特許第5652202号(P5652202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5652202ラテラルフッ素を有する3環液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652202
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】ラテラルフッ素を有する3環液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/23 20060101AFI20141218BHJP
   C07C 43/21 20060101ALI20141218BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20141218BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20141218BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   C07C43/23 ECSP
   C07C43/21
   C07C43/225 Z
   C09K19/30
   C09K19/12
   C09K19/20
   C09K19/34
   C09K19/18
   C09K19/16
   C09K19/42
   C09K19/14
   G02F1/13 500
   C09K19/32
【請求項の数】21
【全頁数】112
(21)【出願番号】特願2010-507206(P2010-507206)
(86)(22)【出願日】2009年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2009055920
(87)【国際公開番号】WO2009125668
(87)【国際公開日】20091015
【審査請求日】2011年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2008-101474(P2008-101474)
(32)【優先日】2008年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅秀
【審査官】 吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0063814(US,A1)
【文献】 特開平02−004725(JP,A)
【文献】 特表平02−503568(JP,A)
【文献】 特開2001−072977(JP,A)
【文献】 特開2000−336364(JP,A)
【文献】 特表平02−502914(JP,A)
【文献】 J. Mater. Chem.,2003年,Vol.13, No.4,pp.742-748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(a−1)で表される液晶性化合物。

式中、R1およびR2は独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aは、トランス−1,4−シクロへキシレン1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり;
、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり、これらのうち少なくとも3つはフッ素であり;
環Aがトランス−1,4−シクロへキシレンテトラヒドロピラン−2,5−ジイルピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであるとき、Zは、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−であり;
環Aが1,4−フェニレンであるとき、Zは、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【請求項2】
式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、トランス−1,4−シクロへキシレンテトラヒドロピラン−2,5−ジイルピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり;
が、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−または−OCH2−である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、1,4−フェニレンであり;
が、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、トランス−1,4−シクロへキシレンテトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり;
が、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、トランス−1,4−シクロへキシレンまたはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
が、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−CH2O−、または−OCH2−である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aがトランス−1,4−シクロへキシレンである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式(a−2)表される請求項2に記載の化合物。

式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり、これらのうち少なくとも3つはフッ素であり;
は、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【請求項8】
式(a−4)〜(a−13)のいずれか1つで表される請求項1に記載の化合物。

式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は、−(CH22−、−CH=CH−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【請求項9】
式(a−4)〜(a−13)において、Zが−CH=CH−である請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式(a−4)〜(a−13)において、Zが−CH2O−である請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
式(a−4)〜(a−13)において、Zが−OCH2−である請求項8に記載の化合物。
【請求項12】
式(a−4)〜(a−13)において、Zが−(CH22−である請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(a−1)、または請求項7に記載の式(a−2)表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第一成分、および式(e−1)〜(e−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第二成分を含有し、そして誘電率異方性が負である液晶組成物。

式中、Ra11、およびRb11は独立して、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて、相隣接しない任意の−CH2−は−O−で置き換えられていてもよく、相隣接しない任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく;
環A11、環A12、環A13、および環A14は独立して、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、または−CH2O−である。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の式(a−4)〜(a−13)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第一成分、および請求項13に記載の式(e−1)〜(e−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第二成分を含有し、そして誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項15】
液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5〜60重量%の範囲であり、第二成分の含有割合が40〜95重量%の範囲である請求項13または14に記載の液晶組成物。
【請求項16】
第一成分および第二成分に加えて、式(g−1)〜(g−6)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第三成分を含有する請求項13または14に記載の液晶組成物。

式中、Ra21およびRb21は独立して、水素または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて、相隣接しない任意の−CH2−は−O−で置き換えられていてもよく、相隣接しない任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく;
環A21、環A22、および環A23は独立して、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
21、Z22、およびZ23は独立して、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCF2−、−CF2O−、−OCF2CH2CH2−、−CH2CH2CF2O−、−COO−、−OCO−、−OCH2−、または−CH2O−であり;
1、Y2、Y3、およびY4は独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、およびsは独立して、0、1、または2であり、q+rは1または2であり、q+r+sは1、2、または3であり;
tは0、1、または2である。
【請求項17】
第三成分が、式(h−1)〜(h−7)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項16に記載の液晶組成物。

