特許第5649139号(P5649139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649139
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】銅表面の表面皮膜層構造
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20141211BHJP
   C23F 11/00 20060101ALI20141211BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20141211BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20141211BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20141211BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20141211BHJP
   B23K 101/38 20060101ALN20141211BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20141211BHJP
【FI】
   C23C28/00 A
   C23F11/00 E
   C23C18/16 Z
   B23K1/20 C
   B23K1/20 D
   H05K1/09 D
   H05K3/18 A
   B23K101:38
   B23K101:42
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-530003(P2012-530003)
(86)(22)【出願日】2011年11月24日
(86)【国際出願番号】JP2011077039
(87)【国際公開番号】WO2012073783
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2012年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2010-268657(P2010-268657)
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597157716
【氏名又は名称】JX金属商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100094709
【弁理士】
【氏名又は名称】加々美 紀雄
(72)【発明者】
【氏名】大内 高志
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 宏明
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−242194(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/085498(WO,A1)
【文献】 特開平11−286798(JP,A)
【文献】 特表2008−513339(JP,A)
【文献】 特開平10−237691(JP,A)
【文献】 特開2007−273982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08,
24/00−30/00
C23F 11/00−11/18
B23K 1/00− 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅表面にNi膜、次いでPd膜又はPdを主成分とする合金膜が形成され、さらに、その表面に、
一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩であって、下記式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、及び/又はそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はアミン化合物との塩からなる群から選択される1種もしくは2種以上を合計で0.01g/L以上溶媒に溶解した液からなるPd又はPdを主成分とする合金の表面処理剤を用いて有機皮膜が形成されてなることを特徴とする銅表面の表面皮膜層構造。
【化1】

(式(I)中、X〜X及びY〜Yは各々同一もしくは異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。)
【化2】

(式(II)中、R、R及びRは、各々同一もしくは異なってもよく、以下の基(A)を表し、Rは、以下の基(A)、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【化3】

基(A)中、X、及びYは、一般式(I)における定義と同じである。)
