【文献】
Journal of Organic Chemistry,2005年,Vol.70, No.3,pp.768-775
【文献】
Journal of Organic Chemistry,1995年,Vol.60, No.25,pp.8283-8288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のチエノピラジン化合物は、チオフェン部位をキノイド型としたシス−トランス異性体である。この異性体構造は、キノイド型である2つの二重結合がシス−シス型、シス−トランス型、またはトランス−トランス型の組み合わせ構造となることができ、特に限定されない。
【0028】
また、このチエノピラジン化合物は、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)との差が小さく、バンドギャップが小さいものであり、
下記化学式(I)に示されるAr
1・Ar
2およびR
1・R
2を適宜選択することで、LUMOレベルの調節をすることができるものである。
【化4】
(式中、Ar1およびAr2は置換基を有していてもよいアリール基、R1およびR2は相互に独立した水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、もしくは置換基を有していてもよいアリール基、または相互に結合し環を形成している基である)
【0029】
上記化学式(I)において、Ar
1、Ar
2が表すアリール基は、単環または縮合環であり、炭素環化合物であってもよく、複素環化合物であってもよい。アリール基として、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基等が挙げられ、さらには上記のアリール基の任意の一つまたは複数の基からなる多量体も挙げられる。それらの中でも、フェニル基、ナフチル基、チエニル基およびそれらの基からなる2〜20量体がより好ましい。
【0030】
これらのアリール基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、上記した直鎖、分岐または環状アルキル基の水素原子のうち80〜100%がフッ素原子で置換された炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアルキルチオ基;tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基等の三置換シリルオキシ基;アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基等のスルフォキシド基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基等のスルフォン酸エステル基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基等の1級または2級のアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基等のアルキル基またはアリール基等で置換されていてもよいアミノ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
【0031】
それらの中で、アンバイポーラ特性を示す好適な例としては、フッ素原子またはパーフルオロアルキル基が挙げられる。
【0032】
上記化学式(I)において、R
1およびR
2が表すアルキル基としては、炭素数1〜20であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖状や分岐鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等の環状のシクロアルキル基が挙げられる。
【0033】
これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等の複素芳香環基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基;tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基等の三置換シリルオキシ基;アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル基等のアリールスルフィニル基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基等のスルフォン酸エステル基;1級または2級のアミノ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
【0034】
上記化学式(I)において、R
1およびR
2が表すアリール基は、単環または縮合環であり、炭素環化合物であってもよく、複素環化合物であってもよい。アリール基として、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
1およびR
2のアルキル基で例示された置換基を用いることができる。
【0035】
なお、上記置換基として例示したアルキル基やアルコキシ基等は、炭素数1〜30であり、直鎖状であってもよく、分岐状または環状であってもよい。
【0036】
下記化学式(I)
【化5】
において、R
1およびR
2は、
相互に結合し環を形成している基が
【化6】
で表され、下記化学式(III)に示すように相互に結合している基であり、キノキサリン骨格を形成していてもよい。
【0038】
上記化学式(III)に示されるように、アクセプター部にキノキサリンを用いることで、LUMOレベルの調節とともにドナー部となるキノイド型チオフェン部位のキノイドの寄与を高めることができる。
【0039】
上記化学式(III)において、R
3〜R
6が水素原子である例を示したが、これに限られず、R
3〜R
