【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる複数のアルミニウム素線が扁平状に配列された導体と、導体を被覆する被覆部と、を有する被覆電線と、被覆電線が接続された端子と、を備え、導体の端子と接続された部分の少なくとも一部が、複数のアルミニウム素線の溶融によって一体化された一体化部を有する。被覆電線の導体の断面積は8mm
並列して複数設けられたアルミニウム素線を、一部のアルミニウム素線と残部のアルミニウム素線との2つの群から構成し、前記一部のアルミニウム素線の少なくとも一部および前記残部のアルミニウム素線の少なくとも一部のそれぞれに、前記一体化部が設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の端子付き電線。
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる複数のアルミニウム素線が扁平状に配列された導体、および前記導体を被覆する被覆部を有する被覆電線と、前記被覆電線が接続された端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、
前記被覆電線の端部において前記導体を露出させて導体露出部を形成した後、前記導体露出部の少なくとも一部を、複数の前記アルミニウム素線の溶融によって一体化させる一体化部形成工程と、
前記被覆電線の端部における前記導体露出部において前記端子と接続する端子接続工程と、を含む
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のAl素線を用いて構成された被覆電線を圧着端子に圧着させる場合、Al素線からなる導体の中心にセレーションが作用せず、Al素線間の導通性も低いという問題があった。この場合、Al素線を導体として用いた被覆電線を端子に圧着接続して構成された端子付き電線は、冷熱環境や振動環境が厳しい車載用を考慮すると、接続信頼性が不十分になる可能性があるという問題があった。すなわち、Al素線によって太径で扁平の被覆電線を構成する場合、Al素線間の導通性を確保することによって、接続信頼性を向上させる技術が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、アルミニウム素線を複数用いて構成された太径で扁平状の被覆電線における素線間の導通性を確保でき、接続信頼性が向上された端子付き電線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる複数のアルミニウム素線が扁平状に配列された導体と、前記導体を被覆する被覆部と、を有する被覆電線と、前記被覆電線が接続された端子と、を備え、前記導体の前記端子と接続された部分の少なくとも一部が、複数の前記アルミニウム素線の溶融によって一体化された一体化部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆電線の前記導体の断面積が8mm
2以上60mm
2未満であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記一体化部は、アーク溶接による溶融によって一体化された部分であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記一体化部は、前記導体の一部に部分的に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記一体化部が設けられる箇所は、前記アルミニウム素線の本数未満であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆電線の端部において露出した導体露出部は、断面が略楕円形状であって複数の前記アルミニウム素線が集合されてなる少なくとも1本の集合導体から構成され、前記一体化部は、前記集合導体の先端部を含む一部に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記アルミニウム素線が複数並列して設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、この構成において、前記一体化部は、複数の前記アルミニウム素線の間の位置に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、並列して複数設けられたアルミニウム素線を、一部のアルミニウム素線と残部のアルミニウム素線との2つの群から構成し、前記一部のアルミニウム素線の少なくとも一部および前記残部のアルミニウム素線の少なくとも一部のそれぞれに、前記一体化部