が、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体であり、
複数の前記ナノ結晶片が、前記主表面間に、前記連結集合体の外側に開口して配置された間隙を有し、
前記導電性材料が、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と接触している電極触媒材料。
[2] 前記ナノ結晶片の平均厚さが、10nm未満である[1]に記載の電極触媒材料。
[3] 前記金属酸化物が、酸化銅である[1]または[2]に記載の電極触媒材料。
[4] 前記特定の結晶面が、(001)結晶面である[3]に記載の電極触媒材料。
[5] 前記導電性材料が、導電性物質が連なった連続構造体を有する炭素材料である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の電極触媒材料。
[6] 前記導電性物質が、繊維状炭素及び炭素粒子から選択される少なくとも1種である[5]に記載の電極触媒材料。
[7] 電極上に形成した前記電極触媒材料の電気伝導度が、該電極上に前記導電性材料により形成した層の電気伝導度に対して0.5%以上である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の電極触媒材料。
[8] [1]乃至[7]のいずれか1つに記載の電極触媒材料と、高分子電解質と、溶媒とを含む、燃料電池用の電極触媒層を形成するための触媒インク。
[9] [8]に記載の触媒インクを用いて形成された燃料電池用の電極触媒層。
[10] 正極用電極触媒層を有する正極と、負極用電極触媒層を有する負極と、前記正極用電極触媒層と前記負極用電極触媒層との間に配置された固体高分子電解質層と、を備え、
前記正極用電極触媒層及び前記負極用電極触媒層の少なくとも一方の電極触媒層が、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の電極触媒材料を含む、燃料電池用膜電極接合体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、電極触媒材料が、触媒活性を有する金属酸化物の、特定の結晶面が表出している主表面をもつナノ結晶片の少なくとも一部と、導電性を付与する導電性材料とが接触している複合材料であることにより、触媒材料に高価な白金を用いなくとも、酸素還元反応において高い触媒活性を示す新たな燃料電池用の電極触媒材、並びにこれを用いた触媒インク、電極触媒層及び膜電極接合体を提供できる。
【0010】
本発明の態様によれば、金属酸化物が酸化銅、特定の結晶面が(001)結晶面である触媒材料により、酸素還元反応において高い触媒活性をより確実に得ることができる。
【0011】
本発明の態様によれば、導電性材料が、導電性物質が連続して繋がった連続構造を有する炭素材料であることにより、連続構造による効率の良い電子の移動が可能であるため、金属酸化物と導電性材料との間の電子授受が円滑化され、触媒活性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に従う電極触媒材料の実施態様を説明する概略図である。
図2図2は、実施例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像である。
図3図3は、図2に示されるSEM画像の同視野における反射電子像を示す。
図4図4は、実施例3で作製された電極触媒材料を、倍率50,000倍で観察した際のSEM画像である。
図5図5は、比較例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像である。
図6図6は、図5に示されるSEM画像の同視野における反射電子像を示す。
図7図7は、触媒活性の測定における電位と電流密度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いながら、本発明の実施形態である電極触媒材料、触媒インク、電極触媒層及び膜電極接合体について説明する。図1は、本発明の電極触媒材料の実施態様を説明する概略図である。
【0014】
<電極触媒材料>
図1に示すように、本発明の実施形態の電極触媒材料1は、触媒活性を有する金属酸化物と、導電性を付与する導電性材料30とを有し、金属酸化物は、特定の結晶面が表出している主表面22および端面23をもつ薄片状であるナノ結晶片21が相互に連結された連結集合体20である。連結集合体20は、特定の結晶面が表出している主表面22をもつ薄片状のナノ結晶片21から構成されていることで、優れた触媒活性を発揮する。また、連結集合体20は、複数のナノ結晶片21の主表面22間に、連結集合体20の外側に開口して配置された間隙Gを有している。
【0015】
