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特開2021-91145多層構造体およびその製造方法、それを用いた包装材、真空断熱体並びに電子デバイスの保護シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-91145(P2021-91145A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】多層構造体およびその製造方法、それを用いた包装材、真空断熱体並びに電子デバイスの保護シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20210521BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20210521BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20210521BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210521BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20210521BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20210521BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   B05D1/36 Z
   B05D3/02 Z
   B05D7/24 302M
   B05D7/24 303B
   B65D81/24 F
   B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2019-222796(P2019-222796)
(22)【出願日】2019年12月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】久詰 修平
(72)【発明者】
【氏名】森原 靖
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA12
3E067AB01
3E067AB41
3E067BA12A
3E067BA14A
3E067BB11A
3E067BB14A
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3E067EA06
3E067EA35
3E067EA36
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3E067FC01
3E067GA11
3E067GD07
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD03
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
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3E086BB05
3E086CA01
3E086CA03
4D075AC53
4D075AE03
4D075BB05Z
4D075BB08Z
4D075BB16X
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4D075CA47
4D075CA48
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4D075EC51
4F100AA19B
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4F100AK01A
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4F100AK69C
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4F100CC01C
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4F100EH46B
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4F100EJ422
4F100GB15
4F100GB16
4F100GB17
4F100GB18
4F100GB41
4F100JB16A
4F100JD03
4F100JD04
(57)【要約】
【課題】屈曲処理前のバリア性に優れ、かつ、屈曲処理後のバリア性にも優れる、多層構造体及びその製造方法、それを用いた包装材、真空断熱体並びに電子デバイスの保護シートを提供することを目的とする。
【解決手段】基材(X)、層(Y)及び層(Z)を備え、少なくとも一組の層(Y)及び層(Z)が隣接して積層されており、層(Y)がアルミニウム原子を含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との反応生成物(D)を含み、層(Z)がビニルアルコール系樹脂(C)を含み、ビニルアルコール系樹脂(C)が層(Z)を占める割合が90質量%以上であり、層(Z)の平均厚みが60nm以上である、多層構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(X)、層(Y)及び層(Z)を備え、少なくとも一組の層(Y)及び層(Z)が隣接して積層されており、層(Y)がアルミニウム原子を含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との反応生成物(D)を含み、層(Z)がビニルアルコール系樹脂(C)を含み、ビニルアルコール系樹脂(C)が層(Z)を占める割合が90質量%以上であり、層(Z)の平均厚みが60nm以上である、多層構造体。
【請求項2】
層(Z)が、実質的にビニルアルコール系樹脂(C)のみからなる、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
ビニルアルコール系樹脂(C)のケン化度が75〜99.9モル%である、請求項1または2に記載の多層構造体。
【請求項4】
ビニルアルコール系樹脂(C)がポリビニルアルコールである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項5】
基材(X)が、熱可塑性樹脂フィルムおよび紙からなる群より選ばれる少なくとも1種の層を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項6】
基材(X)、層(Y)及び層(Z)がこの順に積層されている積層構造を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項7】
基材(X)上に、アルミニウム原子を含む金属酸化物(A)と、無機リン化合物(BI)と、溶媒とを含むコーティング液(S)を塗工し、溶媒を除去することで層(Y)の前駆体層を形成する工程(I)と、
前記層(Y)前駆体層上にビニルアルコール系樹脂(C)と、溶媒とを含むコーティング液(T)を塗工し、溶媒を除去することで層(Z)を形成する工程(II)と、
前記層(Y)の前駆体層を熱処理して層(Y)を形成する工程(III)とを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層構造体を含む、包装材。
【請求項9】
縦製袋充填シール袋、真空包装袋、パウチ、ラミネートチューブ容器、輸液バッグ、紙容器、ストリップテープ、容器用蓋材、またはインモールドラベル容器である、請求項8に記載の包装材。
【請求項10】
請求項9に記載の包装材が真空包装袋であり、前記真空包装袋が内容物を含み、前記内容物が芯材であり、前記真空包装袋の内部が減圧されている真空断熱体。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層構造体を含む、電子デバイスの保護シート。
【請求項12】
光電変換装置、情報表示装置、または照明装置の表面を保護する保護シートである、請求項11に記載の電子デバイスの保護シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造体およびその製造方法、それを用いた包装材、真空断熱体並びに電子デバイスの保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムや酸化アルミニウムを構成成分とするガスバリア層をプラスチックフィルム上に形成した多層構造体は従来からよく知られており、酸素によって変質しやすい物品(例えば、食品)を保護するための包装材、断熱性能を維持するためにガスバリア性が必要となる真空断熱体、バリア性(水蒸気バリア性を含む)が必要な電子デバイスの保護シート等、様々な用途として用いられている。それらのガスバリア層は、物理気相成長法(PVD)や化学気相成長法(CVD)といったドライプロセスによってプラスチックフィルム上に形成する手段が主流であったが、近年では、プラスチックフィルム上へのコーティングを経て形成するガスバリア層も検討されている。
【0003】
プラスチックフィルム上にコーティングしたガスバリア層を備えるフィルムとしては、例えば、特許文献1に、酸化アルミニウム粒子とリン化合物との反応生成物によって構成される透明ガスバリア層を有する複合構造体が記載されており、該ガスバリア層を形成する方法として、プラスチックフィルム上に酸化アルミニウムとリン化合物を含むコーティング液を塗工し、次いで乾燥および熱処理を行う方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、金属酸化物とリン化合物との反応生成物によって構成されるガスバリア層を有し、かかるガスバリア層に隣接する層がリン原子を有する化合物並びに水酸基および/またはカルボキシル基を有する重合体を含む層を有する多層構造体が、物理的ストレスを受けた後やレトルト処理後においても高い性能を維持できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/122036号
【特許文献2】国際公開第2016/002222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の複合構造体または多層構造体では、物理的ストレス、特に屈曲を受けた後のバリア性の維持が十分ではない場合があった。本発明な上記事情に基づいてなされたものであり、その目的は、屈曲処理前のバリア性に優れ、かつ、屈曲処理後のバリア性にも優れる、多層構造体及びその製造方法、それを用いた包装材、真空断熱体並びに電子デバイスの保護シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は
[1]基材(X)、層(Y)及び層(Z)を備え、少なくとも一組の層(Y)及び層(Z)が隣接して積層されており、層(Y)がアルミニウム原子を含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との反応生成物(D)を含み、層(Z)がビニルアルコール系樹脂(C)を含み、ビニルアルコール系樹脂(C)が層(Z)を占める割合が90質量%以上であり、層(Z)の平均厚みが60nm以上である、多層構造体;
[2]層(Z)が、実質的にビニルアルコール系樹脂(C)のみからなる、[1]の多層構造体;
[3]ビニルアルコール系樹脂(C)のケン化度が75〜99.9モル%である、[1]または[2]の多層構造体;
[4]ビニルアルコール系樹脂(C)がポリビニルアルコールである、[1]〜[3]のいずれかの多層構造体;
[5]基材(X)が、熱可塑性樹脂フィルムおよび紙からなる群より選ばれる少なくとも1種の層を含む、[1]〜[4]のいずれかの多層構造体;
[6]基材(X)、層(Y)及び層(Z)がこの順に積層されている積層構造を備える、[1]〜[5]のいずれかの多層構造体;
[7]基材(X)上に、アルミニウム原子を含む金属酸化物(A)と、無機リン化合物(BI)と、溶媒とを含むコーティング液(S)を塗工し、溶媒を除去することで層(Y)の前駆体層を形成する工程(I)と、前記層(Y)前駆体層上にビニルアルコール系樹脂(C)と、溶媒とを含むコーティング液(T)を塗工し、溶媒を除去することで層(Z)を形成する工程(II)と、前記層(Y)の前駆体層を熱処理して層(Y)を形成する工程(III)とを含む、[1]〜[6]のいずれかの多層構造体の製造方法;
[8][1]〜[7]のいずれかの多層構造体を含む、包装材;
[9]縦製袋充填シール袋、真空包装袋、パウチ、ラミネートチューブ容器、輸液バッグ、紙容器、ストリップテープ、容器用蓋材、またはインモールドラベル容器である、[8]の包装材;
[10][9]の包装材が真空包装袋であり、前記真空包装袋が内容物を含み、前記内容物が芯材であり、前記真空包装袋の内部が減圧されている真空断熱体;
[11][1]〜[6]のいずれかの多層構造体を含む、電子デバイスの保護シート;
[12]光電変換装置、情報表示装置、または照明装置の表面を保護する保護シートである、[11]の電子デバイスの保護シート;
