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特開2021-77469燃料電池用の電極触媒材料及び燃料電池用の電極触媒層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-77469(P2021-77469A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】燃料電池用の電極触媒材料及び燃料電池用の電極触媒層
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20210423BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20210423BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20210423BHJP
【FI】
   H01M4/86 M
   H01M4/90 X
   H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-201188(P2019-201188)
(22)【出願日】2019年11月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀和
(72)【発明者】
【氏名】阿部 英樹
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018EE06
5H018EE12
5H018HH03
5H018HH06
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】本発明は、触媒成分として白金を用いずに、酸素還元反応において、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた電極触媒材料に匹敵する高い触媒活性を有する新たな燃料電池用の電極触媒材料及びこれを用いた電極触媒層を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る燃料電池用の電極触媒材料は、金属酸化物と、薄片状の導電性材料と、を有する。前記金属酸化物は、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体であり、複数の前記ナノ結晶片は、前記主表面間に、前記連結集合体の外側に開口して配置された間隙を有している。前記導電性材料は、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と接触する面状部位を有し、該面状部位の面方向の導電性が該面方向に対して直交方向の導電性よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物と、薄片状の導電性材料と、を有する燃料電池用の電極触媒材料であって、
前記金属酸化物が、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体であり、
複数の前記ナノ結晶片が、前記主表面間に、前記連結集合体の外側に開口して配置された間隙を有し、
前記導電性材料が、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と接触する面状部位を有し、該面状部位の面方向の導電性が該面方向に対して直交方向の導電性よりも大きい電極触媒材料。
【請求項2】
前記ナノ結晶片の平均厚さが、10nm未満である請求項1に記載の電極触媒材料。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化銅である請求項1または2に記載の電極触媒材料。
【請求項4】
前記特定の結晶面が、(001)結晶面である請求項3に記載の電極触媒材料。
【請求項5】
前記面状部位の前記面方向に対して直交方向の平均寸法が、10nm未満である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電極触媒材料。
【請求項6】
前記導電性材料が、グラフェンである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電極触媒材料。
【請求項7】
電極上に形成した前記電極触媒材料の電気伝導度が、該電極上に前記導電性材料により形成した層の電気伝導度に対して4.0%以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電極触媒材料。
【請求項8】
前記導電性材料の前記面状部位の面方向の平均寸法が、前記ナノ結晶片の前記主表面の最小寸法より小さい請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電極触媒材料。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電極触媒材料と、高分子電解質と、を含む燃料電池用の電極触媒層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極触媒材料に関し、特に、燃料電池の空気極触媒材料として高い触媒活性を有する電極触媒材料料及びこれを用いた電極触媒層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化の観点から、発電装置や電池性能の改善要求がさらに高まっている。また、発電装置や電池に搭載する電極について、環境負荷や生産コストの低減の観点から、従来の性能を維持、向上しつつ、新たな材料を開発することが要求されている。また、排ガスや温室効果ガスの削減の観点から、燃料電池等の発電装置を用いて自動車等の輸送機器を駆動させることも提案されている。
【0003】
燃料電池に用いられる空気極触媒材料として、従来、炭素粒子表面に白金(Pt)の微粒子を担持させた触媒材料が使用されている。白金は酸素還元反応(以下、「ORR」ということがある。)の触媒として優れ、炭素粒子は導電性に優れていることから、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた触媒材料が、燃料電池の空気極触媒材料として、一般的に使用されている。しかし、白金は、埋蔵量の少ない希少金属であり、高価でもあることから、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた触媒材料に代わる、新たな触媒材料が必要である。
