(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1と第2の分割部の少なくとも一方は、分割方向長さが前記底辺の長さよりも短く残った残りの平行四辺形を2つの直角2等辺三角形と1つの四角形に分割することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
分割方向長さが前記他方の長さよりも短く残った残りの平行四辺形を2つの直角2等辺三角形と1つの四角形に分割する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図10は、従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は、以下のように動作する。第1のアパーチャ410には、電子線330を成形するための矩形例えば長方形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向され、第2のアパーチャ420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される。第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式(VSB方式)という。
【0004】
かかる可変成形型の電子ビーム描画では、設計上の図形サイズのいずれかが最大ショットサイズよりも大きい図形について最大ショットサイズ以下の図形になるように設計上の図形を分割して分割された個々のショット図形を描画する。ここで、底辺と斜辺のなす角度が45度の平行四辺形について、底辺の長さを分割長さとして縦方向に一方側から残りの長さが分割長の2倍以下になるまで平行四辺形を分割し、端に残った残りの平行四辺形を高さ方向に1/2に分割する。そして、高さ方向が分割長の平行四辺形は三角形に分割し、端に残った残りの2つの平行四辺形はそれぞれ両側の斜辺部分を三角形に残りを長方形に分割するといった手法が開示されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、底辺の長さは最大ショットサイズよりも小さいが、高さ方向が最大ショットサイズよりも大きい平行四辺形については1度にショットできないので分割する必要がある。ここで、特許文献1記載の技術で分割すると、端部に残る図形がその他の図形に比べて寸法が小さくなる。図形を分割した結果、端部に小さい寸法の図形が残ると、かかる小さい寸法の図形を描画した際の寸法誤差が大きくなってしまうといった問題があった。さらに、昨今のパターンの微細化に伴い、ショット数が多くなる傾向にあるが、ショット数が増えればその分描画時間が長くなってしまうため、ショット数の増加をできるだけ抑制することが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、高さ方向の長さが底辺の長さの2倍よりも大きくかつ45度の角度をもつ平行四辺形について平行四辺形の端部に小図形を残さないように図形分割可能な装置および方法を提供することを目的とする。さらに、分割される図形数をより少なくすることが可能な装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
高さ方向の長さが底辺の長さの2倍よりも大きくかつ45度の角度を有する第1の平行四辺形の図形データを記憶する記憶部と、
底辺の長さを分割長さとし、高さ方向
と平行する2方向と、前記底辺方向
と平行する2方向と、のうちのいずれか一方の2方向を第1と第2の分割方向として、第1と第2の分割方向の両方向から平行四辺形を残りの分割方向長さが底辺の長さよりも短くなるまで分割長さで分割する第1の分割部と、
底辺の長さで分割されて新たに形成された
前記底辺の長さの高さを有する複数の第2の平行四辺形をそれぞれ2つの直角2等辺三角形に分割する第2の分割部と、
新たに形成された複数の直角2等辺三角形になるように荷電粒子ビームを可変成形して、成形された荷電粒子ビームを用いて、第1の平行四辺形を試料に描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、第1の平行四辺形の中央部に分割長さよりも短い1つ残った平行四辺形を配置できる。さらに、分割長さよりも短い平行四辺形は1つだけなので、分割された図形数を減らすことができ得る。
【0010】
さらに、第1と第2の分割部の少なくとも一方は、分割方向長さが底辺の長さよりも短く残った残りの平行四辺形を2つの直角2等辺三角形と1つの四角形に分割すると好適である。
【0011】
或いは、分割方向長さが底辺の長さよりも短く残った残りの平行四辺形について、分割方向長さが閾値以下かどうかを判定する判定部をさらに備え、
