(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性水素を有する出発物質にアルキレンオキサイドを開環付加重合反応させる工程を、n個(ただしnは2以上の整数)含む、ポリエーテルヒドロキシ化合物を製造する方法であって、第(n−1)工程及び第n工程における重合触媒が複合金属シアン化物錯体触媒であり、第(n−1)工程において、該第(n−1)工程の出発物質100質量部に対して、0.02〜1質量部の酸化防止剤を含み、かつ第n工程の出発物質の少なくとも一部が第(n−1)工程の重合生成物であり、該第n工程の出発物質が、酸化防止剤を含まないか、該出発物質100質量部に対して0.02質量部以下の量で酸化防止剤を含む、ことを特徴とするポリエーテルヒドロキシ化合物の製造方法。
nが3以上の整数であり、第1工程でアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物触媒が用いられ、第2〜第n工程で複合金属シアン化合物錯体触媒が用いられる、請求項1記載の製造方法。
酸化防止剤が、少なくとも2つの炭素数1〜16の炭化水素基で置換されたフェノール及びアルキリデンビスフェノールから選ばれる少なくとも一種のヒンダードフェノール化合物である、請求項1又は2記載の製造方法。
上記アルコールおよびエーテルが、tert−ブチルアルコールと、下記n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、iso−プロピルアルコール、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルおよびジオキサンなる群から選ばれる1種または2種以上とからなる化合物である、請求項5に記載の製造方法。
数平均分子量が10,000以上であり、複合金属シアン化物錯体及びヒンダードフェノール化合物を含み、ポリプロピレン容器に入れて、JIS A1415に準じる紫外線照射された際の、JIS K 1557に基づくHazen色数の増加が30未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法により得られるポリエーテルヒドロキシ化合物。
ヒンダードフェノール化合物が、少なくとも2つの炭素数1〜16の炭化水素基で置換されたフェノール及びアルキリデンビスフェノールから選ばれる少なくとも一種である、請求項7記載のポリエーテルヒドロキシ化合物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、ポリエーテルヒドロキシ化合物とは、水酸基を1個以上有するポリエーテル化合物を指す。
【0010】
本発明の製造方法において、1工程は開環付加重合反応における工程を指す。すなわち、1工程は、原料の投入、開環付加重合反応、さらに必要に応じて酸化防止剤添加、精製の各サブ工程を経て、生成物の少なくとも一部を反応槽から抜き出す直前までを指す。
【0011】
第1〜第(n−1)工程では、活性水素含有出発物質に、重合触媒の存在下でアルキレンオキサイドを開環付加重合させ、重合が終了したのち、酸化防止剤を添加する工程を経て生成物の少なくとも一部を反応槽から抜き出す。以下、第1工程から第(n−1)工程で得られた生成物を、中間体(x)(xは1〜(n−1)の整数)という。例えば第2工程で得られた生成物を中間体(2)とする。
【0012】
第1工程から第(n−1)の各工程で抜き出した中間体はタンク、ドラム等の容器に貯蔵しておき、次の工程に用いることができる。また、次の工程で必要な量を反応槽に残し、それ以外を抜き出し、該反応槽で次工程を開始することもできる。ここで、該反応槽に残った中間体に、別途調製した中間体を混合して次工程に供してもよい。
【0013】
第1工程で使用する活性水素含有出発物質は、アルキレンオキサイドの開環付加重合反応の開始点となり得る少なくとも一の活性水素原子を有していればよく、例えば多価アルコール類であるジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、アミン類であるモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、フェノール類であるビスフェノールA、またはこれらの化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテル類などを挙げることができる。また、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールからなる群から選ばれるポリオールを活性水素含有出発物質として用いることもできる。
【0014】
本発明の製造方法では、少なくとも第(n−1)工程及び第n工程における重合触媒が、複合金属シアン化物錯体触媒である。従って、nが2である場合には、全工程において、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる。nが3以上である場合には、第1工程から第(n−2)工程では、必ずしも複合金属シアン化物錯体触媒を用いる必要はなく、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、金属ポリフィリン化合物、及びホスファゼン化合物からなる群より選ばれる触媒を用いてよい。
【0015】
好ましくは、本発明の効果が顕著である点で、nが3以上であり、第1工程でアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物触媒を用い、第2〜第n工程で複合金属シアン化合物錯体触媒を用いる。
【0016】
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、およびナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、および水酸化ストロンチウムなどが挙げられる。これらのうち、水酸化カリウム、水酸化セシウム、およびナトリウムメトキシドから選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0017】
金属ポリフィリン化合物としては、例えば、アルミニウムテトラ(4−スルホナトフェニル)ポルフィリン錯体、アルミニウムテトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン錯体、アルミニウムテトラ(3−ピリジル)ポルフィリン錯体、アルミニウムテトラ(N,N−ジメチル−4−アミノフェニル)ポルフィリン錯体、アルミニウムテトラ(N−ブチル−3−ピリジル}ポルフィリン錯体テトラアイオダイド、アルミニウムテトラ(2−カルボキシエチル)テトラメチルポルフィリン錯体等が挙げられる。
【0018】
ホスファゼン化合物触媒としては、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド{[(Me
2N)
3P=N]
4P
+OH
-}、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウム炭化水素オキサイド{[(Me
2N)
3P=N]
4P
+OR
-}、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウムカルボキシド{[(Me
2N)
3P=N]
4P
+RCOO
-}が挙げられる。ここで、前記の各化学式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
