【文献】
J.Benick et al.,”High efficiency n−type Si solar cells on Al2O3−passivated boron emitters”,Applied Physics Letters,Vol.92,No.25、23 Jun 2008,253504
【文献】
B.Hoex et al.,”Ultralow surface recombination of c−Si substrates passivated by plasma−assisted atomic layer deposited Al2O3”,Applied Physics Letters,Vol.89,No.4,24 Jul 2006,042112
【文献】
S.Dauwe et al.,”Loss Mechanism in Silicon Nitride Rear Surface Passivation for Silicon Solar Cells”,17th European Photovolatic Solar Energy Conference,22−26 October 2001,pp.339−342
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体基板にPN接合を形成する工程と、次いで、該半導体基板の受光面及び非受光面のいずれか一方又は両方の面にパッシベーション層を形成する工程と、前記受光面及び非受光面上に電力取り出し用電極を形成する工程とを含む太陽電池の製造方法であって、前記受光面及び非受光面のいずれか一方の面に形成されたパッシベーション層、あるいは、前記受光面及び非受光面の両方の面に形成されたパッシベーション層のうちのいずれか一方のパッシベーション層として膜厚20nm以下の酸化アルミニウム膜を上記半導体基板のP層に接するように形成し、その後、導電性ペーストを前記酸化アルミニウム膜を含むパッシベーション層上に印刷し焼成して焼結体とすると共に、該パッシベーション層をファイアースルーさせて前記基板と電気的に接触する前記電極を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
前記焼結体が、B、Na、Al、K、Ca、Si、V、Zn、Zr、Cd、Sn、Ba、Ta、Tl、Pb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の原子を含む酸化物を含有する請求項1又は2記載の太陽電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来の単結晶や多結晶シリコン基板を用いた一般的な量産型太陽電池の一例として、P型基板太陽電池の概観を
図1に示す。半導体基板(シリコン基板)101の受光面側に、リンなどのV族元素を高濃度拡散してN層102を形成することでPN接合103を形成し、P型及びN型シリコン基板の両主表面(受光面及び非受光面)には、より効率よく光を取り込むため、シリコンの屈折率よりも低い屈折率を持つ誘電体膜104,105がそれぞれ形成されている。これら誘電体膜104,105には、酸化チタン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸化シリコン、酸化錫などが広く用いられる。光閉じ込めを効果的にするための誘電体膜の膜厚は、膜の屈折率により異なるが、窒化シリコン膜の場合は一般的に受光面で80〜100nm程度、裏面で90〜300nm程度である。
【0003】
また、受光面と非受光面(裏面)に、光生成キャリアを取り出すための電極106,107が形成されている。この電極の形成方法としては、コストの面から、銀やアルミニウムなどの金属微粒子を有機バインダーに混ぜた金属ペーストを、スクリーン版などを用いて印刷し、熱処理を行って基板と接触させる方法が広く用いられている。電極形成は、誘電体膜形成後に行うのが一般的である。そのため電極とシリコン基板を接触させるには、電極−シリコン基板間の誘電体膜を除去する必要があるが、金属ペースト中のガラス成分や添加物を調整することで、金属ペーストが誘電体膜104,105を貫通してシリコン基板に接触する、所謂ファイアースルーが可能になっている。
【0004】
誘電体膜104,105のもう1つ重要な機能として、シリコン基板表面のキャリア再結合抑制がある。結晶内部のシリコン原子は、隣接する原子同士で共有結合し、安定な状態にある。しかしながら、原子配列の末端である表面では、結合すべき隣接原子が不在となることで、未結合手又はダングリングボンドといわれる不安定なエネルギー準位が出現する。ダングリングボンドは、電気的に活性であるため、シリコン内部で光生成された電荷を捕らえて消滅させてしまい、太陽電池の特性が損なわれる。この損失を抑制するため、太陽電池では何らかの表面終端化処理を施してダングリングボンドを低減するか、又は反射防止膜に電荷を持たせることにより、表面における電子及び正孔のいずれかの濃度を大幅に低下させて、電子と正孔の再結合を抑制する。特に、後者は電界効果パッシベーションと呼ばれる。窒化シリコン膜などは正電荷を持つことが知られており、電界効果パッシベーションとしてよく知られている。
