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特開2021-91818ポリビニルアルコールフィルム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-91818(P2021-91818A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコールフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20210521BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20210521BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210521BHJP
【FI】
   C08L29/04 B
   C08L1/02
   C08J5/18CEP
   C08J5/18CEX
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-224228(P2019-224228)
(22)【出願日】2019年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】川崎 絵美
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 孝徳
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA29
4F071AA81
4F071AA85
4F071AD01
4F071AE10
4F071AF02Y
4F071AF13Y
4F071AF30Y
4F071AG28
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J002AB012
4J002AB033
4J002BE021
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】延伸浴中における延伸応力が大きく、且つ高い透明性を有するPVAフィルム、及びこのようなPVAフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール(A)、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含み、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下であり、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量が0.01質量部以上であるポリビニルアルコールフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール(A)、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含み、
ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下であり、
ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量が0.01質量部以上である、ポリビニルアルコールフィルム。
【請求項2】
膨潤度が130%以上300%以下である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項3】
結晶セルロース(B)の平均粒径が1μm以下である、請求項1又は請求項2に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項4】
水溶性セルロース誘導体(C)がカルボキシメチルセルロースの塩である、請求項1、請求項2又は請求項3に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項5】
製膜原液を用いて製膜する工程を備えるポリビルアルコールフィルムの製造方法であって、
上記製膜原液がポリビニルアルコール(A)、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含み、
上記製膜原液におけるポリビニルアルコール(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下であり、
上記製膜原液におけるポリビニルアルコール(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量が0.01質量部以上である、ポリビルアルコールフィルムの製造方法。
【請求項6】
結晶セルロース(B)の平均粒径が1μm以下である、請求項5に記載のポリビニルアルコールフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過及び遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は、偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護フィルムが貼り合わされた構造を有している。偏光板を構成する偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸して配向させた延伸フィルムにヨウ素系色素(IやI等)や二色性有機染料といった二色性色素が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時に二色性色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後に二色性色素を吸着させたりするなどして製造される。
【0003】
LCDは、電卓及び腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶テレビ、携帯電話、タブレット端末などの広範囲において用いられるようになっている。近年の液晶テレビの高性能化等に伴い、偏光フィルムには、従来よりも高い偏光性能が求められている。
【0004】
