【解決手段】リン含有エポキシ樹脂とオキサジン樹脂と脂環構造含有フェノール樹脂とを含み、リン含有率が0.5〜1.8%の範囲であるエポキシ樹脂組成物であって、オキサジン樹脂のオキサジン当量は230g/eq.以上であり、リン含有エポキシ樹脂は、特定構造のノボラック型エポキシ樹脂と、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表されるリン化合物から得られた生成物であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)リン含有エポキシ樹脂と(B)オキサジン樹脂と(C)脂環構造含有フェノール樹脂を必須成分とする非ハロゲン系難燃性エポキシ樹脂組成物であり、リン含有率は0.5〜1.8質量%の範囲である。本明細書におけるエポキシ樹脂組成物としてのリン含有率とは、エポキシ樹脂組成物から溶剤と無機充填剤を除いた有機成分中における比率を指す。リン含有率が0.5質量%未満の場合、難燃性が不十分となる恐れがあり、リン含有率が1.8質量%を超えるとTg=200℃以上の耐熱性を確保できない恐れがある。好ましい範囲はリン含有率が0.6〜1.6質量%であり、より好ましい範囲はリン含有率が0.8〜1.3質量%である。
【0023】
(A)リン含有エポキシ樹脂は、特定の分子量分布と特定の平均官能基数を有するノボラック型エポキシ樹脂と、上記一般式(1)で表されるリン化合物及び/又は一般式(2)で表されるリン化合物との反応によって得られる。ただし、一般式(2)のリン化合物のみを単独で使用した場合は組成物の耐熱性を下げるため、一般式(1)のリン化合物の比率を高めた方が好ましい。具体的には、一般式(1)のリン化合物と一般式(2)のリン化合物のモル比は99:1〜75:25が好ましく、95:5〜85:15がより好ましい。この範囲であれば、リン含有エポキシ樹脂組成物としてガラスクロスへの含浸性等に影響する粘度等の取扱い面から好ましい。
なお、原料モル比に換算すると、例えば、一般式(2)のリン化合物がDOPOであり、一般式(1)のリン化合物がDOPOとナフトキノン(NQ)との反応物である場合、NQ/DOPO(モル比)0.50であるとき、一般式(1)のリン化合物と一般式(2)のリン化合物のモル比は、50:50に相当し、NQ/DOPO(モル比)0.99であるとき、99:1に相当する。
【0024】
リン化合物としては、上記一般式(1)又は一般式(2)で表されるリン化合物を使用することが必要であり、単独でも併用してもよい。
一般式(1)又は一般式(2)において、R
1及びR
2はヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それぞれは異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。また、R
1とR
2が結合して環状構造を形成してもよい。特に、ベンゼン環等の芳香族環基が好ましい。R
1及びR
2が芳香族環基の場合、置換基として、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基又は炭素数7〜11のアラルキルオキシ基を有してもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子等が例示され、これは炭化水素鎖又は炭化水素環を構成する炭素間に含まれることができる。
k1及びk2はそれぞれ独立に、0又は1である。
Aは3価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基(アレーントリイル基)である。好ましくはベンゼン環基やナフタレン環基である。芳香族炭化水素基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を有してもよい。
【0025】
まず、原料として使用する上記一般式(2)で表されるリン化合物を例示すると、ジメチルホスフィンオキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジブチルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、ジベンジルホスフィンオキシド、シクロオクチレンホスフィンオキシド、トリルホスフィンオキシド、ビス(メトキシフェニル)ホスフィンオキシド等や、フェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸エチル、トリルホスフィン酸トリル、ベンジルホスフィン酸ベンジル等や、DOPO、8−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、8−フェニル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、2,6,8−トリ−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、6,8−ジシクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等や、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジトリル、ホスホン酸ジベンジル、5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのリン化合物は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。
【0026】
また、原料として使用する上記一般式(1)で表されるリン化合物を例示すると、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO−HQ)、10−[2−(ジヒドロキシナフチル)]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO−NQ)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール等が挙げられる。これらのリン化合物は単独で使用しても2種類以上混合して使用しても良く、これらに限定されるものではない。
【0027】
(A)リン含有エポキシ樹脂の原料として、上記リン化合物とともに使用するノボラック型エポキシ樹脂は、一般的にフェノール類とアルデヒド類の縮合反応生成物であるノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンとを反応して得られる多官能のノボラック型エポキシ樹脂であり、下記一般式(5)で表される。
使用されるフェノール類としてはフェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、スチレン化フェノール、クミルフェノール、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ナフタレンジオール、ビスフェノールA等が挙げられ、アルデヒド類としてはホルマリン、ホルムアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。また、アルデヒド類の代わりにキシリレンジメタノール、キシリレンジクロライド、ビスクロロメチルナフタレン、ビスクロロメチルビフェニル等を使用したアラルキル型フェノール樹脂も本発明ではノボラック型フェノール樹脂に該当する。
【0029】
上記一般式(5)において、Wはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、又はビスフェニル構造から選ばれる芳香族環基であり、これらの芳香族環基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を有してもよい。
Uは下記式(5a)もしくは式(5b)で表される架橋基である。2価の脂肪族環状炭化水素基であってもよい。
jはそれぞれ独立に1〜3の整数であり、各芳香族環の水酸基の個数を表し、好ましくは1又は2である。
mは平均値で1〜10の数であり、好ましくは1〜5である。
【0031】
上記式(5a)及び(5b)において、R
8、R
9、R
10及びR
11はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。Bはベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環から選ばれる芳香族環基であり、これらの芳香族環基は、置換基として炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を有してもよい。
【0032】
Uが2価の脂肪族環状炭化水素基である場合、その炭素数は5〜15が好ましく、5〜10がより好ましい。ここで、2価の脂肪族環状炭化水素基とは、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の不飽和環状脂肪族炭化水素化合物から誘導される2価の脂肪族環状炭化水素基や、トリメチルシクロヘキシレン基、テトラメチルシクロヘキシレン基、シクロドデシレン基等のシクロアルキレン基等が挙げられる。
【0033】
