(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記油脂Aが、ラウリン系油脂とパーム系油脂との混合油を、エステル交換及び水素添加することにより得られる油脂であり、該油脂のヨウ素価が、0〜2である請求項1に記載の油脂組成物。
前記油脂Bが、ヨウ素価43〜48のパームミッドフラクション、及びヨウ素価50〜65のパームオレインをエステル交換して得られる油脂を含有する油脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の油脂組成物について説明する。
本発明の油脂組成物は、下記油脂A、油脂B及び油脂Cを含有し、下記(a)〜(c)の条件を満たすことを特徴とする。
油脂A:全構成脂肪酸中に炭素数12〜14の飽和脂肪酸を20〜60質量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸を40〜80質量%含有する油脂であり、該油脂がエステル交換することにより得られる油脂
油脂B:全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が20〜60質量%、ステアリン酸含量が0.5〜6質量%、オレイン酸含量が30〜60質量%である油脂
油脂C:液状油
(a)油脂組成物中の油脂Aの含量が0.1〜50質量%
(b)油脂組成物中の油脂Cの含量が0.1質量%以上40質量%未満
(c)油脂組成物中のPPO/POPが0.15〜1.00(PPO:1位及び2位、又は2位及び3位の脂肪酸がパルミチン酸であり、3位、又は1位の脂肪酸がオレイン酸であるトリアシルグリセロール。POP:1位及び3位の脂肪酸がパルミチン酸であり、2位の脂肪酸がオレイン酸であるトリアシルグリセロール。P:パルミチン酸。O:オレイン酸。)
【0026】
本発明で用いる油脂Aは、全構成脂肪酸中に炭素数12〜14の飽和脂肪酸を20〜60質量%、好ましくは25〜40質量%、更に好ましくは28〜35質量%含有し、かつ炭素数16〜18の飽和脂肪酸を40〜80質量%、好ましくは46〜70質量%、更に好ましくは52〜68質量%含有する油脂である。また、油脂Aは、エステル交換することにより得られる油脂である。
油脂Aの全構成脂肪酸中の脂肪酸含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が適度な硬さを有するものとなり、伸展性、スプレッド性のよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる食品、特に層状小麦粉膨化食品が浮きのよいものとなる。また、油脂Aがエステル交換したものであると、得られる可塑性油脂組成物が適度な可塑性を有するものとなり、スプレッド性のよいものとなる。
なお、油脂中の脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定することができる。
【0027】
油脂Aは、例えば、ラウリン系油脂と、炭素数16〜18の脂肪酸が豊富な植物油脂とをエステル交換及び水素添加することにより得られる。
【0028】
本発明におけるラウリン系油脂とは、全構成脂肪酸中におけるラウリン酸含量が30質量%以上である油脂を意味し、具体的には、ヤシ油、パーム核油及びこれらの分別油等を例示することができる。ラウリン系油脂の分別油の具体例としては、パーム核オレイン(パーム核油を分別して得られる軟質部)、パーム核ステアリン(パーム核油を分別して得られる硬質部)、ヤシステアリン(ヤシ油を分別して得られる硬質部)等が挙げられる。これらのラウリン系油脂は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0029】
本発明における炭素数16〜18の脂肪酸が豊富な植物油脂とは、菜種油、大豆油、パーム系油脂等を例示することができ、特にパーム系油脂が好ましい。これらの炭素数16〜18の脂肪酸が豊富な植物油脂は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0030】
本発明におけるパーム系油脂とは、パーム油及びパーム油の分別油のことを意味する。パーム油の分別油の具体例としては、パームオレイン(パーム油を分別して得られる軟質部)、パームステアリン(パーム油を分別して得られる硬質部)、パームスーパーオレイン(パームオレインをさらに分別して得られる軟質部であり、スーパーオレインと呼ばれることもある)、パームトップオレイン(パームスーパーオレインをさらに分別して得られる軟質部)、パームミッドフラクション(パームオレインをさらに分別して得られる硬質部であり、PMFと呼ばれることもある)、ソフトパーム(パームステアリンをさらに分別して得られる軟質部)、ハードステアリン(パームステアリンをさらに分別して得られる硬質部)等が挙げられる。これらのパーム系油脂は、1種又は2種以上を混合して用いることもできる。なお、パーム油を分別する方法は、特に制限はなく、溶剤分別、乾式分別、界面活性剤分別のいずれの方法を選択することもできる。
【0031】
油脂Aの調製において、水素添加は必須ではなく、元々ヨウ素価の低い原料油脂を用いた場合、エステル交換のみで調製することもできる。また、油脂Aの調製において、エステル交換及び水素添加の両方を行う場合、その順番に制限はなく、エステル交換を行った後に水素添加を行うことも、水素添加を行った後にエステル交換を行うこともできる。
【0032】
油脂Aの調製において、水素添加を行わない場合、油脂Aのヨウ素価は、17以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましく、0〜10であることが更に好ましい。
また、油脂Aの調製において、水素添加を行う場合、油脂Aのヨウ素価は、トランス脂肪酸の含有量を十分に低減させるという意味で、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、0〜2であることが更に好ましく、0であることが最も好ましい。
なお、油脂のヨウ素価は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.1−1996」の方法に準じて測定することができる。
【0033】
油脂Aを調製するためのエステル交換の方法は、特に制限はなく、通常の方法により行うことができ、合成触媒を使用した化学的エステル交換、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法でも行うことができる。
【0034】
化学的エステル交換は、ナトリウムメトキシド等の化学触媒を触媒として用いてエステル交換反応が行われる。化学的エステル交換によるエステル交換反応は、位置特異性の乏しいエステル交換反応となる(ランダムエステル交換とも言われる)。
化学的エステル交換は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、水洗にて触媒を洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
【0035】
酵素的エステル交換は、リパーゼを触媒として用いてエステル交換反応が行われる。
リパーゼは、リパーゼ粉末やリパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼを使用することができる。酵素的エステル交換によるエステル交換反応は、リパーゼの種類によって、位置特異性の乏しいエステル交換反応、1,3位特異性の高いエステル交換反応のどちらで行うこともできる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
1,3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。
酵素的エステル交換は、例えば、リパーゼ粉末又は固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末又は固定化リパーゼを除去後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
【0036】
油脂Aを調製するための水素添加の方法は、特に制限はなく、通常の方法により行うことができる。水素添加は、例えば、ニッケル触媒の下、水素圧0.02〜0.3Mpa、160〜200℃の条件にて行うことができる。
【0037】
