(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る基板ホルダは、成膜源に対向して配置され、フィルム状の基板を支持するための基板ホルダであって、ホルダ本体と、密着機構とを具備する。
上記ホルダ本体は、軸心に平行な軸方向と上記軸心のまわりの周方向とを有する筒体の部分周面で形成された支持面を有する。上記ホルダ本体は、上記支持面に上記基板を支持した状態で上記成膜源に対向配置される。
上記密着機構は、上記ホルダ本体に設置され、上記支持面への上記基板の密着状態を維持する。
【0012】
上記基板ホルダにおいて、ホルダ本体は、例えば金属等の熱伝導性に優れた材料で形成され、その周面の一部が基板を支持する支持面として機能する。密着機構は、基板を上記支持面へ密着させる機能を有する。ここで、上記支持面は、軸心に平行な軸方向と上記軸心のまわりの周方向とを有する筒体の部分周面で形成されているため、フィルム状の基板は、皺を発生させることなく上記支持面に確実に密着される。
【0013】
上記支持面は、基板を冷却するための冷却面を形成する。これにより、成膜時の入熱による基板の熱ダメージを防止でき、適正な成膜処理が可能となる。また、基板に耐熱性を要求されないため、基板材料の自由度を高めることができる。
【0014】
支持面に基材を密着させる方法は特に限定されず、例えばクランプや永久磁石等を用いた基材の挟持構造のほか、粘着テープを用いた接着等が適用可能である。
【0015】
上記密着機構は、上記基板に上記周方向に沿った張力を発生させることが可能な張力発生部を含んでもよい。
これにより、基板ホルダの支持面に対する基板の密着性を高めることができる。
【0016】
上記張力発生部は、第1および第2の固定具と、弾性部材とを有してもよい。
上記第1および第2の固定具は、上記周方向に関する上記基板の各端部を各々固定可能である。上記弾性部材は、上記基板に上記張力を印加する。
これにより、弾性部材の弾性力によって基材に対して所望の張力を付与し、支持面に基材を密着させることができる。
【0017】
上記張力発生部は、第1および第2のローラ部材と、支持軸とを有してもよい。上記第1および第2のローラ部材は、上記周方向に関する上記基板の各端部に巻き付けられることができる。上記支持軸は、上記第1および第2のローラ部材を回転可能に支持する。
これにより、上記支持軸を回転させることで基材に対して所望の張力を付与し、支持面に基材を密着させることができる。
【0018】
上記支持面は、脱ガス用の通気路を有してもよい。
これにより、基材と支持面との間において基材からの放出ガスの滞留を抑制し、基材と支持面との良好な密着を維持することができる。上記通気路は、例えば、支持面に形成された孔、溝などで構成される。また、上記通気路を確保するために、支持面は多孔質材料で形成されてもよい。
【0019】
上記張力発生部は、入熱により上記支持面を湾曲させることが可能なバイメタルであってもよい。
これにより、成膜時の入熱による基板の撓みによる密着性の低下を支持面の変形によって吸収することができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る成膜装置は、成膜室と、成膜源と、基板ホルダとを具備する。
上記成膜源は、上記成膜室に配置される。
上記基板ホルダは、ホルダ本体と、密着機構とを有する。上記ホルダ本体は、軸心に平行な軸方向と上記軸心のまわりの周方向とを有する筒体の部分周面で形成された支持面を有し、上記支持面にフィルム状の基板を支持した状態で上記成膜源に対向配置される。上記密着機構は、上記ホルダ本体に設置され上記支持面への上記基板の密着状態を維持する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る成膜方法は、軸心に平行な軸方向と上記軸心のまわりの周方向とを有する筒体の部分周面で形成された支持面にフィルム状の基板を配置する工程を含む。
上記基板に前記周方向に沿った張力を発生させることで、前記基板は前記支持面に密着させられる。
上記支持面に対向する成膜源によって、上記基板に成膜がなされる。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜装置を示す概略平面図である。以下、本実施形態の成膜装置100の概略構成について説明する。
【0024】
[成膜装置]