6が置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であってもよく、または置換基を有していてもよいアリール基であってもよい。
【0040】
これらのアルキル基は、R
1およびR
2が示すアルキル基で例示したものを用いることができ、また、アリール基は、R
1およびR
2が示すアリール基で例示したものを用いることができる。これらは、置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
1およびR
2のアルキル基で例示したものを用いることができる。
【0041】
上記化学式(III)に示されるように、R
1およびR
2が相互に結合し形成している環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、2H−ピラン環、4H−チオピラン環、ピリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、フラザン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環等の6π電子系環;ペンタレン環、インデン環、インドリジン環、4H−キノリジン環等の8π電子系環;ナフタレン環、アズレン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、1−ベンゾチオフェン環、2−ベンゾチオフェン環、インドール環、イソインドール環、2H−クロメン環、1H−2−ベンゾピラン環、キノリン環、イソキノリン環、1,8−ナフチリジン環、ベンゾイミダゾール環、1H−インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、プリン環、フタラジン環等の10π電子系環;ヘプタレン環、ビフェニレン環、as−インダセン環、s−インダセン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環等の12π電子系環;フェナントレン環、アントラセン環、カルバゾール環、キサンテン環、アクリジン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、1,10−フェナントロリン環、フェナジン環、フェナルサジン環、テトラチアフルバレン環等の14π電子系環;フルオランテン環、アセフェナントリレン環、アセアントリレン環、ピレン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環等の16π電子系環;トリフェニレン環、クリセン環、ナフタセン環、プレイアデン環等の18π電子系環;ペリレン環等の20π電子系環;ピセン環、ペンタフェン環、ペンタセン環等の22π電子系環;テトラフェニレン環、コロネン環等の24π電子系環;ヘキサフェン環、ヘキサセン環、ルビセン環等の26π電子系環等が挙げられる。
【0042】
また、本発明のチエノピラジン化合物は、
下記化学式(II)に示されるものであってもよい。
下記化学式(II)において、R
7〜R
12が表す炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、および炭素数3〜20のアルキニル基が挙げられる。
【化8】
【0043】
炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、または環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖状や分岐鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル基、シクロドデカニル基等の環状のシクロアルキル基が挙げられる。
【0044】
炭素数2〜20のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、または環状のいずれであってもよく、例えば、例えばビニル基、アリル基、1−メチルビニル基、プロペニル基、メタリル基、ブテニル基、プレニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、ドデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0045】
炭素数3〜20のアルキニル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、例えば、例えばプロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、ドデシニル基、1−メチル−2−ブチニル基、1−メチル−3−ブチニル基、2−メチル−3−ブチニル基、3−メチル−1−ブチニル基、3−メチル−2−プロピニル基、2−エチニルプロピル基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
1およびR
2のアルキル基で例示された置換基を用いることができる。
【0046】
上記化学式(II)において、R
7〜R
12が表すアリール基としては、R
1およびR
2が表すアリール基として例示した基を用いることができる。また、かかる置換基としては、R
1およびR
2のアルキル基で例示された置換基を用いることができる。
【0047】
本発明のチエノピラジン化合物の一製造例を以下に示す。
【0048】
下記化学反応式(A)で示されるように、チエノピラジン化合物(1)は、ジヒドロチエノピラジン化合物(2)と芳香族アルデヒド化合物(3)および(4)とを、塩基存在下で反応させることにより好適に合成される。
【0050】
また、この合成反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、および溶媒の存在下において、ジヒドロチエノピラジン化合物(2)と芳香族アルデヒド化合物(3)および(4)とを反応させると好ましい。
【0051】
