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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-90900(P2021-90900A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】消泡剤の選定方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20210521BHJP
【FI】
   B01D19/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-222175(P2019-222175)
(22)【出願日】2019年12月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘明
(72)【発明者】
【氏名】吉原 資二
(72)【発明者】
【氏名】大澤 卓矢
【テーマコード(参考)】
4D011
【Fターム(参考)】
4D011CB02
(57)【要約】
【課題】適切な消泡剤を効率良く簡単に選定できる消泡剤の選定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、消泡処理の対象となる泡であるターゲットに対して所望の消泡剤を選定するための消泡剤の選定方法を対象とする。本発明の選定方法は、ターゲットのハンセン溶解度パラメータ(HSP値)δd、δp、δhを取得する工程と、選定候補となる複数種類の消泡剤における各HSP値δd、δp、δhをそれぞれ取得する工程と、HSP値を3次元空間の位置座標とみなして、ターゲットのHSP値と、各消泡剤のHSP値との間の距離をそれぞれ算出する工程と、算出した距離の中から最短の距離に対応する消泡剤を、所望の消泡剤として選定する工程とを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消泡処理の対象となる泡であるターゲットに対して所望の消泡剤を選定するための消泡剤の選定方法であって、
ターゲットのハンセン溶解度パラメータ(HSP値)δd、δp、δhを取得する工程と、
選定候補となる複数種類の消泡剤における各HSP値δd、δp、δhをそれぞれ取得する工程と、
HSP値を3次元空間の位置座標とみなして、ターゲットのHSP値と、各消泡剤のHSP値との間の距離をそれぞれ算出する工程と、
算出した距離の中から最短の距離に対応する消泡剤を、所望の消泡剤として選定する工程とを含むことを特徴とする消泡剤の選定方法。
【請求項2】
ターゲットのHSP値として、ターゲットが発生する母液のHSP値を採用するようにした請求項1に記載の消泡剤の選定方法。
【請求項3】
HSP値が既知である複数種類の溶剤において、ターゲットに対する相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、ターゲットのHSP値を算出するようにした請求項1または2に記載の消泡剤の選定方法。
【請求項4】
HSP値が既知である複数種類の溶剤において、選定候補に対する相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、選定候補のHSP値を算出するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の消泡剤の選定方法。
【請求項5】
ターゲットと、選定候補の消泡剤とのHSP値を取得するに際して、親水成分のHSP値を取得するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の消泡剤の選定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数種類の消泡剤の中からターゲットとしての泡に対し適切な消泡剤を選定するための消泡剤の選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばペイント業界、食品業界、水処理業界等の液体を処理する業界では、様々な工程において、処理液の表面に泡(泡沫)が発生する。このような泡は、品質の低下や生産効率の低下等を引き起こす可能性があるため、問題視されることが多くなっている。そこで近年においては処理液に消泡剤を投入して泡の発生を抑制することが行われている。
【0003】