【化4】

(式(III)中、Xは水素原子、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yは水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、水酸基、又はアミノ基を表す。)
【請求項2】
前記表面処理剤がさらにハロゲン又はハロゲン化物塩を含有することを特徴とする請求項1記載の銅表面の表面皮膜層構造。
【請求項3】
前記表面処理剤のpHが9以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の銅表面の表面皮膜構造。
【請求項4】
前記表面処理剤がさらに界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜構造。
【請求項5】
前記Ni膜及び/又はPd膜もしくはPdを主成分とする合金膜が無電解めっきにより形成された膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造。
【請求項6】
前記表面処理剤による有機皮膜の形成は、前記表面処理剤に浸漬、又は前記表面処理剤を塗布ないし噴霧のいずれかにより形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造。
【請求項7】
請求項のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造を有することを特徴とする電子部品もしくは基板。
【請求項8】
請求項に記載の電子部品もしくは基板を用いたことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pd又はPdを主成分とする合金表面を有する電子部品もしくは基板において、Pd又はPdを主成分とする合金表面の酸化を抑える表面処理剤に関する。さらに該表面処理剤で処理を行った銅表面の表面皮膜層構造に関する。更に、本発明は、その表面処理を行って製造した電子部品、基板、及び該電子部品、基板を用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ付けは、融点が比較的低い物質を用いて物体同士を接合する技術であり、現代産業において、電子機器の接合、組み立て等に幅広く用いられている。一般的に用いられているはんだはSn−Pb合金であり、その共晶組成(63%Sn−残部Pb)の融点が183℃と低いものであることから、そのはんだ付けは220〜230℃で行われるため、電子部品や基板に対しほとんど熱損傷を与えない。しかも、Sn−Pb合金は、はんだ付け性が良好であるとともに、はんだ付け時にすぐに凝固して、はんだ付け部に振動が加わっても割れや剥離を起こし難いという優れた特徴も有している。
【0003】
一般に電子機器は、外枠や基板等の合成樹脂と導体部やフレーム等の金属により形成されており、廃棄処分された場合は、焼却処分されず、ほとんどが地中に埋め立てられる。近年、地上に降る雨は酸性を示す傾向にあり(酸性雨)、地中に埋められた電子機器のはんだを溶出させて、地下水を汚染することが問題化している。このため、特に電子機器業界において、鉛を含まないはんだ(鉛フリーはんだ)への代替の動きが急速に進んでいる。
【0004】
また、電子部品の外部リード端子には、そのはんだ濡れ性と耐食性を向上させるため、主に、はんだめっき(90%Sn−残部Pb)が施されており、その鉛フリー化への対応が望まれている。鉛フリーはんだめっきの候補としては、純Sn、Sn−Ag(Cu)系、Sn−Zn系、Sn−Bi系に大別される。
【0005】
一方、基板、リードフレーム等の電子部品のはんだで接合されるべき面へのめっきは、一般的に電解Ni−Au、電解Sn系、無電解Sn、無電解Ag、無電解Ni−Au、無電解Ni−Pd−Au、OSP(Organic Solderbility Preservatives ,有機はんだ付け性保護剤、別名:耐熱性プリフラックス)が広く使用されている。高密度化に伴い、基板は独立パッドを有する製品が増加しており、無電解めっき、又はOSP処理が有効とされている。はんだ接合面以外に独立パッドなどの接点を有する基板には、無電解Ni−Au、無電解Ni−Pd−Au処理が施される。ここで、金は非常に安定な金属で酸化を起こさない特徴があり、一方、Ni、Pd皮膜は銅よりは酸化しにくいものの金に比べると酸化しやすい金属である。
したがって、はんだ接合面や接点の最終表面にAuめっきをする目的は、NiやPdの酸化を抑え、優れたはんだ性や接点性能を保つことである。逆の面からみると、無電解Ni−Auめっきや無電解Ni−Pd−Auめっきを施したはんだ接合面や接点は、最終表面に高価なAuを使用するため、めっき加工費が高価となる欠点がある。
【0006】