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、この構成において、前記一部のアルミニウム素線および前記残部のアルミニウム素線がそれぞれ、複数のアルミニウム素線が集合された集合導体からなることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる複数のアルミニウム素線が扁平状に配列された導体、および前記導体を被覆する被覆部を有する被覆電線と、前記被覆電線が接続された端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、前記被覆電線の端部において前記導体を露出させて導体露出部を形成した後、前記導体露出部の少なくとも一部を、複数の前記アルミニウム素線の溶融によって一体化させる一体化部形成工程と、前記被覆電線の端部における前記導体露出部において前記端子と接続する端子接続工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、上記の発明において、前記アルミニウム素線が複数並列して設けられ、前記導体露出部の端部を、前記アルミニウム素線の露出した部分の長短によって、凹凸状に成形する成形工程をさらに含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、上記の発明において、前記アルミニウム素線の溶融をアーク溶接によって行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る端子付き電線およびその製造方法によれば、アルミニウム素線を複数用いて構成された太径で扁平状の被覆電線における素線間の導通性を確保でき、接続信頼性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0024】
まず、本発明の実施形態について説明する前に、本発明者が行った鋭意検討について説明する。まず、本発明者の知見によれば、Al素線を複数備えた被覆電線において、Al素線の表面に酸化膜が形成されやすく、形成された酸化膜が電気抵抗となってAl素線間の導通性を確保することが困難になる。そこで、本発明者が検討を行い、Al素線間の導通性を確保するために、被覆電線の圧着前の処理として、例えばアーク溶接などによって同種の金属を溶融させて接合させることにより、Al素線間の導通性を確保する方法を案出した。さらに、本発明者らは、複数のAl素線を有する大径の扁平電線からなる被覆電線において、導体露出部の一部を溶融させて、複数本のアルミニウム素線を一体化させる方法を案出した。以下に説明する実施形態は、以上の鋭意検討により案出されたものである。
【0025】
(第1の実施形態)
(圧着端子および被覆電線)
まず、本発明の実施形態に係る端子付き電線1について説明する前に、
図1を参照して、圧着端子および被覆電線の概略構成について説明する。被覆電線10は、導体11と、被覆12と、一体化部13とを有する。導体11は、長手方向Xに延伸した複数のアルミニウム素線(Al素線)111が横並びに並べられて並列に構成された導体部である。被覆12は、導体11の外周に形成された絶縁性の被覆部である。被覆電線10は、先端部において導体11の外周の被覆12が除去されて、所定の長さの導体11が露出した導体露出部112を有する。一体化部13は、導体露出部112において複数のAl素線111が溶融によって一体化された部分から構成される。以下の説明において、被覆電線10は、長手方向Xにおいて、前方側を先端側となる導体端部側とし、後方側を基端側となる被覆側とする。
【0026】
導体11は、複数のAl素線111から構成され、例えば純度の高いアルミニウムやアルミニウム合金からなる。本実施形態において被覆電線10は、断面積が例えば8mm
2(8sq)以上60mm
2(60sq)未満の、例えば25sqの電線である。ここで、被覆電線10の断面積は、それぞれのAl素線111の断面積の総和、すなわち総断面積である。被覆12は、絶縁性を有する例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンやノンハロゲン材料などの樹脂からなる。被覆12を構成する樹脂には、可塑剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0027】
圧着接続前の圧着端子20は、オープンバレル形式の端子である。圧着端子20は、表面に錫メッキ(Snメッキ)処理が施された黄銅などの銅合金からなる板材が加工されて形成される。圧着端子20は、先端側である長手方向Xの前方から基端側である後方に向かって順次接続された、端子接続部21、トランジション部22、導体圧着部23、および被覆圧着部24を有する。