を提供することで達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屈曲処理前のバリア性に優れ、かつ、屈曲処理後のバリア性にも優れる、多層構造体及びその製造方法、それを用いた包装材、真空断熱体並びに電子デバイスの保護シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「バリア性」とは主に酸素バリア性及び水蒸気バリア性(透湿度)の両方を意味し、「ガスバリア性」とは主に酸素バリア性を意味する。また、屈曲処理後もバリア性に優れる性質を「耐屈曲性」と表現する場合がある。
【0010】
本発明の多層構造体は、基材(X)、層(Y)及び層(Z)を備え、少なくとも一組の層(Y)及び層(Z)が隣接して積層されており、層(Y)がアルミニウム原子を含む金属酸化物(A)(以下「金属酸化物(A)」と略記する場合がある)と無機リン化合物(BI)との反応生成物(D)を含み、層(Z)がビニルアルコール系樹脂(C)(以下「樹脂(C)」と略記する場合がある)を含み、樹脂(C)が層(Z)を占める割合が90質量%以上であり、層(Z)の平均厚みが60nm以上である。本発明の多層構造体は、特に樹脂(C)が層(Z)を占める割合が90質量%以上であり、層(Z)の平均厚みが60nm以上であることで耐屈曲性が優れる傾向となる。
【0011】
[基材(X)]
基材(X)の材質は、特に制限されず、様々な材質からなる基材を使用できる。基材(X)の材質としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂;布帛、紙類等の繊維集合体;木材;ガラス;金属;金属酸化物等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂および繊維集合体を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂を含むことがより好ましい。基材(X)の形態は、特に制限されず、フィルムまたはシート等の層状であってもよい。基材(X)としては、熱可塑性樹脂フィルム、紙層および無機蒸着層(X’)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましく、熱可塑性樹脂フィルムを含むものがより好ましく、熱可塑性樹脂フィルムであることがさらに好ましい。
【0012】
基材(X)に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはこれらの共重合体等のポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12等のポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有ポリマー;ポリスチレン;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル;ポリ酢酸ビニル;ポリカーボネート;ポリアリレート;再生セルロース;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;アイオノマー樹脂等が挙げられる。基材(X)に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6、およびナイロン−66からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0013】
前記熱可塑性樹脂フィルムを基材(X)として用いる場合、基材(X)は延伸フィルムであってもよいし無延伸フィルムであってもよい。得られる多層構造体の加工適性(印刷やラミネート等)が優れることから、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、およびチューブラ延伸法のいずれかの方法で製造された二軸延伸フィルムであってもよい。
【0014】
基材(X)に用いられる紙としては、例えば、クラフト紙、上質紙、模造紙、グラシン紙、パーチメント紙、合成紙、白板紙、マニラボール、ミルクカートン原紙、カップ原紙、アイボリー紙等が挙げられる。基材(X)に紙を用いることで、紙容器用の多層構造体が得られる。
【0015】
基材(X)が層状である場合、その厚さは、得られる多層構造体の機械的強度および加工性が良好になる観点から1〜1000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、9〜200μmがさらに好ましい。
【0016】
無機蒸着層(X’)は、通常、酸素や水蒸気に対するバリア性を有する層であり、透明性を有することが好ましい。無機蒸着層(X’)は無機物を蒸着することで形成できる。無機物としては、金属(例えば、アルミニウム)、金属酸化物(例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム)、金属窒化物(例えば、窒化ケイ素)、金属窒化酸化物(例えば、酸窒化ケイ素)、または金属炭化窒化物(例えば、炭窒化ケイ素)等が挙げられる。中でも、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、または窒化ケイ素で形成される無機蒸着層(X’)が、透明性に優れる観点から好ましい。
【0017】
無機蒸着層(X’)の形成方法は、特に限定されず、真空蒸着法(例えば、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー法等)、スパッタリング法やイオンプレーティング法等の物理気相成長法;熱化学気相成長法(例えば、触媒化学気相成長法)、光化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法(例えば、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、表面波プラズマ、電子サイクロトロン共鳴、デュアルマグネトロン、原子層堆積法等)、有機金属気相成長法等の化学気相成長法が挙げられる。
【0018】
無機蒸着層(X’)の厚さは、無機蒸着層を構成する成分の種類によって異なるが、0.002〜0.5μmが好ましく、0.005〜0.2μmがより好ましく、0.01〜0.1μmがさらに好ましい。この範囲で、多層構造体のバリア性や機械的物性が良好になる厚さを選択すればよい。無機蒸着層(X’)の厚さが0.002μm以上であると、酸素や水蒸気に対する無機蒸着層(X’)のバリア性が良好になる傾向となる。また、無機蒸着層(X’)の厚さが0.5μm以下であると、無機蒸着層(X’)の屈曲後のバリア性が維持される傾向となる。
【0019】
[層(Y)]
層(Y)は、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との反応生成物(D)を含む。本発明の多層構造体において、層(Y)はバリア層として機能するため、本発明の多層構造体が層(Y)を備えることで、屈曲処理前のバリア性が良好となる傾向となる。
【0020】
[アルミニウム原子を含む金属酸化物(A)]
金属酸化物(A)を構成する金属原子(それらを総称して「金属原子(M)」という場合がある)は、周期表の2〜14族に属する金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であるが、少なくともアルミニウム原子を含む。金属原子(M)は、アルミニウム原子単独であることが好ましいが、アルミニウム原子とそれ以外の金属原子とを含んでもよい。なお、金属酸化物(A)として、2種以上の金属酸化物(A)を混合して用いてもよい。アルミニウム原子以外の金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウムなどの周期表第2族の金属;亜鉛などの周期表第12族の金属;周期表第13属の金属;ケイ素などの周期表第14族の金属;チタン、ジルコニウムなどの遷移金属などを挙げることができる。なお、ケイ素は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではケイ素を金属に含めるものとする。アルミニウムと併用され得る金属原子(M)としては、取扱性や得られる多層構造体のガスバリア性が優れる観点から、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
金属原子(M)に占めるアルミニウム原子の割合は50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上であっても、実質的にアルミニウム原子のみからなってもよい。金属酸化物(A)の例には、液相合成法、気相合成法、固体粉砕法等の方法によって製造された金属酸化物が含まれる。
【0022】
金属酸化物(A)は、加水分解可能な特性基が結合した金属原子(M)を含有する化合物(E)(以下「化合物(E)」と略記する場合がある)の加水分解縮合物であってもよい。該特性基としては、例えば、ハロゲン原子、NO、置換基を有していてもよい炭素数1〜9のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜9のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜9のアシロキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数5〜15のβ−ジケトナト基、または置換基を有していてもよい炭素数1〜9のアシル基を有するジアシルメチル基等が挙げられる。化合物(E)の加水分解縮合物は、実質的に金属酸化物(A)とみなすことが可能である。そのため、本明細書では、化合物(E)の加水分解縮合物を「金属酸化物(A)」という場合がある。すなわち、本明細書において、「金属酸化物(A)」は「化合物(E)の加水分解縮合物」と読み替えることができ、また、「化合物(E)の加水分解縮合物」を「金属酸化物(A)」と読み替えることもできる。
【0023】
[加水分解可能な特性基が結合した金属原子(M)を含有する化合物(E)]
無機リン化合物(BI)との反応の制御が容易になり、得られる多層構造体のガスバリア性が優れることから、化合物(E)は後述するアルミニウム原子を含む化合物(Ea)を含むことが好ましい。
【0024】
化合物(Ea)としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム等が挙げられ、中でも、トリイソプロポキシアルミニウムおよびトリ−sec−ブトキシアルミニウムが好ましい。化合物(E)として、2種以上の化合物(Ea)を併用してもよい。
【0025】
また、化合物(E)はアルミニウム以外の金属原子(M)を含む化合物(Eb)を含んでいてもよく、化合物(Eb)としては、例えば、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン等のチタン化合物;テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム等のジルコニウム化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上の化合物(Eb)を併用してもよい。
【0026】
化合物(E)に占める化合物(Ea)の割合は特に限定されず、例えば80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0027】
化合物(E)が加水分解されることで、化合物(E)が有する加水分解可能な特性基の少なくとも一部が水酸基に変換される。さらに、その加水分解物が縮合することで、金属原子(M)が酸素原子(O)を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物が形成される。なお、このようにして形成された金属酸化物(A)の表面には、通常、水酸基が存在する。
【0028】
本明細書においては、[金属原子(M)のみに結合している酸素原子(O)のモル数]/[金属原子(M)のモル数]の比が0.8以上である化合物を金属酸化物(A)に含めるものとする。ここで、金属原子(M)のみに結合している酸素原子(O)は、M−O−Mで表される構造における酸素原子(O)であり、M−O−Hで表される構造における酸素原子(O)のように金属原子(M)と水素原子(H)に結合している酸素原子は除外される。金属酸化物(A)における前記比は、0.9以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.1以上がさらに好ましい。この比の上限は特に限定されないが、金属原子(M)の原子価をnとすると、通常、n/2で表される。
【0029】
前記加水分解縮合が起こるためには、化合物(E)が加水分解可能な特性基を有していることが重要である。それらの基が結合していない場合、加水分解縮合反応が起こらないもしくは極めて緩慢となるため、目的とする金属酸化物(A)の調製が困難になる。
【0030】
化合物(E)の加水分解縮合物は、例えば、公知のゾルゲル法で採用される手法によって特定の原料から製造してもよい。該原料には、化合物(E)、化合物(E)の部分加水分解物、化合物(E)の完全加水分解物、化合物(E)が部分的に加水分解縮合してなる化合物、および化合物(E)の完全加水分解物の一部が縮合してなる化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用できる。
【0031】