合成反応に用いられる塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、マグネシウムジメトキシド、カルシウムジメトキシド等の金属アルコキシド;メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、ビニルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミド等の有機リチウム化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、キノリン等の三級アミン;等が挙げられる。
【0052】
これらの塩基の中でも、金属アルコキシドまたは有機リチウム化合物を使用するのが好ましく、特に反応選択性および入手性の観点から、カリウムtert−ブトキシドやn−ブチルリチウムが好ましい。その使用量は、ジヒドロチエノピラジン化合物(2)1モルに対して、0.8〜5モルの範囲であるのが好ましく、1.0〜3モルの範囲であるのがより好ましい。
【0053】
合成反応に用いられる溶媒としては、原料であるジヒドロチエノピリジン化合物(2)と芳香族アルデヒド化合物(3)および(4)とが反応速度に支障をきたさない程度に溶解し、かつ塩基存在下でも使用可能な溶媒であることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン等のエーテル;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、テトラヒドロフランに代表されるエーテルが好適に用いられる。かかる溶媒の使用量は、ジヒドロチエノピリジン化合物(2)1質量部に対して、1〜500質量部であることが好ましく、3〜100質量部であることがより好ましい。
【0054】
反応温度は、−80℃〜100℃の範囲であるのが好ましく、−20℃〜50℃の範囲であるのがより好ましい。
【0055】
反応時間は、ジヒドロチエノピラジン化合物(2)、塩基および溶媒の種類、使用量比ならびに反応温度によっても異なるが、0.5〜30時間の範囲であるのが好ましい。
【0056】
このようにして得られたチエノピラジン化合物(1)は、有機化合物の単離・精製において通常行われる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合液を、分液漏斗を用いて有機層と水層とに分離し、水層をジエチルエーテル、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の溶媒で抽出し、抽出液および有機層を合わせて無水硫酸ナトリウム等で乾燥後、濃縮して得られた粗生成物を、必要に応じて昇華、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することで、純度の高いチエノピラジン化合物(1)を得ることができる。
【0057】
これらのチエノピラジン化合物は、高い電子移動およびオン/オフ比を有する有機半導体材料として用いることができる。
【0058】
有機半導体材料として用いられるチエノピラジン化合物の異性体構造は、特に限定されず、キノイド型である2つの二重結合がシス−シス型、シス−トランス型、またはトランス−トランス型の組み合わせからなる構造が挙げられる。また、これらの構造が単一のものであってもよく、それぞれ混合したものであってもよい。これらの各異性体構造は、ガウシアン(Gaussian)03による構造最適化の計算において、ほとんどエネルギー差がないものである。
【0059】
さらに、本発明のチエノピラジン化合物を含有している有機半導体材料を有機半導体層に用いることで、有機電界効果トランジスタを製造することができる。また、上記化学式(II)で示されるチエノピラジン化合物を有機半導体材料として用いると、アンバイポーラ特性を有する有機電界効果トランジスタを製造することができる。
【0060】
アンバイポーラ特性とは、キャリアとして正孔の注入・輸送が行われるとp型の特性を示し、キャリアとして電子の注入・輸送が行われるとn型の特性を示す性質をいう。
【0061】
有機電界効果トランジスタは、基板上で、電圧が印加されるゲート電極層と、絶縁体層と、有機半導体層と、電流路となるソース−ドレイン電極層とが、積層されているものである。それらの各層の積層配置の違いにより、ボトムゲート・トップコンタクト型、ボトムゲート・ボトムコンタクト型、トップゲート・ボトムコンタクト型、およびトップゲート・トップコンタクト型がある。
【0062】
有機電界効果トランジスタの好ましい一形態について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0063】
有機電界効果トランジスタ10は、
図1に示す通り、絶縁性支持基板5上に、ゲート電極6、絶縁体層7、チエノピラジン化合物を含有している有機半導体層1、およびソース電極2とドレイン電極3とからなるソース−ドレイン電極層2−3が、順次積層されて、ボトムゲート・トップコンタクト型を形成している。ゲート電極6は、電流路に流れる電流を制御しており、絶縁体層7によって有機半導体層1およびソース−ドレイン電極層2−3から隔離されている。ソース−ドレイン電極層2−3は、有機半導体層1に蒸着されており、ソース電極2およびドレイン電極3の間の電流路となるチャネル領域を形成している。
【0064】
有機電界効果トランジスタ10は、ゲート電極6に電圧を印加すると電界が生じ、ソース−ドレイン電極層2−3において、ソース電極2とドレイン電極3との間で電流路となるチャネル領域を形成する。そのソース−ドレイン電極層2−3と有機半導体層1とにおいて、正孔または電子であるキャリアを移動させることで電流が流れる。有機半導体層1と絶縁体層7とのキャリア密度を変化させ、ソース電極2およびドレイン電極3の間に流れる電流量を変化させることで、トランジスタ動作が行われる。
【0065】
