特許第5651104号(P5651104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651104
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】多結晶シリコンロッド及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   C01B33/035
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-501601(P2011-501601)
(86)(22)【出願日】2010年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2010052760
(87)【国際公開番号】WO2010098319
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2012年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2009-46498(P2009-46498)
(32)【優先日】2009年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】小田 開行
(72)【発明者】
【氏名】小柳 信一郎
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−015478(JP,A)
【文献】 特開平02−006317(JP,A)
【文献】 特開昭59−115739(JP,A)
【文献】 特開昭50−018503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極上に立設された一対のシリコン芯線と該シリコン芯線の上端同士を連結している橋架け線とからなるシリコン芯材に、化学気相析出法によりシリコンを析出・成長させて得られ、該芯線上に析出・成長した直胴部と該橋架け線上に析出した橋架け部とを有している中実の多結晶シリコンロッドにおいて、
前記シリコンロッドの直胴部は、長さ方向に直径分布を有しており、該直胴部の最小直径がその最大直径の60〜95%の大きさに調整されていることを特徴とする中実の多結晶シリコンロッド。
【請求項2】
前記直胴部の電極近傍に位置する部分に凹部が形成されており、該凹部の最深部が前記最小直径部となっている請求項1に記載の多結晶シリコンロッド。
【請求項3】
前記凹部を残すようにして前記直胴部と橋架け部とが切断されて搬送に供される請求項2に記載の多結晶シリコンロッド。
【請求項4】
前記直胴部の直径が上方から下方にいくにしたがって漸次増大している請求項1に記載の多結晶シリコンロッド。
【請求項5】
一対の電極が保持されている底板と、一対のシリコン芯線と該シリコン芯線の上端同士を連結している橋架け線とからなり且つ該シリコン芯線の下端が前記一対の電極に保持されて立設されているΠ字形シリコン芯材と、該シリコン芯材が収容されるように底板を覆っているベルジャーとを備えており、該ベルジャーと底板とにより形成されている反応室内には、該底板を通してガス供給管及びガス排出管が延びている多結晶シリコン製造装置において、
前記ガス供給管の先端部にガス吐出ノズルが設けられており、該ガス吐出ノズルには、多結晶シリコンロッドの凹部を形成する箇所に直接反応ガスを吹き付けることができるよう、前記底板の上面と平行な横方向にガスを吐出させるための側面吐出口が形成されていることを特徴とする多結晶シリコンロッドの製造装置。
【請求項6】
前記ガス突出ノズルには、前記底板の上面に対して垂直な上方向にガスを吐出させるための上面吐出口が、前記側面吐出口と共に形成されている請求項5に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器内に立設して配置されたシリコン芯材上に化学気相析出法によって多結晶シリコンを析出させることにより得られる多結晶シリコンロッドに関するものであり、特にフローティングゾーン法(FZ法)、或いはチョクラルスキー法(CZ法)のリチャージに使用される多結晶シリコンロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体あるいは太陽光発電用ウェハーの原料として使用されるシリコンを製造する方法は種々知られており、そのうちのいくつかは既に工業的に実施されている。例えばその一つはシーメンス法と呼ばれる方法であり、ベルジャー内部の反応室にシリコン芯材を設け、通電によってシリコン芯材をシリコンの析出温度に加熱し、この状態で反応室内にトリクロロシラン(SiHCl)やモノシラン(SiH)等のシラン化合物のガスを供給し、化学気相析出法によりシリコン芯材上にシリコンを析出させるというものである。この方法は高純度な多結晶シリコンがロッドの形態で得られることが特徴であり、最も一般的な方法として実施されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−149324号公報