成膜装置100は、仕込み室11と、成膜室12と、仕込み室11と成膜室12との間に設置されたゲートバルブ13とを有する。成膜装置100はさらに、仕込み室11を排気する真空ポンプ151と、成膜室12を排気する真空ポンプ152とを有する。成膜装置100は、仕込み室11から成膜室12へ搬送された基板Sの表面に薄膜を形成し、成膜後は、仕込み室11を介して基板Sを外部へ搬出する。
【0025】
仕込み室11は、第1の真空バルブ141を介して第1の真空ポンプ151と接続されている。仕込み室11は、仕込み室11に基板が搬入された後、真空ポンプ151によって所定の圧力に排気される。
【0026】
成膜室12は、本実施形態ではスパッタ室として構成される。すなわち成膜室12は、カソードユニット120のほか、プロセスガスを成膜室12へ導入するための図示しないガス導入ライン等を有する。カソードユニット120(成膜源)は、第1のターゲット部121と第2のターゲット部122と、ターゲット部121,122にそれぞれ配置されたマグネトロン放電のためのマグネットアセンブリ等を有する。カソードユニット120は、成膜室12の一側壁に面して設置されている。ターゲット部121,122は同時に駆動されてもよいし、相互に独立して駆動されてもよい。ターゲット部121,122の放電方式は特に限定されず、DC放電、AC放電、RF放電など適宜の方式が採用可能である。
【0027】
ターゲット部121,122は、成膜材料の種類に応じて設置されたターゲット材料を有する。基板Sに成膜される材料としては、金属および金属化合物等の無機材料のほか、有機材料が挙げられ、形成される薄膜は、単層膜、積層膜、複合膜等であってもよい。単層膜を形成する場合、ターゲット部121,122は同一材料で形成され、積層膜および複合膜を形成する場合、ターゲット部121,122は異種材料で形成される。本実施形態では、ターゲット部121はモリブデン(Mo)ターゲットを有し、ターゲット部122はアルミニウム(Al)ターゲットを有する。
【0028】
成膜装置100は、基板Sを支持する基板ホルダ20と、成膜室12において基板Sを搬送する図示しない搬送機構とをさらに有する。上記搬送機構は、基板ホルダ20を仕込み室11側から成膜室12の端部12aに向かって矢印Aに沿って直線的に等速度で搬送する。また、上記搬送機構は、基板ホルダ20を成膜室12の端部12a側から仕込み室11側に向かって矢印Bに沿って直線的に等速度で搬送する。本実施形態では、基板Sは、矢印Aに沿った往路と、矢印Bに沿った復路とにおいてそれぞれターゲット部121,122の正面を横切るように通過し、これらの通過過程で基板S上への成膜処理が施される。
【0029】
上記搬送機構は、例えば、基板ホルダ20の走行をガイドするガイドレールと、上記ガイドレールに沿って基板ホルダ20を移動させる駆動源等を含む。あるいは、上記搬送機構として、基板ホルダ20を懸吊状態で支持しつつ搬送する形態が採用されてもよい。
【0030】
なお、上記の例に限られず、基板Sは往路および復路のいずれか一方において成膜処理が施されてもよい。あるいは、各ターゲット部121,122の正面で基板Sを停止させた状態で成膜する方式が採用されてもよい。また、成膜室12の内部で基板Sを往復移動させる例に限られない。例えば、成膜室12の端部12aにゲートバルブを介して取出し室を設置することで、基板Sの搬送方向をA方向に限定することができる。さらに、ターゲット部121,122は、成膜の厚みに応じてその数を増減することができる。
【0031】
基板Sには、フレキシブル性を有するフィルム状の基板が用いられる。本実施形態では、基板Sとして、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等のプラスチックフィルムが用いられる。基板Sに耐熱性の有無は問われない。基板Sの形状は特に限定されず、典型的には矩形状である。基板Sはプラスチック単層フィルムに限られず、その表面に金属層等の他の層が形成されていてもよい。
【0032】
[基板ホルダ]
次に、基板ホルダ20の詳細について説明する。
図2は基板ホルダ20の全体斜視図、
図3は基板ホルダ20の平面図、
図4は基板ホルダ20の側面図、
図5は基板ホルダ20の裏面図である。
【0033】
基板ホルダ20は、ホルダ本体21と、密着機構22とを有する。
【0034】
ホルダ本体21は、銅、アルミニウム、鉄鋼材料等の熱伝導性に優れた金属材料で構成される。ホルダ本体21は、略矩形の板で形成されており、一方側の表面に基板Sを支持するための支持面21aを有する。支持面21aは、