【0005】
しかしながら、窒化シリコンなどの正電荷を持つ膜をP型シリコン表面に適用すると、太陽電池特性を低下させることが知られている。膜の正電荷によりP型シリコン表面のエネルギーバンドは反転状態に向かい、少数キャリアである電子の濃度がシリコン表面で高くなる。P型シリコン表面に電極が形成されると、表面に溜まった電子がこの電極に流れ込む。太陽電池で電子を取り出すのはN型シリコン側の電極であるが、P型シリコン側電極に流れた電子はリーク電流として太陽電池出力の損失になってしまう。そのため、P型シリコン表面のパッシベーションには、正電荷量が比較的少ないとされるシリコン酸化膜や、負電荷を持つ酸化アルミニウム膜が使用されるようになった。
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、下記のものが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、酸化アルミニウム膜は窒化シリコン膜などに比べ、電極形成時のファイアースルーが困難で、電極とシリコン基板間の電気抵抗が大きくなってしまうことにより、十分な太陽電池特性が得られなかった。そのため、酸化アルミニウム膜が形成されたシリコン基板への電極形成には、膜のパターン抜きを電極パターンに合わせて行う必要があった。パターン抜きは、通常、フォトリソグラフィーや、酸レジストなどによるパターニングと、酸による膜のエッチングにより行う。また、エッチングペーストを印刷塗布する方法や、レーザーアブレーションによるパターニングなどもある。しかし、いずれの方法にしても、単に工程数が多くなるばかりでなく、材料費や装置費も多くかかるため、コストの点で実用性が極めて低い状況にある。
また、一方で、酸化アルミニウム膜のパッシベーション性能を最大限高めるためには、400℃程度の熱処理が必要とされている。このため太陽電池の工程はさらに複雑になり、低コスト化の障害になっていた。さらに一般の高温硬化型導電性ペーストは酸化アルミニウム膜を貫通し難いため、電気抵抗が大きくなり太陽電池の特性を制限してしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、酸化アルミニウム膜のファイアースルーが容易で、生産性が高く、安価で高効率な太陽電
池の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、受光面及び非受光面を有する半導体基板と、この半導体基板に形成されたPN接合部と、上記受光面及び非受光面のいずれか一方又は両方の面に形成されたパッシベーション層と、上記受光面及び非受光面に形成された電力取り出し用電極とを具備する太陽電池に、パッシベーション層として膜厚
20nm以下の酸化アルミニウム膜を含む層を形成することで、電極形成時のファイアースルーが可能となり、良好な特性を有する太陽電池が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の太陽電池の製造方法を提供する。
請求項1:
半導体基板にPN接合を形成する工程と、次いで、該半導体基板の受光面及び非受光面のいずれか一方又は両方の面にパッシベーション層を形成する工程と、前記受光面及び非受光面上に電力取り出し用電極を形成する工程とを含む太陽電池の製造方法であって、前記
受光面及び非受光面のいずれか一方の面に形成されたパッシベーション層、あるいは、前記受光面及び非受光面の両方の面に形成されたパッシベーション層のうちのいずれか一方のパッシベーション層として膜厚20nm以下の酸化アルミニウム膜を上記半導体基板のP層に接するように形成し、その後、導電性ペーストを前記酸化アルミニウム膜を含むパッシベーション層上に印刷し焼成して焼結体とすると共に、該パッシベーション層をファイアースルーさせて前記基板と電気的に接触する前記電極を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
請求項2:
導電性ペーストを500〜900℃で1秒〜30分間焼成する請求項1記載の太陽電池の製造方法。
請求項3:
前記焼結体が、B、Na、Al、K、Ca、Si、V、Zn、Zr、Cd、Sn、Ba、Ta、Tl、Pb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の原子を含む酸化物を含有する請求項1又は2記載の太陽電池の製造方法。
請求項4:
前記酸化アルミニウム膜における内蔵負電荷が前記焼成により増加する請求項1乃至3のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