【0019】
複合金属シアン化物触媒としては、ポリエーテル類の製造に通常用いられるものであれば特に制限されないが、代表的には、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
M
1a[M
2b(CN)
c]
de(M
3fX
g)h(H
2O)i(L) (1)
式(1)中、M
1〜M
3は金属を、Xはハロゲン原子を、Lは有機配位子を、a、b、c、d、e、f、g、h、iは金属の原子価や有機配位子の配位数などにより変わり得る数を、それぞれ示す。M
1とM
3は同じであることが好ましく、M
2は、M
1及びM
3とは異なることが好ましく、複合金属シアン化物触媒が、少なくとも2種類の金属を含むことが好ましい。また、M
3はなくてもよい。
上記式(1)で表わされる化合物は、原子番号23から30の金属のハロゲン化物(A)、原子番号23から28の金属のシアン化物(B)、およびアルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミンおよびアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(C)の反応生成物であることが好ましい。
【0020】
上記式(1)中、M
1およびM
3で表わされる金属としては、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)およびPb(II)等が挙げられ、これらのうち、原子番号23から30の金属が好ましく、Zn(II)またはFe(II)がより好ましい。
【0021】
上記式(1)中、M
2で表わされる金属としては、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)およびV(V)等が挙げられ、これらのうち、原子番号23から28の金属が好ましく、Co(III)またはFe(III)がより好ましい。なお、金属の元素記号の後に続く括弧内のII、III、IV、V等のローマ数字はその金属の原子価を示す。
【0022】
上記式(1)中、有機配位子を表すLとしては、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミンおよびアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。本発明の製造方法においては、これらのうちでも有機配位子Lとして水溶性のものが好ましく、その具体例としては、アルコール類としてiso−プロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、アミド類としてN,N−ジメチルアセトアミド、エーテル類としてグライム(エチレングリコールジメチルエーテル)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、およびジオキサンから選ばれる1種または2種以上の化合物が挙げられる。ジオキサンとしては、1,4−ジオキサンでも1,3−ジオキサンでもよく、1,4−ジオキサンが好ましい。
【0023】
より好ましい有機配位子は、tert−ブチルアルコール単独か、またはtert−ブチルアルコールと上記例示した化合物との組み合わせである。また、これらのなかでも、tert−ブチルアルコール単独か、tert−ブチルアルコールとエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルの組み合わせがより好ましい。このような有機配位子を有するDMC触媒は、アルキレンオキシド等の開環付加重合反応に高い触媒活性を示し、分子量分布が狭く低粘度のポリエーテルヒドロキシ化合物を得ることができる。また、このようなDMC触媒は、上記開環付加重合において、不飽和結合を有するモノオールの生成を、例えば、総不飽和度が0.009(ミリ当量/g)以下となるように、抑制することができる。更に、高活性のDMC触媒を用いると、使用量を少量にすることが可能である。
【0024】
該DMC触媒は、従来公知の製造方法により製造可能である。本発明に好ましく用いられる有機配位子を有するDMC触媒の製造方法としては、例えば、特開2003−117403号公報に記載されている方法を用いることができる。具体的には、(i)ハロゲン化金属塩と、シアノメタレート酸および/またはアルカリ金属シアノメタレートとを水溶液中で反応させて得られる反応生成物に有機配位子を配位させ、ついで、生成した固体成分を分離し、分離した固体成分をさらに有機配位子水溶液で洗浄する方法、または(ii)有機配位子水溶液中でハロゲン化金属塩と、シアノメタレート酸および/またはアルカリ金属シアノメタレートとを反応させ、得られる反応生成物(固体成分)を分離し、その分離した固体成分をさらに有機配位子水溶液で洗浄する方法、によって得られるケーキ(固体成分)をろ過分離し、さらに乾燥させる方法を挙げることができる。
【0025】
DMC触媒を製造する場合に用いる上記アルカリ金属シアノメタレートのシアノメタレ−トを構成する金属としては、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)およびV(V)等が挙げられ、これらのうち、原子番号23から28の金属が好ましく、Co(III)またはFe(III)であることがさらに好ましく、Co(III)であることが特に好ましい。
【0026】
上記DMC触媒の製造原料として用いるシアノメタレート酸およびアルカリ金属シアノメタレートとしては、H
3[Co(CN)
6]、Na
3[Co(CN)
6]、およびK
3[Co(CN)
6]が好ましく、Na
3[Co(CN)
6]およびK
3[Co(CN)
6]がもっとも好ましい。
【0027】
さらに上記DMC触媒の製造方法において、ケーキをろ過分離する前の段階で、有機配位子水溶液に固体成分を分散させた液に、ポリエーテルヒドロキシ化合物を混合し、得られた混合液から水および過剰な有機配位子を留去することによって、DMC触媒がポリエーテルヒドロキシ化合物中に分散したスラリー状のDMC触媒混合物(以下、「スラリー状DMC触媒」とも記す。)を調製することもできる。
好適なDMC触媒としては、Zn
3[Co(CN)
6]
2・h(ZnCl
2)・iC(CH
8)
3OH (hおよびiは配位数により異なる)が挙げられる。
【0028】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、およびブチレンオキサイドなどを例示することができるが、特にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが好ましい。本発明においては、一種類のアルキレンオキサイドのみを用いてもよく、または所望により二種以上のアルキレンオキサイドを併用することもできる。二種類以上のアルキレンオキサイドを併用する場合は、ブロック重合法およびランダム重合法のいずれの重合法を用いてもよく、さらにブロック重合とランダム重合の両者を組み合わせて一種のポリエーテル類を重合することもできる。さらに、活性水素含有出発物質に対して、アルキレンオキサイドとともに、ε−カプロラクトンなどの環状エステルを開環重合することもできる。その場合、アルキレンオキサイドと環状エステルをランダム重合することも、ブロック重合することもできる。
