特開2021-90937(P2021-90937A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-90937(P2021-90937A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/08 20060101AFI20210521BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20210521BHJP
【FI】
   C02F3/08 B
   C02F5/00 620B
   C02F5/00 610G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-224833(P2019-224833)
(22)【出願日】2019年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平居 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】大澤 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 悠
(72)【発明者】
【氏名】吉原 資二
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA13
4D003AB02
4D003DA09
4D003EA20
4D003FA05
(57)【要約】
【課題】カルシウムと有機物とを含む被処理水を生物処理する際に、担体にカルシウムがスケーリングすることを抑制し、安定して生物処理を行う水処理方法を提供する。
【解決手段】カルシウムと有機物とを含む被処理水を、有機物を分解する細菌を担持した担体を含む反応槽に通水して好気条件下で処理を行う水処理方法であって、前記反応槽内の浮遊物質濃度(mg/L)が、前記被処理水のカルシウム濃度(mg/L)の3倍以上になるように制御する、水処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムと有機物とを含む被処理水を、有機物を分解する細菌を担持した担体を含む反応槽に通水して好気条件下で処理を行う水処理方法であって、前記反応槽内の浮遊物質濃度(mg/L)が、前記被処理水のカルシウム濃度(mg/L)の3倍以上になるように制御する、水処理方法。
【請求項2】
前記反応槽内の浮遊物質濃度を制御するために、浮遊物質を前記反応槽へ供給する、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記反応槽内の浮遊物質濃度を制御するために、前記反応槽の下流に備えられる沈殿槽から浮遊物質を前記反応槽へ返送する、請求項2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記反応槽内の浮遊物質濃度を制御するために、別途用意した浮遊物質を前記反応槽へ供給する、請求項2に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記被処理水のカルシウム濃度が50〜1000mg/Lである請求項1〜4のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記担体がポリビニルアルコール系ゲル状担体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムと有機物とを含む被処理水を生物処理する際に、担体にカルシウムがスケーリングすることを抑制し、安定して生物処理を行う水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理を必要とする被処理水にはカルシウムが含まれる場合がある。例えば土壌からカルシウムが浸出する地下水やカルシウム系の薬品を使用した工場排水などを処理する場合である。
【0003】
カルシウムは炭酸イオンと反応して炭酸カルシウムとして析出する。カルシウムが含まれる被処理水では、このようなカルシウムの析出はスケーリングと呼ばれ、水処理において問題となることがある。特に生物処理を行うに当たり、反応槽内で担体を使用する場合、カルシウムがこの担体にスケーリングし、担体表面の閉塞による生物処理能力の低下、及び担体の比重増大による流動性の悪化が起こる場合がある。
【0004】
カルシウムのスケーリングを抑制する方法として、反応槽の前段でカルシウムを除去する方法がある。