基板表面、特にP型半導体基板の非受光面又はN型半導体基板の受光面に特定膜厚の酸化アルミニウム膜を形成することにより、従来技術である導電性ペーストの焼成のみで良好なパッシベーション性能と、基板と電極の良好な電気的接触が得られる。また、酸化アルミニウム膜のパッシベーション効果を得るために従来必要とされたアニール工程を省略でき、コスト削減に極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る太陽電池の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、これらの太陽電池に限られるものではない。
図2及び
図3に本発明の太陽電池の一例を示す。半導体基板201(301)の表面のスライスダメージを、濃度5〜60質量%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ又はふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチング除去する。半導体基板としては、P型又はN型単結晶シリコン基板、P型又はN型多結晶シリコン基板、P型又はN型薄膜シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法のいずれの方法によって作製されてもよい。例えば、高純度シリコンにB、Ga、InのようなIII族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}P型シリコン基板を用いることができる。
【0014】
引き続き、基板表面(受光面)にテクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどのアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に、10〜30分程度浸漬することで容易に作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。
【0015】
テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等又はこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。コスト的及び特性的観点から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5質量%の過酸化水素を混合し、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。
【0016】
この基板上に、裏面電界(BSF)層206(306)を形成するため、臭化ホウ素等を用いて900〜1000℃で気相拡散を行い、P
+層を形成する。BSF層は裏面全面に形成しても良いし(
図2の206)、裏面電極のパターンに合わせて局所的に形成しても良い(
図3の306)。一般的なシリコン太陽電池は、BSF層を裏面にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、受光面側に窒化シリコンなどの拡散バリアを形成したりして、受光面にP
+層ができないような工夫を施すことが好ましい。また、BSF層は不純物が高濃度に拡散されていてキャリア濃度が高いため、裏面電極208(308)と基板201(301)の電気的抵抗を低減させる効果もある。
【0017】
次に、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法等によりN層202(302)を形成してPN接合203(303)を形成する。通常、PN接合は受光面にのみ形成する必要があり、これを達成するためにP
+層側を2枚向かい合わせて重ねた状態で拡散したり、裏面側に窒化シリコンなどの拡散バリアを形成したりして、裏面にリンが拡散されないように工夫を施すことが好ましい。拡散後、表面にできたガラスをフッ酸などで除去する。なお、この行程は、上記気相拡散法以外にも、拡散剤によるスピンコート法、スプレー法等により行うこともできる。
【0018】
次に、基板表面の受光面の反射防止膜となる誘電体膜204(304)を形成する。誘電体膜としては、例えば、窒化シリコン膜などを約50〜100nm程度成膜する。成膜には化学気相堆積装置(以下、CVD)等を用い、反応ガスとして、モノシラン(SiH
4)及びアンモニア(NH
3)を混合して用いることが多いが、NH
3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、H
2ガスによる成膜種の希釈やプロセス圧力の調整、反応ガスの希釈を行い、所望の屈折率を実現することができる。窒化シリコン膜に限らず、熱処理や原子層堆積(以下、ALD)などの方法による酸化シリコン、炭化シリコン、酸化チタンなどを代わりに用いても良い。
【0019】
一方、裏面のP型シリコン表面には、酸化アルミニウム膜205a(305a)を含むパッシベーション膜(パッシベーション層)205(305)を形成する。酸化アルミニウム膜の成膜方法にはCVD法やALD法がおもに用いられるが、真空蒸着法やスパッタリング法を用いてもよい。CVD法やALD法の場合、反応にはトリメチルアルミニウム(TMA)を使い、キャリアガスとして水素(H