PVAフィルムを一軸延伸しながら二色性色素を吸着させて偏光フィルムを作製する場合、偏光性能の高い偏光フィルムを得るためには、PVAをより配向させることが望ましい。延伸によって配向性の高い偏光フィルムを得るためには、延伸浴中における延伸応力が大きいPVAフィルムを用いることが効果的である。PVAフィルムの延伸浴中における延伸応力を大きくし、PVAをより配向させるためには、PVAフィルムの耐熱水性を高めることが有効であり、熱処理を施すことによってPVAフィルムの耐熱水性が高まることが知られている。一方、偏光フィルムの製造過程では、膨潤させたフィルム内へ二色性色素を吸着させるために、PVAフィルムには水膨潤性が高いことも要求される。しかし、熱処理を施すことによって耐熱水性を高める方法では、PVAの結晶性が高まり、水膨潤性が低下する傾向にある。これに対し、水膨潤性を保ったままPVAフィルムの耐熱水性を高める方法として、特許文献1には、特定のセルロースナノファイバーをPVAフィルムに添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−242063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載された方法で得られたPVAフィルムは、十分な水膨潤性を保ったまま耐熱水性は高められており、延伸浴中における延伸応力も大きいものとなる。しかし、特許文献1に記載された方法で得られたPVAフィルムは、透明性が低く、偏光フィルムの偏光性能等に好ましくない影響を及ぼし得るという不都合を有することが確認された(比較例3参照)。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、延伸浴中における延伸応力が大きく、且つ高い透明性を有するPVAフィルム、及びこのようなPVAフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、PVAフィルムに結晶セルロース及び水溶性セルロース誘導体を添加することで、十分な透明性を保ったまま、偏光フィルム製造工程における延伸浴中を想定した条件下での延伸応力が大きくなることを見出し、これらの知見に基づいて更に検討を重ねて本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]PVA(A)、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含み、PVA(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下であり、PVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量が0.01質量部以上である、PVAフィルム;
[2]膨潤度が130%以上300%以下である、上記[1]のPVAフィルム;
[3]結晶セルロース(B)の平均粒径が1μm以下である、上記[1]又は[2]のPVAフィルム;
[4]水溶性セルロース誘導体(C)がカルボキシメチルセルロースの塩である、上記[1]、[2]又は[3]のPVAフィルム;
[5]製膜原液を用いて製膜する工程を備えるPVAフィルムの製造方法であって、上記製膜原液がPVA(A)、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含み、上記製膜原液におけるPVA(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下であり、上記製膜原液におけるPVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量が0.01質量部以上である、PVAフィルムの製造方法;
[6]結晶セルロース(B)の平均粒径が1μm以下である、上記[5]のPVAフィルムの製造方法;
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、延伸浴中における延伸応力が大きく、且つ高い透明性を有するPVAフィルム、及びこのようなPVAフィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0012】
<PVAフィルム>
本発明のPVAフィルムは、PVA(A)、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含む。本発明のPVAフィルムにおけるPVA(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量は0.1質量部以上20質量部以下であり、PVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量は0.01質量部以上である。
【0013】
(PVA(A))
PVA(ポリビニルアルコール)(A)は、通常、本発明のPVAフィルムの主成分である。主成分とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。本発明のPVAフィルムにおけるPVA(A)の含有量としては、例えば50質量%以上99質量%が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい場合もある。
【0014】
PVA(A)は、ビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)を主の構造単位として有する重合体である。PVA(A)は、ビニルアルコール単位の他、ビニルエステル単位やその他の単位を有していてもよい。
【0015】
PVA(A)としては、ビニルエステルの1種又は2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等が挙げられる。ビニルエステルの中でも、製造の容易性、入手の容易性、コスト等の点から、分子中にビニルオキシカルボニル基(HC=CH−O−CO−)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
【0016】
ポリビニルエステルは、単量体として1種又は2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたポリビニルエステルがより好ましい。本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、1種又は2種以上のビニルエステルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合樹脂であってもよい。
【0017】
共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の割合の上限は、共重合樹脂を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましく、1モル%がよりさらに好ましい。
【0018】
ビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸又はその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミド又はその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、又はその塩、エステル若しくは酸無水物;イタコン酸、又はその塩、エステル若しくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸又はその塩などを挙げることができる。