油脂Aの好ましい態様としては、ラウリン系油脂と、パーム系油脂との混合油をエステル交換し、その後、ヨウ素価10以下となるまで水素添加することで得られる油脂を例示することができる。また、ラウリン系油脂と、パーム系油脂を、ヨウ素価10以下となるようにそれぞれ別々に水素添加を行い、その後、これらの混合油をエステル交換することで得られる油脂も例示することができる。ここで、ラウリン系油脂と、パーム系油脂との配合比は、ラウリン系油脂:パーム系油脂の質量比で、30:70〜70:30であることが好ましい。
水素添加は、完全水素添加(ヨウ素価0〜2となるまで水素添加する)であることが好ましい。
ラウリン系油脂としては、パーム核油又はパーム核オレインが好ましい例として挙げられる。また、パーム系油脂としては、パーム油又はパームステアリンが好ましい例として挙げられる。
油脂Aが上記の組み合わせで調製されたものであると、得られる可塑性油脂組成物が適度な可塑性を有するものとなり、伸展性、スプレッド性、口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる食品、特に層状小麦粉膨化食品が浮きのよいものとなる。
【0038】
また、油脂Aの好ましい態様としては、ヨウ素価10以下のラウリン系油脂と、ヨウ素価20以下のパーム系油脂との混合油をエステル交換することで得られる油脂を例示できる。ここで、ヨウ素価10以下のラウリン系油脂と、ヨウ素価20以下のパーム系油脂との配合比は、ラウリン系油脂:パーム系油脂の質量比で、30:70〜70:30であることが好ましい。ヨウ素価10以下のラウリン系油脂としては、例えば、パーム核ステアリン、ヤシステアリンが挙げられる。パーム核ステアリンのヨウ素価は、10以下であることが好ましいが、7以下であることが更に好ましい。ヨウ素価20以下のパーム系油脂としては、ハードステアリンが挙げられる。ハードステアリンのヨウ素価は20以下が好ましく、16以下が更に好ましく、13以下が最も好ましい。
油脂Aが上記の組み合わせで調製されたものであると、得られる可塑性油脂組成物が適度な可塑性を有するものとなり、伸展性、スプレッド性、口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる食品、特に層状小麦粉膨化食品が浮きのよいものとなる。
【0039】
本発明の油脂組成物中における油脂Aの含量(条件(a))は、0.1〜50質量%であり、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2〜15質量%であることが更に好ましい。
油脂組成物中における油脂Aの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物の伸展性、スプレッド性及び熱耐性がよく、べたつきのないものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品が浮きのよいものとなる。
【0040】
本発明の油脂組成物がロールイン用である場合、油脂組成物中における油脂Aの含量は、0.1〜50質量%であり、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2〜15質量%であることが更に好ましい。
ロールイン用油脂組成物中における油脂Aの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物の伸展性がよく、べたつきのないものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品が浮きのよいものとなる。
【0041】
本発明の油脂組成物がスプレッド用である場合、油脂組成物中における油脂Aの含量は、0.1〜50質量%であり、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2〜15質量%であることが更に好ましい。
スプレッド用油脂組成物中における油脂Aの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物のスプレッド性及び熱耐性がよいものとなる。
【0042】
本発明の油脂組成物が練り込み用である場合、油脂組成物中における油脂Aの含量は、0.1〜50質量%であり、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2〜15質量%であることが更に好ましい。
練り込み用油脂組成物中における油脂Aの含量が上記範囲にあると、熱耐性がよいものとなる。
【0043】
本発明で用いる油脂Bは、全構成脂肪酸中にパルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸を含有するものである。
油脂Bの全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量は、20〜60質量%であり、好ましくは25〜55質量%であり、更に好ましくは30〜50質量%である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のステアリン酸含量は、0.5〜6質量%であり、好ましくは3〜6質量%であり、更に好ましくは3〜5質量%である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のオレイン酸含量は、30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%であり、更に好ましくは37〜50質量%である。
油脂Bの全構成脂肪酸中の脂肪酸含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性、スプレッド性、可塑性及び口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0044】
本発明の油脂組成物がロールイン用である場合、本発明で用いる油脂Bの全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量は、20〜60質量%であり、好ましくは30〜50質量%であり、更に好ましくは38質量%を超え50質量%以下である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のステアリン酸含量は、0.5〜6質量%であり、好ましくは3〜6質量%であり、更に好ましくは3〜5質量%である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のオレイン酸含量は、30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%であり、更に好ましくは37〜50質量%である。
ロールイン用油脂組成物に用いる油脂Bの全構成脂肪酸中の脂肪酸含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性のよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0045】
本発明の油脂組成物がスプレッド用である場合、本発明で用いる油脂Bの全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量は、20〜60質量%であり、好ましくは25〜55質量%であり、更に好ましくは30〜50質量%である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のステアリン酸含量は、0.5〜6質量%であり、好ましくは3〜6質量%であり、更に好ましくは3〜5質量%である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のオレイン酸含量は、30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%であり、更に好ましくは37〜50質量%である。
スプレッド用油脂組成物に用いる油脂Bの全構成脂肪酸中の脂肪酸含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物がスプレッド性及び口溶けのよいものとなる。
【0046】
本発明の油脂組成物が練り込み用である場合、本発明で用いる油脂Bの全構成脂肪酸中のパルミチン酸含量は、20〜60質量%であり、好ましくは25〜55質量%であり、更に好ましくは30〜50質量%である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のステアリン酸含量は、0.5〜6質量%であり、好ましくは3〜6質量%であり、更に好ましくは3〜5質量%である。また、油脂Bの全構成脂肪酸中のオレイン酸含量は、30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%であり、更に好ましくは37〜50質量%である。