一般的なノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYDPN−638(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、jER152、jER154(以上、三菱ケミカル株式会社製)、エピクロンN−740、N−770、N−775(以上、DIC株式会社製)等)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYDCN−700シリーズ(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、エピクロンN−660、N−665、N−670、N−673、N−695(以上、DIC株式会社製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬株式会社製)等)、アルキルノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートZX−1071T、ZX−1270、ZX−1342(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等)、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートZX−1247、GK−5855、TX−1210、YDAN−1000(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等)、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートZX−1142L(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等)、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(例えば、ESN−155、ESN−185V、ESN−175(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等)、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂(例えば、ESN―355、ESN−375(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等)、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(例えば、ESN−475V、ESN−485(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等)、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂(例えば、NC−3000、NC−3000H(以上、日本化薬株式会社製)等)、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、EPPN−501、EPPN−502(以上、日本化薬株式会社製)等)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、エピクロンHP7200、HP−7200H(以上、DIC株式会社製)等)等が挙げられる。しかしながら通常、これらの市販ノボラック型エポキシ樹脂は、本発明で使用するノボラック型エポキシ樹脂の特徴である特定の分子量分布を有していないし、平均官能基数も範囲外である。
【0034】
本発明で使用する特定の分子量分布と特定の平均官能基数を有するノボラック型エポキシ樹脂を得るにはフェノール類とアルデヒド類を酸触媒存在下で反応することによって得られたノボラック型フェノール樹脂をその出発原料とする。これら反応方法は例えば、特開2002−194041号公報、特開2007−126683号公報、特開2013−107980号公報に示すような製造方法によって得た公知方法であっても良く、特に限定はされない。
得られた出発原料ノボラック型フェノール樹脂は、蒸留等の各種手法によって2核体を中心とする低分子量を除去又は含有率を10面積%以下まで低減した後、更に酸触媒存在下で再度アルデヒド類と縮合を行うことによって2核体を減らしながら、かつ7核体以上の比率を増やす調整を行う。ノボラック型エポキシ樹脂は、このノボラック型フェノール樹脂の分子量分布を反映してエポキシ化されるため、得られたノボラック型エポキシ樹脂においても各核体の含有率は同様に調整されたものが得られる。
なお、本明細書において、ノボラック型エポキシ樹脂の各核体の「含有率」はGPC測定による「面積%」のことであり、含有率又は面積%と表現する場合がある。また、7核体以上の含有率と3核体の含有率を、それぞれ単に「H」、「L」と表現する場合がある。ここで、上記一般式(6)で表されるノボラック型エポキシ樹脂において、3核体とはmが2の場合であり、7核体以上とはmが6以上の場合である。
【0035】
ノボラック型フェノール樹脂の製造においては、フェノール類とアルデヒド類のモル比がアルデヒド類1モルに対するフェノール類のモル比を調整して製造される。一般的にフェノール類の使用モル比が大きい場合には2核体、次いで3核体が多く生成され、フェノール類の使用モル比が小さくなるに連れて多核体である高分子量が多く生成して、逆に2核体や3核体は減少してくる。
【0036】
低分子を除去しない一般的なノボラック型フェノール樹脂において、官能基数を高める場合、アルデヒド類1モルに対するフェノールのモル比を小さくして縮合度を高めるのが一般的である。この製法の場合は得られたノボラック型フェノール樹脂の分子量分布の分散(Mw/Mn)は広くなり、数平均分子量(Mn)の値は残存する2核体量の影響によって値が低くなる。一方、GPC測定による7核体以上の含有率(面積%)の増加が著しく大きくなる。またこのノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化した場合は、エポキシ当量(E)も高くなるため、平均官能基数(Mn/E)の値は小さくなる傾向にあり、高耐熱性を目指すエポキシ樹脂としては適当ではなかった。
【0037】
難燃性において、ノボラック型エポキシ樹脂の2核体は2官能体であるため硬化物中での架橋構造への関与は弱く、着火時の熱分解性の高さから難燃性への悪影響が懸念されている。よって難燃性を促進させるシステムの一つとして2核体を中心とする低分子を除去し、更に再度縮合させることが難燃性に効果的である。
【0038】
一方、難燃性を促進する他の手法として、可燃性分解ガスの外部への発生を抑える方法も知られている。そのためには硬化物の高温下におけるゴム状領域での弾性率を低く抑える方が好ましいとされている。但し、高耐熱性硬化物ではその架橋密度が高い故に高温弾性率が高くなる傾向があり、燃焼後に形成される不燃性のチャー付近が硬脆くなって難燃性を悪化する事例が知られていた。
【0039】
よって、これらの難燃性を促進するメカニズムを熟慮して、2核体を減らしつつも高核体を増やし過ぎない方法で多官能化を図る方法について鋭意検討した結果、2核体を減らした後に3核体を主体とした原料を出発原料として再縮合を行い、多官能化を図る方法が難燃性に有効であることを見出した。即ち7核体以上の含有率(H)に対する3核体の含有率(L)の比(L/H)が0.6〜4.0の範囲となるノボラック型エポキシ樹脂をリン含有エポキシ樹脂の原料として使用することでリン化合物の使用量を低減しても樹脂自体から難燃性効果を十分引き出すことができる。
【0040】
上記方法によって得られるリン含有エポキシ樹脂を使用した場合は、リン含有エポキシ樹脂組成物の硬化物の高温域での弾性率を低く抑えることができ、更に難燃性も向上される。具体的には動的粘弾性測定装置(DMA:昇温速度2℃/分、周波数1Hzの測定条件)での実測において、220℃以上で安定化した貯蔵弾性率の値が下がることにより燃焼試験片の燃焼部が発泡して消火が促進される。弾性率の値としては150MPa以下、更には50MPa以下に調整されることが好ましい。7核体以上の含有率が増え過ぎると、硬化物の架橋密度は高まり燃焼部周辺のチャーが堅脆くなり難燃性は悪化する。
【0041】
本発明で使用するリン含有エポキシ樹脂の原料であるノボラック型エポキシ樹脂において、その原料であるノボラック型フェノール樹脂から2核体を中心に除去又は低減する方法としては、各種溶媒の溶解性差を利用する方法やアルカリ水溶液に溶解して除去する方法、薄膜蒸留により除去する方法等が公知であり、これら何れの分離方法を使用してもよい。
【0042】
上記の方法によって2核体を除去又は低減したノボラック型フェノール樹脂は再度アルデヒド類との縮合によって分子量分布の調整を行う。再縮合方法としてはトルエンやイソブチルケトン等の有機溶剤に溶解した後に酸触媒によるアルデヒド類との反応、又は無溶剤の溶融状態下において同様の反応を行う方法でもよい。酸触媒には塩酸、硫酸、ホウ酸等の無機酸類、蓚酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸類を単独、又は混合して使用してもよい。またアルデヒド類は、一般に公知のものが使用できる。例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、ジクロロアセトアルデヒド、ブロモアセトアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、グリオキザール、アクロレイン、メタクロレイン等が挙げられ、フェノールノボラックの製造においてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。この場合、アルデヒド類は1種又は2種以上の混合物を使用してもよい。アルデヒド類等の仕込み方法は、酸触媒存在下にて十分な冷却設備を備えた状態で原料と共に一括して仕込む方法、又は反応の進行に伴う発熱状況を確認しながら分割で加えていく方法等、設備に応じた方法で実施が可能である。
【0043】
再縮合で使用するアルデヒド使用量は、ノボラック型フェノール樹脂の仕込み量をノボラック型フェノール樹脂の実平均分子量で除して得られたモル数に対して、0.06〜0.30倍で使用することが好ましく、より好ましくは0.08〜0.15倍、更に0.10〜0.12倍で反応した場合がノボラック型エポキシ樹脂として最も適した核体の調整が可能となる。なお、ここでの「実平均分子量」とはGPC測定から得られる各核体の面積%に各理論分子量を掛けた後のこれら積算平均化した分子量である。これが0.06倍未満の場合はリン含有エポキシ樹脂の平均官能基数が不足して、200℃以上の耐熱性を得ることができない。また0.30倍よりも多い場合は平均官能基数が過剰に高まり、硬化物の高弾性化によって十分な難燃性が得られない。
【0044】
