【課題】実空間における作業部の位置に対する、画像における線画等の当該作業部の標識画像の位置の乖離の低減または解消を図りうる遠隔操作装置および遠隔操作システムを提供する。
遠隔操作装置20において標識画像Img2が生成されたうえで、作業環境画像Img1に重畳されて画像出力装置221に出力される。撮像画像データの伝送遅れにより、遠隔操作装置20と作業機械40との通信障害等の原因により、作業環境画像における撮像画像データに応じた作業部の位置姿勢座標値が不連続的に変化しており、遠隔操作機構211の操作態様に応じて推定された作業部の位置姿勢座標値から乖離する場合がある。この場合、バケット445を表わす画像領域からずれた位置に、本来的に存在すると推定される位置に当該バケット445を模した半透明の標識画像Img2(τ2)が作業環境画像Img(τ2)に重畳されて画像出力装置221に出力される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(遠隔操作システムの構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての遠隔操作システムは、遠隔操作装置20と、遠隔操作装置20による遠隔操作対象である作業機械40と、により構成されている。遠隔操作装置20および作業機械40は相互にネットワーク通信可能に構成されている。遠隔操作装置20および作業機械40の相互通信にサーバ10が介在していてもよく、当該サーバ10が遠隔操作システムの一部を構成していてもよい。
【0010】
(遠隔操作装置の構成)
遠隔操作装置20は、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、遠隔制御装置24と、を備えている。遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、画像出力装置221と、遠隔無線通信機器222と、を備えている。遠隔制御装置24は、遠隔制御要素240と、第1出力制御要素241と、第2出力制御要素242と、を備えている。各要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0011】
遠隔制御要素240は、オペレータによる遠隔操作機構211の操作態様を認識し、当該操作態様に応じた指令信号を遠隔無線通信機器222に実機無線通信機器422に対して送信させる。第1出力制御要素241は、作業機械40に搭載されている実機撮像装置412を通じて取得され、実機無線通信機器422から送信され、遠隔無線通信機器222により受信された作業アタッチメント44(=作業機構)のバケット445(=作業部)を含む作業環境画像Img1を画像出力装置221に出力させる。第2出力制御要素242は、遠隔制御要素240により認識された第1時点t=t1における遠隔操作機構211の操作態様に基づいて第1時点よりも後の第2時点t=t2におけるバケット445の空間占有態様を推定する。第2出力制御要素242は、バケット445の推定空間占有態様を作業部(バケット445)の視認性を損なわずに表わす標識画像Img2(t2)を、第3時点t=t3において作業環境画像Img1(t3)に重畳して画像出力装置221に出力させる。
【0012】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体41を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構43を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。遠隔操作機構211は、作業機械40に搭載されている実機操作機構411と同様の構成であるが、操作指令が入力されるタッチパネル方式またはボタン方式の操作機構など、実機操作機構411とは異なる構成の操作機構であってもよい。
【0013】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、
図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、遠隔オペレータが着座できる任意の形態でもよい。
【0014】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一の操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、
図3に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。同様に、
図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0015】
画像出力装置221は、例えば
図2に示されているように、シートStの右斜め前方、前方および左斜め前方のそれぞれに配置された右斜め前方画像出力装置2211、前方画像出力装置2212および左斜め前方画像出力装置2213により構成されている。当該画像出力装置2211〜2213は、スピーカ(音声出力装置)をさらに備えていてもよい。