なお、後述の無機リン化合物(BI)含有物(無機リン化合物(BI)または無機リン化合物(BI)を含む組成物)との混合に供される金属酸化物(A)は、リン原子を実質的に含有しないことが好ましい。
【0032】
[無機リン化合物(BI)]
無機リン化合物(BI)は、金属酸化物(A)と反応可能な部位を含有し、典型的には、かかる部位を複数含有し、好適には2〜20個含有する。かかる部位には、金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)と縮合反応可能な部位が含まれ、例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子、リン原子に直接結合した酸素原子等が挙げられる。金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)は、通常、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)に結合している。
【0033】
無機リン化合物(BI)としては、例えば、リン酸、二リン酸、三リン酸、4分子以上のリン酸が縮合したポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスフィン酸等のリンのオキソ酸、およびこれらの塩(例えば、リン酸ナトリウム)、ならびにこれらの誘導体(例えば、ハロゲン化物(例えば、塩化ホスホリル)、脱水物(例えば、五酸化二リン))等が挙げられ、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、後述するコーティング液(S)の安定性および得られる多層構造体のガスバリア性が向上する観点から、リン酸を単独で使用するか、リン酸とそれ以外の無機リン化合物(BI)を併用することが好ましい。リン酸とそれ以外の無機リン化合物(BI)とを併用する場合、無機リン化合物(BI)の50モル%以上がリン酸であることが好ましい。
【0034】
[反応生成物(D)]
反応生成物(D)は、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との反応で得られる。金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とさらに他の化合物とが反応することで生成する化合物も反応生成物(D)に含まれる。
【0035】
層(Y)の赤外吸収スペクトルにおいて、800〜1400cm−1の領域における最大吸収波数は1080〜1130cm−1の範囲にあることが好ましい。例えば、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とが反応して反応生成物(D)となる過程において、金属酸化物(A)に由来する金属原子(M)と無機リン化合物(BI)に由来するリン原子(P)とが酸素原子(O)を介してM−O−Pで表される結合を形成する。その結果、反応生成物(D)の赤外吸収スペクトルにおいて該結合由来の特性吸収帯が生じる。M−O−Pの結合に基づく特性吸収帯が1080〜1130cm−1の領域に見られる場合には、得られた多層構造体が優れたガスバリア性を発現する。特に、該特性吸収帯が、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800〜1400cm−1の領域において最も強い吸収である場合には、得られた多層構造体がさらに優れたガスバリア性を発現する。
【0036】
これに対し、化合物(E)または金属塩等の金属化合物と無機リン化合物(BI)とを予め混合した後に加水分解縮合させた場合には、金属化合物に由来する金属原子と無機リン化合物(BI)に由来するリン原子とがほぼ均一に混ざり合い反応した複合体が得られる。その場合、赤外吸収スペクトルにおいて、800〜1400cm−1の領域における最大吸収波数が1080〜1130cm−1の範囲から外れるようになる。
【0037】
層(Y)の赤外吸収スペクトルにおいて、800〜1400cm−1の領域における最大吸収帯の半値幅は、得られる多層構造体のガスバリア性の観点から200cm−1以下が好ましく、150cm−1以下がより好ましく、100cm−1以下がさらに好ましく、50cm−1以下が特に好ましい。
【0038】
層(Y)の赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー株式会社製Spectrum One)を用い、800〜1400cm−1を測定領域として、減衰全反射法で測定できる。ただし、前記方法で測定できない場合には、反射吸収法、外部反射法、減衰全反射法等の反射測定、多層構造体から層(Y)をかきとり、ヌジョール法、錠剤法等の透過測定という方法で測定してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、層(Y)は、反応に関与していない金属酸化物(A)および/または無機リン化合物(BI)を部分的に含んでいてもよい。
【0040】
層(Y)において、金属酸化物(A)を構成する金属原子と無機リン化合物(BI)に由来するリン原子とのモル比は、[金属酸化物(A)を構成する金属原子]:[無機リン化合物(BI)に由来するリン原子]=1.0:1.0〜3.6:1.0の範囲にあることが好ましく、1.1:1.0〜3.0:1.0の範囲にあることがより好ましい。この範囲内では優れたガスバリア性能が得られる。層(Y)における該モル比は、層(Y)を形成するためのコーティング液(S)における金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との混合比率によって調整できる。層(Y)における該モル比は、通常、コーティング液(S)における比と同じである。
【0041】
層(Y)の厚さ(多層構造体が2層以上の層(Y)を有する場合には各層(Y)の厚さの合計)は、0.05〜4.0μmが好ましく、0.1〜2.0μmがより好ましい。層(Y)を薄くすることで、印刷、ラミネート等の加工時における多層構造体の寸法変化を低く抑えることができる。また、多層構造体の柔軟性が増すため、その力学的特性を基材自体の力学的特性に近づけることもできる。本発明の多層構造体が2層以上の層(Y)を有する場合、ガスバリア性の観点から、層(Y)1層当たりの厚さは0.05μm以上が好ましい。層(Y)の厚さは、層(Y)の形成に用いられる後述するコーティング液(S)の濃度またはその塗工方法によって制御できる。層(Y)の厚さは、多層構造体の断面を走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0042】
層(Y)は、上述した成分の他に、重合体(F)を含んでいてもよい。なお、重合体(F)と樹脂(C)は一部重複するが、層(Y)に含まれるビニルアルコール系重合体を重合体(F)とし、層(Z)に含まれるビニルアルコール系樹脂を樹脂(C)とする。
【0043】
[重合体(F)]
層(Y)はカルボニル基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する重合体(F)を含んでいてもよい。重合体(F)は、水酸基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体であることが好ましい。
【0044】
重合体(F)としては、ポリエチレングリコール;ポリビニルアルコール、炭素数4以下のα−オレフィン単位を1〜50モル%含有する変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラールなど)などのポリビニルアルコール系重合体;セルロース、デンプンなどの多糖類;ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸、エチレン−アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸系重合体;エチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物、スチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体の加水分解物などのマレイン酸系重合体などが挙げられる。中でも、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール系重合体が好ましい。重合体(F)として用いられるポリビニルアルコール系重合体の好適な態様は、層(Z)に含まれる樹脂(C)と同様である。
【0045】
重合体(F)は、重合性基を有する単量体の単独重合体であってもよいし、2種以上の単量体の共重合体であってもよいし、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する単量体と該基を有しない単量体との共重合体であってもよい。なお、重合体(F)として、2種以上の重合体(F)を混合して用いてもよい。
【0046】
重合体(F)の分子量は特に制限されないが、より優れたガスバリア性および機械的強度を有する多層構造体を得るために、重合体(F)の重量平均分子量は5000以上が好ましく、8000以上がより好ましく、10000以上がさらに好ましい。重合体(F)の重量平均分子量の上限は特に限定されず、例えば、1500000以下である。
【0047】
多層構造体の外観を良好に保つ観点から、層(Y)における重合体(F)の含有量は、層(Y)の質量を基準として、50質量%未満が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、0質量%であってもよい。重合体(F)は、層(Y)中の成分と反応していても、反応していなくてもよい。
【0048】
層(Y)は、他の成分をさらに含んでいてもよい。層(Y)に含まれ得る他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩等の無機酸金属塩、シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩、シクロペンタジエニル金属錯体(例えば、チタノセン)、シアノ金属錯体(例えば、プルシアンブルー)等の金属錯体、層状粘土化合物、架橋剤、重合体(F)以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等が挙げられる。多層構造体中の層(Y)における前記の他の成分の含有率は50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましく、0質量%(他の成分を含まない)であってもよい。
【0049】
層(Y)が重合体(F)を含む場合、層(Y)における反応生成物(D)及び重合体(F)の含有率は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましく、実質的に反応生成物(D)及び重合体(F)のみから構成されていてもよい。なお、層(Y)において一部未反応の金属酸化物(A)および無機リン化合物(BI)が含まれる場合は、金属酸化物(A)、無機リン化合物(BI)、反応生成物(D)及び重合体(F)の割合が上記範囲であることが好ましい。
【0050】
[層(Z)]
層(Z)は、樹脂(C)を90質量%以上含み、平均厚みが60nm以上である層である。本発明の多層構造体が、層(Z)を備えることで耐屈曲性に優れる傾向となる。
【0051】
[ビニルアルコール系樹脂(C)]
樹脂(C)はビニルアルコール系樹脂であれば特に限定されず、主に、酢酸ビニル等のビニルエステルの重合体をケン化することでえられる樹脂である。層(Y)との密着性が良好となり、耐屈曲性が高まる観点から、樹脂(C)のけん化度は75モル%以上が好ましく、78モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、後述するコーティング液(T)の調製が容易となる観点から、樹脂(C)のけん化度は99.9モル%以下であってもよい。ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略記する場合がある)樹脂やエチレンビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」と略記する場合がある)樹脂等が挙げられ、中でも、本発明の多層構造体の耐屈曲性がより良好となる観点から、樹脂(C)はPVA樹脂であることが好ましい。PVA樹脂としては、例えばビニルエステルを単独重合し、ケン化して得られるPVA樹脂や、その他の変性基を有する変性PVA樹脂が挙げられる。変性PVA樹脂は、共重合変性であっても後変性であっても良い。また、EVOH樹脂はとしては、例えばビニルエステル及びエチレンを共重合し、ケン化して得られるEVOH樹脂や、その他の変性基を有する変性EVOH樹脂が挙げられる。変性EVOH樹脂は、共重合変性であっても後変性であってもよい。これらのビニルアルコール系樹脂は、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。なお、本明細書においてエチレン単位含有量20モル%以上はEVOH樹脂、20モル%未満はPVA樹脂とする。
【0052】
本発明の多層構造体の耐屈曲性をより高める観点から、樹脂(C)はビニルアルコール単位を20モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましい。樹脂(C)のビニルアルコール単位の割合が増加することで、層(Y)との密着性がより良好となる傾向となる。また、取扱性や工程面から考慮しても、樹脂(C)のビニルアルコール単位は上記範囲であることが好ましい。すなわち、ビニルアルコール単位が変性(例えばエステル等)されていないことが好ましい。