このようにして得られたノボラック型フェノール樹脂のエポキシ化については公知の方法で行うことが可能である。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の水酸基のモル数に対してエピハロヒドリンを3〜5倍モルを使用し、100〜200torr(13.3〜26.7kPa)の減圧下で60〜70℃で2時間かけて苛性ソーダ水溶液を滴下しながら反応を行うことができる。
【0045】
これら方法によって得られたノボラック型エポキシ樹脂は、GPCを使用した測定において7核体以上の面積%(H)に対する3核体の面積%(L)の比(L/H)は0.6〜4.0の範囲であり、かつ数平均分子量(Mn)をエポキシ当量(E)で除した平均官能基数(Mn/E)は3.8〜4.8の範囲である。
ここで(L/H)が4.0を超えると3核体が多くなり、平均官能基数が3.8未満となり、リン含有エポキシ樹脂を使用した硬化物の耐熱性が下がり200℃以上のTgを得ることができない。一方(L/H)が0.6未満の場合は7核体以上が多くなり、2核体も少なくなるため、硬化物が硬脆くなり、難燃性が大きく損なわれる。より好ましくはL/Hが1.0〜3.0の範囲となるノボラック型エポキシ樹脂である。
【0046】
一般式(1)及び/又は一般式(2)で表されるリン化合物と上記ノボラック型エポキシ樹脂とからリン含有エポキシ樹脂を得る反応は公知の方法で行われる。例えば、特許文献2に記載のように、一般式(1)と一般式(2)の合成を行った後にノボラック型エポキシ樹脂等を加えて均一化した後、トリフェニルホスフィン等を触媒として添加して150℃の下で反応させる方法でもよい。
【0047】
また、この反応には時間短縮や反応温度低減のために触媒を使用してもよい。使用触媒は特に制限されずエポキシ樹脂の合成に通常使用されているものが使用可能である。例えば、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等各種触媒が使用可能であり、単独で使用しても2種類以上併用してもよく、これらに限定されるものではない。また、分割して数回に分けて使用してもよい。
【0048】
ここでの触媒量は特に限定されないが、リン含有エポキシ樹脂(原料のノボラック型エポキシ樹脂とリン化合物の合計量)に対して、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。触媒量が多いと場合によってはエポキシ基の自己重合反応が進行するため、樹脂粘度が高くなり好ましくない。またここでの反応を途中停止させた予備反応エポキシ樹脂とする場合は、その触媒量を0.1質量%以下とすることで、容易に反応率を60〜90%に調整することができる。
【0049】
一般式(1)や一般式(2)で表されるリン化合物とノボラック型エポキシ樹脂を反応する際に、必要に応じて本発明の特性を損なわない範囲で各種エポキシ樹脂変性剤を併用してもよい。変性剤としてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブチルビスフェノールA、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂、臭素化フェノールノボラック樹脂等の種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂や、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシフェニルエーテル、ビスアミノフェノキシビフェニル、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン、ジアミノナフタレン等のアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂変性剤は単独でも2種類以上併用してもよい。
【0050】
また、反応には不活性溶媒を使用してもよい。具体的にはヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ジメチルブタン、ペンテン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の各種炭化水素や、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、メトキシプロパノール等の各種アルコールや、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジオキサン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類や、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が使用できるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上混合して使用してもよい。
【0051】
(B)オキサジン樹脂は、オキサジン当量が230g/eq以上であれば、種々のものを使用可能である。好ましいオキサジン当量の範囲は、230〜500g/eq.であり、より好ましくは240〜400g/eq.であり、更に好ましくは250〜380g/eq.であり、特に好ましくは260〜350g/eq.である。上記一般式(3)の構造を有するオキサジン樹脂の他、下記一般式(6)又は(7)の構造を有するオキサジン樹脂が好ましい。硬化物の耐熱性や難燃性をより向上させるため、上記一般式(3)の構造を有するオキサジン樹脂がより好ましい。
オキサジン樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン化合物(例えば、XU3560CH(ハンツマン社製)等)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジン化合物(例えば、BS−BXZ(小西化学工業株式会社製)等)、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン化合物(例えば、LMB6490(ハンツマン社製)等)、ジアミノジフェニルスルホン型オキサジン樹脂、フェノールノボラック型ベンゾオキサジン化合物(例えば、YBZ−2213(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
一般式(3)、(6)及び(7)において、R
3は芳香族環基を示し、好ましくはフェニル基やナフチル基であり、これら芳香族環基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を有してもよい。
R
4はそれぞれ独立に水素原子又は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、同じベンゼン環にある2つのR
4が連結した環状構造を成しても良い。R
4が芳香族環基の場合、置換基として、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基又は炭素数7〜11のアラルキルオキシ基を有してもよい。
R
5はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。
R
7はそれぞれ独立に、−O―、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−CH(CH
3)−、−CH
2−、及び置換又は無置換のテトラヒドロジシクロペンタジエンジイル基である。
Vは芳香族環基を示し、好ましくはフェニレン基やナフチレン基であり、これら芳香族環基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を有してもよい。
Yは−O−又は−N(R
6)−であり、R
6は炭素数1〜20の炭化水素基である。
Zは−CO−又は−SO
2−である。
【0054】
一般式(3)の構造を有する好ましいオキサジン樹脂としては、例えば、下記式(3a)〜(3l)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3g)、(3h)、(3i)、(3j)、(3k)、(3l)がより好ましく、(3a)、(3c)、(3d)、(3g)、(3h)、(3i)、(3j)、(3k)、(3l)がより好ましく、(3a)、(3c)、(3h)、(3i)、(3k)、(3l)が更に好ましい。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(B)オキサジン樹脂の配合量は、(A)リン含有エポキシ樹脂100質量部に対して、10〜80質量部が好ましく、15〜75質量部がより好ましく、20〜70質量部が更に好ましく、30〜65質量部が特に好ましい。この範囲で添加するオキサジン樹脂の含有量であれば、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物を期待の低誘電損失値(Df)にできる。オキサジン樹脂が10質量部未満であれば、期待の低誘電損失値にならない恐れがあり、80質量部を超えると、樹脂組成物で製造された基板は耐熱性が悪化する恐れがある。
【0057】
(C)脂環構造含有フェノール樹脂は、上記一般式(4)で表される。
一般式(4)において、Tは2価の脂肪族環状炭化水素基であり.必須の構造である。
Wはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、又はビスフェニル構造から選ばれる芳香族環基であり、これらの芳香族環基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を有してもよい。
iはそれぞれ独立に1〜3の整数であり、各芳香族環の水酸基の個数を表し、好ましくは1又は2である。
nは平均値で1〜10の数であり、好ましくは1〜5である。
【0058】
2価の脂肪族環状炭化水素基の炭素数は5〜20が好ましく、5〜12がより好ましい。ここで、2価の脂肪族環状炭化水素基とは、置換又は無置換のシクロアルキルジイル基やその縮合環基であり、脂肪族環が2つ以上縮合した縮合環基が好ましく、炭素数1〜10の置換基を有してもよい、また、単環の場合は、同一炭素が結合している1,1−シクロアルキリデン基(シクロアルキル−1,1−ジイル基)が好ましい。
