(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。
様々な比表面積、平均粒子径、半価幅および結晶子径を有する酸化第二銅微粉末を製造し、めっき液への溶解試験を行った結果、銅微粉末の比表面積が1m
2/g以上、50m
2/g以下であり、平均粒子粒子径が20nm以上、1100nm以下で、2θ=61.5°ピークの半価幅が0.2°以上、0.6°以下で、かつ結晶子径が155Å以上、490Å以下の場合、銅めっき液、即ち硫酸銅水溶液への望ましい溶解性、すなわち、CuSO
4・5H
2Oが90g/L、H
2SO
4が220g/L、塩素イオンが60mg/Lを含む水溶液を攪拌し、酸化第二銅微粒子7gを添加してから溶解するまでの時間が、従来よりも短い、易溶解性を発揮した。
【0017】
なお、本発明における平均粒子径とは、下記(1)式から求めた値である。
また、結晶子径は、2θ=61.5°の(113)面のピークを用いてScherrer法によって求めた値である。半価幅も結晶子径と同様に(113)面を用いた。
さらに、本発明の酸化第二銅微粉末は、CuO含有量が98.5重量%以上と高純度である。
【0019】
[酸化第二銅微粉末]
本発明に係る硫酸銅水溶液に対する易溶性に優れる酸化第二銅微粉末は、比表面積が1m
2/g以上、50m
2/g以下で、平均粒子径が20nm以上、1100nm以下で、2θ=61.5°、ピークの半価幅が0.2°以上、0.6°以下、かつ結晶子径が155Å以上、490Å以下である。
【0020】
硫酸銅水溶液(めっき液)への溶解性からは、酸化第二銅微粉末の比表面積は広く、その平均粒子径は小さい方が望ましいが、酸化第二銅微粉末の比表面積が50m
2/gを超え、平均粒子径が20nm未満となると、微粉末を形成する際に粉砕処理を行う場合、そのコストが増すなどの生産コストの面から経済的ではない。特に、平均粒子径20nm未満の酸化第二銅微粉末を望むと、粉砕時間や設備コストが増大する問題が生じる一方、硫酸銅水溶液への溶解性(溶解時間の短縮)は大きく向上せず、コスト増に対する効果がない。より望ましくは、酸化第二銅微粉末の比表面積が22m
2/g以下である。一方、酸化第二銅微粉末の比表面積が1m
2/g未満で、平均粒子径が1100nmを超えると、硫酸銅水溶液への溶解性が劣る。
【0021】
また、酸化第二銅微粉末の結晶子径が、490Åを越えても結晶が成長しすぎて硫酸銅水溶液への溶解性が劣る。
さらに半価幅が0.6°を越えると結晶性が不十分となり、0.2°未満では粒成長し過ぎて、いずれも硫酸銅水溶液への溶解性が劣る。
この酸化第二銅微粉末の結晶子径と半価幅は、製造条件に大きく影響を受けるもので、原料から酸化第二銅粗粉末を経て、粉砕処理によって微粉末を得る製造方法の場合、熱処理条件や粉砕処理条件、およびその後の熱処理条件などの影響を受ける。粉砕処理によって、微粒子化するほど、結晶子径は小さくなって半価幅は大きくなる傾向がある。また、熱処理の温度が高くなるほど、その処理時間が長くなるほど、結晶子径は大きくなって半価幅は小さくなる傾向がある。
【0022】
[硫酸銅水溶液(めっき液)の銅イオン供給方法]
銅を電解めっきする際に用いる銅めっき液(硫酸銅水溶液)は、硫酸銅、硫酸および塩素イオンを含有し、そのpHは1よりも低いものが用いられることが多い。そして、銅めっき液には、銅めっきの品質向上のため公知の添加剤が加えられている。
一方、銅の電解めっきを行うと、めっき液中の銅が析出し、めっき液の銅の濃度が低下する。そこで、めっき液の銅濃度の低下を防ぐ為、陽極に銅を用いて陽極を溶解しながら銅電解めっきを行う方法と、陽極に導電性酸化物セラミック等で覆われたチタン等からなる不溶性陽極を用い併せてめっき液へ銅を供給する機構を備えた不溶性陽極を用いる方法がある。
【0023】
不溶性陽極を用いる場合、めっき液へどのように銅を補うかが問題となる。めっき液へ銅を供給するには、めっき液に銅または銅を含む化合物等の銅源が速やかに溶解することと、銅源が溶解することでめっき液のSO
42+イオンなどのバランスが崩れないこと、めっき液中の上述の添加剤が分解しないことが要求される。
このような要求に対して、酸化第二銅微粉末は、めっき液のSO
42+イオンなどのバランスを崩すことなく、また、各種添加剤の分解も少なく、めっき液へ銅を供給する銅源として好適である。
【0024】
また、めっき液への銅の供給は、めっき液中の銅が減少する都度、速やかに行う必要がある。具体的には、攪拌されたCuSO
4・5H
2Oを90g/L、H
2SO
4を220g/L、塩素イオンを60mg/Lを含むめっき液に近似した水溶液1リットルに酸化第二銅粉末7gを投入した時に、2分以内、好ましくは1.5分以内に溶解する溶解速度が求められる。その溶解時間は、短ければより望ましく、攪拌中の1リットルの水溶液に7gの酸化第二銅粉末を投入して1分以内に溶解することがより望ましい。
【0025】
[酸化第二銅微粉末の易溶性]