【0016】
(作業機械の構成)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース410と、実機出力インターフェース420と、作業アタッチメント44と、を備えている。実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0017】
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、
図3に示されているように、クローラ式の下部走行体41と、下部走行体41に旋回機構43を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体42と、を備えている。旋回機構43は作業機構の1つに該当する。上部旋回体42の前方左側部にはキャブ(運転室)424が設けられている。上部旋回体220の前方中央部には作業アタッチメント44が設けられている。
【0018】
実機入力インターフェース410は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、状態センサ群414と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。なお、実機操作レバーが動かされるのではなく、油圧回路を構成するバルブの開度等が制御されることにより、作業機械40の動作態様が制御されてもよい。実機撮像装置412は、例えばキャブ424の内部に設置され、キャブ424のフロントウィンドウ越しに作業アタッチメント44の少なくとも一部を含む環境を撮像する。状態センサ群414は、下部走行体41に対する上部旋回体42の相対姿勢角度、上部旋回体42に対するブーム441の相対姿勢角度、ブーム441に対するアーム443の相対姿勢角度、および、アーム443に対するバケット445の相対姿勢角度など、作業機構の動作態様または動作状態を表わす信号を出力する各種センサにより構成されている。
【0019】
実機出力インターフェース420は、実機無線通信機器422を備えている。
【0020】
作業機構の1つとしての作業アタッチメント44は、上部旋回体42に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されている作業部としてのバケット445と、を備えている。作業アタッチメント44には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0021】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体42との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0022】
(機能)
前記構成の遠隔操作システムの機能について
図4に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。
【0023】
遠隔操作装置20において、オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じた指定操作の有無が判定される(
図4/STEP200)。「指定操作」は、例えば、遠隔入力インターフェース210を構成するタッチパネルにおけるタップ、スワイプ、フリックまたはピンチアウト/インなどのタッチ操作である。当該判定結果が否定的である場合(
図4/STEP200‥NO)、一連の処理が終了する。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図4/STEP200‥YES)、第1出力制御要素241により、遠隔無線通信機器222を通じて作業環境画像要求が送信される(
図4/STEP202)。作業環境画像要求には、遠隔操作装置20の識別子およびオペレータの識別子のうち少なくとも一方が含まれている。
【0024】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて作業環境画像要求が受信された場合(
図4/C41)、実機制御装置400が実機撮像装置412を通じて撮像画像を取得する(
図4/STEP402)。実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて、当該撮像画像を表わす撮像画像データが遠隔操作装置10に対して送信される(
図4/STEP404)。撮像画像は、作業現場または作業機械40の外部に設置されている撮像装置を通じて取得されてもよい。
【0025】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器222を通じて撮像画像データが受信された場合(
図4/C20)、当該撮像画像データに応じた作業環境画像が画像出力装置221に出力される(