式中、Ra22およびRb22は独立して、炭素数1〜8の直鎖アルキル、炭素数2〜8の直鎖アルケニル、または炭素数1〜7の直鎖アルコキシであり;
24、Z25およびZ26は独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−または−OCH2−であり;
1およびY2は、いずれもフッ素であるか、または一方がフッ素で他方が塩素である。
【請求項18】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の式(a−4)〜(a−13)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第一成分、請求項13に記載の式(e−1)〜(e−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第二成分、および請求項17に記載の式(h−1)〜(h−7)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物からなる第三成分を含有し、そして誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項19】
液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5〜60重量%の範囲であり、第二成分の含有割合が20〜75重量%の範囲であり、第三成分の含有割合が20〜75重量%の範囲である請求項16〜18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【請求項21】
上記液晶表示素子の動作モードが、VAモードまたはIPSモードであり、上記液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項20に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。詳しくは液晶性化合物であるラテラル位にフッ素を有するフルオロベンゼン誘導体、この化合物を含有したネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、液晶表示モジュール等に代表される液晶表示素子は、液晶性化合物(本発明では、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称を意味する。)が有する光学異方性、誘電率異方性などを利用したものであるが、この液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モードなどの様々なモードが知られている。
【0003】
これら動作モードの中でもECBモード、IPSモード、VAモードなどは、液晶分子の垂直配向性を利用した動作モードであり、特にIPSモードおよびVAモードは、TNモード、STNモード等の従来の表示モードの欠点である視野角の狭さを改善可能であることが知られている。
【0004】
そして、従来からこれら動作モードの液晶表示素子に使用可能な、負の誘電率異方性を有する液晶組成物の成分として、ベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられた液晶性化合物が数多く検討されてきている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0005】
例えばベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられた化合物(A)および(B)が記載されている(特許文献1および2参照)。しかし、これらの化合物は負に大きな誘電率異方性を示さない。
【0006】
また、ラテラル位にフッ素を有するターフェニル化合物(C)が記載されている(特許文献3参照)。しかし、この化合物は融点が高く、相溶性に乏しい。
【0007】
また、エステル結合基とラテラル位フッ素を持つ化合物(D)が記載されている(特許文献4参照)。しかし、化合物(D)は高い負の誘電率異方性を示さない。
【0008】
【0009】
【特許文献1】特表平02−503441号公報
【特許文献2】国際公開第89/02425号パンフレット
【特許文献3】特開平11−116512号公報
【特許文献4】国際公開第89/06678号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、IPSモードおよびVAモード等の動作モードの液晶表示素子であっても、CRTと比較すれば表示素子としてはいまだ問題があり、例えば、応答速度の向上、コントラストの向上、駆動電圧の低下が望まれている。
【0011】
上述したIPSモード、あるいはVAモードで動作する表示素子は、主として、負の誘電率異方性を有する液晶組成物から構成されているが、これらの特性等をさらに向上させるためには、この液晶組成物に含まれる液晶性化合物が、以下(1)〜(8)で示す特性を有することが必要である。すなわち、
(1)化学的に安定であること、および物理的に安定であること、
(2)高い透明点(液晶相−等方相の転移温度)を有すること、
(3)液晶相(ネマチック相、スメクチック相等)の下限温度、特にネマチック相の下限温度が低いこと、
(4)粘度が小さいこと、
(5)適切な光学異方性を有すること、
(6)適切な負の誘電率異方性を有すること、
(7)適切な弾性定数K33(K33:ベンド弾性定数)を有すること、および
(8)他の液晶性化合物との相溶性に優れること、
である。
【0012】
(1)のように化学的、物理的に安定な液晶性化合物を含む組成物を液晶表示素子に用いると、電圧保持率を大きくすることができる。
(2)および(3)のように、高い透明点、または液晶相の低い下限温度を有する液晶性化合物を含む組成物では、ネマチック相の温度範囲が広いので、素子は幅広い温度領域で使用することが可能となる。
【0013】
さらに、(4)のように粘度の小さい化合物、および(7)のように大きな弾性定数K33を有する化合物を含む組成物を表示素子として用いると応答速度を向上することができ、(5)のように適切な光学異方性を有する化合物を含む組成物を用いた表示素子の場合は、素子のコントラストの向上を図ることができる。素子の設計次第では、光学異方性は小さいものから大きなものまで必要である。最近ではセル厚を薄くすることにより応答速度を改善する手法が検討されており、それに伴い、大きな光学異方性を有する液晶組成物も必要となっている。
