【実施例】
【0074】
一般的な膜堆積
試験室規模の原子層堆積(ALD)反応器中で、ケイ素前駆体および窒素源のアンモニアとしてアンモニアを用いて、膜の堆積を実施した。ALDサイクルの工程およびプロセス条件は下記の表3に与えられている。
【表3】
【0075】
堆積の間に、工程3〜10が、堆積されたままの炭素ドープ窒化ケイ素膜の所望の厚さが得られるまで2000回までのサイクル数に亘って、繰り返される。結果として得られる堆積されたままの膜は、この膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜に転換するように、インサイチュのアニール(アニールは、反応器内部で堆積されたままの膜に行われる)またはエクスサイチュのアニール(チャンバの外側または別箇のチャンバ中でのアニール)のいずれかに付される。行われる典型的なアニール条件は以下のとおりである:湿気アニールは、30トールで、真空下で行われる、空気アニールは、周囲温度(例えば、25℃)または約300℃で、熱盤上で行われる。
【0076】
標準の水素含有プラズマが、炭素ドープ酸化ケイ素膜を処理するのに用いられた。H
2プラズマ処理のパラメータは、以下のとおりである。
a.H
2のみのプラズマ
プラズマ振動数=13.56MHz
H
2流量=135sccm
チャンバ圧力=2トール
時間=5分間
b.H
2/Arプラズマ
プラズマ振動数=13.56MHz
H
2流量=65sccm
Ar流量=65sccm
チャンバ圧力=2トール
時間=5分間
【0077】
屈折率および厚さは、堆積の後に、エリプソメーターを用いて632.8nmで直接に測定された。バルクの膜組成は、X線光電子分光(XPS)を用いて、外来性の炭素の影響を取り除くために、表面から数ナノメートル(2〜5nm)で特性を表された。膜密度は、X線反射光測定(XRR)を用いて特性を表された。
【0078】
湿式エッチング速度プロセスは、2つの異なる濃度の希フッ化水素酸(dHF)、1:199の49%HFとDI水ならびに1:99の49%HFとDI水、の下で行われた。より希薄なHF濃度が、損傷された層の測定精度を増加させる。このプロセスの間に、熱酸化ケイ素膜は、エッチング溶液の一貫性を確実にするために使用されるのと同時にエッチングされた。
【0079】
酸素アッシングプロセスは、室温で、商業的なプラズマアッシャーPVA TePLA M4Lを用いて行われた。プロセスパラメータは、以下のとおりである:出力=100〜200W、He/O
2=1:3、圧力=600ミリトール。膜誘電率(k)は、HP4284 LCRメータに接続されたMDC 802b水銀プローブを用いて測定されたC−Vから計算される。測定は、フロント接点モードで行われ、その液体金属(水銀)は、2つの電気伝導接点を形成するように用いられた。
例1:熱ALD堆積による炭素ドープ酸化ケイ素膜の低誘電率および高酸素アッシンク抵抗
【0080】
炭素ドープ酸化ケイ素膜が、1,1,3,3−テトラクロロジシラシクロブタン(TCDSB)および1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパン(HCDSP)およびアンモニアを用いて、300℃で、表3に記載したように堆積された。
堆積の後に、この膜は、次いでエクスサイチュで、3時間、300℃で空気中で更に処理された。
【表4】
【0081】
表4には、HCDSPおよびHCDSBから堆積された膜の間の膜組成の比較が示されている。HCDSB膜は、HCDSPに比較して、比較的に大きな炭素含有量を有しており、TCDSMが、HCDSPよりも、より多くの炭素を導入するためのより良好なケイ素前駆体であることを示している。
【0082】
熱酸化ケイ素の参照のエッチング速度のdHFエッチング速度は、0.48±0.02Å/秒であり、HCDSPおよびTCDSB膜のエッチング速度は、逐次0.10Å/秒および<0.02Å/秒である。
【0083】
TDCSB膜エッチング速度は、我々の測定の検知限界以下である。より低いTDCSB膜の希HFエッチング速度(>5倍低い)は、膜中のより高い炭素含有量に整合する。
【0084】
HCDSPまたはTCDSBから堆積された炭素ドープ酸化ケイ素膜のどちらの膜誘電率も、5超である。
【0085】
HCDSPまたはTCDSBから堆積された結果として得られた炭素ドープ酸化ケイ素膜は、水素プラズマで、H
2/Arプラズマを用いた300mmの商業的なPEALD装置を用いて、前記の条件を用いて、更に処理された。HCDSPおよびTCDSB膜の両方は、プラズマ処理の後に、それぞれ3.5および3.4に低下された誘電率を有しており、水素を含むプラズマが、誘電率を低下させるのに効果的な方法であることを示している。
【0086】
これらの膜は、次いで、標準的な酸素アッシングに曝露され、次いで損傷を測定するために希HF浸漬された。ここで
図1を参照すると、
図1には、希HF中に浸漬された場合の、時間の関数として除去された膜厚を示している。
【0087】
HCDSPおよびTCDSB膜の両方は、最初の方の、減速する前の、速いエッチング速度を示しており、酸素アッシングからの表面損傷を示している。酸素アッシングは、膜からの炭素を酸化し、従って速いエッチング速度の原因となる。エッチング速度のプロファイルは、TCDSB膜についての27ÅおよびHCDSP膜についての39Åの損傷された層を示唆しており、TCDSB膜が、同じエッチング条件の下で、HCDSP膜よりもより大きな酸素アッシング抵抗であることを示唆している。
例2:1,1,3,3,−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンからの炭素ドープ酸化ケイ素膜のステップカバレージ
【0088】
