【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
(1)単結晶X線結晶構造解析
得られた単結晶をゴニオヘッドにマウントし、単結晶X線回折装置を用いて測定した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製R−AXIS RAPID II
X線源:MoKα(λ=0.71073Å) 40kV 30mA
集光ミラー:VariMax
検出器:イメージングプレート
コリメータ:Φ0.8mm
解析ソフト:CrystalStructure 3.8
【0043】
(2)粉末X線回折パターンの測定
粉末X線回折装置を用いて、回折角(2θ)=2〜50°の範囲を走査速度1°/分で走査し、対称反射法で測定した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製RINT2400
X線源:CuKα(λ=1.5418Å) 40kV 200mA
ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
検出器:シンチレーションカウンター
ステップ幅:0.02°
スリット:発散スリット=0.5°
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5°
【0044】
(3)トルエンの吸着等温線の測定
高精度ガス/蒸気吸着量測定装置を用いて容量法で測定を行った。このとき、測定に先立って試料を373K、2Paで12時間乾燥し、吸着水などを除去した。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−max
平衡待ち時間:300秒
【0045】
(4)メタンの吸脱着等温線の測定
高圧ガス吸着量測定装置を用いて容量法で測定を行った。このとき、測定に先立って試料を373K、50Paで10時間乾燥し、吸着水などを除去した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−HP
平衡待ち時間:500秒
【0046】
<合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、5−tert−ブチルイソフタル酸3.76g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した結晶の一部を取出し、単結晶X線構造解析を行った結果を以下に示す。本錯体の骨格の組成は、亜鉛:5−tert−ブチルイソフタル酸:4,4’−ビピリジル=2:2:1であった。また、結晶構造を
図1に示す。
図1より、本錯体はc軸方向(紙面に垂直)に対して一次元細孔を有しており、tert−ブチル基が細孔内部に露出した構造をとっていることが分かる。
Tetragonal(I4mm)
a=32.7473(17)Å
b=32.7473(17)Å
c=9.4794(6)Å
α=90.000°
β=90.000°
γ=90.000°
V=10165.6(10)Å
3
Z=16
R=0.1188
Rw=0.3299
析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体5.16g(収率84%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図2に示す。
【0047】
<比較合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、5−(N,N−ジメチルアミノ)イソフタル酸3.54g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.53g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。得られた結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果を以下に示す。本錯体の骨格の組成は、亜鉛:5−(N,N−ジメチルアミノ)イソフタル酸:4,4’−ビピリジル=2:2:1であった。また、結晶構造を
図3に示す。
図3より、本錯体はc軸方向(紙面に垂直)に対して一次元細孔を有しており、N,N−ジメチルアミノ基が細孔内部に露出した構造をとっていることが分かる。
Tetragonal(I4mm)
a=32.625(11)Å
b=32.625(11)Å
c=9.166(3)Å
α=90.00°
β=90.00°
γ=90.00°
V=9756(6)Å
3
Z=16
R=0.1375
Rw=0.3725
析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体5.19g(収率88%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図4に示す。
【0048】
<比較合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、イソフタル酸2.80g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。得られた結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果を以下に示す。本錯体の骨格の組成は、亜鉛:イソフタル酸:4,4’−ビピリジル=1:1:1であった。また、結晶構造を
図5に示す。
図5より、本錯体はインターデジテイト型構造を形成していることが分かる。
Monoclinic(P2/c)
a=10.082(5)Å
b=11.384(5)Å
c=15.744(8)Å
α=90.00°
β=103.917(8)°
γ=90.00°
V=1753.9(14)Å3
Z=2
R=0.0600
Rw=0.1368
析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体6.35g(収率98%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図6に示す。
【0049】
<比較合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸コバルト六水和物0.300g(1.0mmol)、5−tert−ブチルイソフタル酸0.220g(0.99mmol)及び4,4’−ビピリジル0.160g(1.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド20mLに溶解させ、393Kで6時間攪拌した。得られた結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果を以下に示す。本錯体の骨格の組成は、コバルト:5−tert−ブチルイソフタル酸:4,4’−ビピリジル=1:1:1であった。また、結晶構造を
図7に示す。
図7より、本錯体はインターデジテイト型構造を形成していることが分かる。
Monoclinic(C2/m)
a=21.690(3)Å
b=11.3991(14)Å
c=9.9980(12)Å
α=90.00°
β=102.578(1)°
γ=90.00°
V=2412.644Å
3
Z=4
R=0.0813
Rw=0.0813
析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体0.283g(収率65%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図8に示す。
【0050】
<比較合成例4>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、2,7−ナフタレンジカルボン酸3.68g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。得られた結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果を以下に示す。本錯体の骨格の組成は、亜鉛:2,7−ナフタレンジカルボン酸:4,4’−ビピリジル=1:1:1であった。また、結晶構造を
図9に示す。
図9より、本錯体はインターデジテイト型構造を形成していることが分かる。
Monoclinic(C2/c)
a=16.14(4)Å
b=11.35(3)Å
c=24.67(9)Å
α=90.00°
β=102.11(7)°
γ=90.00°
V=4419(22)Å
3
Z=8
R=0.0652
Rw=0.1829
析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体7.02g(収率95%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図10に示す。
【0051】
<実施例1>
合成例1で得た金属錯体について、298Kにおけるトルエンの吸着等温線を測定した。結果を
図11に示す。
【0052】
<比較例1>
比較合成例1で得た金属錯体について、298Kにおけるトルエンの吸着等温線を測定した。結果を
図11に示す。
【0053】
<比較例2>
比較合成例2で得た金属錯体について、298Kにおけるトルエンの吸着等温線を測定した。結果を
図11に示す。
【0054】
<比較例3>
比較合成例3で得た金属錯体について、298Kにおけるトルエンの吸着等温線を測定した。結果を
図11に示す。
【0055】
<比較例4>
比較合成例4で得た金属錯体について、298Kにおけるトルエンの吸着等温線を測定した。結果を
図11に示す。
【0056】
図11より、本発明の金属錯体は相対圧が低い領域からトルエンの吸着量が大きいので、本発明の金属錯体がトルエンの吸着材として優れていることは明らかである。
【0057】
<実施例2>
合成例1で得た金属錯体について、273Kにおけるメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を
図12に示す。
【0058】
<比較例6>
比較合成例1で得た金属錯体について、273Kにおけるメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を
図13に示す。
【0059】
<比較例6>
比較合成例2で得た金属錯体について、273Kにおけるメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を
図14に示す。
【0060】
<比較例7>
比較合成例3で得た金属錯体について、273Kにおけるメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を
図15に示す。
【0061】
<比較例8>
比較合成例4で得た金属錯体について、273Kにおけるメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を
図16に示す。
【0062】
図12と
図13、
図14、
図15及び
図16の比較より、本発明の金属錯体はメタンの有効吸蔵量が大きいので、メタンの吸蔵材として優れていることは明らかである。