導電性材料30は、ナノ結晶片21、好ましくは主表面22の少なくとも一部と接触している。例えば、電極触媒材料1が燃料電池の正極に搭載されると、燃料電池の負極触媒材料におけるH→2H+2eの水素酸化反応において生成した電子が、ナノ結晶片21に接触している導電性材料30を通して輸送される。導電性材料30は、ナノ結晶片21の少なくとも一部と接触しているため、金属酸化物である連結集合体20と導電性材料30との間の電子授受が達成される。一方、導電性材料30がナノ結晶片21の全面、特に主表面22の全面を覆うと、触媒活性面である主表面22が露出されず、正極での反応物質を触媒活性面に供給できなくなり、酸素還元反応が阻害される。ナノ結晶片21の少なくとも一部、特に主表面22の少なくとも一部と導電性材料30とが接触している電極触媒材料1では、導電性材料30との良好な接触と触媒活性の向上が実現される。また、導電性材料30は、ナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部と電気的に接触していることが好ましい。これにより、連結集合体20と導電性材料30との間の電子授受が円滑化され、触媒活性がより向上する。導電性材料30と、ナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部とが良好に電気的に接触している場合、電極上に形成した電極触媒材料1の電気伝導度は、該電極上に導電性材料30により形成した層の電気伝導度に対して0.5%以上であることが好ましい。
【0016】
導電性材料30は、導電性材料30を構成する導電性物質が互いに数珠のように連続して繋がった連続構造体31を有していてもよい。この場合、導電性材料30が有する連続構造体31が、ナノ結晶片21の少なくとも一部、例えば主表面22の少なくとも一部と接触していればよい。導電性材料30が連続構造体31を有することで、ナノ結晶片21の一部が、導電性材料30が有する連続構造体31と接触できる面積が増大する。これにより、連結集合体20と導電性材料30との間の電子授受がより円滑化され、触媒活性をより高めることができる。また、導電性材料30が有する連続構造体31が、ナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部と接触していることにより、導電性材料30が表出している主表面22に担持される。そのため、例えば、外部等から衝撃があっても、導電性材料30とナノ結晶片21との接触を良好に維持することができる。一方、導電性材料30が有する連続構造体31が、ナノ結晶片21の端面23の少なくとも一部で電気的に接触している場合、触媒活性面を阻害せずに導電性能を向上できる。そのため、電極触媒材料1では、連結集合体20を担体として導電性材料30を保持する形態、導電性材料30が有する連続構造体31を担体としてナノ結晶片21を保持する形態の両方が可能である。
【0017】
<金属酸化物>
図1に示すように、金属酸化物は、主表面22と端面23をもつ複数のナノ結晶片21が相互に連結された連結集合体20であり、花のような形状を示す。複数のナノ結晶片21の連結状態は、特に限定されず、複数のナノ結晶片21が連結して集合体を形成していればよい。
【0018】
ナノ結晶片21の形状は、主表面22の大きさに対し、端面23の厚さが薄い薄片状である。連結集合体20の外面において、隣接する複数のナノ結晶片21の主表面22の間には間隙Gが形成されており、この間隙Gは、連結集合体20の外側に開口して配置されている。連結集合体20が間隙Gを有することにより、後述する電解質が間隙Gに充填され、酸素還元反応における反応物質が効果的に触媒活性面である主表面に到達できる。そのため、反応生成物である水(水分)の効果的な移動が促進される。
【0019】
ナノ結晶片21の主表面22とは、薄片状のナノ結晶片21を構成する外面のうち、表面積が広い面のことであって、表面積が狭い端面23の上下端縁を区画形成する両表面を意味する。酸素還元反応に使用される電極触媒材料1では、主表面22に特定の結晶面が表出している。特定の結晶面が表出している主表面22が、高い触媒活性を示す触媒活性面となるため、主表面22の表面積が大きいほど、酸素還元反応をより効率的に行うことができる。
【0020】
ナノ結晶片21の主表面22の最小寸法は、特に限定はされないが、10nm以上1.0μm未満であることが好ましい。また、ナノ結晶片21の平均厚さtは、特に限定はされないが、主表面22の最小寸法の1/10以下であることが好ましい。これにより、ナノ結晶片21の主表面22の面積が端面23の面積に比べて約10倍以上広くなり、連結集合体20の単位量当たりの触媒活性が、ナノ粒子の単位量当たりの触媒活性と比べて向上する。ナノ結晶片の平均厚さは10nm未満であることが好ましい。主表面22の最小寸法が1.0μm以上であると、ナノ結晶片21を高密度で連結させることが困難となる傾向にあり、最小寸法が10nm未満であると、隣接する複数のナノ結晶片21の主表面22の間で十分な間隙Gを形成することができなく傾向にある。また、ナノ結晶片21の厚さ方向の剛性の低下を抑制するため、ナノ結晶片21の平均厚さtは1.0nm以上であることが好ましい。なお、ナノ結晶片21の主表面22の寸法は、ナノ結晶片21の形状を損なわないように連結集合体20から分離したナノ結晶片21を、個別のナノ結晶片として測定することにより求めることができる。測定法の具体例としては、ナノ結晶片21の主表面22に対し、外接する最小面積の長方形を描き、長方形の短辺および長辺を、ナノ結晶片21の最小寸法および最大寸法として、それぞれ測定する。
【0021】
