(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)成分がポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びそれらの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程とを含むことを特徴とするパターン硬化膜の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明によるポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
((a)成分:アルカリ水溶液可溶性のポリマー)
本発明で用いる(a)成分は、アルカリ水溶液可溶性のポリマーであれば、特に構造上の制限はない。
【0025】
なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。一般には、濃度が2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が用いられるので、(a)成分は、この水溶液に対して可溶性であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の(a)成分がアルカリ性現像液で可溶であることの1つの基準を以下に説明する。
(a)成分単独あるいは以下に順を追って説明する(b)、(c)の各成分とともに任意の溶剤に溶解して得られたワニスを、シリコンウエハなどの基板上にスピン塗布して形成することにより膜厚5μm程度の塗膜とする。これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか一つに20〜25℃において、浸漬する。この結果、均一な溶液として溶解し得る時、その(a)成分はアルカリ性現像液で可溶と見なされる。
【0027】
ここで、前記(a)成分の主鎖骨格として、(i)ポリイミド系ポリマーまたはポリオキサゾール系ポリマー、すなわち、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオキサゾール、ポリアミド、及びこれらの前駆体(例えば、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリヒドロキシアミドなど)から選ばれる少なくとも1種(高分子化合物)から導入されることが、例えば加工性、耐熱性の点で好ましく、そして、(ii)複数のフェノール性水酸基やカルボキシル基を有する構造であることが、アルカリ水溶液可溶性の点で好ましい。したがって、(a)成分を、前記二種類以上の共重合体や混合物として用いることもできる。中でもポリイミド、ポリオキサゾールないしはそれぞれに対応する前駆体を(a)成分に用いれば、本発明の樹脂組成物を用いて得られた硬化膜の耐溶剤性がより高いものとなるので、(a)成分として、ポリイミド、ポリオキサゾール、及びそれらの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、特に、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びそれらの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0028】
(a)成分として用いることのできる上記具体的ポリマーおよび前駆体のそれぞれについて、以下に説明する。
上記ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得ることができる。
上記ポリオキサゾールは、例えば、ジカルボン酸ジクロリドとジヒドロキシジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得ることができる。
上記ポリアミドイミドは、例えば、トリカルボン酸とジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得ることができる。
上記ポリアミドは、例えば、ジカルボン酸ジクロリドとジアミンを反応させることにより得ることができる。
上記ポリアミド酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させることにより得ることができる。
上記ポリアミド酸エステルは、例えば、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンを反応させることにより得ることができる。
【0029】
上述の具体的なポリマーのなかでも、現今の電子部品用としては、加熱により閉環してポリベンゾオキサゾールとなるポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)は、耐熱性、機械特性、電気特性に優れるものとして多用されつつある。
このポリヒドロキシアミドは、下記一般式(3):
【0030】
【化3】
(式(3)中、Uは4価の有機基を示し、Vは2価の有機基を示す)
で表される繰り返し単位を有する。
この一般式(3)で表される「ヒドロキシ基を含有するアミドユニット」は、最終的には硬化時の脱水閉環により、耐熱性、機械特性、電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。
【0031】
本発明で用いることができるポリヒドロキシアミドは、前記一般式(3)で表される繰り返し単位を有していればよいが、ポリヒドロキシアミドのアルカリ水溶液に対する可溶性は、フェノール性水酸基に由来するため、一般式(3)で表される「ヒドロキシ基を含有するアミドユニット」が、ある割合以上含まれていることが好ましい。
そのようなものとして、好ましくは、次式(4):
【0032】
【化4】
(式(4)中、Uは4価の有機基を示し、VとWは2価の有機基を示す。jとkは、モル分率を示し、jとkの和は100モル%であり、jが60〜100モル%、kが40〜0モル%である。)
で表されるポリヒドロキシアミドである。
ここで、式(4)中のjとkのモル分率は、j=80〜100モル%、k=20〜0モル%であることがより好ましい。
【0033】
本発明において、一般式(4)で表される繰り返し単位を有するポリヒドロキシアミドは、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、前記ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。
上記ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0034】
上記ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。
ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
【0035】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。
反応溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