【特許文献2】特開2005−112662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリコン芯材は、Π(パイ)字形状を有しており、それぞれが電極に保持され且つ該電極から立ち上がっている一対の芯線と、該芯線の上端同士を連結している橋架け線とからなっている。このシリコン芯材の表面に析出する多結晶シリコンロッドは、シリコン芯材表面への析出・成長に伴って、徐々に角が丸くなるため、全体として逆U字型の形態で得られる。このような形状の多結晶シリコンロッドは、一部分を切り落として取り外され、且つ電極から立ち上がっている芯線上に析出・成長した直胴部は、その上端に連なる橋架け部から切り離され、単結晶シリコンの原料として用いられる。また、用いられる多結晶シリコンの形状は、単結晶化する方法により異なり、例えばチョクラルスキー法(CZ法)では塊状体、またフローティングゾーン法(FZ法)では棒状体が用いられる。さらにCZ法では、塊状体の多結晶シリコンを加熱溶融して得られたシリコン融液に、多結晶シリコンロッドをそのまま融解させる、リチャージが行われることがあり、かかる目的で使用される多結晶シリコンロッドは、リチャージ用多結晶シリコンと呼ばれている。
【0005】
上記のようなFZ法、或いはCZ法のリチャージのように、多結晶シリコンロッドをロッド形状のまま使用するためには、該シリコンロッドを搬送する必要があるが、シーメンス法にて得られる多結晶シリコンロッドは、通常、シリコンの生産量を維持する為、直径が太く、且つ、直胴部の直径がほぼ均一な円柱状で製造されている。従って、上記多結晶シリコンロッドは、そのままの形態では搬送し難いため、該シリコンロッドの搬送手段としては、例えば、シリコンロッド全周に、ダイヤモンド製の外周カッター等でわずかな切込みを入れ、切込みにワイヤー等を巻きつけてシリコンロッドを保持して吊り上げて搬送する手段が用いられている。
【0006】
しかしながら、シリコンロッド全周に切込みを入れるためには、ロッドを回転させながら、該ロッド表面を切断するための特殊な装置が必要であり、搬送のための操作が煩雑となるという課題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、FZ法、或いはCZ法のリチャージに使用される多結晶シリコンロッドにおいて、得られる多結晶シリコンロッドの直胴部が搬送容易な形状となっており、搬送のための加工を必要とすることなく、搬送性に優れた多結晶シリコンロッド及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明者らは鋭意検討を行った結果、前記シーメンス法にて多結晶シリコンロッドを製造する際に、該シリコンロッドの直胴部に、長さ方向に直径分布を形成させること、すなわち、直胴部に、最小直径部と最大直径部とを形成させることが可能であることを見出した。
そして、かかる形状の多結晶シリコンロッドは、直胴部に形成された直径分布を利用して、格別の形状加工を行うことなく、そのまま、吊具を引っ掛けてクレーン等で搬送することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、電極上に立設された一対のシリコン芯線と該シリコン芯線の上端同士を連結している橋架け線とからなるシリコン芯材に、化学気相析出法によりシリコンを析出・成長させて得られ、該芯線上に析出・成長した直胴部と該橋架け線上に析出した橋架け部とを有している中実の多結晶シリコンロッドにおいて、
前記シリコンロッドの直胴部は、長さ方向に直径分布を有しており、該直胴部の最小直径がその最大直径の60〜95%の大きさに調整されていることを特徴とする中実の多結晶シリコンロッドが提供される。
尚、本発明において、シリコンロッドの直胴部の平断面は完全な円形とは限らず、楕円形もしくはそれに近い形状となっている場合もある。従って、シリコンロッドの直胴部の径とは、平断面の最大径をA、最小径をBとして、下記式で算出される値を意味する。
直胴部の径=((A+B)/2)1/2
【0010】
また、上記本発明に係る多結晶シリコンロッドにおいては、
(1)前記直胴部の電極近傍に位置する部分に凹部が形成されており、該凹部の最深部が前記最小直径部となっていること、
(2)前記凹部を残すようにして前記直胴部と橋架け部とが切断されて搬送に供されること、
或いは、
(3)前記直胴部の直径が上方から下方にいくにしたがって漸次増大していること、
が、吊具による搬送のしやすさの観点から好ましい。
【0011】
本発明によれば、また、一対の電極が保持されている底板と、一対のシリコン芯線と該シリコン芯線の上端同士を連結している橋架け線とからなり且つ該シリコン芯線の下端が前記一対の電極に保持されて立設されているΠ字形シリコン芯材と、該シリコン芯材が収容されるように底板を覆っているベルジャーとを備えており、該ベルジャーと底板とにより形成されている反応室内には、該底板を通してガス供給管及びガス排出管が延びている多結晶シリコン製造装置において、