酸化を抑制する表面処理剤としては、本発明者らによる特許文献1の酸性リン酸エステル及びその塩からなる表面処理剤、あるいは特許文献2で提案される、リン酸ジフェニルエステルなどからなる酸化防止剤があるが、いずれもエステル結合を分子内に持ち、比較的高温(200℃以上)の熱処理によってエステル結合が分解するために、鉛フリーはんだのリフロープロセスでのはんだ接合部や電気接点の酸化防止を解決することはできない。
既に知られているOSP処理は、耐熱性、はんだ性の両面に優れており、はんだ接合面のみに限れば優れた技術と言える。しかしながら、同一基板内にはんだ接合面と接点とが混在する基板においては、特に接点において、有機処理であるため、力学的な磨耗に弱く、すぐに剥がれ、下地の銅が露出し、銅の酸化が進んでしまい抵抗値が低下する問題があった。接点においては、力学的な磨耗に強く、磨耗による皮膜の減少が少なく安定していることが望まれる。
【0007】
また、表面処理剤として一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち、分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩の1種もしくは2種以上を合計で0.01g/L以上含有する表面処理剤が特許文献4に記載されている。特にSn及びSn合金に対し、耐酸化性を付与し、はんだ濡れ性を改善し、ウィスカーの発生を抑制する効果を有しているが、前記表面処理剤を銅配線部に用いた場合の、リフロープロセスでのはんだ接合部や電気接点の酸化抑制、及び接点安定性に関しては、何ら記載がない。
したがって、金を使わず、Pd上に安価な有機皮膜を張ることにより、Pd酸化抑制と優れたはんだ性と接点安定性を兼ね備える表面処理剤は未だ見出せていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4215235号公報
【特許文献2】特開平7−188942号公報
【特許文献3】特開2005−349439号公報
【特許文献4】特許第4518507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、銅表面を有する基板、リードフレームなどの電子部品にははんだ接合する箇所や、銅表面を有する接点やコネクター端子などがあり、基材の銅そのままでは機器の組立て工程や使用中に銅の表面が酸化されるため、その表面を、例えばNi膜を介して、最終的には金皮膜を設ける処理が行われる。最終表面を金とする目的は、優れたはんだ性や接点としての特性を確保することであるが、高価な金を使用するためめっき加工費が高価になる欠点がある。そのため、銅よりも優れた耐酸化性を保持しつつ、金を使わない皮膜として、例えばNi−Pd皮膜が検討されてきたが、はんだ付けをリフロープロセスで行う場合に200℃を超える熱に晒されたときにはPd表面が酸化され、はんだ濡れ性が著しく劣化する問題があった。本発明は、金属、特にPd又はそれを主成分とする合金表面の酸化を抑え、はんだ濡れ性、はんだ接合性等のはんだ性、及び接点としての特性を改善する表面処理剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、力学的磨耗に強く、磨耗による皮膜の減少が少なく安定しているコネクター端子を得るための表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、銅表面にNi−Pd又はPdを主成分とする合金皮膜を形成し、特定の有機皮膜をPd又はPdを主成分とする合金の表面に張ることにより、Pd又はPdを主成分とする合金表面の酸化を防ぎ、はんだ濡れ性の劣化を最小限に抑えることを見出し、本発明に至った。
本発明者らが見出した有機皮膜は、一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩、並びにリン酸からなる群から選択される1種もしくは2種以上を合計で0.01g/L以上含む表面処理剤で表面処理してなる有機皮膜である。これにより、Pd又はPdを主成分とする合金表面に耐酸化性を付与しつつはんだ濡れ性を改善することができる。また、はんだ接合性も良好で、この表面処理を施したPd又はPdを主成分とする合金部を有する接点は、その接点としての特性維持に顕著な改善効果が見られた。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)銅表面にNi膜、次いでPd膜又はPdを主成分とする合金膜が形成され、さらに、その表面に、
一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩であって、下記式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、及び/又はそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はアミン化合物との塩からなる群から選択される1種もしくは2種以上を合計で0.01g/L以上溶媒に溶解した液からなるPd又はPdを主成分とする合金の表面処理剤を用いて有機皮膜が形成されてなることを特徴とする銅表面の表面皮膜層構造。