【0036】
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましく、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。
反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0037】
上記ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。
脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。
また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。
反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0038】
(一般式(4)において、Uで表される4価の有機基)
前記一般式(4)において、Uで表される4価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成する「2個のヒドロキシ基がそれぞれアミンのオルト位に位置した構造を有するジアミンの残基」であり、4価の芳香族基が好ましく、炭素原子数としては6〜40のものが好ましく、炭素原子数6〜40の4価の芳香族基がより好ましい。4価の芳香族基としては、4個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。
【0039】
このようなジアミン類としては、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
(一般式(4)において、Wで表される2価の有機基)
前記一般式(4)において、Wで表される2価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成する「ジアミンの残基」であり、前記Uを形成するジアミン以外の残基であり、2価の芳香族基又は脂肪族基が好ましく、炭素原子数としては4〜40のものが好ましく、炭素原子数4〜40の2価の芳香族基がより好ましい。
【0041】
このようなジアミン類としては、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物が挙げられ、さらに、これらの他にも、シリコーン基の入ったジアミンとして、LP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161C及びX−22−161E(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
(一般式(4)において、Vで表される2価の有機基)
一般式(4)において、Vで表される2価の有機基とは、ジアミンと反応してポリアミド構造を形成する、ジカルボン酸の残基であり、2価の芳香族基が好ましく、炭素原子数としては6〜40のものが好ましく、炭素原子数6〜40の2価の芳香族基が硬化膜の耐熱性の観点でより好ましい。2価の芳香族基としては、2個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。また、Vが炭素数6〜30の脂肪族直鎖構造を有する2価の有機基の場合は、熱硬化する際の温度を280℃以下と低くしても十分な物性が得られる点で好ましい。
【0043】
このようなジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、脂肪族直鎖構造を有するものとしては、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸が挙げられ、さらに下記一般式(5):
【0044】
【化5】
(式(5)中、Zは炭素数1〜6の炭化水素基、式中nは1〜6の整数である。)で示されるジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
(a)成分の分子量は、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。ここで、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0046】
((b)成分:光の照射を受けて酸を発生する化合物)
本発明の組成物において、前記(a)成分として用いるアルカリ水溶液可溶性のポリマーとともに、前記(b)成分として活性光線の照射を受けて酸を発生する化合物(以下、酸発生剤とも記す)を用いる。
【0047】
この(b)成分の配合量は、感光時の感度、解像度を良好とするために、(a)成分100重量部に対して、0.01〜50重量部とすることが好ましく、0.01〜20重量部とすることがより好ましく、0.5〜20重量部とすることがさらに好ましい。
【0048】
この(b)成分である「光の照射を受けて酸を発生する化合物(光酸発生剤)」は、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。そのような光酸発生剤としては、o−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、なかでもo−キノンジアジド化合物が感度が高く好ましいものとして挙げられる。
【0049】
上記o−キノンジアジド化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物などとを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。前記o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
【0050】
上記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',3'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3',4',5'−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0051】
上記アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが使用できる。
【0052】
上記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とは、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。
好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間とされる。
【0053】
上記反応の反応溶媒としては,ジオキサン,アセトン,メチルエチルケトン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては,炭酸ナトリウム,水酸化ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,トリメチルアミン,トリエチルアミン,ピリジンなどがあげられる。