練り込み用油脂組成物に用いる油脂Bの全構成脂肪酸中の脂肪酸含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が可塑性及び口溶けのよいものとなる。
【0047】
油脂Bは、例えば、パーム油や、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームトップオレイン、パームミッドフラクション等のパーム油の分別油を原料油脂として用いることができる。パームオレインは、ヨウ素価50〜65であることが好ましく、ヨウ素価54〜60であることがより好ましい。パームスーパーオレインは、ヨウ素価55〜70であることが好ましく、ヨウ素価58〜70であることがより好ましい。パームトップオレインは、ヨウ素価60〜75であることが好ましく、ヨウ素価65〜75であることがより好ましい。パームミッドフラクションは、ヨウ素価43〜48であることが好ましい。
また、油脂Bは、例えば、パームオレイン、パームスーパーオレイン又はパームトップオレインをエステル交換して得られる油脂を原料油脂として用いることもできる。エステル交換させるパームオレインは、ヨウ素価50〜65であることが好ましく、ヨウ素価54〜60であることがより好ましい。エステル交換させるパームスーパーオレインは、ヨウ素価55〜70であることが好ましく、ヨウ素価58〜70であることがより好ましい。エステル交換させるパームトップオレインは、ヨウ素価60〜75であることが好ましく、ヨウ素価65〜75であることがより好ましい。
油脂Bの原料油脂として用いられるパーム油の分別油の調製方法は、特に制限はなく、溶剤分別、乾式分別、界面活性剤分別のいずれの方法を選択することもできる。
油脂Bの調製するためのエステル交換は、油脂Aを調製するためのエステル交換を同様の方法、条件で行うことができる。
【0048】
油脂Bは、前記した原料油脂を1種又は2種以上を混合して調製することもできる。
【0049】
油脂Bの好ましい態様としては、例えば、ヨウ素価50〜65のパームオレインをエステル交換して得られる油脂とヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの混合油や、ヨウ素価50〜65のパームオレインをエステル交換して得られる油脂とヨウ素価55〜70のパームスーパーオレインとヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの混合油等を例示することができる。
油脂Bが上記の組み合わせで調製されたものであると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性、スプレッド性、可塑性及び口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0050】
油脂Bがヨウ素価50〜65のパームオレインをエステル交換して得られる油脂とヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの混合油である場合の配合比は、ヨウ素価50〜65のパームオレインをエステル交換して得られる油脂:ヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの質量比で、1:20〜5:1であることが好ましく、1:10〜3:1であることがより好ましい。
油脂Bがヨウ素価50〜65のパームオレインをエステル交換して得られる油脂とヨウ素価55〜70のパームスーパーオレインとヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの混合油である場合の配合比は、ヨウ素価50〜65のパームオレインをエステル交換して得られる油脂:ヨウ素価55〜70のパームスーパーオレイン:ヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの質量比で、1:1:20〜5:5:1であることが好ましく、1:1:10〜3:3:1であることがより好ましい。
油脂Bが上記の組み合わせで調製されたものであると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性、スプレッド性、可塑性及び口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0051】
本発明の油脂組成物がロールイン用である場合、油脂Bの好ましい態様としては、例えば、ヨウ素価54〜60のパームオレインをエステル交換して得られる油脂とヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの混合油等を例示することができ、その配合比は、ヨウ素価54〜60のパームオレインをエステル交換して得られる油脂:ヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの質量比で、1:20〜5:1であることが好ましく、1:10〜3:1であることがより好ましい。
油脂Bが上記の組み合わせで調製されたものであると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性のよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0052】
本発明の油脂組成物がスプレッド用である場合、油脂Bの好ましい態様としては、例えば、ヨウ素価54〜60のパームオレインをエステル交換して得られる油脂とヨウ素価58〜70のパームスーパーオレインとヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの混合油等を例示することができ、その配合比は、ヨウ素価54〜60のパームオレインをエステル交換して得られる油脂:ヨウ素価58〜70のパームスーパーオレイン:ヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの質量比で、1:1:20〜5:5:1であることが好ましく、1:1:10〜3:3:1であることがより好ましい。
油脂Bが上記の組み合わせで調製されたものであると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性、スプレッド性及び口溶けのよいものとなる。
【0053】
本発明の油脂組成物が練り込み用である場合、油脂Bの好ましい態様としては、例えば、ヨウ素価54〜60のパームオレインをエステル交換して得られる油脂とヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの混合油等を例示することができ、その配合比は、ヨウ素価54〜60のパームオレインをエステル交換して得られる油脂:ヨウ素価43〜48のパームミッドフラクションの質量比で、1:20〜5:1であることが好ましく、1:10〜3:1であることがより好ましい。
油脂Bが上記の組み合わせで調製されたものであると、得られる可塑性油脂組成物が可塑性及び口溶けのよいものとなる。
【0054】
本発明の油脂組成物中における油脂Bの含量は、10〜90質量%であり、10〜80質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、45〜80質量%であることが更に好ましい。
油脂組成物中における油脂Bの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性、スプレッド性、可塑性及び口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0055】
本発明の油脂組成物がロールイン用である場合、油脂組成物中における油脂Bの含量は、10〜90質量%であり、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましく、50〜70質量%であることが更に好ましい。
ロールイン用油脂組成物中における油脂Bの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性のよいものなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0056】