描画部は、閾値以下と判定された残りの平行四辺形を長方形として描画するように構成しても好適である。
【0012】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
高さ方向の長さと底辺の長さの一方が他方の2倍よりも大きくかつ45度の角度を有する第1の平行四辺形の図形データを記憶装置に記憶する工程と、
記憶装置から第1の平行四辺形の図形データを読み出し、上述した他方の長さを分割長さとし、高さ方向
と平行する2方向と、前記底辺方向
と平行する2方向と、のうちのいずれか一方の2方向を第1と第2の分割方向として、第1と第2の分割方向の両方向から平行四辺形を残りの分割方向長さが
他方の長さよりも短くなるまで分割長さで分割する工程と、
上述した他方の長さで分割されて新たに形成された
前記他方の長さの高さを有する複数の第2の平行四辺形をそれぞれ2つの直角2等辺三角形に分割する工程と、
新たに形成された複数の直角2等辺三角形になるように荷電粒子ビームを可変成形して、成形された荷電粒子ビームを用いて、第1の平行四辺形を試料に描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、分割方向長さが上述した他方の長さよりも短く残った残りの平行四辺形を2つの直角2等辺三角形と1つの四角形に分割する工程をさらに備えても好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高さ方向の長さが底辺の長さの2倍よりも大きくかつ45度の角度をもつ平行四辺形について平行四辺形の端部に小図形を残さずに図形分割できる。さらに、残る小図形の数を少なくできるため、最終的に分割される図形数をより少なくすることができ得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0018】
制御部160は、制御計算機ユニット110、メモリ111、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。制御計算機ユニット110、メモリ111、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0019】
制御計算機ユニット110内には、振分部112、x方向分割部114、y方向分割部116、ショットデータ生成部118、ショット分割部119、及び判定部115が配置されている。振分部112、x方向分割部114、y方向分割部116、ショットデータ生成部118、ショット分割部119、及び判定部115は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。振分部112、x方向分割部114、y方向分割部116、ショットデータ生成部118、ショット分割部119、及び判定部115に入出力される情報および演算中の情報はメモリ111にその都度格納される。
【0020】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、1段の偏向器或いは3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。
【0021】
図2は、実施の形態1における描画手順を説明するための概念図である。描画装置100では、試料101の描画領域が短冊状の複数のストライプ領域20に仮想分割される。
図2では、例えば、チップ領域10で示す1つのチップが試料101上に描画される場合を示している。もちろん、複数のチップが試料101上に描画される場合であっても構わない。かかるストライプ領域20の幅は、主偏向器208で偏向可能な幅で分割される。試料101に描画する場合には、XYステージ105を例えばx方向に連続移動させる。このように連続移動させながら、1つのストライプ領域20上を電子ビーム200が照射する。XYステージ105のX方向の移動は、連続移動とし、同時に主偏向器208で電子ビーム200のショット位置もステージ移動に追従させる。また、連続移動させることで描画時間を短縮させることができる。そして、1つのストライプ領域20を描画し終わったら、XYステージ105をy方向にステップ送りしてx方向(今度は逆向き)に次のストライプ領域20の描画動作を行なう。各ストライプ領域20の描画動作を蛇行させるように進めることでXYステージ105の移動時間を短縮することができる。
【0022】
図3は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図3において、実施の形態1における描画方法は、入力/記憶工程(S100)と、図形振分工程(S102)と、y方向分割工程(S104)と、判定工程(S106)と、x方向分割工程(S108)と、その他の図形のショット分割工程(S110)と、ショットデータ生成工程(S120)と、描画工程(S122)といった一連の工程を実施する。但し、後述する残った平行四辺形を判定なしに分割する場合には、判定工程(S106)を省略できる。
