特許第5649186号(P5649186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5649186オニオンライクカーボンおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649186
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】オニオンライクカーボンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20141211BHJP
   C01B 31/04 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   C01B31/02 101F
   C01B31/04 101Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-503891(P2011-503891)
(86)(22)【出願日】2010年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2010054469
(87)【国際公開番号】WO2010104200
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2012年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2009-57555(P2009-57555)
(32)【優先日】2009年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100139642
【弁理士】
【氏名又は名称】相馬 貴昌
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】真下 茂
(72)【発明者】
【氏名】エミル オムルザクウル
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 秀治
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−217431(JP,A)
【文献】 J. Suehiro et al. ,Production of carbon nanoparticles using pulsed arc discharge triggered by dielectric breakdown in water,Jpn. J. Appl. Phys. ,日本,The Japan Society of Applied Physics,2003年12月 1日,Vol. 42,pp. L1483-L1485
【文献】 N. Sano et al. ,Synthesis of carbon 'onions' in water,Nature,英国,Nature Publishing Group,2001年11月29日,Vol. 414, No. 6863,pp. 506-507
【文献】 N. Sano et al. ,Properties of carbon onions produced by an arc discharge in water,J. Appl. Phys. ,米国,American Institute of Physics,2002年 9月 1日,Vol. 92, No. 5,pp. 2783-2789
【文献】 C. P. Li et al. ,Hydrocarbon and carbon nanostructures produced by sonochemical reactions of organic solvents on hydrogen-passivated silicon nanowires under ambient conditions,Chem. Mater. ,米国,American Chemical Society,2005年10月19日,Vol. 17, No. 23,pp. 5780-5788
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オニオンライクカーボンの製造方法であって、液体中で炭素電極間に20〜500Vの範囲の電圧を印加してパルスプラズマ放電させることを特徴とするオニオンライクカーボンの製造方法。
【請求項2】
前記パルスプラズマ放電は、5〜100ミリ秒の間隔で与え、パルスプラズマ1回あたりの持続時間は1〜50マイクロ秒であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニオンライクカーボンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オニオンライクカーボンはカーボンオニオン、炭素オニオン、ナノサイズ真球状黒鉛、オニオングラファイト、オニオンフラーレンなどとも呼ばれ、フラーレンやカーボンナノチューブの同属体であり、新しい炭素材料として注目されている材料である。その形状は、同心球状の炭素構造で、タマネギのように球状炭素構造が入れ子を成して重なっている。
【0003】
オニオンライクカーボンは、軽量かつ安定であり、放射線に対する耐性、高温での耐性が優れている。また、その形状から、高弾性が期待され、真空下あるいは無潤滑環境下で使用できる固体潤滑剤としての応用が考えられている。また、医薬品、化粧品、燃料電池用水素吸蔵炭素材料としての用途も考えられている。
【0004】
しかし、オニオンライクカーボンはその生産性に大きな課題があり、従来より様々な製造方法が提案されているが、未だ、実用に供するにはいずれの方法も問題があった。
【0005】
すなわち、(1)オニオンライクカーボンの合成法としては、グラッシーカーボンからなる成形体を熱間静水圧加圧法で、1000〜3000気圧下、2000〜3000℃の熱処理を行って製造する方法が示されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、(2)ダイヤモンド微粉末を不活性ガス雰囲気中にて1600〜1800℃で加熱する方法(特許文献2参照)、(3)ダイヤモンド微粉末を不活性ガス中で赤外線ランプを用いて1700℃以上に加熱する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、(4)ポリインに光、電子線またはイオンビームを照射、あるいは加熱処理を施すことによりオニオンライクカーボンを製造する方法が示されている(特許文献4参照)。さらに、(5)ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデンまたはポリフッ化ビニリデンに光、電子線またはイオンビームを照射する方法(特許文献5参照)、(6)煤状炭素に電子線、ガンマ線、X線、イオン線などの高エネルギービームを照射してオニオンライクカーボンへ転換する方法が示されている(特許文献6参照)。