ブロック重合法とは、1工程において、生成したポリエーテルヒドロキシ化合物中、二種以上のアルキレンオキサイド各々の重合鎖がブロックで並ぶようにする製造方法を言う。ランダム重合法とは、1工程において、生成したポリエーテルヒドロキシ化合物中、二種以上のアルキレンオキサイドがランダムに並ぶようにする製造方法を言う。ランダム重合法で生成したポリエーテルヒドロキシ化合物中、アルキレンオキサイドがランダムに並んでいる部分にブロックに並んでいる部分があってもよい。
【0029】
ポリエーテルヒドロキシ化合物の製造方法は特に限定されないが、バッチ法が好ましい。
1工程は次の各サブ工程を含む。
(原料投入工程)
反応容槽に活性水素含有出発物質と重合触媒とを投入する工程。
(開環付加重合反応工程)
原料投入後、圧力が上昇し、その後降下したこと(触媒活性化)を確認した後、残りのアルキレンオキサイドを投入する。反応温度を保持しながら、活性水素含有出発物質にアルキレンオキサイドを開環付加重合させる、開環付加重合反応工程。
開環付加重合反応工程において、アルキレンオキサイドは連続または段階的に投入する。このときの投入速度が遅いと得られる重合体の分子量分布を狭くできるが、投入速度が遅いと生産効率が低下するため、これらを比較衡量して定めることが好ましい。具体的な投入速度としては、最終生成物として予定しているポリエーテルヒドロキシ化合物の100質量部に対して1〜200質量部/時間の範囲で、0.5〜1000時間かけて、投入することが好ましい。なお、開環付加重合反応途中で投入速度を逐次変えてもよい。
さらに必要に応じて、以下の工程を含んでもよく、以下の工程の順序は入れ替わってもよい。
(酸化防止剤添加工程)
開環付加重合反応後、適温まで冷却し、酸化防止剤を投入して撹拌する酸化防止剤添加工程。
(精製工程)
反応物中の触媒残渣等を吸着材による吸着、酸による中和し、必要に応じて濾過する精製工程。
開環付加重合反応において、DMC触媒を用いる場合、酸化防止剤添加工程は反応槽から生成物を抜き出す直前がよい。また精製工程はなくてもよい。
アルキレンオキシドの開環付加重合反応は、耐圧反応容器において、通常、60〜180℃、好ましくは80〜140℃で、1〜24時間、好ましくは6〜12時間加熱することによって行う。本発明に用いる耐圧反応容器の形状、材質は特に問わないが、形状はループ型または円筒型が好ましく、材質は耐熱性のガラスまたは金属製容器が好ましい。耐圧反応容器には加熱のためのマイクロウェーブ設備、冷却または加熱のため熱媒や蒸気を用いて加熱・冷却するための内部コイルまたは外部ジャッキ設備があることが好ましく、内部コイルまたは外部ジャッキ設備が好ましい。耐圧反応容器には反応物が外部熱交換器を経て循環する配管があってもよい。反応系内の雰囲気は、不活性ガスが良く、窒素ガスが好ましい。また、耐圧反応容器内の圧力は、操作や設備が容易である点で、絶対圧力で1MPa以下が好ましく、0.8MPa以下がより好ましい。
【0030】
重合後、必要に応じて定法に従い、重合触媒を失活、分解又は除去する等、精製処理を行う。得られる中間体の分子量は、特に限定されないが、次工程で目的とするポリエーテルヒドロキシ化合物の数平均分子量(Mn)の約10質量%以上であることが好ましい。
【0031】
本発明では、最終工程である第n工程における活性水素含有出発物質が酸化防止剤を含まないか、含むとしても、該活性水素含有出発物質100質量部に対して0.02質量部以下の量であることを特徴とする。これにより、最終製品の変色、引いてはウレタン製品の変色を抑制することができる。最終工程における出発物質中の酸化防止剤量さえ0.02質量部以下とすればよく、それより前段の工程で用いる出発物質中の酸化防止剤量、及び最終工程で得られる生成物に添加する酸化防止剤量は、0.02質量部を超えても問題ない。しかし、あまり多く加えても、量に比例した効果は得られない。従って、0.02質量部〜1質量部が好ましく、0.05質量部〜0.2質量部がより好ましい。また、前段で得られた中間体を、直ちに出発物質として用いる場合には、新たに酸化防止剤を添加しなくてもよい。
【0032】
酸化防止剤は、フリーラジカル・スカベンジャー、過酸化物分解剤及び金属イオン不活性化剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。これらは、基本的には、ポリエーテルヒドロキシ化合物の貯蔵安定性を増大させるために使用される。酸化防止剤は、有機化合物であることが好ましい。斯かる酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、 ヒドロキシルアミン系、 環式アミン系、 ジアリールアミン系、 有機ホスフィット及びホスホニット系、N , N − 置換ヒドラジン化合物、シュウ酸のアミド化合物、 ラクトン系などがある。そのうち、本発明では、酸化防止性能及び酸化防止剤そのものの発色が原因によるポリエーテルヒドロキシ化合物への着色を考慮して、ヒンダードフェノール系であることが好ましい。
【0033】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、以下のものが挙げられる。
a : トコフェノール、例えばα − トコフェノール、β − トコフェノール、γ −トコフェノール、δ − トコフェノール、及びこれらの混合物;
b : フェノール環の少なくとも2 個の位置が炭素数1〜16の炭化水素基で置換されたフェノール、例えば2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − メチルフェノール(BHT)、2 − ブチル− 4 , 6 − ジメチルフェノール、2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − メトキシフェノール、2 , 6 − ジ−t e r t − ブチル− 4 − エチルフェノール、2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − n − ブチルフェノール、2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − イソブチルフェノール、2 , 6 −ジシクロペンチル− 4 − メチルフェノール、2 − ( α − メチルシクロヘキシル) − 4 , 6− ジメチルフェノール、2 , 6 − ジオクタデシル− 4 − メチルフェノール、2 , 4 , 6 −トリシクロヘキシルフェノール、2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − メトキシメチルフェノール、2 , 6 −ジノニル− 4 − メチルフェノール、2 , 4 − ジメチル− 6 − ( 1 ’ − メチルウンデカ− 1’ − イル) フェノール、2 , 4 − ジメチル− 6 − ( 1 ’ − メチルヘプタデカ− 1 ’ − イル) フェノール、2 , 4 − ジメチル− 6 − ( 1 ’ − メチルトリデカ− 1 ’ − イル) フェノール、及びこれらの混合物;
c : アルキルチオフェノール、例えば、2 , 4 − ジオクチルチオメチル− 6 − t e r t − ブチルフェノール、2 , 4 −ジオクチルチオメチル− 6 − メチルフェノール、2 , 4 − ジオクチルチオメチル− 6 − エチルフェール、2 , 6 − ジドデシルチオメチル− 4 − ノニルフェノール、及びこれらの混合物;