【0019】
ポリビニルエステルは、上記単量体の1種又は2種以上に由来する構造単位を有することができる。
【0020】
PVA(A)としては、グラフト共重合がされていないものを好ましく使用することができる。但し、本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、PVA(A)は1種又は2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。グラフト共重合は、ポリビニルエステル及びそれをけん化することにより得られるPVAのうちの少なくとも一方に対して行うことができる。グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体;不飽和スルホン酸又はその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリビニルエステル又はPVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステル又はPVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
【0021】
PVA(A)はそのヒドロキシ基の一部が架橋されていてもよいし、架橋されていなくてもよい。また、PVA(A)はそのヒドロキシ基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよい。
【0022】
PVA(A)の重合度の下限としては、1,000が好ましく、1,500がより好ましく、1,700がさらに好ましい。PVA(A)の重合度が上記下限以上であることにより、PVAフィルムの柔軟性を向上させることができる。一方、この重合度の上限としては、10,000が好ましく、8,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。PVA(A)の重合度が上記上限以下であることにより、PVA(A)の製造コストの上昇や製膜時における不良発生を抑制することができる。なお、PVAの重合度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
【0023】
PVA(A)のけん化度は、PVAフィルムや得られる偏光フィルム等の耐湿熱性が良好になることから、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、99.3モル%以上であることが特に好ましい。PVA(A)のけん化度の上限は100モル%であってよい。なお、PVA(A)のけん化度とは、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対するビニルアルコール単位のモル数の割合(モル%)をいう。けん化度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
【0024】
(結晶セルロース(B))
本発明のPVAフィルムは、結晶セルロース(B)を含有することにより、延伸浴中における延伸応力を大きくすることができる。また、結晶セルロース(B)と共に水溶性セルロース誘導体(C)を含有させることにより、微細な結晶セルロース(B)の分散性が高まり、透明性を高めることができる。
【0025】
結晶セルロース(B)は、通常、針状の結晶体である。結晶セルロース(B)は、セルロースナノ結晶等と呼ばれるものであってよい。結晶セルロース(B)のサイズ(1つの針状結晶体のサイズ)としては、例えば平均幅が1nm以上50nm以下、平均長さが100nm以上1,000nm以下である。結晶セルロース(B)の平均幅は10nm以上50nm以下であってよく、平均長さは100nm以上500nm以下であってよい。なお、結晶セルロース(B)の平均幅及び平均長さは、それぞれ電子顕微鏡で観測される任意の10個の結晶セルロース(B)(針状結晶体)の測定値の平均値とする。また、結晶セルロース(B)は、例えば、木材を細かく砕いてナノフィブリルにし、強酸で処理して非結晶部分を取り除くことなどで得られる。なお、微細なセルロースとしては、結晶セルロースの他、セルロースナノファイバーが知られている。セルロースナノファイバーは、通常、平均幅が4nm以上100nm以下、平均長さが5μm以上の繊維状物質である点で、結晶セルロース(B)とは異なる。また、結晶セルロース(B)は実質的に結晶部分のみからなるのに対し、セルロースナノファイバーは結晶部分と非結晶部分とを有する点が異なる。例えば結晶セルロース(B)中の結晶部分は、99質量%以上であってよく、100質量%であってよい。
【0026】
結晶セルロース(B)は、特に制限されず、各種公知のものを適宜に選定して使用できる。また、結晶セルロース(B)は、市販品を用いることができる。
【0027】
本発明のPVAフィルムにおけるPVA(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量は、0.1質量部以上20質量部以下であり、0.3質量部以上18質量部以下が好ましく、0.5質量部以上16質量部以下がより好ましく、1質量部以上14質量部以下がさらに好ましく、3質量部以上10質量部以下がよりさらに好ましい。さらには、上記含有量は、5質量部以上又は10質量部以上が好ましい場合もあり、5質量部以下が好ましい場合もある。PVA(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量を0.1質量部以上とすることで、PVAフィルムの延伸浴中における延伸応力を大きくすることができる。一方、結晶セルロース(B)の含有量を20質量部以下とすることで、PVAフィルムが十分な柔軟性を有するものとなり、取扱性等が高まる。結晶セルロース(B)の含有量を20質量部以下とすることで、PVAフィルムの透明性も高まる。結晶セルロース(B)の含有量は、PVAフィルムの延伸応力、柔軟性、透明性等を考慮し、PVA(A)100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の範囲内で適宜設定することができる。
【0028】
結晶セルロース(B)の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、900nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることが更に好ましい。結晶セルロース(B)の平均粒径が1μm以下であることで、PVAフィルムの透明性を高めることができる。結晶セルロース(B)の平均粒径の下限としては、例えば100nmであってよく、300nmであってもよい。
【0029】