【0014】
加えて、液晶性化合物が負に大きな誘電率異方性を有する場合には、この化合物を含む液晶組成物のしきい値電圧を低くすることができるので、(6)のように適切な負の誘電率異方性を有する化合物を含む組成物を用いた表示素子の場合には、表示素子の駆動電圧を低くし、消費電力も小さくすることができる。さらに(7)のように小さな弾性定数K33を有する化合物を含む組成物を表示素子として用いることで表示素子の駆動電圧を小さくすることができ、消費電力も小さくすることができる。
【0015】
液晶性化合物は、単一の化合物では発揮することが困難な特性を発現させるために、他の多くの液晶性化合物と混合して調製した組成物として用いることが一般的である。したがって、表示素子に用いる液晶性化合物は、(8)のように、他の液晶性化合物等との相溶性が良好であることが好ましい。また、表示素子は、氷点下を含め幅広い温度領域で使用することもあるので、低い温度領域から良好な相溶性を示す化合物であることが好ましい場合もある。
【0016】
本発明の第一の目的は、熱、光などに対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有し、さらに、適切な負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。
【0017】
本発明の第二の目的は、熱、光などに対する安定性を有し、粘度が低く、大きな光学異方性、および適切な負の誘電率異方性を有し、適切な弾性定数K33を有し、しきい値電圧が低く、さらに、この化合物を含有して、ネマチック相の上限温度(ネマチック相−等方相の相転移温度)が高く、ネマチック相の下限温度が低い液晶組成物を提供することである。
【0018】
本発明の第三の目的は、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、大きなコントラストを有し、広い温度範囲で使用可能である、上記組成物を含有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らはこれらの課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられたフェニレンを有する特定構造の中において、ラテラル位にフッ素を有する3環液晶性化合物が、熱、光などに対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有し、さらに、適切な負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有していること、また、この化合物を含有する液晶組成物が、熱、光などに対する安定性を有し、粘度が小さく、大きな光学異方性、適切な弾性定数K33、および適切な負の誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低いこと、さらに、この組成物を含有する液晶表示素子が、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能であることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0020】
すなわち、本発明は、以下〔1〕〜〔16〕に記載された事項などを有している。
〔1〕:式(a−1)で表される液晶性化合物。
【0021】
式中、R1およびR2は独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aは、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり;
、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり、これらのうち少なくとも3つはフッ素であり;
環Aがトランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであるとき、Zは、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−であり、環Aが1,4−フェニレンであるとき、Zは、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【0022】
〔2〕:式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり;
が、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である項〔1〕に記載の化合物。
【0023】
〔3〕:式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、1,4−フェニレンであり;
が、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である項〔1〕に記載の化合物。
【0024】
〔4〕:式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり;
が、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である項〔2〕に記載の化合物。
【0025】
〔5〕:式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aが、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
が、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−CH2O−、または−OCH2−である項〔4〕に記載の化合物。
【0026】
〔6〕:式(a−1)において、R1およびR2が独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aがトランス−1,4−シクロへキシレンである項〔1〕に記載の化合物。
【0027】
〔7〕: 式(a−2)または(a−3)で表される項〔2〕に記載の化合物。