【0053】
PVA樹脂のケン化度は75モル%以上が好ましく、78モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、PVA樹脂のケン化度は99.9モル%以下であってもよい。ケン化度が75モル%以上であると、層(Y)との密着性がより良好になる傾向となる。また、ケン化度が99.9モル%以下であると、後述するコーティング液(T)の調製が容易となる傾向となる。
【0054】
EVOH樹脂のケン化度は70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、EVOH樹脂のケン化度は99.9モル%以下であってもよい。ケン化度を上記範囲に調整することで、層(Y)との密着性がより良好になる傾向となる。また、EVOH樹脂のエチレン単位含有量は20モル%以上60モル%以下であってもよく、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。EVOH樹脂のエチレン単位含有量が60モル%以下であることで、親水性が向上し、基材(X)と層(Y)との密着性が向上するとなる傾向となる。
【0055】
ビニルアルコール系樹脂が変性基を有する場合、変性基としては、シラノール基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシ基、スルホン酸基、ニトリル基、アミノ基等が挙げられ、シラノール基を有することが好ましい。変性基を有することで基材(X)および層(Y)との化学結合により密着性が向上する場合がある。
【0056】
ビニルアルコール系樹脂が共重合変性される場合、ビニルエステルとの共重合に供される他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキンラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物;酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類;塩化ビニリデン;1,4−ジアセトキシ−2−ブテン;ビニレンカーボネート等が挙げられる。ビニルアルコール系樹脂が上記他の単量体を含む場合、その含有量は10モル%以下であっても、5モル%以下であっても、3モル%以下であってもよい。
【0057】
JIS K 6726(1994年)に準拠して測定される、樹脂(C)の濃度4質量%水溶液の、20℃における粘度は1mPa・s以上100mPa・s以下が好ましく、3mPa・s以上90mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以上80mPa・s以下が特に好ましい。前記範囲内であると層(Z)を均一な厚さに調整しやすく、得られる多層構造体の密着性を安定的に再現できる傾向となる。
【0058】
層(Z)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分を含有してもよい。層(Z)に含まれ得る他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩等の無機酸金属塩、シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩、シクロペンタジエニル金属錯体(例えば、チタノセン)、シアノ金属錯体(例えば、プルシアンブルー)等の金属錯体、層状粘土化合物、架橋剤、樹脂(C)以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等が挙げられる。層(Z)における前記の他の成分の含有率は10質量%未満であり、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、層(Z)は実質的に樹脂(C)のみから構成されていることがさらに好ましい。すなわち、樹脂(C)が層(Z)を占める割合は、90質量%以上であり、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、実質的に樹脂(C)のみからなることが特に好ましく、樹脂(C)のみから構成されていてもよい。樹脂(C)が層(Z)を占める割合が上記範囲外であると、本発明の多層構造体の耐屈曲性が著しく低下する傾向となる。
【0059】
層(Z)の平均厚みは60nm以上であり、70nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。また、層(Z)の平均厚みは2000nm以下であっても、1000nm以下であってもよい。層(Z)の平均厚みが60nm未満であると、本発明の多層構造体の耐屈曲性が著しく低下する傾向となる。
【0060】
[他の層(J)]
本発明の多層構造体は、様々な特性(例えば、ヒートシール性、バリア性、力学物性)を向上させるために、他の層(J)を含んでもよい。このような本発明の多層構造体は、例えば、基材(X)に層(Y)を(必要に応じて後述する接着層(I)を介して)積層させ、層(Y)に層(Z)を積層させた後に、さらに該他の層(J)を直接または後述する接着層(I)を介して接着または形成することによって製造できる。他の層(J)としては、例えば、インク層;ポリオレフィン層、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層等の熱可塑性樹脂層等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明の多層構造体がインク層を含む場合、インク層としては、例えば、溶剤に顔料(例えば、二酸化チタン)を包含したポリウレタン樹脂を分散した液体を乾燥した皮膜が挙げられるが、顔料を含まないポリウレタン樹脂、その他の樹脂を主剤とするインクや電子回路配線形成用レジストを乾燥した皮膜でもよい。インク層の塗工方法としては、グラビア印刷法のほか、ワイヤーバー、スピンコーター、ダイコーター等各種の塗工方法が挙げられる。インク層の厚さは0.5〜10.0μmが好ましく、1.0〜4.0μmがより好ましい。
【0062】
本発明の多層構造体の最表面層をポリオレフィン層とすることによって、多層構造体にヒートシール性を付与したり、多層構造体の力学的特性を向上させたりできる。ヒートシール性や力学的特性の向上等の観点から、ポリオレフィンはポリプロピレンまたはポリエチレンであることが好ましい。また、多層構造体の力学的特性を向上させるために、ポリエステルからなるフィルム、ポリアミドからなるフィルム、および水酸基含有ポリマーからなるフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1つのフィルムを積層することが好ましい。力学的特性の向上の観点から、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートが好ましく、ポリアミドとしてはナイロン−6が好ましく、水酸基含有ポリマーとしてはエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0063】
他の層(J)は押出しコートラミネートにより形成された層であってもよい。本発明で使用できる押出しコートラミネート法に特に限定はなく、公知の方法を用いてもよい。典型的な押出しコートラミネート法では、溶融した熱可塑性樹脂をTダイに送り、Tダイのフラットスリットから取り出した熱可塑性樹脂を冷却することによって、ラミネートフィルムが製造される。
【0064】
前記シングルラミネート法以外の押出しコートラミネート法としては、サンドイッチラミネート法、タンデムラミネート法等が挙げられる。サンドイッチラミネート法は、溶融した熱可塑性樹脂を一方の基材に押出し、別のアンワインダー(巻出し機)から第2基材を供給して貼り合わせて積層体を作製する方法である。タンデムラミネート法は、シングルラミネート機を2台つないで一度に5層構成の積層体を作製する方法である。
【0065】
[接着層(I)]
本発明の多層構造体において、接着層(I)を用いて、基材(X)と層(Y)間の接着性を高めたり、他の部材(例えば、他の層(J)等)との接着性を高めることができる場合がある。接着層(I)は、接着性樹脂から構成されていてもよい。前記他の部材との接着性を高める接着性樹脂としては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを混合し反応させる2液反応型ポリウレタン系接着剤が好ましい。また、アンカーコーティング剤または接着剤に、公知のシランカップリング剤等の少量の添加剤を加えることによって、さらに接着性を高めることができる場合がある。シランカップリング剤としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基等の反応性基を有するシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の部材との接着により、本発明の多層構造体に対して印刷またはラミネート等の加工を施す際に、ガスバリア性または外観の悪化をより効果的に抑制でき、さらに、本発明の多層構造体を用いた包装材の落下強度を高めることができる場合がある。
【0066】
また、基材(X)と層(Y)間の接着性を高める接着性樹脂としては、上述した接着性樹脂のほかに、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂等が好適に用いられ、ビニルアルコール樹脂を単独で用いるか、ビニルアルコール系樹脂とポリエステル系樹脂を同時に用いることが、基材(X)と層(Y)間との接着性を高める観点から、より好ましい。ビニルアルコール系樹脂はPVA樹脂であることが好ましく、PVA樹脂としては樹脂(C)として好適に用いられる態様であることが好ましい。
【0067】
ビニルアルコール系樹脂とポリエステル系樹脂を同時に用いる場合、その質量比(ビニルアルコール系樹脂/ポリエステル系樹脂)は1/99以上50/50以下であることが、良好な接着性を維持しつつ、より高い剥離強度を示す観点から好ましい。ポリエステル系樹脂は、ビニルアルコール系樹脂との親和性の観点からカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂であることが好ましい。また、接着剤として使用する際は、ポリエステル系樹脂が水性分散体であることが好ましい。ポリエステル系樹脂が水性分散体であることで、ポリビニルアルコール系樹脂との親和性が、より良好になる傾向となる。接着層(I)の厚さは0.001〜10.0μmが好ましく、0.01〜5.0μmがより好ましい。
【0068】
[多層構造体の構成]
本発明の多層構造体は、少なくとも一組の層(Y)及び層(Z)が隣接して積層されている。ここで、隣接して積層されているとは、層(Y)及び層(Z)が直接積層されていることを意味する。層(Y)及び層(Z)が隣接して積層されていることで、本発明の多層構造体の耐屈曲性が、より顕著に現れるようになる。その理由は定かではないが、層(Y)と層(Z)が隣接して積層されている場合、層(Y)の表面や間隙に層(Z)の成分が浸透し、耐屈曲性がより顕著に現れていると考えられる。本発明の多層構造体の耐屈曲性をより高める観点から、本発明の多層構造体は、基材(X)、層(Y)、層(Z)がこの順に積層されている積層構造を備えることが好ましい。なお、基材(X)と層(Y)間は、直接積層されていても接着層(I)を介して積層されていてもよい。
【0069】
本発明の多層構造体の構成の具体例を以下に示すが、それぞれの具体例は複数組み合わされた構成であってもよい。なお、具体例において基材(X)および他の層(J)は具体的な樹脂名で記載する。また、具体的な樹脂名が記載された層(基材(X)および他の層(J))の間に層(Y)/層(Z)が位置する場合には、層(Z)/層(Y)との積層順に置き換えてもよい。ここで、「/」とは、接着層を介してまたは直接積層していることを意味する。
(1)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層(基材(X))、
(2)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/層(Y)/層(Z)、
(3)層(Z)/層(Y)/ポリアミド層、
(4)層(Z)/層(Y)/ポリアミド層/層(Y)/層(Z)、
(5)層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層、
(6)層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)、
(7)層(Z)/層(Y)/水酸基含有ポリマー層、
(8)層(Z)/層(Y)/水酸基含有ポリマー層/層(Y)/層(Z)、
(9)層(Z)/層(Y)/紙層、
(10)層(Z)/層(Y)/紙層/層(Y)/層(Z)、
(11)層(Z)/層(Y)/無機蒸着層/ポリエステル層、
(12)層(Z)/層(Y)/無機蒸着層/ポリアミド層、
(13)層(Z)/層(Y)/無機蒸着層/ポリオレフィン層、
(14)層(Z)/層(Y)/無機蒸着層/水酸基含有ポリマー層、