本発明に係る酸化第二銅微粉末は、攪拌されたCuSO
4・5H
2Oを90g/L、H
2SO
4を220g/L、塩素イオンを60mg/Lの成分組成から成るめっき液に近似した水溶液1リットルに投入すると2分未満で溶解する。
また、めっき液に投入する酸化第二銅微粉末は、溶解残渣が生じてはならないが、酸化第一銅はめっき液に溶解せずに残渣となる。そこで、本発明の酸化第二銅微粉末は、その製造の際に、異相となる酸化第一銅が発生しないような条件によって製造される。また、当該加熱条件では、媒体攪拌ミルで所望とする物理特性を有する酸化第二銅粗粉末が得られるので、結果的には、めっき液へ速やかに溶解する酸化第二銅微粉末が得られる。
【0026】
電解めっき装置で、本発明の硫酸銅水溶液への銅イオンの供給方法を実施するには、電解めっき装置のめっきを行うめっき槽と別に酸化第二銅微粉末を溶解する酸化第二銅溶解槽を設け、めっき槽と酸化第二銅溶解槽の間で水溶液(めっき液)を循環させればよい。
酸化第二銅溶解槽では、めっき槽から供給された水溶液に酸化第二銅微粉末を溶解させて、銅イオン濃度を高めた水溶液をめっき槽へ送り返す。この酸化第二銅溶解槽には、プロペラなどの攪拌機構を付属させることが好ましい。また、めっき槽と酸化第二溶解槽との間には、ゴミや異物等の除去のため公知の各種フィルターを備えても良い。
【0027】
なお、本発明の硫酸銅水溶液の銅イオン供給方法に用いる硫酸銅水溶液は、硫酸銅を水に溶解した水溶液でもよいし、硫酸に本発明に係る酸化第二銅微粉末を溶解させた水溶液でも良い。
【0028】
以上、述べたように、酸化銅の純度が高く、かつめっき液への溶解性が高い易溶性酸化第二銅微粉末であることから、銅めっき用補給銅源として好適なものである。
【0029】
次に、本発明の易溶性の酸化第二銅微粉末を得る製造方法の一例を示す。本発明に係る易溶性の酸化第二銅微粉末は、この製造方法に限らず、その特性が「比表面積が1m
2/g以上、50m
2/g以下」で、「平均粒子径が20nm以上、1100nm以下」、「X線回折における2θ=61.5°、ピークの半価幅が0.2°以上、0.6°以下」、かつ「結晶子径が160Å以上、490Å以下」であって、「CuO含有量が98.5重量%以上」を満足する酸化第二銅微粉末を製造可能な方法であるなら良い。
【0030】
本発明の酸化第二銅微粉末は、銅粉を酸化して生成した酸化第二銅粗粉末を、粉砕、熱処理して得られるものである。
(1)酸化第二銅粗粉末の生成
酸化第二銅微粉末を得るには、銅粉を酸素含有雰囲気下の最高温度350℃〜800℃の条件で熱処理するか、硫酸銅を酸素含有雰囲気下の最高温度700℃〜1000℃で熱処理する方法のどちらかによって、酸化第二銅粗粉末を生成する。
【0031】
[銅粉から得る場合]
銅粉を熱処理する場合、原料としての銅粉は、特に限定されず、例えば電解銅粉、アトマイズ銅粉、化学還元銅粉を用いることができる。この銅粉末の粒径は、価格や酸化速度の観点から5μm〜100μm以下が好ましい。
【0032】
その熱処理温度が350℃未満では酸化に長い時間を要したり、あるいは異相が混在してしまう。特に、問題となるのが、この異相の生成であり、特に異相のうち酸化第一銅は、めっき液に溶解しない。そのため、この異相の存在はめっき液の溶解性やめっき液の特性に悪影響を与える。
熱処理温度の上限は、粉砕性の点から求められ、例えば媒体攪拌ミルを用いた粉砕では、800℃が好ましい。この熱処理温度が、800℃を超えると、銅粉末の酸化第二銅粗粉末が焼結し粉砕しにくくなる。この雰囲気は適宜選択できるが、大気中で熱処理することもできる。
【0033】
[硫酸銅から得る場合]
硫酸銅を熱処理する場合、酸素含有雰囲気下の最高温度700℃〜1000℃で熱処理することで酸化第二銅粗粉末を得ることができる。熱処理時に生成するSO
3(SO
2+1/2O
2)を除去することで、分解反応が促進される。処理温度が700℃未満では、完全に熱分解せず、異相が混在する。熱処理温度の上限は、銅粉を熱処理する場合と同様に粉砕性の点から1000℃が好ましい。
【0034】
原料に銅粉を用いる場合、および硫酸銅を用いる場合ともに、熱処理設備は温度制御と酸素含有雰囲気の制御ができれば良く、公知の管状炉やボックス炉、ロータリーキルン等を用いることができる。また熱処理設備には発生ガスの回収を行う公知のガス回収装置を備えることで、環境への負荷も少なくできる。さらに、発生する粉塵などについても同様である。
【0035】
熱処理における最高温度に至るまでの昇温条件、および最高温度からの降温条件ともに適宜選択でき、異相の有無や粉砕性を考慮して決定すれば良く、すなわち、原料を上記最高温度下の炉内に投入して短時間に昇温させてもよいし、温度を徐々に上昇させてもよいし、段階的に上昇させてもよい。降温の際も同様である。
また、原料を炉内へ供給するには、原料を雰囲気の気流と共に炉内へ導入してもよいし、キャリアガスにより炉内へ導入してもよいし、耐熱性の容器に入れた原料を炉内に導入してもよい。