【0054】
((c)成分:ウレア結合を有する化合物)
本発明に使用される(c)成分であるウレア結合を有する化合物は、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程において、該化合物がポリマーと反応、すなわち橋架けをする。または、加熱処理する工程において、該化合物自身が重合する。これによって、得られる硬化膜の機械特性や薬品耐性、フラックス耐性を向上させることができる。また、(c)成分がウレア結合を持つことで、(b)成分である「光の照射を受けて酸を発生する化合物」との相互作用が増し、後に説明する(d)成分である「アルカリ水溶液に対する(a)成分の溶解を阻害する化合物」と相まって、露光部と未露光部との溶解速度差を向上させることができる。
【0055】
この(c)成分は、好ましいものとして、以下の一般式(1):
【0056】
【化6】
(式(1)中、複数のR
7は各々独立に水素原子または1価の有機基を示し、複数のR
8は各々独立に水素原子または1価の有機基を示し、互いが結合することで環構造となっていても良い。)
で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0057】
上記一般式(1)で示される化合物を(c)成分として用いることにより、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得た樹脂膜を220℃以下の低温下においても硬化させることが可能となり、得られる硬化膜は、耐薬品性(溶剤耐性)、フラックス耐性に優れたものとなる。
【0058】
上記一般式(1)で示される化合物として、より具体的には、例えば、以下の一般式(6):
【0059】
【化7】
(式(6)中、Zは炭素数1〜10の1価のアルキル基を表し、複数のRは各々独立に炭素数1〜20の1価のアルキル基を表す。)
で示される構造を有する化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物を、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物において、(c)成分の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅、および硬化膜物性の観点から、(a)成分(ベースポリマー)100重量部に対して1〜50重量部が好ましい、一方、硬化膜の薬品耐性、フラックス耐性の観点からは、20重量部以上とすることが特に好ましい。また、観光特性とのバランスの観点からは、(c)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して、20〜100重量部とすることが好ましく、25〜80重量部とすることがより好ましく、30〜50とすることがさらに好ましい。
【0061】
((d)成分:アルカリ水溶液に対する(a)成分の溶解を阻害する化合物)
本発明においては、さらに、(d)成分として、(a)成分であるベースポリマーのアルカリ水溶液に対する溶解を阻害する化合物である溶解阻害剤を含有する。
(d)成分として使用可能なものとしては、「(a)成分単独あるいは(b)、(c)の各成分とともに任意の溶剤に溶解して得られたワニスをシリコンウエハなどの基板上にスピン塗布して形成された塗膜」の溶解速度を低下させる効果が発現するものであれば、特に制限はない。そのような効果がより顕著に期待できる好ましいものとして、オニウム塩、ジアリール化合物及びテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0062】
上記オニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩のようなジアリールヨードニウム塩、ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩のようなジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリメチルスルホニウム塩のようなトリアルキルスルホニウム塩、ジメチルフェニルスルホニウム塩のようなジアルキルモノアリールスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩のようなジアリールモノアルキルヨードニウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、特に好ましいものはジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等である。
【0063】
上記ジアリール化合物としては、ジアリール尿素、ジアリールスルホン、ジアリールケトン、ジアリールエーテル、ジアリールプロパン、ジアリールヘキサフルオロプロパン等の2つのアリール基が結合基を介して結合したものが挙げられ、前記アリール基としては、フェニレン基が好ましい。
上記テトラアルキルアンモニウム塩としては、アルキル基がメチル基、エチル基等のテトラアルキルアンモニウムハライドが挙げられる。
【0064】
上記具体的な溶解阻害化合物の中でも、より良好な溶解阻害効果を示すものとしては、ジアリールヨードニウム塩、ジアリール尿素化合物、ジアリールスルホン化合物、テトラメチルアンモニウムハライド化合物等が挙げられ、ジアリール尿素化合物としてはジフェニル尿素、ジメチルジフェニル尿素等が挙げられ、テトラメチルアンモニウムハライド化合物としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド等が挙げられる。
【0065】
上述の溶解阻害化合物の中でも、下記一般式(2):
【0066】
【化8】
(式(2)中、X
−は対陰イオンを示し、R
7及びR
8は各々独立に1価の有機基を示し、a及びbは各々独立に0〜5の整数である)
で表されるジアリールヨードニウム塩が、好ましい。
上記陰イオンとしては、硝酸イオン、4フッ化ホウ素イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、チオシアン酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられる。
【0067】
上記ジアリールヨードニウム塩としては、具体的には、例えば、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等が使用できる。
【0068】
これらの中でも、ジフェニルヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート及びジフェニルヨードニウム−8−アニリノナフタレン−1−スルホナートが、効果が高く、好ましいものとして挙げられる。
【0069】
上記オニウム塩は、(b)成分のように、紫外線の照射を受けて酸を生じるものも含まれるが、かかる目的で用いる場合には、露光に用いる波長領域に対して吸収を持たないものを選択するのが肝要である。吸収を持つものは、(b)成分の光反応を阻害し感度低下を招く恐れがある。