【化1】

(式(I)中、X〜X及びY〜Yは各々同一もしくは異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。)
【化2】

(式(II)中、R、R及びRは、各々同一もしくは異なってもよく、以下の基(A)を表し、Rは、以下の基(A)、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【化3】

基(A)中、X、及びYは、一般式(I)における定義と同じである。)
【化4】

(式(III)中、Xは水素原子、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yは水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、水酸基、又はアミノ基を表す。)
(2)前記表面処理剤がさらにハロゲン又はハロゲン化物塩を含有することを特徴とする前記(1)記載の銅表面の表面皮膜層構造。
(3)前記表面処理剤のpHが9以下であることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造。
(4)前記表面処理剤がさらに界面活性剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造。
)前記Ni膜及び/又はPd膜もしくはPdを主成分とする合金膜が無電解めっきにより形成された膜であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造。
)前記表面処理剤による有機皮膜の形成は、前記表面処理剤に浸漬、又は前記表面処理剤を塗布ないし噴霧のいずれかにより形成されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造。
)前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の銅表面の表面皮膜層構造を有することを特徴とする電子部品もしくは基板。
)前記()に記載の電子部品もしくは基板を用いたことを特徴とする装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面処理剤を用いてPd又はPdを主成分とする合金を表面処理することにより、Pd又はPdを主成分とする合金表面に耐酸化性を付与し、はんだ濡れ性を改善することができる。
従って、電子回路もしくは基板がそなえる銅表面をNi膜、ついでPd膜又はPdを主成分とする合金膜で被覆し、さらにその表面を、本発明の表面処理剤でPd又はPdを主成分とする合金を表面処理することにより、高価なAuを用いなくても、Pd又はPdを主成分とする合金表面の耐酸化性を付与し、はんだ濡れ性を改善することができる。また、はんだ接合性にも優れている。
さらに、本発明の表面処理剤を用いた表面処理を含む工程で製造した電子部品は、その接点安定性が著しく改善される。
また、本発明の表面処理剤をコネクター端子に適用した場合には、接点と同様に力学的な磨耗に強く、磨耗による皮膜の減少が少なく安定している。しかもコストも安い。また、銅配線の場合と同じく、熱処理後のはんだ濡れ性の劣化や接触抵抗の上昇を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のPd又はPdを主成分とする合金の表面処理剤は、一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩、並びにリン酸からなる群から選択される1種もしくは2種以上を合計で0.01g/L以上を含有する表面処理剤であり、被処理剤表面の耐酸化性を向上させることができる。
【0014】
一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩、並びにリン酸の1種もしくは2種以上の含有量が0.01g/L未満であるとその効果が小さい。また、逆に添加量が多過ぎても特性が劣化することはないため、添加量の上限はないが、コスト的な問題から、添加量は0.01〜500g/Lが望ましく、より好ましくは0.1〜100g/Lである。
【0015】
本発明の表面処理剤は、分子内にエステル結合を含まない化合物を用いるため、熱処理によるエステル結合の分解がなく、比較的高温で熱処理しても十分な耐酸化性が得られる。従って、はんだ接合時の良好なはんだ性を付与することができる。
【0016】
また、一分子内に2個以上のホスホン酸基を有する化合物の方が、一分子内にホスホン酸基が1個の化合物より、詳細なメカニズムは不明であるが、耐酸化性能が優れることが判明した。一分子内のホスホン酸基の数は、コスト的な問題から2〜6が好ましい。