有機半導体層1は、本発明のチエノピラジン化合物、またはそれを含有している有機半導体材料を用いて製膜し、形成されているものである。有機半導体層1は、一方の電極からもう一方の電極へ、キャリアである正孔または電子を移動させるためのキャリア移動層である。
【0066】
有機半導体層1の膜厚は、1nm〜10μm程度であると好ましく、10〜500nm程度であるとより好ましい。
【0067】
絶縁性支持基板5となる原材料として、具体的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、石英、シリコン、セラミックス、プラスチック等が挙げられる。
【0068】
絶縁性支持基板5の厚みは、0.05〜2mm程度であると好ましく、0.1〜1mm程度であるとより好ましい。
【0069】
絶縁体層7は、室温における電気伝導度が、1.0MV/cmの電界強度下においてリーク電流が10
−2A/cm
2以下のものであると好ましい。また、その比誘電率は、通常で4.0程度であり、高い値を示すものであると好ましい。
【0070】
絶縁体層7となる原材料として、具体的に、酸化シリコン、窒化シリコン、アモルファスシリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等が挙げられる。また、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアノ基を有する炭化水素樹脂およびフェノール樹脂、ポリイミド樹脂およびポリパラキシリレン樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂を主成分とする樹脂または樹脂組成物から形成してもよい。
【0071】
絶縁体層7の膜厚は、好ましくは50nm〜2μm程度であり、更に好ましくは100nm〜1μm程度である。
【0072】
ゲート電極6、ソース電極2およびドレイン電極3となる原材料は、特に制限されず導電性を示すものであればよい。具体的に、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、シリコン、炭素、グラファイト、クラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アモルファスシリコン等が挙げられる。また、ドーピング等で導電率を向上させた、公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、で導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。
【0073】
ゲート電極6、ソース電極2、ドレイン電極3の膜厚は、0.01〜2μmであると好ましく、0.2〜1μmであるとより好ましい。
【0074】
また、ソース電極2およびドレイン電極3の間の距離であるチャネル長Lは、通常では100μm以下であり、50μm以下であると好ましい。一方、チャネル幅Wは、通常では2000μm以下であり、500μm以下であると好ましい。L/Wは、通常では0.1以下であり、0.05以下であると好ましい。
【0075】
有機電界効果トランジスタ10を形成する方法は、特に制限なく、従来公知の方法を用いることができる。
【0076】
有機半導体層1は、チエノピラジン化合物を溶媒に溶解して溶液とし、キャスト法、ディップ法、スピンコート法等により塗布する方法や、真空蒸着法等により製膜することができる。
【0077】
絶縁体層7は、例えば、スピンコートやブレードコート等の塗布法、蒸着法、スパッタ法、スクリーン印刷やインクジェット、静電荷像現像方法等の印刷法等により形成することができる。また、絶縁体の前駆物質としてモノマーを塗布した後、光を照射して硬化させることにより絶縁体を形成する光硬化樹脂を用いてもよい。
【0078】
ゲート電極6、ソース電極2およびドレイン電極3は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等により形成することができる。更に、それらのパターニング法としては、フォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法およびこれらの手法を複数組み合わせた手法等が挙げられる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去する方法等によっても形成することができる。
【0079】
次に、別の有機電界効果トランジスタ20の一実施例を
図2に示す。
【0080】
有機電界効果トランジスタ20は、絶縁体性基板5上に、ゲート電極6、絶縁体層7、ソース電極2とドレイン電極3とであるソース−ドレイン電極層2−3、および有機半導体層1が、順次積層されて形成されているボトムゲート・ボトムコンタクト型である。ソース−ドレイン電極層2−3および有機半導体層1の配置の違いによるチャネル領域の相違点以外は、
図1に示すものと同様である。
【0081】
さらに別の有機電界効果トランジスタ30の一実施例を
図3に示す。
【0082】
有機電界効果トランジスタ30は、絶縁体性基板5上に、ソース−ドレイン電極層2−3、有機半導体層1、絶縁体層7、およびゲート電極6が順次形成されているトップゲート・ボトムコンタクト型である。
【0083】
なお、有機電界効果トランジスタの構造は、特に限定されず、
図1および
図2に示されるように有機半導体層1が露出している場合、その有機半導体層1の上に保護膜を形成しているものであってもよい。この保護膜は、有機半導体層1への外気の影響を最小限にすることができる。保護膜の原材料として、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等のポリマーや酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物や窒化物等が挙げられる。保護膜は、塗布法や真空蒸着法等で形成することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
(合成例1)