連結集合体20を構成するナノ結晶片21は、金属酸化物で構成されている。金属酸化物としては、例えば、貴金属(白金を除く)の酸化物、遷移金属の酸化物、それらの合金の酸化物、複合酸化物等が挙げられる。貴金属及びその合金としては、例えば、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)及び金(Au)の群から選択される1種の成分からなる金属、又はこれらの群から選択される1種以上の成分を含む合金が挙げられる。また、遷移金属及びその合金としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及び亜鉛(Zn)の群から選択される1種の成分からなる金属、又はこれらの群から選択される1種以上の成分を含む合金が挙げられる。
【0022】
これらの金属酸化物のうち、遷移金属の群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物が好ましい。遷移金属の金属酸化物は、金属資源として地球上に豊富に存在しており、貴金属に比べて安価であるため、生産コストを低減することができる。遷移金属のうち、Cu、Ni、Co及びZnの群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物であることがより好ましく、このような金属酸化物は少なくとも銅を含むことがさらに好ましい。また、銅を含む金属酸化物としては、例えば、酸化銅、Ni−Cu酸化物、Cu−Pd酸化物等が挙げられ、酸化銅(CuO)が特に好ましい。
【0023】
<主表面の結晶方位>
本発明の電極触媒材料1が燃料電池用の電極に搭載される場合、ナノ結晶片21において特定の結晶面が表出している主表面22が触媒活性面となるために、主表面22が特定の結晶方位を有するように構成される。
【0024】
ナノ結晶片21の主表面22が還元性の触媒活性面となるように構成するには、ナノ結晶片21を構成する金属酸化物において、触媒活性を発揮する金属原子の面を、主表面22に位置するように配向させて、主表面22を金属原子面で構成すればよい。具体的には、主表面22に存在する金属酸化物を構成する、金属原子及び酸素原子に占める金属原子の個数割合を80%以上とすることが好ましい。
【0025】
一方、ナノ結晶片21の主表面22が酸化性の触媒活性面となるように構成するには、ナノ結晶片21を構成する金属酸化物において、触媒活性を発揮する酸素原子の面を、主表面22に位置するように配向させて、主表面22を酸素原子面で構成すればよい。具体的には、主表面22に存在する金属酸化物を構成する、金属原子及び酸素原子に占める酸素原子の個数割合を80%以上とすることが好ましい。
【0026】
触媒活性面の役割に応じて、ナノ結晶片21の主表面22に存在する金属酸化物を構成する、金属原子及び酸素原子に占める金属原子又は酸素原子の個数割合を調整することにより、主表面22の触媒活性機能を高めることができる。このようなナノ結晶片21を有する電極触媒材料1は、十分な触媒活性を発揮できる。
【0027】
また、ナノ結晶片21の主表面22が特定の結晶方位を有するとしたのは、ナノ結晶片21を構成する金属酸化物の種類に応じて、主表面22に多く存在する結晶方位が異なるためである。そのため、主表面22の結晶方位は具体的には記載はしないが、例えば、金属酸化物が酸化銅(CuO)の場合には、主表面22を構成する単結晶の主な結晶方位、すなわち、触媒活性面としての特定の結晶面は、(001)結晶面であることが好ましい。
【0028】
主表面22を金属原子面とする構成としては、金属原子面と酸素原子面が規則的に交互に積層され、原子の並び方に規則性を有する規則構造として、主表面22に金属原子面が位置するように、金属酸化物の結晶構造を構成することが好ましい。具体的には、主表面22が、同じ配向をもつ単結晶の集合体で構成された構造の場合だけではなく、異なる結晶構造や異なる配向をもつ単結晶の集合体、結晶粒界や多結晶を含んだ集合体で構成された構造であっても、主表面22に金属原子面が存在する場合が含まれる。
【0029】
<導電性材料>
図1に示すように、本発明の実施形態の電極触媒材料1は、金属酸化物である連結集合体20と、導電性材料30とを有している。また、導電性材料30は、導電性材料30を構成する導電性物質が互いに数珠のように連続して繋がった連続構造体31を有し、連続構造体31がナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部に担持されていてもよい。導電性材料30の連続構造体31は、ナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部だけでなく、主表面22及び端面23の両方の少なくとも一部で接触していてもよい。連続構造体31を有する導電性材料30が、ナノ結晶片21の主表面22の一部が露出した状態で担持されることにより、触媒活性面の露出を維持しつつ、ナノ結晶片21と接触し得る範囲を増大させることができる。
【0030】
導電性材料30が連続構造体31を有する場合、連続構造体31の長さの平均寸法は、導電性材料30がナノ結晶片21の少なくとも一部と接触可能であり、かつナノ結晶片21の厚さ方向の剛性の低下を抑制できる程度であればよい。また、連続構造体31がナノ結晶片21の主表面22の一部と接触する場合、その接触面積は、金属酸化物である連結集合体20の触媒活性が阻害されるのを防止する点から、ナノ結晶片21の主表面22の面積よりも小さければよく、ナノ結晶片21の主表面22の面積の50%以下であることが好ましい。これにより、触媒活性面である特定の結晶面が表出しているナノ結晶片21の主表面22が、導電性材料30の連続構造体31で完全に被覆されることが防止され、その結果、主表面22が優れた触媒機能を発揮できる。尚、接触面積とは、連続構造体31がナノ結晶片21の主表面22の一部と接触する際、連続構造体31がその主表面22の一部と接触している総面積を表し、連続構造体31が主表面22の一部を覆っている被覆面積とは異なる。
