【解決手段】油圧ショベル1は、動特性設定部51と生産性取得部55と最適動特性演算部57とを備える。動特性設定部55は、動特性を第1動特性に設定する。生産性取得部55は、動特性が第1動特性に設定されている状態で操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第1生産性として取得する。動特性設定部55は、動特性を第1動特性とは異なる第2動特性に設定する。生産性取得部55は、動特性が第2動特性に設定されている状態で操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第2生産性として取得する。最適動特性演算部57は、第1動特性と第2動特性と第1生産性と第2生産性とに基づいて最適動特性を演算する。
前記最適動特性演算部は、前記動特性の増加量に対する前記生産性の増加量に基づく勾配に学習率を掛けたもので現在設定されている動特性を更新して更新用の動特性を演算する処理を、前記更新用の動特性が前記最適動特性に収束するまで繰り返し実行することを特徴とする請求項1に記載の操作対象装置。
前記動特性設定部は、前記最適動特性演算部で演算した前記最適動特性よりも所定値だけ高い値を前記動特性として設定することを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の操作対象装置。
前記操作対象装置は建設機械であり、前記操作対象は前記建設機械の油圧アクチュエータによって動作する部位であることを特徴とする請求項1から7のうち何れかに記載の操作対象装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明では、単に自動操作と手動操作との差分をオペレータに教示するものであるから、オペレータの操作技量が低ければ、教示された通りに操作できないという問題がある。すなわち、特許文献1では、操作技量に適した操作性をオペレータに提供することができないため、最終的な生産性も向上せず、オペレータの技術向上を図ることもできない。
【0005】
そこで、本発明は、オペレータの操作技量に適した操作性を当該オペレータに提供することが可能な操作対象装置及びそれに関連する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、操作対象装置であって、操作対象に関する動特性を設定する動特性設定部と、前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を取得する生産性取得部と、最適又は準最適な最適動特性を演算する最適動特性演算部と、を備え、前記動特性設定部は、前記動特性を第1動特性に設定し、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第1動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第1生産性として取得し、前記動特性設定部は、前記動特性を前記第1動特性とは異なる第2動特性に設定し、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第2動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第2生産性として取得し、前記最適動特性演算部は、前記第1動特性と前記第2動特性と前記第1生産性と前記第2生産性とに基づいて前記最適動特性を演算し、前記動特性設定部は、前記最適動特性演算部で演算した前記最適動特性を前記動特性として設定することを特徴とする操作対象装置を提供している。
【0007】
ここで、前記最適動特性演算部は、前記動特性の増加量に対する前記生産性の増加量に基づく勾配に学習率を掛けたもので現在設定されている動特性を更新して更新用の動特性を演算する処理を、前記更新用の動特性が前記最適動特性に収束するまで繰り返し実行することが好ましい。
【0008】
また、前記最適動特性演算部によって過去に演算された前記最適動特性を第3動特性として記憶する記憶部を更に備え、前記動特性設定部は、前記動特性を第3動特性に設定し、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第3動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第3生産性として取得し、前記動特性設定部は、前記動特性を前記第3動特性とは異なる第4動特性に設定し、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第4動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第4生産性として取得し、前記最適動特性演算部は、前記第3動特性と前記第4動特性と前記第3生産性と前記第4生産性とに基づいて前記最適動特性を演算することが好ましい。
【0009】
また、前記動特性設定部は、前記最適動特性演算部で演算した前記最適動特性よりも所定値だけ高い値を前記動特性として設定することが好ましい。
【0010】