一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち、分子内にエステル結合を含まない化合物、及び/又はその塩としては、例えば下記一般式(I)、(II)、(III)で示される化合物、及び/又はそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン化合物との塩が挙げられる。
【0017】
【化5】
(式(I)中、X〜X及びY〜Yは各々同一もしくは異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。)
【0018】
【化6】
(式(II)中、R、R及びRは、各々同一もしくは異なってもよく、以下の基(A)を表し、Rは、以下の基(A)、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【化7】
基(A)中、X、及びYは、一般式(I)における定義と同じである。)
【0019】
【化8】
(式(III)中、Xは水素原子、又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yは水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、水酸基、又はアミノ基を表す。)
【0020】
上記一般式(I)で表される化合物としては、ニトリロトリスメチレンホスホン酸等が工業的に入手可能なため特に好ましい。
同様に、上記一般式(II)で表される化合物としては、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタキスメチレンホスホン酸等が特に好ましく、上記一般式(III)で表される化合物としては、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸等が特に好ましい。
【0021】
上記化合物のアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が好ましく、アミン化合物との塩としては、トリエチルアミン塩やトリエタノールアミン塩等が好ましい。
【0022】
また、本発明の表面処理剤は、さらにハロゲン又はハロゲン化物塩を含有することが好ましい。ハロゲン又はハロゲン化物塩の量は、0.01g/L以上が好ましい。0.01g/L未満であるとその効果が小さく、また、逆に添加量が多すぎても、酸化防止性が劣化する、また、コスト的に好ましくないため、添加量は0.01〜500g/Lが望ましく、より望ましくは0.1〜100g/Lである。
ハロゲン又はハロゲン化物塩としては、ハロゲン、ハロゲン化水素のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩等が挙げられ、ヨウ素、ヨウ化水素のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、臭素、臭素化水素のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が好ましく、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化アンモニウム、臭素化カリム、臭素化ナトリウム、臭素化アンモニウムがより好ましい。
【0023】
本発明の表面処理剤は、一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩、又はリン酸とを溶媒に溶解して用いることができる。使用される溶媒としては、可溶であれば特に制限されるものでない。例えば、水や、アルコール、グリコール等の極性溶媒が挙げられるが、溶解度、コスト等を考慮すると水が好ましい。
【0024】
また、水系表面処理剤の場合は、pHを9以下の範囲とするが、特にpHを5以下に調整することにより、被処理表面の耐酸化性が更に向上することを見出した。表面処理剤のpHは、素材等への影響を鑑み、より好ましくはpH0〜3である。pH調整剤としては、一般的に入手可能な酸、アルカリが使用可能である。
【0025】
更に、水系表面処理剤に界面活性剤を0.01〜10g/L添加し、pHを5以下に調整することにより、被処理表面の耐酸化性がよりいっそう向上する。界面活性剤の添加量が0.01g/L未満、あるいは、10g/Lを超えて添加しても耐酸化性の効果が得られない。界面活性剤の添加量は、好ましくは0.1〜10g/Lである。
界面活性剤としては、市販のアニオン系、カチオン系、ノニオン系、及び両性界面活性剤の1種もしくは2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0026】
アニオン系界面活性剤としては、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩型、スルホサクシネート型等が、カチオン系界面活性剤としては、四級アンモニウム塩型、アミン塩型等が、ノニオン系界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、高級アルコールプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、エチレンジアミンのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、高級脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドのエチレンオキサイド付加物等が、両性界面活性剤としては、アミノ酸型、ベタイン型等が好ましい。