本発明の油脂組成物がスプレッド用である場合、油脂組成物中における油脂Bの含量は、10〜90質量%であり、15〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、45〜65質量%であることが更に好ましい。
スプレッド用油脂組成物中における油脂Bの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物がスプレッド性及び口溶けのよいものとなる。
【0057】
本発明の油脂組成物が練り込み用である場合、油脂組成物中における油脂Bの含量は、10〜90質量%であり、30〜80質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、60〜80質量%であることが更に好ましい。
練り込み用油脂組成物中における油脂Bの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が可塑性及び口溶けのよいものとなる。
【0058】
本発明の油脂組成物中における油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比(油脂B/油脂A)は、1〜99であることが好ましく、1〜50であることがより好ましく、5.6〜20であることが更に好ましく、5.6〜16であることが最も好ましい。
油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物がスプレッド性、耐熱性及び口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0059】
本発明の油脂組成物がロールイン用である場合、油脂組成物中における油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比(油脂B/油脂A)は、1〜99であることが好ましく、1〜50であることがより好ましく、5.6〜20であることが更に好ましく、5.6〜15であることが最も好ましい。
油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が耐熱性及び口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0060】
本発明の油脂組成物がスプレッド用である場合、油脂組成物中における油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比(油脂B/油脂A)は、1〜99であることが好ましく、1〜50であることがより好ましく、5.6〜20であることが更に好ましく、5.6〜15であることが最も好ましい。
油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物がスプレッド性、耐熱性及び口溶けのよいものとなる。
【0061】
本発明の油脂組成物が練り込み用である場合、油脂組成物中における油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比(油脂B/油脂A)は、1〜99であることが好ましく、1〜50であることがより好ましく、5.6〜20であることが更に好ましく、5.6〜16であることが最も好ましい。
油脂Aの含量に対する油脂Bの含量の比が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が可塑性、耐熱性及び口溶けのよいものとなる。
【0062】
本発明で用いる油脂Cは、液状油である。本発明における液状油とは、20℃で流動性を有する油脂のことをいう(好ましくは5℃で流動性を有する油脂、より好ましくは5℃で流動性及び透明性を有する油脂である)。
油脂Cとしては、20℃で流動性を有する油脂であれば、特に制限させることなく使用することができる。ただし、20℃で流動性を有し、かつ油脂Bの構成を満たす油脂は、油脂Cには属さないものとし、油脂Bに属するものとする。
【0063】
油脂Cとしては、例えば、液状植物油や、中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール含有油脂等が挙げられる。
【0064】
液状植物油としては、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油等が挙げられる。これらの液状植物油は、20℃で流動性を有すれば、エステル交換、分別等の加工処理したものも用いることができる。これらの液状植物油は、1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0065】
中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール含有油脂とは、中鎖脂肪酸が1つ以上エステル結合したトリアシルグリセロールを含有する油脂のことをいう。中鎖脂肪酸が3つエステル結合したトリアシルグリセロールは、MCTと呼ばれることがある。また、中鎖脂肪酸が1つ又は2つエステル結合し、残りの脂肪酸として長鎖脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールは、MLCTと呼ばれることがある。
なお、本発明における中鎖脂肪酸とは、炭素数6〜10の飽和脂肪酸のことであり、具体的には、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、及びn−デカン酸等が挙げられる。
【0066】
中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール含有油脂中における中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含量は、4〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることが更に好ましく、15〜100質量%であることが最も好ましい。
【0067】
油脂Cとしては、液状植物油と中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール含有油脂を混合して用いることもできる。
【0068】
本発明の油脂組成物中における油脂Cの含量(条件(b))は、0.1質量%以上40質量%未満であり、10質量%以上40質量%未満であることが好ましく、15質量%以上40質量%未満であることがより好ましい。
油脂組成物中における油脂Cの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性、スプレッド性、口溶け及び可塑性のよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品が更にジューシーな食感を有するものとなる。
【0069】
本発明の油脂組成物がロールイン用である場合、油脂組成物中における油脂Cの含量は、0.1質量%以上40質量%未満であり、10質量%以上40質量%未満であることが好ましく、20質量%以上40質量%未満であることがより好ましく、25質量%以上40質量%未満であることが更に好ましい。
ロールイン用油脂組成物中における油脂Cの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性のよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品が更にジューシーな食感を有するものとなる。
【0070】
本発明の油脂組成物がスプレッド用である場合、油脂組成物中における油脂Cの含量は、0.1質量%以上40質量%未満であり、10質量%以上40質量%未満であることが好ましく、20質量%以上40質量%未満であることがより好ましく、25質量%以上40質量%未満であることが更に好ましい。
スプレッド用油脂組成物中における油脂Cの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物がスプレッド性及び口溶けのよいものとなる。
【0071】
本発明の油脂組成物が練り込み用である場合、油脂組成物中における油脂Cの含量は、0.1質量%以上40質量%未満であり、10質量%以上40質量%未満であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。
練り込み用油脂組成物中における油脂Cの含量が上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が可塑性のよいものとなる。