炭素数1〜10の置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基が挙げられる。炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもかまわず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、シクロオクチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素数7〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
2価の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、シクロペンタン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロヘプタン−1,1−ジイル基、シクロオクタン−1,1−ジイル基、シクロノナン−1,1−ジイル基、シクロデカン−1,1−ジイル基、シクロウンデカン−1,1−ジイル基、シクロドデカン−1,1−ジイル基、2−メチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3−メチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、4−メチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、2−エチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3−エチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、4−エチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、2−t−ブチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3−t−ブチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、4−t−ブチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、2−フェニルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3−フェニルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、4−フェニルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3−メチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサン−1,5−ジイル基や、下記式(4a)〜(4l)で表される架橋基等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式(4a)〜(4l)で表される架橋基は、炭素数1〜6の置換基を有してもよい。
これらの中では、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロドデカン−1,1−ジイル基、(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(4e)、(4f)、(4h)、(4j)、(4l)がより好ましく、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロドデカン−1,1−ジイル基、(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(4e)、(4f)が更に好ましく、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロドデカン−1,1−ジイル基、(4c)が特に好ましい。
【0061】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(C)脂環構造含有フェノール樹脂の配合量は、(A)リン含有エポキシ樹脂100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、15〜45質量部がより好ましく、20〜40質量部が更に好ましい。この範囲で配合する脂環構造含有フェノール樹脂の含有量であれば、同樹脂組成物から得られる硬化物を期待の比誘電率の値(Dk)にできる。脂環構造含有フェノール樹脂が10質量部未満であれば、期待の比誘電率値にならない恐れがあり、更に基板は耐熱性が悪化する恐れがある。50質量部を超えると、樹脂組成物で製造された基板は耐熱性が悪化する恐れがある。
【0062】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、上記リン含有エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を併用してもよい。併用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのエポキシ樹脂は単独又は2種類以上併用してもよい。エポキシ樹脂を併用する場合、全エポキシ樹脂の50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。併用するエポキシ樹脂が多すぎると、耐熱性と難燃性の両立という効果が得られない恐れがある。
【0063】
併用できるエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスチオエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、効果を損なわない範囲で従来の公知硬化剤を併用してもよい。併用できる硬化剤としては、上記(C)脂環構造含有フェノール樹脂以外のフェノール樹脂系硬化剤や、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤又はその他の硬化剤等の通常使用するものが挙げられるが、これらの硬化剤は1種類だけ使用しても2種類以上併用してもよい。これらのうち、耐熱性を付与する点でジシアンジアミド硬化剤が好ましく、吸水率や長期熱安定性を付与する点ではフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。
【0065】
併用できる硬化剤の配合量は、(c)脂環構造含有フェノール樹脂100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。また別の観点から、配合量を求めることもできる。エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の活性水素基は0.2〜1.5モルの範囲である。エポキシ基1モルに対して活性水素基が、0.2モル未満又は1.5モルを超える場合は、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。0.3〜1.5モルが好ましく、0.5〜1.5モルがより好ましく、0.8〜1.2モル更に好ましい。
【0066】
本発明でいう活性水素基とはエポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、1モルのカルボキシル基やフェノール性水酸基は1モルと、アミノ基(NH
2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、エポキシ当量が既知のフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
【0067】
併用できるフェノール樹脂系硬化剤としては、具体例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビスフェノールTMC、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、4,4‘−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール類や、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン、ジ−t−ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類や、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等ヒドロキシナフタレン類や、LC−950PM60(Shin−AT&C社製)等のリン含有フェノール硬化剤や、ショウノールBRG−555(アイカ工業株式会社製)等のフェノールノボラック樹脂、DC−5(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等のクレゾールノボラック樹脂、芳香族変性フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、レヂトップTPM−100(群栄化学工業株式会社製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のフェノール類、ナフトール類、ビフェノール類及び/又はビスフェノール類とアルデヒド類との縮合物、SN−160、SN−395、SN−485(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等のフェノール類、ナフトール類、ビフェノール類及び/又はビスフェノール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類、ナフトール類、ビフェノール類及び/又はビスフェノール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類、ナフトール類、ビフェノール類及び/又はビスフェノール類とビフェニル系縮合剤との縮合物等のいわゆる「ノボラック型フェノール樹脂」といわれるフェノール化合物や、PS−6313(群栄化学工業社株式会社製)等のトリアジン環及びヒドロキシフェニル基含有化合物等が挙げられる。入手容易さの観点から、フェノールノボラック樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂、芳香族変性フェノールノボラック樹脂等が好ましい。