一方、消泡剤は多種類存在し、この多くの消泡剤の中から、ターゲットである泡に対し適切な消泡剤を選定することは困難であった。例えば従来においては、下記特許文献1に示すように多数の消泡剤を一つずつ試行錯誤して、ターゲットに対する消泡効果を評価して、適当な消泡剤を選定したり、研究者や作業者の経験や勘を頼りに試行錯誤して、適当な消泡剤を選定するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−169607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の消泡剤の選定方法においては、試行錯誤や、経験や勘を頼りにして、消泡剤を選定しているため、選定作業に膨大な労力や時間が必要であるばかりか、適切な消泡剤を確実に選定することが困難であるという課題があった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、選定作業を効率良く行える上さらに、適切な消泡剤を確実に選定することができる消泡剤の選定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者は、ターゲットとしての泡と、消泡剤との相関性について詳細に研究した。その結果、消泡剤のうち、ターゲットに対する親和性が高い消泡剤においては、優れた消泡効果を発揮することを解明した。さらに本発明者はその研究結果を踏まえて、綿密な実験研究を繰り返し行って、ターゲットおよび消泡剤間の親和性を客観的に評価できる手法について探求したところ、ハンセン溶解度パラメータ(HSP値)δd、δp、δhを基準にすることによって、ターゲットおよび消泡剤間の親和性を効率良く定量的に評価できることに想到し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]消泡処理の対象となる泡であるターゲットに対して所望の消泡剤を選定するための消泡剤の選定方法であって、
ターゲットのハンセン溶解度パラメータ(HSP値)δd、δp、δhを取得する工程と、
選定候補となる複数種類の消泡剤における各HSP値δd、δp、δhをそれぞれ取得する工程と、
HSP値を3次元空間の位置座標とみなして、ターゲットのHSP値と、各消泡剤のHSP値との間の距離をそれぞれ算出する工程と、
算出した距離の中から最短の距離に対応する消泡剤を、所望の消泡剤として選定する工程とを含むことを特徴とする消泡剤の選定方法。
【0010】
なお本発明において消泡とは、実際に発生した泡を消失させる場合の他に、泡の発生を抑制させる場合も含むものである。例えば本発明において、泡立ちが予想される処理液に消泡剤を予め投入しておいて、泡立ちを未然に防ぐ(低減させる)場合も消泡という概念に含まれる。
【0011】
[2]ターゲットのHSP値として、ターゲットが発生する母液のHSP値を採用するようにした前項1に記載の消泡剤の選定方法。
【0012】
[3]HSP値が既知である複数種類の溶剤において、ターゲットに対する相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、ターゲットのHSP値を算出するようにした前項1または2に記載の消泡剤の選定方法。
【0013】
[4]HSP値が既知である複数種類の溶剤において、選定候補に対する相溶性をそれぞれ評価し、その評価結果に基づいて、選定候補のHSP値を算出するようにした前項1〜3のいずれか1項に記載の消泡剤の選定方法。
【0014】
[5]ターゲットと、選定候補の消泡剤とのHSP値を取得するに際して、親水成分のHSP値を取得するようにした前項1〜4のいずれか1項に記載の消泡剤の選定方法。
【発明の効果】
【0015】
発明[1]の消泡剤の選定方法によれば、HSP値に基づいて、選定候補である複数種類の消泡剤と、ターゲットとの距離をそれぞれ測定し、最も距離が短い消泡剤を所望の適切な消泡剤として使用するものである。これにより本発明においては、ターゲットと親和性が高い消泡剤を選定できるため、過度な労力や時間を費やすことなく、優れた消泡効果を発揮する適切な消泡剤を効率良く確実に選定することができる。
【0016】
発明[2]〜[5]の消泡剤の選定方法によれば、より一層適切な消泡剤をより一層効率良く確実に選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はこの発明の実施形態においてHSP値を測定する際に用いられるハンセン溶解球を説明するための3次元グラフである。