図2に示すように、Z軸方向に沿って延びる軸心Laに平行な軸方向Cと、軸心Laのまわりの周方向Dとを有する、半径Rの筒体(円筒)の部分外周面で形成されている。
【0035】
ホルダ本体21は、支持面21aがターゲット部121,122の表面と対向するように、軸方向Cを鉛直方向に向けて成膜室12の内部に設置される。支持面21aは、基板Sの成膜時に基板Sを支持し、基板Sを冷却する冷却面として機能する。
【0036】
支持面21aは、ターゲット部121,122の表面側に凸となる部分円筒形状を有しており、その曲率半径Rは特に限定されず、例えば500mm〜10000mmである。半径Rが500mm未満の場合、基板S上において良好な膜厚分布を確保することが困難となる。また、半径Rが10000mmを超えると、支持面21aに対する基板Sの良好な密着性を確保することが困難となる。
【0037】
ホルダ本体21は、支持面21aと、支持面21aとは反対側の裏面21bとの間を貫通する複数の貫通孔23を有する。貫通孔23は、支持面21a上の基板Sからの放出ガスをホルダ本体21の外部へ導く通気路を形成する。貫通孔23は、
図3に示すように支持面21a上にグリッド状に規則的に形成される例に限られない。また、貫通孔23の形成数も特に限定されず、基板Sの大きさ、貫通孔23の孔径等に応じて適宜設定可能である。貫通孔23の孔径は特に限定されず、例えば1mmである。さらに、貫通孔23の形状は円筒状に限らず、円錐状であってもよいし、円筒と円錐とを組み合わせた形状であってもよい。
【0038】
上記通気路は、基板Sからの放出ガスに起因する基板Sと支持面21aとの間の密着不良を解消する目的で形成される。したがって、上記通気路は、上述した貫通孔23で形成される例に限られず、例えば、支持面21a上にストライプ状あるいはメッシュ状に形成された複数の溝で形成されてもよい。さらに、支持面21a(あるいはホルダ本体21)を多孔性材料によって構成することで、上記放出ガスによる影響を排除することも可能である。この場合、多孔性材料としては、金属微粉末の焼結体や圧粉体等が適用可能である。
【0039】
密着機構22は、支持面21aへの基板Sの密着状態を維持するためのもので、ホルダ本体21の裏面21bに設置される。本実施形態の密着機構22は、支持面21a上の基材Sに対して周方向Dに沿った張力を発生させる機能を有する。
【0040】
図4および
図5に示すように、密着機構22は、一対の固定具221(第1および第2の固定具)と、各々の固定具221に取り付けられ基板Sに上記張力を印加する複数本のバネ部材223(弾性部材)とを有する。各固定具221は、基板Sの端部を挟持可能なクランプ構造を有する。上記クランプ構造は、機械的な挟持構造であってもよいし、永久磁石の磁力を用いた挟持構造であってもよい。各固定具221は、基材Sの端部の全幅にわたって挟持できる長さを有する。一方、各々のバネ部材223は、ホルダ本体21の裏面21bに各々固定されたベース板222と各固定具221との間にそれぞれ設置されている。
【0041】
固定具221、バネ部材223等は、支持面21a上の基板Sに周方向Dに沿った張力を発生させる張力発生部を構成する。当該張力の大きさは、バネ部材223のバネ定数、取付個数等によって適宜調整可能である。
【0042】
また本実施形態では、各ベース板222をホルダ本体21の裏面21bに対してX軸方向に相対移動させる調整ユニットを有する。これにより、バネ部材223のバネ力が調整可能となり、基板Sに所望の張力を付与することができる。
【0043】
当該調整ユニットは、各ベース板222の移動をガイドするガイドレール226と、ガイドレール226上で各ベース板222を移動させる調整ネジ224と、ガイドレール226上の各ベース板222を任意の位置でホルダ本体21へ固定する固定部229とを有する。調整ネジ224は、ホルダ本体21の裏面21bに固定されたブラケット225に支持され、調整ネジ224の先端部はベース板222に螺合している。従って、調整ネジ224を軸回りに回転させることで、ベース板222はガイドレール226上を移動させられる。固定部229は、ベース板222に形成されベース板222の移動方向(X軸方向)に長軸を有する複数の長孔227と、各長孔227を貫通しホルダ本体21の裏面21bに螺合可能なネジ部材228とにより構成される。
【0044】
[成膜装置の動作例]
次に、以上のように構成される本実施形態の基板ホルダ20および成膜装置100の作用の一例について説明する。
【0045】