パターン構造上への炭素ドープ酸化ケイ素膜が、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアから、300℃で、表3に記載したように堆積され、次いで空気雰囲気中で、300℃で、3時間のエクスサイチュ処理された。
【0089】
走査電子顕微鏡(SEM)が、1:9のアスペクト比および180nmのトレンチ開口を有するトレンチ構造に行われた。
【表5】
【0090】
1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンから堆積された炭素ドープ酸化ケイ素膜について表5に示されたステップカバレージは99%超である。
例3. 1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンを用いた熱ALD堆積によるケイ素含有膜の堆積
【0091】
ケイ素含有膜が、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアから、500℃の基材温度で、表3に記載されたプロセス工程を用いて堆積され、そして周囲条件で貯蔵された。
【0092】
膜特性、例えばXPSおよび希HF中での湿式エッチング速度が、膜堆積後の約1週間で得られた。それらの試験の結果が、表6に与えられている。
【表6】
【0093】
表6を参照すると、XPSデータは、炭素ドープ酸化ケイ素は、少量の塩素含有量(例えば、0.5原子%未満)しか有していなかったことを示している。500℃で堆積された膜は、300℃に比較してより多くの窒素含有量を有しており、一方で膜中に同様の量の炭素を保持している。300℃のより低い堆積温度においては、このプロセスは、酸化を受け易いより多くのSi−NH
2またはSi−NH−Si断片を与える可能性があることが信じられる。より高い500℃の温度での堆積は、他方で、酸化により抵抗性のあるより強いSi−N
x網目を形成するのに十分なエネルギーを与えることができる。
例4. 1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンから堆積された炭素ドープ酸化ケイ素膜のインサイチュアニール
【0094】
炭素ドープ酸化ケイ素膜が、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いて、300℃で、表3に記載されたように堆積された。インサイチュのH
2O蒸気処理が、以下のパラメータを用いて膜上に行われた。
【0095】
H
2O蒸気抜出;H
2Oキャニスタ温度=50℃、チャンバ圧力=30トール、T=300℃。
【0096】
サイクル当たりの膜成長は、0.48Å/サイクルであった。結果として得られる膜は、1.55の屈折率および1.55g/ccの密度を有している。XPSによって測定された膜組成は、O=39.0%、N=2.6%、C=25.1%およびSi=33.2%である。この膜中に、塩素は検出されなかった。
例5. 1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いた熱ALD堆積によって堆積されそしてそれに続く熱アニールおよびプラズマ処理された炭素ドープ酸化ケイ素膜の酸素アッシング抵抗
【0097】
炭素ドープ酸化ケイ素膜が、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いて、300℃で、表3に記載されたように堆積され、続いて300℃で、空気中で熱処理された。炭素ドープ酸化ケイ素膜は、先に述べられたH
2/Arプラズマ処理前に、更に窒素中で200〜400℃、5トールで、1時間に亘って更に加熱された。
【0098】
この膜は、次いで、酸素アッシングに曝露され、次いで損傷された厚さを測定するために希HFエッチングされた。
【0099】
膜誘電率は、表7に示されており、一方で、O
2アッシングで損傷された厚さが、表8に示されている。
【表7】
【表8】
【0100】
H
2/Arプラズマ処理の前の付加的なアニールは、H
2/Arプラズマで処理されただけの試料(k=3.6)に対して、より低い誘電率(k=2.8〜3.2)を示している。この膜は、27〜32Åの酸素アッシングで損傷された厚さを有している。
例6. 1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いた、300℃での、次いで高温でのアニールの炭素ドープ酸化ケイ素膜
【0101】
炭素ドープ酸化ケイ素膜が、ケイ素前駆体としての1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いて、300℃で、300mmの商業的なクロスフロー型反応器を用いたALD方式で堆積された。表9に示されたALD工程2〜8は、所望の厚さを得るように繰り返される。
【表9】
【0102】
堆積されたままの試料は、炭素ドープ酸化ケイ素膜に周囲条件で転換された。この膜のサイクル当たりの成長(GPC)は、0.45Å/サイクルである。
【0103】
この炭素ドープ酸化ケイ素膜は、300℃で、窒素雰囲気下で、1時間更に加熱され、次いで前記のように水素含有プラズマ処理(H
2のみのプラズマまたはH
2/Arプラズマのいずれか)された。
【0104】
プラズマ処理の後に、この膜は、O
2アッシングに暴露され、次いで損傷された厚さを測定するために希HFに暴露された。O
2アッシングの後の誘電率および損傷された厚さが、表10に示されている。
【表10】
【0105】
このプロセスは、酸素アッシングプロセスの前後の、高い酸素抵抗および低kを有する炭素ドープ酸化ケイ素膜を実証している。高い酸素抵抗は、酸素アッシングの後の、低い損傷厚さならびに低いk(k<4.0)によって示されている。
例7. プラズマ処理後のケイ素含有膜のステップカバレージ
【0106】
炭素ドープ酸化ケイ素膜は、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いて、300℃で、ALD方式で、300mmの商業的なクロスフロー反応器を用いて堆積され、次いで例6に記載されたように、H