【0004】
また、一般に、白金系触媒は酸素還元反応においてほぼ4電子反応であるのに対して、炭素系触媒の表面においては2電子反応であることが知られている。この場合、正極での酸素還元反応が4電子反応であれば酸素は水に還元されるが、2電子反応の場合、中間体である過酸化水素が生成する。過酸化水素の生成により正極で分極が生じ、酸素還元反応の効率が低下するだけでなく、過酸化水素は電解質である固体高分子膜を損傷させる。このように、過酸化水素は酸素還元反応に使用される触媒の触媒活性を妨げ、電解質を劣化させる要因でもある。そのため、燃料電池の正極用触媒には、過酸化水素の生成を抑制できるように4電子反応を促し、酸素還元反応において触媒活性が高いことも要求される。
【0005】
特許文献1には、カソード電極の触媒として高価な白金を用いず、窒素含有カーボン触媒を備えた燃料電池用の電極触媒が開示されている。しかしながら、触媒成分は炭素系触媒であるため、2電子反応により過酸化水素が生成し、白金に匹敵する酸素還元反応活性を得ることは困難である。
【0006】
特許文献2には、燃料電池のカソード用触媒として、担体粒子に担持される白金又は白金合金を含む触媒粒子の少なくとも一部が、酸化セリウムを含む被覆層で被覆された電極触媒について開示されており、被覆層に含まれる酸化セリウムが、正極の電極反応で生成する過酸化水素を分解する役割を果たすことが示唆されている。しかしながら、金属触媒粒子として、従来と同じく、白金を含む触媒粒子が使用されているため、白金微粒子を担持させた触媒材料に代わる、新たな触媒材料は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/128949号
【特許文献2】特開2017−174562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、触媒成分として白金を用いずに、酸素還元反応において、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた電極触媒材料に匹敵する高い触媒活性を有する新たな燃料電池用の電極触媒材料及びこれを用いた電極触媒層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題に対して鋭意検討を行った結果、触媒成分として、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状のナノ結晶片が相互に連結された連結集合体である触媒活性を有する金属酸化物と、導電性付与成分としての導電性材料と、を備え、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と、前記導電性材料が有する所定の導電特性を示す面とが二次元的に接触している触媒材料を、燃料電池用の電極触媒材料として使用することによって、高価な白金を用いなくとも、酸素還元反応において、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた電極触媒材料に匹敵する高い触媒活性が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 金属酸化物と、薄片状の導電性材料と、を有する燃料電池用の電極触媒材料であって、
前記金属酸化物が、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体であり、
複数の前記ナノ結晶片が、前記主表面間に、前記連結集合体の外側に開口して配置された間隙を有し、
前記導電性材料が、前記ナノ結晶片の少なくとも一部と接触する面状部位を有し、該面状部位の面方向の導電性が該面方向に対して直交方向の導電性よりも大きい電極触媒材料。
[2] 前記ナノ結晶片の平均厚さが、10nm未満である[1]に記載の電極触媒材料。
[3] 前記金属酸化物が、酸化銅である[1]または[2]に記載の電極触媒材料。
[4] 前記特定の結晶面が、(001)結晶面である[3]に記載の電極触媒材料。
[5] 前記面状部位の前記面方向に対して直交方向の平均寸法が、10nm未満である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の電極触媒材料。
[6] 前記導電性材料が、グラフェンである[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の電極触媒材料。
[7] 電極上に形成した前記電極触媒材料の電気伝導度が、該電極上に前記導電性材料により形成した層の電気伝導度に対して4.0%以上である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の電極触媒材料。
[8] 前記導電性材料の前記面状部位の面方向の平均寸法が、前記ナノ結晶片の前記主表面の最小寸法より小さい[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の電極触媒材料。
[9] [1]乃至[8]のいずれか1つに記載の電極触媒材料と、高分子電解質と、を含む燃料電池用の電極触媒層。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、電極触媒材料が、触媒活性を有する金属酸化物の、特定の結晶面が表出している主表面および端面をもつ薄片状のナノ結晶片と、薄片状の導電性材料の、ナノ結晶片の少なくとも一部と接触する面方向の導電性に優れる面状部位と、が接触している複合材料であることにより、触媒成分として高価な白金を用いなくとも、酸素還元反応において4電子反応を促し、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた電極触媒材料に匹敵する高い触媒活性を示す新たな燃料電池用の電極触媒材及びこれを用いた電極触媒層を提供することができる。
【0012】