【0070】
これら(d)成分の添加により、感光性樹脂組成物から硬化膜を得るときの残膜厚や現像時間を適正なものにコントロールすることができるため、他成分の添加量の許容量に幅を持たせ、より個々の成分の効果を際立たせることが出来る。
【0071】
(d)成分の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(a)成分(ベースポリマー)100重量部に対して0.01〜50重量部が好ましく、0.01〜30重量部がより好ましく、0.1〜20重量部がさらに好ましい。また(c)成分の配合量との兼ね合いからは、(c)成分を20重量部以上とした際には、(d)成分をさらに3重量部〜20重量部とすることが特に好ましい。
【0072】
(その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物には、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等の密着性付与剤を含むことができる。
【0073】
上記有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。
【0074】
上記アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0075】
上記密着性付与剤を用いる場合は、(a)成分(ベースポリマー)100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。
【0076】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させたりするために、適当な界面活性剤又はレベリング剤を添加することができる。
【0077】
上記界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R−08」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0078】
[パターン硬化膜の製造方法]
次に、本発明によるパターン硬化膜の製造方法について説明する。
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述した感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程、前記露光後の感光性樹脂膜を現像してパターン樹脂膜を得る現像工程、及び前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を有する。
以下、各工程について説明する。
【0079】
(感光性樹脂膜形成工程)
まず、この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO
2、SiO
2等)、窒化ケイ素などの支持基板を用意する。用意した支持基板上に、前記本発明の感光性樹脂組成物をスピンナーなどの塗布法を用いて塗布する。得られた塗膜をホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。これにより、感光性樹脂組成物の被膜である感光性樹脂膜が得られる。
【0080】
(露光工程)
次に、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、所定のパターンを有するマスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射することにより露光を行う。
【0081】
(現像工程)
現像工程では、活性光線による感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去する。露光部の除去によりパターン樹脂膜が得られる。
使用する現像液は、アルカリ性現像液であり、例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ケイ酸ナトリウム,アンモニア,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらのアルカリ水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。
上記アルカリ性現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、アルカリ性現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0082】
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像後得られたパターン樹脂膜を加熱処理することにより、耐熱性の高い樹脂からなるパターン硬化膜を形成することができる。
【0083】
上記加熱処理の温度は160〜400℃でよく、かかる低温度で、耐熱性の高い樹脂のパターン硬化膜が得られることは、本発明の特徴の一つである。この加熱温度範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができる。従って、本発明のパターン硬化膜の製造方法を用いることによって、デバイスが歩留り良く製造できる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。
【0084】
上記パターン樹脂膜を熱硬化させる時間は、上記温度範囲で、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。
【0085】
上記加熱処理は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等を用いて行う。加熱環境としては、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方がパターン樹脂膜の酸化を防ぐことができるので望ましい。
【0086】
本発明方法における加熱処理を行う加熱環境としては、上述のように、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置や周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらを用いることにより、パターン樹脂膜のみを効果的に加熱することが可能である。
【0087】
例えば、特許第2587148号明細書及び特許第3031434号明細書では、マイクロ波を用いたポリイミド前駆体の脱水閉環が検討されている。また米国特許第5738915号明細書では、マイクロ波を用いてポリイミド前駆体薄膜を脱水閉環する際に、周波数を短い周期で変化させて照射することにより、ポリイミド薄膜や基材のダメージを避ける方法が提案されている。
【0088】
