【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、金属と強固に接着し、更に、導電性微粒子を分散させる媒体として不飽和カルボン酸をグラフトした特定のポリオレフィンが有効であること、さらに、導電性微粒子を含有する不飽和カルボン酸をグラフトした特定のポリオレフィンをフィルム化することによりベアターゲット本体とバッキングプレートを容易に加熱接着することができ、また、ベアターゲット本体とバッキングプレート間の導電性を確保できることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は、ベアターゲット本体とバッキングプレートを、導電性微粒子を含有する不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンからなる導電性フィルムを用いて接着してなることを特徴とするスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明における導電性フィルムは、導電性微粒子を含有する不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンからなるものである。
【0008】
本発明での導電性フィルムにおける不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン(以下、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンという)とは、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたものをいう。
【0009】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、本発明における導電性フィルムをベアターゲット本体とバッキングプレートを接着した際の接着面内におけるフィルムの電気伝導性の均一性を維持するため、該不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含まないことが好ましい。
【0010】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンにおける不飽和カルボン酸のグラフト量は特に制限されないが、充分な接着性を有し、かつ、ポリオレフィンの溶融粘度を適度に維持するため、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。
【0011】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、後に述べるような原料であるポリオレフィンの種類に従い、例えば、不飽和カルボン酸グラフトポリエチレン、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・プロピレン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・ブテン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・ヘキセン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸グラフトポリプロピレン等が挙げられる。
【0012】
不飽和カルボン酸としては、例えば、不飽和モノカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、不飽和モノカルボン酸類の誘導体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸類としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸類の誘導体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上併用しても良い。特に接着性の観点から無水マレイン酸単独又は無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステル類の組み合わせが好ましい。
【0013】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンに含有する導電性微粒子としては、フィルム表面の平滑性を損なわず、接着後に導電性が発現すれば何らの制限もないが、例えば、金、銀、銅、モリブデン、ニッケル、炭素、錫、インジウム、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、鉄、インジウム、マグネシウム、白金、珪素、錫、亜鉛、コバルト、クロム、チタン、タンタル、タングステン、カーボンブラック等が例示されるが、好ましくは金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、白金、コバルト、ニッケル、カーボンブラックである。これら粒子から選ばれる1種以上の微粒子が例示される。本発明でいう微粒子とは平均粒子径が0.5nm〜50μmのものをいう。
【0014】
導電性微粒子の平均粒子径は用途により適宜選択すれば良く、特に制限はないが、導電性を付与する場合にはナノ粒子を用いるのが好ましく、平均粒子径として1〜50nmが好適に用いられ、必要に応じて異なる平均粒子径の粒子を混合して使用することができる。特に平均粒子径がナノサイズの金属粒子は融点降下現象による自発的融合を起こすことが知られており、目的に応じて平均粒子径の小さな金属粒子も選択できる。
【0015】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンにおける導電性微粒子の含有量は目的により適宜変更され得るが、導電性及び接着強度を維持するためには、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン100重量部に対して、導電性微粒子が30〜99重量部であることが好ましい。
【0016】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、接着性等の特性を向上させる目的で他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤を含有してもよい。また、本発明における導電性フィルムは、接着性等の特性を向上させる目的で他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤を含有してもよい。
【0017】
他樹脂としては、例えば、グラフト反応が施されていない上記ポリオレフィン樹脂のみならず、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸−メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、セルロース、石油樹脂などが挙げられる。必要に応じて、反応性の官能基、又は末端基を有する他の樹脂と本発明の不飽和カルボン酸基とを化学反応させることが可能であり、これら官能基間の物理的相互作用を利用したブレンドが可能である。さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を第三成分として添加し他樹脂との相溶性を向上させる、又は接着性を向上させることも可能である。
【0018】
エラストマー又はゴム成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマー(TPE)としてはSBS、SIS等のスチレン系TPE(SBC)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPA)、シリコーン系TPE、フッ素系TPEが例示される。