本発明の態様によれば、金属酸化物が酸化銅、特定の結晶面が(001)結晶面である触媒材料により、酸素還元反応において、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた電極触媒材料に匹敵する高い触媒活性をより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に従う電極触媒材料の実施態様を説明する概略図である。
図2図2は、実施例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像である。
図3図3は、図2に示されるSEM画像の同視野における反射電子像を示す。
図4図4は、比較例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像である。
図5図5は、図4に示されるSEM画像の同視野における反射電子像を示す。
図6図6は、実施例1で作製された電極触媒材料について、金属酸化物と薄片状の導電性材料との接触を示すTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いながら、本発明の実施形態である電極触媒材料及び電極触媒層について説明する。図1は、本発明の電極触媒材料の実施態様を説明する概略図である。
【0015】
<電極触媒材料>
図1に示すように、本発明の実施形態の電極触媒材料1は、触媒活性を有する金属酸化物と、導電性を付与する薄片状の導電性材料30と、を有し、金属酸化物は、特定の結晶面が表出している主表面22および端面23をもつ薄片状である複数のナノ結晶片21が相互に連結された連結集合体20である。連結集合体20は、特定の結晶面が表出している主表面22をもつ薄片状のナノ結晶片21から構成されていることで、優れた触媒活性を発揮する。また、連結集合体20は、複数のナノ結晶片21の主表面22間に、連結集合体20の外側に開口して配置された間隙Gを有している。
【0016】
導電性材料30は、ナノ結晶片21、好ましくは主表面22の少なくとも一部と接触する面状部位31を有している。複数の導電性材料30が互いに重なっている場合、その中の一部の導電性材料30が有する面状部位31が、ナノ結晶片21の少なくとも一部と接触していればよい。例えば、電極触媒材料1が燃料電池の正極に搭載されると、燃料電池の負極触媒材料におけるH→2H+2eの水素酸化反応において生成した電子が、ナノ結晶片21に接触している導電性材料30の面状部位31を通して輸送される。導電性材料30の面状部位31は、ナノ結晶片21の少なくとも一部と接触しているため、導電性材料30の面状部位31と、ナノ結晶片21との面接触が達成される。また、面状部位31の面方向の導電性は、面方向に対して直交方向の導電性よりも大きい特性を有している。導電性材料30における導電性が大きい面状部位31と、ナノ結晶片21の少なくとも一部とが互いに面接触していることにより、金属酸化物である連結集合体20と導電性材料30との間の電子授受が達成される。そのため、電極触媒材料1を酸素還元反応に用いた場合、4電子反応が促され、電極触媒材料1は、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた電極触媒材料に匹敵する高い触媒活性を示す。
【0017】
一方、導電性材料30の面状部位31がナノ結晶片21の全面、特に主表面22の全面を覆うと、触媒活性面である主表面22が露出されず、正極での反応物質を触媒活性面に供給できなくなり、酸素還元反応が阻害される。ナノ結晶片21の少なくとも一部、特に主表面22の少なくとも一部と導電性材料30の面状部位31とが接触している電極触媒材料1では、導電性材料30の面状部位31との良好な接触と触媒活性の向上が実現される。また、導電性材料30の面状部位31が、ナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部と接触していることにより、導電性材料30が表出している主表面22に担持される。そのため、例えば、外部等から衝撃があっても、導電性材料30の面状部位31とナノ結晶片21との接触を良好に維持することができる。一方、導電性材料30の面状部位31が、ナノ結晶片21の端面23の少なくとも一部で電気的に接触している場合、触媒活性面を阻害せずに導電性能を向上できる。そのため、電極触媒材料1では、連結集合体20を担体として導電性材料30を保持する形態、導電性材料30の面状部位31を担体としてナノ結晶片21を保持する形態の両方が可能である。
【0018】
導電性材料30の面状部位31は、ナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部と電気的に接触していることが好ましい。これにより、連結集合体20と導電性材料30の面状部位31との間の電子授受が円滑化され、触媒活性がより向上する。導電性材料30の面状部位31と、ナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部とが良好に電気的に接触している場合、電極上に形成した電極触媒材料1の電気伝導度は、該電極上に導電性材料30により成した層の電気伝導度に対して4.0%以上であることが好ましい。
【0019】
4電子反応又は2電子反応のいずれの反応であるかは、回転ディスク電極法により検証することができる。回転ディスク電極法は、ディスク電極を回転させることで生じる電解質溶液の対流−拡散を利用する方法である。ディスク電極を電解質溶液の中で回転させると、物質移動は回転数によって規制され、良好な電流−電位曲線が得られる。そして回転数を変化させながらディスク電極を回転させ、電流値を測定する。回転数と電流値との関係を規定するKoutecky−Levich プロットにより反応次数が求められ、その反応次数に基づき、4電子反応又は2電子反応のいずれであるかを見出すことができる。具体的には、以下の式(1)に示されるような、測定電流iと電極回転数ωの間のKoutecky−Levich プロット関係式から、反応次数nを求める。下記式(1)から算出される反応次数nが4に近い値を示す場合、測定対象とした反応は4電子反応であると認定できる。
【0020】
−1/i=−1/ik’+1/0.620nFAD2/3cν−1/6ω1/2・・・(1)
i:測定電流(mA)
k’:拡散の影響がないときの電荷移動電流(mA)
n:反応電子数
F:ファラデー定数(96485C・mol−1
A:白金薄膜面積
D:酸素拡散係数
c:電解質溶液の濃度、
ν:動粘性係数