【0028】
端子接続部21は、本実施形態では雌型圧着端子の接続構造からなり、先端側である長手方向Xの前方から、基端側である後方に向かって延伸し、雄型圧着端子が有する挿入タブが挿入される中空四角柱体である。本実施形態においては、四角柱体の対向する2面は幅方向Yに平行であり、他の対向する2面は高さ方向Zに平行である。なお、本実施形態では端子接続部21は雌型圧着端子の接続構造であるが、接続構造はこれに限定されず、雄型圧着端子や丸型圧着端子などの他の形状の接続構造であってもよい。
【0029】
トランジション部22は、端子接続部21と導体圧着部23とを接続する部分である。導体圧着部23は、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であって、かつ長手方向Xに延伸した形状を有する。被覆圧着部24も同様に、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であり、かつ長手方向Xに延在した形状を有する。導体圧着部23と被覆圧着部24とは下側で連結している。なお、本明細書において、高さ方向Zにおける上側および下側は、構成要素間の相対的な位置関係を説明するために便宜的に向きを特定したものである。
【0030】
導体圧着部23の表面23aには、複数のセレーション23bが形成されている。本実施形態におけるセレーション23bの本数は3本であるが、本数は3本に限定されるものではない。
【0031】
図2Aおよび
図2Bはそれぞれ、第1の実施形態による被覆電線を前方側から見た模式的な正面図であり、
図2Aが一体化部13の形成前、
図2Bが一体化部13の形成後を示す。
図2Aに示すように、第1の実施形態による被覆電線10は、導体11がn本(n:2以上の自然数)のAl素線111を横並びに配列した扁平電線の一種である並列電線からなる。ここで、それぞれのAl素線111は、被覆されていない単芯線または撚線からなり、第1の実施形態においては単芯線から構成される。なお、それぞれのAl素線111を撚線とする場合、さらに小径の複数のAl素線を撚ることにより、Al素線111が得られる。また、導体11を構成するAl素線111の本数nは、典型的には5本以上12本以下(n=5,6,…,11,12)、好適には7本以上10本以下(n=7,8,9,10)であり、第1の実施形態においては、例えば8本である。Al素線111の本数nは、多いほど、放熱性が向上して許容電流値が向上する一方、絶縁被覆12を構成する樹脂の目付量が多くなる。被覆電線10のサイズを1サイズ小さくして、放熱性を向上させるためには、Al素線111の本数nは5本以上として7本以上が好ましい。一方、Al素線71aの本数nが12本を超えると、樹脂の目付量が多くなって被覆電線70が重くなることから、サイズを小さくすることによる軽量化効果が低減するため、Al素線71aの本数nは、12本以下として10本以下が好ましい。
【0032】
ここで、本発明者の知見によれば、被覆電線10の導体11の総断面積が8mm
2(8sq)以上の大径である場合、導体11を構成する全てのAl素線111をひとまとめにして一体化しようとすると、例えばアーク溶接などの溶接では、容量不足からタクトタイムが長くなり、設備コストが増加するという問題があった。すなわち、導体11がAlからなる大径の被覆電線10の場合、被覆電線10を例えば圧着などによって端子に接続させる前処理としての溶接は、容量不足によって全てのAl素線111間の導通性を確保することが困難であった。
【0033】
そこで、
図1および
図2Bに示すように、導体露出部112を構成するAl素線111の材料であるAlやAl合金が、例えばアーク溶接などによって部分的に溶融されて、一体化部13が形成されている。被覆電線10の導体11に部分的に形成された一体化部13は、Al素線111の本数n未満のm箇所(m:自然数)(m<n)の位置に設けられている。第1の実施形態においては、それぞれのAl素線111の間がアーク溶接によって接合されて、8本のAl素線111の間の7箇所の部分(n=8、m=7)に、一体化部13が形成されている。
図2Bに示す例では、Al素線111が並列に並べられた状態において、それぞれのAl素線111の間の上部を埋めるようにして一体化部13が形成されている。
【0034】
(端子付き電線の製造方法)
次に、以上のように構成された被覆電線10および圧着端子20を接続する端子付き電線の製造方法について説明する。