また、前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の作業時間を計測する作業時間計測部を更に備え、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第1動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合に前記作業時間計測部で計測した作業時間を第1生産性として取得し、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第2動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合に前記作業時間計測部で計測した作業時間を第2生産性として取得することが好ましい。
【0011】
また、前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の官能評価値を入力する官能評価値入力部を更に備え、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第1動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合に前記官能評価入力部を介して入力された官能評価値を第1生産性として取得し、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第2動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合に前記官能評価入力部を介して入力された官能評価値を第2生産性として取得することが好ましい。
【0012】
また、前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の作業精度を検出する作業精度検出部を更に備え、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第1動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合に前記作業精度検出部で検出した作業精度を第1生産性として取得し、前記生産性取得部は、前記動特性が前記第2動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合に前記作業精度検出部で検出した作業精度を第2生産性として取得することが好ましい。
【0013】
更に、前記操作対象装置は建設機械であり、前記操作対象は前記建設機械の油圧アクチュエータによって動作する部位であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、動特性設定方法であって、操作対象装置の操作対象に関する動特性を第1動特性に設定し、前記動特性が前記第1動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第1生産性として取得し、前記動特性を前記第1動特性とは異なる第2動特性に設定し、前記動特性が前記第2動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第2生産性として取得し、前記第1動特性と前記第2動特性と前記第1生産性と前記第2生産性とに基づいて最適動特性を演算し、前記最適動特性を前記動特性として設定することを特徴とする動特性設定方法を更に提供している。
【0015】
また、本発明は、a)操作対象装置の操作対象に関する動特性を第1動特性に設定するステップと、b)前記動特性が前記第1動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第1生産性として取得するステップと、c)前記動特性を前記第1動特性とは異なる第2動特性に設定するステップと、d)前記動特性が前記第2動特性に設定されている状態で前記操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を第2生産性として取得するステップと、e)前記第1動特性と前記第2動特性と前記第1生産性と前記第2生産性とに基づいて最適動特性を演算するステップと、f)前記ステップe)で演算した前記最適動特性を前記動特性として設定するステップと、をコンピュータに実行させる動特性設定プログラムを更に提供している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1動特性と、当該第1動特性で特定の操作を行った場合の第1生産性と、第2動特性と、当該第2動特性で特定の操作を行った場合の第2生産性とに基づいて最適動特性が演算される。そのため、オペレータの操作技量に適した操作性を当該オペレータに提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1.第1実施形態>
本発明の第1実施形態による操作対象装置、動特性設定方法及び動特性設定プログラムについて、
図1から
図8に基づき説明する。以下では、操作対象装置の一例として、
図1に示す油圧ショベル1を例示する。
【0019】
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、ブームやアームを含む作業アタッチメント4と、コントローラ5とを備えて構成される。
【0020】
コントローラ5は、オペレータにとって最適又は準最適な動特性(以下、単に「最適動特性」とも称する)を設定する動特性設定プログラムを実行可能な制御装置である。具体的には、