結晶セルロース(B)の平均粒径は、結晶セルロース(B)を含むPVAフィルムを水に溶解し、結晶セルロース(B)を水に分散させて測定することができる。この平均粒径は、粒子径分布測定機等を用いた動的光散乱法により測定され、キュムラント解析により求められる粒子径の平均値とする。また、この測定される結晶セルロース(B)の平均粒径は、針状結晶体である一次粒子が凝集してなる二次粒子の平均粒径であってよい。
【0030】
(水溶性セルロース誘導体(C))
本発明のPVAフィルムにおいては、結晶セルロース(B)と共に水溶性セルロース誘導体(C)が含有されているため、微細な結晶セルロース(B)の分散性が高まり、透明性を高めることができる。
【0031】
水溶性セルロース誘導体(C)は、セルロースを変性して得られる水溶性の高分子である。水溶性セルロース誘導体(C)は、塩の状態のものであってよく、水溶性の点から塩の状態のものであることが好ましい。換言すれば、水溶性セルロース誘導体(C)は、イオン性のものが好ましい。水溶性セルロース誘導体(C)としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMCの塩、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等が挙げられ、CMCの塩が好ましい。CMCの塩を用いることで、結晶セルロース(B)の分散性がより高まり、PVAフィルムの透明性をより高めることができる。
【0032】
CMCの塩としては、ナトリウム塩(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、カルシウム塩(カルボキシメチルセルロースカルシウム)、アンモニウム塩(カルボキシメチルセルロースアンモニウム)等が挙げられ、ナトリウム塩及びカルシウム塩が好ましい。
【0033】
本発明のPVAフィルムにおけるPVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量は、0.01質量部以上であり、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。PVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量を0.01質量部以上とすることで、結晶セルロース(B)の分散性を高め、PVAフィルムの透明性が高まる。PVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば20質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5質量部、3質量部又は2質量部がさらに好ましい場合もある。PVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量を上記上限以下とすることで、膨潤度が向上しすぎることなどを抑制することができる。
【0034】
本発明のPVAフィルムにおける結晶セルロース(B)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量の下限は、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。結晶セルロース(B)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量を上記下限以上とすることで、結晶セルロース(B)の分散性をより高め、PVAフィルムの透明性がより高まる。一方、結晶セルロース(B)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量の下限は、例えば50質量部であってよく、30質量部又は20質量部であってよい。
【0035】
(その他の成分)
本発明のPVAフィルムは、可塑剤を含んでいてもよい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、PVAフィルムの取り扱い性や延伸性の向上等を図ることができる。可塑剤としては多価アルコールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの中でも、PVAフィルムの延伸性がより良好になることからグリセリンが好ましい。また、可塑剤は1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
本発明のPVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA(A)100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上17質量部以下がより好ましく、4質量部以上14質量部以下がさらに好ましい。可塑剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して1質量部以上であることによりPVAフィルムの延伸性が向上する。一方、可塑剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して20質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に可塑剤がブリードアウトしてPVAフィルムの取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
【0037】
また、本発明のPVAフィルムを後述する製膜原液を用いて製造する場合には、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に金属ロールやベルトを使用した際、これらの金属ロールやベルトからのPVAフィルムの剥離が容易になることから、当該製膜原液中に界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤が配合された製膜原液からPVAフィルムを製造した場合には、当該PVAフィルム中には界面活性剤が含有され得る。PVAフィルムを製造するための製膜原液に配合される界面活性剤、ひいてはPVAフィルム中に含有される界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからの剥離性の観点から、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0038】
アニオン性界面活性剤としては、例えばラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型等が好ましい。
【0039】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型等が好ましい。
【0040】
これらの界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