図2図2は実施形態においてHSP値を基に物質間の距離を説明するための3次元グラフである。
図3図3はこの発明の実施例においてターゲット「PLE」のHSP値を測定する際に用いられたハンセン溶解球を示す3次元グラフである。
図4A図4Aは実施例において消泡剤「Af:A」のHSP値を測定する際に用いられたハンセン溶解球を示す3次元グラフである。
図4B図4Bは実施例において消泡剤「Af:B」のHSP値を測定する際に用いられたハンセン溶解球を示す3次元グラフである。
図4C図4Cは実施例において消泡剤「Af:C」のHSP値を測定する際に用いられたハンセン溶解球を示す3次元グラフである。
図4D図4Dは実施例において消泡剤「Af:D」のHSP値を測定する際に用いられたハンセン溶解球を示す3次元グラフである。
図4E図4Eは実施例において消泡剤「Af:E」のHSP値を測定する際に用いられたハンセン溶解球を示す3次元グラフである。
図5図5は実施例においてターゲットと消泡剤との位置関係を示す3次元グラフである。
図6図6は実施例においてターゲットと消泡剤との位置関係を示す3次元グラフである。
図7図7は実施例において各消泡剤毎の泡高さと経過時間との関係を示すグラフである。
図8A図8Aは実施例の消泡効果試験による測定開始直後においてターゲットに対する各消泡剤の距離Raと泡高さとの相関を示すグラフである。
図8B図8Bは実施例の消泡効果試験による30秒経過後においてターゲットに対する各消泡剤の距離Raと泡高さとの相関を示すグラフである。
図8C図8Cは実施例の消泡効果試験による90秒経過後においてターゲットに対する各消泡剤の距離Raと泡高さとの相関を示すグラフである。
図8D図8Dは実施例の消泡効果試験による150秒経過後においてターゲットに対する各消泡剤の距離Raと泡高さとの相関を示すグラフである。
図8E図8Eは実施例の消泡効果試験による210秒経過後においてターゲットに対する各消泡剤の距離Raと泡高さとの相関を示すグラフである。
図8F図8Fは実施例の消泡効果試験による270秒経過後においてターゲットに対する各消泡剤の距離Raと泡高さとの相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の消泡剤の選定方法は、選定候補である消泡剤と、ターゲットである泡(泡沫)との親和性を評価して、複数の消泡剤の中から所望の消泡剤を選定する。そして本発明においては、消泡剤と、泡との親和性を評価するに際してハンセン溶解度パラメータ(HSP値)δd、δp、δhを用いる。
【0019】
HSP値における「δd」は分散力項であり、ほぼ全ての物質がもつファンデルワールス相互作用から生じる非極性相互作用のパラメータである。「δp」は双極子間力項であり、双極子間相互作用が基となるパラメータである。「δh」は水素結合力項であり、水素結合による相互作用に基づくパラメータである。
【0020】
そして本発明においては、ターゲットとしての泡のHSP値を求める。本実施形態において、ターゲットのHSP値を測定するに際して、ターゲットが発生する母液(泡沫液)のHSP値を求めるようにしている。
【0021】
本実施形態において、ターゲットのHSP値はハンセン溶解球(Hansen Solubility Sphere)法を用いて測定するものである。ハンセン溶解球法は、HSP値が既知である種々の溶媒と、HSP値の測定対象となる試料(ターゲット等)とを混合して相溶性を評価する。すなわち各種溶媒と試料とが溶解したか否かを判別する。
【0022】
続いて図1に示すように、相溶性の評価結果を基に、各種溶媒のHSP値を3次元空間の位置座標とみなして、3次元グラフ上にプロットする。
【0023】
続いて相溶性のある溶剤(図1の「●」)の座標を含み、かつ相溶性のない溶剤(図1の「■」)の座標を含まない最小の球(ハンセン溶解球)を作成する。
【0024】
そしてハンセン溶解球の中心の位置座標を測定対象試料のHSP値に設定する。なおこの溶解球の半径は当該測定対象試料を溶解させる溶媒の範囲に相当する。
【0025】
ここで、一般的に所定の物質のHSP値は単一であり、ハンセン溶解球は1種類となるが、ある種特定の物質は、2種類のHSP値を持ち、2種類のハンセン溶解球を持つことが知られている。例えば後述するように疎水性と親水性の2つの性質を保有する界面活性剤は、親水成分のハンセン溶解球と、疎水成分のハンセン溶解球との2種類の溶解球を持つことが報告されている(図3参照)。本発明においては、ターゲット等のHSP値として、後述するように親水成分のHSP値を用いるようにしている。このように親水成分のHSP値を採用することによって、より優れた破泡効果を期待することができる。