図2に示すように、コントローラ5は、動特性設定部51と、作業時間計測部53と、生産性取得部55と、最適動特性演算部57とを備えて構成される。
【0021】
動特性設定部51は、油圧ショベル1の操作対象(例えば、アタッチメント4を構成するブーム)に関する動特性(時定数X)を設定するための処理部である。
【0022】
作業時間計測部53は、油圧ショベル1の操作対象に対して特定の操作を行った場合の作業時間Yを計測するための処理部である。
【0023】
生産性取得部55は、油圧ショベル1の操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性を取得する処理部である。本実施形態では、生産性取得部55は、作業時間計測部53で計測した作業時間Yを、油圧ショベル1の操作対象に対して特定の操作を行った場合の生産性として取得する。
【0024】
最適動特性演算部57は、オペレータにとって最適動特性(時定数X)を演算する処理部である。
【0025】
本実施形態では、油圧ショベル1によるブーム上げ(
図3参照)と90度旋回(
図4参照)の複合操作(以下、単に「持ち上げ旋回操作」とも称する)において、最適なブーム立ち上がりの動特性(時定数X)を演算する場合を例示する。
【0026】
図5に示すように、持ち上げ旋回操作に関して、ブーム立ち上がりの動特性(時定数X)と生産性(作業時間Y)とは、技量にかかわらず下に凸な関数F(X)で近似されることが分かっている。よって、関数F(X)が最小となる(作業時間Yが最も短くなる)動特性(時定数X)が最適動特性になる。
【0027】
公知の技術として、関数の傾き(一階微分)のみから、関数の最小値を探索するアルゴリズムの一つとして「最急降下法」が知られている。以下では、公知の「最急降下法」のアルゴリズムを利用し、動特性を変数とする生産性(作業時間Y)の関数が不明な場合に最適動特性(時定数X)を演算する手順について説明する。
【0028】
以下では、
図6に示すフローチャートに沿って、最適又は準最適な動特性を設定する手順について説明する。
【0029】
まず、ステップS1において、動特性設定部51は、時定数Xを初期値である時定数X
1に設定する。なお、初期値の時定数X
1はランダムな値である。
【0030】
次に、時定数Xが時定数X
1(初期値)に設定された状態でオペレータによる持ち上げ旋回操作が実施される。その際、作業時間計測部53は、持ち上げ旋回操作に要した作業時間Y
1を計測する。生産性取得部55は、作業時間計測部53で計測した作業時間Y
1を時定数X
1における持ち上げ旋回操作の生産性として取得する(ステップS2)。
【0031】
次に、ステップS3において、動特性設定部51は、時定数Xを時定数X
1(初期値)とは異なる時定数X
2に設定(変更)する。なお、ここでは、時定数X
2がランダムに設定される場合を例示しているが、これに限定されず、時定数X
1に所定値δXを加算した値が時定数X
2として設定されるようにしてもよい。
【0032】
時定数Xが時定数X
2に設定された状態でオペレータによる持ち上げ旋回操作が再度実施される。その際、作業時間計測部53は、持ち上げ旋回操作に要した作業時間Y
2を計測する。生産性取得部55は、作業時間計測部53で計測した作業時間Y
2を時定数X
2における持ち上げ旋回操作の生産性として取得する(ステップS4)。
【0033】
そして、ステップS5において、最適動特性演算部57は、下記の数式1を用いて更新用の動特性(時定数X
t+1)を演算する。なお、「t」の初期値は「2」である。
【数1】
【0034】
上記の数式1において、「X
t」は現在設定されている時定数X(X
2)であり、「X
t−1」は前回設定されていた時定数X(X
1)である。また、「Y
t」は時定数X
t(X
2)における作業時間Y(Y
2)であり、「Y
t−1」は時定数「X
t−1」における作業時間Y(Y
1)ある。なお、「η」は、学習速度(更新速度)を決定するための学習率である。
【0035】
つまり、最適動特性演算部57は、時定数Xの増加量(X
t−X
t−1)に対する作業時間Yの増加量(Y
t−Y
t−1)に基づく勾配(Y
t−Y
t−1/X
t−X
t−1)に学習率ηを掛けたもので現在設定されている動特性X
tを更新して更新用の動特性X
t+1を演算する。
【0036】
ここでは、最適動特性演算部57は、
図7の式(1)に従って、時定数X
1と時定数X
2との増加量(X
2−X
1)に対する作業時間Y
1と作業時間Y
2との増加量(Y
2−Y
1)に基づく勾配(Y
2−Y
1/X
2−X
1)に学習率ηを掛けたもので現在設定されている時定数X
2を更新して更新用の時定数X
3を演算する。そして、動特性設定部51は、ステップS5で演算した更新用の時定数X
3を時定数Xに設定する(ステップS6)。
【0037】
ステップS7において、最適動特性演算部57は、更新用の時定数X
3が最適時定数に収束したか否かを判定する。なお、最適時定数に収束したか否かは、例えば、勾配が所定値以下になったか否かに基づき判定される。
【0038】
ここで、時定数X
3が最適時定数に収束したと判定された場合には処理が終了する。なお、時定数X
3が最適時定数に収束したと判定された場合には時定数X
3が最適時定数ということになる。
【0039】
一方、時定数X