【0005】
特許文献1には、被処理水に炭酸ナトリウムを添加し、pHをアルカリ条件にして炭酸カルシウムを事前に析出させることによってカルシウムを除去する方法が記載されている。しかしながら、この方法ではカルシウムを除去するための槽が反応槽の前段に必要となり、また薬剤添加も必要なため、イニシャルコスト、ランニングコストともに高くなるという問題がある。
【0006】
特許文献2には、生物処理を行う反応槽のpHを低く制御することでカルシウムのスケーリングを抑制する方法が記載されている。しかしながら、反応槽のpHは生物処理性と深く関連しており、pHを下げることで生物処理性が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−236122号公報
【特許文献2】特開2007−296499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、カルシウムと有機物とを含む被処理水を、担体を用いて生物処理するに当たり、担体へのカルシウムのスケーリングを抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、反応槽内の浮遊物質(以下SSと称することがある)濃度を制御することで、カルシウムを担体ではなくSSにスケーリングさせ、担体に付着するカルシウムの量を減らすことができるのを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、カルシウムと有機物とを含む被処理水を、有機物を分解する細菌を担持した担体を含む反応槽に通水して好気条件下で処理を行う水処理方法であって、前記反応槽内の浮遊物質濃度(mg/L)が、前記被処理水のカルシウム濃度(mg/L)の3倍以上になるように制御する、水処理方法である。
【0011】
本発明において、前記反応槽内の浮遊物質濃度を制御するために、浮遊物質を前記反応槽へ供給することが好ましい。このとき、前記反応槽内の浮遊物質濃度を制御するために、前記反応槽の下流に備えられる沈殿槽から浮遊物質を前記反応槽へ返送することが好適な態様である。また、前記反応槽内の浮遊物質濃度を制御するために、別途用意した浮遊物質を前記反応槽へ供給することも好適な態様である。
【0012】
本発明において、前記被処理水のカルシウム濃度が50〜1000mg/Lであることが好ましい。また、前記担体がポリビニルアルコール系ゲル状担体であることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カルシウムと有機物とを含む被処理水に対して生物処理を行うに際し、被処理水中にカルシウムが含まれていても、担体にカルシウムがスケーリングすることが抑制され、安定した水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の処理方法で用いられる処理装置の一例を示したフロー図である。
図2】本発明の処理方法で用いられる処理装置の他の例を示したフロー図である。
図3】本発明の処理方法で用いられる処理装置の他の例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、カルシウムと有機物とを含む被処理水に対して生物処理を行う水処理方法に関する。以下、本発明の処理方法で用いられる生物処理装置の一例について説明する。図1は本発明で用いられる生物処理装置の一例を示したものである。以下、この処理装置を用いて処理を行った場合を例にして、本発明の処理方法について説明する。
【0016】
本発明では、被処理水が好気槽へ供給される。例えば、図1に示した処理装置では、被処理水は被処理水供給管2を通って好気槽1(反応槽)へ導入される。なお、この被処理水にはカルシウムと有機物とが含まれる。
【0017】
本発明では、前記反応槽内において、担体に担持された細菌により、被処理水中の有機物などの処理対象となる物質を処理して処理水を排出する。
【0018】
前記反応槽に供給する被処理水中のカルシウムの濃度は通常少ない方が好ましいが、本発明はカルシウムのスケーリングを抑制する効果を有するものであるため、本発明の効果は、50mg/L以上の時に顕著であり、100mg/L以上でより顕著であり、200mg/L以上でさらに顕著である。一方、カルシウムの濃度が高すぎるとスケーリングの進行が顕著に進むため、1000mg/L以下が好ましい。被処理水に含まれるカルシウムは、カルシウムイオンとして溶解しているものとする。
【0019】