d :ジフェノールのチオエーテル、例えば2 , 2 ’ − チオビス( 6 − t e r t − ブチル− 4 − メチルフェノール) 、2 , 2 ’ − チオビス( 4 − オクチルフェノール) 、4 , 4 ’ − チオビス( 6 − t e r t − ブチル− 3 −メチルフェノール) 、4 , 4 ’ − チオビス( 6 − t e r t − ブチル− 2 − メチルフェノール) 、4 , 4 ’ − チオビス( 3 , 6 − ジs e c − アミルフェノール) 、4 , 4 ’ − ビス(2 , 6 − ジメチル− 4 − ヒドロキシフェニル) ジスルフィド、及びこれらの混合物;
e :アルキリデンビスフェノール、例えば、2 , 2 ’ − メチレンビス( 6 − t e r t − ブチル− 4 − メチルフェノール) 、2 , 2 ’ −メチレンビス( 6 − t e r t − ブチル− 4 − エチルフェノール) 、2 , 2 ’ − メチレンビス( 6 − t e r t − ブチル− 4 − ブチルフェノール) 、2 , 2 ’ − メチレンビス[ 4 − メチル− 6 − ( α − メチルシクロヘキシル) フェノール] 、2 , 2 ’ − メチレンビス( 4 −メチル− 6 − シクロヘキシルフェノール) 、2 , 2 ’ − メチレンビス( 6 − ノニル− 4 −メチルフェノール) 、2 , 2 ’ − メチレンビス( 4 , 6 − ジ− t e r t − ブチルフェノール) 、2 , 2 ’ − エチリデンビス( 4 , 6 − ジ− t e r t − ブチルフェノール) 、2 , 2’ − エチリデンビス( 6 − t e r t − ブチル− 4 − イソブチルフェノール) 、2 , 2 ’ −メチレンビス[ 6 − ( α − メチルベンジル) − 4 − ノニルフェノール] 、2 , 2 ’ − メチレンビス[ 6 − ( α 、α − ジメチルベンジル) − 4 − ノニルフェノール] 、1 , 1 − ビス( 5 − t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシ− 2 − メチルフェニル) ブタン、2 , 6 − ビス( 3 − t e r t − ブチル− 5 − メチル− 2 − ヒドロキシベンジル) − 4 − メチルフェノール、1 , 1 , 3 − トリス( 5 − t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシ− 2 − メチルフェニル) ブタン、1 , 1 − ビス( 5 − t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシ− 2 − メチルフェニル) − 3 − n − ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[ 3 , 3 − ビス( 3 ’− t e r t − ブチル− 4 ’ − ヒドロキシフェニル) ブチラート] 、ビス( 3 − t e r t −ブチル− 4 − ヒドロキシ− 5 − メチルフェニル) ジシクロペンタジエン、1 , 1 − ビス(3 , 5 − ジメチル− 2 − ヒドロキシフェニル) ブタン、2 , 2 − ビス( 3 , 5 − ジ− t er t − ブチル− 4 − ヒドロキシフェニル) プロパン、2 , 2 − ビス( 3 , 5 − ジ− t e rt − ブチル− 4 − ヒドロキシ− 2 − メチルフェニル) − 4 − n − ドデシルメルカプトブタン、1 , 1 , 5 , 5 − テトラ( 5 − t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシ− 2 − メチルフェニル) ペンタン、及び、さらに例えば、メチル( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシフェニル) プロピオナート、オクタデシル( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4− ヒドロキシフェニル) プロピオナート、N , N ’ − ヘキサメチレンビス( 3 , 5 − ジ−t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシヒドロシンナミド( c i n n a m i d e )) 、テトラキス[ メチレン( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − ヒドキシ桂皮酸) メタン、2 , 2 ’ − オキサミドビス[ エチル− 3 − ( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシフェニル) プロピオナート、トリス( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − ヒドロキシベンジル) イソシアヌラート、ペンタエリトリトール テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]及びこれらの混合物。
【0034】
上記の酸化防止剤のうち、少なくとも2つの、炭素数1〜16の炭化水素基で置換されたフェノール及びアルキリデンビスフェノールから選ばれる少なくとも一種のヒンダードフェノール化合物が好ましく、なかでも、2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − メチルフェノール(BHT)、オクタデシル( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4− ヒドロキシフェニル) プロピオナート、3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル等が好ましい。
【0035】
酸化防止剤は、開環付加重合反応が終わった後に、定法に従いポリエーテルヒドロキシ化合物を撹拌しながら、一度に全て、或いは、何度かに分けて段階的に添加することができる。尚、酸化防止効果の点で、開環付加重合反応が終わってから1時間以内に、一度に添加する方がより好ましい。同様に、複数の酸化防止剤を、個々に、段階的に又は全て一度に添加することが可能である。また、開環付加重合反応後であれば、触媒の除去又は失活処理等の前後を問わない。
【0036】
上述のとおり、第(n−1)工程及び第n工程では、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて重合を行う。両工程で使用する複合金属シアン化物錯体触媒は、同じものであっても、異なるものであってもよい。DMC触媒は、その特性上、初期活性操作を行った後に、開環付加重合反応を行うことが好ましい。初期活性操作とは、DMCの開環付加重合触媒としての活性を発現させる操作である。該初期活性操作を行う温度は、120〜165℃であり、好ましくは125〜150℃、より好ましくは130〜140℃である。また、初期活性操作でのアルキレンオキサイド使用量は中間体(1)に対して、5〜20質量%であり、10〜12質量%が好ましい。
【0037】
初期活性操作の後に行う、開環付加重合工程の反応温度は110〜165℃であり、好ましくは120〜140℃、より好ましくは125〜135℃である。供給するアルキレンオキサイドの供給速度は、得られる重合体の分子量分布を狭くできることから、できるだけ遅くすることが好ましいが、生産効率が低下するため、これらを比較衡量して定めることが好ましい。具体的な供給速度としては、最終生成物として予定しているポリエーテルヒドロキシ化合物の100質量部に対して1〜200質量部/時間(0.5〜1000時間)の範囲が好ましい。なお、開環付加重合反応途中で供給速度を逐次変えてもよい。