前記ガス供給管の先端部にガス吐出ノズルが設けられており、該ガス吐出ノズルには、多結晶シリコンロッドの凹部を形成する箇所に直接反応ガスを吹き付けることができるよう、前記底板の上面と平行な横方向にガスを吐出させるための側面吐出口が形成されていることを特徴とする多結晶シリコンロッドの製造装置が提供される。
【0012】
上記の製造装置においては、
(4)前記ガス突出ノズルには、前記底板の上面に対して垂直な上方向にガスを吐出させるための上面吐出口が、前記側面吐出口と共に形成されていること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多結晶シリコンロッドは、公知の方法により製造されるものと同様、逆U字型の形態で得られるが、その直胴部に、長さ方向に直径分布を有していること、換言すると、この直胴部には、最小直径部と最大直径部とが形成されていることが顕著な特徴である。即ち、本発明の多結晶シリコンロッドの直胴部は、これを直胴部に連なっている橋架け部から切り離せば、直径分布を利用して、格別の形状加工を行うことなく、そのまま、吊具を用いて吊り下げて、クレーンなどで搬送し、FZ法、或いはCZ法のリチャージに用いることができる。
このように、本発明の多結晶シリコンロッドは、その直胴部が極めて搬送性に優れている。
また、上記のような形状のシリコンロッドは、特に、ベルジャー内の反応室内に延びているガス供給管から反応ガスを横方向に吐出させる構造を有する製造装置を用いることにより容易に製造することができる。即ち、このような構造の製造装置においては、シリコンロッドの直胴部の反応ガスが吹き付けられた部分での温度が低くなり、この結果、反応ガスが吹き付けられた部分でのシリコンの析出・成長が遅くなり、この部分に凹部(最深部が最小直径部となる)が形成されることとなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の多結晶シリコンロッドにおける直胴部の好適な形状を示す図である。
図2】本発明の多結晶シリコンロッドにおける直胴部の他の形状を示す図である。
図3図1の多結晶シリコンロッドの直胴部の搬送状態を示す概略図である。
図4図2の多結晶シリコンロッドの直胴部の搬送状態を示す概略図である。
図5図1のシリコンロッドの要部を拡大して示す図である。
図6】多結晶シリコンロッドの製造に用いるシリコン製造装置の概略構造を示す側断面図である。
図7】多結晶シリコンロッドの製造に用いる図6のシリコン製造装置の反応室A内部を上部から底板を俯瞰した概略図である。
図8図6及び図7の製造装置において、特に図1の形状の多結晶シリコンロッドの製造に好適に使用されるガス供給管の先端部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多結晶シリコンロッドは、製造直後の状態では、逆U字型形状を有しており、2本の直胴部を有しており、これら直胴部の上端は、橋架け部を介して互いに連なっており、その下端には、後述する製造装置に設置されている電極が結合している。このような構造は、従来公知の多結晶シリコンロッドと同様であるが、先にも述べた通り、本発明においては、この直胴部に直径分布が形成されている点に新規な特徴を有する。
【0016】
上記のような形状の直胴部の形状を示す図1及び図2を参照して、これらの図では、全体として50で示す多結晶シリコンロッドの直胴部が、上端に連なっている橋架け部及び下端に接合されている電極部分を切り落とした状態で示されている。
【0017】
即ち、本発明においては、直胴部50に直径分布が形成されているため、この直径分布に伴い、最小直径部と最大直径部とが形成されている。
【0018】
例えば、図1の例では、直胴部50の下端部の近傍には、凹部51が形成されており、この凹部51内に最小直径部53が存在している。この態様において、直胴部50は、凹部51が形成されていることを除けば、実質的に円柱形状を有しているため、最大直径部55は、凹部51を除く領域に相当する。
【0019】
また、図2の例では、直胴部50の外面はテーパー面となっており、図2ではその上端部が最小直径部53となっており、その下端部が最大直径部55となっており、上端から下方にいくにしたがい、漸次、直径が増大する形状となっている。
【0020】
即ち、上記のように切断されている直胴部50は、その直径分布を利用して、図3及び図4に示すようにして、クレーンの吊具60を引っ掛けて搬送することができる。例えば、図1のような直径分布を有する直胴部50は、これを逆さまの状態に保持し、最小直径部53が存在している凹部51に吊具60を引っ掛けて搬送することができる。
尚、上記図1の形状における凹部51の直胴部50下端部からの位置Lは、吊具60を引っ掛けて搬送することができる位置であれば特に制限はないが、吊具60に引っ掛けて搬送する際の安定性等を考慮すると、通常、直胴部50の高さHに対する比(L/H)が0.2以下、特に0.05乃至0.1の範囲とするのが好適である。