2)やアルゴン(Ar)を用いるのが一般的である。アルミニウムの酸化剤として、酸素(O
2)、二酸化炭素(CO
2)、水(H
2O)、オゾン(O
3)などが用いられる(例えば、反応式:Al(CH
3)
3+1.5H
2O→0.5Al
2O
3+3CH
4)。CVD法における膜の堆積は、これらの分子を分解し、基板に付着させることで進行するが、この分解は基板の加熱等により100〜400℃で熱的に行っても良いし、高周波電界により100〜400℃で電磁気的に行っても良く、酸素とアルミニウムの組成比が限定されない結晶質又は非結晶質の膜を得ることができる。
【0020】
このようにして得られる酸化アルミニウム膜は負電荷を有するが、この負電荷は、以下の化学反応式に由来すると考えられている。なお、ここでは簡単のためAl
2O
3膜での反応について示す。
2Al
2O
3→3(AlO
4/2)
1-+Al
3+
このままでは、膜は電気的に中性であるが、Al
3+は酸化アルミニウム膜中に存在する酸素と結合してドナー・アクセプターペアを形成することにより正電荷を消失し、膜は負電荷を持つようになる。
上記の負電荷発生機構は、化学量論組成から外れた、Al
1-xO
xにおいて任意の定数xの酸化アルミニウム膜や、酸化アルミニウムと水素、炭素、窒素などが混在したその他の系についても同様に適用されると考えられており、即ち負電荷の発生にはAlとOが共存する系において、前記化学式が少なくとも一部のAlとOの間で成立すればよい。
【0021】
ここで、本発明者らが、酸化アルミニウム膜の膜厚について検討を重ねた結果、膜厚は40nm以下であり、好ましくは30nm以下、特に20nm以下である。下限値は特に限定されないが、基板表面を一様に覆うため、通常1nm以上である。
【0022】
裏面の光閉じ込め効果をより高めるために、酸化アルミニウム膜205a(305a)上に他の誘電体膜205b(305b)を重ねるように形成しても良い。誘電体膜205b(305b)には、光学的観点から酸化シリコン(SiO、SiO
2)を用いるのが良いが、酸化チタン(TiO、TiO
2)、炭化シリコン(SiC)、酸化錫(SnO、SnO
2、SnO
3)などを用いても良い。裏面の誘電体膜205b(305b)の膜厚は、50〜250nmが好ましく、より好ましくは100〜200nmである。膜厚が薄すぎたり厚すぎたりすると、光閉じ込め効果が不十分になる場合がある。
【0023】
次いで、上記基板の受光面及び非受光面(裏面)に電極207,208(307,308)を形成する。電極は、銀粉末とガラスフリットを有機バインダーと混合した銀ペースト等の導電性ペーストを受光面と裏面に印刷し、1秒〜30分間、特に3秒〜15分間、500〜900℃、特に700〜850℃程度の温度で焼成することにより形成される。この熱処理によりパッシベーション膜が銀ペースト等の導電性ペーストに侵食され、この導電性ペーストの焼結体である電極がパッシベーション膜をファイアースルー(焼成貫通)してシリコン基板と電気的に接触する。なお、受光面及び裏面電極の焼成は、各面ごとに行うことも可能である。
【0024】
導電性ペーストのパッシベーション膜貫通能力は、導電性ペースト中の金属酸化物により付与されるが、金属酸化物としては、B、Na、Al、K、Ca、Si、V、Zn、Zr、Cd、Sn、Ba、Ta、Tl、Pb及びBiから選ばれる原子の酸化物を1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。焼成によって、酸化アルミニウム膜又はこれと誘電体膜とを貫通して、基板との良好な接触を得るためには、好ましくは、B−Pb−O系、B−Pb−Zn−O系、B−Zn−V−O系、B−Si−Pb−O系、B−Si−Pb−Al−O系、B−Si−Bi−Pb−O系、B−Si−Zn−O系などのガラス材料を用いるのが良い。
【0025】
酸化アルミニウム膜は、上記焼結体の膜貫通によって電極直下となる部分が除去されてこの電極直下以外の領域の少なくとも一部に形成されるが、良好なパッシベーション効果を得るためには、電極直下となる部分を除く非受光面(裏面)及び/又は受光面全面、特にP型シリコン基板の非受光面全面又はN型シリコン基板の受光面全面に形成することが好ましい。
【0026】
以上、P型シリコン基板を用いた場合を例に挙げて本発明の太陽電池についての実施形態を説明したが、本発明は、N型シリコン基板を用いた太陽電池に適用することもできる。
図4及び5に示すように、N型シリコン基板401(501)は、高純度シリコンにP、As、SbのようなV族元素をドープして得られ、一般には、抵抗率が0.1〜5Ω・cmに調整されたものを用いる。N型シリコン太陽電池は、上述したP型シリコン太陽電池と同様に作製することが可能である。但し、PN接合403(503)を形成する必要からP
+層402(502)の形成が必須となる。また、一方で裏面のBSF層形成のためのN
+層形成は裏面全面に行っても良いし(