【0031】
導電性材料30が連続構造体31を有することにより、金属酸化物である連結集合体20と導電性材料30との間の電子授受がより円滑化される。このような導電性材料30は、導電性物質が連なった1次元以上の連続構造体を有することが好ましく、例えば、鎖状構造を有する炭素材料であることが好ましい。炭素材料以外に連続構造体を構成し得る導電性物質には、銅細線鎖状ニッケル微粒子、鱗片状ニッケル微粒子等が挙げられる。炭素材料として連続構造体を構成し得る導電性物質は、繊維状炭素(カーボンファイバー)及び炭素粒子から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0032】
炭素材料の中でも、繊維状炭素及び炭素粒子は、高い導電性を有し、また凝集により鎖状構造を形成しやすい。このような導電性物質は、ナノメートルオーダーであることが好ましく、これにより、より多くの鎖状構造を形成できる。導電性材料30が有する連続構造体31は、ナノ結晶片21の主表面22と電極まで電子を効率よく輸送するために、各ナノ結晶片21から電極まで連続的に接続する広域連続構造体であることが好ましい。連続構造体31が広域連続構造体であることにより、各導電性材料30の間に、後述する高分子電解質が存在しない構造体が形成される。高分子電解質は導電性能を有するため、導電性材料30と同様に電子の輸送は可能であるものの、導電性材料30と比較すると電気抵抗が高い。そのため、各導電性材料30の間に高分子電解質が存在しない態様である広域連続構造体は、電子の輸送経路をより広域に確保できる。また、導電性物質として炭素粒子を用いる場合、各導電性材料30の間の接触抵抗を低減するため、炭素粒子の粒径は大きい方が望ましい。しかしながら、炭素粒子の粒径が大き過ぎると、各ナノ結晶片21と導電性材料30との接触、各導電性材料30同士の鎖状構造の形成が困難となり、ナノ結晶片21の触媒活性面の全面を被覆し反応効率が下がるおそれがある。そのため、炭素粒子の平均粒径は、20nm以上200nm以下であることが好ましい。また、導電性物質が繊維状炭素(カーボンファイバー)である場合も同様に、繊維状炭素の平均直径は100nm以下であることが好ましく、平均長さは0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0033】
<電極触媒材料の用途>
本発明の実施形態である電極触媒材料1は、燃料電池用の空気極触媒材料として使用することができる。
【0034】
<電極触媒材料の製造方法>
次に、本発明の電極触媒材料の製造方法例について説明する。電極触媒材料の製造方法例としては、薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体である金属酸化物を調製する金属酸化物調製工程Saと、調製された金属酸化物に導電性材料を担持させる導電性材料担持工程Sbと、を有する。
【0035】
金属酸化物調製工程Saは、混合工程Sa1と、温度と圧力を印加する水熱合成工程Sa2と、を有する。
【0036】
(混合工程Sa1)
混合工程は、金属酸化物の原料となる、貴金属、遷移金属またはそれらの合金を含む化合物の水和物、特に金属ハロゲン化物の水和物と、金属酸化物の前駆体である金属錯体の配位子を構成する炭酸ジアミド骨格を有する有機化合物とを、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の有機溶媒、水、又はその両方を含む溶媒に溶かす工程である。金属ハロゲン化物の水和物として、例えば、塩化銅(II)二水和物、炭酸ジアミド骨格を有する有機化合物として、例えば、尿素が挙げられる。
【0037】
(水熱合成工程Sa2)
水熱合成工程は、混合工程Sa1で得られた混合溶液に所定の熱、圧力を加えて、所定時間、放置する工程である。混合溶液は、100℃以上300℃以下で加熱することが好ましい。加熱温度が100℃未満では、金属酸化物が生成せず、300℃超では、耐熱容器を構成する気密保持のためのパッキンの耐熱温度を超え、気密が維持できず外部に揮発気体が漏れるので好ましくない。加熱時間は10時間以上であることが好ましい。加熱時間が10時間未満では、未反応の材料が残留する場合がある。所定の圧力は、100℃における水の蒸気圧(1気圧)以上の圧力であることが好ましい。所定の熱・圧力を加えるため、例えば、耐圧容器、密閉容器を用いて加熱、加圧する方法が挙げられる。混合溶液を加熱、加圧した後、室温に冷却して一定時間保持した後、生成した沈殿物を回収する。回収した沈殿物を、メタノール、純水等で洗浄し、所定時間乾燥させる。これにより、所望とする金属酸化物が得られる。
【0038】
金属酸化物調製工程Saの後に、導電性材料混合工程Sbを実施する。導電性材料混合工程Sbは、(A)調製した金属酸化物の分散液を作製する金属酸化物分散工程Sb1、導電性材料の分散液を作製する導電性材料分散工程Sb2、又はその両方の分散液を作製する工程と、(B)金属酸化物の分散液に導電性材料を添加して混合するか、導電性材料の分散液に調製した金属酸化物を添加して混合するか、又は金属酸化物の分散液と導電性材料の分散液とを混合する分散処理工程Sb3と、を有する。