(15)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(16)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(17)ポリエステル層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/無機蒸着層/水酸基含有ポリマー層/ポリオレフィン層、
(18)ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(19)層(Z)/層(Y)/ポリアミド層/ポリエステル層/ポリオレフィン層、
(20)層(Z)/層(Y)/ポリアミド層/層(Y)/層(Z)/ポリエステル層/ポリオレフィン層、
(21)ポリアミド層/層(Y)/層(Z)/ポリエステル層/ポリオレフィン層、
(22)層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(23)層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(24)ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(25)層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/ポリオレフィン層、
(26)層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/ポリオレフィン層、
(27)ポリオレフィン層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層、
(28)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/ポリオレフィン層、
(29)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/ポリオレフィン層、
(30)ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/ポリオレフィン層、
(31)層(Z)/層(Y)/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(32)層(Z)/層(Y)/ポリアミド層/層(Y)/層(Z)/ポリオレフィン層、
(33)ポリアミド層/層(Y)/層(Z)/ポリオレフィン層、
(34)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/紙層、
(35)層(Z)/層(Y)/ポリアミド層/紙層、
(36)層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/紙層、
(37)ポリオレフィン層/紙層/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/ポリエステル層/ポリオレフィン層、
(38)ポリオレフィン層/紙層/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/ポリアミド層/ポリオレフィン層、
(39)ポリオレフィン層/紙層/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/ポリオレフィン層、
(40)紙層/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/ポリエステル層/ポリオレフィン層、
(41)ポリオレフィン層/紙層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層、
(42)紙層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/ポリオレフィン層、
(43)紙層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層、
(44)層(Z)/層(Y)/紙層/ポリオレフィン層、
(45)層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/紙層/ポリオレフィン層、
(46)ポリオレフィン層/紙層/ポリオレフィン層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/水酸基含有ポリマー層、
(47)ポリオレフィン層/紙層/ポリオレフィン層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/ポリアミド層、
(48)ポリオレフィン層/紙層/ポリオレフィン層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/ポリエステル層、
(49)無機蒸着層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層、
(50)無機蒸着層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/無機蒸着層、
(51)無機蒸着層/層(Z)/層(Y)/ポリアミド層、
(52)無機蒸着層/層(Z)/層(Y)/ポリアミド層/層(Y)/層(Z)/無機蒸着層、
(53)無機蒸着層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層、
(54)無機蒸着層/層(Z)/層(Y)/ポリオレフィン層/層(Y)/層(Z)/無機蒸着層
(55)ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/ポリアミド層/無機蒸着層/水酸基含有ポリマー層/ポリオレフィン層
(56)ポリアミド層/層(Y)/層(Z)/ポリエステル層/無機蒸着層/水酸基含有ポリマー層/ポリオレフィン層
(57)ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/無機蒸着層/水酸基含有ポリマー層/ポリオレフィン層、
(58)ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/無機蒸着層/ポリエステル層/ポリオレフィン層
(59)ポリエステル層/層(Y)/層(Z)/無機蒸着層/ポリエステル層/無機蒸着層/ポリエステル層/ポリオレフィン層
上記した例示において、無機蒸着層はアルミニウムの蒸着層および/または酸化アルミニウムの蒸着層であることが好ましい。上記した例示において、水酸基含有ポリマー層はエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。上記した例示において、ポリオレフィン層はポリエチレンフィルム、またはポリプロピレンフィルムであることが好ましい。上記した例示において、ポリエステル層はPETフィルムであることが好ましい。また、上記した例示において、ポリアミド層はナイロンフィルムであることが好ましい。
【0070】
[多層構造体の製造方法]
本発明の多層構造体について説明した事項は本発明の製造方法に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。また、本発明の製造方法について説明した事項は、本発明の多層構造体に適用できる。
【0071】
本発明の多層構造体の製造方法としては、例えば、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)と溶媒とを含むコーティング液(S)を基材(X)上に塗工した後溶媒を除去し層(Y)前駆体層を形成する工程(I)、樹脂(C)及び溶媒を含むコーティング液(T)を前記層(Y)前駆体層上に塗工した後、溶媒を除去し層(Z)を形成する工程(II)、および層(Y)前駆体層を熱処理して層(Y)を形成する工程(III)を含む製造方法が挙げられる。また、層(Y)に重合体(F)を含む多層構造体を製造する場合、工程(II)に用いるコーティング液(S)に重合体(F)を含ませても、コーティング液(T)に重合体(F)を含ませてもよい。
【0072】
[工程(I)]
工程(I)では、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)と溶媒とを含むコーティング液(S)を基材(X)上に塗工した後、溶媒を除去し層(Y)前駆体層を形成する。コーティング液(S)は、金属酸化物(A)、無機リン化合物(BI)および溶媒を混合することで得られる。
【0073】
コーティング液(S)を調整する具体的手段としては、金属酸化物(A)の分散液と、無機リン化合物(BI)を含む溶液とを混合する方法;金属酸化物(A)の分散液に無機リン化合物(BI)を添加し、混合する方法等が挙げられる。これらの混合時の温度は、50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。コーティング液(S)は、他の化合物(例えば、重合体(F))を含んでいてもよく、必要に応じて、酢酸、塩酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、およびトリクロロ酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(Q)を含んでいてもよい。
【0074】
金属酸化物(A)の分散液は、例えば、公知のゾルゲル法で採用されている手法に従い、例えば、化合物(E)、水、および必要に応じて酸触媒や有機溶媒を混合し、化合物(E)を縮合または加水分解縮合することによって調製できる。化合物(E)を縮合または加水分解縮合することによって金属酸化物(A)の分散液を得た場合、必要に応じて、得られた分散液に対して特定の処理(前記酸化合物(Q)の存在下の解膠等)を行ってもよい。金属酸化物(A)の分散液の調製に使用する溶媒は特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;水;またはこれらの混合溶媒が好ましい。
【0075】
無機リン化合物(BI)を含む溶液に用いる溶媒としては、無機リン化合物(BI)の種類に応じて適宜選択すればよいが、水を含むことが好ましい。無機リン化合物(BI)の溶解の妨げにならない限り、溶媒は有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類)を含んでいてもよい。
【0076】
コーティング液(S)の固形分濃度は、該コーティング液の保存安定性および基材に対する塗工性の観点から1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。前記固形分濃度は、例えば、コーティング液(S)の溶媒留去後に残存した固形分の質量を、処理に供したコーティング液(S)の質量で除して算出できる。
【0077】
コーティング液(S)は、ブルックフィールド型回転粘度計(SB型粘度計:ローターNo.3、回転速度60rpm)で測定された粘度が、塗工時の温度において3000mPa・s以下であることが好ましく、2500mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることがさらに好ましい。当該粘度が3000mPa・s以下であることによって、コーティング液(S)のレベリング性が向上し、外観により優れる多層構造体を得ることができる。また、コーティング液(S)の粘度としては、50mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましく、200mPa・s以上がさらに好ましい。
【0078】
コーティング液(S)において、アルミニウム原子とリン原子とのモル比は、アルミニウム原子:リン原子=1.0:1.0〜3.6:1.0の範囲にあることが好ましく、1.1:1.0〜3.0:1.0の範囲にあることがより好ましく、1.11:1.00〜1.50:1.00の範囲にあることが特に好ましい。アルミニウム原子とリン原子とのモル比は、コーティング液(S)の乾固物の蛍光X線分析を行い、算出できる。
【0079】
コーティング液(S)の塗工は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。塗工方法としては、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法、バーコート法等が挙げられる。
【0080】
コーティング液(S)塗工後の溶媒の除去方法(乾燥処理)に特に制限はなく、公知の乾燥方法を適用できる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等が挙げられる。
【0081】
乾燥温度は、基材(X)の流動開始温度より低いことが好ましい。コーティング液(S)の塗工後の乾燥温度は、例えば、60〜180℃程度であってもよく、60℃以上140℃未満がより好ましく、70℃以上130℃未満がさらに好ましく、80℃以上120℃未満が特に好ましい。乾燥時間は、特に限定されないが、1秒以上1時間未満が好ましく、5秒以上15分未満がより好ましく、5秒以上300秒未満がさらに好ましい。特に、乾燥温度が100℃以上の場合(例えば、100〜140℃)は、乾燥時間は1秒以上4分未満が好ましく、5秒以上4分未満がより好ましく、5秒以上3分未満がさらに好ましい。乾燥温度が100℃を下回る場合は(例えば、60〜99℃)、乾燥時間は3分以上1時間未満が好ましく、6分以上30分未満がより好ましく、8分以上25分未満がさらに好ましい。コーティング液(S)の乾燥処理条件が上記範囲にあると、より良好なガスバリア性を有する多層構造体が得られる傾向となる。上記乾燥を経て溶媒が除去されることで、層(Y)前駆体層が形成される。