【0072】
本発明の油脂組成物中のPPO/POP(条件(c))は、0.15〜1.00であり、好ましくは0.15〜0.90であり、より好ましくは0.15〜0.85である。PPO/POPは、油脂組成物中のPOP含量に対するPPO含量の比である。また、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を意味する。また、PPOは1位及び2位、又は2位及び3位の脂肪酸がパルミチン酸であり、3位、又は1位の脂肪酸がオレイン酸であるトリアシルグリセロールを意味する。また、POPは1位及び3位の脂肪酸がパルミチン酸であり、2位の脂肪酸がオレイン酸であるトリアシルグリセロールを意味する。
なお、油脂組成物中のPOP含量及びPPO含量は、JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)を参考にしたガスクロマトグラフィー法によるPOPとPPOの合計含量の分析、及びJ.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)を参考にした銀イオンカラム−高速液体クロマトグラフィーによるPOPとPPOの組成比分析を組み合わせることにより測定することができる。
油脂組成物中のPPO/POPが上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性、スプレッド性、可塑性及び口溶けのよいものとなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0073】
本発明の油脂組成物がロールイン用である場合、油脂組成物中のPPO/POPは、0.15〜1.00であり、好ましくは0.40〜0.90であり、より好ましくは0.65〜0.85である。
ロールイン用油脂組成物中のPPO/POPが上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が伸展性のよいものなる。また、可塑性油脂組成物を用いて得られる層状小麦粉膨化食品がジューシーな食感を有し、浮きもよいものとなる。
【0074】
本発明の油脂組成物がスプレッド用である場合、油脂組成物中のPPO/POPは、0.15〜1.00であり、好ましくは0.15〜0.60であり、より好ましくは0.20〜0.45である。
スプレッド用油脂組成物中のPPO/POPが上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物がスプレッド性及び口溶けのよいものとなる。
【0075】
本発明の油脂組成物が練り込み用である場合、油脂組成物中のPPO/POPは、0.15〜1.00であり、好ましくは0.15〜0.55であり、より好ましくは0.15〜0.35である。
練り込み用油脂組成物中のPPO/POPが上記範囲にあると、得られる可塑性油脂組成物が可塑性及び口溶けのよいものとなる。
【0076】
本発明の油脂組成物は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。本発明においてトランス脂肪酸を実質的に含有しないとは、油脂組成物を構成する全構成脂肪酸中のトランス脂肪酸含量が、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、更に好ましくは2質量%未満であることを意味する。
なお、油脂中のトランス脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定することができる。
【0077】
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記油脂A、油脂B、油脂C以外のその他の油脂を含有させることもできる。その他の油脂の含量は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが更に一層好ましく、0質量%(油脂A、油脂B及び油脂Cのみからなる)であることが最も好ましい。その他の油脂としては、例えば、乳脂等が挙げられる。
【0078】
本発明の油脂組成物は、上記油脂A、油脂B、油脂Cを、必要に応じて加熱溶解させた後、均一に混合することで製造することができる。なお、例えば、油脂Aが1種類、油脂Bが2種類(油脂B−1、油脂B−2とする)、油脂Cが2種類(油脂C−1、油脂C−2とする)から構成される油脂組成物の場合は、油脂A、油脂B−1、油脂B−2、油脂C−1、油脂C−2を一度にまとめて混合することで製造することもできる。
【0079】
本発明の油脂組成物は、ロールイン用、スプレッド用、練り込み用等の可塑性油脂組成物に好適に使用することができる。
【0080】
次に、本発明の可塑性油脂組成物について説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、本発明の油脂組成物を用いることを特徴とする。なお、本発明の油脂組成物を用いた本発明の可塑性油脂組成物とは、本発明の油脂組成物を油相に配合して調製した可塑性油脂組成物以外に、本発明の油脂組成物を構成する上記油脂A、油脂B及び油脂Cを別々に油相に配合して調製した可塑性油脂組成物も含むものである。
【0081】
本発明の可塑性油脂組成物は、油相中には、油脂成分として本発明の油脂組成物を含有するものである。可塑性油脂組成物の油相中における油脂成分の合計量に対する油脂組成物の含量は、上記油脂A、油脂B及び油脂Cの合計含量で規定することができ、65〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましく、90〜100質量%であることが更に一層好ましく、100質量%(油相中の油脂成分が油脂A、油脂B及び油脂Cのみからなる)であることが最も好ましい。
【0082】
また、本発明の可塑性油脂組成物は、水相を有するものと、水相を有さないものとに大別される。
水相を有する可塑性油脂組成物の形態としては、油中水型乳化物、水中油型乳化物、二重乳化型乳化物が挙げられるが、油中水型乳化物であること好ましい。油中水型乳化物タイプの可塑性油脂組成物としては、マーガリン、ファットスプレッドが挙げられる。
【0083】
可塑性油脂組成物が油中水型乳化物、水中油型乳化物、二重乳化型乳化物等である場合、油相の含量は、48〜98質量%であることが好ましく、60〜98質量%であることが好ましい、水相の含量は、2〜52質量%であることが好ましく、2〜40質量%であることがより好ましい。
油相には、油脂成分(上記油脂A、油脂B及び油脂Cを含有する本発明の油脂組成物)、バター、乳化剤、香料等が配合される。水相には、水、食塩、脱脂粉乳、呈味成分等が配合される。
可塑性油脂組成物の油相、水相の含量が上記範囲であると、得られる可塑性油脂組成物が可塑性及び口溶けのよいものとなる。
【0084】
水相を有さない可塑性油脂組成物の形態としては、ショートニングが挙げられる。可塑性油脂組成物がショートニングであるの場合、油相の含量は100質量%となる。ショートニングには、油脂成分(上記油脂A、油脂B及び油脂Cを含有する本発明の油脂組成物)、乳化剤等が配合される。
【0085】
可塑性油脂組成物の油相には、本発明の効果を損なわない範囲において、油脂成分として本発明の油脂組成物を構成する上記油脂A、油脂B、油脂C以外のその他の油脂を含有させることもできる。油脂成分の合計量に対するその他の油脂の含量は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが更に一層好ましく、0質量%(油相中の油脂成分が油脂A、油脂B及び油脂Cのみからなる)であることが最も好ましい。その他の油脂としては、例えば、乳脂等が挙げられる。
【0086】
可塑性油脂組成物、特に、練り込み用可塑性油脂組成物には、バター(脂肪分としては乳脂のみからなる)を配合することもできる。可塑性油脂組成物中におけるバターの配合量は、5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることが更に好ましい。可塑性油脂組成物に上記範囲のバターを配合すると、得られる可塑性油脂組成物が風味のよいものとなる。
【0087】