【0036】
原料に銅粉を用いる場合および硫酸銅を用いる場合ともに、その熱処理時間は、適宜選択でき、酸化第二銅粗粉末の異相の有無や粉砕性から適宜選択すれば良い。
【0037】
(2)粉砕工程
前工程で形成された酸化第二銅粗粉末は、粉砕され、次の二次熱処理工程を経ても比表面積が1m
2/g以上、平均粒子径が1100nm以下にされる。
酸化第二銅粗粉末の粉砕には、媒体攪拌ミルもしくは気流式ミルを用いることが望ましい。媒体攪拌ミルもしくは気流式ミルを用いると、平均粒子径を1100nm以下にすることができる。
【0038】
媒体攪拌ミルは、ビーズなどの粉砕媒体と酸化第二銅粗粉末と溶媒を含むスラリーに、攪拌することにより運動エネルギーを与え、酸化第二銅粗粉末同士の衝突や粉砕媒体と酸化第二銅粗粉末のせん断応力により微粒子を得る装置である。
媒体攪拌ミルの攪拌機構は、ビーズのせん断応力が酸化第二銅粗粉末に効率よく伝達されれば良く、その機構や形状は特に限定されない。
【0039】
粉砕媒体であるビーズ径は、目的とする酸化第二銅微粉末の最終粒子径によって選択することが一般的であるが、好ましくは直径1mm以下である。1mm以下であれば、粒子を微細に砕く効率が高くなる。また、ビーズ径は、小さいほど粉砕スピードが速く、粉砕される酸化銅粉末の粒子径も小さくなる。特に、めっき液への溶解性が高い粒子径に粉砕するには、特に直径0.3mm以下のビーズが好ましい。
ビーズの材質は特に限定されないが、例えば比重が小さいガラスビーズや比重が大きいZrO
2ビーズ、YSZビーズが挙げられる。比重が大きいビーズでは、粉砕効率が高く、摩耗が少ないため、特に好ましい。
【0040】
媒体攪拌ミルは、特に限定されず、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。これらの機材を用いた処理条件によって、主にビーズのせん断応力により微粒子化が進行する。
【0041】
使用する溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、水、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテルなどのエーテル類、エステル類、またはアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトンなどのケトン類といった各種の有機溶媒が使用可能である。
【0042】
一方、気流式ミルは、高速のジェット気流中で酸化第二銅粗粉末を相互に衝突させることにより、微粉末を得る装置である。
なお、湿式媒体ミルを用いても気流式ミルを用いても、粉砕条件は、特に限定されるものではなく、得られる酸化第二銅微粉末が所望の比表面積や平均粒子径となるように適宜選択すればよい。
【0043】
(3)二次熱処理
上記(1)、(2)の工程を経て得られた酸化第二銅微粉末を、酸素含有雰囲気下の二次熱処理を施して、酸化第二銅微粉末とすることが望ましい。
この二次熱処理の温度は、350℃〜800℃が望ましく、熱処理時間も1〜3時間が望ましいが、最終的に完全なCuOの形態となるように適宜選択すれば良い。
この酸素含有雰囲気下で酸化第二銅微粉末を熱処理することによって、得られる酸化第二銅微粉末のめっき液への溶解性が、さらに高くなる。その理由としては、一部酸素欠損の状態(CuO
1−x)から完全なCuOの状態になるためと推察している。
【0044】
なお、この二次熱処理では、粉砕工程を経た酸化第二銅微粉末を焼結させないことに留意しなければならない。そのため上記の熱処理温度と熱処理時間が望ましい。
また、このような二次熱処理は、酸化第二銅粗粉末を粉砕して微粉末化した酸化第二銅微粉末を二次熱処理するので、完全なCuOの形態となりやすい。
【0045】
硫酸銅水溶液への溶解時間は、二次熱処理を実施することで短くなる。そのため、本発明の酸化第二銅微粉末は、銅めっき用補給銅源としてより望ましい。具体的には、本発明の製造方法で得られた酸化第二銅微粉末の7gの溶解時間は、CuSO
4・5H
2Oを90g/L、H
2SO
4を220g/L、塩素イオンを60mg/Lの成分組成から成る25℃の攪拌されている1リットルの硫酸銅水溶液に投入すると、その溶解時間は2分未満を示す。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1から実施例9の酸化第二銅微粉末はすべて黒色を呈し、電解重量分析の結果、CuO濃度は電解銅粉を原料に用いたものが99.6重量%、CuSO
4・5H
2O(硫酸銅)を原料に用いたものが98.6重量%であった。
【実施例1】
【0047】
三井金属製電解銅粉(グレード:MF−D2)10gを、大気雰囲気下500℃の温度で3時間加熱処理することによって酸化第二銅粗粉末aを得た。