【0027】
pHを5以下の範囲で使用する際は、アニオン系、ノニオン系の1種もしくは2種以上を適宜選択して使用することが好ましい。中でも、ノニオン系界面活性剤では、ポリエチレングリコール型が特に好ましく、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、高級アルコールプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を特に好ましく用いることができる。また、アニオン系界面活性剤では、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型が特に好ましい。
【0028】
また、本発明の表面処理剤は、所望の性能を付与させる目的で本来の性質を損なわない範囲の量の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、防腐剤、pH緩衝剤等が挙げられ、これらは従来公知のものを用いることができる。
【0029】
本発明の表面処理剤は、Pd又はPdを主成分とする合金表面の耐酸化性を向上することができる。前記Pd又はPdを主成分とする合金としては、特に制限はないが、特に特定の銅表面を有する配線部、接点、コネクター端子の処理に好適である。
以下に本発明の銅表面の表面皮膜層構造について詳述する。
本発明の銅表面の表面皮膜層構造は、電子部品もしくは基板が備える銅表面にNi膜、さらにPd膜又はPdを主成分とする合金膜が形成され、さらに本発明の表面処理剤で処理されて有機皮膜が形成されてなる。
【0030】
前記Ni膜はNiを主成分とする合金膜であってもよく、Niを主成分とする合金としては、Ni−P、Ni−Bが挙げられる。Ni−Pの場合、リンの含有率は2〜13重量%が好ましく、5〜12重量%がより好ましい。電子部品にはNi−Bが使用される。Ni−Bの場合、ホウ素の含有率は1〜5重量%が好ましく、2〜4重量%がより好ましい。
また、本発明の表面処理剤で処理される金属は、Pd又はそれを主成分とする合金である。Pdを主成分とする合金としては、Pd−P、Pd−Ni、Pd−Co、Pd−Au、Pd−Ag、Pd−In等が挙げられ、Pd−Pの場合、リンの含有率は1〜10重量%が好ましく、2〜6重量%がより好ましい。
必要に応じてNi膜とPd膜又はPdを主成分とする合金膜との間に別種の金属膜を追加してもよい。
尚、本発明において、Niを主成分とする合金、及びPdを主成分とする合金とは、合金中Ni、及びPdをそれぞれ50重量%以上含有する合金を言う。
【0031】
前記Ni膜及び/又はPd膜もしくはPdを主成分とする合金膜は、複雑な回路に均一な厚みでめっきをつけるために、電解めっきでなく無電解めっきで形成することが好ましい。電解めっきの場合、電流を流すために複雑な回路の接続を考えなければならないことと、回路の抵抗による電位差からめっき膜のばらつきが生じる。
用いる無電解めっき液は公知のめっき液を用いることができる。
Ni膜は銅の拡散を防止する。銅の拡散を防止するためにはNi膜の厚さは0.5μm以上が好ましい。上限は特にないが、無電解めっきでNi膜を形成することを考慮すると15μm以下が好ましい。従って、Ni膜の厚さは、0.5〜15μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。
Pd膜又はPdを主成分とする合金膜の厚さは0.005〜0.5μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。Pd膜又はPdを主成分とする合金膜は薄いほどよいが、0.005μm未満では特性が発揮できない。厚い分には特性に影響せず制限はないが、コストの問題があり、0.5μm以下が好ましい。
また、本発明の表面処理剤で形成される有機皮膜の厚さは0.1nm〜10nmが好ましい。厚さが0.1nm未満であると効果が小さく、10nmを超えるとはんだ濡れ性が悪くなる。
【0032】
本発明の表面処理剤を用いてPd又はPdを主成分とする合金を表面処理するには、金属の表面に皮膜を形成する方法であればよく、例えば、金属を単に表面処理剤に浸漬させる方法、表面処理剤をシャワーなどで噴霧する方法、又はエアードコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、グラビアコータ、リバースコータ、キャストコータなどの装置を用いて塗布する方法が挙げられる。
【0033】