【0026】
またイオン液体のような極性成分および非極性成分を持つ物質においてもハンセン溶解球が2種類存在することが特定されている。つまり界面活性剤やイオン液体等の性質が異なる2つの成分を持つ物質は各成分に対応して溶解球が2種類存在することが知られている。
【0027】
本発明においては、選定候補である複数の消泡剤に対してもHSP値を求めるが、本実施形態においては、このHSP値も上記と同様にハンセン溶解球法を用いて測定するものである。なお、各種の消泡剤において、HSP値を求める際のハンセン溶解球法については、後の実施例において詳述する。
【0028】
本発明において、HSP値を用いて、ターゲットと、選定候補の各消泡剤との親和性を評価する。ここで2つの物質、例えばHSP値δd1、δp1、δh1の物質1と、HSP値δd2、δp2、δh2の物質2との2つの物質において、親和性を評価するに際して、HSP値を3次元空間の位置座標と見なして、物質1のHSP値と、物質2のHSP値との間の距離を算出する。そしてその距離が短ければ短い程、親和性が高いと評価する。
【0029】
本実施形態においては、以下の関係式を用いて、HSP値による物質1,2間の距離Raを定量的に算出する。
【0030】
Ra=[4(δd1−δd2)+(δp1−δp2)+(δh1−δh2)1/2
そして物質1,2間の距離Raが小さいほど親和性が良いと評価する。例えば図2に示すようにターゲットTとの距離がRa1とRa2との2つの消泡剤Af1,Af2がある場合、ターゲットTに対し、短い距離Ra2の消泡剤Af2が、長い距離Ra1の消泡剤Af1よりも親和性が高いと評価する。
【0031】
本発明においては、選定候補である全ての消泡剤と、ターゲットとの距離をそれぞれ測定し、最も距離が短い消泡剤を所望の適切な消泡剤として使用するものである。これにより本発明の消泡剤の選定方法によれば、ターゲットと最も親和性(相溶性)が高い消泡剤を選定できるため、後述の実施例からも明らかなように、ターゲットに対し、優れた破泡作用を持つ消泡剤を効率良く確実に選定することができる。
【実施例】
【0032】
【表1】
【0033】
(1)ターゲットのHSP値測定
ターゲットとして、界面活性剤であるポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製)の0.05wt%水溶液(以下「PLE」「ターゲット」または「界面活性剤」とも称する)を準備した。さらに表1に示す「Solvents」の欄に掲載した多数の有機溶媒を準備した。本実施例で用いられる各有機溶媒は、表1に記載されるようにHSP値としてのδd、δp、δhがそれぞれ既知のものである。
【0034】
本実施例においては、各有機溶媒10mlに、PLEを0.3gずつ添加して所定時間静置した後、各有機溶媒毎にPLEが溶解したか否かを観察した。溶解した溶媒については良溶媒として表1の「Scores」の欄に「1」と記入し、溶解しなかった不溶の溶媒について貧溶媒として表1の「Scores」の欄に「0」と記入した。
【0035】
次に図3に示すように、溶解評価を基に、各種有機溶媒のHSP値を3次元グラフ上にプロットして、良溶媒の座標を含み、かつ貧溶媒の座標を含まないハンセン溶解球を作成した。続いてこのハンセン溶解球の中心位置座標をPLEのHSP値として設定した。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
また表2および図3に示すように、PLEは、図3の右上(表2の「high δh sphere」の項目)に示す親水成分のハンセン溶解球と、図3の左下(表2の「low δh sphere」の項目)に示す疎水成分のハンセン溶解球との2種類のハンセン溶解球が存在している。界面活性剤が泡沫の場合、親水成分が液側(内側)に向き、疎水成分が大気側(外側)に向いて配置されている。そのため、本実施例においては、δhが高い図3の右上のhigh δhsphereの親水成分のハンセン溶解球を基に得られたHSP値を、PLEのHSP値として用いるものである(以下のAf:d「KM−73E」およびAf:E「シリカートン」のHSP値においても同じである)。
【0038】
(2)各消泡剤のHSP値測定