【0019】
各種添加剤としては次のものが挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤等が挙げられる。その他安定剤としては有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、充填剤としては、例えば、球状フィラー、板状フィラー、繊維状フィラー等が挙げられる。接着剤としては、例えば、液体および固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシクレゾールノボラック、エポキシフェノールノボラックおよびビスフェノールAエポキシ樹脂とエポキシクレゾールノボラックまたはエポキシフェノールノボラックとの混合物、ビスフェノールFエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ架橋剤としては、三フッ化硼素の錯化合物、ジシアンジアミド、ポリアミド類、ポリアミン類等が挙げられる。難燃剤としては、例えば、エチレンビステトラブロモフタールイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、SAYTEX8010、テトラデカブロモジフェノキシベンゼンなどの臭素化系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、硼酸亜鉛、FIREBRAKE ZBなどの難燃助剤、DECLORANE PLUSなどの塩素化系難燃剤等が挙げられる。滑剤としては、高級脂肪酸金属塩として例えばステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、さらにはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩などが使用できる。その他の添加剤としては、着色剤、天然油、合成油、ワックス、可塑剤、造核剤、加工助剤、ワックス類等が挙げられる。
【0020】
これらの他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤は、本発明で提供する導電性フィルムの皮膜の機能を損なわない範囲で含有することができる。その含有量は不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましい。また、その含有量は本発明における導電性フィルム100重量部に対して0.13〜20.9重量部が好ましく、0.13〜10.45重量部がさらに好ましい。
【0021】
原料であるポリオレフィンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)等が挙げられる。線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)としては、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。その他、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびそのケン化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等のエチレン系コポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
【0022】
これらのポリオレフィンを合成するための重合方法は通常知られている方法でよく、高圧ラジカル重合、中低圧重合、溶液重合、スラリー重合等があげられ、使用触媒は過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられ、これらの触媒で重合されたポリオレフィンを使用することができる。
【0023】
ポリオレフィンの分子量の目安となるメルトマスフローレート(MFR)は特に制限されないが、溶剤への溶解性を加温時でも良好とし、また、最終的なグラフト反応物の材料強度を維持するため、好ましくは0.01〜50000(g/10分)であり、さらに好ましくは0.01〜100(g/10分)である。
【0024】
また、塩素化ポリオレフィンを用いることができるが、その製造方法は公知であり、例えば、四塩化炭素等のハロゲン系溶剤に溶解させた溶液を、紫外線照射下で塩素含有ガスと接触させてポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開昭47−8643号公報)、ポリオレフィンの粒子を水に懸濁させたスラリー中に塩素ガスを吹き込んでオレフィンを塩素化する方法(例えば、特公昭36−4745号公報)、溶剤を使用せず、ポリオレフィンを、その融点以上に加熱し、溶融させた状態で塩素ガスと接触させることで、ラジカル発生剤、紫外線照射等を用いずにポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開平3−199206号公報)が開示されている。本発明で用いる塩素化したポリオレフィンはこれらの何れの方法でも製造することができる。
【0025】
本発明での導電性フィルムにおける不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、ハロゲン系溶剤中で、ラジカル発生剤を用いて不飽和カルボン酸をポリオレフィンにグラフトさせることで製造できる。
【0026】
ハロゲン系溶剤としては、例えば、1,1,2−トリクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。なお、ハロゲン系溶剤として1,1,2−トリクロロエタンを用いる場合、市販されている1,1,2−トリクロロエタン中には、しばしば0.5〜2.0重量%のアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を不純物として含有している。ここに、アルコール化合物とは水酸基を有する化合物であり、例えば、エチルアルコールやブチルアルコール等が挙げられ、エポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物であり、例えば、1,2−エポキシプロパンや1,2−エポキシブタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを無色透明とし、かつ熱安定性も良好でゲルを含有しない不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを得るためには、1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いる場合には、1,1,2−トリクロロエタン中に不純物として含まれるアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物をあらかじめ除去することが好ましい。
【0027】
ラジカル発生剤としては、アゾ系化合物又は有機過酸化物等が用いられる。アゾ系化合物としては、α,α−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。
【0028】
アゾ系化合物又は有機過酸化物の添加量は特に制限されないが、不飽和カルボン酸のグラフト量を維持し、また、樹脂の溶融粘度の増加を防止することで成形性の低下を防止して製品品質を維持するため、ポリオレフィン100重量部に対して好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0029】