次に、この酸化第二銅粗粉末aが20重量%、水が80重量%となるように秤量し、直径0.3mmのZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーで、12時間粉砕処理した後、ビーズを分離した分散液を105℃で乾燥し、さらに大気雰囲気下500℃の温度で3時間熱処理することによって酸化第二銅微粉末aを得た。
得られた酸化第二銅微粉末aの粉末X線解析の結果、
図1に示すようにCuO単一相であった、また、比表面積が13.33m
2/g、平均粒子径が75.5nm、ピークの半価幅が0.4439°、結晶子径が210.5Åであった。そのSEM像を
図2に示す。
【0048】
次に、めっき液組成として、CuSO
4・5H
2Oを68g/L、H
2SO
4を228g/L、Clイオンを60mg/Lとなるよう調製し、室温にてスターラーで攪拌しながら酸化第二銅微粉末aを7g添加したところ、12秒で溶解した。
【実施例2】
【0049】
実施例1において、ペイントシェーカーで粉砕した後の熱処理を、大気雰囲気下650℃の温度で3時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る酸化第二銅微粉末bを得た。
酸化第二銅微粉末bの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が8.32m
2/g、平均粒子径が120.9nm、ピークの半価幅が0.3605°、結晶子径が260.6Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、36秒で溶解した。
【実施例3】
【0050】
実施例1において、ペイントシェーカーでの粉砕時間を6時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る酸化第二銅微粉末cを得た。
酸化第二銅微粉末cの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が12.01m
2/g、平均粒子径が83.7nm、ピークの半価幅が0.5084°、結晶子径が183.4Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、52秒で溶解した。
【実施例4】
【0051】
実施例1において、ペイントシェーカーでの粉砕時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る酸化第二銅微粉末dを得た。
酸化第二銅微粉末dの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が9.35m
2/g、平均粒子径が107.6nm、ピークの半価幅が0.4750°、結晶子径が196.5Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、53秒で溶解した。
【実施例5】
【0052】
実施例1において、ペイントシェーカーでの粉砕時間を1時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る酸化第二銅微粉末eを得た。
酸化第二銅微粉末eの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が6.04m
2/g、平均粒子径が166.5nm、ピークの半価幅が0.3601°、結晶子径が260.8Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、1分12秒で溶解した。
【実施例6】
【0053】
実施例1において、ペイントシェーカーでの粉砕時間を0.5時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る酸化第二銅微粉末fを得た。
酸化第二銅微粉末fの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が4.34m
2/g、平均粒子径が231.7nm、ピークの半価幅が0.2457°、結晶子径が389.3Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、1分30秒で溶解した。
【実施例7】
【0054】
実施例1において、ペイントシェーカー後の乾燥粉に対して、大気雰囲気下500℃の温度で1時間熱処理した以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る酸化第二銅微粉末gを得た。
酸化第二銅微粉末gの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が14.80m
2/g、平均粒子径が68.0nm、ピークの半価幅が0.4439°、結晶子径が210.4Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、8秒で溶解した。
【実施例8】
【0055】