本発明のPVAフィルムを製造するための製膜原液中に界面活性剤を配合する場合、製膜原液中における界面活性剤の含有量、ひいてはPVAフィルム中における界面活性剤の含有量は製膜原液又はPVAフィルムに含まれるPVA(A)100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましく、0.02質量部以上0.3質量部以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して0.01質量部以上であることにより製膜性及び剥離性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して0.5質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
【0042】
本発明のPVAフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤等、上記したPVA(A)、結晶セルロース(B)、水溶性セルロース誘導体(C)、可塑剤及び界面活性剤以外の他の成分を含有していてもよい。但し、これらの他の成分の含有量は、PVA(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましいことがあり、1質量部以下又は0.1質量部以下が好ましいこともある。
【0043】
(サイズ、物性、用途等)
本発明のPVAフィルムの平均厚さの上限は特に制限されないが、例えば100μmであり、80μmが好ましく、60μmがより好ましく、40μmがさらに好ましい。一方、この平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。PVAフィルムの平均厚さが上記範囲であることで、取り扱い性などを高めることができる。
【0044】
本発明のPVAフィルムの形状に特に制限はないが、偏光フィルムを生産性良く連続的に製造することができることから、長尺のフィルムであることが好ましい。当該長尺のフィルムの長さは特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5m以上20,000m以下の範囲内にすることができる。当該長尺のフィルムの幅に特に制限はなく、例えば50cm以上とすることができるが、近年幅広の偏光フィルムが求められていることから1m以上であることが好ましく、2m以上であることがより好ましく、4m以上であることが更に好ましい。当該長尺のフィルムの幅の上限に特に制限はないが、当該幅があまりに広すぎると、実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に、均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
【0045】
本発明のPVAフィルムの形状に特に制限はなく、単層フィルムであってもよく、多層フィルム(積層体)であってもよいが、積層(コート等)作業の煩雑さ・コストなどの観点から、単層フィルムであることが好ましい。
【0046】
本発明のPVAフィルムは、通常、延伸されていないフィルム(非延伸フィルム、未延伸フィルム)である。本発明のPVAフィルムが延伸されていないフィルムであることで、偏光フィルム等の原反フィルム等として好適に用いることができる。なお、延伸された形態のPVAフィルムも本発明の範囲内である。
【0047】
本発明のPVAフィルムの膨潤度は、偏光フィルムの生産性や偏光性能の観点などから、130%以上300%以下であることが好ましく、150%以上280%以下であることがより好ましく、170%以上260%以下であることがさらに好ましい。特に膨潤度を130%以上とすることで、延伸浴中で十分に膨潤し、二色性色素が吸着されやすくなるため、高い偏光性能を有する偏光フィルムを製造することが可能となる。PVAフィルムの膨潤度は、例えば熱処理の条件等により調整することができる。具体的には、熱処理の条件を強くすることにより、膨潤度を小さい値に調整することができる。
【0048】
PVAフィルムの膨潤度はPVAフィルムのサンプルを30℃の蒸留水中に15分間浸漬した後の質量を、浸漬後105℃で16時間乾燥した後の質量で除すことによって百分率として求めることができる。この膨潤度は、具体的には実施例において後述する方法により測定することができる。なお、上記PVAフィルムのサンプルとしては、代表位置としてPVAフィルムの幅方向の中央部から採取すればよい。
【0049】
本発明のPVAフィルムの軟化点は、偏光フィルムの生産性や偏光性能の観点などから、60℃以上80℃以下が好ましく、65℃以上75℃以下がより好ましい。
【0050】
PVAフィルムの軟化点はPVAフィルムのサンプルを25℃の蒸留水中に配置し、5℃/分の昇温速度で昇温した際の熱水変形温度として求めることができる。この軟化点は、具体的には実施例において後述する方法により測定することができる。なお、上記PVAフィルムのサンプルとしては、代表位置としてPVAフィルムの幅方向の中央部から採取すればよい。
【0051】
本発明のPVAフィルムのヘイズは、光学特性や得られる偏光フィルムの偏光性能の観点などから、2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましい。なお、このヘイズの下限としては、例えば0.1%であってよく、0.3%であってよい。ヘイズは、PVAフィルムに可視光を照射したときの全光線透過率に対する拡散透過率の割合(百分率)として求めることができる。このヘイズは、具体的には実施例において後述する方法により測定することができる。なお、ヘイズを測定する際のPVAフィルムのサンプルとしては、代表位置としてPVAフィルムの幅方向の中央部から採取すればよい。
【0052】
本発明のPVAフィルムは、延伸浴中における延伸応力が大きく、且つ高い透明性を有する。また、本発明のPVAフィルムは、熱処理等により膨潤度を好適な範囲に調整することなどにより、良好な水膨潤性を有するものとなる。従って当該PVAフィルムからは、高い偏光性能を有する偏光フィルムを製造することができ、偏光フィルムを製造するための原反フィルムとして好適に用いることができる。なお、本発明のPVAフィルムの用途は特に限定されるものでは無く、光学フィルムや延伸フィルム等の原反フィルム、農業用フィルム、包装用フィルム等に用いることもできる。
【0053】
<PVAフィルムの製造方法>