【0021】
また、図2のような直径分布を有する直胴部50は、これを逆さまの状態に保持し、吊具60を引っ掛けて持ち上げれば、上方が最大直径部55となっているため、直胴部50の上方部分が吊具60によってしっかりと保持されることとなり、何ら不都合無く搬送することができる。
【0022】
上記本発明の多結晶シリコンロッドの搬送に用いられる吊具としては特に制限されず、公知の多結晶シリコンロッドの搬送用の吊具を用いることが可能である。上記吊具として具体的には、図3及び図4に示すように、多結晶シリコンロッドを保持するワイヤーや帯等の保持部、及び該保持部と、搬送する為のワイヤー等を接続する接続部を有する吊具等が挙げられる。上記吊具は、図3及び図4に示すように、ワイヤーや帯等の保持部をシリコンロッドに巻きつけ、さらに接続部には、搬送する為に吊り下げる為のワイヤー等を接続した状態で、吊り下げることで、多結晶シリコンロッドを搬送することが可能である。
【0023】
本発明において、上記のような直胴部50の直径分布の形態は特に制限されず、例えば最小直径部53の位置は図1及び図2に示す位置に限定されるものではない。図示しないその他の例として、例えば、直胴部の一端から、直胴部の任意の位置までの領域においてテーパー面を形成する形状が、挙げられる。かかる形状の場合、テーパー面を形成する領域が多結晶シリコンロッドの重心に対して一方の領域に偏って存在すると、吊具を引っ掛けて搬送する際の多結晶シリコンロッドの安定性が低いため、テーパー面を形成する最小直径部と最大直径部が多結晶シリコンロッドの重心を挟んで存在する形状が好ましい。
【0024】
また、前記図2の形状とは、逆に、直胴部の最小直径部分が下端の電極近傍に位置しており、該最小部直径部分から上方にいくにしたがって漸次直径が増大し、該上方のU字型に変曲する部分の近傍に位置する部分が最大直径部分となる形状も挙げられる。一般的にシーメンス法にて得られる多結晶シリコンロッドの電極近傍付近は、電極の材料であるカーボン等の含有量が比較的高く、該多結晶シリコンロッドを、FZ法、或いはCZ法のリチャージに用いる場合には電極近傍部分をある程度カットして炭素含有量の少ない部分を用いる必要があるが、前記図2の形状の多結晶シリコンロッドは、直胴部の最大直径部分が電極近傍にあるため、シリコンロッドを不要にカットすることなく、FZ法、或いはCZ法のリチャージに用いることができ、直胴部の最小直径部分が下端の電極近傍に位置する形状の多結晶シリコンロッドと比べて、得られる多結晶シリコンロッドを効率良く使用できる点で好ましい。
【0025】
上記本発明の多結晶シリコンロッドの形状の中でも、吊具の引っ掛けやすさの観点から、及び、吊具を引っ掛けて搬送する際の多結晶シリコンロッドの安定性が高いという観点から、図1及び図2の形態が好適であり、図1に示す形状のシリコンロッドが最も好適である。
【0026】
また、本発明において、最小直径部53の直径は、最大直径の60〜95%の範囲とすべきである。即ち、最小直径が上記範囲よりも大きいと、最小直径と最大直径との差が小さすぎるため、上記のような吊具60を引っ掛け難くなり、搬送性が低下してしまう。一方、最小直径が上記範囲よりも小さいと、特に図1の多結晶形状のシリコンロッドでは搬送性は変わらないばかりか、多結晶シリコンロッドの強度が低下してしまい、多結晶シリコンロッドの製造中に該ロッドの倒壊などを生じ易くなってしまうからである。
【0027】
さらに、図2の形状の多結晶シリコンロッドでは、テーパー面の傾斜が大きいほど、すなわち、最小直径が小さければ小さいほど、シリコンロッドを吊具60に引っ掛けた際の安定性に優れ、搬送性に優れるため好ましいが、最小直径があまり小さすぎると、円柱状の多結晶シリコンロッドに比べて、ロッドあたりのシリコン量が大幅に少なくなるため、FZ法、或いはCZ法のリチャージに使用される多結晶シリコンロッドとして効率的ではなく好ましくない。上記図2の形状のシリコンロッドにおける、最小直径部53の直径は、最大直径の70〜95%、特に80〜90%の範囲とするのが、搬送性に優れた多結晶シリコンロッドを効率良く得るという観点から、特に好ましい。
【0028】
さらにまた、本発明において、最適な形状を有している図1のシリコンロッドの要部を拡大して示す図5を参照して、この凹部51の幅wは、一般に400乃至100mm、特に200乃至100mmの範囲にあることが好ましい。この幅wが小さ過ぎたり或いは大き過ぎたりすると、前述した吊具60を引っ掛け難くなったり、或いは凹部51に吊具60を引っ掛けたときに吊具60が不安定となってしまうおそれがあるためである。
尚、この例において、凹部51の上方及び下方の部分は、実質的に円柱状であるが、このシリコンロッドは化学的な反応により得られるものであり、機械的な方法により得られるものではなく、従って、その直径にバラツキを生じ易く、特にシリコンロッドの上方部分や下端部近傍ほど、バラツキが大きくなる傾向がある。従って、凹部51の幅wを精度よく算出するためには、例えば、ロッドの外周面に沿って外装線(接線)Yを引き、この外装線Yを基準として、凹部51の幅wを算出することが好適である。