基板Sは、成膜されるべき面を外側に向けて基板ホルダ20の支持面21a上に配置される。基板Sは、支持面21aの周方向Dに関する両端部が密着機構22の固定具221にそれぞれ固定されることで、ホルダ本体21に保持される。
【0046】
支持面21aは、軸心Laに平行な軸方向Cと軸心Laのまわりの周方向Dとを有する部分円筒状の周面で形成されているため、基板Sは、皺を発生させることなく支持面21aに確実に密着される。これにより、成膜時の入熱による基板の熱ダメージを防止でき、適正な成膜処理が可能となる。
【0047】
基板Sは、バネ部材223の弾性力を受けて周方向Dに沿った張力が付与されることで、支持面21aの形状にならって変形し、支持面21aに密着される。また、各固定具221は、基板Sの端部の全幅にわたって挟持できる長さを有するので、基板Sに皺を発生させることなく所望の張力を付与することができる。
【0048】
このように、基板Sに周方向Dに沿った張力を付与することで、支持面21aへの基板Sの密着性を高めることができる。また、成膜時の入熱により基板Sに伸びが生じたとしても、上記張力によって支持面21aに対する基板Sの安定した密着状態を維持することができる。
【0049】
なお、基板ホルダ20に対する基板Sの設置は、作業者によって行われてもよいし、ロボット等を用いて自動的に行われてもよい。
【0050】
上述のように基板ホルダ20に設置された基板Sは、基板ホルダ20とともに仕込み室11へ搬入される。仕込み室11は所定の圧力に排気された後、ゲートバルブ13を介して、所定の成膜圧力に維持された成膜室12へ搬送される。
【0051】
基板ホルダ20は、成膜室12において図示しない搬送機構を介して矢印A方向へ直線的に搬送される。このとき、基板ホルダ20は、支持面21aの軸方向Cを鉛直方向に向けた状態で、軸方向Cと直交する方向(X軸方向)へ搬送される。したがって、基板Sは、基板ホルダ20によって、カソードユニット120と対向する位置を横切るように成膜室12において搬送される。
【0052】
カソードユニット120は、基板ホルダ20に支持された基板Sの表面に、ターゲット部121,122の構成材料をスパッタ成膜する。すなわち、基板Sは往路(
図1の矢印A)の搬送中にターゲット部121およびターゲット部122の正面を順に通過することで、基板SにMo膜とAl膜の積層膜が形成される。このとき、基板Sへの入熱は、基板Sと密着する支持面21aを介してホルダ本体21によって吸収される。すなわち、支持面21aは基板Sの冷却面として機能し、成膜時における基板Sの熱ダメージを抑制して適正な成膜処理を確保する。
【0053】
また、成膜時の基板Sへの入熱により、基板Sから放出ガスが発生する場合がある。本実施形態では、支持面21aに複数の貫通孔23が形成されているため、これらの貫通孔を通気路として支持面21aの外部へ導かれる。これにより、基板Sと支持面21aとの間における放出ガスの滞留を防止できるため、基板Sと支持面21aとの間の密着性の低下が抑えられる。
【0054】
基板ホルダ20が成膜室12の端部12aに到達すると、仕込み室11側に向かって搬送される。基板Sは復路(
図1の矢印B)の搬送中にターゲット部122およびターゲット部121の正面を順に通過することで、基板SにAl膜とMo膜とがさらに形成される。成膜後、基板ホルダ20は、ゲートバルブ13を介して仕込み室11へ戻される。そして、ゲートバルブ13が閉止され、仕込み室11が大気に開放された後、成膜済みの基板Sを支持した基板ホルダ20が仕込み室11から外部へ取り出される。
【0055】
以上のように本実施形態によれば、支持面21aへの基板Sの良好な密着状態が確保されるため、成膜時の入熱による基板Sの熱ダメージを防止して、適正な成膜処理を行うことができる。また、多くのスパッタカソードを必要とすることなく、基板S上に比較的厚い金属膜を形成することができる。さらに、基板に耐熱性を要求されないため、基板材料の自由度を高めることができる。
【0056】
[実験例]
本発明者らは、
図1に示した成膜装置100を用いて基板上にMo−Al積層膜を形成し、作成した薄膜サンプルの表面抵抗とその均一性を測定した。基板には、厚み50μmのPETフィルムを用いた。基板の形状は、300mm×300mmの正方形とした。基板ホルダ20の支持面21aを形成する円筒面の曲率半径は2285mmとした。成膜室12の圧力(成膜圧力)は0.4Pa、基板ホルダの搬送速度は0.67m/min.とした。
【0057】
また、カソードユニット120を構成する第1のターゲット部121のターゲット材料はMoNb合金とし、第2のターゲット部122のターゲット材料はAlNd合金とした。第1のターゲット部121のパワー密度は1.5W/cm