図3は、第1の実施形態による端子付き電線の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図3に示すように、端子付き電線の製造方法においては、ステップST1において、一体化部形成工程を行う。すなわち、被覆電線10の先端部において導体11を露出させて導体露出部112を形成した後、導体11を構成する複数のAl素線111を部分的に一体化させる加工を行う。ここで、導体露出部112においてAl素線111を部分的に一体化させる方法としては、AlまたはAl合金を溶融させて溶接する方法が好ましく、典型的にはアーク溶接などが好ましいが、必ずしも限定されない。
【0036】
ここで、本発明者の知見によれば、被覆電線の圧着前の処理として、超音波半田付処理を施すことによって、端子付き電線におけるAl素線間の導通性を確保する方法がある。しかしながら、超音波半田付処理に用いる半田材料は、アルミニウムと異種金属との合金からなる合金層を形成し、被覆電線の導体においてガルバニック腐食(異種金属接触腐食)が生じる場合がある。この場合、端子付き電線の耐湿性や耐塩害性に対する接続信頼性が不十分になる可能性が生じる。そのため、一体化部13を形成する際には、超音波半田付けなどは行わないことが望ましい。
【0037】
次に、
図3に示すステップST2に移行して、端子接続工程としての端子圧着工程を行う。すなわち、ステップST1において一体化部13が形成された被覆電線10の導体露出部112が導体圧着部23の底部に収容される。この際、被覆12の先端側の一部が被覆圧着部24の底部に収容されるように、被覆電線10と圧着端子20とを重ね合わせる。続いて、圧着端子20の外周に圧力を加えて、圧着端子20を露出している導体11と被覆12の一部とに圧着接続する。これにより、圧着端子20は、導体圧着部23の表面23aが導体11と接触して導体11を包み込み、被覆圧着部24が被覆12の一部を包み込むように圧着接続される。したがって、導体圧着部23は導体11の外周に沿って接触して圧着される。また、被覆圧着部24は被覆12の外周に沿って接触して圧着される。以上により、端子付き電線1が完成する。
【0038】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、被覆電線10の導体露出部112において、それぞれのAl素線111の間の部分を溶融によって一体化させて、一体化部13を形成していることにより、Al素線111間の導通性を確保することができるので、接続信頼性が向上された端子付き電線を製造することが可能となる。また、一体化部13が、被覆電線10の導体11が部分的に溶融して形成されているため、溶接における容量不足が抑制でき、溶融による一体化を高い確度で行うことができ、接続不良を抑制できる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による端子付き電線に用いられる被覆電線について説明する。
図4A、
図4B、および
図4Cはそれぞれ第2の実施形態による被覆電線を前方側から見た模式的な正面図であり、
図4AがAl素線の集合前、
図4BがAl素線の集合後、
図4Cが一体化部の製造後を示す。また、
図5は、第2の実施形態による被覆電線のAl素線の集合後の状態を示す斜視図である。
【0040】
図4Aに示すように、第2の実施形態による被覆電線10Bは、導体11Bが例えば6本のAl素線111を横並びに配列した並列電線からなる。なお、
図4A〜
図4C、および
図5においては、それぞれのAl素線111を撚線から構成した例を示す。ここで、例えばアーク溶接においては、被覆電線10Bの端部が面一になっていると、アーク放電がどの部分に生じるかが不確定になるため、一体化部が不均一な形状になりやすい可能性があった。特に、被覆電線10Bを扁平電線、より具体的には複数のAl素線111を横並びに扁平状に配列した並列電線とした場合、被覆電線の端部の構造が幅広の構造になるため、溶接部が不均一な形状になりやすい可能性がある。そこで、第2の実施形態においては、被覆電線10Bの導体11Bを構成する複数のAl素線111を、例えば撚りなどによって少なくとも1つに集合させる加工を行う。なお、
図4Aに示す例では、複数のAl素線111を例えば1つに集合させる加工を行う。これによって、
図4Bに示すように、複数のAl素線111が撚られた状態になって、被覆電線10Bの断面の略中心に集合される。
【0041】
すなわち、n本のAl素線111が全体として扁平状に横並びで配列された状態から、導体11Bの先端部分を集合させて、断面が略楕円形状の集合導体113が形成される。この場合、導体11Bの断面において略中心部分のAl素線111の回りに、導体11Bの両側のAl素線111が巻きついた状態になるため、集合導体113の先端は、中心部から周辺部にテーパ状となる鏃形状を有することが多い。換言すると、集合導体113において、導体11Bの長手方向に突出した部分は、導体11Bの中心部分が長く周辺になるに従って短くなる。集合導体113を鏃形状にすることによって、アーク溶接を行うと、集合された状態の集合導体113の先端部が主に接合する。これにより、