【0023】
図4は、実施の形態1における平行四辺形とy方向分割の仕方を示す概念図である。
図4において、平行四辺形30(第1の平行四辺形)は、底辺の長さDが描画装置100で設定される最大ショットサイズ以下で、高さが底辺の長さDの2倍よりも大きくかつ45度の角度を有する。すなわち、斜辺と底辺或いは上辺とのなす角度が45度の平行四辺形である。ここでは、高さが最大ショットサイズより大きい図形とする。描画装置100では、電子ビーム200を第1のアパーチャ203と第2のアパーチャ206の両方を通過させることで、ショット毎に任意の寸法の長方形或いは正方形からなる矩形、または45度の斜辺を持つ直角三角形に電子ビーム200を成形(可変成形)する。その際、予め成形可能なサイズとなる最大ショットサイズが設定されており、成形されたビームの寸法はかかる最大ショットサイズ以下に制御される。
【0024】
まず、入力/記憶工程(S100)として、描画装置100の外部からレイアウトデータ(描画データ)となる図形データが入力され、記憶装置140(記憶部)に記憶(格納)される。そして、制御計算機ユニット110は、所定の処理領域毎に記憶装置140からレイアウトデータを順次読み込む。
【0025】
図形振分工程(S102)として、振分部112は、記憶装置140から順次読み込まれるレイアウトデータに定義される図形データを参照して、順次入力されてくる図形を、上述した底辺の長さDが描画装置100で設定される最大ショットサイズ以下で、高さが底辺の長さDの2倍よりも大きくかつ45度の角度を有する平行四辺形30とそれ以外の図形とに振り分ける。
【0026】
y方向分割工程(S104)として、y方向分割部116は、底辺の長さDを分割長さとし、高さ方向(y方向)と平行する2方向(上下方向、y方向と−y方向)をそれぞれ分割方向(第1と第2の分割方向)として、上下方向の両方向から平行四辺形30を残りの分割方向長さkが底辺の長さDよりも短くなるまで分割長さDで分割する。y方向分割部116は、第1の分割部の一例である。これにより、平行四辺形30は、
図4に示すように、分割長さDで分割された複数の平行四辺形40と分割方向長さkの1つ残った残りの平行四辺形50とに分割される。
図4の例では、上方向(y方向)に向かって2つの分割長さDの平行四辺形40a,40cと下方向(−y方向)に向かって2つの分割長さDの平行四辺形40b,40dとに分割された例を示している。上下方向の両方向から平行四辺形30を分割していくことで、分割方向長さが他より短い平行四辺形50を平行四辺形30の端部ではなく中央部に配置できる。よって、描画の際に、端部に小図形を描画することによる寸法誤差を回避できる。
【0027】
x方向分割工程(S108)として、x方向分割部114は、底辺の長さDで分割されて新たに形成された複数の平行四辺形40(第2の平行四辺形)をそれぞれ2つの直角2等辺三角形に分割する。x方向分割部114は、第2の分割部の一例である。
【0028】
図5は、実施の形態1における平行四辺形とx方向分割の仕方を示す概念図である。
図5において、各平行四辺形40は、短い方の対角線に沿って切り離されることでx方向に分割される。これにより、各平行四辺形40は、それぞれ2つの直角2等辺三角形42,44に分割される。一方、残りの平行四辺形50は、両側の斜辺が切り離されるように2つの直角2等辺三角形52,54と中央部の長方形或いは正方形からなる1つの矩形56(すべての角が直角の四角形)に分割される。
【0029】
以上のように、各平行四辺形40は、2つの直角2等辺三角形42,44に分割され、平行四辺形50は、2つの直角2等辺三角形52,54と1つの矩形56に分割される。よって、平行四辺形30は、平行四辺形40の数の2倍の数に残りの平行四辺形50の分割数である「3」を加算した数の図形に分割される。よって、従来の分割手法よりも少なくとも1つ図形数を減らすことができる。
【0030】
一方で、その他の図形のショット分割工程(S110)として、ショット分割部119は、その他の図形について、それぞれ最大ショットサイズ以下の図形になるように分割する。
【0031】
ショットデータ生成工程(S120)として、ショットデータ生成部118は、レイアウトデータに対して複数段のデータ変換処理を行なって、サイズが最大ショットサイズ以下に分割された各図形のショットデータを生成する。生成されたショットデータは、順次、記憶装置142に一時的に格納される。
【0032】
描画工程(S122)として、制御回路120は、ショットデータを記憶装置142から読み出し、描画部150を制御して、電子ビーム200を用いて、各図形パターンを描画する。描画部150は、具体的には以下のように動作する。