図4/STEP204)。作業環境画像は、撮像画像そのものの全部または一部またはこれに基づいて生成された模擬的な作業環境画像である。これにより、例えば
図7に示されているように、作業機構としての作業アタッチメント44の一部であるブーム441、アーム443およびバケット445が映り込んでいる作業環境画像Img1が画像出力装置221に時系列的に表示される。
【0026】
遠隔操作装置20において、遠隔制御要素240により遠隔操作機構211の操作態様が認識され(
図4/STEP206)、かつ、遠隔無線通信機器222を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令信号が遠隔操作サーバ10に対して送信される(
図4/STEP208)。
【0027】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて操作指令が受信された場合(
図4/C42)、作業アタッチメント44等の動作が制御される(
図4/STEP406)。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土をすくい、上部旋回体410を旋回させたうえでバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0028】
遠隔操作装置20において、遠隔制御要素240により認識された第1時点における遠隔操作機構211の操作態様に基づき、第2出力制御要素242により、作業アタッチメント44の作業部(バケット445)の第1時点t=t1またはこれよりも後の第2時点t=t2における空間占有態様が推定(または予測)され、作業部の空間占有態様を表わす標識画像Img2が生成される(
図4/STEP210)。具体的には、操作機構211を構成する操作レバーの位置または傾斜角度に基づき、下部走行体41に対する上部旋回体42の相対姿勢角度、上部旋回体42に対するブーム441の相対姿勢角度、ブーム441に対するアーム443の相対姿勢角度、および、アーム443に対するバケット445の相対姿勢角度のそれぞれが実機動作態様として推定され、当該推定結果に基づいてバケット445(作業部)の実機座標系(作業機械40に対して位置および姿勢が固定されている座標系)における空間占有態様が推定される。そして、実機座標系における実機撮像装置412の位置および姿勢に応じた座標変換行列(回転行列または回転行列および並進行列の組み合わせ)にしたがって、実機座標系における作業部の空間占有態様を表わす座標値が、作業環境画像座標系における作業部の推定空間占有態様またはバケット445が存在する画像領域の推定延在態様を表わす座標値に座標変換される。
【0029】
バケット445に加えてまたは代えて、アーム443およびブーム441のうち少なくとも一方などの空間占有態様が作業部の空間占有態様として認識されてもよい。
【0030】
第2時点t=t2における作業部の空間占有態様の推定に際して、第1通信遅れ時間TTD1、第1応答遅れ時間TRD1、第2通信遅れ時間TTD2および第2応答遅れ時間TRD2のうち一部または全部が勘案される。「第1通信遅れ時間TTD1」は、遠隔操作機構211の操作態様に応じた指令信号が、遠隔無線通信機器222から送信されてから実機無線通信機器422により受信されるまでの通信遅れ時間である。「第1応答遅れ時間TRD1」は、実機無線通信機器422により指令信号が受信されてから、当該指令信号に応じて実機制御装置400により作業機械40の動作が制御される(指令信号が作業機械40の動作に反映される)までの応答遅れ時間である。「第2通信遅れ時間TTD2」は、撮像画像データ(環境画像データ)が、実機無線通信機器422から送信されてから、遠隔無線通信機器222により受信されるまでの通信遅れ時間である。「第2応答遅れ時間TRD2」は、遠隔無線通信機器222により環境画像データが受信されてから、当該環境画像データに応じて画像出力装置221に環境画像が出力されるまでの応答遅れ時間である。
【0031】
オペレータが遠隔操作機構211を操作している状況で、ある時点t=tにおいて画像出力装置221に映し出されている作業部の位置姿勢は、第2遅れ時間(第2通信遅れ時間TTD2および第2応答遅れ時間TRD2の合計時間)だけ前の時点t=t−(TTD2+TRD2)における作業部の実空間位置姿勢を表わしている。当該前の時点t=t−(TTD2+TRD2)における作業部の実空間位置姿勢は、第1遅れ時間(第1通信遅れ時間TTD1および第1応答遅れ時間TRD1の合計時間)だけさらに前の時点t=t−(TTD2+TRD2)−(TTD1+TRD1)における遠隔操作機構211の操作態様に対応している。このため、第1時点t=t1における遠隔操作機構211の操作態様に基づき、当該第1時点よりもTTD1+TRD1+TTD2+TRD2だけ後の時点である第2時点t=t2における作業部の空間占有態様が推定または予測される。
【0032】