3が収束していないと判定された場合には処理がステップS8に進む。
【0040】
ステップS8においては、時定数Xが時定数X
3に設定された状態でオペレータによる持ち上げ旋回操作が再度実施される。その際、作業時間計測部53は、持ち上げ旋回操作に要した作業時間Y
3を計測する。生産性取得部55は、作業時間計測部53で計測した作業時間Y
3を時定数X
3における持ち上げ旋回操作の生産性として取得する(ステップS8)。
【0041】
この後、ステップS9において「t」がインクリメントされ、「t」に「3」が設定される。
【0042】
この後、処理はステップS5に戻り、最適動特性演算部57は、上記の数式1を用いて更新用の動特性(時定数X
4)を演算する。詳細には、最適動特性演算部57は、
図7の式(2)に従って、時定数X
3と時定数X
2との増加量(X
3−X
2)に対する作業時間Y
3と作業時間Y
2との増加量(Y
3−Y
2)に基づく勾配(Y
3−Y
2/X
3−X
2)に学習率ηを掛けたもので現在設定されている時定数X
3を更新して更新用の時定数X
4を演算する。
【0043】
そして、ステップS6において、動特性設定部51は、ステップS5で演算した更新用の時定数X
4を時定数Xに設定する。そして、最適動特性演算部57は、更新用の時定数X
4が最適時定数に収束したか否かを判定する(ステップS7)。時定数X
4が最適時定数に収束したと判定された場合には処理が終了し、収束していない場合は処理がステップS8に進み、上述した処理が再度実行される。
【0044】
図7に示す例では、更新用の時定数X
t+1は、時定数X
3(式(1))、時定数X
4(式(2))、時定数X
5(式(3))の順に更新され、最終的に時定数X
5が最適時定数に収束した(
図6のステップS7でYES)と判定される場合が示されている。
図8に示すイメージ図は、時定数Xが初期値の時定数X
1から最適時定数X
5に順次に更新されて収束する様子が示されている。なお、説明の都合上、
図8では、下に凸のグラフを破線で便宜的に示しているが、そもそも時定数を変数とする生産性の関数は不明であるため、正確なグラフではない。
【0045】
上述した第1実施形態によれば、時定数X
1と、時定数X
1で持ち上げ旋回操作を行った場合の作業時間Y
1と、時定数X
2と、時定数X
2で持ち上げ旋回操作を行った場合の作業時間Y
2とに基づいて最適時定数X
t+1が演算される。そのため、オペレータの操作技量に応じて作業時間Yが最も短くなる最適時定数X
t+1を時定数X(動特性)として設定することが可能である。よって、オペレータの操作技量に適した操作性を当該オペレータに提供することが可能である。
【0046】
また、上述した第1実施形態によれば、持ち上げ旋回操作の生産性として作業時間Yが取得されるため、客観的なデータに基づいて最適時定数X
t+1を演算することが可能である。
【0047】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態による操作対象装置、動特性設定方法及び動特性設定プログラムについて、
図9から
図11を参照しながら説明する。
【0048】
上述した第1実施形態では、作業時間計測部53で計測された作業時間Y(客観的な値)が持ち上げ旋回操作の生産性として取得される場合を例示した。
【0049】
一方、第2実施形態では、オペレータによって入力される官能評価値Z(主観的な値)が持ち上げ旋回操作の生産性として取得される場合を例示する。
【0050】
図9に示すように、第2実施形態では、油圧ショベル1は、マイクや専用の入力装置等で構成される官能評価入力部6を備えている。持ち上げ旋回操作を行った後、オペレータは、官能評価入力部6を介して官能評価値Z(例えば、操作性を1〜5の5段階で評価した値)を入力する。
【0051】
また、コントローラ5は、上述した第1実施形態と同様に、動特性設定部51と生産性取得部55と最適動特性演算部57とを備えて構成される。だたし、作業時間計測部53を備えていない点において上述した第1実施形態と相違する。
【0052】
図10に示すように、持ち上げ旋回操作に関して、ブーム立ち上がりの動特性(時定数X)と生産性(官能評価値Z)とは、技量にかかわらず上に凸な関数G(X)に近似されることが分かっている。よって、関数G(X)が最大となる(官能評価値Zが最も高くなる)動特性(時定数X)が最適動特性になる。
【0053】
以下では、第1実施形態と同様に、公知の「最急降下法」のアルゴリズムを利用し、動特性を変数とする生産性(官能評価値Z)の関数が不明な場合に最適動特性(時定数X)を演算する方法を例示する。
【0054】
以下では、
図11に示すフローチャートに沿って、最適又は準最適な動特性を設定する手順について説明する。なお、
図11のフローチャートでは、ステップS20,S40,S50,S80の処理が
図6のステップS2,S4,S5,S8の処理と相違する。そこで、以下では、ステップS20,S40,S50,S80の処理について説明する。
【0055】
ステップS20では、生産性取得部55は、官能評価入力部6を介してオペレータが入力した官能評価値Z
1を時定数X
1における持ち上げ旋回操作の生産性として取得する。なお、官能評価値Z
1は、時定数Xが初期値(時定数X
1)に設定された状態でオペレータによる持ち上げ旋回操作が実施された直後に官能評価入力部6を介して入力される。