【0068】
ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられ、ナフトール類としては、1−ナフトール、2−ナフトール等が挙げられ、その他、上記ビフェノール類やビスフェノール類が挙げられる。
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
ビフェニル系縮合剤としてビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0069】
酸無水物系硬化剤としては、具体的には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルナジック酸等が挙げられる。
【0070】
アミン系硬化剤としては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジシアンジアミドや、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0071】
その他の硬化剤として、具体的には、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、イミダゾール類とトリメリット酸、イソシアヌル酸、又はホウ酸等との塩であるイミダゾール塩類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類、トリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類、ジアザビシクロ化合物、ジアザビシクロ化合物とフェノール類やフェノールノボラック樹脂類等との塩類、3フッ化ホウ素とアミン類やエーテル化合物等との錯化合物、芳香族ホスホニウム又はヨードニウム塩や、ヒドラジッド類や、酸性ポリエステル類等が挙げられる。
【0072】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性を調整するために公知の反応遅延剤を使用することができる。例えば、ホウ酸、ホウ酸エステル、リン酸、アルキルリン酸エステル、p−トルエンスルホン酸等が使用可能である。
ホウ酸エステルとしては、トリブチルボレ−ト、トリメトキシボロキシン、ホウ酸エチル、エポキシ−フェノール−ホウ酸エステル配合物(例えば、キュアダクトL−07N(四国化成工業株式会社製)等)等が挙げられ、アルキルリン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
反応遅延剤は単独でも複数を混合して使用してもよいが、使用量の調整のしやすさから単独が好ましく、とりわけホウ酸が少量の使用でその効果が最も良好である。使用の際はメタノールやブタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶剤に溶解して5〜20質量%の濃度で使用することができる。特に硬化剤がジシアンジアミドの場合は、硬化剤1モルに対してホウ酸0.1〜0.5モルが好ましく、0.15〜0.35モルが、遅延効果と耐熱性を得る上でより好ましい。また硬化剤がフェノール系硬化剤の場合は、リン含有エポキシ樹脂に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜1質量部が耐熱性を得る上でより好ましい。特に、ホウ酸使用量が5質量部以上に増えると、硬化性を調整する上でイミダゾール等の反応促進剤の量を増やす必要があり、硬化物での絶縁信頼性を著しく損なうために好ましくない。
【0073】
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を使用することができる。例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類や、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類や、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のホスフィン類や、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して0.02〜5.0質量部が必要に応じて使用される。硬化促進剤を使用することにより、硬化温度を下げたり、硬化時間を短縮することができる。
【0074】
エポキシ樹脂組成物は、粘度調整用として有機溶剤又は反応性希釈剤も使用することができる。
【0075】
有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトンメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ベンジルアルコールアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類や、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類や、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類や、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類や、ネオデカン酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類や、フェニルジグリシジルアミン、トリルジグリシジルアミン等のグリシジルアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
これらの有機溶媒又は反応性希釈剤は、単独又は複数種類を混合したものを、不揮発分として90質量%以下で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40〜80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を使用することが好ましく、その使用量は不揮発分で30〜60質量%が好ましい。
【0078】
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填材を使用することができる。具体的には溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、マイカ、クレー、カオリン、ベーマイト、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、窒化ホウ素、炭素、ガラス粉末、シリカバルーン等の無機充填材が挙げられるが、顔料等を配合してもよい。無機充填材の使用目的としては一般的には耐衝撃性の向上が挙げられるが、熱膨張による基板の反り対策として寸法安定性にも寄与する。また水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物は、難燃助剤として作用する他にも耐トラキング性を補足する目的でも使用してもよい。組成物のリン含有率を減らした際は、難燃性を確保する点で効果はあるが多量の使用は基板の成形加工性を大きく低下させる。特に配合量が10質量%以上でないと耐衝撃性の効果は少ないが、逆に配合量が150質量%を越えると積層板用途として必要な接着性の低下や、ドリル加工性等の他の成形加工特性が低下する恐れがある。また、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維等の繊維質充填材や微粒子ゴム、熱可塑性エラストマー等の有機充填材も必要に応じて本発明の特性を損なわない程度に併用することもできる。
【0079】
エポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲で他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を配合してもよい。例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0080】
また、エポキシ樹脂組成物は、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、公知の各種難燃剤を併用することもできる。併用できる難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は単独又は2種類以上を併用してもよい。
【0081】
リン系難燃剤は、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも使用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。有機リン系化合物としては、例えば、脂肪族リン酸エステル、リン酸エステル化合物、例えば、PX−200(大八化学工業株式会社製)等の縮合リン酸エステル類、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスファゼン等の有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物や、ホスフィン酸の金属塩の他、DOPO、DOPO−HQ、DOPO−NQ等の環状有機リン化合物や、それらをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体であるリン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤等が挙げられる。また、リン系難燃剤を使用する場合は、水酸化マグネシウム等の難燃助剤を併用してもよい。