反応槽内のSS濃度は、カルシウムのスケーリングを抑制するために、被処理水中のカルシウム濃度の3倍以上になるように制御することが好ましい。すなわち、濃度比(SS/Ca)が3以上であることが好ましい。濃度比(SS/Ca)は、5倍以上になるように制御することがより好ましく、7倍以上になるように制御することがさらに好ましい。また、反応槽内のSS濃度が高くなりすぎると担体に担持される微生物の数が少なくなり、生物処理能力が低下するおそれがあるため、反応槽内のSS濃度は5000mg/L以下であることが好ましく、3000mg/L以下であることがより好ましく、2000mg/L以下であることがさらに好ましい。
【0020】
ここで浮遊物質(SS:Suspended Solid)とは、液中に浮遊または懸濁している直径2mm以下の粒子状物質のことである。例えば、河川や地下水の場合には、土の粒子など、下水や工場排水の場合には有機物や金属などがSSとして含まれる。SSの含有量は、例えば1μmのろ過材に被処理水を通した際にろ過材上に残留する物質の乾燥重量から求められる。
【0021】
前記反応槽に流入させる被処理水のBOD(生物化学的酸素要求量)は4000mg/L以下が好ましく、2000mg/L以下がより好ましく、1000mg/L以下がさらに好ましい。本発明は水の生物処理方法に関するものなので、通常被処理水のBODは0mg/Lより大きい。また、BOD容積負荷は5kg/m/d以下であることが好ましく、4kg/m/d以下であることがより好ましく、3kg/m/d以下であることがさらに好ましい。本発明は水の生物処理方法に関するものなので、通常被処理水のBOD容積負荷は0kg/m/dより大きい。
【0022】
前記反応槽内のpHは5〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。pHがこの範囲から外れると細菌が生育し難くなるとともに、有機物分解速度が低下するおそれがある。
【0023】
前記反応槽内の温度は10〜40℃であることが好ましく、20〜35℃であることがより好ましい。温度がこの範囲から外れると細菌が生育し難くなるとともに、有機物分解速度が低下するおそれがある。
【0024】
前記反応槽内のDO(Dissolved Oxygen:溶存酸素)は0.5mg/L以上であることが好ましい。DOが0.5mg/L未満の場合、有機物分解速度が低下するおそれがある。また、DOの上限については特に制限はないが、水処理における操作上、9mg/L以下が好適である。
【0025】
本発明において、有機物の分解を効率良く進行させる観点から、前記好気槽1内の処理水を曝気することが好ましい。曝気の方法は特に限定されないが、図1に示すように、好気槽1が、空気管7が接続された散気装置6を備えることが好ましい。散気装置6からの空気によって好気槽1内の処理水を曝気することができるとともに、処理水及び担体4を十分に流動させることができる。担体4の流動性をさらに向上させる場合には、撹拌機等の撹拌装置を用いて好気槽1内を撹拌してもよい。
【0026】
前記好気槽1には、担体4の流出を防ぐために、図1に示すように、好気槽1の排出口にスクリーン5などの担体捕捉手段を設けることが好ましい。
【0027】
反応槽内のSS濃度を制御する手法は特に限定されないが、浮遊物質を前記反応槽へ供給する方法が好ましい。その一つの態様では、前記反応槽内の浮遊物質濃度を制御するために、別途用意した浮遊物質を前記反応槽へ供給する。例えば、図1の処理装置では、活性汚泥貯留槽9に貯留されたSSとしての活性汚泥が、活性汚泥添加配管8を経由して、好気槽1に供給されて、好気槽1内の浮遊物質濃度が、被処理水のカルシウム濃度の3倍以上になるように制御される。
【0028】
また例えば、図2の処理装置では、好気槽1の下流に処理水管3を介して設けられた沈殿槽10の底部に沈殿した活性汚泥が、活性汚泥添加配管8を経由して好気槽1に返送されて、好気槽1内の浮遊物質濃度が、被処理水のカルシウム濃度の3倍以上になるように制御される。これによって、別途SSを調達する必要がなく、装置内で用いた活性汚泥を再利用することができる。
【0029】
また図3の処理装置では、好気槽1の下流に処理水管3を介して活性汚泥槽11を設け、さらにその下流に処理水管3を介して沈殿槽10を設けている。活性汚泥槽11では、活性汚泥を含む処理液を、散気装置6からの空気によって曝気する。
【0030】