【0029】
<シリコンロッドの製造>
上述した形状の直胴部50を備えた本発明の多結晶シリコンロッドは、製造過程のロッドに対して直胴部50の直径分布に対応する析出速度分布を形成させることにより製造される。以下、この製造法について説明する。
【0030】
図6及び図7を参照して、本発明の多結晶シリコンロッドの製造に用いる製造装置は、全体として1で示されており、基本的には、従来公知のものと同様である。即ち、この装置1は、底板3をベルジャー5で覆うことによって形成された反応室Aを備えている。また、底板3には底板から絶縁された電極7が設けられており、この電極7に接続して立ち上がっている一対のシリコン芯線、及びこのシリコン芯線の上端を連結する橋架け線からなるシリコン芯材9(Π字形に形成される)が底板3上に立設され、さらに、電極7を介してシリコン芯材9に通電加熱されるように構成されている。
【0031】
尚、橋架け部は、過去にはグラファイトが用いられていたこともあるが、高純度の多結晶シリコンロッドを得るという観点から主としてシリコンが用いられている。
【0032】
また、図7では、シリコン芯材9が6個示されているように、このシリコン芯材9は、通常、反応室Aの容積に応じて複数設けられており、シリコン芯材9のそれぞれが電極7に接続して立設され、各シリコン芯材9に通電加熱されるようになっている。
【0033】
さらにまた、ベルジャー5の外面、或いは底板3は、反応室A内壁を容易に冷却し得るように、冷却ジャケット(図示せず)で覆うことも可能である。
【0034】
上記のように形成された反応室Aには、底板3を介してガス供給管15及びガス排出口管17が挿入されており、ガス供給管15を介して、所定の反応ガスが反応室A内に供給され、ガス排出管17から未反応ガスや副生する化合物のガスが反応室Aから排気されるようになっている。
【0035】
上記のシリコン製造装置1を用いての多結晶シリコンロッドの製造は、以下のようにして行われる。
【0036】
即ち、電極7を介してシリコン芯材9への通電加熱によって、シリコン芯材9の温度をシリコンの析出温度以上に加熱する。シリコンの析出温度は、後述するクロロシランガスがトリクロロシランである場合には、約900℃以上であるが、シリコン芯材9上にシリコンを迅速に析出するため、一般的には、1000〜1100℃程度の温度に保持されるように、シリコン芯材9が通電加熱される。
【0037】
シリコン芯材9への通電を開始すると同時に、或いはシリコン芯材9の温度がシリコンの析出温度以上に達した時点で、反応室A内に、反応性ガスとしてクロロシランガス及びキャリアガスを供給し、シリコンを生成させる。クロロシランガスとしては、トリクロロシラン(以下、TCSと略す)、ジクロロシランなどのクロロシランのガスが単独で、あるいは、複数のクロロシランガスの混合ガスとして使用され、一般的には、TCSガスが好適に使用される。また、キャリアガスとしては、還元性のある水素ガスが使用されることが多い。
【0038】
上記の反応性ガスの供給により生成したシリコン(Si)は、前記したシリコン芯材9上に析出し、この反応を継続して行っていくことにより、シリコン芯材9上のシリコンが成長し、最終的に多結晶シリコンからなるシリコンロッドXが得られることとなる。
【0039】
上記のようにして、一定の太さの多結晶シリコンロッドXが得られた段階で反応を終了し、シリコン芯材9への通電を停止し、反応室A内からクロロシランガス、水素ガス及び副生した四塩化ケイ素や塩化水素等を排気した後、安全なガスで反応室A内を置換した後、ベルジャー5を開放し、多結晶シリコンロッドXが取り出される。
【0040】
このようにして形成される多結晶シリコンロッドXは、シリコン芯材9上への析出に伴って、徐々に角が丸くなるため、全体として逆U字型形状を有しており、2本の直胴部50を有しており、この直胴部50の下端には、電極7が結合しており、その上端は、両直胴部50を連結している橋架け部65に連なっている。
【0041】
本発明においては、上記のようにして形成される直胴部50が長さ方向に直径分布を有しており、例えば前述した図1或いは図2に示されている形状を有しているのであるが、このような形状とするために、ガス供給管15から反応室A内に供給される反応性ガスを利用して、多結晶シリコンロッドXの直胴部50の直径分布に対応する析出速度分布を形成させる。
【0042】
シリコン芯材、及び多結晶シリコンロッド表面上にシリコンが析出する機構については、具体的には明らかではないが、多結晶シリコンロッド表面の温度、及び、該表面付近に存在するクロロシランから形成される反応種の濃度に依存するものと考えられる。従って、反応室Aに供給されるクロロシランガスの供給量や流速、クロロシランガス温度等を調節することで、多結晶シリコンロッド表面におけるシリコンの析出速度を調節することが可能である。