ω:角速度(rad・s−1
【0021】
<金属酸化物>
図1に示すように、金属酸化物は、主表面22と端面23をもつ複数のナノ結晶片21が相互に連結された連結集合体20であり、花のような形状を示す。複数のナノ結晶片21の連結状態は、特に限定されず、複数のナノ結晶片21が連結して集合体を形成していればよい。
【0022】
ナノ結晶片21の形状は、主表面22の大きさに対し、端面23の厚さが薄い、薄片状である。連結集合体20の外面において、隣接する複数のナノ結晶片21の主表面22の間には間隙Gが形成されており、この間隙Gは、連結集合体20の外側に開口して配置されている。連結集合体20が間隙Gを有することにより、後述する電解質が間隙Gに充填され、酸素還元反応における反応物質が効果的に触媒活性面である主表面に到達できる。そのため、反応生成物である水(水分)の効果的な移動が促進される。
【0023】
ナノ結晶片21の主表面22とは、薄片状のナノ結晶片21を構成する外面のうち、表面積が広い面のことであって、表面積が狭い端面23の上下端縁を区画形成する両表面を意味する。酸素還元反応に使用される電極触媒材料1では、主表面22に特定の結晶面が表出している。特定の結晶面が表出している主表面22が、高い触媒活性を示す触媒活性面となるため、主表面22の表面積が大きいほど、酸素還元反応をより効率的に行うことができる。
【0024】
ナノ結晶片21の主表面22の最小寸法は、特に限定はされないが、10nm以上1.0μm未満であることが好ましい。また、ナノ結晶片21の平均厚さtは、特に限定はされないが、主表面22の最小寸法の1/10以下であることが好ましい。これにより、ナノ結晶片21の主表面22の面積が端面23の面積に比べて約10倍以上広くなり、連結集合体20の単位量当たりの触媒活性が、ナノ粒子の単位量当たりの触媒活性と比べて向上する。ナノ結晶片の平均厚さは10nm未満であることが好ましい。主表面22の最小寸法が1.0μm以上であると、ナノ結晶片21を高密度で連結させることが困難となる傾向にあり、最小寸法が10nm未満であると、隣接する複数のナノ結晶片21の主表面22の間で十分な間隙Gを形成することができなくなる傾向にある。また、ナノ結晶片21の厚さ方向の剛性の低下を抑制するため、ナノ結晶片21の平均厚さtは1.0nm以上であることが好ましい。なお、ナノ結晶片21の主表面22の寸法は、ナノ結晶片21の形状を損なわないように連結集合体20から分離したナノ結晶片21を、個別のナノ結晶片として測定することにより求めることができる。測定法の具体例としては、ナノ結晶片21の主表面22に対し、外接する最小面積の長方形を描き、長方形の短辺および長辺を、ナノ結晶片21の最小寸法および最大寸法として、それぞれ測定する。
【0025】
連結集合体20を構成するナノ結晶片21は、金属酸化物で構成されている。金属酸化物としては、例えば、貴金属の酸化物、遷移金属の酸化物、それらの合金の酸化物、複合酸化物等が挙げられる。貴金属及びその合金としては、例えば、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)及び金(Au)の群から選択される1種の成分からなる金属、又はこれらの群から選択される1種以上の成分を含む合金が挙げられる。また、遷移金属及びその合金としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及び亜鉛(Zn)の群から選択される1種の成分からなる金属、又はこれらの群から選択される1種以上の成分を含む合金が挙げられる。
【0026】
これらの金属酸化物のうち、遷移金属の群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物が好ましい。遷移金属の金属酸化物は、金属資源として地球上に豊富に存在しており、貴金属に比べて安価であるため、生産コストを低減することができる。遷移金属のうち、Cu、Ni、Co及びZnの群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物であることがより好ましく、このような金属酸化物は少なくとも銅を含むことがさらに好ましい。また、銅を含む金属酸化物としては、例えば、酸化銅、Ni−Cu酸化物、Cu−Pd酸化物等が挙げられ、酸化銅(CuO)が特に好ましい。
【0027】
<主表面の結晶方位>
本発明の電極触媒材料1が燃料電池用の電極に搭載される場合、ナノ結晶片21において特定の結晶面が表出している主表面22が触媒活性面となるために、主表面22が特定の結晶方位を有するように構成される。
【0028】
ナノ結晶片21の主表面22が還元性の触媒活性面となるように構成するには、ナノ結晶片21を構成する金属酸化物において、触媒活性を発揮する金属原子の面を、主表面22に位置するように配向させて、主表面22を金属原子面で構成すればよい。具体的には、主表面22に存在する金属酸化物を構成する、金属原子及び酸素原子に占める金属原子の個数割合を80%以上とすることが好ましい。
【0029】
一方、ナノ結晶片21の主表面22が酸化性の触媒活性面となるように構成するには、ナノ結晶片21を構成する金属酸化物において、触媒活性を発揮する酸素原子の面を、主表面22に位置するように配向させて、主表面22を酸素原子面で構成すればよい。具体的には、主表面22に存在する金属酸化物を構成する、金属原子及び酸素原子に占める酸素原子の個数割合を80%以上とすることが好ましい。
【0030】
触媒活性面の役割に応じて、ナノ結晶片21の主表面22に存在する金属酸化物を構成する、金属原子及び酸素原子に占める金属原子又は酸素原子の個数割合を調整することにより、主表面22の触媒活性機能を高めることができる。このようなナノ結晶片21を有する電極触媒材料1は、十分な触媒活性を発揮できる。
【0031】
また、ナノ結晶片21の主表面22が特定の結晶方位を有するとしたのは、ナノ結晶片21を構成する金属酸化物の種類に応じて、主表面22に多く存在する結晶方位が異なるためである。そのため、主表面22の結晶方位は具体的には記載はしないが、例えば、金属酸化物が酸化銅(CuO)の場合には、主表面22を構成する単結晶の主な結晶方位、すなわち、触媒活性面としての特定の結晶面は、(001)結晶面であることが好ましい。
【0032】