消泡剤(Antifoaming agent)として、Af:A〜Af:Eと表記した5種類の消泡剤を準備した。Af:Aは「KM−71(信越化学工業株式会社製)」であり、Af:Bは「KM−73(同社製)」であり、Af:Cは「KM−73A(同社製)」であり、Af:Dは「KM−73E(同社製)」であり、Af:Eは「シリカートン−SN−400A(多木化学株式会社製)」である。さらに表1に示すように有機溶媒として上記と同様のものを準備した。
【0039】
各消泡剤2mlと、各有機溶媒2mlとをそれぞれ混合して5分間超音波処理を施した後、所定時間静置し、各混合剤毎の溶解性(相溶性)について観察した。そして消泡剤および有機溶剤が相溶しているものには良溶媒として表1の「Scores」の欄に「1」と記入し、半分溶解(半分相溶)しているものには貧溶媒として「Scores」の欄に「2」と記入し、二層に分離しているものには貧溶媒として「Scores」の欄に「0」と記入した。
【0040】
次に図4A図4Eに示すように、上記と同様に溶解評価を基に、各消泡剤のハンセン溶解球を作成して、各消泡剤のHSP値を算出した。その結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
(3)PLEと各消泡剤との間の距離の測定
続いて図5および図6に示すように、PLEの位置座標と、各消泡剤(Af:A〜Af:E)の位置座標とを同じ3次元空間上にプロットして、PLEと各消泡剤との位置関係を示す3次元グラフを作成した。図6図5のグラフをδdの増減方向に沿う方向(図6の矢符号に示す方向)から見た状態のグラフである。
【0043】
さらに距離Raを算出する上記関係式を用いて、PLEと各消泡剤との距離を算出した。その結果を表3に合わせて示す。
【0044】
なお「KM−73E(Af:D)」および「シリカートン(Af:E)」は、2種類のハンセン溶解球が存在するが、本実施例では既述したように親水成分のハンセン溶解球から得られたHSP値を用いて、PLEとの距離Raを算出している。
【0045】
表3に示すように、選定候補の消泡剤のうち、PLEとの距離Raが最短の消泡剤は「Af:D(KM−73E)」であった。よって本実施例においては、PLEをターゲットとする消泡剤として、「Af:D(KM−73E)」を選定することになる。
【0046】
(4)消泡効果試験
各消泡剤(Af:A〜Af:E)を、PLEに10ppmずつそれぞれ添加した試験液と、消泡剤を添加しない試験液とを、30分間撹拌して500mLのメスシリンダーにそれぞれ150mLずつ投入した。
【0047】
各メスシリンダーに投入された試験液に対し、30秒間、0.02NL/minの流量で窒素ガスにより曝気処理を行った。
【0048】
曝気処理直後(0秒後)に、各試験液から発生した泡の高さ(cm)を測定し、続いて所定の時間経過後(30秒、90秒、150秒、210秒、270秒経過後)に各試験液の泡高さを測定した。その結果を図7のグラフに示す。
【0049】
またターゲットに対する各消泡剤の距離Raと、泡高さとの相関を各時間毎に示したグラフを図8A図8Fに示す。なお図8A図8Fに記載された「R」は相関係数である。
【0050】
図7および図8A図8Fのグラフから明らかなように、複数の消泡剤のうち、ターゲット(PLE)との距離Raが短い消泡剤ほど、消泡効果に優れた消泡剤と判断できる。換言すると、HSP値による距離Raを基準にすることによって、ターゲットに対する消泡剤の消泡効果を、定量的に適確に把握することができるため、選定候補である多数の消泡剤の中から、所望の効果を有する消泡剤を客観的に確実に選定することができる。その結果、本発明の消泡剤の選定方法によれば、従来のように試行錯誤や経験や勘を頼りに適当な消泡剤を選出する場合と比較して、多大な労力や時間を費やすことなく、適切な消泡剤を効率良く確実に選定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明の消泡剤の選定方法は、液体を処理する各種業界等において処理液表面から不用意に発生する泡を消滅させるための消泡剤を選定する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
Af1,Af2 消泡剤
Af:A〜Af:E 消泡剤
T ターゲット
PLE ターゲットの母液
Ra1、Ra2 ターゲットおよび消泡剤間の距離
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F