ただし、遅れ時間が無視できるほどに小さい場合、当該遅れ時間は勘案されずに第2時点t=t2における作業部の空間占有態様が推定または予測されてもよい。例えば、通信速度のさらなる高速化によって第1通信遅れ時間TTD1および第2通信遅れ時間TTD2が無視できるほどに小さい場合、第1時点t=t1よりもTRD1またはTRD1+TRD2だけ後の時点である第2時点t=t2における作業部の空間占有態様が推定または予測されてもよい。また、第1応答遅れ時間TRD1および第2応答遅れ時間TRD2が無視できるほどに小さい場合、第1時点t=t1と同一またはこれよりも後のほぼ同一の時点である第2時点t=t2における作業部の空間占有態様が推定または予測されてもよい。
【0033】
標識画像Img2は、例えば半透明の画像である。作業環境画像Img1(t)においてエッジ点群が検出され、エッジ点群により囲まれる画像領域の形状パターンマッチングによって、作業部(バケット445)に相当する画像領域が認識され、当該画像領域にサイズおよび形状が合わせられて標識画像Img2が生成される。標識画像Img2は、半透明の画像のほか、当該画像領域の輪郭を表わす線画または当該画像領域の輪郭線上の一点を先端とする矢印状の画像など、作業環境画像Img1におけるバケット445の視認性を損なうことなく、当該バケット445の空間占有態様または位置姿勢を表わすさまざまな形状、サイズおよび色彩の組み合わせを有する画像であってもよい。
【0034】
そして、第2出力制御要素242により、第2時点t=t2における標識画像Img2が、第3時点t=t3において作業環境画像Img1に重畳されて画像出力装置221に出力される(
図4/STEP212)。
【0035】
第3時点t=t3は、第2時点t=t2と同一の時点であってもよい。第3時点t=t3は、第1時点t=t1および第2時点t=t2の中間時点t=t1+(1−α)t2(0<α<1)であってもよい。第3時点t=t3は、第1時点t=t1よりも第1通信遅れ時間TTD1、第1応答遅れ時間TRD1、第2通信遅れ時間TTD2および第2応答遅れ時間TRD2のうち一部の合計時間だけ後の時点であってもよい。例えば、第3時点t=t3は、第1時点t=t1よりも、第1通信遅れ時間TTD1および第1応答遅れ時間TRD1の重み付き和β1・TTD1+β2・TRD1(0≦β1≦1、0≦β2≦1。ただし、β1=β2=0である場合は除く。)だけ後の時点t=t1+β1・TTD1+β2・TRD1であってもよい。β1=0、β2=1である場合、第3時点t=t3は、第1時点t=t1よりも第1応答遅れ時間TRD1だけ後の時点t=t1+TRD1である。
【0036】
図5には、画像出力装置221により出力される作業環境画像Img1の座標系における、作業部(バケット445)の位置姿勢(位置および姿勢のうち一方または両方)の座標値の変化態様が概念的に示されている。
図5における破線は、受信された撮像画像データ(
図4/C20参照)に応じて定まる作業部の位置姿勢の座標値の変化態様を表わしている。
図5における実線は、遠隔操作機構211の操作態様に応じて予測される作業部の位置姿勢の座標値の変化態様を表わしている。
【0037】
ここでは、時点t=t0において遠隔操作機構211の操作が開始され、時点t=tnにおいて遠隔操作機構211の操作が停止されるまでの期間について考察される。作業環境画像系(u,v)における作業部の位置は2次元ベクトルにより表わされ、作業部の姿勢は後端部(アーム443への取り付け箇所)から先端部に向かう2次元ベクトルにより表わされる。
【0038】
図5に実線で示されているように、任意の第2時点における作業部の位置姿勢座標値が、当該第2時点よりも前の第1時点における遠隔操作機構211の操作態様に応じて実線で示されているように予測されている。
【0039】
図5に破線で示されているように、期間t=t11〜t12および期間t=t21〜t22以外の期間においては、撮像画像データに応じて定まる作業部の位置姿勢座標値と、遠隔操作機構211の操作態様に応じて予測された作業部の位置姿勢座標値と、がほぼ一致している。この場合、例えば、
図8に示されているように、バケット445を表わす画像領域にほぼ重なるように、当該バケット445を模した半透明の標識画像Img2(τ1)が作業環境画像Img(τ1)に重畳されて画像出力装置221に出力される。
【0040】
その一方、期間t=t11〜t12および期間t=t21〜t22のそれぞれの前後において、遠隔操作装置20と作業機械40との通信障害等の原因により、作業環境画像における撮像画像データに応じた作業部の位置姿勢座標値が不連続的に変化しており、遠隔操作機構211の操作態様に応じて予測された作業部の位置姿勢座標値から乖離している。この場合、例えば、
図9に示されているように、バケット445を表わす画像領域からずれているものの、本来的に存在すると予測される位置に、当該バケット445を模した半透明の標識画像Img2(τ2)が作業環境画像Img(τ2)に重畳されて画像出力装置221に出力される。期間t=t11〜t12および期間t=t21〜t22のそれぞれの初期において、第1時点が当該期間から外れているが、その後、第1時点が当該期間に含まれるように第1時点および第2時点の時間間隔が設定されてもよい。