【0038】
好ましくは、初期活性操作及び開環付加重合反応工程において、DMC触媒存在下、中間体とアルキレンオキサイドの反応時に、反応液を0.4〜50kW/m
3、好ましくは0.8〜50kW/m
3、より好ましくは1.2〜50kW/m
3の撹拌動力を用いて撹拌する。撹拌翼については、プロペラ翼、パドル翼、マックスブレンド翼(登録商標)、ディスクタービン翼、フルゾーン翼(登録商標)が使用でき、反応容器内を均一に混合するためには大型翼である、マックスブレンド翼(登録商標)またはフルゾーン翼(登録商標)が好ましい。その他、乳化や分散に使用されるディスパー、ホモミキサー、コロイドミル、ナウターミキサー(登録商標)なども使用できる。また、撹拌翼を用いず超音波による混合を用いてもよい。これらの撹拌方法は組み合わせて使用してもよい。一般的な撹拌翼を使用する撹拌法を用いる場合は、反応液に反応器の気相部のガスが多量に取り込まれて撹拌効率が低下することがない範囲で撹拌翼の回転速度をできるだけ速くすることが好ましい。
【0039】
耐圧反応容器の形状、材質は特に問わないが、材質は耐熱性のガラスまたは金属製容器が好ましい。系内の雰囲気は、不活性ガスが良く、窒素ガスが好ましい。また、耐圧反応容器内の圧力は、操作や設備が容易である点で、絶対圧力で1MPa以下が好ましく、0.8MPaがより好ましい。
【0040】
重合後、必要に応じて、DMC触媒の除去処理およびDMC触媒の失活処理を行なってもよい。その方法としては、例えば、合成珪酸塩(マグネシウムシリケート、アルミニウムシリケートなど)、イオン交換樹脂、および活性白土などから選択される吸着剤を用いた吸着法や、アミン、水酸化アルカリ金属、リン酸、乳酸、コハク酸、アジピン酸、酢酸などの有機酸およびその塩、または硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸による中和法、中和法と吸着法を併用する方法などを用いることができる。
また、水を反応生成物100質量部に対し0.1~10質量部添加することによる水添加法を、単独で使用し、または吸着法と併用してもよい。
【0041】
上記のようにして得られたポリエーテルヒドロキシ化合物には、上述の酸化防止剤の他、pH調整のために、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、塩酸、硫酸、亜硫酸などの鉱酸;ギ酸、シュウ酸、コハク酸、酢酸、マレイン酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどのアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウムなどの、アルカリ金属の炭酸水素塩またはアルカリ土類金属炭酸水素塩;リン酸二リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素リチウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウムなどのリン酸塩;硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムなどの硫酸水素塩;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪酸アミン類;トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族アミン類;アルカノールアミンなどの有機アルカリ性化合物、から選択される化合物を添加することができる。
【0042】
該ポリエーテルヒドロキシ化合物は、半透明の容器、例えばポリエチレン製容器(エコバルクMXII1000 シュルツ社製、容量1060リットル、幅1000mm、長さ1200mm、高さ1160mm)、に入れて、屋外で保存しても変色がほとんど無い。従って、本発明は、数平均分子量が10,000以上であり、複合金属シアン化物錯体及びヒンダードフェノール化合物を含み、ポリエチレン容器に入れて、JIS A1415に準じる紫外線照射された際の、JIS K 1557に基づくHazen色数の増加が30未満であることを特徴とする、ポリエーテルヒドロキシ化合物にも関する。
【0043】
該ポリエーテルヒドロキシ化合物は、ポリイソシアネート化合物および、任意に鎖延長剤と反応させて得られる、各種ポリウレタン樹脂として、大変に有用である。具体的な用途としては、接着剤、粘着剤、シーラント、各種フィルム、シート、ロールである。さらに、自動車用シートや建材用断熱材などの発泡ウレタン用原料としても有用である。また、ウレタン樹脂以外に、グリース用基油等の潤滑油、界面活性剤、希釈剤、可塑剤、改質剤の原料などとしても使用できる。特に本発明のポリエーテルヒドロキシ化合物は、ほとんど着色しないので、良好な外観を必要とされるシーラント、接着剤用に特に有用である。
【実施例】
【0044】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下において、実施例Nで調製した中間体(x)を中間体N(x)と、また、比較例Mで調製した中間体を比較中間体CM(x)と表す。
【実施例1】
【0045】
<中間体1(1)の製造>
5LのSUS製のオートクレーブにプロピレングリコール(工業用、旭硝子社製)を380g、触媒として水酸化カリウム(純度95質量%)12.6gを添加し、110℃で1時間減圧処理を行い、水分を除去しながらアルコラート化した。次いで、オートクレーブの温度を110℃に昇温し、プロピレンオキサイド3620gを8時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認して、内容物を抜き出した。該内容物に、合成ケイ酸マグネシウム(キョーワド600S、協和化学工業社製)を加えて触媒を吸着させた後、不純物をろ過により除去した。その後、2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − メチルフェノール(以下BHT、商品名アンテージBHT、川口化学工業社製)を2g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した。得られた中間体1(1)の数平均分子量(Mn)は800であった。以下において、Mnは、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法で測定した。
【0046】
<中間体1(2)の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体1(1)を800g、触媒としてtert−ブチルアルコール配位子を有する複合金属シアン化物錯体のポリオールによるスラリー触媒(以下「触媒Y」とし、その詳細は後述する)3.0gを添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド80gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド2120gを5時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、BHTを0.6g(濃度0.02質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体1(2)のMnは3000であった。