本発明の表面処理剤で表面処理をする被処理物の形状は、線状、板・帯・箔状、粒状等いずれの形状であってもよく、いずれの形状であっても、その表面がPd又はPdを主成分とする合金であればよく、特に銅表面をNi膜、ついでPd膜又はPdを主成分とする合金膜で被覆し、さらに上記表面処理剤で処理することが好ましい。本発明の表面処理剤は、特に、電子部品、基板等に形成されたPd又はPdを主成分とする合金表面を処理するときに効果を発揮するが、耐酸化性、はんだ性、接点安定性を兼ね備えることを目的とするのであればどのような様態に対しても適用することができる。
【0034】
本発明の表面処理により、電子部品もしくは基板の接続端子部の導体表面、特に銅表面上にNi膜、さらにPd膜又はPdを主成分とする合金膜が形成された表面を処理することにより、耐酸化性に優れ、はんだ濡れ性が改善された電子部品もしくは基板とすることができる。また、はんだ接合性にも優れた電子部品もしくは基板とすることができる。
また無電解Auめっき皮膜のビッカーズ硬度は70Hv、Pd−Pのビッカーズ硬度は400Hv前後、純Pdのビッカーズ硬度は300Hvであるので、本発明の電子部品及び基板は、Au皮膜より硬く、耐磨耗性に優れ、接点としての特性に優れている。
前記電子部品及び基板は、液晶ディスプレイ、携帯電話等の装置に好適に用いることができる。
また、本発明の、銅表面上にNi膜、さらにPd膜又はPdを主成分とする合金膜が形成され、さらに本発明の表面処理剤で処理されて有機皮膜が形成されてなる表面皮膜層構造は、コネクター端子においても、接点と同様力学的な磨耗に強く、磨耗による皮膜の減少が少なく安定しており、有効である。また、コネクター端子を長期間に渡って継続使用するような場合は、処理表面の有機皮膜の一部に剥離が生じる恐れも想定されるが、そのような場合最外面にPd皮膜又はPdを主成分とする合金皮膜が露出されることとなるがPd皮膜及びPdを主成分とする合金皮膜は金皮膜より硬く、耐摩耗性に優れており、コスト的にも安価である。また、銅配線の場合と同じく、熱処理後のはんだ濡れ性の劣化や接触抵抗の上昇を解決することができる。
なお、コネクター端子の場合は、Ni膜、Pd膜及びPdを主成分とする合金膜は電気めっきで形成してもよく、電気Niめっき液、電気Pdめっき液、電気Pdを主成分とする合金めっき液としては公知のめっき液を用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
実施例1〜9
一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち、分子内にエステル結合を含まない化合物又はその塩を有効成分とする水溶液を9種類調製した(実施例1〜9)。内訳を表1に示す。
【0036】
テスト基板として厚み0.8mmのFR−4基材を用い、銅ランドとして、4mm角のランド(はんだ広がりに使用)および0.4mmφのランド(プル、シェア評価に使用)の2種を作製した。ともにオーバーレジストタイプである。この基材に対し、以下の処理を行った。
脱脂(KG−511日鉱商事製、45℃、5分)
→湯洗→水洗
→ソフトエッチング
(過硫酸Na:100g/L、96%−硫酸:15ml/L、25℃、1分)
→水洗
→酸浸漬(96%−硫酸、25℃、2分)
→水洗
→プレディップ(35%−塩酸、25℃、1分)
→アクチベーター(KG−529日鉱商事製、25℃、2分)
→水洗
→酸浸漬(96%−硫酸、30ml/L、25℃、10秒)
→無電解Niめっき(KG−535日鉱商事製、80℃、30分)
→水洗
→無電解Pdめっき
(KG−1100日鉱商事製、50℃、3分)
【0037】
以上の工程で基板上の銅配線上に、無電解めっきによりNi処理、ついでPd処理し、さらに実施例1〜9に示した処理剤に、浴温40℃で30秒間浸漬した後、水洗し、乾燥させたものを試験基板とした。
尚、前記無電解Niめっきにより形成されたNi膜、無電解Pdめっきにより形成されたPd膜厚さを蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ製)で、処理剤により形成された有機皮膜の厚さをオージェ分光のデプスプロファイルで測定した結果、Ni膜厚:5μm、Pd膜厚:0.1μm、有機皮膜の厚さ:1nmであった。
【0038】
これらの試験基板に対し、以下の評価を行った。表1に試験結果を示す。
はんだ広がりの評価
30%ロジンフラックスを上記で形成した4mm角銅ランド上の4mm角バッドに塗布し、はんだボール(エコソルダーボールM705 0.4mmφ)を搭載し、リフロー装置(RF−330:日本パルス製)にて、以下に示す熱履歴条件ではんだを溶融させ、はんだ広がり(リフロー前)を測定した。
熱履歴は以下の通りである。
プレヒート:165℃
リフロー温度:215℃(ピーク温度256℃)
リフロー炉内の移動速度:毎分17cm
炉投入から取出しまで8分とした。
また、上記熱履歴の条件によるリフローを4回行った試験基板も作製し、同様にはんだボールを搭載し、はんだ広がり(リフロー後)の評価を行った。