図4Cに示すように、断面が略楕円形状の集合導体113の最大外径の中心を含む少なくとも一部に、一体化部13Bが形成される。複数のAl素線111を撚りなどによって1つに集合させることにより、Al素線111同士の間隔を小さくできるので、アーク溶接などの溶接を小さい部分で実行でき、Al素線111の間の導通性を確保できる。
【0042】
以上のように構成された被覆電線10Bに対して、圧着端子20などの端子を用いた端子圧着工程を行うことにより、端子付き電線1が製造される。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0043】
第2の実施形態によれば、複数のAl素線111を導体11Bの先端部において集合させた後に、アーク溶接などによって接合させて一体化部13Bを形成していることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態による端子付き電線に用いられる被覆電線について説明する。
図6Aおよび
図6Bはそれぞれ、第3の実施形態による被覆電線を前方側から見た模式的な正面図であり、
図6Aが一体化部の形成前、
図6Bが一体化部の形成後を示す。
図6Cは、圧着端子に圧着させた状態の被覆電線を前方側から見た模式的な正面図である。
【0045】
図6Aに示すように、第3の実施形態による被覆電線10Cは、導体11Cが複数本のAl素線111を横並びに配列させた並列電線からなる。第3の実施形態においては、被覆電線10Cの導体11Cを構成するn本(n:自然数)、例えば6本のAl素線111を、一部のAl素線111の群と残部のAl素線111の群との2つの群に分ける。複数のAl素線111を2つの群に分ける場合には、被覆電線10Cの前方側から見て左右の2つの群に分けるのが好ましい。また、2つの群におけるそれぞれの群を構成するAl素線111の本数は、互いに略同数であることが好ましい。すなわち、導体11CのAl素線111の本数をn本とすると、本数nが偶数である場合には、2つの群におけるAl素線111の本数はそれぞれn/2本が好ましい。反対に本数nが奇数である場合には、一方の群におけるAl素線111の本数を(n−1)/2本とし、他方の群におけるAl素線111の本数を(n+1)/2本とすることが好ましい。なお、複数本のAl素線111を2つの群に分ける場合のそれぞれの群でのAl素線111の本数は、この場合に限定されない。
【0046】
その後、
図6Bに示すように、一方の群のAl素線111に対して、例えばアーク溶接によって部分的に接合させることにより、導体露出部112Cの少なくとも一部に一体化部13Caを形成する。他方の群のAl素線111に対して、例えばアーク溶接によって部分的に接合させることにより、導体露出部112Cの少なくとも一部に一体化部13Cbを形成する。すなわち、一体化部13Ca,13Cbは、Al素線111の本数n未満のm箇所(n:2以上の自然数、m:自然数)に設けられることになる。第3の実施形態においては、6本のAl素線111に対して、2箇所の部分(n=6、m=2)に一体化部13Ca,13Cbが形成されている。
【0047】
以上のように構成された被覆電線10Cに対して、圧着端子20などの端子を用いた端子圧着工程を行う。これにより、
図1および
図6Cに示すように、端子付き電線1Cが製造される。ここで、被覆電線10Cの導体露出部112Cは、複数のAl素線111が2つの群に分けられて一体化部13Ca,13Cbが形成された状態である。そのため、導体露出部112Cを導体圧着部23に圧着する際に、導体圧着部23の前方から見た左右の部分が、Al素線111の2つの群をそれぞれ包み込むようにして、圧着接続される。すなわち、オープンバレル型の圧着端子における圧着後の断面形状を考慮して、左右の2箇所にわけて2点でアーク溶接することによって、素線間導通性を確保することができる。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0048】
第3の実施形態によれば、複数のAl素線111の少なくとも一部に一体化部13Ca,13Cbを形成していることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、被覆電線10Cの複数のAl素線111を2つの群に分けて、それぞれの群に一体化部13Ca,13Cbを形成していることにより、導体露出部112の導体圧着部23への圧着接続をより適切に行うことができる。これにより、圧着端子20と導体11Cとの接続信頼性を向上できる。