反応槽に添加する担体の槽容積に対する体積割合(充填率)は、被処理水の性状に応じて適宜決めることができる。充填率は体積換算で5〜60%であることが好ましく、5〜40%であることがより好ましく、5〜30%であることがさらに好ましく、8〜20%であることが特に好ましい。担体の充填率が高いほど有機物の分解反応を効率よく進行させることができるが、充填率が高すぎると担体の流動性が低下し、かえって反応効率が低下するおそれがある。
【0031】
本発明に用いられる担体は、表面から内部に連通する孔(連通孔)を有することが好ましい。ここで、孔が連通しているとは、孔が各々独立に存在しているのではなく、孔同士が相互に連通していることをいう。
【0032】
上記担体の連通孔の孔径は、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。孔径が30μm以下の連通孔を有する担体を用いることで担体に菌を効率良く担持することができる。また、孔径は0.1μm以上であることが好ましい。孔径が0.1μm未満の場合、細菌が担体内部に侵入できないことがある。なお、ここで、孔径が30μm以下あるいは孔径が0.1μm以上とは、担体が有する微細孔の内50%以上が30μm以下あるいは0.1μm以上の孔径であることを意味する。このときの孔径とは、電子顕微鏡で担体の断面を観察した際に見られる孔の直径であり、孔が真円でない場合は、孔と同面積の真円の直径を孔径とする。
【0033】
担体表面の孔径は観察できる範囲において0.5μm以上であることが好ましい。一方、担体表面の孔径が30μmを超える場合、細菌以外の大きな生物が進入しやすく、有機物の分解速度が低下するおそれがある。担体表面の孔径は20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。担体表面とは、担体を切断することなくその表面を電子顕微鏡で観察した際に見られる範囲のことである。孔径の定義は、断面観察時と同様である。
【0034】
本発明で用いられる担体の含水率は、質量換算で50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。含水率が一定値以上であることにより、菌の生育環境を良好なものとすることができ、菌が増殖しやすくなるとともに担持されやすくなる。一方、含水率は96%以下であることが好ましい。含水率が一定値以下であることにより、担体が容易に破損しないので、担体の追加投入の必要がなく長期的な運転が可能となる。なお、含水率は含水した状態の担体を完全に乾燥させた際の乾燥前後の質量比から計算できる。
【0035】
本発明で用いられる担体の種類は特に限定されないが、細菌との親和性が高く、細菌棲息性に優れている点から、担体が高分子ゲル担体であることが好ましく、ポリビニルアルコール系ゲル状担体(PVAゲル担体)であることがより好ましい。PVAゲル担体は、含水ゲル担体であって、多くの細菌を担持することができるため、短い水理学的滞留時間で安定的な処理が可能となる。中でも、連通孔を有するPVAゲル担体が好適に採用される。
【0036】
上記PVAゲル担体は、含まれる水酸基の少なくとも一部がアセタール化されたPVAゲル担体であってもよい。
【0037】
担体の球相当径は1〜10mmであることが好ましい。球相当径が小さすぎる場合、担体の流出を防ぐためのスクリーンの網目を小さくしなければならず、目詰まりを起こすおそれがある。球相当径は2mm以上であることがより好ましい。一方、球相当径が10mmを超える場合、担体の流動性が低下するおそれがある。担体の球相当径は6mm以下であることがより好ましい。ここで球相当径とは、担体の体積と等しい体積を有する球の直径である。担体の形状は特に限定されるものではなく、球状、立方体、直方体、円柱状など任意の形状をとることができる。これらの中でも、細菌との接触効率を考えると球状が好ましい。
【0038】
担体の比重は水よりわずかに大きく、好気槽内で容易に揺動させることができる比重であることが好ましい。担体の比重は、1.001以上であることが好ましく、1.005以上であることがより好ましい。一方、比重は1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.05以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
図1に示す処理装置を用いて、カルシウムを含む被処理水を通水し、好気条件下で処理を行った。その際、生物処理に伴って二酸化炭素を発生する有機源を被処理水に添加し、生物処理試験を実施した。
【0041】