可塑性油脂組成物、特に、練り込み用可塑性油脂組成物には、呈味成分を配合することもできる。呈味成分としては、蛋白酵素分解物(例えば、大日本明治製糖株式会社製のコクベース ラクティックイーストエキス等を使用することができる。)、バター酵素分解物(例えば、バターバッズ社製のバターバッズ等を使用することができる。)等が挙げられる。可塑性油脂組成物中における呈味成分の配合量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましく、0.3〜1質量%であることがより更に好ましい。可塑性油脂組成物に上記範囲の呈味成分を配合すると、得られる可塑性油脂組成物が風味のよいものとなる。
特に、本発明の可塑性油脂組成物と、蛋白酵素分解物やバター酵素分解物を組み合わせると、油脂成分が植物油ベースであっても、良好なバター風味を有する可塑性油脂組成物が得られる。なお、可塑性油脂組成物中における蛋白酵素分解物とバター酵素分解物の配合比は、蛋白酵素分解物:バター酵素分解物の質量比で、8:2〜2:8であることが好ましい。
【0088】
可塑性油脂組成物には、乳化剤を配合することができる。乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。可塑性油脂組成物中における乳化剤の配合量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。
【0089】
可塑性油脂組成物は、その他の成分として、通常、可塑性油脂組成物に配合される成分を配合することができる。その他の成分としては、増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β‐カロテン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキン等)、ルチン等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、香料、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清蛋白等の乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0090】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられる。
【0091】
本発明の可塑性油脂組成物において、上記その他の成分の含量は、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0092】
本発明の可塑性油脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法により製造することができる。
具体的には、先ず、本発明の油脂組成物を含む油相を溶解し、必要により水相を混合乳化した後、冷却し、結晶化させることで製造することができる。冷却、結晶化は、冷却可塑化させることが好ましい。
冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上である。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せも挙げられる。
また、油相の溶解後又は混合乳化後は、殺菌処理することが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
なお、本発明の油脂組成物は、油脂組成物を構成する上記油脂A、油脂B及び油脂Cを別々に油相に配合することもできる。
【0093】
本発明の可塑性油脂組成物は、その形状として、シート状、ブロック状、円柱状、直方体状等様々な形状とすることができる。
可塑性油脂組成物がロールイン用可塑性油脂組成物の場合、シート状に成型されたものであることが好ましい。シート状とした場合、幅は50〜1000mmであることが好ましく、長さは50〜1000mmであることが好ましく、厚さは1〜50mmであることが好ましい。
【0094】
本発明の可塑性油脂組成物は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。本発明においてトランス脂肪酸を実質的に含有しないとは、可塑性油脂組成物における全構成脂肪酸中のトランス脂肪酸含量が、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、更に好ましくは2質量%未満であることを意味する。
【0095】
本発明の可塑性油脂組成物は、ロールイン用可塑性油脂組成物、スプレッド用可塑性油脂組成物、練り込み用可塑性油脂組成物等として用いることができる。
【0096】
ロールイン用可塑性油脂組成物は、デニッシュペストリー、クロワッサン、パイ等の層状小麦粉膨化食品の製造に好適に用いることができる。ロールイン用可塑性油脂組成物は、伸展性がよく、べたつきがない等の作業性がよいものである。
【0097】
スプレッド用可塑性油脂組成物は、スプレッドやフィリング材として用いることができる。スプレッド用可塑性油脂組成物は、スプレッド性(伸び、広がり)、熱耐性、口溶けのよいものである。
【0098】
練り込み用可塑性油脂組成物は、菓子やパンの製造に好適に用いることができる。練り込み用可塑性油脂組成物は、バターや呈味成分等を配合した場合に風味の発現がよいものである。また、練り込み用可塑性油脂組成物は、クリーミング性及び吸卵性のよいものである。クリーミング性がよいと、製造時の作業性がよいものとなる。吸卵性がよいと、卵をより多く配合することも可能になるため、バラエティーに富んだ配合での製造が可能となる。
【0099】
次に、本発明の食品について説明する。
本発明の食品は、本発明の可塑性油脂組成物を用いることを特徴とする。
本発明の食品としては、デニッシュペストリー、クロワッサン、パイ等の層状小麦粉膨化食品、スプレッド、フィリング材、菓子、パン、バタークリーム等が挙げられる。
また、本発明の食品への本発明の可塑性油脂組成物の配合量は、使用される食品の種類によって異なるため、特に制限されるものではない。
また、本発明の食品の製造方法は、特に制限されるものではなく、本発明の可塑性油脂組成物を用いること以外は、公知の原料を使用し、公知の配合、公知の方法により、製造することができる。
【0100】
デニッシュペストリー、クロワッサン、パイ等の層状小麦粉膨化食品の製造には、本発明のロールイン用可塑性油脂組成物を好適に用いることができる。層状小麦粉膨化食品の製造に用いるロールイン用可塑性油脂組成物は、シート状であることが好ましい。
層状小麦粉膨化食品は、例えば、シート状のロールイン用可塑性油脂組成物を生地の間に挟み込み、その後、生地を複数回折りたたみ、生地中にロールイン用可塑性油脂組成物を層状に折り込んだ後、生地を焼成することにより製造することができる。
本発明のロールイン用可塑性油脂組成物を用いて層状小麦粉膨化食品を製造すると、ロールイン用可塑性油脂組成物は伸展性がよく、べたつきもないことから、作業性がよいものとなる。また、本発明のロールイン用可塑性油脂組成物を用いて製造した層状小麦粉膨化食品は、浮きがよく、ジューシー感を有するものとなる。
【0101】
スプレッド、フィリング材には、本発明のスプレッド用可塑性油脂組成物を好適に用いることができる。
スプレッド及びフィリング材は、スプレッド用可塑性油脂組成物をそのままスプレッドやフィリング材として用いることもできる。また、スプレッド及びフィリング材は、スプレッド用可塑性油脂組成物とピーナツ、チョコレート等を混合して調製することもできる。スプレッドは、パンや菓子等に塗って使用されるものである。本発明の食品は、スプレッドを塗ったパンや菓子等も含むものである。フィリング材は、パンや菓子等に挟んで使用されるものである。また、本発明の食品は、フィリング材を挟んだパンや菓子等も含むものである。
本発明のスプレッド用可塑性油脂組成物を用いて製造したスプレッド及びフィリング材は、スプレッド性、熱耐性及び口溶けのよいものとなる。
【0102】
菓子、パンには、本発明の練り込み用可塑性油脂組成物を好適に用いることができる。
菓子やパンは、例えば、練り込み用可塑性油脂組成物を生地中に通常の方法で練り込んだ後、生地を焼成することにより製造することができる。
本発明の練り込み用可塑性油脂組成物を用いて製造される菓子やパンとしては、生地中にマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングが配合されるものであれば特に制限はされない。菓子の具体例としては、クッキー、ビスケット、ケーキ等が挙げられる。
本発明の練り込み用可塑性油脂組成物を用いて製造した菓子、パンは、バターや呈味成分等を配合した場合に風味の発現がよいものとなる。