【0049】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態による端子付き電線に用いられる被覆電線について説明する。
図7は、第4の実施形態による被覆電線を前方側から見た模式的な正面図である。第4の実施形態による被覆電線10Dは、第2の実施形態による被覆電線10Bおよび第3の実施形態による被覆電線10Cと同様の並列電線からなる。この被覆電線10Dに対して、第3の実施形態と同様にして、被覆電線10Dの導体11Dを構成するn本(n:自然数)、例えば6本のAl素線を左右の2つの群に分ける。
【0050】
その後、Al素線の2つの群のそれぞれに対して、第2の実施形態と同様にして、複数のAl素線を例えば撚りなどによって群ごとに少なくとも1つ、ここでは1つに集合させる加工を行う。これによって、
図7に示すように、群ごとに複数のAl素線が撚られた状態になって、被覆電線10Dの断面の前方から見た左右にAl素線が集合された例えば2本の集合導体113Dが形成される。その後、2本の集合導体113Dのそれぞれに対して、例えばアーク溶接によってAl素線を部分的に接合させることにより、2本の集合導体113Dにそれぞれ、一体化部13Da,13Dbを形成する。これにより、第4の実施形態による被覆電線10Dが形成される。
【0051】
以上のように構成された被覆電線10Dに対して、圧着端子20などの端子を用いた端子圧着工程を行う。これにより、端子付き電線1が製造される。その他の構成は第1、第2、および第3の実施形態と同様である。
【0052】
第4の実施形態によれば、被覆電線10Dの複数のAl素線を2つの群に分け、それぞれの群において、Al素線を集合させた後に一体化部13Da,13Dbを形成していることにより、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態による端子付き電線の製造方法について説明する。
図8A、
図8B、および
図8Cはそれぞれ、第5の実施形態による被覆電線を上方から見た模式的な上面図であり、
図8Aが一体化部の形成前、
図8Bおよび
図8Cが一体化部の形成後を示す。なお、第5の実施形態による端子付き電線の製造方法においては、第1の実施形態の被覆電線10と同様の被覆電線10Eを用いて端子付き電線を製造する場合を例に説明する。
【0054】
まず、
図8Aに示すように、被覆電線10Eは、Al素線111がn本、例えば7本並列して設けられた並列配線である。第5の実施形態においては、被覆電線10の導体露出部112Eの先端部を、それぞれのAl素線111の露出した部分の長短によって、凹凸状に成形する成形工程を含む。成形工程は、
図3に示すステップST1の一体化部形成工程において行うことが望ましい。
【0055】
すなわち、
図3に示すステップST1において一体化部形成工程を行う成形工程を行う。この場合に、
図8Aに示すように、被覆電線10Eの先端部において導体11Eを露出させて導体露出部112Eを形成した後、導体露出部112EのそれぞれのAl素線111の長さを変えることにより、先端部分が凹凸状になるように成形する。次に、第1の実施形態と同様にして、複数のAl素線111を部分的に一体化させる加工を行う。これにより、典型的にはAl素線111の本数n未満のm箇所の位置に、一体化部が形成される。ここで、
図8Bに示す例では、Al素線111の間がアーク溶接によって一体化されて、1つの一体化部13Eaが形成されている。一方、
図8Cに示す例では、Al素線111の間がアーク溶接によって一体化されつつ、3箇所の位置に一体化部13Ebが形成されている。その後、
図3に示すステップST2に移行して、端子圧着工程が行われ、以上のように構成された被覆電線10Eに対して、圧着端子20などの端子を用いた端子圧着工程が行われる。これにより、端子付き電線が製造される。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0056】
第5の実施形態によれば、被覆電線10Eにおいて導体露出部112EにおけるそれぞれのAl素線111の長さを変えることによって、先端部分が凹凸状になるように成形した後、一体化形成工程を実行している。これにより、導体露出部112の先端が面一の場合に比して、アーク放電の位置を凸状部分にし易くなるため、一体化部13Ea,13Ebの形成位置を制御しやすくなる。また、それぞれのAl素線111の間に部分的に一体化部13Ea,13Ebを形成していることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0058】
上述の実施形態においては、圧着端子としてオープンバレル形式の圧着端子を用いたが、クローズドバレル型の圧着端子(α端子)を用いてもよい。