実施例1において、ペイントシェーカー後の乾燥粉に対して、大気雰囲気下400℃の温度で3時間熱処理した以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る酸化第二銅微粉末hを得た。
酸化第二銅微粉末hの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が17.68m
2/g、平均粒子径が56.9nm、ピークの半価幅が0.4720°、結晶子径が197.6Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、19秒で溶解した。
【実施例9】
【0056】
CuSO
4・5H
2O10gを、大気雰囲気下900℃の温度で4時間加熱することによって酸化第二銅粗粉末を得た以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る酸化第二銅微粉末iを得た。
酸化第二銅微粉末iの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が13.15m
2/g、平均粒子径が76.5nm、ピークの半価幅が0.4977°、結晶子径が187.4Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、1分32秒で溶解した。
【0057】
(比較例1)
実施例1において、ペイントシェーカーでの粉砕後の熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る酸化第二銅微粉末jを得た。
酸化第二銅微粉末jの粉末X線解析の結果、
図1に示すようにCuO単一相であった。また、比表面積が22.12m
2/g、平均粒子径が45.5nm、ピークの半価幅が0.6042°、結晶子径が153.9Åであった。そのSEM像を
図2に示す。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、6分で溶解した。
【0058】
(比較例2)
実施例1において、大気雰囲気下での熱処理を500℃で6時間とし、ペイントシェーカーでの粉砕後の熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る酸化第二銅微粉末kを得た。
酸化第二銅微粉末kの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が24.49m
2/g、平均粒子径が41.1nm、ピークの半価幅が0.6019°結晶子径が154.5Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、5分で溶解した。
【0059】
(比較例3)
実施例9において、ペイントシェーカーでの粉砕後の熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る酸化第二銅微粉末lを得た。
酸化第二銅微粉末lの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が24.57m
2/g、平均粒子径が40.9nm、ピークの半価幅が0.6138°、結晶子径が151.5Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、6分で溶解した。
【0060】
(比較例4)
実施例1において、ペイントシェーカーで粉砕した後の熱処理を、大気雰囲気下800℃の温度で1時間とした以外は、実施例1と同様にして比較例4に係る酸化第二銅微粉末mを得た。
酸化第二銅微粉末mの粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。また、比表面積が4.39m
2/g、平均粒子径が229.1nm、ピークの半価幅が0.1978°、結晶子径が493.0Åであった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、2分で溶解した。
【0061】
(参考例)
参考例として、実施例1における酸化第二銅粗粉末粉aの粉末X線解析の結果は、CuO単一相であった。また、比表面積は0.53m
2/g、平均粒子径が1897.6nm、ピークの半価幅が0.1666°、結晶子径が597.4Åであり、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、59分44秒で溶解した。
【0062】
以上の結果をまとめて表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の酸化第二銅微粉末は、比表面積が1m
2/g以上、50m
2/g以下であり、平均粒子粒子径が20nm以上、1100nm以下で、ピークの半価幅が0.2°以上、0.6°以下で、かつ結晶子径が155Å以上、490Å以下である場合、めっき液(硫酸銅水溶液)への溶解性が極めて高い、易溶性の酸化第二銅微粉末である。
【0063】
【表1】