【0033】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ショット毎にビーム形状と寸法を変化させることができる。ここで、上述した分割された各図形の形状に成形される。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でストライプ領域を仮想分割した小領域となるサブフィールド(SF)の基準位置にステージ移動に追従しながら電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかるビームを偏向すればよい。例えば、
図5で示した平行四辺形40aの直角2等辺三角形42、直角2等辺三角形44、平行四辺形40cの直角2等辺三角形42、直角2等辺三角形44、平行四辺形50の直角2等辺三角形52、矩形56、直角2等辺三角形54、平行四辺形40dの直角2等辺三角形42、直角2等辺三角形44、平行四辺形40bの直角2等辺三角形42、及び直角2等辺三角形44の順で成形された各ショットのビームを試料101上に照射することで平行四辺形30を描画できる。
【0034】
また、図示していないが、電子鏡筒102内には、さらに、各ショットビームを形成するためのブランカー(ブランキング偏向器)とブランキングアパーチャが配置されており、ブランカーによってブランキングアパーチャ上の遮蔽面に連続する電子ビーム200を偏向することでビーム0FFの状態を形成する。そして、ブランカーによってブランキングアパーチャ上の開口部に電子ビーム200を偏向することでビームONの状態を形成する。ビームONの状態でブランキングアパーチャを通過したビームが1ショット分の電子ビームとなる。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、高さ方向の長さが底辺の長さの2倍よりも大きくかつ45度の角度をもつ平行四辺形について平行四辺形の端部に小図形を残さずに図形分割できる。さらに、残る小図形の数を少なくできるため、最終的に分割される図形数をより少なくできる。分割される図形数は膨大な数であるため、その中で上述した平行四辺形の図形数が多ければ多いほどそれぞれ分割される図形数を減らすことできる。その結果、描画時間を大幅に短縮できる。
【0036】
図6は、実施の形態1における残りの平行四辺形を近似する仕方を示す概念図である。割方向長さが底辺の長さDよりも短く残った残りの平行四辺形50について、次のように近似して描画しても好適である。
【0037】
かかる場合、判定工程(S106)として、x方向に分割する前に、判定部115は、分割方向長さが底辺の長さDよりも短く残った残りの平行四辺形50について、分割方向長さkが閾値以下かどうかを判定する。
【0038】
そして、閾値以下と判定された場合に、ショットデータ生成工程(S120)においてショットデータ生成部118は、残りの平行四辺形50を長方形58としてショットデータを生成する。そして、描画工程(S122)において描画部150は、閾値以下と判定された残りの平行四辺形50を長方形58として描画する。以上のように構成することで、より分割される図形数を減らすことができる。なお、閾値以下と判定されなかった場合は、上述したようにx方向に3つの図形に分割すればよい。
【0039】
実施の形態2.
実施の形態1では、y方向に分割した後にx方向に分割したが、これに限るものではない。実施の形態2では、その順序を逆にした場合を説明する。描画装置の構成は
図1と同様である。描画方向のフリーチャートは、y方向分割工程(S104)とx方向分割工程(S108)との順序を逆にした点以外は
図3と同様である。また、以下に説明する内容以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0040】
図7は、実施の形態2における平行四辺形とx方向分割の仕方を示す概念図である。
図7において、平行四辺形30(第1の平行四辺形)は、
図4と同様、底辺の長さDが描画装置100で設定される最大ショットサイズ以下で、高さが底辺の長さDの2倍よりも大きくかつ45度の角度を有する。すなわち、斜辺と底辺或いは上辺とのなす角度が45度の平行四辺形である。ここでは、高さが最大ショットサイズより大きい図形とする。
【0041】
x方向分割工程(S108)として、x方向分割部114は、底辺の長さDを分割長さとし、底辺方向(x方向)と平行する2方向(左右方向、x方向と−x方向)をそれぞれ分割方向(第1と第2の分割方向)として、左右方向の両方向から平行四辺形30を残りの分割方向長さLが底辺の長さDよりも短くなるまで分割長さDで分割する。実施の形態2では、x方向分割部114は、第1の分割部の一例である。これにより、平行四辺形30は、