【0047】
<最終生成物の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体1(2)を800g、触媒Yを4.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド80gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド3120gを8時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、BHTを2g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られたポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは15000であった。
【実施例2】
【0048】
<中間体2(1)の製造>
活性水素含有出発物質として、グリセリン(工業用、花王社製)を368g用いたことを除き、実施例1と同様にして中間体2(1)を製造した。該中間体2(1)のMnは1000であった。
【0049】
<中間体2(2)の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体2(1)を1000g、触媒Yを4.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド100gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド2900gを5時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、BHTを0.4g(濃度0.01質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体2(2)のMnは4000であった。
【0050】
<最終生成物の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体2(2)を800g、触媒Yを4.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイドの80gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド3120gを8時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、BHTを4g(濃度0.1質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られたポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは20000であった。
【実施例3】
【0051】
<中間体3(1)の製造>
実施例1と同様にして中間体3(1)を製造した。該中間体3(1)のMnは800であった。
【0052】
<中間体3(2)の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体3(1)を1600g、触媒Yを4.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、エチレンオキサイド40gとプロピレンオキサイド120gの混合物を10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後に混合物が反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でエチレンオキサイド560gとプロピレンオキサイド1680gの混合物を5時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、混合物が全て反応した事を確認したのち、BHTを0.4g(濃度0.01質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体3(2)のMnは2000であった。
【0053】
<最終生成物の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体3(2)を500g、触媒Yを3.2g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、エチレンオキサイド10gとプロピレンオキサイド30gの混合物を10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後に混合物が反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でエチレンオキサイド740gとプロピレンオキサイド2220gの混合物を8時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、BHTを2g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られたポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは14000であった。
【実施例4】
【0054】
<中間体4(1)の製造>
実施例2と同様にして中間体4(1)を製造した。該中間体4(1)のMnは1000であった。
【0055】
<中間体4(2)の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体4(1)を1000g、触媒Yを3.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド100gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド1900gを5時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、安定剤としてBHTを1.5g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体4(2)のMnは4000であった。
【0056】
<中間体4(3)の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体4(2)を1000g、触媒Yを3.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド100gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド2233gを5時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、BHTを0.33g(濃度0.01質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体4(3)のMnは10000であった。
【0057】