主表面22を金属原子面とする構成としては、金属原子面と酸素原子面が規則的に交互に積層され、原子の並び方に規則性を有する規則構造として、主表面22に金属原子面が位置するように、金属酸化物の結晶構造を構成することが好ましい。具体的には、主表面22が、同じ配向をもつ単結晶の集合体で構成された構造の場合だけではなく、異なる結晶構造や異なる配向をもつ単結晶の集合体、結晶粒界や多結晶を含んだ集合体で構成された構造であっても、主表面22に金属原子面が存在する場合が含まれる。
【0033】
<導電性材料>
図1に示すように、本発明の実施形態の電極触媒材料1は、金属酸化物である連結集合体20と薄片状の導電性材料30とを有している。また、複数の導電性材料30は、相互に接触しながらナノ結晶片21の主表面22の少なくとも一部に担持されていてもよい。導電性材料30は薄片状の形状であるため、ナノ結晶片21の主表面22と面接触が可能な面状部位31を有する。導電性材料30の面状部位31は、ナノ結晶片21の主表面22の主表面22の少なくとも一部だけでなく、主表面22及び端面23の両方の少なくとも一部で面接触していてもよい。導電性材料30の面状部位31が、ナノ結晶片21の主表面22の一部が露出した状態で担持されることにより、触媒活性面の露出を維持しつつ、ナノ結晶片21と接触し得る範囲を増大させることができる。
【0034】
導電性材料30の面状部位31の面方向に対して直交方向(すなわち、導電性材料30の厚さ)の平均寸法は、導電性材料30がナノ結晶片21の少なくとも一部と接触可能であり、かつナノ結晶片21の厚さ方向の剛性の低下を抑制できる程度であればよく、10nm未満であることが好ましい。特に、導電性材料30は、ナノ結晶片の平均厚さよりも薄いことが好ましい。さらに、導電性材料30の面状部位31の面方向の平均寸法は、ナノ結晶片の平均厚さよりも小さいことが好ましい。これにより、ナノ結晶片21の端面に導電性材料30の面状部位31が接続することも可能となり、ナノ結晶片21の端面から主表面への電子の輸送により、反応活性面はナノ結晶片21の主表面、電子の受け取りはナノ結晶片21の端面との役割分担ができる。また、導電性材料30とナノ結晶片21との接触面積は、金属酸化物である連結集合体20の触媒活性が阻害されるのを防止する点から、ナノ結晶片21の主表面22の面積よりも小さければよく、ナノ結晶片21の主表面22の面積の50%以下であることが好ましい。これにより、触媒活性面である特定の結晶面が表出しているナノ結晶片21の主表面22が、導電性材料30の面状部位31で完全に被覆されることが防止され、その結果、主表面22が優れた触媒機能を発揮できる。また、導電性材料30の面状部位31の面方向の平均寸法は、ナノ結晶片21の主表面の最小寸法より小さいことが好ましい。これにより、導電性材料30の面状部位31がナノ結晶片21の主表面22との接触を保ちつつ、ナノ結晶片21の湾曲した主表面22に追従することができる。
【0035】
導電性材料30は、面状部位31を有する薄片状の形態を有していればよい。このような材料として、例えば、二硫化ハフニウム、二硫化モリブデン、多孔性還元型酸化グラフェン等の二次元結晶材料が挙げられ、特に、グラフェンが好ましい。
【0036】
グラフェンは、非常に優れた電気伝導性、熱伝導性を有しており、ハニカム状に炭素原子が結合して平面的に広がる2次元結晶構造を有する。結晶構造が2次元系であるため、結晶面内方向に高い導電性を有する。このことから、導電性材料30の面状部位31の面方向の導電性は、面方向に対して直交方向(厚さ方向)の導電性よりも大きい特性を有している。グラフェンは、面方向の導電性に優れているため、例えば、電極触媒材料1が燃料電池の正極に搭載されると、水素酸化反応にて生成した電子が、導電性材料30の結晶面に相当する面状部位31へ伝達される。導電性材料30の面状部位31は、グラフェン(導電性材料30)がナノ結晶片21、特に主表面22の少なくとも一部と接触しているため、導電性材料30を構成するグラフェンは、グラフェンの結晶面にてナノ結晶片21と面接触している。よって、グラフェンの面状部位31からナノ結晶片21への電子授受が円滑化される。燃料電池の正極での酸素還元反応において、触媒材料である電極触媒材料1の金属酸化物が、グラフェンの面状部位31から円滑に電子を授受することで、酸素還元反応の効率が向上する。
【0037】
<電極触媒材料の用途>
本発明の実施形態である電極触媒材料1は、燃料電池用の空気極触媒材料として使用することができる。
【0038】
<電極触媒材料の製造方法>
次に、本発明の電極触媒材料の製造方法例について説明する。電極触媒材料の製造方法例としては、薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体である金属酸化物を調製する金属酸化物調製工程Saと、調製された金属酸化物に導電性材料を担持させる導電性材料担持工程Sbと、を有する。
【0039】
金属酸化物調製工程Saは、混合工程Sa1と、温度と圧力を印加する水熱合成工程Sa2と、を有する。
【0040】
(混合工程Sa1)
混合工程は、金属酸化物の原料となる、貴金属、遷移金属またはそれらの合金を含む化合物の水和物、特に金属ハロゲン化物の水和物と、金属酸化物の前駆体である金属錯体の配位子を構成する炭酸ジアミド骨格を有する有機化合物とを、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の有機溶媒、水、又はその両方を含む溶媒に溶かす工程である。金属ハロゲン化物の水和物として、例えば、塩化銅(II)二水和物、炭酸ジアミド骨格を有する有機化合物として、例えば、尿素が挙げられる。
【0041】
(水熱合成工程Sa2)
水熱合成工程は、混合工程Sa1で得られた混合溶液に所定の熱、圧力を加えて、所定時間、放置する工程である。混合溶液は、100℃以上300℃以下で加熱することが好ましい。加熱温度が100℃未満では、金属酸化物が生成できず、300℃超では、耐熱容器を構成する気密保持のためのパッキンの耐熱温度を超え、気密が維持できず外部に揮発気体が漏れるので好ましくない。加熱時間は、10時間以上であることが好ましい。加熱時間が10時間未満では、未反応の材料が残留する場合がある。所定の圧力は、100℃における水の蒸気圧(1気圧)以上の圧力であることが好ましい。所定の熱・圧力を加えるため、例えば、耐圧容器、密閉容器を用いて加熱、加圧する方法が挙げられる。混合溶液を加熱、加圧した後、室温に冷却して一定時間保持した後、生成した沈殿物を回収する。回収した沈殿物を、メタノール、純水等で洗浄し、所定時間乾燥させる。これにより、所望とする金属酸化物が作製される。