【0082】
[工程(II)]
工程(II)では、樹脂(C)と溶媒とを含むコーティング液(T)を工程(I)で得られた層(Y)前駆体層上に塗工後、溶媒を除去し層(Z)を形成する。コーティング液(T)は、樹脂(C)と溶媒とを混合することで得られる。
【0083】
コーティング液(T)に用いる溶媒としては、特に限定されないが、水を主成分とすることが好ましく、水のみであってもよい。また水を主成分とした場合に用いる他の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましく用いられる。
【0084】
コーティング液(T)の固形分濃度は、該コーティング液の保存安定性および基材に対する塗工性の観点から、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。前記固形分濃度は、例えば、コーティング液(T)の溶媒留去後に残存した固形分の質量を、処理に供したコーティング液(T)の質量で除して算出できる。
【0085】
コーティング液(T)の塗工は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。塗工方法としては、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法、バーコート法等が挙げられる。
【0086】
コーティング液(T)を基材(X)に塗工後形成された層(Z)の厚さは、コーティング液(T)の固形分濃度もしくは塗工方法によって制御できる。例えば、グラビアコート法の場合、グラビアロールのセル容積を変えればよい。
【0087】
基材(X)上に塗工後のコーティング液(T)の溶媒の除去方法に特に制限はなく、公知の乾燥方法を適用できる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等が挙げられる。
【0088】
[工程(III)]
工程(III)では、工程(II)で形成された層(Y)前駆体層を熱処理して層(Y)を形成する。工程(III)では、反応生成物(D)が生成する反応が進行する。該反応を充分に進行させるため、熱処理の温度は140℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましく、190℃以上が特に好ましい。熱処理温度が低いと、充分な反応率を得るのにかかる時間が長くなり、生産性が低下する原因となる。熱処理の温度は、基材(X)の種類等によって異なるが、例えば、ポリアミド系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを基材(X)として用いる場合には、熱処理の温度は270℃以下が好ましい。また、ポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを基材(X)として用いる場合には、熱処理の温度は240℃以下が好ましい。熱処理は、空気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等で実施してもよい。熱処理時間は、1秒〜1時間が好ましく、1秒〜15分がより好ましく、5〜300秒がさらに好ましい。
【0089】
工程(III)は、第1熱処理工程(III−1)と第2熱処理工程(III−2)を含むことが好ましい。熱処理を2段階以上で行う場合、2段階目の熱処理(以下、第2熱処理)の温度は、1段階目の熱処理(以下、第1熱処理)の温度より高いことが好ましく、第1熱処理の温度より15℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことがさらに好ましく、30℃以上高いことが特に好ましい。
【0090】
また、工程(III)の熱処理温度(2段階以上の熱処理の場合は、第1熱処理温度)は、良好な特性を有する多層構造体が得られる点から、工程(II)の乾燥温度より高いことが好ましく、30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましく、55℃以上高いことがさらに好ましく、60℃以上高いことが特に好ましい。
【0091】
工程(III)の熱処理を2段階以上で行う場合、第1熱処理の温度が140℃以上200℃未満であることが好ましく、かつ第2熱処理の温度が180℃以上270℃以下であることがより好ましく、第2熱処理の温度は第1熱処理温度よりも高いことが好ましく、15℃以上高いことがより好ましく、25℃以上高いことがさらに好ましい。特に、熱処理温度が200℃以上の場合、熱処理時間は0.1秒〜10分が好ましく、0.5秒〜15分がより好ましく、1秒〜3分がさらに好ましい。熱処理温度が200℃を下回る場合は、熱処理時間は1秒〜15分が好ましく、5秒〜10分がより好ましく、10秒〜5分がさらに好ましい。
【0092】
工程(II)は、コーティング液(T)を工程(III)で得た層(Y)または工程(III−1)後の層(Y)前駆体層上に塗工し、乾燥処理を経る工程(II’)であってもよい。工程(II’)を工程(III)の後に行う場合、工程(II’)の乾燥処理後に工程(III)と同様の条件にて熱処理を行うことが好ましい。また、工程(II’)を工程(III−1)の後に行う場合は、工程(II’)の乾燥処理後に工程(III−2)を行うことが好ましい。
【0093】
[用途]
本発明の多層構造体はバリア性が良好であるため、包装材料、電子デバイス保護シート、防湿シートの様々な用途に適用できる。また、耐屈曲性に優れる観点から、包装材料として好適に用いられる。また、本発明の多層構造体は、電子デバイスの保護シートとしても好適に用いられる。
【0094】
[包装材]
本発明の包装材は、本発明の多層構造体のみによって構成されてもよく、本発明の多層構造体と他の部材とによって構成されてもよい。例えば、包装袋の面積の50%〜100%が、多層構造体によって構成されていてもよい。包装材が包装袋以外のもの(例えば、容器、蓋材)である場合も同様である。本発明の好ましい実施形態による包装材は、無機ガス(例えば、水素、ヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素)、天然ガス、水蒸気および常温常圧で液体状の有機化合物(例えば、エタノール、ガソリン蒸気)に対するバリア性を有する。
【0095】
本発明の包装材は、様々な方法で作製できる。例えば、シート状の多層構造体または該多層構造体を含むフィルム材(以下、単に「フィルム材」という)を接合して所定の容器の形状に成形することによって、容器(包装材)を作製してもよい。成形方法は、熱成形、射出成形、押出ブロー成形等が挙げられる。また、所定の容器の形状に成形された基材(X)の上に層(Z)および層(Y)を形成することによって、容器(包装材)を作製してもよい。
【0096】
本発明による包装材は、食品用包装材として好ましく用いられる。また、本発明による包装材は、食品用包装材以外にも、農薬、医薬等の薬品;医療器材;機械部品、精密材料等の産業資材;衣料等を包装するための包装材として好ましく使用できる。
【0097】
本発明の包装材を用いた製品としては、例えば、縦製袋充填シール袋、真空包装袋、パウチ、ラミネートチューブ容器、輸液バッグ、容器用蓋材、紙容器、ストリップテープ、インモールドラベル容器または真空断熱体等が挙げられる。
【0098】
縦製袋充填シール袋は、本発明の多層構造体(フィルム材)を縦型製袋充填機(縦型製袋充填包装機などとも呼ばれる)により製袋して得られる袋である。縦型製袋充填機は、例えば、供給されたフィルム材を相対する面が形成されるように保持しながらその側部および底部をシール(接合)して上方が開口した袋を形成し、内容物を袋の上方から供給してその内部に充填する。引き続き、縦型製袋充填機は、袋の上部をシールしてからその上方を切断し、縦製袋充填シール袋として排出する。
【0099】
真空包装袋は、本発明の多層構造体を用いて製袋して得られた袋の内部が減圧された状態で使用される袋である。袋内部が減圧されているため、真空包装袋では、通常、袋内部と袋外部とを隔てるフィルム材が袋に収容される内容物に接するように変形している。内容物は、典型的には、軸付きコーン(とうもろこし)、豆類、筍、芋、栗、茶葉、肉、魚、菓子等の食品であるか、真空断熱体として使用するために芯材を含む場合がある。
【0100】
パウチは、内容物を収容する内部と外部とを隔てる隔壁として本発明の多層構造体(フィルム材)を備えた容器である。パウチは、液状またはスラリー状である内容物の収容に適しているが、固形の内容物の収容にも使用できる。内容物は、典型的には、飲料、調味料、流動食その他の食品、および洗剤、液体石鹸その他の日用品である。
【0101】
ラミネートチューブ容器は、容器の内部と外部とを隔てる隔壁として本発明の多層構造体(ラミネートフィルム)を備えた胴体部と、容器の内部に収容された内容物を取り出すための注出部と、を備えている。ラミネートチューブ容器の胴体部は、例えば、一方の端部が閉じた筒状形状を有し、他方の端部側に注出部が配置されている。
【0102】
輸液バッグは、アミノ酸輸液剤、電解質輸液剤、糖質輸液剤、輸液用脂肪乳剤などの輸液類を内容物として収容するためのバッグ(袋)である。輸液バッグは、内容物を収容するバッグ本体に加え、口栓部材を備えていてもよい。また、輸液バッグは、バッグを吊り下げるための吊り下げ孔を備えていてもよい。輸液バッグでは、輸液を収容するための内部と外部とを隔てるフィルム材が本発明の多層構造体を備えている。
【0103】
容器用蓋材は、容器本体と組み合わされて容器を形成した状態で容器の内部と容器の外部とを隔てる隔壁の一部として機能するフィルム材(本発明の多層構造体)を備えている。容器用蓋材は、ヒートシール、接着剤を用いた接合(シール)などにより、容器本体の開口部を封止するように容器本体と組み合わされ、内部に密閉された空間を有する容器(蓋付き容器)を形成する。容器用蓋材は、通常、その周縁部において容器本体と接合される。この場合、周縁部に囲まれた中央部が容器の内部空間に面することになる。容器本体は、例えば、カップ状、トレー状、その他の形状を有する成形体であり、容器用蓋材をシールするためのフランジ部、壁面部などを備えている。
【0104】
紙容器は、内容物を収容する内部と外部とを隔てる隔壁が紙層を含む容器である。紙容器は、例えば、ゲーブルトップ型、ブリック型などの形状を有する。これらの形状は、紙容器に自立するための底壁部を備えている。
【0105】
真空断熱体は、真空包装袋と、真空包装袋により囲まれた内部に配置された芯材とを備え、芯材が配置された内部が減圧された断熱体である。芯材としては、例えば、パーライト粉末などの粉末、ガラスウールなどの繊維材、ウレタンフォームなどの樹脂発泡体、中空容器、ハニカム構造体などを使用できる。真空断熱体では、隔壁として機能する真空包装袋が多層構造体を備えている。
【0106】
真空断熱体に好適な多層構造体の層構成としては、例えば下記が挙げられる。
(1)ポリオレフィン層/エチレンービニルアルコール共重合体層/無機蒸着層/ポリアミド層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層
(2)ポリオレフィン層/無機蒸着層/ポリエステル層/無機蒸着層/ポリエステル層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層
(3)ポリオレフィン層/エチレンービニルアルコール共重合体層/無機蒸着層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層
(4)ポリオレフィン層/無機蒸着層/ポリエステル層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層
(5)ポリオレフィン層/ポリアミド層/無機蒸着層/ポリエステル層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層
(6)ポリオレフィン層/エチレンービニルアルコール共重合体層/無機蒸着層/無機蒸着層/ポリエステル層/層(Z)/層(Y)/ポリエステル層
無機蒸着層と組み合わせることで、ガスバリア性が向上し、熱伝導率の低下を抑制することができる。また、上記ポリオレフィン層をエチレンービニルアルコール共重合体層に変更してもよく、エチレンービニルアルコール共重合体層に変更することで高温での熱伝導率の低下の抑制効果がある。上記層構成を真空断熱体用の外包材として使用する場合、ポリオレフィン層側が内層(ヒートシール層)、ポリエステル層側が外層とすることが好ましい。上述した層構成により、内層側の長期使用による水蒸気等の外気による劣化を抑制できる傾向となるため好ましい。また、上述した層構成で使用できる材料としては、特に限定されないが、本願実施例に記載される樹脂やフィルムを好適に使用できる。
【0107】