本発明のPVAフィルムの製造方法は特に限定されず、製膜後のフィルムの厚み及び幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができる。例えば本発明のPVAフィルムの製造方法は、製膜原液を用いて製膜する工程を備えるPVAフィルムの製造方法であって、上記製膜原液がPVA(A)、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含み、上記製膜原液におけるPVA(A)100質量部に対する結晶セルロース(B)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下であり、上記製膜原液におけるPVA(A)100質量部に対する水溶性セルロース誘導体(C)の含有量が0.01質量部以上である。上記製膜原液は、通常、液体媒体を含有し、必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤及び他の成分をさらに含有していてよい。製膜原液を調整する際は、含有される全ての成分が均一に混合されていることが好ましい。
【0054】
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。これらのうちでも、環境に与える負荷が小さいことや回収性の点から水が好ましい。
【0055】
製膜原液に含まれる各成分の具体的形態及び好適形態は、本発明のPVAフィルムに含まれる各成分と同様である。また、製膜原液に含まれるPVA(A)及び液体媒体以外の各成分のPVA(A)に対する具体的含有量及び好適含有量も、本発明のPVAフィルムに含まれる各成分と同様である。
【0056】
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によっても異なるが、50質量部以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。
【0057】
上記した製膜原液を用いてPVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えばキャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法等が挙げられ、キャスト製膜法及び押出製膜法が好ましい。これらの製膜方法は1種のみを採用しても、2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でも押出製膜法が、厚み及び幅が均一で物性の良好なPVAフィルムが得られることからより好ましい。PVAフィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
【0058】
熱処理温度に特に制限はなく、PVAフィルムの膨潤度等に応じて適宜調整すればよい。熱処理温度としては、あまりに高いとPVAフィルムの変色や劣化がみられることから、210℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることが更に好ましい。熱処理温度の下限としては、例えば100℃であり、120℃であってもよい。
【0059】
熱処理時間に特に制限はなく、PVAフィルムの膨潤度に応じて適宜調整すればよいが、本発明のPVAフィルムを効率よく製造する観点から、1秒以上30分以下が好ましく、3秒以上15分以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0060】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において採用された各評価方法を以下に示す。
【0061】
[PVAフィルムのヘイズ]
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルムの幅方向中央部から、幅方向に5cm、長さ方向に5cmの正方形のサンプルを切り出し、スガ試験機株式会社製ヘイズメーター「HZ−1」を使用して当該サンプルのヘイズを測定した。
【0062】
[PVAフィルムの膨潤度]
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルムを約1.5g採取し、これを約2mm×10cmに裁断した。裁断されたPVAフィルムを、メッシュ(100メッシュ:株式会社NBCメッシュテック製、N−N0110S 115)に包み、30℃の蒸留水中に15分間浸漬後、3,000rpmで5分間遠心脱水を行い、メッシュを取り除いてから質量(W1)を求めた。続いて、その裁断されたPVAフィルムを105℃の乾燥機で16時間乾燥した後、質量(W2)を求めた。そして、下記式によりPVAフィルムの膨潤度を算出した。
膨潤度(%)=((W1)/(W2))×100
【0063】
[PVAフィルムの軟化点]
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルムの幅方向中央部から、幅方向に3cm、長さ方向に3cmの正方形のサンプルを切り出し、第一理化株式会社製自動軟化点測定装置「EX−820」を使用して当該サンプルの軟化点を測定した。具体的には、上記サンプルを、中央に直径1cmの円形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板と、中央に1cm×2cmの長方形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板との間に挟み、円形の穴のあいたステンレス板の方を上面にして架台に設置した。そして、円形の穴の中央に位置するフィルム上にJIS B 1501:2009に定める鋼球(呼び:3/8(直径9.525mm)、等級:G60、質量:3.5g±0.05g)を載せた。続いて25℃の蒸留水を750mL入れ、毎分5℃で昇温し、サンプルが架台から25mmの位置まで降下したときの温度をフィルムの軟化点とした。
【0064】
[結晶セルロース(B)の平均粒径]
以下の各実施例又は比較例で用いたPVA(A)と混合する前の結晶セルロース(B)の水分散液を測定可能な濃度に希釈した。この希釈液に対して、大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒径測定システム「ELSZ」を用いて、25℃の環境下で動的光散乱を測定し、キュムラント解析を行うことで動的光散乱法による平均粒径を求めた。なお、測定溶媒の屈折率、粘度、比誘電率の値として、水の屈折率1.33、水の粘度0.89cP、水の比誘電率78.3を用いた。また、ノイズカットレベルを0.3%、積算回数を70回、ピンホールを50μmに設定した。
なお、以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルムを水に溶解後、測定可能な濃度に調整して、上記と同様に平均粒径を測定したが、上記の水分散液を用いて測定した平均粒径と同じ値であった。
【0065】
[ホウ酸水溶液(延伸浴)中での延伸応力]
偏光フィルム製造工程における延伸浴中のPVAフィルムの応力を評価するため、以下のホウ酸水溶液中での引張試験により、PVAフィルムの延伸応力を測定した。