【0039】
(金属酸化物分散工程Sb1)
金属酸化物分散工程は、分散媒(例えば、水)に有機溶媒を添加した混合液に、金属酸化物調製工程Saで調製した金属酸化物を添加後、超音波分散機等で分散処理をして金属酸化物の分散液を作製する工程である。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のモノアルコールが挙げられる。金属酸化物の分散液に含まれる金属酸化物の含有量は、金属酸化物の分散性と製造効率のバランスの点から、0.05質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下が特に好ましい。なお、必要に応じて、金属酸化物の分散液に燃料電池に使用する電解質をさらに添加、分散させてもよい。電解質としては、例えば、Nafion(登録商標)等の高分子電解質が挙げられる。
【0040】
(導電性材料分散工程Sb2)
導電性材料分散工程は、分散媒(例えば、水)に有機溶媒を添加、混合した混合液に、導電性材料を添加後、超音波分散機等で分散処理をして導電性材料の分散液を作製する工程である。有機溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが挙げられる。導電性材料の分散液に含まれる導電性材料の含有量は、導電性材料の分散性と製造効率のバランスの点から、0.05質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下が特に好ましい。なお、必要に応じて、導電性材料の分散液に燃料電池に使用する電解質をさらに添加、分散させてもよい。電解質としては、例えば、Nafion(登録商標)等の高分子電解質が挙げられる。
【0041】
(分散処理工程Sb3)
分散処理工程は、金属酸化物分散工程Sb1で作製した金属酸化物の分散液に導電性材料を添加するか、導電性材料分散工程Sb2で作製した導電性材料の分散液に金属酸化物調製工程Saで調製した金属酸化物を添加するか、又は金属酸化物分散工程Sb1で作製した金属酸化物の分散液と導電性材料分散工程Sb2で作製した導電性材料の分散液とを混合して、超音波分散機等で分散処理を行う工程である。分散処理工程では、電極触媒材料の導電性と触媒活性のバランスの点から、電極触媒材料の構成において金属酸化物の触媒活性面を導電性材料が被覆する面積が50%以下であることが好ましいため、金属酸化物と導電性材料の含有量を調整する。金属酸化物として酸化銅のナノ結晶片、導電性材料として炭素の球状粉体の場合、金属酸化物と導電性材料とを等質量で含有することにより、好ましい被覆面積が得られる。このような工程を経て、電極触媒材料1が作製される。
【0042】
<触媒インク>
本発明の実施形態である触媒インクは、上述した電極触媒材料1と、高分子電解質と、溶媒とを含み、燃料電池用の電極触媒層を形成するために使用される。このような触媒インクは、これらの材料が混合した溶液を、ホモミキサー、ディスパー、超音波分散機、ホモジナイザー、マイルダーなどの分散機を用いた分散処理を施すことにより作製される。分散機として、超音波分散機が好ましい。触媒インク中の電極触媒材料1の含有量は、触媒インクに対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上2質量%以下がより好ましい。また、触媒インク中の高分子電解質の含有量は、触媒インクに対して、0.01質量%以上0.2質量%が好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。
【0043】
高分子電解質としては、例えば、パーフルオロカーボン材料等の固体高分子電解質が挙げられ、実績、導電率の点でNafion(登録商標)が好ましい。尚、高分子とは、質量平均分子量(Mw)が10000以上であることを意味する。また、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのモノアルコール;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒;アセトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのヘテロ元素含有溶媒などが挙げられる。これらの中でも、乾燥が容易な点で水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のモノアルコールが好ましい。溶媒は、これらのいずれか1種であっても、2種以上を含む混合物であってもよい。
【0044】
触媒インクの粘度は、電極触媒層を形成する際、電極への塗工性を良好にする観点から、粘度計による粘度として、25℃で0.5mPa・s以上40mPa・s以下であることが好ましい。
【0045】
<電極触媒層>