2/Arプラズマによって処理された。用いられた基材は、1:9のアスペクト比および180nmの開口を有する、パターン化されたウエハであった。
【0107】
透過電子顕微鏡(TEM)が、表面被覆率を測定するために用いられた。表11に、構造中の種々の位置における膜厚が示されている。
【表11】
膜ステップカバレージ>97%
例8. 1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアから堆積された炭素含有膜の化学処理
【0108】
1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアから、表9に記載されたように300℃で堆積された炭素ドープ酸化ケイ素膜が、300℃で、不活性中で、1時間に亘ってアニールされ、次いでジエチルアミノトリメチルシランを用いた化学処理に暴露された。この化学処理のパラメータは以下のとおりである:T=300℃、時間=5分間および25分間、チャンバ圧力=1トール。
【0109】
対照として、フィルムが、いずれかの化学的な暴露なしに、300℃だけでアニールされた。
【0110】
処理の後に、膜の誘電率が測定され、そして表12に示されている。
【表12】
【0111】
この化学処理は、膜の誘電率の、5.5から3.0未満への向上を示している。
例9. オクタンおよびアンモニア中での1,1,3,3−テトラクロロジシラシクロブタンを用いた炭素含有ケイ素膜の堆積
【0112】
1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンのオクタン中の20質量%溶液が、膜の堆積に用いられた。この化学薬品は、直接の液体注入を用いて供給された(キャニスタ温度=60℃、蒸発器を通過するArの流量=100sccm、液体流量は約200mg/分であった)。蒸発器温度は、70℃であった。
【0113】
この堆積プロセスは、以下の工程を含んでいた。
【表13】
【0114】
工程3〜4が、工程5に移る前に5回繰り返され、そして工程3〜8が、所望の厚さを得るように、複数回繰り返された。XPSによって分析された膜の組成は、Si=35.7%、O=36.5%、C=23.0%、N=4.5%、Cl=0.3%である。
【0115】
堆積された膜は、不活性雰囲気中で、300℃で、1時間に亘って更にアニールされ、次いでH
2/Arプラズマ処理された。
【0116】
処理された膜は、標準のO
2アッシングに暴露され、そして損傷された厚さを測定するために希HF中に浸漬された。O
2アッシングの後の損傷された厚さは、H
2のみのプラズマおよびH
2/Arプラズマで処理された膜について継続的に、38Åおよび37Åである。
例10. インサイチュ処理での高炭素含有量の酸化ケイ素膜
【0117】
オクタン中の1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンの20質量%の溶液が、膜の堆積に用いられた。この薬品は、直接の液体注入を用いて供給された(キャニスタ温度=60℃、蒸発器を通したAr流量は100sccmであった、液体流量は約200mg/分であった)。蒸発器温度は、70℃であった。
【0118】
この堆積プロセスは、以下の工程で構成されている。
【表14】
【0119】
工程3〜4が、工程5に移る前に5回繰り返され、そして工程3〜6が、所望の厚さを得るために複数回繰り返された。工程8、9および10は比較のための任意のものである。
【表15】
【0120】
結果として得られた膜は、表15の膜特性を有している。堆積されたままの膜でアニールなしでは、膜のエッチング速度は非常に低く、すなわち、0.12×熱酸化、である。エッチング速度は、付加的な処理(N
2乾燥またはN
2乾燥とプラズマ)の後では、我々の検出限界以下の水準まで低下した。
【0121】
堆積されたままの膜についての膜密度は、1.34g/ccであり、付加的なN
2乾燥またはN
2乾燥とH
2プラズマ処理で、若干の高密度化があった。全ての場合において、この膜は、高炭素含有量25〜29%および低Cl含有量(<2%)を有している。
例11. 1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよび水/ピリジンから堆積された低誘電率の炭素ドープ酸化ケイ素膜
【0122】
1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびH
2Oが膜堆積のために用いられた。ピリジンが、反応触媒として用いられた。この化学薬品(キャニスタ温度=70℃)は、圧力キャニスタを通して、Ar掃引で供給された。水の温度は17℃(蒸気圧力=15トール)であり、そして水蒸気は、蒸気吸引で供給され、そしてピリジン温度は、25〜35℃であり(蒸気圧力=15〜25トール)、そしてピリジン蒸気は、蒸気吸引で供給された。主要なN
2流量は、200sccmであり、そしてAr流量は50sccmであった。
【0123】
この堆積プロセスは、表16に記載された工程で構成されていた。
【表16】
【0124】
工程3〜6は、所望の厚さを得るために、500回繰り返された。
【0125】
堆積されたままの膜は、1.53の屈折率および0.8Å/サイクルのGPCを有している。XPSによって測定された膜の組成は、Si=35.3%、O=34.0%、C=28.9%、N=0.6%およびCl=1.3%である。膜の密度は1.8g/ccであり、そして希釈液のエッチング速度は0.08Å/秒である。
【0126】
この膜は、次いで、前記のように、300℃での標準的なエクスサイチュのH
2/Arプラズマ処理に付された。膜の誘電率は、プラズマ処理の前後に測定されて3.6であり、これは、堆積されたままの膜(k=6.1)よりも向上されている。