【0041】
(効果)
当該構成の遠隔操作システムによれば、遠隔操作装置20において標識画像Img2が生成されたうえで、作業環境画像Img1に重畳されて画像出力装置221に出力される(
図4/STEP210→STEP212、
図8および
図9参照)。このため、線画等の標識画像Img2の伝送に障害が生じる場合がない。
【0042】
撮像画像データの伝送遅れにより、遠隔操作装置20と作業機械40との通信障害等の原因により、作業環境画像における撮像画像データに応じた作業部の位置姿勢座標値が不連続的に変化しており、遠隔操作機構211の操作態様に応じて予測された作業部の位置姿勢座標値から乖離する場合がある。この場合、バケット445を表わす画像領域からずれた位置に、本来的に存在すると予測される位置に当該バケット445を模した半透明の標識画像Img2(τ2)が作業環境画像Img(τ2)に重畳されて画像出力装置221に出力される(
図9参照)。
【0043】
よって、実空間におけるバケット445(作業部)の位置に対する、作業環境画像Img1における当該バケット445の標識画像Img2の位置の乖離の低減または解消が図られる。
【0044】
(本発明の他の実施形態)
遠隔制御要素240が、作業機械40に搭載されている状態センサ414を通じて検知され、実機無線通信機器422から送信され、遠隔無線通信機器222により受信された作業機構(旋回機構43および作業アタッチメント44)の動作態様を認識し、第2出力制御要素242が、遠隔制御要素240により認識された第1時点における遠隔操作機構211の操作態様と、作業機構の動作態様との偏差に基づいて第2時点における作業部(バケット445)の空間占有態様を予測してもよい。
【0045】
図6には、
図5と同様に、画像出力装置221により出力される作業環境画像Img1の座標系における、作業部(バケット445)の位置姿勢の座標値の変化態様が概念的に示されている。
図6における破線は、受信された撮像画像データ(
図4/C20参照)に応じて定まる作業部の位置姿勢の座標値の変化態様を表わしている。
【0046】
遠隔操作機構211(例えば旋回用レバー)が操作され、当該操作に応じて作業機構(例えば旋回機構43)が動作するまでに応答遅れが生じる場合がある。この場合、例えば、
図6に一点鎖線で示されている遠隔操作機構211の操作態様に応じて予測される作業部の位置姿勢の座標値が、
図6に二点鎖線で示されている作業機構40の動作態様に応じて推定される作業部の位置姿勢の座標値よりも先に変化が生じる。
【0047】
そこで、例えば、この応答遅れ(遠隔操作機構211の操作態様および作業機構40の動作態様の偏差)に応じて、第1時点t=t1と第2時点t=t2との時間間隔Δt=t2−t1が設定される。これにより、
図6において破線で示されている撮像画像データに応じて定まる作業部の位置姿勢の座標値の変化態様に対して、座標値が不連続に変化する期間を除いて、ほぼ一致している
図6に実線で示されているような作業部の位置姿勢の座標値の変化態様が予測される。よって、当該応答遅れによる影響を低減して、実空間におけるバケット445(作業部)の位置に対する、作業環境画像Img1における当該バケット445の標識画像Img2の位置の乖離のさらなる低減または解消が図られる。
【0048】
第2出力制御要素242が、遠隔制御要素240により遠隔操作機構211の操作態様として第1指定操作(例えば旋回用レバーを通じた旋回操作)の停止が認識された場合、停止があったのと同時にまたは一定時間(例えば応答遅れ時間)後に画像出力装置221における標識画像Img2の出力を停止してもよい。これにより、第1指定操作が停止されたにもかかわらず、当該第1指定操作に応じて変位する指標画像Img2の残存によって画像出力装置221に出力されている作業環境画像Img1における作業部の視認性の低下が回避される。
【0049】
第2出力制御要素242が、遠隔制御要素240により遠隔操作機構211の操作態様として第2指定操作の開始が認識された場合、画像出力装置221に標識画像Img2を時限的に出力させてもよい。これにより、第2指定操作が開始されてから一定期間にわたり、当該第2指定操作に応じて変位する指標画像Img2が作業環境画像Img1に重畳されて画像出力装置221に出力される。第2指定操作は、第1指定操作と同じ種類の操作であってもよく、異なる種類の操作であってもよい。オペレータにとって必要な情報は遠隔操作機構211の操作入力に対して作業機械40が反応しているかどうかがわかることである。そのため、操作開始から一定期間だけ標識画像Img2が画像出力装置221に出力されることにより、当該一定期間の周期である第2時点t=t2よりも前の第1時点t=t1以降において、バケット445の空間占有態様の予測演算負荷を省略しながらオペレータによる遠隔操作効率の向上を図ることができる。