反応温度は特に制限されないが、グラフト反応の効率を高め、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの着色、及び架橋等を防止するため、好ましくは40〜130℃、さらに好ましくは60〜130℃である。反応圧力は特に制限されないが、充分な量の不飽和カルボン酸をグラフトし、また、ゲルの発生を抑制して品質低下を防ぐため、好ましくは0〜1MPa、さらに好ましくは0〜0.7MPaである。本反応においては反応温度、及び、反応させるポリオレフィンの種類によっては均一な溶液状態からけん濁状態でグラフト反応が進行するが、できる限り均一な溶液状態でグラフト反応を進めるため、ポリオレフィンの種類によって反応温度を適宜選択することが好ましい。
【0030】
グラフト反応の終了後、必要に応じて安定剤を添加する。安定剤はグラフト反応時に発生するラジカルを消滅させ、グラフト反応を停止させるために添加し、通常ポリオレフィンに添加する酸化防止剤を用いるのが好ましく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0031】
グラフト反応に使用する反応容器は通常回分式(バッチ式)反応に使用する容器を用いることができ、上記反応温度、反応圧力に耐えられるものであれば差し支えなく、材質は通常ステンレス製が用いられ、必要に応じて内面がガラスライニング、フッ素コーティン
グ処理を施したものも使用できる。
【0032】
グラフト反応で生成した不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと溶剤との分離には、ドラムドライヤー、水蒸気蒸留、ベント付き押出機等、通常用いられる方法を用いることができるが、ドラムドライヤーを用いることが経済的利用から特に好ましい。一方、本発明における導電性フィルムの製造に用いる溶剤と上記のグラフト反応の溶剤が同一の場合には、該不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを反応溶液から単離する必要はなく、反応溶剤を添加する、又は反応溶液を濃縮する等の方法により該不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの濃度を調整し、そのまま、導電性微粒子を溶液に添加し、溶液キャスト法等の公知の手法により導電性フィルムを製造できる。
【0033】
反応工程で不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを溶剤と分離する場合には、反応工程を終了した後、その反応溶液を反応器から、例えば、加熱したドラムドライヤーに連続的にフィードして、生成物をポリマー溶液から単離することができる。この際のドラムドライヤーの温度としては、乾燥を促進しつつ、ポリマーの着色、熱劣化、架橋を抑制するため、好ましくは120〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは150〜165℃である。ポリマーは薄膜状でドラムから剥離して単離する。
【0034】
また、ドラムドライヤーにより揮発した1,1,2−トリクロロエタンはドラムドライヤー上部に設置された回収ラインを用いて、回収し、再び反応に用いることができる。
【0035】
ドラムドライヤーによるポリマー溶液からの溶剤除去に必要な時間は、用いる溶剤の種類、及びドラムドライヤーの温度により異なり、適宜選定し得るが、通常10秒〜5分である。
【0036】
単離されたポリマーは必要に応じて紐状、シート状、ストランド状又はチップ状に加工することができ、これらの1次賦形したポリマーを更に、1軸、又は必要に応じて2軸押出機へ供給し、ポリマーを溶融させて押出し、ストランドカット、又は水中カットによりペレット化することも可能である。この際の押出温度は特に制限されないが、用いたポリオレフィンを充分に溶融させてスムーズに押し出し、さらにポリオレフィンの分解、着色等を抑制するため、好ましくは100〜300℃であり、さらに好ましくは150〜250℃である。
【0037】
本発明における導電性フィルムに用いる導電性微粒子を含有する不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの製造には種々の方法を用いることができる。即ち、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと導電性微粒子を公知の方法、例えば、2軸押出機を用いて溶融混練する方法の他、該ポリオレフィンを前述の溶剤に溶解し、得られた溶液に導電性微粒子を添加し、室温から好ましくは溶剤の沸点以下の温度範囲で、溶液を撹拌し分散させる方法等を用いることができる。得られた溶液から前述の方法を用いて、溶剤を除去することで導電性微粒子を含有する不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを製造できる。
【0038】
本発明における導電性フィルムは、導電性微粒子を含有する不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンのペレットを溶融押出法により溶融状態でフィルム化するキャスト成形、ブロー成形等方法の他、熱プレス等によってもフィルム化でき、また、該ペレットを前述の有機溶剤に溶解させた後、溶液キャスト法によりフィルム化することもできる。この際、溶液調製は攪拌機を備えた反応器等を用いて行えるが、ホモジナイザー等の機械を用いて行うこともできる。この際、溶解温度は特に制限されないが、通常、室温から使用する溶剤の沸点以下で行うことが好ましい。得られたポリオレフィン溶液に導電性微粒子を添加し、超音波洗浄器、ホモジナイザー等を用いて導電性微粒子を分散させる。この際の温度は溶剤が揮発しない温度である限り特に制限はなく、室温から溶剤の沸点以下である。また、耐圧容器を用いて溶剤の沸点以上の温度で導電性微粒子の分散を行うことができる。
【0039】
本発明のスパッタリングターゲットは、ベアターゲット本体とバッキングプレートを本発明における導電性フィルムを用いて接着してなるものである。
【0040】
本発明のスパッタリングターゲットは、ベアターゲット本体とバッキングプレートを本発明における導電性フィルムを用いて接着することにより製造することができる。ベアターゲット本体とバッキングプレートの接着方法は両者の電気電導性が確保できれば何らの制限もないが、その接着方法の一例を挙げれば、バッキングプレート、本発明における導電性フィルム、及びベアターゲット本体をこの順で積層した後、必要に応じて加圧下で加熱チャンバー内に入れて溶融接着する方法が挙げられる。この際の温度はバッキングプレートとベアターゲット本体が接着可能であれば特に制限はないが、通常90℃から300℃であり、更に好ましくは120℃から250℃である。接着温度は用いる導電性フィルムの融点により適宜変更されるが、フィルムの溶融温度以上であれば良く、また該フィルムの熱分解温度以下であれば良い。十分な接着強度を確保するためには、例えば、該接着温度はフィルムの融点に100℃を加えた温度以下で行うのが好ましい。接着時間はバッキングプレートとベアターゲット本体が均一かつ実用上十分な接着強度を有する限り特に制限はないが、通常、1〜60分、好ましくは1〜30分、さらに好ましくは1〜10分である。接着にあたっては、あらかじめバッキングプレートとベアターゲット本体を接着温度まで加熱しておくことも可能であり、この場合、接着時間を短縮することができる。接着の際の圧力はバッキングプレートとベアターゲット本体が均一かつ実用上十分な接着強度を有する限り特に制限はないが、通常0.2〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPa、さらに好ましくは0.2〜3MPaである。十分なスパッタリング性能を得るためには、本発明における導電性フィルムが接着面外へ溶融時に流出しないよう上記の圧力条件下で接着するのが好ましい。