例12. インサイチュの処理からの高炭素含有量の酸化ケイ素膜
【0127】
オクタン中の1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンの20質量%溶液が、膜の堆積のために用いられた。この化学薬品は、直接の液体注入を用いて供給された(キャニスタ温度=60℃、蒸発器を通したAr流量は100sccmであった、液体流量は約200mg/分であった)。蒸発器温度は、70℃であった。
【0128】
この堆積プロセスは、表17に記載された工程で構成されていた。
【表17】
【0129】
工程3〜4が、工程5に移る前に、5回繰り返され、そして工程3〜8が、所望の厚さを得るために、複数回繰り返された。工程9は、H
2Oインサイチュアニールおよび周囲条件での変換の間の比較を得るための、幾つかのウエハについての任意のものである。
【0130】
表18には、周囲条件で変換された炭素ドープ酸化ケイ素膜と、インサイチュのH
2O処理での炭素ドープ酸化ケイ素膜の両方についての、XPSによって測定された同様の膜の組成が示されている。
【表18】
例13. 炭素ドープ酸化ケイ素膜の高温アニール
【0131】
炭素ドープ酸化ケイ素膜が、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いて、300℃で、ALD方式で、300mmの商業的なクロスフロー反応器を用いて堆積された。このALD工程は、表8に示されており、そして所望の厚さを得るように繰り返される。
【0132】
堆積されたままの炭素ドープ酸化ケイ素膜は、500℃〜800℃で、不活性ガス中で1時間に亘ってアニールされた。
【0133】
膜の誘電率が表19に示されている。
【表19】
高温アニールは、膜の誘電率を低下させるのに有効である。
比較例1. ジエトキシメチルシランを用いてPECVDによって堆積された炭素ドープ酸化ケイ素膜への水素プラズマ処理および酸素アッシングの効果
炭素ドープ酸化ケイ素膜が、ジエトキシメチルシラン(DEMS)を用いて、200mmの商業的なPECVD装置を用いて、300℃で堆積された。プロセスパラメータは次のとおりである:出力=500W、圧力=9トール、Si前駆体流量=500sccm、He流量=300sccm、膜厚=500Å。
【0134】
堆積されたままの膜は、表20に示された組成を有している。
【表20】
【0135】
膜の密度は、1.48g/ccである。堆積されたままのもの(H
2プラズマ前)についての希HF(1:99の49%HFおよびDI水)でのWERが表21に示されている。この膜は、非常に高い希HFエッチング抵抗を示しており、低いエッチング速度によって示されている。
【表21】
【0136】
この膜は、次いでH
2プラズマで5分間に亘って300Wおよび300℃で処理された。H
2プラズマ処理の後に、この試料は酸素アッシングに暴露された。水素プラズマ処理および酸素アッシングプロセスの両方とも、前記と同様である。
【0137】
表22に、PECVD DEMS試料の誘電率の測定結果が示されている。
【表22】
【0138】
誘電率は、H
2プラズマ後に3.2から3.7へと増加し、より大きな損失された厚さを示している。酸素アッシングは、膜の誘電率を5.5へと更に増加させる。H
2プラズマ、それに続く酸素アッシングの後の希HF(1:99の49%HFおよびDI水)特性が、表17に示されている。
【表23】
【0139】
炭素ドープ酸化ケイ素膜は、損傷された膜の厚さが100Å超であることを明確に示している。酸素アッシング後の膜の膜エッチング速度は、堆積されたままの膜よりもはるかに速い(>10×)。酸素アッシングプロセスに暴露された後の高い膜の誘電率は、酸素アッシングからの厚い損傷された層と整合している。
【0140】
比較例2. 堆積後処理なしのケイ素含有膜対照
【0141】
炭素ドープ酸化ケイ素膜が、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンおよびアンモニアを用いた熱ALDプロセスを用いて、表3に記載されたように、300℃で堆積された。堆積後に、この膜は、次いで室温で、空気中で、3時間に亘って、300℃でアニールされた。標準の酸素アッシングが、この炭素ドープ酸化ケイ素膜に実施された。希HFが、損傷された厚さを測定するために用いられ、表24に示されている。
【表24】
【0142】
表面からの最初の約260Åのエッチング速度は、堆積されたままの膜(0.01Å/秒)と比較して、非常に高いエッチング速度を示しており、炭素が除去されていることを示唆している。炭素の除去は、酸素アッシングからの損傷された膜と整合している。
例10. 1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンの配合
【0143】
表25には、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンは、室温では固体であるために、直接の液体注入による蒸気の供給のために可能性のある配合物として、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタンの種々の溶媒中の溶解性がまとめられている。
【表25】
【0144】