本発明の実施形態である電極触媒層は、上述した電極触媒材料1と、高分子電解質と、溶媒とを含む触媒インクを用いて形成され、燃料電池用の電極触媒層として有効である。このような電極触媒層は、上記のように作製した触媒インクを電極上に塗布し、次いで乾燥して形成する。触媒インクの塗布方法、乾燥方法等は適宜選択できる。例えば、塗布方法としては、スプレー法、インクジェット法、ドロップキャスト法、ダイコート法などが挙げられる。また、乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。減圧乾燥、加熱乾燥における具体的な条件は、特に制限はなく、適宜設定できる。また、電極触媒層の膜厚は、特に限定されないが、1μm以上20μm以下であってもよい。電極触媒層は、電極触媒材料1と高分子電解質とが適度に混ざり合ったマトリクスであり、電極触媒材料1と高分子電解質の界面で電極反応が行われる。
【0046】
電極触媒層は、酸素還元反応が必要となる燃料電池の正極(空気極)上に形成され、正極用電極触媒層とする。
【0047】
<膜電極接合体>
本発明の実施形態である膜電極接合体は、正極用電極触媒層を有する正極と、負極用電極触媒層を有する負極と、正極用電極触媒層と前記負極用電極触媒層との間に配置された固体高分子電解質層と、を備える。また、正極用電極触媒層及び負極用電極触媒層の少なくとも一方の電極触媒層が、上述の電極触媒材料1を含み、このような膜電極接合体は、燃料電池用の膜電極接合体として有効である。
【0048】
正極用電極触媒層が、上述の電極触媒材料1を含む電極触媒層である場合、負極用電極触媒層は、他の触媒材料を含む別の電極触媒層であってもよい。別の触媒層としては、例えば、従来のPt(白金)/C(カーボン)等を含む電極触媒層が挙げられる。
【0049】
固体高分子電解質層は、電解質樹脂を含む少なくとも1種の電解質膜を有する。電解質膜は、例えば、AGC社製のFlemion(登録商標)、デュポン社製のNafion(登録商標)等のフッ素系高分子電解質を含むフッ素系高分子電解質膜、芳香族系ブロック共重合体高分子が挙げられる。正極及び負極の構造、材料は、特に限定されず、公知の形態の正極及び負極を使用することができる。
【0050】
正極用電極触媒層は、ガス拡散層が積層された多層構造を有していてもよい。ガス拡散層は、正極用電極触媒層に含まれる電極触媒材料1への電子授受を行うとともにガスを供給する役割を有しており、導電性のある多孔質材料が用いられる。また、負極用電極触媒層も、必要に応じて、ガス拡散層が積層された多層構造を有していてもよい。このようなガス拡散層としては、酸素還元反応、水素酸化反応における触媒性能を良好に維持する観点から、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素材料から構成されるシートが好ましい。正極用電極触媒層とガス拡散層とを積層する場合、ガス拡散層の表面、特に正極電極触媒層側の表面は、必要に応じて、炭素材が緻密化した撥水層になっていてもよい。
【0051】
負極用電極触媒層もまた、ガス拡散層が積層された多層構造を有していてもよい。ガス拡散層としては、水素還元反応における触媒性能を良好に維持する観点から、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素材料から構成されるシートが好ましい。正極用電極触媒層とガス拡散層とを積層する場合、ガス拡散層の表面、特に正極電極触媒層側の表面は、必要に応じて、炭素材が緻密化した撥水層になっていてもよい。
【0052】
正極用電極触媒層を有する正極、特に、正極用電極触媒層とガス拡散層とが積層された多層構造を有する正極と、負極用電極触媒層を有する負極、特に正極用電極触媒層とガス拡散層とが積層された多層構造を有する負極と、正極用電極触媒層と負極用電極触媒層との間に配置された固体高分子電解質層とを、適宜、重ね併せて熱圧着等し、互いに接合することで、膜電極接合体を形成することができる。さらに、各電極の両外側にセパレーターを配置することによって燃料電池を作製できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変できる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
<金属酸化物の作製>
金属酸化物として、酸化銅の(001)結晶面が表出している主表面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体を作製した。具体的には、2.0gの塩化銅(II)二水和物(純正化学株式会社製)と、1.6gの尿素(純正化学株式会社製)とを混合した後、180mlのエチレングリコール(純正化学株式会社製)と120mlの水を添加してさらに混合した。得られた塩化銅と尿素の混合溶液を、内容積500mlの耐圧硝子容器に注入し、該容器内の密閉雰囲気下で180℃、24時間の熱処理を行った。その後、混合溶液を、室温に冷却して1日保持した後、密閉した容器から生成した薄膜形状の沈殿物を回収した。次いで、この沈殿物を、メタノールおよび純水で洗浄して、真空下、70℃で10時間真空乾燥させ、酸化銅のナノ結晶片が相互に連結された連結集合体を得た。
【0056】
<金属酸化物の分散液の作製>
上記のようにして得られた酸化銅の連結集合体4mgを精製水1700μLとイソプロパノール800μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を15μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、酸化銅の連結集合体の分散液を作製した。
【0057】
<電極触媒材料及び触媒インクの作製>