【0008】
(7)二重結合または三重結合を持つ炭素材料にX線、マイクロ波および超音波の1種以上を照射し、中空または金属を内包するオニオンライクカーボンを製造する方法が示されている(特許文献7参照)。(8)二重結合または三重結合を持つ材料に光、電子線またはイオンビームを照射し、オニオンライクカーボンを製造する方法も示されている(特許文献8参照)。
【0009】
(9)アンバランスドマグネトロンスパッタリング法でオニオンライクカーボン膜を製造する方法が示されている(特許文献9参照)。
【0010】
(10)SiC粉末とCu粉末の加圧成形体に35万気圧以上、2700℃以上の超高圧・超高温の圧縮衝撃を加えて生成する方法が示されている(特許文献10参照)。
【0011】
更に、放電現象を使用した方法としては、(11)水中で、炭素電極間にアーク放電を発生させ、オニオンライクカーボンを製造する方法が示されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−208805号公報
【特許文献2】特開平11−157818号公報
【特許文献3】特開2002−80212号公報
【特許文献4】特開平11−310406号公報
【特許文献5】特開平11−349307号公報
【特許文献6】特開2001−48508号公報
【特許文献7】特開2000−109310号公報
【特許文献8】特開2000−16806号公報
【特許文献9】特開2002−105623号公報
【特許文献10】特開2003−137518号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Materials Research Bulletin 44(2009)324−327. マテリアル リサーチ ブレティン 44巻 2009年 324−327頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(1)の方法には、ダイヤモンドの高圧合成に相当する高価な装置を必要とし、製造原価も合成ダイヤモンドに匹敵するものと考えられ、汎用的ではない。
(2、3)の方法では、これらの方法は、原料粉末が高価であることから、オニオングラファイトは原料粉末よりさらに高価になるという問題がある。
(4,5,6,7,8)の方法では、これらの方法はいずれも対象とする原料への投入エネルギーが限られており、量産には限界がある。
(9)の方法では、薄膜法ゆえ、オニオンライクカーボン粉末の製造には限界があり、生成速度も低く、量的にも限界がある。
(10)の方法では、高温・高圧という極限環境を作る必要があり装置上の対応が困難であることに加え、合成後の分離精製にも課題を残している。
(11)の方法では、反応の選択率が低く、アモルファス炭素が多量に生成し、分離が困難という問題点がある。
【0015】
したがって、本発明の目的は、工業的規模で安定的に、オニオンライクカーボンを製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ね、溶媒中、触媒存在下で炭素金属電極間にパルスプラズマを発生することにより、オニオンライクカーボンを得ることができることを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
[1]オニオンライクカーボンの製造方法であって、液体中で炭素電極間にパルスプラズマ放電させることを特徴とするオニオンライクカーボンの製造方法。
[2]グラファイト層間距離が0.40nm以上のオニオンライクカーボン。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法により、オニオンライクカーボンを比較的低電圧、低電流であり、パルス放電を行うなどの低エネルギーで製造することができる。また、本発明のオニオンライクカーボンは、グラファイト層間距離が広く、Liイオン2次電池の電極用途などにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で得られた黒色粉末のTEM写真である(倍率:10万倍)。
図2】実施例1で得られた黒色粉末のTEM写真である(倍率:50万倍)。
図3】実施例2で得られた黒色粉末のTEM写真である(倍率:10万倍)。
図4】実施例2で得られた黒色粉末のTEM写真である(倍率:50万倍)。
図5】比較例で得られた黒色粉末のTEM写真である(倍率:20万倍)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のオニオンライクカーボンは、その形状が同心球状の炭素構造をしているが、グラファイト層間距離が0.40nm以上、より特定的には0.50nm以上であることが特徴的である。このような広いグラファイト層間距離をもったオニオンライクカーボンは先行技術の方法では得られておらず、新規である。グラファイト層間に各種イオンを収容することができ、特に、Liイオン2次電池の電極用途などに有用である。
【0021】
本発明のオニオンライクカーボンの製造方法は、液体中に炭素電極間にパルスプラズマ放電させることを特徴とするものであり、炭素電極としては、グラファイト、アモルファスカーボン、グラッシーカーボンなどいずれの炭素材料を使用することができる。
【0022】
電極の形態としては、棒状、針金状、板状などいずれの形態であってもかまわない。両極の大きさに関しても、どちらかの大きさが異なるなどの形状を有していてもかまわない。また、両極は、同一の炭素材料または異なった材料を使用しても良く、単一または複数の炭素材料で成型されたものを使用しても構わない。
【0023】