<最終生成物の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体4(3)を1000g、触媒Yを3.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド100gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド2233gを10時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、BHTを1.67g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られたポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは30000であった。
【実施例5】
【0058】
<中間体5(1)の製造>
BHTを添加しなかったことを除き実施例1と同様にして中間体5(1)を製造した。該中間体5(1)のMnは800であった。
【0059】
<中間体5(2)の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体5(1)を800g用い、BHTに代えてオクタデシル( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4− ヒドロキシフェニル) プロピオナート(商品名 イルガノックス1076、BASF社製)を0.3g(濃度0.01質量)添加したことを除き、実施例1と同様にして中間体5(2)を製造した。該中間体5(2)のMnは3000であった。
【0060】
<最終生成物の製造>
中間体5(2)を800g用い、オクタデシル( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4− ヒドロキシフェニル) プロピオナートを2g(濃度0.05質量部)添加したことを除き、実施例1と同様にしてポリエーテルヒドロキシ化合物を製造した。該ポポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは15000であった。
【実施例6】
【0061】
<中間体6(1)の製造>
5Lのオートクレーブに2-エチルヘキシルアルコール(協和発酵ケミカル社製)を520g、触媒Yを2.4g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド52gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド1828gを5時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、ペンタエリトリトール テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名イルガノックス1010、BASF社製)を1.2g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体6(1)のMnは600であった。
【0062】
<中間体6(2)の製造>
5Lのオートクレーブに、中間体6(1)を1200g、触媒Yを4.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド60gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド2740gを6時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、ペンタエリトリトール テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を2g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体6(2)のMnは2000であった。
【0063】
<中間体6(3)の製造>
5Lのオートクレーブに中間体6(2)を1000g、触媒Yを4.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド50gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド2950gを8時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、安定剤としてペンタエリトリトール テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を0.8g(濃度0.02質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られた中間体6(3)のMnは8000であった。
【0064】
<最終生成物の製造>
5Lのオートクレーブに中間体6(3)を1600g、触媒Yを3.0g添加した。次いで、オートクレーブの温度を130℃に昇温し、プロピレンオキサイド80gを10分かけて導入し、誘導反応に付した。20分後にプロピレンオキサイドが反応したことによる内圧の低下を確認した後、130℃でプロピレンオキサイド1320gを6時間かけて導入した。導入後オートクレーブ内の圧力が一定になり、プロピレンオキサイドが全て反応した事を確認したのち、ペンタエリトリトール テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を3g(濃度0.1質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られたポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは15000であった。
【0065】
[比較例1]
<比較中間体C1(1)の製造>
実施例1と同様に、比較中間体C1(1)を製造した。該比較中間体C1(1)のMnは800であった。
【0066】
<比較中間体C1(2)の製造>
比較中間体C1(1)を800g用い、BHTを1.5g(濃度0.05質量部)添加したことを除き、実施例1と同様にして比較中間体C1(2)を製造した。得られた比較中間体C1(2)のMnは3000であった。
【0067】
<最終生成物の製造>
比較中間体C1(2)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、BHTを2g(濃度0.05質量部)添加し、10分かけて混合した後、内容物を抜き出した。得られたポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは15000であった。
【0068】
[比較例2]
<比較中間体C2(1)の製造>
実施例2と同様にグリセリン(工業用、花王社製)を368g用いて比較中間体C2(1)を製造した。該比較中間体C2(1)のMnは1000であった。
【0069】
<比較中間体C2(2)の製造>
BHTを2g(濃度0.05質量部)添加したことを除き、実施例2と同様にして比較中間体C2(2)を製造した。該比較中間体C2(2)のMnは4000であった。
【0070】
<最終生成物の製造>
比較中間体C2(2)を800g用いたことを除き、実施例2と同様にBHTを4g(濃度0.1質量部)添加してポリエーテルヒドロキシ化合物を抜き出した。該ポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは20000であった。
【0071】
[比較例3]
<比較中間体C3(1)の製造>
実施例1と同様にして、比較中間体C3(1)を製造した。該比較中間体C3(1)のMnは800であった。
【0072】
<比較中間体C3(2)の製造>
BHTを1.6g(濃度0.4質量部)添加したことを除き、実施例3と同様にして比較中間体3(2)を製造した。該比較中間体C3(2)のMnは2000であった。