【0039】
比較例1〜3、参考例1〜2
表面処理を表1に記載したとおり、本発明の表面処理剤以外の表面処理剤による有機処理、有機処理を行わないもの、無電解Ni−Au、OSP処理とした以外は、実施例1で作製したと同じ工程で試験基盤を作製し、それぞれ評価した。
すなわち、ホスホン酸成分の濃度が下限以下の処理剤で処理した基材(比較例1)、ホスホン酸成分が本発明外の処理剤で処理した基材(比較例2)、無電解Ni−Pdめっきの後水洗乾燥のみとし、表面処理を省略した基材(比較例3)を評価した。また、無電解Ni−Pdめっきの代わりに無電解Ni−Auめっきをした場合(参考例1)、無電解Ni−PdめっきをせずにOSP処理した場合(参考例2)も併せて評価した。試験結果を併せて表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
結果を見ると、実施例4〜9はリフロー4回後において、参考例1及び参考例2と同等のはんだ性を示し、特に従来技術である銅配線表面へのNiめっき−Auめっきの代替として、本発明で表面処理「Niめっき−Pdめっき−本発明の処理剤による処理」が使用可能であることが分かる。一方、比較例2、3は、リフロー後のはんだ広がりの低下が激しい。
【0042】
実施例4、比較例3、参考例1で得られた試験基板に対し、以下の評価を行った。表2〜4に評価結果を示す。
はんだプル強度
30%ロジンフラックスを4mmφのランド(ボールグリッドアレイ)に塗布し、はんだ広がり(リフロー後)の評価と同様に、リフローを4回行った後、はんだボール(エコソルダーボールM705 0.4mmφ)を搭載し、リフロー装置(RF−330:日本パルス製)にてはんだを溶解させ、プル強度を以下の条件で測定した。
使用機器:ボンドテスターシリーズ4000(デイジ社製)
測定条件:プル強度:300μm/s、温度:300℃
尚、プル強度の測定は12点行った。その平均値、最大値、最小値を以下に示す。
【0043】
【表2】
実施例4は参考例1と同等のはんだプル強度を有しているが、比較例3は強度が低い。
【0044】
はんだシェア強度
30%ロジンフラックスを4mmφのランド(ボールグリッドアレイ)に塗布し、はんだ広がり(リフロー後)の評価と同様に、リフローを4回行った後、はんだボール(エコソルダーボールM705 0.4mmφ)を搭載し、リフロー装置(RF−330:日本パルス製)にてはんだを溶解させ、シェア強度を以下の条件で測定した。
使用機器:ボンドテスターシリーズ4000(デイジ社製)
測定条件:シェア速度:380μm/s、シェア高さ:50μm
尚、はんだシェア強度の測定は20点行った。その平均値、最大値、最小値を以下に示す。
【0045】
【表3】
実施例4、比較例3、参考例1のはんだシェア強度の差はほとんど見られなかった。
【0046】
はんだシェアモード
はんだシェア強度を測定した後に、顕微鏡にて破断面を観察し、以下のように評価した。A、Bモードが良品と判断できる。表4にその割合(%)を示す。
A:100%はんだ間破壊
B:50%以上はんだ間破壊
C:50%未満はんだ間破壊
D:100%Ni破壊
【0047】
【表4】
実施例4は参考例1と同様のはんだ性を有しているが、比較例3ではBモードが増加した。
はんだプル強度、はんだシェア強度、はんだシェアモードの結果より、本発明の処理剤で処理したPd表面ははんだ接合性にも優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
電子回路もしくは基板がそなえる銅の表面をNi膜、ついでPd膜又はPdを主成分とする合金膜で被覆し、さらにその表面を、一分子内に2個以上のホスホン酸基を持ち分子内にエステル結合を含まない化合物及び/又はその塩、並びにリン酸からなる群から選択される1種もしくは2種以上を合計で0.01g/L以上溶媒に溶解した液からなる表面処理剤で表面処理することにより、Pd又はPdを主成分とする合金表面の耐酸化性を付与し、はんだ濡れ性を改善することができる。また、はんだ接合性も良好である。
この表面処理剤のpHを5以下にすることにより、更に界面活性剤を0.01〜10g/L含有させることにより銅表面を被覆するNi−Pd又はPdを主成分とする合金膜の耐酸化性が向上する。
また、本発明の表面処理剤を用いた配線部への表面処理を含む工程で製造した電子部品は、その接点安定性が著しく改善される。
又、本発明の表面処理剤は、コネクター端子においても用いることができ、力学的磨耗に強く、磨耗による皮膜の減少が少なく安定しているコネクター端子とすることができる。そして、長期間に渡って継続使用するような場合、処理表面の有機皮膜の一部に剥離が生じて最外面にPd又はPdを主成分とする合金が露出する恐れも想定されるが、そのような場合においても、Pd皮膜及びPdを主成分とする合金皮膜は金皮膜より硬いため、耐摩耗性に優れ、しかもコストも安い。また、銅配線の場合と同じく、熱処理後のはんだ濡れ性の劣化や接触抵抗の上昇を解決することができる。