(有機物を含む被処理水)
生物処理される被処理水として、以下のBODの水を用いた。
BOD5:1000mg/L
【0042】
(反応槽内SS濃度)
反応槽内のSS濃度は1000mg/Lで管理した。
【0043】
(担体)
好気槽1(容積1L)に担体4を0.1L(充填率10%)投入した。投入した担体4は、ポリビニルアルコールゲル担体であった。この担体4は球状であり、球相当径は4mmであり、比重は1.015であった。電子顕微鏡を用いてこの担体の表面および内部を観察したところ、相互に連通した孔が確認された。また、得られた電子顕微鏡による観察像を用いて担体の表面および内部の孔径を測定したところ、孔径は、いずれもそのほとんどが0.5〜10μmの範囲に含まれており、その範囲を外れたものはわずかであり、50%以上が該範囲内にあることは明らかであった。また、担体の含水率は、質量基準で94%であった。
【0044】
(処理装置)
好気槽1の底部には散気装置6が取り付けられており、空気管7を通して送られた空気により槽内の処理水が曝気される。好気槽1の出口には担体4の流出を防ぐためのスクリーン5が取り付けられている。また、好気槽1内のSS濃度を管理するため、好気槽1に対して活性汚泥貯留槽9から活性汚泥添加配管8を通って活性汚泥がSSとして添加される。
【0045】
被処理水供給管2を通って好気槽1に供給された被処理水は、好気槽1内の担体4に担持されている細菌による有機物の分解によって、そのBODが低下する。有機物の分解が行われた処理水は処理水管3を通って好気槽1外に排出される。
【0046】
(立ち上げ方法、管理方法)
好気槽1の管理条件は、pHは6.0〜8.0であり、DOは2〜8mg/Lであり、好気槽1内の温度は25℃であった。予め菌を担持させる操作を行っていない担体(菌が担持されていない担体)を投入した好気槽1に対して、活性汚泥を添加し、最終的にBOD容積負荷が2.5kg/m/dとなるように被処理水の流入量を段階的に上げながら供給した。
【0047】
(評価方法)
スケーリングの様子を評価するにあたり、担体に付着した無機分質量の測定を行った。担体をるつぼに入れ、乾燥機中で1日乾燥させた後、電気炉内で灰化を行い、得られた灰分の質量を含水状態の担体のかさ体積で割って、担体1リットルに付着した無機分質量を計算した。
【0048】
以上説明した処理装置を用いて、上述した有機物を含む被処理水に対して生物処理を行った。BOD容積負荷2.5kg/m/dに対して、95%以上の除去率で処理が安定した後に、被処理水のカルシウム濃度が200mg/Lとなるように塩化カルシウムの添加を始めた。
【0049】
(結果)
塩化カルシウムを添加し始めてから30日後に、担体に付着した無機分の量を測定すると、担体1L当たり34mgの無機分が付着していた。
【0050】
[実施例2]
槽内SS濃度を2000mg/Lにした以外は実施例1と同様にして生物処理を行った。その結果、塩化カルシウムを添加し始めてから30日後に担体1L当たり20mgの無機分が付着していた。
【0051】
[実施例3]
添加するカルシウム濃度を300mg/Lにした以外は実施例1と同様にして生物処理を行った。その結果、塩化カルシウムを添加し始めてから30日後に担体1L当たり62mgの無機分が付着していた。
【0052】
[比較例1]
槽内SS濃度を100mg/Lにした以外は実施例1と同様にして生物処理を行った。その結果、カルシウムを添加し始めてから30日後に、担体に付着した無機分の量は担体1L当たり3500mgとなった。
【0053】
[比較例2]
被処理水のカルシウム濃度を300mg/L、槽内SS濃度を100mg/Lにした以外は実施例1と同様にして生物処理を行った。その結果、カルシウムを添加し始めてから30日後に、担体に付着した無機分の量は担体1L当たり5000mgとなった。
【0054】
実施例および比較例の結果を表に示す。実施例1、2、3が示すように、反応槽内のSS濃度を被処理水に含まれるカルシウム濃度に対して3倍以上にすることで、担体へのカルシウムのスケーリングを抑制することができた。一方で、比較例1、2が示すように、反応槽内のSS濃度が被処理水に含まれるカルシウム濃度に対して3倍未満の場合には、担体へのカルシウムのスケーリングが顕著に進んだ。
【0055】
【表1】
【符号の説明】
【0056】
1 好気槽
2 被処理水供給管
3 処理水管
4 担体
5 スクリーン
6 散気装置
7 空気管
8 活性汚泥添加配管
9 活性汚泥貯留槽
10 沈殿槽
11 活性汚泥槽

図1
図2
図3