図7に示すように、分割長さDで分割された複数の平行四辺形70と分割方向長さLの1つ残った残りの平行四辺形80と両端部の2つの直角2等辺三角形60に分割される。
図7の例では、右方向(x方向)に向かって1つの直角2等辺三角形60aと2つの分割長さDの平行四辺形70a,70cと、左方向(−x方向)に向かって1つの直角2等辺三角形60bと1つの分割長さDの平行四辺形70bとに分割された例を示している。左右方向の両方向から平行四辺形30を分割していくことで、分割方向長さが他より短い平行四辺形80を平行四辺形30の端部ではなく中央部に配置できる。よって、描画の際に、端部に小図形を描画することによる寸法誤差を回避できる。
【0042】
y方向分割工程(S104)として、y方向分割部116は、底辺の長さDで分割されて新たに形成された複数の平行四辺形70(第2の平行四辺形)をそれぞれ2つの直角2等辺三角形に分割する。y方向分割部116は、第2の分割部の一例である。
【0043】
図8は、実施の形態2における平行四辺形とy方向分割の仕方を示す概念図である。
図8において、各平行四辺形70は、短い方の対角線に沿って切り離されることでy方向に分割される。これにより、各平行四辺形40は、それぞれ2つの直角2等辺三角形72,74に分割される。一方、残りの平行四辺形80は、上下両側の斜辺が切り離されるように2つの直角2等辺三角形82,84と中央部の長方形或いは正方形からなる1つの矩形86に分割される。
【0044】
以上のように、各平行四辺形70は、2つの直角2等辺三角形72,74に分割され、平行四辺形80は、2つの直角2等辺三角形82,84と1つの矩形86に分割される。よって、平行四辺形30は、平行四辺形70の数の2倍の数に残りの平行四辺形80の分割数である「3」と両側の2つの直角2等辺三角形60a,60bの図形数である「2」を加算した数の図形に分割される。よって、従来の分割手法よりも少なくとも1つ図形数を減らすことができる。
【0045】
以上のように、実施の形態2によれば、高さ方向の長さが底辺の長さの2倍よりも大きくかつ45度の角度をもつ平行四辺形について平行四辺形の端部に小図形を残さずに図形分割できる。さらに、残る小図形の数を少なくできるため、最終的に分割される図形数をより少なくできる。分割される図形数は膨大な数であるため、その中で上述した平行四辺形の図形数が多ければ多いほどそれぞれ分割される図形数を減らすことできる。その結果、描画時間を大幅に短縮できる。
【0046】
図9は、実施の形態2における残りの平行四辺形を近似する仕方を示す概念図である。割方向長さが底辺の長さDよりも短く残った残りの平行四辺形80について、次のように近似して描画しても好適である。
【0047】
かかる場合、判定工程(S106)として、y方向に分割する前に、判定部115は、分割方向長さが底辺の長さDよりも短く残った残りの平行四辺形80について、分割方向長さLが閾値以下かどうかを判定する。
【0048】
そして、閾値以下と判定された場合に、ショットデータ生成工程(S120)においてショットデータ生成部118は、残りの平行四辺形80を長方形88としてショットデータを生成する。そして、描画工程(S122)において描画部150は、閾値以下と判定された残りの平行四辺形80を長方形88として描画する。以上のように構成することで、より分割される図形数を減らすことができる。なお、閾値以下と判定されなかった場合は、上述したようにy方向に3つの図形に分割すればよい。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した例では、短辺がx方向と平行し、高さ方向がy方向となる平行四辺形を例に示したが、短辺がy方向と平行し、高さ方向がx方向となる平行四辺形でも同様に構成できる。かかる場合には、「底辺」と「高さ」とを読み替えればよい。
【0050】
言い換えれば、高さ方向の長さと底辺の長さの一方が他方の2倍よりも大きくかつ45度の角度を有する第1の平行四辺形について分割する際、まず、上述した他方の長さDを分割長さとし、高さ方向と底辺方向のうちのいずれか一方と平行する2方向を第1と第2の分割方向として、第1と第2の分割方向の両方向から第1の平行四辺形を残りの分割方向長さが上述した他方の長さDよりも短くなるまで分割長さDで分割する。次に、上述した他方の長さで分割されて新たに形成された複数の第2の平行四辺形をそれぞれ2つの直角2等辺三角形に分割すればよい。さらに、分割方向長さが上述した他方の長さよりも短く残った残りの平行四辺形については、2つの直角2等辺三角形と1つの四角形に分割すればよい。
【0051】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0052】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。