【0042】
金属酸化物調製工程Saの後に、導電性材料担持工程Sbを実施する。導電性材料担持工程Sbは、(A)調製した金属酸化物の分散液を作製する金属酸化物分散工程Sb1、導電性材料の分散液を作製する導電性材料分散工程Sb2、又はその両方の分散液を作製する工程と、(B)金属酸化物の分散液に導電性材料を添加して混合するか、導電性材料の分散液に調製した金属酸化物を添加して混合するか、又は金属酸化物の分散液と導電性材料の分散液とを混合する分散処理工程Sb3と、を有する。
【0043】
(金属酸化物分散工程Sb1)
金属酸化物分散工程は、分散媒(例えば、水)に有機溶媒を添加、混合した混合液に、金属酸化物調製工程Saで調製した金属酸化物を添加後、超音波分散機等で分散処理をして金属酸化物の分散液を作製する工程である。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のモノアルコールが挙げられる。金属酸化物の分散液に含まれる金属酸化物の含有量は、金属酸化物の分散性と製造効率のバランスの点から、0.05質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下が特に好ましい。なお、必要に応じて、金属酸化物の分散液に燃料電池に使用される電解質をさらに添加、分散させてもよい。電解質としては、例えば、Nafion(登録商標)等の高分子電解質が挙げられる。
【0044】
(導電性材料分散工程Sb2)
導電性材料分散工程は、分散媒(例えば、水)に有機溶媒を添加、混合した混合液に、導電性材料を添加後、超音波分散機等で分散処理をして導電性材料の分散液を作製する工程である。有機溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のモノアルコールが挙げられる。導電性材料の分散液に含まれる導電性材料の含有量は、導電性材料の分散性と製造効率のバランスの点から、0.05質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下が特に好ましい。なお、必要に応じて、導電性材料の分散液に燃料電池に使用される電解質をさらに添加、分散させてもよい。電解質としては、例えば、Nafion(登録商標)等の高分子電解質が挙げられる。
【0045】
(分散処理工程Sb3)
分散処理工程は、金属酸化物分散工程Sb1で作製した金属酸化物の分散液に導電性材料を添加するか、導電性材料分散工程Sb2で作製した導電性材料の分散液に金属酸化物調製工程Saで調製した金属酸化物を添加するか、又は金属酸化物分散工程Sb1で作製した金属酸化物の分散液と導電性材料分散工程Sb2で作製した導電性材料の分散液とを混合して、超音波分散機等で分散処理を行う工程である。分散処理工程では、電極触媒材料の導電性と触媒活性のバランスの点から、電極触媒材料の構成において金属酸化物の触媒活性面を導電性材料が被覆する面積が50%以下であることが好ましいため、金属酸化物と導電性材料の含有量を調整する。金属酸化物として酸化銅のナノ結晶片、導電材料としてグラフェンの場合、金属酸化物と導電性材料とを等質量で含有することにより、好ましい被覆面積が得られる。このような工程を経て、電極触媒材料1が作製される。
【0046】
<電極触媒層>
本発明の実施形態である電極触媒層は、上述した電極触媒材料1と、高分子電解質と、を含む。電極触媒層は、電極触媒材料1と高分子電解質が適度に混ざり合ったマトリクスであり、電極触媒材料1と高分子電解質の界面で電極反応が行われる。金属酸化物は、主表面22と端面23をもつナノ結晶片21の形態を有している。
【0047】
電極触媒層は、水素酸化反応が必要となる燃料電池の負極(燃料極)、又は酸素還元反応が必要となる燃料電池の正極(空気極)上に形成される。電極触媒層が燃料電池の正極上に形成される場合、酸素は4電子反応により還元されてH2O(水分)が生成される。
【0048】
電極触媒層は、例えば、電極触媒材料1と高分子電解質と溶媒とを含む組成物(電極触媒層用組成物)をインク又はペーストにして、電極上に塗布し、次いで乾燥することによって形成できる。高分子電解質としては、例えば、パーフルオロカーボン材料等の固体高分子電解質が挙げられ、実績、導電率の点でNafion(登録商標)が好ましい。尚、高分子とは、質量平均分子量(Mw)が10000以上である分子を意味する。また、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのモノアルコール;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒;アセトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのヘテロ元素含有溶媒などが挙げられる。これらの中でも、乾燥が容易な点で水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のモノアルコールが好ましい。溶媒は、これらのいずれか1種であっても、2種以上を含む混合物であってもよい。
【0049】
電極触媒層を燃料電池の正極に用いる場合、電極触媒層用の組成物、又は該組成物に溶媒を加えて分散させたインク又はペーストを塗布し、次いで乾燥させて、電極触媒層を形成してもよい。また電極と電極触媒層用の組成物とをプレス成形してもよい。
【0050】
電極触媒層を燃料電池の正極に用いる場合、電極触媒層は、ガス拡散層と積層されて正極を構成してもよい。また、電極触媒材料1をガス拡散層に担持したものを、燃料電池の正極としてもよい。ガス拡散層は、電極触媒材料1への電子授受を行うとともにガスを供給する役割を有しており、導電性のある多孔質材料が用いられる。ガス拡散層としては、酸素還元反応における触媒性能を良好に維持する観点から、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素材料から構成されるシートが好ましい。電極触媒層とガス拡散層とを積層する場合、ガス拡散層の表面、特に電極触媒層側表面は、必要に応じて、炭素材が緻密化した撥水層になっていてもよい。