【0082】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化することによって硬化物を得ることができる。硬化の際には、例えば、樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし、積層して加熱加圧硬化することで積層板を得ることができる。
【0083】
エポキシ樹脂組成物を板状基板等とする場合、その寸法安定性、曲げ強度等の点で繊維状のものが好ましい充填材として挙げられる。より好ましくはガラス繊維を網目状に編み上げたガラス繊維基板が挙げられる。
【0084】
エポキシ樹脂組成物は、更に必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤はエポキシ樹脂組成物に対し、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0085】
エポキシ樹脂組成物は、繊維状基材に含浸させることによりプリント配線板等で使用されるプリプレグを作成することができる。繊維状基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を使用することができるがこれに限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、エポキシ樹脂組成物を溶剤で粘度調整して作成した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30〜80質量%とすることが好ましい。
【0086】
また、プリプレグを硬化するには、一般にプリント配線板を製造するときに使用される積層板の硬化方法を使用することができるが、これに限定されるものではない。例えば、プリプレグを使用して積層板を形成する場合、プリプレグを一枚又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を使用することができる。そして、作成した積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化させ、積層板を得ることができる。その時、加熱温度を160〜220℃、加圧圧力を50〜500N/cm
2、加熱加圧時間を40〜240分間とすることが好ましく、目的とする硬化物を得ることができる。加熱温度が低いと硬化反応が十分に進行せず、高いとエポキシ樹脂組成物の分解が始まる恐れがある。また、加圧圧力が低いと得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があり、高いと硬化する前に樹脂が流れてしまい、希望する厚みの硬化物が得られない恐れがある。更に、加熱加圧時間が短いと十分に硬化反応が進行しない恐れがあり、長いとプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の熱分解が起こる恐れがあり、好ましくない。
【0087】
エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによってエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファ一成形、圧縮成形等や、樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に使用される。その際の硬化温度は通常、100〜300℃の範囲であり、硬化時間は通常、1時間〜5時間程度である。
【0088】
リン含有エポキシ樹脂を使用したエポキシ樹脂組成物を作製し、加熱硬化により積層板を評価した結果、特定のリン化合物と、特定の分子量分布と特定の平均官能基数を有するノボラック型エポキシ樹脂とを反応して得られたリン含有エポキシ樹脂は、従来公知のリン含有エポキシ樹脂と比較して高い耐熱性と難燃性を示し、更には誘電特性も向上することが可能となり、硬化物の物性を向上することができるエポキシ樹脂組成物を提供することができた。
【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。当量の単位はいずれも「g/eq.」である。
【0090】
エポキシ当量:JIS K 7236に準拠して測定を行った。具体的には、自動電位差滴定装置(平沼産業株式会社製、COM−1600ST)を用いて、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸−酢酸溶液で滴定した。
【0091】
リン含有率:試料150mgに硫酸3mLを加え30分加熱する。室温に戻し、硝酸3.5mL及び過塩素酸0.5mLを加えて内容物が透明又は黄色になるまで加熱分解した。この液を100mLメスフラスコに水で希釈した。この試料液10mLを50mLメスフラスコに入れ、フェノールフタレイン指示薬を1滴加え、2mol/Lアンモニア水を微赤色になるまで加え、更に、50%硫酸液2mLを加え、水を加えた。2.5g/Lのメタバナジン酸アンモニウム水溶液を5mL及び50g/Lモリブデン酸アンモニウム水溶液5mLを加えた後、水で定容とした。室温で40分放置した後、分光光度計を使用して波長440nmの条件で水を対照として測定した。予めリン酸二水素カリウム水溶液にて検量線を作成しておき、吸光度からリン含有率を求めた。
【0092】
ガラス転移温度(Tg):示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR6000 DSC6200)を使用して20℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC・Tgm(ガラス状態とゴム状態の接線に対して変異曲線の中間温度)の温度で表した。
【0093】
プレッシャークッカ試験(PCT)はんだ耐熱性・耐水性:JIS C 6481に準拠して作製した試験片を121℃、0.2MPaのオートクレーブ中に3時間処理した後、260℃のはんだ浴中につけて判断した。20分以上膨れやはがれが生じなかったものを○とし、10分以内に膨れやはがれが生じたものを×とし、それ以外を△と評価した。
【0094】
熱剥離試験 (TMA法)T−288:IPC TM−650 TM2.4.24.1に準拠して、288℃にて試験を行った。
【0095】
銅箔剥離強さ:JIS C 6481、5.7に準じて測定した。
【0096】
燃焼性:UL94(Underwriters Laboratories Inc.の安全認証規格)に準じた。5本の試験片について試験を行い、1回目と2回目の接炎(5本それぞれ2回ずつで計10回の接炎)後の有炎燃焼持続時間の合計時間より同規格の判定基準である、V−0、V−1、V−2で判定した。なお、完全に燃え尽きたものはNGと判定した。
【0097】
比誘電率及び誘電正接:空洞共振法(ベクトルネットワークアナライザー(VNA)E8363B(アジレント・テクノロジー製)、空洞共振器摂動法誘電率測定装置(関東電子応用開発製))を用いて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の、周波数2GHzの値を測定した。
【0098】
3核体、7核体以上、数平均分子量(Mn):GPC測定により求めた。具体的には、本体(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgelG4000H
XL、TSKgelG3000H
XL、TSKgelG2000H
XL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはTHFを使用して、1mL/分の流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を使用した。測定試料はサンプル0.05gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターでろ過したものを50μL使用した。データ処理は、東ソー株式会社製GPC−8020モデルIIバージョン6.00を使用した。3核体、7核体以上はピークの面積%から、Mnは標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製、A−500,A−1000,A−2500,A−5000,F−1,F−2,F−4,F−10,F−20,F−40)より求めた検量線より換算した。
【0099】
合成例1
撹拌機、温度調節装置、還流冷却器、全縮器、減圧装置などを備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、フェノールを1000部加えて80℃まで昇温した後、2.8部のシュウ酸2水和物を添加して撹拌溶解し、142部の37.5%ホルマリンを30分間かけて滴下した。その後、反応温度を92℃に維持して3時間反応を行った。反応終了後、110℃まで温度を上げて脱水した後、残存するフェノールを150℃、60mmHgの回収条件で約90%回収した後、5mmHgの回収条件で回収した後、更に160℃、80mmHgの条件下で水10部を90分間かけて滴下して残存するフェノールを除去した後、溶融しているフェノールノボラック樹脂中に窒素ガスを60分間バブリングして、フェノールノボラック樹脂(N0)を得た。
得られたN0を280℃、5mmHgの薄膜蒸留器を使用して2核体の一部を更に留出除去してフェノールノボラック樹脂(N1)を得た。得られたN1は軟化点65℃で、2核体10.8面積%、3核体52.9面積%、4核体21.8面積%、5核体8.5面積%、6核体6.0面積%、実測均分子量は355であった。
【0100】
合成例2
合成例1で得たN0を使用して300℃、5mmHgの薄膜蒸留器を使用して2核体の一部を更に強く留出除去してフェノールノボラック樹脂(N2)を得た。得られたN2は軟化点66℃で、2核体5.9面積%、3核体58.4面積%、4核体22.9面積%、5核体8.3面積%、6核体4.6面積%、実測平均分子量は356であった。
【0101】
合成例3