2,3−ビス(ブロモメチル)キノキサリンの合成反応を下記反応式(1)に示す。
【0086】
【化10】
1000mlの三口フラスコに、1,4−ジブロモ−2,3−ブタンジオン6.52g(27mmol)とエタノール300mlを加えた。この混合液にo−フェニレンジアミン2.94g(27mmol)を150mlのエタノールで溶かした溶液を添加した後、30分室温で攪拌したところで白色固体が析出した。この反応液に水200mlを添加した後、吸引ろ過により白色固体をろ別し、減圧乾燥することにより目的物である白色固体6.74g(収率:81%)を得た。
【0087】
得られた化合物の
1H核磁気共鳴スペクトル法(
1H−NMR)の分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ4.93(s,4H),7.81(q,2H),8.08(q,2H)
【0088】
(合成例2)
1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(2)に示す。
【0089】
【化11】
200mlの三口フラスコに、室温下で硫化ナトリウム・9水和物2.88g(12mmol)とエタノール70mlおよび水20mlを加え、合成例1により得られた2,3−ビス(ブロモメチル)キノキサリン3.41g(10.9mmol)を添加し、1時間室温で攪拌した。トルエン100mlを加え、分液漏斗を用いて有機層を分離した後、有機層を飽和食塩水により洗浄し、Na
2SO
4を用いて乾燥させ、ろ過して溶媒を減圧下除去した。この濃縮物をヘキサンによる再結晶を行い、オレンジ色の固体1.35g(収率:66%)を得た。
【0090】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ4.39(s,4H),7.75(q,2H),8.04(q,2H)
【0091】
(合成例3)
5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−カルバルデヒドの合成反応を下記反応式(3)に示す。
【0092】
【化12】
滴下漏斗を装備した50mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2.4g(33mmol)を加えアルゴン置換した後、内温が10℃以下に保たれるようにしてオキシ塩化リン(POCl
3)2.2g(14mmol)を滴下し、15分間攪拌した。次いで、2−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン2.50g(14mmol)を滴下し、100℃で2時間加熱攪拌した後、室温に冷却して一晩攪拌した。この反応液に水30mlを添加した後、ジエチルエーテル30mlを加えて攪拌し、分液漏斗を用いて有機層を分離した。この有機層を飽和食塩水を用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させた後ろ過し、溶媒を減圧下除去して黄色油状物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)により精製し、淡黄色油状物0.168g(収率:66%)を得た。
【0093】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ0.87(t,3H),1.25〜1.39(m,6H),1.62〜1.71(m,2H),2.80(t,2H),6.72(d,1H),7.14(d,1H),7.17(d,1H),7.63(d,1H),9.81(s,1H)
【0094】
(合成例4)
2−(4−トリフルオロメチルフェニル)チオフェンの合成反応を下記反応式(4)に示す。
【0095】
【化13】
滴下漏斗を装備した100mlの三口フラスコに、テトラヒドロフラン50mlとマグネシウム1.62g(67mmol)とを加えアルゴン置換した後、4−トリフルオロメチルブロモベンゼン15.0g(67mmol)を室温下ゆっくり滴下し、1時間攪拌してGrignard試薬を調製した。
【0096】
滴下漏斗を装備した300mlの三口フラスコに、テトラヒドロフラン50ml、2−ブロモチオフェン9.8g(67mmol)およびNi(dppp)Cl
2 730mgを添加し、アルゴン置換した後、内温0℃まで冷却した。この混合液に、先に調製したGrignard試薬を内温が5℃以下に保たれるようにして滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフラン還流条件下12時間加熱攪拌した。反応液を室温に冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを添加し、次いでジエチルエーテル50mlを添加して分液漏斗を用いて有機層を分離した。この有機層を飽和食塩水により洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥後、ろ過して溶媒を減圧下除去した。この濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し、目的物である白色固体7.00g(収率:51%)を得た。
【0097】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.12(dd,1H),7.36(dd,1H),7.40(dd,1H),7.63(d,2H),7.71(d,2H)
【0098】
(合成例5)
5−(4−トリフルオロメチルフェニル)チオフェン−2−カルバルデヒドの合成反応を下記反応式(5)に示す。
【0099】
【化14】