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルムの幅方向中央部から、幅方向に3cm、長さ方向に7cmのサンプルを切り出し、島津製作所社製引張試験装置「AUTOGRAPH AG−I」を使用して、ホウ酸水溶液中におけるPVAフィルムの引張応力を測定した。具体的には、上記のサンプルをチャック間3cmで引張試験装置に設置し、長さ方向に引張試験を行った。なお、引張試験は、50℃のホウ酸4%水溶液中で、引張速度72mm/min.で行い、ひずみ400%における延伸応力を求めた。
【0066】
[実施例1]
<結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含む水分散液の調整>
結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)の混合粉末である旭化成社製の「セオラスRC−591」(結晶セルロース:カルボキシメチルセルロースナトリウム=89:11(質量比))を用いた。まず、水100質量部に対してセオラスRC−591を1.5質量部で水に分散させた後、ハイフレックスディスパーサーModel:HG92(エスエムテー社製)を用いて、18,000rpmで20分間攪拌し、水分散液を得た。その後、遠心分離機を用いて、48,000xgで10分間遠心分離を行い、上澄み液を採取した。この上澄み液を用いて測定した結晶セルロース(B)の平均粒径は、796nmであった。なお、上澄み液の固形分濃度を測定し、この上澄み液を以下の製膜原液の作製に用いた。
【0067】
<製膜原液(PVA水溶液)の作製>
PVA(A)(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物、重合度2,400、けん化度99.95モル%)と、上記で採取した結晶セルロース(B)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(C)水分散液の上澄み液(PVA100質量部に対して、結晶セルロース(B)が8質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(C)が1質量部)と、グリセリン(PVA100質量部に対して10質量部)と、界面活性剤(PVA100質量部に対して0.03質量部)と、水とを混合し、PVA(A)等を90℃で4時間かけて溶解させ、製膜原液を得た。その後、脱泡のため、製膜原液を85℃で16時間保温した。
【0068】
<PVAフィルムの作製>
上記で得られた製膜原液を、80℃の金属ロール上で乾燥して、未熱処理PVAフィルムを得た。その後、148℃の乾燥機で10分間熱処理を行い、膨潤度200%、平均厚さが30μmのPVAフィルムを得た。
得られたPVAフィルムついて、上記した方法により、ヘイズ、膨潤度、軟化点、及びホウ酸水溶液中での延伸応力を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例2]
製膜原液における結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)の含有量を、PVA100質量部に対して、それぞれ0.9質量部及び0.1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。得られたPVAフィルムについて、ヘイズ、膨潤度、軟化点、及びホウ酸水溶液中での延伸応力を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例3]
製膜原液における結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)の含有量を、PVA100質量部に対して、それぞれ17.8質量部及び2.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。得られたPVAフィルムについて、ヘイズ、膨潤度、軟化点、及びホウ酸水溶液中での延伸応力を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
製膜原液の調製において結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含有させなかったこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。得られたPVAフィルムについて、ヘイズ、膨潤度、軟化点、及びホウ酸水溶液中での延伸応力を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)を含む水分散液から、水洗により水溶性セルロース誘導体(C)を取り除き、製膜原液の調製において結晶セルロース(B)をPVA100質量部に対して8質量部含有させ、水溶性セルロース誘導体(C)を含有させなかったこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。得られたPVAフィルムについて、ヘイズ、膨潤度、軟化点、及びホウ酸水溶液中での延伸応力を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
[比較例3]
製膜原液の調製において、結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)の代わりに、セルロースナノファイバー(中越パルプ工業社製「nanoforest−S」)をPVA100質量部に対して9質量部含有させたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。得られたPVAフィルムについて、ヘイズ、膨潤度、軟化点、及びホウ酸水溶液中での延伸応力を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
[比較例4]
製膜原液における結晶セルロース(B)及び水溶性セルロース誘導体(C)の含有量を、PVA100質量部に対して、それぞれ26.7質量部及び3.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。得られたPVAフィルムは硬く脆いものであったため、各測定を中止した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示されるように、実施例1〜3のPVAフィルムは、ホウ酸水溶液(延伸浴)中での延伸応力が大きく、ヘイズも2.0%未満であり透明性が高いものであった。これらの実施例1〜3のPVAフィルムは、高い偏光性能を有する偏光フィルムが製造可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のPVAフィルムは、偏光フィルムを製造するための原反フィルム(材料フィルム)等として好適に用いることができる。