2とし、第2のターゲット部122のパワー密度は8.8W/cm
2とした。実験では、往路および復路において両ターゲット部121,122を用いて成膜した。薄膜サンプルの各層の厚みは、MoNb(330Å)/AlNd(3400Å)/MoNb(340Å)であった。
【0058】
実験の結果を表1に示す。比較例として、支持面が平坦な基板ホルダを用いたときの結果を併せて示す。本実験例によれば、0.22Ω/□の表面抵抗を有する薄膜サンプルが得られた。表面抵抗の面内分布は7.9%であった。これにより、基板に金属膜を適正に成膜できたことが確認できる。これに対して比較例では、支持面への基板の密着不良が原因で基板の破損(焼損)が生じ、成膜が不可能であった。
【0060】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の他の実施形態に係る基板ホルダの概略側面図である。なお、図において上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態の基板ホルダ30は、ホルダ本体21と、密着機構32とを有する。本実施形態の密着機構32は、一対のローラ部材321と、各ローラ部材321をその軸まわりに回転可能に支持する支持軸322とを有する。ローラ部材321は、ホルダ本体21の支持面21a上に配置された基板Sの周方向に関する各端部にそれぞれ巻き付けられる。支持軸322は、ホルダ本体21の裏面に固定された台座323に取り付けられる。なお図示せずとも、支持軸322にはローラ部材321の回転を禁止するストッパが取り付けられている。
【0062】
また、ローラ部材321周辺の基材Sは、支持面21aとの密着性が低下あるいは全く密着していないため、成膜時の入熱により熱ダメージを受けるおそれがある。そこで、本実施形態では台座323に遮熱部材33をそれぞれ設置し、ローラ部材321周辺に位置する基材Sを熱ダメージから保護するようにしている。
【0063】
本実施形態においては、各ローラ部材321のうち少なくとも一方を回転させることによって、基材Sに対して周方向に沿った所定の張力が付与される。これにより、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0065】
例えば以上の第1の実施形態では、密着機構として基板Sの両端部にバネ部材223およびその弾性力の調整ユニットを設置したが、これに限られず、基板Sの少なくとも一方の端部側にのみバネ部材223および調整ユニットを設置してもよい。上述の第2の実施形態においても同様である。
【0066】
また、以上の各実施形態では、ホルダ本体21の支持面21aを部分円筒面で形成したが、これに限られず、非球面、双曲面等の他の曲面形状であってもよい。
【0067】
一方、ホルダ本体の支持面上に配置した基板に所定の張力を付与する方法として、バイメタルを用いることができる。バイメタルは、熱膨張率の異なる2枚の金属板を貼り合わせて構成された機能材料であり、温度の変化によって曲がり方(曲率)が変化するという性質を有する。このような材料をホルダ本体の支持面に適用することで、成膜時の入熱によって基板Sに適度な応力を付与することができる。これにより、基板と支持面との間の良好な密着性を維持することができる。
【0068】
さらに、基板ホルダの支持面に基板を固定する方法は上記の例に限られず、例えばクランプや永久磁石等を用いた基材の挟持構造のほか、粘着テープを用いた接着等が適用可能である。
図7に、ホルダ本体21の周囲に永久磁石41,42を貼り付けて基板Sを支持面21aに密着させる基板ホルダ40を概略的に示す。この場合、基板Sにあらかじめ張力を印加した状態で永久磁石41,42によって固定することができる。
【0069】
そして以上の実施形態では、成膜装置としてスパッタ装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、真空蒸着装置、CVD装置、イオンプレーティング装置等の他の成膜装置にも本発明は適用可能である。この場合、成膜源には、蒸発源やシャワープレート(プラズマ発生電極)等が該当する。また、本実施形態では、
図1に示すように仕込み室と成膜室を有する成膜装置を説明したが、成膜室のみで構成されるバッチ式装置にも適用可能である。さらに、本基板ホルダは、成膜装置の他、減圧中でフィルム等から加熱脱ガスを行う、脱ガス工程及び脱ガス装置にも適用可能である。