特に、本発明の練り込み用可塑性油脂組成物と、蛋白酵素分解物やバター酵素分解物を組み合わせたものを使用すると、油脂成分が植物油ベースであっても、良好なバター風味を有する菓子やパンが得られる。なお、菓子、パンに用いる練り込み用可塑性油脂組成物中における蛋白酵素分解物とバター酵素分解物の配合比は、蛋白酵素分解物:バター酵素分解物の質量比で、8:2〜2:8であることが好ましい。
【0103】
バタークリームには、本発明の練り込み用可塑性油脂組成物を好適に用いることができる。
バタークリームは、例えば、練り込み用可塑性油脂組成物を起泡させることにより製造することができる。バタークリームには、必要に応じて糖等を配合して起泡させることもできる。
バタークリームは、パンや菓子等に塗ったり、挟んだりして使用されるものである。また、本発明の食品は、バタークリームを塗ったり、挟んだりしたパンや菓子等も含むものである。
本発明の練り込み用可塑性油脂組成物を用いて製造したバタークリームは、バターや呈味成分等を配合した場合に風味の発現がよいものとなる。
【実施例】
【0104】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例になんら制限されるものではない。
なお、ロールイン用に関する実施例は参考例である。
【0105】
〔測定方法〕
以下に示す油脂中の脂肪酸含量、油脂のヨウ素価、油脂中のトランス脂肪酸含量、油脂中のPPOとPOP含量の測定は以下の方法により測定した。
油脂中の脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定した。
油脂のヨウ素価は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.1−1996」の方法に準じて測定した。
油脂中のトランス脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定した。
油脂中のPOP含量及びPPO含量は、JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)を参考にしたガスクロマトグラフィー法によるPOPとPPOの合計含量の分析、及びJ.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)を参考にした銀イオンカラム−高速液体クロマトグラフィーによるPOPとPPOの組成比の分析を組み合わせることにより測定した。
【0106】
〔油脂Aの調製〕
パームステアリン(ヨウ素価33、日清オイリオグループ株式会社社内製)10kgとパーム核オレイン(ヨウ素価25、ラウリン酸含量41質量%、日清オイリオグループ株式会社社内製)10kgとを混合して減圧下115〜120℃で加熱乾燥した後、触媒としてナトリウムメトキシド20gを添加し、30分間減圧下で攪拌しながらエステル交換反応を進行させた。エステル交換反応終了後、水洗、脱色した後、ニッケル触媒を用いて160〜200℃にて水素添加を行い、ヨウ素価を2以下に調整した。ヨウ素価が2以下になったのを確認した後、温度を100℃以下に下げ、ニッケル触媒をろ過により除去し、脱色、脱臭を行うことで、油脂A(ヨウ素価0.1、炭素数12〜14の飽和脂肪酸含量31.0質量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量64.7質量%)を得た。
【0107】
〔油脂a〕
油脂aとして、パームステアリン(ヨウ素価33、炭素数12〜14の飽和脂肪酸含量1.4質量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量65.9質量%、日清オイリオグループ株式会社社内製)を使用した。
【0108】
〔油脂B−1の調製〕
油脂B−1として、パーム油(ヨウ素価52、商品名;精製パーム油、日清オイリオグループ株式会社製)を分別して得られた軟質部であるパームオレインを、さらに分別して得られた硬質部であるパームミッドフラクション(ヨウ素価45、パルミチン酸含量48.0質量%、ステアリン酸含量4.9質量%、オレイン酸含量37.7質量%、日清オイリオグループ株式会社社内製)を得た。
【0109】
〔油脂B−2の調製〕
油脂B−2として、パーム油(ヨウ素価52、商品名;精製パーム油、日清オイリオグループ株式会社製)を分別して得られた軟質部であるパームオレインを、さらに分別して得られた軟質部であるパームスーパーオレイン(ヨウ素価65、パルミチン酸含量33.0質量%、ステアリン酸含量3.6質量%、オレイン酸含量47.6質量%、日清オイリオグループ株式会社社内製)を得た。
【0110】
〔油脂B−3の調製〕
パーム油(ヨウ素価52、商品名;精製パーム油、日清オイリオグループ株式会社製)を分別して得られた軟質部であるパームオレイン(ヨウ素価56)20kgを、115−120℃で減圧乾燥し、ナトリウムメトキシド20gを
添加し、30分間減圧下で攪拌し、エステル交換反応を進行させた。エステル交換反応終了後、水洗、脱色、脱臭を行うことで、油脂B−3(ヨウ素価56、パルミチン酸含量39.8質量%、ステアリン酸含量4.4質量%、オレイン酸含量42.6質量%、日清オイリオグループ株式会社社内製)得た。
【0111】
〔油脂B−4〕
パーム油(ヨウ素価52、商品名:精製パーム油、パルミチン酸含量43.8質量%、ステアリン酸含量4.4質量%、オレイン酸含量39.7質量%、日清オイリオグループ株式会社製)を油脂B−4とした。
【0112】
〔油脂C−1〕
油脂C−1として、菜種油(商品名:日清菜種サラダ油、日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。菜種油は、5℃において液状で、透明性を有するものであった。
【0113】
〔油脂C−2〕
油脂C−2として、大豆油(商品名:日清大豆白絞油、日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。大豆油は、5℃において液状で、透明性を有するものであった。
【0114】
〔その他油脂〕
その他油脂として、バター(商品名:明治醗酵バター、明治乳業株式会社製)、パーム油の極度硬化油(商品名:パーム極度硬化油、横関油脂株式会社製)、大豆油の硬化油(商品名:大豆硬化油40、日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。
【0115】
(ロールイン用マーガリンの調製)
以下の表1及び表2に示す配合で、油脂組成物を構成する油脂A、油脂B−1、油脂B−2、油脂B−3、油脂C−1、油脂C−2、油脂aと、乳化剤、香料を混合することで油相を調製した。次に、以下の表1及び表2に示す配合で水相を調製し、調製した油相と水相とを以下の表1及び表2に示す配合比で混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、コンビネーターを用いて急冷可塑化した後、レスティングチューブを通してシート状に成型することで、実施例1〜5及び比較例1〜5のロールイン用マーガリンを得た。得られたシート状のロールイン用マーガリンの大きさは、幅220mm、長さ300mm、厚さ10mmであった。
なお、実施例1〜5及び比較例1〜5のロールイン用マーガリン中のトランス脂肪酸含量は、全て1質量%未満であった。
また、ロールイン用マーガリンを構成する油脂組成物の配合及び油脂組成物中のPPO/POPを表1−1及び表2−1に示した。
【0116】
実施例1〜5及び比較例1〜5のロールイン用マーガリンを用いて、表3の配合で下記製法により、クロワッサンを製造した。クロワッサンの製造におけるロールイン時の作業性(マーガリンの伸展性、べたつき)を下記評価基準により比較評価した。また、焼成したクロワッサンの生地浮き及びジューシー感を下記評価基準により比較評価した。なお、評価結果は、10名のパネラーの比較評価結果の総合評価とした。結果を以下の表1及び表2に示した。
【0117】
<クロワッサンの製法>
上記の配合で生地を調製し、得られた生地3kgにシート状に成型したロールイン用マーガリン750gをのせ、常法に従い、ロールイン用マーガリンを生地に折り込み、成型の後、焼成してクロワッサンを製造した。
【0118】
<ロールイン時のマーガリンの伸展性の評価基準>
◎ :ひび割れがなく薄く伸び、良好
○ :ひび割れがなく良好
△ :若干のひび割れが起こり、やや不良
× :ひび割れが起こり、不良
【0119】
<ロールイン時のマーガリンのべたつきの評価基準>
◎ :べたつきなく薄く伸び、良好
○ :べたつきなく良好
△ :若干べたつきが起き、やや不良
× :べたつきが起き、不良
【0120】