本発明では、液体中でオニオンライクカーボンを生成させる。使用できる液体(溶媒)としては、特に限定されるものではなく、反応に影響を与えないものであれば、特に制限されない。液体は2種以上の化合物の混合物でもよい。ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、シクロオクタンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンのような芳香族炭化水素、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジメチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエーテル類を使用することもできる。生成する炭素生成物の分散、引火、酸化性を考慮して、水、飽和炭化水素、芳香族炭化水素およびアルコール類の使用が好ましく、メタノール、エタノールの使用が好ましい。
【0024】
液体の使用量としては、特に制限されるものではなく、両電極が液体中にあればよい。より好ましくは、プラズマの発生により液体が飛散したり、生成物濃度によって、液の拡散性がなくならない程度にあればよい。
【0025】
パルスプラズマ放電させる温度としては、特に制限されるものではなく、使用する液体の種類にも依存する。通常、室温〜300℃の範囲で実施される。高すぎる温度では、使用する溶媒の蒸気圧が上がり、プラズマにより引火する可能性があるため好ましくなく、低すぎる温度では、溶媒の粘度が上がり、生成物の拡散性が損なわれるため好ましくない。
【0026】
本発明では、液体中で炭素電極間にパルスプラズマ放電させることにより、オニオンライクカーボンが生成される。プラズマを発生させる電圧としては、特に制限されるものではなく、20V〜500Vの範囲、安全性、特殊な装置の必要性を考慮して、60V〜400Vの範囲が好ましく、80V〜300Vの範囲がより好ましい。
【0027】
プラズマを発生させる電流としては、特に制限されるものではなく、0.1〜20Aの範囲、エネルギー効率を考慮して、0.2〜10Aの範囲で実施することが好ましい。
【0028】
パルスプラズマを与える間隔に関しては、特に制限されるものではないが、5〜100ミリ秒が好ましく、6〜50ミリ秒のサイクルがより好ましい。プラズマを与える間隔が短すぎると、プラズマ放電により発生した炭素ラジカルの消失前に、更に炭素ラジカルの発生を誘発するため、オニオンライクカーボンへの成長のほか、アモルファス炭素の生成に繋がるため好ましくない。また、長すぎる放電間隔では、プラズマを誘起するために使用されるエネルギーが多く必要となり、オニオンライクカーボンの生成効率が低下するため好ましくない。
【0029】
パルスプラズマ1回あたりの持続時間もまた、与える電圧および電流によって異なるが、通常1〜50マイクロ秒、放電の効率を考慮して、好ましくは2〜30マイクロ秒の範囲で実施される。プラズマ発生時間が長すぎると、プラズマ放電により発生した炭素ラジカルが多量に誘発されるため、オニオンライクカーボンへの成長のほか、アモルファス炭素の生成に繋がり、選択性が低下するため好ましくない。また、短すぎる放電時間では、十分なエネルギーが供給されず、プラズマを誘起するために使用されるエネルギーが多く必要となり、オニオンライクカーボンの生成効率が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明では、電極に振動を与えることも可能である。振動を与えることで、電極間に析出する炭素化合物の滞留もなく、滞留物上への反応性生物付着を抑制できるだけでなく、放電が効率的に行われるため好ましい。振動を与える方法としては、特に限定されるものではなく、定期的に振動を与えても、間欠的に振動を与える方法でもかまわない。
【0031】
本発明を実施する雰囲気としては特に限定するものではなく、減圧下、加圧下、常圧下いずれの状態でも実施することができるが、通常、安全、操作性を考慮して、窒素、アルゴンなどの不活性ガス下で実施することができる。
【0032】
生成するオニオンライクカーボンは、液体中に堆積するので、一般的な方法、例えば、ろ過し、使用した液体を減圧等の操作で除去することにより、オニオンライクカーボンを得ることができる。
【実施例】
【0033】
実施例1
300mlビーカーにトルエン200gを取り、直径6mm、長さ100mmの円柱状のグラファイト電極(純度99%以上)2本を該トルエン中に挿入し、電極間を1mmに固定し、電極表面に反応生成物が堆積することを防止して反応効率を高めるために振動を与えた。各電極を交流電源に接続し、200V、2Aでパルス放電した。パルスプラズマの間隔は20ミリ秒、パルスプラズマ1回あたりの持続時間は10マイクロ秒で行った。放電開始と同時に、黒色の粉体が液中に分散して、反応が起こったことが観測された。30分間反応を継続し、既沈降物を分離、黒色溶液を遠心分離、トルエンを適量加えて、洗浄と分離を行った。電極の消費量は、380mgであった。
【0034】
得られた黒色粉末を真空下加熱乾燥した。得られた黒色粉末は、254.6mgであり、得られた黒色粉末のTEM写真(倍率:10万倍)を図1に(図1のスケールは20nm)、TEM写真(倍率:50万倍)を図2に示す(図2のスケールは10nmであり、図2において層間距離を2つの矢印で示す)。写真から、得られた黒色粉末が、層間距離0.62nmのオニオンライクカーボンであることがわかる。収率は67%であった。
【0035】
実施例2
実施例1において、溶媒として水を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られた黒色粉末のTEM写真(倍率:10万倍)を図3図3のスケールは10nm)、TEM写真(倍率:50万倍)を図4に示す(図4のスケールは5nm)。電極の消費量は412mgであり、得られた黒色粉末は271.9mg、収率は66%であり、写真から、層間距離0.55nmのオニオンライクカーボンであることがわかる。
【0036】
比較例
実施例1において、電極を直流電源に接続し、200V 2Aで連続放電した以外は、実施例1と同様におこなった。得られた黒色粉末は312mgであり、得られた黒色粉末のTEM写真(倍率:20万倍)を図5に示す(図5のスケールは5nm)。同心球状のオニオンライクカーボンは観測されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の製造方法によれば、オニオンライクカーボンを比較的低電圧、低電流であり、パルス放電を行うなどの低エネルギーで製造することができ、産業上の有用性が大きい。
図1
図2
図3
図4
図5