上記のようにして得られた酸化銅の連結集合体の分散液に、キャボットコーポレーション社製の導電性カーボンブラックであるVULCAN XC−72(登録商標)4mgを添加して、超音波分散機で20〜40℃にて10分の分散処理を行い、酸化銅の連結集合体に炭素粒子が担持された電極触媒材料を含む触媒インクを作製した。
【0058】
(実施例2)
<導電性材料の分散液の作製>
実施例1で使用したキャボットコーポレーション社製の導電性カーボンブラックであるVULCAN XC−72(登録商標)4mgを、精製水1700μLとイソプロパノール800μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を15μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、導電性材料の分散液を作製した。
【0059】
<電極触媒材料及び触媒インクの作製>
上記のようにして得られた導電性材料の分散液に、実施例1で得られた酸化銅の連結集合体4mgを添加して、超音波分散機で20〜40℃にて10分の分散処理を行い、酸化銅の連結集合体に炭素粒子が担持された電極触媒材料を含む触媒インクを作製した。
【0060】
(実施例3)
<導電性材料の分散液の作製>
実施例1で使用したキャボットコーポレーション社製の導電性カーボンブラックであるVULCAN XC−72(登録商標)4mgを、精製水850μLとイソプロパノール400μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を8μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、導電性材料の分散液を作製した。
【0061】
<金属酸化物の分散液の作製>
実施例1で得られた酸化銅の連結集合体4mgを精製水850μLとイソプロパノール400μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を7μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、酸化銅の連結集合体の分散液を作製した。
【0062】
<電極触媒材料及び触媒インクの作製>
上記のようにして得られた導電性材料の分散液と酸化銅の連結集合体の分散液を混合して、超音波分散機で20〜40℃にて10分の分散処理を行い、酸化銅の連結集合体に炭素粒子が担持された電極触媒材料を含む触媒インクを作製した。
【0063】
(実施例4)
<電極触媒材料及び触媒インクの作製>
実施例1で作製した酸化銅の連結集合体4mgと、キャボットコーポレーション社製の導電性カーボンブラックであるVULCAN XC−72(登録商標)4mgを秤量した粉末を乳鉢で混合し、精製水1700μLとイソプロパノール800μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を15μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間の分散処理を行い、電極触媒材料を含む触媒インクを作製した。
【0064】
(比較例1)
実施例1で作製した酸化銅の連結集合体に代えて、市販の酸化銅ナノ粒子(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製 544868 Copper(II) oxide)を準備し、これを電極触媒材料として使用したこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒材料を含む触媒インクを作製した。
【0065】
(比較例2)
実施例2で作製した酸化銅の連結集合体に代えて、市販の酸化銅ナノ粒子(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製 544868 Copper(II) oxide)を準備し、これを電極触媒材料として使用したこと以外は、実施例2と同様にして電極触媒材料を含む触媒インクを作製した。
【0066】
(比較例3)
実施例3で作製した酸化銅の連結集合体に代えて、市販の酸化銅ナノ粒子(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製 544868 Copper(II) oxide)を準備し、これを電極触媒材料として使用したこと以外は、実施例3と同様にして電極触媒材料を含む触媒インクを作製した。
【0067】
<電極の作製>
上記の実施例・比較例で得られた各電極触媒材料を含む触媒インク15μLをマイクロピペットで採取し、回転電極の5mmΦのグラッシーカーボンの上に滴下し、60℃の恒温槽内で30分加熱して乾燥させた。この滴下作業を3回繰り返した後、回転電極の表面を実体顕微鏡で観察し、グラッシーカーボン上に均質に電極触媒材料の触媒層(電極触媒層)が形成されているのを確認した。
【0068】
<酸化還元反応における触媒活性の評価>
その後、各電極触媒材料について酸素還元反応(ORR)活性評価を行った。具体的には、対流ボルタンメトリー法により、ORR活性評価を行った。PINE INSTRUMENT社製の回転リングディスク電極装置、ポテンショスタット(HSV−110)、電解液として0.1MのKOH水溶液を使用し、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定で安定性を確認した。その後、リニアスイープボルタンメトリ―(LSV)で触媒活性を評価した。作用電極(WE)として5mmφのグラッシーカーボン電極、対電極(CE)としてコイル状白金電極、参照電極(RE)として銀・塩化銀比較電極を用いた。測定条件は以下の通りである。