【0051】
電極触媒層をガス拡散層に積層する場合、ガス拡散層に電極触媒層用の組成物、又は該組成物に溶媒を加えて分散させたインク又はペーストを塗布し、次いで乾燥させて、電極触媒層を形成してもよい。インク又はペーストを塗布する場合は、溶媒を蒸発させて乾固するために熱処理を加えてもよい。
【0052】
電極触媒層を含む正極、特にガス拡散層及及び電極触媒層を含む正極と、電極触媒層を含む負極、特に別のガス拡散層及び電極触媒層を含む負極と、を積層し、かつ各電極の両外側にセパレーターを配置することによって燃料電池を作製できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
<金属酸化物の作製>
金属酸化物として、酸化銅の(001)結晶面が表出している主表面をもつ薄片状であるナノ結晶片が相互に連結された連結集合体を作製した。具体的には、2.0gの塩化銅(II)二水和物(純正化学株式会社製)と、1.6gの尿素(純正化学株式会社製)とを混合した後、180mlのエチレングリコール(純正化学株式会社製)と120mlの水を添加してさらに混合した。得られた塩化銅と尿素の混合溶液を、内容積500mlの耐圧硝子容器に注入し、該容器内の密閉雰囲気下で180℃、24時間の熱処理を行った。その後、混合溶液を、室温に冷却して1日保持した。その後、密閉した容器から生成した薄膜形状の沈殿物を回収した。次いで、この沈殿物を、メタノールおよび純水で洗浄して、真空下、70℃で10時間真空乾燥させ、酸化銅のナノ結晶片が相互に連結された連結集合体を得た。
【0056】
<金属酸化物の分散液の作製>
上記のようにして得られた酸化銅の連結集合体4mgを精製水1700μLとイソプロパノール800μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を15μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、酸化銅の連結集合体の分散液を作製した。
【0057】
<電極触媒材料の作製>
上記のようにして得られた酸化銅の連結集合体の分散液に、シグマ−アルドリッチ社製グラフェン900412(XG Sciences社 xGnP M−5)4mgを添加して、超音波分散機で20〜40℃にて10分の分散処理を行い、酸化銅の連結集合体にグラフェンが担持された電極触媒材料を作製した。
【0058】
(実施例2)
<導電性材料の分散液の作製>
実施例1で使用したグラフェンに代えて、シグマ−アルドリッチ社製グラフェン900420(XG Sciences社 xGnP M−15)4mgを、精製水1700μLとイソプロパノール800μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を15μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、導電性材料の分散液を作製した。
【0059】
<電極触媒材料の作製>
上記のようにして得られた導電性材料の分散液に、実施例1で得られた酸化銅の連結集合体4mgを添加して、超音波分散機で20〜40℃にて10分の分散処理を行い、酸化銅の連結集合体にグラフェンが担持された電極触媒材料を作製した。
【0060】
(実施例3)
<導電性材料の分散液の作製>
実施例1で使用したグラフェンに代えて、シグマ−アルドリッチ社製グラフェン900696分散液(分散媒:水、グラフェン濃度0.5〜1.0mg/ml)1700μLとイソプロパノール800μLの混合液に、高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を15μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、導電性材料の分散液を作製した。
【0061】
<電極触媒材料の作製>
上記のようにして得られた導電性材料の分散液に、実施例1で得られた酸化銅の連結集合体4mgを添加して、超音波分散機で20〜40℃にて10分の分散処理を行い、酸化銅の連結集合体にグラフェンが担持された電極触媒材料を作製した。
【0062】
(実施例4)
<導電性材料の分散液の作製>
実施例1で使用したグラフェンに代えて、アイテック社製iGurafenのグラフェン分散液(分散媒:水、グラフェン濃度10質量%)40mgを、精製水850μLとイソプロパノール400μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を8μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、導電性材料の分散液を作製した。
【0063】
<金属酸化物の分散液の作製>
実施例1で得られた酸化銅の連結集合体4mgを精製水850μLとイソプロパノール400μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を7μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、酸化銅の連結集合体の分散液を作製した。
【0064】
<電極触媒材料の作製>
上記のようにして得られた導電性材料の分散液と酸化銅の連結集合体の分散液を混合して、超音波分散機で20〜40℃にて10分の分散処理を行い、酸化銅の連結集合体にグラフェンが担持された電極触媒材料を作製した。
【0065】
(実施例5)
<電極触媒材料の作製>
実施例1で作製した酸化銅の連結集合体4mgと、シグマ−アルドリッチ社製グラフェン900412(XG Sciences社 xGnP M−5)4mgを秤量した粉末を乳鉢で混合し、精製水1700μLとイソプロパノール800μLの混合液に添加し、さらに高分子電解質としてNafion(登録商標)5質量%溶液を15μL添加した。得られた混合液を超音波分散機で20〜40℃にて1時間分散させ、電極触媒材料を作製した。
【0066】
(比較例1)
実施例1で使用したグラフェンに代えて、キャボット社製カーボンブラック(Vulcan Carbon XC−7)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒材料を作製した。
【0067】
(比較例2)