図4の406)、裏面電極のパターンに合わせて局所的に形成しても良い(
図5の506)。
【0027】
受光面パッシベーションには、P
+層402(502)表面に本発明の酸化アルミニウム膜405a(505a)を形成し、この上に、他の誘電体膜405b(505b)として、さらに酸化シリコン(SiO、SiO
2)、酸化チタン(TiO、TiO
2)、炭化シリコン(SiC)、酸化錫(SnO、SnO
2、SnO
3)等の誘電体膜を重ねて形成してもよい。裏面のN層上には窒化シリコン、酸化シリコン、炭化シリコン、酸化チタンなどの誘電体膜404(504)を形成することが好ましい。膜厚等の成膜条件、電極407,408(507,508)の形成条件は、上述したP型シリコン基板の場合と同様とすることができる。
【0028】
太陽電池裏面には、基板を透過した光を再度取り込むために反射材を設けることが好ましい。反射材には、真空蒸着などで成膜されるアルミニウムや銀などを用いても良いが、付加的な処理を行わず、太陽電池モジュールに白色バックシートなどを用いるだけでも十分に効果は得られる。一方、反射材を用いずに、裏面からも散乱光などを入射させて発電することも可能で、さらには上記裏面を受光面側になるように太陽電池を配置して発電させることも可能である。
【0029】
本発明の太陽電池モジュールは、以上のようにして得られた太陽電池を電気的に接続することで得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実験例、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0031】
[実験例1]
<電極接触抵抗の検討>
酸化アルミニウム膜の膜厚を検討するため、先ずシリコン酸化膜のファイアースルーに従来用いている導電性ペーストを使い、酸化アルミニウム膜に対するファイアースルー性を調べた。ファイアースルー性は電極とシリコン基板間の接触抵抗で評価することができる。
テクスチャ処理を施した厚さ240μm、15cm角のP型シリコンウェハに臭化ホウ素の気相拡散によりB拡散を行なってP
+層を形成した。P
+層の上に酸化アルミニウム膜をALD法により形成し、その上にシリコン酸化膜をプラズマCVD法で形成した。シリコン酸化膜の膜厚は、酸化アルミニウム膜との合計膜厚が100nmになるように調節した。これらのパッシベーション膜上に市販のファイアースルー型Agペーストを櫛形のパターンで印刷し、RTP(高速熱処理)炉によりピーク温度800℃で3秒間焼成した。作製した試料数は各条件5枚ずつである。
【0032】
接触抵抗をラダー法により評価するため、幅1cm、長さ5cmの短冊状の測定試料を1枚のウェハから5箇所切り出し、測定を行った。
図6は、酸化アルミニウム膜の膜厚に対する接触抵抗の関係を示す。酸化シリコン膜・酸化アルミニウム膜の場合、接触抵抗は酸化アルミニウム膜厚40nm付近で大きく低下し、20nm以下では酸化シリコン膜厚100nm(酸化アルミニウム膜厚=0nm)と同程度の接触抵抗値を得るに至った。この結果から、良好な電気的接触を得るための酸化アルミニウム膜厚は40nm以下、好ましくは30nm以下、特に20nm以下と求められた。
【0033】
[実験例2]
<電極焼成に伴うパッシベーション効果の検討>
次に、酸化アルミニウム膜のパッシベーション効果と膜厚の関係を調べるため、キャリア寿命測定による評価を行った。
酸エッチングで鏡面に仕上げた厚さ200μm、15cm角の0.5Ω・cmP型シリコンウェハ両面に、膜厚の異なる酸化アルミニウム膜をALD法により形成した。さらに、電極焼成熱処理の熱履歴を与えるため、各試料をRTP炉によりピーク温度800℃で3秒間熱処理した。
図7は、熱処理の前後における実効キャリア寿命の測定結果である。実効キャリア寿命とは、シリコンの結晶バルクにおけるキャリア寿命と、シリコン・酸化アルミニウム膜界面におけるキャリア寿命からなる総合的なキャリア寿命であり、単位はマイクロ秒である。
図7中、黒四角付き折線は熱処理前の実効キャリア寿命を示し、白四角付き折線は熱処理後の実効キャリア寿命を示す。
【0034】
全試料において、熱処理によりキャリア寿命が上昇する現象が見られ、さらにキャリア寿命の値は酸化アルミニウム膜の膜厚に依存しないという結果が得られた。熱処理によるキャリア寿命の増加は、酸化アルミニウム膜の内蔵負電荷量が熱処理で増加したことに起因していることがCV測定により確認できた。熱処理前における電荷量は1×10
10〜3×10
10C・cm
-2であったのに対し、熱処理後では全ての膜厚試料で約3×10
12C・cm
-2まで増加した。また、酸化アルミニウム膜のパッシベーション効果が膜厚に依存しないという事実から、膜中の電荷は、シリコン基板と酸化アルミニウム界面付近に集まっていると考えられる。
【0035】
この結果から、酸化アルミニウム膜厚を40nm以下としても十分なパッシベーション効果が得られることが明らかになった。また、酸化アルミニウム膜の高い負電荷量は、電極焼成時の短時間熱処理で十分発現可能であることが新たな知見として得られ、課題であった低温アニール工程が省略できる。