本発明が、特定の態様を参照して説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変更をなすことができ、そしてその要素に対して等価物で置き換えることができることは、当業者には理解されるであろう。更に、多くの修正を、本発明の教示に対して、その基本的な範囲から逸脱することなしに、特定の状況または材料に適合するようになすことができる。従って、本発明が、本発明を実施するために想定されたベストモードとして開示された特定の態様に限定されないこと、そして本発明は、添付の特許請求の範囲内に包含される全ての態様を含むことが意図されている。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1)(a)1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−メチル−1,3−ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2,2−ジメチル−1,3−ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−エチル−1,3−ジシラプロパン、1−クロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1−ブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジクロロ−1,3−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3−トリクロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3−トリブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジクロロ−1,3−ジメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ブロモ−1,3−ジメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,5−ジメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサクロロ−3,3−ジメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,3,5,5,5−ペンタクロロ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,5,5−テトラクロロ−1,3,5−トリシラペンタンからなる群から選択される、1つのSi−C−Siまたは2つのSi−C−Si結合を有する少なくとも1種のケイ素前駆体化合物、および、
(b)少なくとも1種の溶媒、
を含んでなる組成物。
(2)前記溶媒中に、エーテル、第3級アミン、シロキサン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素および第3級アミノエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、(1)記載の組成物。
(3)前記ケイ素前駆体の沸点と、前記溶媒の沸点との間の差異が、約40℃以下である、(1)記載の組成物。
(4)5ppm未満の、Al
3+イオン、Fe
2+、Fe
3+、Ni
2+、およびCr
3+からなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含む、(1)記載の組成物。
(5)前記溶媒中に、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、トルエン、およびメシチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、(1)記載の組成物。
(6)熱ALDプロセスによって15原子%〜30原子%の範囲の炭素含有量を有する炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成する方法であって、
a)表面フィーチャを含む1種もしくは2種以上の基材を反応器中に配置すること、
b)反応器を周囲温度〜約550℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度に加熱し、そして随意選択的に該反応器を100トール以下の圧力に保持すること、
c)1−クロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1−ブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジクロロ−1,3−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1、1,3−トリクロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3−トリブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジクロロ−1,3−ジメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ブロモ−1,3−ジメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,1、3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1、1,3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,5−ジメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサクロロ−3,3−ジメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,3,5,5,5−ペンタクロロ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,5,5−テトラクロロ−1,3,5−トリシラペンタンからなる群から選択される、2つのSi−C−Si結合を有する少なくとも1種のケイ素前駆体を該反応器中に導入すること、
d)不活性ガスでパージすること、