滴下漏斗を装備した300mlの三口フラスコに、テトラヒドロフラン40mlと合成例4で得られた2−(4−トリフルオロメチルフェニル)チオフェン2.0g(8.76mmol)とを混ぜ、アルゴン置換した後−78℃に冷却した。この混合液にn−ブチルリチウムの1.65Mヘキサン溶液5.31ml(8.76mmol)を内温が−70℃以下に保たれるようにして滴下し、滴下終了後1時間攪拌した。次いでN,N−ジメチルホルムアミド0.64g(8.76mmol)を内温が−70℃以下に保たれるようにして滴下した後、室温に戻して2時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを添加し、次いでジエチルエーテル50mlを添加して分液漏斗を用いて有機層を分離した。この有機層を飽和食塩水により洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥後、ろ過して溶媒を減圧下除去した。この濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し、目的物である白色固体1.68g(収率:75%)を得た。
【0100】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.48(d,2H),7.69(d,2H),7.79(d,2H),9.91(s,1H)
【0101】
(実施例1)
1,3−ビス(2−チエニルメチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(6)に示す。
【0102】
【化15】
滴下漏斗を装備した50mlの三口フラスコに、t−ブトキシカリウム1.30g(11.6mmol)と合成例2により得られた1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン1.081g(6.0mmol)およびジエチルエーテル20mlを加え、系内をアルゴン置換した。室温で30分攪拌後、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を滴下漏斗を用いて加え、12時間室温で反応させた。次いで、反応液を1N塩酸により中和した後、分液漏斗を用いて有機層を分離した。この有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。ろ過して得られた溶液を減圧下、ジエチルエーテルを除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し、さらに昇華精製することによって赤紫色の固体0.232g(収率:10.3%)を得た。
【0103】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.21(dd,2H),7.48(d,2H),7.56(d,2H),7.75(m,2H),8.10(m,2H),8.32(s,2H)
【0104】
(実施例2)
1,3−ビス(フェニルメチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(7)に示す。
【0105】
【化16】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)をベンズアルデヒド6.26g(59mmol)に変更した以外は同様に実施し、目的物である赤紫色固体0.328g(収率:15%)を得た。
【0106】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.37(s,2H),7.53(t,4H),7.79(m,4H),7.80(m,2H),8.15(q,2H),8.16(s,2H)
【0107】
(実施例3)
1,3−ビス(4−トリフルオロメチルフェニルメチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(8)に示す。
【0108】
【化17】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド10.27g(59mmol)に変更した以外は同様に実施し、目的物である黄土色固体0.360g(収率:12%)を得た。
【0109】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.74(d,4H),7.81(d,4H),7.84(q,2H),8.13(s,2H),8.17(q,2H)
【0110】
(実施例4)
1,3−ビス(5−ヘキシル−2−チエニルメチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(9)に示す。
【0111】
【化18】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を5−ヘキシルチオフェン−2−カルバルデヒド11.58g(59mmol)に変更した以外は同様に実施し、目的物である赤紫色固体0.523g(収率:16%)を得た。
【0112】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ0.90(s,6H),1.25〜1.93(m,16H),2.92(t,4H),6.92(d,2H),7.32(d,2H),7.73(m,4H),8.08(m,4H),8.28(m,2H)
【0113】
(実施例5)
1,3−ビス(2,2’−ビチエニル−5−イル−メチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(10)に示す。
【0114】
【化19】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を2,2’−ビチオフェン−5−カルバルデヒド11.46g(59mmol)に変更した以外は同様に実施し、目的物である黒紫色固体1.23g(収率:38%)を得た。
【0115】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.01(d,2H),7.10(d,2H),7.20(d,2H),7.36(m,4H),7.75(q,2H),8.10(q,2H),8.25(s,2H)
【0116】
(実施例6)