【0036】
[実施例1]
基板厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmの、ボロンドープ{100}P型アズカットシリコン基板100枚に対し、熱濃水酸化カリウム水溶液によりスライスダメージを除去後、水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行い、引き続き塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。次に、臭化ホウ素雰囲気下、1000℃で受光面同士を重ねた状態で熱処理し、P
+層を形成した。続けて、オキシ塩化リン雰囲気下、850℃で裏面同士を重ねた状態で熱処理し、PN接合を形成した。拡散後、フッ酸にてガラス層を除去し、純水洗浄の後、乾燥させた。以上の処理の後、反射防止膜として厚さ100nmの窒化シリコン膜を、プラズマCVD装置により、受光面全面に成膜した。
【0037】
得られた基板のうち50枚に裏面パッシベーション膜を形成した。この50枚については、厚さ20nmの酸化アルミニウム膜を、原子層堆積装置により基板温度200℃で裏面全面に成膜した。原料ガスにはTMAを用い、酸化剤には酸素を使用した。この方法により得られる酸化アルミニウム膜は、ストイキオメトリックなアモルファスAl
2O
3であった。その後、スパッタリング装置によりシリコン酸化膜を150nm成膜した。
次に、全基板の受光面側及び裏面側にAgペーストを櫛形パターンでスクリーン印刷し、乾燥した。この後、800℃の焼成を空気雰囲気下3秒間行い、Ag電極に受光面と裏面両面の誘電体膜を貫通させてシリコン基板と導通させた。太陽電池の裏面に、反射材として厚さ2μmのAl膜を真空蒸着装置で形成した。
【0038】
[比較例1]
実施例1で作製した基板の残り50枚の裏面に、実施例1の基板受光面と同じ製法の窒化シリコン膜を100nm成膜した以外は、実施例1と同様に行った。
【0039】
実施例1及び比較例1で得られた太陽電池を、エアマス1.5の擬似太陽光を用いた電流電圧測定機で特性測定を行ったところ、表1に示すように、本発明を実施した実施例1の太陽電池の特性が比較例1の太陽電池の特性を優越する結果が得られた。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明による実施例1では、裏面に形成した誘電体膜の厚さが比較例1のものよりも厚いにもかかわらず、良好な電気的接触が得られた。さらに、反転層がなくなったことにより、リーク電流が解消され、良好な曲線因子が得られ、開放電圧及び短絡電流も共に大きく改善された。
【0042】
[実施例2]
基板厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmの、リンドープ{100}N型アズカットシリコン基板100枚に対し、熱濃水酸化カリウム水溶液によりスライスダメージを除去後、水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行い、引き続き塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。次に、臭化ホウ素雰囲気下、1000℃で裏面同士を重ねた状態で熱処理し、PN接合を形成した。続けて、オキシ塩化リン雰囲気下、850℃で受光面同士を重ねた状態で熱処理し、BSF層を形成した。拡散後、フッ酸にてガラス層を除去し、純水洗浄の後、乾燥させた。以上の処理の後、裏面誘電体膜として厚さ100nmの窒化シリコン膜を、プラズマCVD装置により、裏面全面に成膜した。
【0043】
得られた基板のうち50枚に受光面パッシベーション膜を形成した。この50枚については、厚さ20nmの酸化アルミニウム膜を、原子層堆積装置により基板温度200℃で受光面全面に成膜した。原料ガスにはTMAを用い、酸化剤には酸素を使用した。この方法により得られる酸化アルミニウム膜は、ストイキオメトリックなアモルファスAl
2O
3であった。その後、常圧CVD法により酸化チタン膜を50nm成膜した。
次に、全基板の受光面側及び裏面側にAgペーストを櫛形パターンでスクリーン印刷し、乾燥した。この後、800℃の焼成を空気雰囲気下3秒間行い、Ag電極に受光面と裏面両面の誘電体膜を貫通させてシリコン基板と導通させた。太陽電池の裏面に、反射材として厚さ2μmのAl膜を真空蒸着装置で形成した。
【0044】
[比較例2]
実施例2で作製した基板の残り50枚の受光面に、実施例2の基板裏面と同じ製法の窒化シリコン膜を100nm成膜した以外は、実施例2と同様に行った。
【0045】
実施例2及び比較例2で得られた太陽電池を、エアマス1.5の擬似太陽光を用いた電流電圧測定機で特性測定を行ったところ、表2に示すように、本発明を実施した実施例2の太陽電池の特性が比較例2の太陽電池の特性を優越する結果が得られた。
【0046】
【表2】