周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射した場合は、定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。さらに基板として電子部品のように金属配線を含む場合は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると、金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。
【0089】
上記パターン樹脂膜を熱硬化させる際に照射するマイクロ波の周波数は0.5〜20GHzの範囲であるが、実用的には1〜10GHzの範囲が好ましく、さらに2〜9GHzの範囲がより好ましい。
【0090】
照射するマイクロ波の周波数は連続的に変化させることが望ましいが、実際は周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくく、その時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
【0091】
照射するマイクロ波の出力は装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10〜2000Wの範囲であり、実用上は100〜1000Wがより好ましく、100〜700Wがさらに好ましく、100〜500Wが最も好ましい。出力が10W以下では被加熱体を短時間で加熱することが難しく、2000W以上では急激な温度上昇が起こりやすいので好ましくない。
【0092】
上記パターン樹脂膜を熱硬化させる際に照射するマイクロ波はパルス状に入/切させることが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、ポリベンゾオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けることができる点で好ましい。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は条件によって異なるが、概ね10秒以下である。
【0093】
[半導体装置の製造工程]
次に、本発明のパターン硬化膜を有する半導体装置の製造方法の製造工程の一例を図面に基づいて説明する。
図1〜
図5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。
【0094】
図1〜
図5において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。前記半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜層4としてのポリイミド樹脂等の膜が形成される(第1の工程、
図1)。
【0095】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして前記層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、
図2)。この窓6Aに露出する層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられる。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、
図3)。
【0096】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程、
図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0097】
次に、表面保護膜8を形成する。
図1〜
図5の例では、この表面保護膜を次のようにして形成する。すなわち、前記本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜層8としての感光性樹脂のパターン硬化膜とする(第5の工程、
図5)。
この表面保護膜層(感光性樹脂のパターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
【0098】
[電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、上述した感光性樹脂組成物を用いて上記パターン硬化膜の製造方法によって形成されるパターン硬化膜を有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。
【0099】
また、上記パターン硬化膜は、具体的には、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、前記感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0101】
(合成例1) ポリベンゾオキサゾール前駆体((a)成分)の合成1
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g(60 mmol)、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した。その後、塩化チオニル23.9g(120 mmol)を滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸クロリドの溶液を得た。
【0102】
次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30g(50 mmol)を攪拌溶解した。その後、ピリジン9.48g(120 mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下し、30分間攪拌を続けた。
【0103】
攪拌した溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIを後述の測定条件によるGPC測定にかけ、得られた測定値をGPC法標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。得られた重量平均分子量は17,600、分散度は1.6であった。
なお、以下の合成例において得られたポリマーについても同様な測定を行い、重量平均分子量を求めている。
【0104】
(合成例2) ポリベンゾオキサゾール前駆体((a)成分)の合成2
合成例1でジフェニルエーテルジカルボン酸を用いず、セバシン酸に置き換えた。それ以外は合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は28,700、分散度は2.2であった。
【0105】
(合成例3) ポリベンゾオキサゾール前駆体((a)成分)の合成3
合成例1でジフェニルエーテルジカルボン酸を用いず、ドデカン酸に置き換えた。それ以外は合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は27,200、分散度は1.9であった。
【0106】
(合成例4) ポリイミド前駆体((a)成分)の合成1