e)該反応器中に窒素源を供給して、該表面と反応させて、炭素ドープ窒化ケイ素膜を形成すること、
f)不活性ガスでパージして、反応副生成物を除去すること、
g)工程c〜fを繰り返して炭素ドープ窒化ケイ素の所望の厚さを与えること、
h)結果として得られた炭素ドープ窒化ケイ素膜を酸素源と共に、約周囲温度〜1000℃または約100℃〜400℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度で加熱して、該炭素ドープ窒化ケイ素膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜へと転換すること、ならびに、
i)該炭素ドープ酸化ケイ素膜に、水素を含むプラズマへの堆積後曝露を与えること、
を含んでなる、方法。
(7)前記ケイ素前駆体が、(1)記載の組成物を含む、(6)記載の方法。
(8)約4未満のk、少なくとも約10原子%の炭素含有量を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(9)熱酸化ケイ素よりも少なくとも0.5倍小さいエッチング速度を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(10)熱酸化ケイ素よりも少なくとも0.1倍小さいエッチング速度を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(11)熱酸化ケイ素よりも少なくとも0.05倍小さいエッチング速度を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(12)熱酸化ケイ素よりも少なくとも0.01倍小さいエッチング速度を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(13)酸素アッシングプロセスに曝露した時に、より小さい損失層(50Å以下)を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(14)酸素アッシングプロセスに曝露した時に、より小さい損失層(20Å以下)を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(15)酸素アッシングプロセスに曝露した時に、より小さい損失層(10Å以下)を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(16)酸素アッシングプロセスに曝露した時に、より小さい損失層(5Å以下)を有する、(6)記載の方法によって形成された膜。
(17)(1)記載の組成物を収容するステンレス鋼製の容器。
(18)熱ALDプロセスによって15原子%〜30原子%の範囲の炭素含有量を有する炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成する方法であって、
a)表面フィーチャを含む1種もしくは2種以上の基材を反応器中に配置すること、
b)該反応器を周囲温度〜約150℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度に加熱し、そして随意選択的に該反応器を100トール以下の圧力に保持すること、
c)1−クロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1−ブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジクロロ−1,3−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1、1,3−トリクロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3−トリブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラブロモ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジクロロ−1,3−ジメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ブロモ−1,3−ジメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,1、3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1、1,3,3,5,5,5−オクタクロロ−1,5−ジメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサクロロ−3,3−ジメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,3,5,5,5−ペンタクロロ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサクロロ−1,3,5−トリシラペンタン、1,1,5,5−テトラクロロ−1,3,5−トリシラペンタンからなる群から選択される、2つのSi−C−Si結合を有する少なくとも前駆体ならびに触媒を該反応器中に導入すること、
d)不活性ガスでパージすること、
e)該反応器中に水の蒸気を供給して、該前駆体ならびに触媒と反応させて、炭素ドープ酸化ケイ素の堆積されたままの膜を形成すること、
f)不活性ガスでパージして、反応副生成物を除去すること、
g)工程c〜fを繰り返して炭素ドープ酸化ケイ素の所望の厚さを与えること、
を含んでなる、方法。
(19)前記炭素ドープ酸化ケイ素膜の、300〜700℃の温度での熱アニールでの堆積後処理を更に含む、(18)記載の方法。
(20)前記炭素ドープ酸化ケイ素膜の、水素を含むプラズマでの水素プラズマ処理を更に含む、(18)記載の方法。