撹拌機、温度調節装置、還流冷却器、全縮器、窒素ガス導入装置、減圧装置及び滴下装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、合成例1で得られたN1を1000部、シュウ酸二水和物0.38部を仕込み、窒素ガスを導入しながら撹拌を行い、加熱を行って昇温した。37.5%ホルマリン13.5部を80℃で滴下を開始し30分で滴下を終了した。その後、反応温度を92℃に保ち3時間反応を行い次いで110℃まで昇温して反応生成水を系外に除去した。最後に160℃下で2時間の加温を行い、フェノールノボラック樹脂(N3)を得た。得られたN3は軟化点63℃で、2核体9.4面積%、3核体48.1面積%、7核体以上9.0面積%、Mn552であった。N3のGPC測定チャートを
図1に示す。横軸は溶出時間(分)を示し、縦軸は検出強度(mV)を示す。Aで示すピークが3核体であり、Bで示すピーク群が7核体以上である。
【0102】
その後、同様の装置にN3を500部、エピクロルヒドリン2200部とジエチレングリコールジメチルエーテル400部を仕込み60℃で溶解し、130mmHgの減圧下で、58〜62℃の温度に保ちながら、49%苛性ソーダ水溶液332部を2時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、留出してくる水は順次系外へと除去した。その後、同じ条件下で2時間反応を継続した。反応終了後、5mmHg、150℃でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK1200部を加えて生成物を溶解した。その後、10%水酸化ナトリウム水溶液70部を加えて、80〜90℃で2時間反応させ、1000部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、還流脱水後、濾過して不純物を取り除いた。そして、5mmHgの減圧下、150℃に加温して、MIBKを留去して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E1)を得た。得られたE1はエポキシ当量171で、Mn650、3核体40.6面積%、7核体以上20.9面積%で、7核体以上の含有率(面積%、H)に対する3核体の含有率(面積%、L)の比(L/H)は1.9で、平均官能基数(Mn/E)は3.8であった。
【0103】
合成例4
N1を1000部、シュウ酸二水和物を0.63部、37.5%ホルマリンを22.5部の仕込み以外は、合成例3と同様にしてフェノールノボラック樹脂(N4)を得た。得られたN4は軟化点69℃で、2核体8.0面積%、3核体43.7面積%、7核体以上14.2面積%、Mn574であった。その後、合成例3と同様に、N4のエポキシ化を行って、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E2)を得た。得られたE2はエポキシ当量172で、Mn682、3核体36.4面積%、7核体以上26.7面積%で、含有率比(L/H)は1.4で、平均官能基数(Mn/E)は4.0であった。
【0104】
合成例5
N1を1000部、シュウ酸二水和物を1.89部、37.5%ホルマリンを67.6部の仕込み以外は、合成例3と同様にしてフェノールノボラック樹脂(N5)を得た。得られたN5は軟化点78℃で、2核体7.2面積%、3核体31.2面積%、7核体以上30.9面積%、Mn690であった。その後、合成例3と同様に、N5のエポキシ化を行って、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E3)を得た。得られたE3はエポキシ当量173で、Mn824、3核体26.1面積%、7核体以上42.2面積%で、含有率比(L/H)は0.6で、平均官能基数(Mn/E)は4.8であった。
【0105】
合成例6
N2を1000部、シュウ酸二水和物を0.63部、37.5%ホルマリンを22.5部の仕込み以外は、合成例3と同様にしてフェノールノボラック樹脂(N6)を得た。得られたN6は軟化点70℃で、2核体5.1面積%、3核体45.8面積%、7核体以上14.4面積%、Mn589であった。その後、合成例3と同様に、N6のエポキシ化を行って、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E4)を得た。得られたE4はエポキシ当量174で、Mn693、3核体38.8面積%、7核体以上26.0面積%で、含有率比(L/H)は1.5で、平均官能基数(Mn/E)は4.0であった。
【0106】
合成例7
LV−70S(群栄化学工業製フェノールノボラック樹脂、軟化点65℃、2核体1.0面積%、3核体74.7面積%、4核体18.1面積%、5核体6.2面積%、実測数平均分子量337)を1000部、シュウ酸二水和物を0.66部、37.5%ホルマリンを23.7部の仕込み以外は、合成例3と同様にしてフェノールノボラック樹脂(N7)を得た。得られたN7は軟化点67℃で、2核体1.1面積%、3核体57.3面積%、6核体と7核体の分離は困難であり6核体以上の含有率が22.0面積%、Mn580であった。その後、合成例3と同様に、N7のエポキシ化を行って、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E5)を得た。得られたE5はエポキシ当量173で、Mn669、3核体48.9面積%、7核体以上14.6面積%で、含有率比(L/H)は3.3で、平均官能基数(Mn/E)は3.9であった。
【0107】
合成例8
N1を1000部、シュウ酸二水和物を0.32部、37.5%ホルマリンを11.3部の仕込み以外は、合成例3と同様にしてフェノールノボラック樹脂(N8)を得た。得られたN8は軟化点62℃で、2核体9.6面積%、3核体48.4面積%、7核体以上7.7面積%、Mn545であった。その後、合成例3と同様に、N8のエポキシ化を行って、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E6)を得た。得られたE6はエポキシ当量171で、Mn623、3核体41.9面積%、7核体以上19.9面積%で、含有率比(L/H)は2.1で、平均官能基数(Mn/E)は3.6であった。
【0108】
合成例9
N1を1000部、シュウ酸二水和物を2.52部、37.4%ホルマリンを90.1部の仕込み以外は、合成例3と同様にしてフェノールノボラック樹脂(N9)を得た。得られたN9は軟化点84℃で2核体5.7面積%、3核体24.1面積%、7核体以上41.5面積%、Mn748であった。その後、合成例3と同様に、N9のエポキシ化を行って、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E7)を得た。得られたE7はエポキシ当量175で、Mn858、3核体20.7面積%、7核体以上48.5面積%で、含有率比(L/H)は0.4で、平均官能基数(Mn/E)は4.9であった。
【0109】
合成例10
YDPN−638(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、エポキシ当量178)とYDF−170(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル式会社製、エポキシ当量168)を1/1(質量比)で溶融混同して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(E8)を得た。得られたE8はエポキシ当量173で、Mn468、3核体12.1面積%、7核体以上19.3面積%で、含有率比(L/H)は0.6で、平均官能基数(Mn/E)は2.7であった。
【0110】
合成例11
撹拌機、温度調節装置、還流冷却器、全縮器、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、HCA(三光株式会社製、DOPO)100部とトルエン185部を仕込み、80℃で加温溶解した。その後、1,4−ナフトキノン(NQ)62.2部を反応熱による昇温に注意しながら分割投入した。このときNQとDOPOのモル比(NQ/DOPO)は0.85であった。この反応後、エポキシ樹脂E1を627部仕込み、窒素ガスを導入しながら撹拌を行い、130℃まで加熱を行って溶解した。トリフェニルホスフィン(TPP)を0.08部添加して150℃で4時間反応した後、メトキシプロパノールを42部投入して140℃で更に2時間反応を行って、リン含有エポキシ樹脂(PE1)を得た。得られたPE1はエポキシ当量263で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率(実測エポキシ当量から計算で求めた原料リン化合物の消費率)は78%であった。
【0111】
合成例12
エポキシ樹脂を627部のE2にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PE2)を得た。得られたPE2はエポキシ当量261で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は72%であった。
【0112】
合成例13
エポキシ樹脂を627部のE3にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PE3)を得た。得られたPE3はエポキシ当量261で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は70%であった。
【0113】
合成例14
エポキシ樹脂を627部のE4にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PE4)を得た。得られたPE4はエポキシ当量264で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は72%であった。
【0114】
合成例15
エポキシ樹脂を627部のE5にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PE5)を得た。得られたPE5はエポキシ当量262で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は72%であった。