【0056】
ステップS40では、生産性取得部55は、官能評価入力部6を介してオペレータが入力した官能評価値Z
2を時定数X
2における持ち上げ旋回操作の生産性として取得する。なお、官能評価値Z
1は、時定数Xが時定数X
2に設定された状態でオペレータによる持ち上げ旋回操作が実施された直後に官能評価入力部6を介して入力される。
【0057】
ステップS50では、最適動特性演算部57は、下記の数式2を用いて更新用の動特性(時定数X
t+1)を演算する。なお、「t」の初期値は「2」である。
【数2】
【0058】
上記の数式2において、「X
t」は現在設定されている時定数X(X
2)であり、「X
t−1」は前回設定されていた時定数X(X
1)である。また、「Z
t」は時定数X
t(X
2)における官能評価値Z(Z
2)であり、「Z
t−1」は時定数X
t−1(X
1)における官能評価値Z(Z
1)である。なお、「η」は、学習速度(更新速度)を決定するための学習率である。
【0059】
つまり、最適動特性演算部57は、時定数Xの増加量(X
t−X
t−1)に対する官能評価値Zの逆数の増加量(1/Z
t−1/Z
t−1)に基づく勾配に学習率ηを掛けたもので現在設定されている動特性X
tを更新して更新用の動特性X
t+1を演算する。
【0060】
なお、数式2において、「Z
t」の逆数「1/Z
t」及び「Z
t−1」の逆数「1/Z
t−1」が用いられているのは、
図10に示すように、ブーム立ち上がりの動特性(時定数X)と官能評価値Zとが上に凸の関数で近似されることが分かっているためである。
【0061】
ステップS80では、生産性取得部55は、官能評価入力部6を介してオペレータが入力した官能評価値Z
t+1を時定数X
t+1における持ち上げ旋回操作の生産性として取得する。
【0062】
上述した第2実施形態によれば、時定数X
1と、時定数X
1で持ち上げ旋回操作を行った場合の官能評価値Z
1と、時定数X
2と、時定数X
2で持ち上げ旋回操作を行った場合の官能評価値Z
2とに基づいて最適時定数X
t+1が演算される。そのため、オペレータの操作技量に応じて官能評価値Zが最も高くなる最適時定数X
t+1を時定数Xとして設定することが可能である。よって、オペレータの操作技量に適した操作性を当該オペレータに提供することが可能である。
【0063】
また、上述した第2実施形態によれば、持ち上げ旋回操作の生産性として官能評価値Zが取得されるため、オペレータの客観的なデータに基づいて最適時定数X
t+1を演算することが可能である。
【0064】
<3.変形例>
本発明による操作対象装置、動特性設定方法及び動特性設定プログラムは上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0065】
例えば、上述した第1実施形態では作業時間Y、上述した第2実施形態では官能評価値Zが持ち上げ旋回操作の生産性として取得される場合を例示したが、これに限定されず、作業時間Yと官能評価値Zとが共に持ち上げ旋回操作の生産性として取得されるようにしてもよい。
【0066】
その場合、最適動特性演算部57は、下記の数式3を用いて更新用の動特性(時定数X
t+1)を演算するようにすればよい。
【数3】
【0067】
また、別の態様として、油圧ショベル1から検出された作業精度Sが持ち上げ旋回操作の生産性として取得されるようにしてもよい。具体的には、
図12に示すように、油圧ショベル1は、姿勢に基づく作業精度を検出する作業精度検出部7を備える。そして、生産性取得部55は、作業精度検出部7で検出した作業精度Sを持ち上げ旋回操作の生産性として取得する。
【0068】
当該変形例によれば、時定数X
1と、時定数X
1で持ち上げ旋回操作を行った場合の作業精度S
1と、時定数X
2と、時定数X
2で持ち上げ旋回操作を行った場合の作業精度S
2とに基づいて最適時定数X
t+1が演算される。そのため、オペレータの操作技量に応じて作業精度Sが最も高くなる最適時定数X
t+1を時定数Xとして設定することが可能である。よって、オペレータの操作技量に適した操作性を当該オペレータに提供することが可能である。
【0069】
また、上述した各実施形態では、最適動特性演算部57で演算した最適時定数X
t+1を時定数Xとして設定する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、最適動特性演算部57で演算した最適時定数X
t+1よりも所定値だけ高い値を時定数Xとして設定するようにしてもよい。
【0070】
当該変形例によれば、技量に適した動特性よりも若干高い動特性(高応答)でオペレータが持ち上げ旋回操作を行うことになり、結果として、オペレータの技量を向上させることが可能である。
【0071】
また、上述した各実施形態では、ステップS1で設定される初期値の時定数X
1がランダムな値である場合を例示したが、これに限定されない。例えば、過去に最適時定数X
t+1が演算されている場合には、過去に演算された最適時定数X
t+1を初期値の時定数X
1に設定するようにしてもよい。なお、過去に演算された最適時定数X
t+1は、油圧ショベル1の図示しない記憶部に記憶されるようにすればよい。
【0072】
当該変形例によれば、初期値の時定数X
1にランダムな値を用いる場合に比べて、早期に最適時定数X
t+1に収束する可能性が高い。