【0073】
<最終生成物の製造>
比較中間体C3(2)を用いたことを除き、実施例3と同様にして、BHTを2g(濃度0.5質量部)添加して、ポリエーテルヒドロキシ化合物を抜き出した。該ポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは14000であった。
【0074】
[比較例4]
<比較中間体C4(1)の製造>
実施例2と同様にして比較中間体C4(1)を製造した。該比較中間体C4(1)のMnは1000であった。
【0075】
<比較中間体C4(2)の製造>
比較中間体C4(1)を用いたことを除き、実施例2と同様にして比較中間体C4(2)を製造した。該比較中間体C4(2)のMnは4000であった。
【0076】
<比較中間体C4(3)の製造>
比較中間体C4(2)を1000g用い、BHTを1.67g(濃度0.05質量部)添加したことを除き、実施例4と同様にして比較中間体C4(3)を製造した。該比較中間体C4(3)のMnは10000であった。
【0077】
<最終生成物の製造>
比較中間体C4(3)を1000g用いたことを除き、実施例4と同様にしてポリエーテルヒドロキシ化合物を製造した。該ポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは30000であった。
【0078】
[比較例5]
<比較中間体C5(1)の製造>
BHTを添加しなかったことを除き実施例1と同様にして比較中間体C5(1)を製造した。
【0079】
<比較中間体C5(2)の製造>
比較中間体C5(1)を800g用い、オクタデシル( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4− ヒドロキシフェニル) プロピオナートを1.5g(濃度0.05質量部)添加したことを除き、実施例5と同様にして、比較中間体C5(2)を製造した。該比較中間体C5(2)のMnは3000であった。
【0080】
<最終生成物の製造>
比較中間体C5(2)を800g用いたことを除き、実施例5と同様にオクタデシル( 3 , 5 − ジ− t e r t − ブチル− 4− ヒドロキシフェニル) プロピオナートを2g(濃度0.05質量部)添加し、ポリエーテルヒドロキシ化合物を製造した。該ポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは15000であった。
【0081】
[比較例6]
<比較中間体C6(1)の製造>
実施例6と同様にして、比較中間体C6(1)を製造した。該比較中間体C6(1)のMnは600であった。
【0082】
<比較中間体C6(2)の製造>
比較中間体C6(1)を1200g用いたことを除き実施例6と同様にして、比較中間体C6(2)を製造した。該比較中間体C6(2)のMnは2000であった。
【0083】
<比較中間体C6(3)の製造>
比較中間体C6(2)を1000g用い、ペンタエリトリトール テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を2g(濃度0.05質量部)添加したことを除き、実施例6と同様にして比較中間体C6(3)を製造した。該比較中間体C6(3)のMnは8000であった。
【0084】
<最終生成物の製造>
比較中間体C6(3)を1600g用いたことを除き、実施例6と同様にペンタエリトリトール テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を3g(濃度0.1質量部)添加して、ポリエーテルヒドロキシ化合物を製造した。該ポリエーテルヒドロキシ化合物のMnは15000であった。
【0085】
[DMC触媒(触媒Y)の調製]
実施例及び比較例で使用したDMC触媒(触媒Y)は、以下のようにして調製した。
500mlのフラスコ中、塩化亜鉛10.2gを含む25gの水溶液中に、カリウムヘキサシアノコバルテート(K
3[Co(CN)]
6)を4.2g含む75gの水溶液を40℃に保温しつつ、300回転/分で撹拌しながら30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに30分間撹拌した後、tert−ブチルアルコール(以下、「TBA」という)80g、水80gおよびポリオールとして平均分子量1000のポリプロピレングリコール(EXCENOL 1020 旭硝子製 以下「ポリオールX」という)0.6gの混合物を添加し、40℃で30分間、さらに60℃で60分間撹拌した後、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製のNo.5C)とを用いて、加圧下(0.25MPa)でろ過を行い、50分ほどで複合金属シアン化物錯体を含む固体(ケーキ)を分離した。この複合金属シアン化物錯体は、上記一般式(1)において、M
1、M
3がZn(II)、M
2がCo(III)、XがCl、LがTBAの化合物である。
次いで、この複合金属シアン化物錯体を含むケーキにTBAの36gおよび水84gの混合物を添加して30分間撹拌した後、加圧ろ過(ろ過時間:15分)を行った。得られた複合金属シアン化物錯体を含むケーキに、TBAの108gおよび水12gの混合物を添加して30分間撹拌し、複合金属シアン化物錯体を含むTBAのスラリーSを得た。
得られた複合金属シアン化物錯体を含むTBAのスラリーSを5gほどフラスコに秤取し、窒素気流で概ね乾かした後、80℃で4時間減圧乾燥した。これにより得られた固体を秤量した結果、固体成分である複合金属シアン化物錯体の濃度は4.53質量%であった。上記複合金属シアン化物錯体を含むTBAのスラリーSの残りに、ポリオールXの120gを混合し、減圧下、80℃で3時間、115℃で3時間処理し、揮発成分を留去して、スラリー触媒Yを得た。スラリー触媒Y中の複合金属シアン化物錯体(固体成分)の濃度は3.74質量%であった。
【0086】
[GPC測定条件]
使用機種:HLC−8220GPC(東ソー社製)
データ処理装置:SC-8020(東ソー社製)
使用カラム:TSG gel G2500H(東ソー社製)
カラム温度:40℃、検出器:RI、溶媒:テトロヒドロフラン、流速0.6ml/分
試料濃度:0.25質量%、注入量:10μl
検量線作成用標準サンプル:ポリスチレン([Easical]PS−2[Polystyrene Standards]、Polymer Laboratories社製)
【0087】
[変色試験]
製造した各ポリエーテルポリオールを、半透明のポリエチレン容器(東静容器社製 規格細口ボトル250ml、直径63mm、高さ128mm、厚さ1mm)に入れ、JIS A1415の紫外線カーボンアークによる暴露試験方法に準じて、下記条件により、照射試験を行った。照射前後に、ポリエーテルポリオールの色を、JIS K 1557に基づき、Hazen比色法で標準液と比較して測定した。結果を表1及び2に示す。
使用機種:SUNSHINE WEATHER METER S80(スガ試験機社製)
照射波長:300〜700nm
照射強度:233W/m
2
照射温度:60℃
照射時間:70時間
【0088】
【表1】
【表2】
【0089】
表1に示すように、最終工程における出発物質中の酸化防止剤の濃度が0.02質量部以下の場合は、最終生成物ポリエーテルポリオールの着色がほとんど皆無であったのに対し、0.02質量部を超えると、Hazen色数で30以上の着色が観察された。