【0115】
合成例16
NQを72.4部(NQ/DOPO=0.99)、TPPを0.09部にし、エポキシ樹脂を715部のE5にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PE6)を得た。得られたPE6はエポキシ当量276で、リン含有率は1.6%であった。なお、反応率は100%であった。
【0116】
合成例17
NQを36.6部(NQ/DOPO=0.50)、TPPを0.07部にし、エポキシ樹脂を431部のE2にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PE7)を得た。得られたPE7はエポキシ当量313で、リン含有率は2.5%であった。なお、反応率は100%であった。
【0117】
合成例18
NQを68.0部(NQ/DOPO=0.93)にし、エポキシ樹脂を542部のE2にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PE8)を得た。得られたPE8はエポキシ当量278で、リン含有率は2.0%であった。なお、反応率は67%であった。
【0118】
合成例19
エポキシ樹脂を627部のE6にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PEH1)を得た。得られたPEH1はエポキシ当量263で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は78%であった。
【0119】
合成例20
エポキシ樹脂を627部のE7にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PEH2)を得た。得られたPEH2はエポキシ当量264で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は69%であった。
【0120】
合成例21
エポキシ樹脂を627部のフェノールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YDPN−6300、エポキシ当量175、Mn653、3核体35.2面積%、7核体以上21.8面積%、含有率比(L/H)1.6、平均官能基数(Mn/E)3.7)にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PEH3)を得た。得られたPEH3はエポキシ当量266で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は72%であった。
【0121】
合成例22
エポキシ樹脂を627部のフェノールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YDPN−638、エポキシ当量178、Mn662、3核体14.7面積%、7核体以上38.6面積%、含有率比(L/H)0.4、平均官能基数(Mn/E)3.7)にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PEH4)を得た。得られたPEH4はエポキシ当量272で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は72%であった。
【0122】
合成例23
エポキシ樹脂を627部のフェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、N775、エポキシ当量187、Mn1308、3核体6.7面積%、7核体以上71.6面積%、含有率比(L/H)0.1、平均官能基数(Mn/E)7.0)にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PEH5)を得た。得られたPEH5はエポキシ当量278で、リン含有率は1.8%であった。なお、反応率は60%であった。
【0123】
合成例24
NQを68.0部(NQ/DOPO=0.93)、TPPを0.17部にし、エポキシ樹脂を542部のE8にした以外は、合成例11と同様にしてリン含有エポキシ樹脂(PEH6)を得た。得られたPEH6はエポキシ当量317で、リン含有率は2.0%であった。なお、反応率は100%であった。
【0124】
使用したエポキシ樹脂、オキサジン樹脂、フェノール樹脂、その他の材料の略号について以下に示す。
【0125】
[エポキシ樹脂]
PE1:合成例11で得られたリン含有エポキシ樹脂
PE2:合成例12で得られたリン含有エポキシ樹脂
PE3:合成例13で得られたリン含有エポキシ樹脂
PE4:合成例14で得られたリン含有エポキシ樹脂
PE5:合成例15で得られたリン含有エポキシ樹脂
PE6:合成例16で得られたリン含有エポキシ樹脂
PE7:合成例17で得られたリン含有エポキシ樹脂
PE8:合成例18で得られたリン含有エポキシ樹脂
PEH1:合成例19で得られたリン含有エポキシ樹脂
PEH2:合成例20で得られたリン含有エポキシ樹脂
PEH3:合成例21で得られたリン含有エポキシ樹脂
PEH4:合成例22で得られたリン含有エポキシ樹脂
PEH5:合成例23で得られたリン含有エポキシ樹脂
PEH6:合成例23で得られたリン含有エポキシ樹脂
E9:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP−7200H、エポキシ当量273)
E10:ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC−3000H、エポキシ当量292)
【0126】
[フェノール樹脂]
H1:ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、GDP−6140、活性水素当量196)
H2:4,4−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール樹脂(活性水素当量191)
H3:フェノールノボラック型樹脂(群栄化学工業株式会社製、レヂトップPSM−6358、軟化点118℃、活性水素当量106)
【0127】
[オキサジン樹脂]
B1:フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂(活性水素当量276)
B2:フェノールレッド型ベンゾオキサジン樹脂(活性水素当量294)
B3:フェノールフタレインアニリド型ベンゾオキサジン樹脂(活性水素当量313)
B4:α―ナフトールフタレン型ベンゾオキサジン樹脂(活性水素当量326)
B5:ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂(活性水素当量217)
【0128】
[添加型難燃剤]
FR1:シクロホスファゼン(非ハロゲン難燃剤、株式会社伏見製薬所製、ラビトルFP−100、リン含有率13%)
FR2:DOPO付加BPA(非ハロゲン難燃剤、SHIN−A T&C製、LC−9501、リン含有率9.2%)
【0129】
[その他]
C1:2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
C2:ホウ酸(シグマアルドリッチジャパン社製)
C3:エポキシシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM−403)
【0130】
[充填材]
FL1:溶融シリカ(株式会社アドマテック製、SO−C2、平均粒子径:約0.4〜0.6μm)
【0131】
実施例1
エポキシ樹脂(PE1)を100部、フェノール樹脂(H1)を48.3部、オキサジン樹脂(B1)を52.5部、0.5部のC2を20%メタノール溶液として配合した。これら配合の際はエポキシ樹脂、フェノール樹脂及びオキサジン樹脂はメチルエチルケトンで溶解したワニスの状態で仕込み、メチルエチルケトン、メトキシプロパノールにて不揮発分を48〜50%となるように調整した。その後、このワニスでのゲルタイムが170℃下で200〜350秒になるように、C1のメトキシプロパノール溶液を使用して調整を行って、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た。
【0132】
得られたエポキシ樹脂組成物ワニスはC3を0.1部投入した後、ホモディスパーを使用して、FL1を5000rpmのせん断撹拌をしながら23部を分割投入し、約10分間の均一分散を行った。
【0133】
得られたエポキシ樹脂組成物ワニスは、ガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA 7628XS13、0.18mm厚)に含浸した後、ガラスクロスを150℃の全排気乾燥オーブンで7分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグは8枚を重ね、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC、35μm厚)を更に重ね、真空プレス機にて、130℃×15分の予備加熱の後、240℃で80分の硬化条件で2MPaのプレス成形を行い約1.6mm厚の積層板を得た。得られた積層板のTg、PCTはんだ耐熱試験、難燃性、銅箔剥離強さ、層間接着力、誘電特性の試験を行った結果を表1に示す。
【0134】
実施例2〜14
表1の配合量(部)で配合し、実施例1と同様の操作を行い、積層板を得た。実施例1と同様の試験を行い、その結果を表1に示す。
【0135】
比較例1〜11
表2の配合量(部)で配合し、実施例1と同様の操作を行い、積層板を得た。実施例1と同様の試験を行い、その結果を表2に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
比較例のエポキシ樹脂組成物に比べて、実施例のエポキシ樹脂組成物は、Tgは220℃以上の高耐熱を与えつつも、難燃性もV−0を保持しつつ、誘電特性や接着でも優位性が見られていた。一方、比較例では、Tgや難燃性、誘電特性、接着性の両立性が保てない傾向が見られた。