<クロワッサンの生地浮きの評価基準>
◎ :非常に生地浮きが良く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間があり良好
○ :生地浮きが良く、生地と生地の間に隙間がある
△ :生地浮きが悪く、生地と生地の間に十分な隙間の無い部分が多い
× :生地浮きが悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間が無い
【0121】
<クロワッサンのジューシー感の評価基準>
◎ :ジューシー感が強く、非常に良好
○ :ジューシー感があり良好
△ :若干パサパサ感あり
× :パサパサ感あり
【0122】
【表1】
【0123】
【表1-1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表2-1】
【0126】
【表3】
【0127】
表1から分かるように、実施例のロールイン用マーガリンは、作業性(ロールイン時のマーガリンの伸展性、べたつき)に優れていた。また、実施例のロールイン用マーガリンを用いて製造したクロワッサンは、生地浮きに優れると共に、ジューシー感を有していた。
【0128】
一方、表2から分かるように、比較例のロールイン用マーガリンの場合、全ての評価項目が満足いくものはなかった。
PPO/POPが1.00を超える比較例1のロールイン用マーガリンの場合、該マーガリンを用いて製造したクロワッサンは、ジューシー感が満足いくものではなかった。
PPO/POPが1.00を超える比較例2のロールイン用マーガリンの場合、該マーガリンを用いて製造したクロワッサンは、ジューシー感及び生地浮きが満足いくものではなかった。
PPO/POPが0.15未満である比較例3のロールイン用マーガリンの場合、全て評価項目が満足いくものではなかった。
油脂Cが40質量%を超える比較例4のロールイン用マーガリンの場合、ロールイン時のマーガリンのべたつきが満足いくものではなく、また、該マーガリンを用いて製造したクロワッサンの生地浮きも満足いくものではなかった。
油脂Aを配合していない比較例5のロールイン用マーガリンの場合、ロールイン時の伸展性が満足いくものではなく、また、該マーガリンを用いて製造したクロワッサンの生地浮き及びジューシー感も満足いくものではなかった。
【0129】
(スプレッドの調製)
以下の表4及び表5に示す配合で、油脂組成物を構成する油脂A、油脂B−1、油脂B−2、油脂B−3、油脂C−1、油脂C−2、油脂aと、乳化剤、香料を混合することで油相を調製した。次に、以下の表4及び表5に示す配合で水相を調製し、調製した油相と水相とを以下の表4及び表5に示す配合比で混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、オンレーターを用いて急冷可塑化することで、実施例6〜8及び比較例6〜10のスプレッドを得た。
なお、実施例6〜8及び比較例6〜10のスプレッド中のトランス脂肪酸含量は、全て1質量%未満であった。
また、スプレッドを構成する油脂組成物の配合及び油脂組成物中のPPO/POPを表4−1及び表5−1に示した。
【0130】
実施例6〜8及び比較例6〜10のスプレッドを用いて、口溶け、スプレッド性及び熱耐性を下記評価基準により比較評価した。なお、評価結果は、10名のパネラーにおける比較評価結果の総合評価とした。結果を以下の表4及び表5に示した。
【0131】
<スプレッドの口溶けの評価基準>
◎ :口中でほとんど抵抗なく短時間で溶け、良好
○ :口中で短時間で溶け、良好
△ :口中で溶けるのにやや時間がかかり、やや不良
× :口中で溶け残りやべたつきがあり、不良
【0132】
<スプレッドのスプレッド性>
◎ :抵抗なく薄く均一に伸び、良好
○ :薄く均一に伸び、良好
△ :やや抵抗があり伸びにくく、やや不良
× :抵抗があり均一に伸びず、不良
【0133】
<スプレッドの熱耐性の評価基準>
◎ :20℃で1週間保管した際に液油の分離が起きない
△ :20℃で1週間保管した際に若干液油の分離が起きる
× :20℃で1週間保管した際に液油の分離が起きる
【0134】
【表4】
【0135】
【表4-1】
【0136】
【表5】
【0137】
【表5-1】
【0138】
表4から分かるように、実施例のスプレッドは、口溶け、スプレッド性及び熱耐性に優れていた。
【0139】
一方、表5から分かるように、比較例のスプレッドの場合、全ての評価項目が満足いくものはなかった。
PPO/POPが0.15未満である比較例6のスプレッドの場合、口溶け及び熱耐性が満足いくものではなかった。
PPO/POPが1.00を超える比較例7のスプレッドの場合、全て評価項目が満足いくものではなかった。
PPO/POPが0.15未満である比較例8のスプレッドの場合、全て評価項目が満足いくものではなかった。
油脂Cが40質量%を超える比較例9のスプレッドの場合、全て評価項目が満足いくものではなかった。
油脂Aを配合していない比較例10のスプレッドの場合、口溶け及びスプレッド性が満足いくものではなかった。
【0140】
(バター風味マーガリンの調製)
以下の表6及び表7に示す配合で、油脂組成物を構成する油脂A、油脂B−1、油脂B−2、油脂B−3、油脂B−4、油脂C−2と、バター、乳化剤、香料、着色料を混合することで油相を調製した。次に、以下の表6及び表7に示す配合で水相を調製し、調製した油相と水相とを以下の表6及び表7に示す配合比で混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、オンレーターを用いて急冷可塑化することで、実施例9〜13及び比較例11〜12のバター風味マーガリンを得た。蛋白酵素分解物は、大日本明治製糖株式会社製のコクベース ラクティックイーストエキスを使用し、バター酵素分解物は、バターバッズ社製のバターバッズを使用した。
なお、実施例9〜13及び比較例11のバター風味マーガリン中のトランス脂肪酸含量は、全て1質量%未満であった。また、比較例12のバター風味マーガリン中のトランス脂肪酸含量は、12.8質量%であった。
また、バター風味マーガリンを構成する油脂組成物の配合及び油脂組成物中のPPO/POPを表6−1及び表7−1に示した。
【0141】
実施例9〜13及び比較例11、12のバター風味マーガリンを用いて、クリーミング性及び吸卵性を下記試験方法により比較評価した。また、表8の配合で下記製法により、クッキーを製造し、焼成したクッキーの風味を下記評価基準により比較評価した。なお、焼成したクッキーの風味の評価結果は、10名のパネラーの比較評価結果の総合評価とした。結果を以下の表6及び表7に示した。
【0142】
<クリーミング性及び吸卵性試験方法>
マーガリン200gと篩いにかけた上白糖200gとをホバートミキサーN−50(ビーター使用)で比重が0.75になるまで攪拌した。1速(低速)で攪拌しながら、少しずつ溶いた全卵をマーガリンと卵が分離しかかる直前まで加えていき、加えた卵の重量を測定した。クリーミング性は、比重が0.75になるまで時間で評価した。吸卵性は、下記式及び評価基準から評価した。
吸卵性=加えた卵の全重量(g)/マーガリン重量(200g)
【0143】
<クリーミング性の評価基準>
良好 :5分未満
普通 :5分以上〜10分未満
不良 :10分以上
【0144】
<吸卵性の評価基準>
良好 :0.8以上
普通 :0.5以上0.8未満
不良 :0.5未満
【0145】
<クッキーの製法>
クッキーを表8の配合にて、シュガーバッター法で作製した。
【0146】
<クッキーの風味の評価基準>
◎ :バター風味が良く出ていて、大変よい
○ :バター風味の出方は普通
△ :バター風味の出方があまり良くない
× :バター風味の出方が良くなく、不良
【0147】
【表6】
【0148】
【表6-1】
【0149】
【表7】
【0150】
【表7-1】
【0151】
【表8】
【0152】
表6から分かるように、実施例のバター風味マーガリンは、クリーミング性及び吸卵性に優れていた。また、実施例のバター風味マーガリンを用いて製造したクッキーは、バター風味の発現がよいものであった。
【0153】
一方、表7から分かるように、油脂A及び液状油を配合しておらず、PPO/POPも0.15未満である比較例11のバター風味マーガリンの場合、全ての評価項目で満足いくものはなかった。
また、油脂Aを配合しておらず、PPO/POPも0.15未満である比較例12のバター風味マーガリンは、風味が満足いくものではなかった。また、比較例12のバター風味マーガリンは、トランス脂肪酸含量も高く、好ましいものではなかった。