【0043】
図1の形状の直胴部を有する多結晶シリコンロッドの製造>
前述した図1に示される形状の直胴部を有する多結晶シリコンロッドXを形成させるためには、特に図8に示されているように、その先端に吐出ノズル20を装着し、この吐出ノズル20により、反応性ガスの吹き付け方向を規制するのがよい。
【0044】
即ち、この吐出ノズル20には、反応性ガスを底板3の上面と平行な横方向に吹き付けるための側面吐出口20aが設けられており、この側面吐出口20aから、多結晶シリコンロッドX(反応初期ではシリコン芯材9)の直胴部50における凹部を形成する箇所に直接反応性ガスを吹き付けるのがよい。すなわち、ガス供給管15から供給される反応性ガスは、多結晶シリコンロッドXの表面温度よりも低い為、反応性ガスの吹き付けにより多結晶シリコンロッドXの表面が局部的に冷却され、反応性ガスが吹き付けられた箇所のシリコン析出速度を大きく低下させることができ、これにより、凹部を速やかに形成することができる。
また、上記の説明から理解されるように、吐出ノズル20の(特に側面突出口20a)の位置は、当然のことながら、電極7の上端よりも高い位置に設定されることとなる。
【0045】
また、上記の吐出ノズル20には、側面吐出口20aと共に、その上端面に底板3の上面に対して垂直方向上方にガスを吹き出すための上面吐出口20bを設けることが好ましく、このノズル20により、反応性ガスを横方向と同時に上方にも吹き出すことが好適である。即ち、横方向にのみ反応性ガスを吹き出すような構造とすると、反応室Aの上方部分での反応性ガスの濃度が低くなり、この結果、得られるシリコンロッドXの上方部分がポップコーン状になり、脆くなってしまうことがある。このような不都合を回避するために、上方にも反応性ガスが吹き出されるような構造とすることが好適である。
【0046】
尚、図8の例では、ノズル20が円筒形状を有しているが、このような形態に限定されるものではなく、例えば、ノズル20をリング形状とし、リング形状のノズル20を多結晶シリコンロッドXを取り囲むように配置することも可能である。
【0047】
また、上記ガス供給管15やノズル20の材質は、供給される反応性ガスを汚染させない材質であれば特に制限はなく、例えばシリコン製、炭化ケイ素製、グラファイト製或いはグラファイトの表面をシリコンで被覆したもの等を挙げることができる。
【0048】
図6を参照して、上記ノズル20とシリコン芯材9の表面との距離dは、反応性ガスを多結晶シリコンロッドXの直胴部50における凹部を形成する箇所に直接吹き付けることが可能であれば、特に制限されず、生成する多結晶シリコンロッドXの大きさ等を勘案して適宜決定すれば良いが、あまり距離が小さいと、冷却効果が高すぎて形成される凹部の直径が小さくなりすぎ、またあまり大きすぎると、冷却効果が低くなるため、効率的ではない。上記距離dは、例えば最大直径120mm、直胴部の高さ2mの多結晶シリコンロッドXを生成する場合、50〜300mmの範囲で適宜決定すれば十分である。
【0049】
ガス供給管15(ノズル20)より、シリコン芯材9に吹き付ける反応性ガスの温度は、図1に示される形状の多結晶シリコンロッドXを形成させる条件であれば、特に制限されず、ベルジャー5の大きさや、設置するシリコン芯材9の数、及び生成する多結晶シリコンロッドXの大きさやシリコン析出反応時間等を勘案して適宜決定すれば良い。しかしながら、あまり低い温度の反応性ガスは、反応性ガスを冷却するための装置が必要となり、装置が煩雑となって好ましくなく、また、あまり高い温度の反応性ガスは、凹部を形成する箇所の冷却効果が低くなるため好ましくない。従って、クロロシランガスとしてTCSを使用する場合、上記反応性ガスの温度は、室温〜700℃の範囲で適宜設定するのが好適である。
【0050】
また、上記反応性ガスの供給速度は、凹部を形成する箇所の多結晶シリコンロッドXの表面を部分的に冷却させて、シリコン析出速度を部分的に低下させられれば、特に制限なく、ベルジャー5の大きさや、設置するシリコン芯材9の数、及び生成する多結晶シリコンロッドXの大きさやシリコン析出反応時間等を勘案して適宜決定すれば良い。一般的に、一定の析出速度を維持させるために、反応性ガスの流量は、析出反応の進行に伴って増加させることが多い。例えば、最大直径が110〜120mmのシリコンを得る場合、ノズル20に直径5mmの側面吐出口20aが設けられているときの該側面吐出口20aから吹き出される反応性ガスの流速は、シリコン析出反応終了直前(即ち、多結晶シリコンロッドXの最大直径が120mmになるまで成長した頃)において線速度で10〜30m/s程度あれば十分である。
【0051】
また、側面吐出口20aから吹き出される反応性ガスの流量(A)と上面吐出口20bから吹き出される反応性ガスの流量(B)との流量比(A/B)を調整することにより、シリコンロッドXに形成される凹部51の幅wを調整することができる。即ち、この流量比(A/B)の値が大きいほど、凹部51の幅wは小さくなり、流量比(A/B)の値が小さいほど、凹部51の幅wが大きくなる。従って、これを利用して、流量比(A/B)を適宜変更することにより、凹部51の幅wを大きくし或いは小さくすることができる。