【0069】
(1)Arバブリング(30分)
(2)Oバブリング(30分)
(3)CV測定(O中)
+0.2V〜−1.0V、掃引速度:10mV/s、3サイクル
(4)LSV測定(O中)
0.0V〜−0.8V、掃引速度:1mV/s、3サイクル、回転数:2000rpm
【0070】
以上のようにして得られたデータから、電位と電流密度の関係を図7に示すように図示し、触媒活性を評価した。触媒活性は、以下の2種類の基準にて評価した。
【0071】
(1)ORRの開始電位の評価
−5.0×10−5Aでの電位の絶対値で、燃料電池での理論起電力(1.23V)に対しての損失量15%に相当する0.185V以下を合格、0.185V超を不合格と評価した。
【0072】
(2)Pt−C触媒の電流値との比較
−0.7Vでの電流の絶対値で、同じ条件で測定したAlfa Aesar社製Pt−C触媒(20質量%のPt)の電流値1.52mAに対して80%以上の電流値1.216mA以上を合格、1.216mA未満を不合格と評価した。
【0073】
上述の(1)及び(2)の評価がいずれも合格であれば、ORRにおいて高い触媒活性を示すと評価できる。実施例1〜4、比較例1〜3の評価結果を下記表1に示す。
【0074】
<電気伝導度の評価>
グラッシーカーボン上に形成された電極触媒材料の電気伝導度をHIOKI社製抵抗計RM3545の4探針プローブで測定した。なお、電極触媒材料の電気伝導度は次のように作成した基準電極の電気伝導度(100%とする)に対する割合で評価した。
【0075】
実施例3で作成した導電性材料の分散液15μLをマイクロピペットで採取し、回転電極の5mmΦのグラッシーカーボンの上に滴下し、60℃の恒温槽内で30分加熱して乾燥させた。この滴下作業を3回繰り返し、電気伝導度に対する基準電極とした。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から、酸化銅の連結集合体と導電性材料として炭素粒子を有する実施例1〜4では、ORRの開始電位、Pt−C触媒の電流値との比較のいずれも合格基準であり、ORRにおいて高い触媒活性を発揮した。一方で、酸化銅の連結集合体に代えて酸化銅ナノ粒子を使用した比較例1〜3では、ORRの開始電位、Pt−C触媒の電流値との比較の両方で不合格基準であり、ORRにおいて高い触媒活性を得ることができなかった。また、実施例1〜4での中でも実施例1〜3の電極触媒材料は、基準電極(実施例3で作製した導電性材料を含む分散液をグラッシーカーボン上に作製した薄膜)の電気伝導度に対して、1.0%以上の電気伝導度を示し、電気的接触に優れた電極触媒材料であった。
【0078】
また、電極触媒材料の結晶組織について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製SU8020)を用いて観察した。図2は、代表して実施例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像であり、図3は、図2に示されるSEM画像の同視野における反射電子像であり、白色部が酸化銅を示す。図2及び図3より、実施例1で作製された電極触媒材料では、酸化銅が分散して配置されており、酸化銅の連結集合体が凝集せずにORRにおいて触媒活性を示す結晶面が確保できていることが確認できた。さらに、炭素粒子は酸化銅の連結集合体に担持されており、当該炭素粒子は、酸化銅の連結集合体が有するナノ結晶薄片の主表面に接触しつつ、炭素粒子が互いに連なった連続構造体を有していた。これにより、電子を効率的に結晶面に移動できるため、得られた電極触媒材料は、ORRにおいて高い触媒活性を示した。
【0079】
図4は、代表して実施例3で作製された電極触媒材料を、倍率50,000倍で観察した際のSEM画像である。図4に示されるように、酸化銅の連結集合体の外側に向かう端面に炭素粒子が互いに連なった連続構造体が形成されていた。これにより、電子は酸化銅の結晶面に効率的に移動できるため、得られた電極触媒材料は、ORRにおいて高い触媒活性を示した。
【0080】
比較例1についても、実施例1と同様、電極触媒材料の結晶構造について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製SU8020)を用いて観察した。図5は、比較例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像であり、図6は、図5に示されるSEM画像の同視野における反射電子像であり、白色部が酸化銅を示す。図5及び図6より、比較例1で作製された電極触媒材料では、酸化銅ナノ粒子が凝集し、酸化銅の反応面と炭素粒子との距離が遠いため、電子の授受がしにくい組織であることが確認された。
【符号の説明】
【0081】
1 電極触媒材料
20 連結集合体
21 ナノ結晶片
22 主表面
23 端面
30 導電性材料
31 連続構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7