上記成形品(たとえば縦製袋充填シール袋など)では、ヒートシールが行われることがある。ヒートシールが行われる場合には、通常、成形品の内側となる側、あるいは成形品の内側となる側および外側となる側の両方に、ヒートシール可能な層を配置することが必要である。ヒートシール可能な層が、成形品(袋)の内側となる側にのみある場合は、通常、胴体部のシールは合掌貼りシールとなる。ヒートシール可能な層が、成形品の内側となる側および外側となる側の両方にある場合は、通常、胴体部のシールは封筒貼りシールとなる。ヒートシール可能な層としては、ポリオレフィン層が好ましい。
【0108】
本発明の電子デバイスの保護シートは、本発明の多層構造体を含み、本発明の多層構造体のみによって構成されてもよい。電子デバイスの保護シートは、電子デバイスを外部環境から保護する目的で使用されるものであり、例えば、電子デバイス本体の表面を覆うように封止する封止材の表面に、本発明の保護シートを配置することができる。すなわち、本発明の保護シートは、通常封止材を介して電子デバイス本体の表面に配置される。電子デバイス本体としては特に限定されず、例えば、光電変換装置、情報表示装置、または照明装置等が挙げられる。
【0109】
本発明の電子デバイスの保護シートは、例えば、多層構造体の一方の表面または両方の表面に配置された表面保護層を含んでもよい。表面保護層としては、傷がつきにくい樹脂からなる層が好ましい。また、太陽電池のように室外で利用されることがあるデバイスの表面保護層は、耐候性(例えば、耐光性)が高い樹脂からなることが好ましい。また、光を透過させる必要がある面を保護する場合には、透光性が高い表面保護層が好ましい。表面保護層(表面保護フィルム)の材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。保護シートの一例は、一方の表面に配置されたポリ(メタ)アクリル酸エステル層を含む。
【0110】
表面保護層の耐久性を高めるために、表面保護層に各種の添加剤(例えば、紫外線吸収剤)を添加してもよい。耐候性が高い表面保護層の好ましい一例は、紫外線吸収剤が添加されたアクリル樹脂層である。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系、トリアジン系の紫外線吸収剤が挙げられるが、これらに限定されない。また、他の安定剤、光安定剤、酸化防止剤等を併用してもよい。
【0111】
また、本発明の多層積層体は、防湿シートとしても活用できる。例えば、化粧板用途では、室内のドアパネルなどに用いる化粧板の裏面に貼りあわせることで室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生するそりを防止することができる。
【実施例】
【0112】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
【0113】
実施例および比較例で使用した材料を示す。
PET12:二軸延伸ポリエチレンレテフタレートフィルム;東レ株式会社製、「ルミラー(商標)P60」(商品名)、平均厚み12μm
ONY15:二軸延伸ナイロンフィルム;ユニチカ株式会社製、「エンブレム(商標)ONBC」(商品名)、平均厚み15μm
CPP50:無延伸ポリプロピレンフィルム;三井化学東セロ株式会社製、「RXC−22」(商品名)、平均厚み50μm
CPP100:無延伸ポリプロピレンフィルム;三井化学東セロ株式会社製、「RXC−22」(商品名)、平均厚み100μm
PET50:エチレン−酢酸ビニル共重合体との接着性を向上させたポリエチレンテレフタレートフィルム;東洋紡株式会社製、「シャインビーム(商標)Q1A15」(商品名)、平均厚み50μm
VM−XL:アルミ蒸着二軸延伸EVOHフィルム;株式会社クラレ製、「VM−XL」(商品名)、平均厚み12μm
LLDPE50:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム;出光ユニテック株式会社製、「ユニラックスLS―760C」、平均厚み50μm
PVA60−98:ポリビニルアルコール;株式会社クラレ製「クラレポバール(商標)60−98」、ケン化度:98.0〜99.0モル%、粘度(4%、20℃):54.0〜66.0mPa・s
PVA48−80:ポリビニルアルコール;株式会社クラレ製「クラレポバール(商標)48−80」、ケン化度:78.5〜80.5モル%、粘度(4%、20℃):45.0〜51.0mPa・s
【0114】
[評価方法]
(1)各層の平均厚み測定
収束イオンビーム(FIB)を用いて実施例及び比較例で得られた多層構造体を切削し、断面観察用の切片を作製した。作製した切片を試料台座にカーボンテープで固定し、加速電圧30kVで30秒間白金イオンスパッタを行った。電界放出形透過型電子顕微鏡を用いて多層構造体の断面を観察し、各層の平均厚みを算出した。測定条件は以下の通りとした。
装置:日本電子株式会社製JEM−2100F
加速電圧:200kV
倍率:250,000倍
【0115】
(2)多層構造体の酸素透過度の測定
実施例及び比較例で得られた多層構造体を、酸素透過量測定装置に酸素供給側に基材の層が向くように取り付け、JIS K7126:2006に準拠して、等圧法により酸素透過度を測定した。測定条件は以下の通りとした。
装置:MOCON社製MOCON OX−TRAN2/21
温度:20℃
酸素供給側の湿度:85%RH
キャリアガス側の湿度:0%RH
キャリアガス流量:10mL/分
酸素圧:1.0atm
キャリアガス圧力:1.0atm
【0116】
(3)多層構造体の透湿度の測定
実施例及び比較例で得られた多層構造体を、水蒸気透過量測定装置に水蒸気供給側に基材の層が向くように取り付け、JIS K7129B:2008に準拠して、等圧法により透湿度(水蒸気透過度)を測定した。測定条件は以下の通りとした。
装置:MOCON社製MOCON PERMATRAN W3/33
温度:40℃
水蒸気供給側の湿度:90%RH
キャリアガス側の湿度:0%RH
キャリアガス流量:50mL/分
【0117】
(4)屈曲処理後の多層構造体の酸素透過度及び透湿度の測定
実施例及び比較例で得られた多層構造体を210mm×297mm(A4サイズ)にカットし、ASTM F−392に準じて、ゲルボフレックステスター(理学工業株式会社製)により3サイクルの屈曲を施した。屈曲を施した多層構造体の中央部を酸素透過度および透湿度測定用のサンプルとして切り出し、上記評価方法(2)及び(3)に記載の方法に従って、酸素透過度及び透湿度を測定した。
【0118】
(5)赤外線吸収スペクトルの測定
実施例及び比較例で得られた多層構造体の層(Y)及び層(Z)側を、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、減衰全反射法で測定した。測定条件は以下の通りとした。
装置:パーキンエルマー株式会社製Spectrum One
測定モード:減衰全反射法
測定領域:800〜1400cm-1
【0119】
<コーティング液(S−1)の製造例>
蒸留水230質量部を撹拌しながら70℃に昇温した。その蒸留水に、トリイソプロポキシアルミニウム88質量部を1時間かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。得られた液体に、60質量%の硝酸水溶液4.0質量部を添加し、95℃で3時間撹拌することによって加水分解縮合物の粒子の凝集体を解膠させた。その後、その液体を、固形分濃度が酸化アルミニウム換算で10質量%になるように濃縮し、溶液を得た。こうして得られた溶液22.50質量部に対して、蒸留水54.29質量部およびメタノール18.80質量部を加え、均一になるように撹拌することによって、分散液を得た。続いて、液温を15℃に維持した状態で分散液を撹拌しながら85質量%のリン酸水溶液4.41質量部を滴下して加えた。さらに、メタノール溶液18.80質量部を滴下して加え、粘度が1500mPa・sになるまで15℃で撹拌を続け、目的のコーティング液(S−1)を得た。該コーティング液(S−1)における、アルミニウム原子とリン原子とのモル比は、アルミニウム原子:リン原子=1.15:1.00であった。
【0120】
<コーティング液(T−1)の製造例>
PVA60−98をビニルアルコール系樹脂(C)として用い、5wt%のPVA60−98の水溶液70.0質量部、蒸留水10.7質量部、メタノール19.3質量部を加え室温で30分撹拌後、コーティング液(T−1)を得た。
【0121】
<コーティング液(T−2)>
ビニルアルコール系樹脂(C)の種類を表1のとおりに変更した以外はコーティング液(T−1)の調製と同様にして、コーティング液(T−2)を得た。
【0122】
<コーティング液(CT−1)の製造例> 撹拌機および温度計を備えた丸底フラスコ(内容積:50ml)を窒素置換し、溶媒として水2.5gを仕込み、撹拌しながらビニルホスホン酸10g、水2.5gおよび2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩25mgの混合溶液を丸底フラスコに滴下した。この時から重合の全過程を通じて微量の窒素ガスを流し続けた。丸底フラスコをオイルバスに漬けて80℃で3時間反応させた後、反応混合物を15gの水で希釈し、セルロース膜(スペクトラム・ラボラトリーズ社製、「Spectra/Por」(商品名))でろ過した。次に、エバポレーターでろ液の溶媒を留去し、50℃で24時間真空乾燥することによって白色の重合体であるポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)を得た。この重合体をゲル浸透クロマトグラフ分析装置で、溶媒として1.2wt%のNaCl水溶液を用い重合体濃度0.1wt%で分子量を測定したところ、分子量はポリエチレングリコール換算で約10000であった。精製した重合体を水とメタノールの混合溶媒(質量比で水:メタノール=7:3)精製した重合体を水とメタノールの混合溶媒に溶解し、固形分濃度が1質量%のコーティング液(CT−1)を得た。
【0123】
<コーティング液(CT−2)の製造例>
コーティング液(CT−1)の製造例中記載の重合方法と同様の方法で得たPVPA0.5質量部、5wt%のPVA60−98の水溶液41.6質量部、蒸留水28.7質量部、メタノール29.2質量部を加え室温で30分撹拌後、溶液(CT−2)を得た。
【0124】
[実施例1]
<実施例1−1>
基材(X)として、PET12(基材(X−1))を準備した。この基材上に、乾燥後の平均厚みが0.3μmとなるようにバーコーターを用いてコーティング液(S−1)を塗工した。塗工後のフィルムを、120℃で3分間乾燥後、180℃で1分間熱処理して、基材上に層(Y−1)の前駆体層を形成した。次いで、乾燥後の平均厚みが0.1μmとなるようにバーコーターを用いてコーティング液(T−1)を塗工し、120℃で3分間乾燥後、210℃で1分間熱処理した。このようにして、基材(X−1)/層(Y−1)/層(Z−1)という構造を有する多層構造体(1−1−1)を得た。得られた多層構造体(1−1−1)について、上記評価方法(5)に準じて赤外吸収スペクトルを測定した結果、800〜1400cm−1の領域における最大吸収波数が1108cm−1であった。
【0125】
得られた多層構造体(1−1−1)上に接着層を形成し、該接着層上にONY15をラミネートすることによって積層体を得た。次に、該積層体のONY15上に接着層を形成した後、該接着層上にCPP50をラミネートし、40℃で3日間静置してエージングした。このようにして、基材(X−1)/層(Y−1)/層(Z−1)/接着層/ONY15/接着層/CPP50という構造を有する多層構造体(1−1−2)を得た。前記2つの接着層はそれぞれ、乾燥後の平均厚みが3μmとなるようにバーコーターを用いて2液型接着剤を塗工し、乾燥させることによって形成した。2液型接着剤には、三井化学株式会社製の「タケラック」(登録商標)の「A−525S」(銘柄)と三井化学株式会社製の「タケネート」(登録商標)の「A−50」(銘柄)とからなる2液反応型ポリウレタン系接着剤を用いた。
【0126】
得られた多層構造体(1−1−2)について、前記評価方法(1)〜(4)に記載の方法に従って、各層の厚み、酸素透過度、透湿度並びに屈曲処理後の酸素透過度及び透湿度を測定した。結果を表1に示す。
【0127】
<実施例1−2〜1−7、比較例1−2〜1−5>
コーティング液の種類、層(Z)の平均厚みを表1の通り変更した以外は、実施例1−1と同様の方法で多層構造体(1−2−1)〜(1−7−1)、(C1−2−1)〜(C1−5−1)並びに多層構造体(1−2−2)〜(1−7−2)、(C1−2−2)〜(C1−5−2)を作製し評価した。結果表1に示す。また、多層構造体(1−2−1)〜(1−7−1)、(C1−2−1)〜(C1−5−1)について、上記評価方法(5)に準じて赤外吸収スペクトルを測定した結果、800〜1400cm−1の領域における最大吸収波数が1108cm−1―であった。
【0128】
<比較例1−1>
コーティング液(T−1)使用しなかったこと以外は実施例1−1と同様の方法により多層構造体(C1−1−1)および(C1−1−2)を作製し、評価した。結果を表1に示す。また、多層構造体(C1−1−1)について、上記評価方法(5)に準じて赤外吸収スペクトルを測定した結果、800〜1400cm−1の領域における最大吸収波数が1108cm−1であった。
【0129】
<比較例1−6>