攪拌機及び温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)10g(32 mmol)とイソプロピルアルコール3.87g(65 mmol)とをN−メチルピロリドン45gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加し、その後、60℃にて2時間加熱を行い、つづいて室温下(25℃)で15時間攪拌し、エステル化を行った。その後、氷冷下で塩化チオニルを7.61g(64 mmol)加え、室温に戻し2時間反応を行い、酸クロリドの溶液を得た。この溶液を酸クロ溶液Iと呼ぶ。
【0107】
次に、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン40gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.25g(28 mmol)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン7.62g(64 mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、先に調製した酸クロ溶液Iを30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。
【0108】
上記攪拌後の反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物を濾別して集め、減圧乾燥することによってカルボキシル基末端のポリアミド酸エステルを得た(以下、ポリマーIVとする)。ポリマーIVの重量平均分子量は19,400、分散度は2.2であった。
【0109】
(合成例5) ポリイミド前駆体((a)成分)の合成2
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン11.71g(32 mmol)と無水フタル酸0.59g(4 mmol)を添加し、攪拌溶解した。ここに、室温下(25℃)で、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物8.68g(28 mmol)を30分間で加え、12時間攪拌を続けた。
【0110】
上記攪拌後の反応液に対して、m−キシレンを20g加え、150℃で2時間加熱還流を行った。この際、イミド環の環化により生じた水は共沸により系外へと除きながら還流を行った。その後、室温まで冷却した後、この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物を濾別して集め、減圧乾燥することによってベンゼン環を末端に持つポリイミドを得た(以下、ポリマーVとする)。ポリマーVの重量平均分子量は21,500、分散度は1.9であった。
【0111】
(GPC法による重量平均分子量の測定条件)
測定装置;検出器 株式会社日立製作所社製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所社製L6000
株式会社島津製作所社製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/L)、H
3PO
4(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min、検出器:UV270nm
ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。
【0112】
(実施例1〜10及び比較例1〜3)
前記(a)成分である各ポリマー100重量部に対し、それぞれ(b)、(c)、(d)成分を溶剤とともに(表1)に示した所定量にて配合し、各例の感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0113】
【表1】
【0114】
(表1)中、溶剤欄の「BLO」はγ−ブチロラクトンを表し、「PGMEA」はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表し、「NMP」はN−メチルピロリドンを表し、「BLO/PGMEA」は両者を重量比9:1で混合して用いたことを表す。また、(b)(c)(d)成分の各欄における()内の数はポリマー100重量部に対する添加量(重量部)を示す。溶剤の使用量は、いずれもポリマー100重量部に対し250重量部になる。
【0115】
また、(表1)中、(b)成分欄の「B1」、「B2」、(c)成分欄の「C1」、「C2」、「C3」、「C4」(d)成分欄の「D1」、「D2」、「D3」は、それぞれ下記の化学式に示す化合物である。
【0116】
【化9】
【0117】
【化10】
【0118】
【化11】
【0119】
上記(表1)に示した配合の各溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚が7〜12μmの塗膜を形成し、得られた塗膜に、超高圧水銀灯を用いて、干渉フィルターを介して、100〜1000mJ/cm
2のi線を所定のパターンに照射して、露光を行った。
【0120】
上記露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜を得た。
【0121】
それぞれのパターン樹脂膜形成において、残膜率(現像前後の膜厚の比)80%以上が得られるパターン形成に必要な最小露光量(感度)と解像度を求めた。その結果を下記(表2)にまとめて示した。
【0122】
【表2】
【0123】
次に、各樹脂組成物を用いて硬化膜を作成し、膜の機械的強度を評価した。
まず、前記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。
【0124】
その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、100℃で60分加熱した後、さらに320℃で1時間加熱して硬化膜を得た。この硬化膜をシリコン基板ごとフッ酸水溶液に浸漬し、基板から硬化膜を剥離し、水洗、乾燥した後、破断伸び(引っ張り試験機で測定)を測定した。これらの結果を下記(表3)に示した。
【0125】
【表3】
上記(表3)に見るように、実施例で示したものはいずれも実用上問題ない機械特性を有すると分かった。一方、(c)成分を用いなかった比較例2では、破断伸びが低かった。また、(c)成分としてウレア結合を持たない化合物(C4)を用いた比較例3の破断伸びはさらに低かった。
【0126】
さらに、破断伸びの測定の場合と同様に所定の温度(100℃で60分加熱した後、さらに320℃で1時間加熱)で硬化した膜を、各溶剤に浸漬した際のクラックの有無に加え、膜の膨潤の有無も調べた。
【0127】
結果を下記(表4)に示した。評価基準は、クラック有りを×、クラックなしを○として、表中に記した。膨潤評価については、程度に応じて、溶剤浸漬前後で1μm未満の膜厚の上昇であれば○、1μm以上1.5μm未満の膜厚の上昇を△、1.5μm以上の膜厚の上昇を×とした。膜厚変化の小さいほうがより良好である。
【0128】
【表4】
(表4)に見るように、比較例2、3は(c)成分としてウレア結合を持つ化合物を添加していないため、耐溶剤性が実施例に比べ著しく悪くなっていることが確認できる。