【0052】
図2の形状の直胴部を有する多結晶シリコンロッドの製造>
また、図2に示される形状の直胴部を有する多結晶シリコンロッドXを形成させる為には、シリコンロッドXの直胴部50の下端部のシリコン析出速度が高く、上方に向かって析出速度を低下させるような析出速度分布を形成させる必要がある。上記の析出速度分布を形成させるための手段として、例えば、反応室Aに供給されるクロロシランガスの供給量を低くする手段が挙げられる。
【0053】
すなわち、反応性ガスをガス供給管15から反応室Aに供給すると、反応性ガスは、熱対流により、多結晶シリコンロッドXの直胴部50の表面上を図2のZ方向に向かって上昇するが、多結晶シリコンロッドXの表面では、析出反応が進行して、反応性ガス中のクロロシランガスが消費されるため、多結晶シリコンロッドXの直胴部50の表面付近のクロロシランガス濃度は、多結晶シリコンロッドXの下端部が高く、上方に向かって低下する。従って、反応室Aに供給されるクロロシランガス量を十分に少なくすることで、多結晶シリコンロッドXの上方に行くほど、多結晶シリコンロッドXの表面付近のクロロシランガスが不足し、析出速度が大きく低下することとなり、多結晶シリコンロッドXの直胴部50に、上記の析出速度分布を形成させることが可能である。
【0054】
図2に示される形状の直胴部を有する多結晶シリコンロッドXを形成させる為に、上記反応室Aに供給する反応性ガスの供給条件は、上記の析出速度分布を形成させることが可能であれば、特に制限されず、ベルジャー5の大きさ等を勘案して適宜決定すれば良い。上記の析出速度分布の形成が容易であるという点で、反応室Aに供給するクロロシランガスの供給量を低くするような反応性ガスの供給条件とすることが好ましいが、あまり低すぎると十分な大きさの多結晶シリコンロッドを得るために要する時間がかかりすぎ、工業的に効率的とは言えない。また、反応室Aの上部での反応性ガスの濃度が過度に低下してしまうため、シリコンロッドXの上部が前述したポップコーン状になって脆くなってしまう。従って、上記反応室Aに供給する反応性ガスの供給条件として、例えば、クロロシランガスとしてTCSを使用し、シリコンの析出を1000℃で行う場合、シリコン表面積当たりのクロロシランガス供給量として、0.02〜0.07mol/cm・hの範囲で、特に好ましくは0.04〜0.06mol/cm・hの範囲で、供給することが好適である。
【0055】
さらに、多結晶シリコンロッドXの直胴部50の下端部表面付近でのシリコン析出速度を上げるという観点から、上記、反応室Aに供給する反応性ガスの温度は、高い程好ましい。しかしながら、あまり高い温度の反応性ガスは、配管からの汚染や製品の純度低下、及び配管の劣化等のトラブルの要因となるため好ましくない。従って、クロロシランガスとしてTCSを使用する場合、上記反応性ガスの温度は、室温〜500℃の範囲で、特に200〜350℃の範囲で適宜設定するのが好適である。
【0056】
上記図2の形状の直胴部を有する多結晶シリコンロッドXを形成させるための、ガス供給口15の形状としては、反応性ガスを上記の供給量で反応室Aに供給できるものであれば、特に制限なく、公知の形状のガス供給口とすることが可能である。
【0057】
また、上記手段の他に、図2に示される形状の直胴部を有する多結晶シリコンロッドXを形成させる為の手段としては、多結晶シリコンロッドXの直胴部50の高さに対して、ベルジャー5の天井の高さを高くすることで、多結晶シリコンロッドXの橋架け部65付近のベルジャー5内壁からの赤外線反射量を低減させて、多結晶シリコンロッドX上部の表面温度を下げる手段を採用することも可能である。かかる手段におけるベルジャー5の天井の底板からの高さは、例えば直胴部の高さ2mの多結晶シリコンロッドXを生成する場合、3m以上の範囲で適宜決定すれば十分である。
【0058】
<析出反応後の処理>
このようにして直胴部50に直径分布が形成されたシリコンロッドXは、常法にしたがい、直胴部50の下端部分の近傍を切断して電極7から切り離し、さらに、直胴部50の上端部分を切断して橋架け部65から切り離し、図3或いは図4に示すように、直胴部の形状に合わせて吊具60で引っ掛けて持ち上げることが可能となる。
【0059】
上述した本発明の多結晶シリコンロッドでは、切断された直胴部を、形状加工せず、そのままの形態で容易に搬送することができ、搬送に要する労力を著しく軽減することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を更に具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
図6及び図7に示す製造装置にて多結晶シリコンロッドの製造を行った。