実施例1で作製した酸化銅の連結集合体に代えて、市販の酸化銅ナノ粒子(シグマ−アルドリッチ社製 544868)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒材料を製造した。
【0068】
(比較例3)
実施例1で使用したグラフェンに代えて、キャボット社製カーボンブラック(Vulcan Carbon XC−7)を使用し、且つ、実施例1で作製した酸化銅の連結集合体に代えて、市販の酸化銅ナノ粒子(シグマ−アルドリッチ社製 544868)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒材料を作製した。
【0069】
<電極の作製>
上記のようにして得られた各実施例・比較例の電極触媒材料15μLをマイクロピペットで採取し、回転電極の5mmΦのグラッシーカーボンの上に滴下し、60℃の恒温槽内で30分加熱して乾燥させた。この滴下作業を3回繰り返した後、回転電極の表面を実体顕微鏡で観察し、グラッシーカーボン上に均質に電極触媒材料の触媒層(電極触媒層)が形成されているのを確認した。
【0070】
<酸化還元反応における触媒活性の評価>
その後、各電極触媒材料についてORR活性評価を行った。具体的には、対流ボルタンメトリー法により、ORR活性評価を行った。PINE INSTRUMENT社製の回転リングディスク電極装置、ポテンショスタット(HSV−110)、電解液として0.1MのKOH水溶液を使用し、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定で安定性を確認した。その後、リニアスイープボルタンメトリ―(LSV)で反応次数を求めた。作用電極(WE)として5mmφのグラッシーカーボン電極、対電極(CE)としてコイル状白金電極、参照電極(RE)として銀・塩化銀比較電極を用いた。回転数を400、800、1600、2400、320rpmに順次変化させて、電極回転数ωに対する測定電流iからKoutecky−Levich プロットに基づき,反応次数nを算出した。反応次数が3.80以上であれば、酸素還元反応において4電子反応が促されていると評価した。
【0071】
<電気伝導度の評価>
グラッシーカーボン上に形成された電極触媒材料の電気伝導度をHIOKI社製抵抗計RM3545の4探針プローブで測定した。なお、電極触媒材料の電気伝導度は次のように作製した基準電極の電気伝導度(100%とする)に対する割合で評価した。
【0072】
実施例2で作製した導電性材料の分散液15μLをマイクロピペットで採取し、回転電極の5mmΦのグラッシーカーボンの上に滴下し、60℃の恒温槽内で30分加熱して乾燥させた。この滴下作業を3回繰り返し、電気伝導度に対する基準電極とした。
【0073】
実施例1〜5、比較例1〜3の評価結果を下記表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1から、酸化銅の連結集合体と薄片状の導電性材料であるグラフェンを有する実施例1〜5では、いずれも反応次数が3.80を超えており、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた場合の反応次数4.00に近い値を示した。そのため、実施例1〜5の電極触媒材では、触媒成分として高価な白金を用いなくとも、酸素還元反応において4電子反応が促され、炭素粒子表面に白金微粒子を担持させた電極触媒材料に匹敵する高い触媒活性を発揮した。また、実施例1〜5での中でも、実施例1〜4の電極触媒材料での電気伝導度は、基準電極(実施例2で作製した導電性材料を含む分散液をグラッシーカーボン上に作製した薄膜)の電気伝導度に対して、4.0%より高く電気的接触に優れた電極触媒材料が得られた。
【0076】
また、電極触媒材料の結晶構造について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製SU8020)を用いて観察した。図2は、代表して実施例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像であり、図3は、図2に示されるSEM画像の同視野における反射電子像であり、白色部が酸化銅を示す。図2及び図3より、実施例1で作製された電極触媒材料では、酸化銅が分散して配置されており、酸化銅の連結集合体が凝集せずにORRにおいて触媒活性を示す結晶面が確保できていることが確認できた。また、金属酸化物である酸化銅の連結集合体と薄片状の導電性材料であるグラフェンとの接触について、透過電子顕微鏡(TEM、日本電子社製JEM−2100Plus)を用いて観察した。図6は、実施例1で作製された電極触媒材料を観察した際のTEM画像である。図6に示されるように、酸化銅の連結集合体とグラフェンは、二次元的に接触していることが観察された。
【0077】
一方、薄片状の導電性材料に代えて粒子状の導電性材料が使用された比較例1、酸化銅の連結集合体に代えて酸化銅ナノ粒子が使用された比較例2、薄片状の導電性材料に代えて粒子状の導電性材料が使用され、且つ酸化銅の連結集合体に代えて酸化銅ナノ粒子が使用された比較例3では、いずれも反応次数が3.80未満であり、所望とする反応次数を達成できなかった。
【0078】
比較例1についても、実施例1と同様、電極触媒材料の結晶構造について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製SU8020)を用いて観察した。図4は、比較例1で作製された電極触媒材料を、倍率30,000倍で観察した際のSEM画像であり、図5は、図4に示されるSEM画像の同視野における反射電子像を示す。図4及び図5より、比較例1で作製された電極触媒材料では、カーボンの細かな粒同士の連結構造は観察されるものの、酸化銅との接続が点もしくは線であることが多く、実施例と比較すると導電性材料同士の連続性が劣っている。そのため、比較例1の電極触媒材料では、電子の授受がしにくく、4電子反応が促されにくいことがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1 電極触媒材料
20 連結集合体
21 ナノ結晶片
22 主表面
23 端面
30 導電性材料
31 面状部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6