1,3−ビス(ビフェニル−4−−イル−メチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(11)に示す。
【0117】
【化20】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を4−フェニルベンズアルデヒド10.75g(59mmol)に変更した以外は同様に実施し、目的物である赤色固体0.93g(収率:30%)を得た。
【0118】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.40(d,2H),7.49(d,4H),7.67(d,4H),7.81(d,4H),7.82(m,2H),8.17(q,2H),8.20(s,2H)
【0119】
(実施例7)
1,3−ビス(2−ナフチルメチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(12)に示す。
【0120】
【化21】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を2−ナフトアルデヒド9.21g(59mmol)に変更した以外は同様に実施し、目的物である赤色固体1.20g(収率:43%)を得た。
【0121】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.55(m,8H),7.82(q,2H),7.93(m,3H),8.20(q,2H),8.33(s,2H)
【0122】
(実施例8)
1,3−ビス(5’−ヘキシル−2,2’−ビチエニル−5−イル−メチレン)−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(13)に示す。
【0123】
【化22】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を、合成例3で得られた5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−カルバルデヒド16.42g(59mmol)に変更し、精製操作をシリカゲルカラムクロマトグラフィーのみにした以外は同様に実施し、目的物である紫色固体1.19g(収率:28%)を得た。
【0124】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ0.94(m,6H),1.24〜1.83(m,16H),2.88(m,4H),6.81(d,2H),7.05(d,2H),7.22(d,2H),7.35(d,2H),7.71(q,2H),8.08(q,2H),8.27(s,2H)
【0125】
(実施例9)
1,3−ビス[5−(4−トリフルオロメチル)−2−チエニルメチレン]−1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンの合成反応を下記反応式(14)に示す。
【0126】
【化23】
実施例1において、チオフェン−2−カルバルデヒド6.62g(59mmol)を、合成例5で得られた5−(4−トリフルオロメチルフェニル)チオフェン−2−カルバルデヒド15.12g(59mmol)に変更した以外は同様に実施し、目的物である茶色固体0.52g(収率:13%)を得た。
【0127】
得られた化合物の
1H−NMRの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.12(dd,2H),7.38(dd,2H),7.62(d,2H),7.71(d,2H),7.82(m,2H),8.14(q,2H),8.33(s,2H)
【0128】
(実施例10 トップコンタクト型−有機電界効果トランジスタ)
厚さ500μmのシリコンウェハを3.5×2.5cmの大きさに切り出し、このウェハを絶縁性支持基板とした。この基板に、オゾン処理、またはオゾン処理後にヘキサメチルジシラザン(HMDS)もしくはオクチルトリクロロシラン(OTS)の処理をした。この処理基板上に、n型シリコンウェハを形成し、これをゲート電極とした。このゲート電極上に、熱酸化法を用いて200nmの酸化シリコン(SiO
2)絶縁体層を形成した。
次いで、SiO
2上に真空蒸着法を用いて、実施例1、5、6、7、8、9の化合物を30nm蒸着し、有機半導体層を形成した。さらに、その有機半導体層上に、真空蒸着法を用いて、金を50nmの厚みで蒸着し、
図1で示されるトップコンタクト型の有機電界効果トランジスタを得た。なお、チャネル長(L)が50、75および100μm、チャネル幅(W)が1000μmとなるようにして蒸着を行った。
【0129】
得られた有機電界効果トランジスタについて、エレクトロメーターを用いて、ソース電極およびドレイン電極間に10〜60Vの電圧を印加し、ゲート電圧を−20〜100Vの範囲で変化させて、電圧−電流曲線を25℃の温度において求め、そのトランジスタ特性を評価した。
【0130】
キャリア移動度(μ)は、ドレイン電流I
dを表わす下記式(A)を用いて算出した。
I
d=(W/2L)・μ・Ci・(V
g−V
t)
2・・・(A)
上記式(A)において、Lはゲート長であり、Wはゲート幅である。また、Ciは絶縁層の単位面積当たりの容量であり、V
gはゲート電圧であり、V
tは閾値電圧である。
【0131】
また、オン/オフ比は、最大および最小ドレイン電流値(I
d)の比より算出した。得られたトランジスタ特性評価結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
また、実施例9の化合物を用いた有機電界効果トランジスタについて、ゲート電圧(V
g)−100〜100Vにおけるそれぞれのドレイン電流(I
d)とドレイン電圧(V
d)との関係を
図4および
図5に示す。V
g<0においてp型特性を示し、V
g>0においてn型特性を示すことが確認され、実施例9を用いた有機電界効果トランジスタは、アンバイポーラ特性を有することが明らかとなった。