なお、ガス供給管15の先端部分には、上面吐出口と4個の側面吐出口を有するノズル20を装着した。この上面吐出口の径(ノズル20の先端部内径)は20mm、4個の側面吐出口の径は、それぞれ5mmである。
上記のノズル20の先端位置は、底板3からの高さ400mmとし、4個の側面吐出口の位置は、それぞれ、底板3からの高さ300mmに設定されている。
また、底板3の電極7には、8mm角、高さ2.2mの細棒からなるΠ字型のシリコン芯材9を立設した。
さらに、ガス供給管15(ノズル20)とシリコン芯材9との距離dは200mmとした。
【0062】
電極7を介してシリコン芯材9への通電を開始し、シリコン芯材9の表面温度が1000℃になった時点で、ガス供給管15からノズル20を介して、TCSと水素を1:5の比で予め混合した温度25℃の反応性ガスを供給した。
この際、ガスの供給量は、シリコン芯材9の表面に析出したシリコンロッドの直径が大きくなるにつれて、シリコンロッドの表面積当たりのTCSガス供給量が、0.09±0.01mol/cm・hに保持されるように調整し、直胴部の最大直径が120mmとなるまで、シリコン析出反応を行った。
反応終了直前のガス供給口15から供給される反応性ガスの線速度は約18m/sであった。
【0063】
反応終了後、反応性ガスの供給、及びシリコン芯材9への通電を停止し、直胴部50の下端部分の近傍を切断して電極7から切り離し、さらに、直胴部50の上端部分を切断して橋架け部65から切り離して、長さ2mの多結晶シリコンロッドを取り出したところ、直胴部50の下端近傍に凹部51が形成された多結晶シリコンロッドが得られた。
最小直径部は、多結晶シリコンロッドの下端から上方20cmの箇所であり、最小直径は109mm(最大直径の91%)であった。また、凹部の幅は150mmであった。
得られた多結晶シリコンロッドの凹部に吊具を引っ掛けて搬送したところ、特に問題なく搬送することができた。
【0064】
<実施例2〜4>
ノズル20の上面吐出口の径(ノズル20の先端部内径)、及び4個の側面吐出口の径を表1に示す径とした以外は、実施例1と同様に多結晶シリコンロッドの製造を行った。最小直径、及び凹部の幅を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
<実施例5>
図6及び図7に示す製造装置にてシリコンロッドの製造を行った。
なお、ガス供給管15の内径は40mmとし、ノズル20は設けず、8mm角、高さ2.2mの細棒からなるΠ字型のシリコン芯材9を電極7上に設置した。
【0067】
実施例1と同様にしてシリコン芯材9への通電を開始し、シリコン芯材9の表面温度が1000℃になった時点で、ガス供給管15から、TCSと水素を1:5の比で予め混合した温度200℃の反応性ガスを供給した。
反応性ガスの供給量は、シリコンロッドの直径が大きくなるにつれて、シリコンロッドの表面積当たりのTCSガス供給量が、0.04±0.005mol/cm・hとなるよう調整し、最大直径が110mmとなるまで、シリコン析出反応を行った。
【0068】
反応終了後、実施例1と同様に、長さ2mの多結晶シリコンロッドを取り出したところ、図2に示す形状の多結晶シリコンロッドが得られた。
最小直径部は、直胴部50の上端部であり、最小直径は88mm(最大直径の80%)であった。
得られたシリコンロッドを最大直径部が上になるように保持して吊具を引っ掛けて搬送したところ、特に問題なく搬送することができた。
【0069】
<実施例6>
シリコンロッドの表面積当たりのTCSガス供給量が、0.03±0.005mol/cm・hとなるよう調整しながら反応性ガスを供給した以外は実施例2と同様に、シリコン析出反応を行った。
【0070】
反応終了後、実施例2と同様に、長さ2mの多結晶シリコンロッドを取り出したところ、図2に示す形状の多結晶シリコンロッドが得られた。
最小直径部は、直胴部50の上端部であり、最小直径は79mm(最大直径の72%)であった。
得られたシリコンロッドを最大直径部が上になるように保持して吊具を引っ掛けて搬送したところ、特に問題なく搬送することができた。
【0071】
<比較例1>
シリコンロッドの表面積当たりのTCSガス供給量が、0.09±0.005mol/cm・hとなるよう調整しながら反応性ガスを供給した以外は実施例2と同様に、シリコン析出反応を行った。
反応終了後、実施例2と同様に、長さ2mの多結晶シリコンロッドを取り出したところ、最小直径は108mm(最大直径の98%)であった。また、シリコンロッドの外面はテーパー状の傾斜面となっており、凹部は形成されていなかった。
【符号の説明】
【0072】
3:底板
5:ベルジャー
7:電極
9:シリコン芯材
15:ガス供給管
17:ガス排出管
20:ノズル
20a:ノズルの側面吐出口
20b:ノズルの上面吐出口
50:直胴部
51:凹部
53:最小直径部
55:最大直径部
60:吊具
65:橋架け部
X:シリコンロッド
Z:反応ガス吹き付け方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8