基材(X)として、PET12(基材(X−1))を準備した。この基材(X−1)上にアルミニウムを蒸着源とし、PVD法により、0.08μmのアルミニウム蒸着層を形成し、アルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたフィルムのアルミニウム蒸着層上に層(Z)を積層したこと以外は実施例1−1と同様の方法により多層構造体(C1−6−1)および(C1−6−2)を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0130】
<比較例1−7>
基材(X)として、PET12(基材(X−1))を準備した。この基材(X−1)上に酸化アルミニウムを蒸着源とし、PVD法により、0.04μmの酸化アルミニウム蒸着層を形成し、酸化アルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたフィルムの酸化アルミニウム蒸着層上に層(Z)を積層したこと以外は実施例1−1と同様の方法により多層構造体(C1−7−1)および(C1−7−2)を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
[実施例2]平パウチ
<実施例2−1>
実施例1−1で作製した多層構造体(1−1−2)を幅120mm×120mmに裁断し、CPP層が内側になるように2枚の多層構造体を重ね合わせ、長方形の3辺をヒートシールすることによって平パウチ(2−1−1)を形成した。その平パウチに水100mLを充填した。得られた平パウチについて、40℃90%RHで30日間保管前後の酸素透過度を測定したところ、保管後も保管前と同様の酸素透過度を維持していた。
【0133】
[実施例3]輸液バッグ
<実施例3−1>
実施例1−1で作製した多層構造体(1−1−2)から、120mm×100mmの多層構造体を2枚切り出した。続いて、切り出した2枚の多層構造体を、CPP層が内側になるように重ね合わせ、周縁をヒートシールするとともに、ポリプロピレン製のスパウト(口栓部材)をヒートシールによって取り付けて、図3と同様の構造を備えた輸液バッグ(3−1−1)を作製した。輸液バッグ(3−1−1)に水100mLを充填した。得られた輸液バッグについて、40℃90%RHで30日間保管前後の酸素透過度を測定したところ、保管後も保管前と同様の酸素透過度を維持していた。
【0134】
[実施例4]容器用蓋材
<実施例4−1>
実施例1−1で作製した多層構造体(1−1−2)から、直径100mmの円形の多層構造体を切り取り、容器用の蓋材とした。また、容器本体として、フランジ付きの容器(東洋製罐株式会社製、「ハイレトフレックス」(登録商標)、「HR78−84」(商品名))を準備した。この容器は、上面の直径が78mmで高さが30mmのカップ形状を有する。容器の上面は解放されており、その周縁に形成されたフランジ部の幅は6.5mmである。容器は、オレフィン層/スチール層/オレフィン層の3層の積層体によって構成されている。次に、上記容器本体に水をほぼ満杯に充填し、蓋材をフランジ部にヒートシールして、蓋付き容器(4−1−1)を得た。このとき、蓋材のCPP層がフランジ部に接触するように配置して蓋材をヒートシールした。蓋付き容器(4−1−1)について、40℃90%RHで30日間保管前後の酸素透過度を測定したところ、保管後も保管前と同様の酸素透過度を維持していた。
【0135】
[実施例5]インモールドラベル容器
<実施例5−1>
2枚のCPP100のそれぞれに、乾燥後の厚さが3μmとなるようにバーコーターを用いて2液型接着剤を塗工して乾燥させた。2液型接着剤には、三井化学株式会社製の「タケラック」(登録商標)の「A−525S」と三井化学株式会社製の「タケネート」(登録商標)の「A−50」とからなる2液反応型ポリウレタン系接着剤を用いた。次に、2枚のCPP100と実施例1−1の多層構造体(1−1−1)とをラミネートし、40℃で3日間静置してエージングして、CPP100/接着層/基材(X−1)/層(Y−1)/層(Z−1)/接着層/CPP100という構造を有する多層ラベル(5−1−1)を得た。
【0136】
多層ラベル(5−1−1)を容器成形型のメス型部の内壁表面の形状にあわせて切断し、メス型部の内壁表面に取り付けた。次に、オス型部をメス型部に押し込んだ。次に、溶融させたポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製の「ノバテック」(登録商標)の「EA7A」)をオス型部とメス型部との間のキャビティに220℃で注入して、射出成形を実施し、目的の容器(5−1−2)を成形した。容器本体の厚さは700μmであり、表面積は83cmであった。容器の外側全体が多層ラベル(5−1−1)で覆われ、つなぎ目は多層ラベル(5−1−1)が重なり、多層ラベル(5−1−1)が容器の外側を覆わない箇所はなかった。容器(5−1−2)の外観は良好であった。
【0137】
[実施例6]押出しコートラミネート
<実施例6−1>
実施例1−1において多層構造体(1−1−1)上の層(Z−1)上に接着層を形成した後、ポリエチレン樹脂(密度;0.917g/cm、メルトフローレート;8g/10分)を厚さが20μmになるように該接着層上に295℃で押出しコートラミネートして、基材(X―1)/層(Y−1)/層(Z−1)/接着層/ポリエチレンという構造を有するラミネート体(6−1−1)を得た。上記の接着層は、乾燥後の厚さが0.3μmとなるようにバーコーターを用いて2液型接着剤を塗工し、乾燥させることによって形成した。この2液型接着剤には、三井化学株式会社製の「タケラック」(登録商標)の「A−3210」と三井化学株式会社製の「タケネート」(登録商標)の「A−3070」とからなる2液反応型ポリウレタン系接着剤を用いた。ラミネート体(6−1−1)について、40℃90%RHで30日間保管前後の酸素透過度を測定したところ、保管後も保管前と同様の酸素透過度を維持していた。
【0138】
[実施例7]充填物の影響
<実施例7−1>
実施例2−1で作製した平パウチ(2−1−1)に1.5%エタノール水溶液500mLを充填し、40℃90%RHで30日間保管前後の酸素透過度を測定したところ、保管後も保管前と同様の酸素透過度を維持していた。
【0139】
<実施例7−2〜7−9>
1.5%エタノール水溶液500mLの代わりに他の充填物500mLを平パウチ(2−1−1)に充填したことを除き、実施例7−1と同様に40℃90%RHで30日間保管前後の酸素透過度を測定した。他の充填物としては、1.0%エタノール水溶液(実施例7−2)、食酢(実施例7−3)、pH2のクエン酸水溶液(実施例7−4)、食用油(実施例7−5)、ケチャップ(実施例7−6)、醤油(実施例7−7)、しょうがペースト(実施例7−8)を用いた。いずれの場合も、保管後も保管前と同様の酸素透過度を維持していた。さらに、実施例5−1で作製した蓋付き容器(5−1−2)にみかんシロップをほぼ満杯に充填し、実施例7−1と同様に40℃90%RHで30日間保管前後の酸素透過度を測定したところ、保管後も保管前と同様の酸素透過度を維持していた。
【0140】
実施例7−1〜7−9から明らかなように、本発明の包装材は、様々な食品を充填した状態で、40℃90%RHで30日間保管しても、同様の酸素透過度を維持していた。
【0141】
[実施例8]真空断熱体
<実施例8−1>
CPP50上に、実施例5−1で用いた2液型接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。このCPPと実施例1−1で作製した多層構造体(1−1−1)のPET層とを貼り合せることによって積層体(8−1−1)を得た。続いて、ONY15の上に、前記2液反応型ポリウレタン系接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。そして、このONYと積層体(8−1−1)とを貼り合わせることによって、CPP50/接着層/基材(X−1)/層(Y−1)/層(Z−1)/接着層/ONY15、という構造を有する多層構造体(8−1−2)を得た。
【0142】
多層構造体(8−1−2)を裁断し、サイズが700mm×300mmであるラミネート体を2枚得た。その2枚のラミネート体をCPP層同士が内面となるように重ね合わせ、3方を10mm幅でヒートシールして3方袋を作製した。次に、3方袋の開口部から断熱性の芯材を充填し、真空包装機を用いて20℃、内部圧力10Paの状態で3方袋を密封して、真空断熱体(8−1−3)を得た。断熱性の芯材にはシリカ微粉末を用いた。真空断熱体(8−1−3)を40℃、15%RHの条件下において360日間放置した後、ピラニー真空計を用いて真空断熱体の内部の圧力を測定した結果、37.0Paであった。
【0143】
<実施例8−2>
多層構造体(1−1−1)の層(Z)上に、実施例5−1で用いた2液型接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。この多層構造体(1−1−1)とONY15とを貼り合せることによって積層体(8−2−1)を得た。続いて多層構造体(8−2−1)のONY15上に前記2液反応型ポリウレタン系接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。そして、この積層体(8−2−1)とVM―XLのアルミ蒸着面とを貼り合せることによって積層体(8−2−2)を得た。さらに、LLDPE50上に前記2液反応型ポリウレタン系接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。そして、このLLDPE50と積層体(8−2−2)のVM―XL面を貼り合せることによって、基材(X)/層(Y)/層(Z)/接着層/ONY/接着層/VM−XL/接着層/LLDPE50という構造を有する積層体(8−2−3)を得た。
【0144】
多層構造体(8−2−3)を裁断し、サイズが200mm×200mmであるラミネート体を2枚得た。その2枚のラミネート体をLLDPE50同士が内面となるように重ね合わせ、3方を10mm幅でヒートシールして3方袋を作製した。次に、3方袋の開口部から断熱性の芯材を充填し、真空包装機を用いて20℃、内部圧力10Paの状態で3方袋を密封して、真空断熱体(8−2−4)を得た。断熱性の芯材にはグラスファイバーを用いた。真空断熱体(8−2−4)を70℃、90%RHの条件下において2週間放置した前後で熱伝導率測定装置を用いて熱伝導率を測定した結果、放置した前後での熱伝導率差は4.4mW/mKであった。
【0145】
<実施例8−3>
多層構造体(1−1−1)の層(Z)上に、実施例5−1で用いた2液型接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。この多層構造体(1−1−1)と積層体(8−2−1)の基材(X)側を貼り合せることによって積層体(8−3−1)を得た。
続いて多層構造体(8−3−1)のONY15上に前記2液反応型ポリウレタン系接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。そして、この積層体(8−3−1)とVM―XLのアルミ蒸着面とを貼り合せることによって積層体(8−3−2)を得た。さらに、LLDPE50上に前記2液反応型ポリウレタン系接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって接着層を形成した。そして、このLLDPE50と積層体(8−3−2)のVM―XL面を貼り合せることによって、基材(X)/層(Y)/層(Z)/接着層/基材(X)/層(Y)/層(Z)/接着層/VM−XL/接着層/LLDPE50という構造を有する積層体(8−3−3)を得た。
【0146】
多層構造体(8−3−3)を裁断し、サイズが200mm×200mmであるラミネート体を2枚得た。その2枚のラミネート体をLLDPE50同士が内面となるように重ね合わせ、3方を10mm幅でヒートシールして3方袋を作製した。次に、3方袋の開口部から断熱性の芯材を充填し、真空包装機を用いて20℃、内部圧力10Paの状態で3方袋を密封して、真空断熱体(8−3−4)を得た。断熱性の芯材にはグラスファイバーを用いた。真空断熱体(8−3−4)を70℃、90%RHの条件下において2週間放置した前後で熱伝導率測定装置を用いて熱伝導率を測定した結果、放置した前後での熱伝導率差は3.6mW/mKであった。
【0147】
[実施例9]保護シート
<実施例9−1>
実施例1−1で作製した多層構造体(1−1−1)上に接着層を形成し、該接着層上にアクリル樹脂フィルム(厚さ50μm)をラミネートすることによって積層体を得た。続いて、該積層体の多層構造体(1−1−1)上に接着層を形成した後、PET50をラミネートして、PET50/接着層/基材(X−1)/層(Y−1)/層(Z−1)/接着層/アクリル樹脂フィルム、という構成を有する保護シート(9−1−1)を得た。前記2つの接着層はそれぞれ、2液型接着剤を乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、乾燥させることによって形成した。2液型接着剤には、三井化学株式会社製の「タケラック」(登録商標)の「A−1102」と三井化学株式会社製の「タケネート」(登録商標)の「A−3070」とからなる2液反応型ポリウレタン系接着剤を用いた。
【0148】
続いて、得られた保護シート(9−1−1)の耐久性試験として、恒温恒湿試験機を用いて、大気圧下、85℃、85%RHの雰囲気下に1000時間保護シートを保管する試験(ダンプヒート試験)を行った結果、保護シート(9−1−1)は層間剥離の発生なく良好な外観を保持した。