式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり、これらのうち少なくとも3つはフッ素であり;
は、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【0028】
〔8〕:式(a−4)〜(a−13)のいずれか1つで表される項〔1〕に記載の化合物。
【0029】
式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は、−(CH22−、−CH=CH−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【0030】
〔9〕:式(a−4)〜(a−13)において、Zが−CH=CH−である項〔7〕に記載の化合物。
【0031】
〔10〕:式(a−4)〜(a−13)において、Zが−CH2O−である項〔7〕に記載の化合物。
【0032】
〔11〕:式(a−4)〜(a−13)において、Zが−OCH2−である項〔7〕に記載の化合物。
【0033】
〔12〕:式(a−4)〜(a−13)において、Zが−(CH22−である項〔7〕に記載の化合物
【0034】
〔13〕:項〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の式(a−1)、または項〔7〕に記載の式(a−2)または(a−3)で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物である第一成分と、式(e−1)〜(e−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する誘電率異方性が負である液晶組成物。
【0035】
【0036】
式中、Ra11、およびRb11は独立して、炭素数1〜10のアルキルであるが、このアルキル中において、相隣接しない−CH2−は−O−で置き換えられていてもよく、相隣接しない−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、水素はフッ素で置き換えられていてもよく;
環A11、環A12、環A13、および環A14は、独立して、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は、独立して、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、または−CH2O−である。
【0037】
〔14〕:項〔8〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の式(a−4)〜(а−13)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第一成分、および項〔13〕に記載の式(e−1)〜(e−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する誘電率異方性が負である液晶組成物。
【0038】
〔15〕:液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5〜60重量%の範囲であり、第二成分の含有割合が40〜95重量%の範囲である、項〔13〕または〔14〕に記載の液晶組成物。
【0039】
〔16〕:第一成分、および第二成分に加えて、式(g−1)〜(g−6)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第三成分を含有する項〔13〕または〔14〕に記載の液晶組成物。
【0040】
式中、Ra21およびRb21は独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中において、相隣接しない−CH2−は−O−で置き換えられていてもよく、相隣接しない−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、水素はフッ素で置き換えられていてもよく;
環A21、環A22、および環A23は独立して、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
21、Z22、およびZ23は独立して、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCF2−、−CF2O−、−OCF2CH2CH2−、−CH2CH2CF2O−、−COO−、−OCO−、−OCH2−、または−CH2O−であり;
1、Y2、Y3、およびY4は独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、およびsは、独立して0、1、または2であり、q+rは1または2であり、q+r+sは1、2、または3であり;
tは0、1、または2である。
【0041】
〔17〕:第三成分が、式(h−1)〜(h−7)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である項〔16〕に記載の液晶組成物。
【0042】
【0043】
式中、Ra22およびRb22は独立して、炭素数1〜8の直鎖アルキル、炭素数2〜8の直鎖アルケニル、または炭素数1〜7の直鎖アルコキシであり;
24、Z25およびZ26は独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、または−OCH2−であり;
1およびY2は、共にフッ素、または一方がフッ素で他方が塩素である。
【0044】
〔18〕:項〔8〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の式(a−4)〜(a−13)で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物である第一成分、請求項13に記載の式(e−1)〜(e−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分、および項〔17〕に記載の式(h−1)〜(h−7)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第三成分を含有し、そして誘電率異方性が負である液晶組成物。
【0045】
〔19〕:液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5〜60重量%の範囲であり、第二成分の含有割合が20〜75重量%の範囲であり、第三成分の含有割合が20〜75重量%の範囲である、項〔16〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0046】
〔20〕:項〔13〕〜〔19〕のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
〔21〕:液晶表示素子の動作モードが、VAモードまたはIPSモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、項〔20〕に記載の液晶表示素子。
【発明の効果】
【0047】
本発明の液晶性化合物は、熱、光などに対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33(K33:ベンド弾性定数)を有し、さらに、適切な負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有している。また、本発明の液晶性化合物は、ネマチック相の上限温度が低下せず、しかも、粘度が大きくなることなく、光学異方性が大きくなる傾向にある点で特に優れている。
【0048】
また、本発明の液晶組成物は、粘度が小さく、大きな光学異方性、適切な弾性定数K33、および適切な負の誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い。特に、本発明の液晶組成物は大きな光学異方性を有するため、大きな光学異方性が必要な素子に有効である。
【0049】
さらに、本発明の液晶表示素子はこの液晶組成物を含有することを特徴とし、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能であり、PCモード、TNモード、STNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、VAモードなどの表示モードの液晶表示素子に好適に使用することができ、特に、IPSモード、VAモードの液晶表示素子に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、以下説明中では、特に断りのない限り、百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)を意味する。
〔液晶性化合物(a)〕
本発明の液晶性化合物は、式(a−1)で示される構造を有する(以下、これら化合物を「化合物(a−1)」ともいう。)。
【0051】
【0052】
式(a−1)において、R1およびR2は独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【0053】
環Aは、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルである。
【0054】
、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり、これらのうち少なくとも3つはフッ素であり、環Aがトランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルであるとき、Zは、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−であり、環Aが1,4−フェニレンであるとき、Zは、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【0055】
化合物(a−1)は、上述のように、2位または3位の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンと、2位および3位の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンとを有する。このような構造を有することで、小さな粘度、適切な光学異方性、適切な弾性定数K33、高い負の誘電率異方性、および他の化合物との優れた相溶性を示す。特に、ネマチック相の上限温度が低下せず、しかも、粘度が大きくなることなく、負の誘電率異方性が大きい点で特に優れている。
【0056】
式中、RおよびRは、水素、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり、例えば、CH3(CH23−、−CH2−、CH3(CH22O−、CH3−O−(CH22−、CH3−O−CH2−O−、H2C=CH−(CH22−、CH3−CH=CH−CH2−、またはCH3−CH=CH−O−などである。
【0057】
しかし、化合物の安定性を考慮すると、CH3−O−O−CH2−などの酸素と酸素とが隣接した基やCH3−CH=CH−CH=CH−などの二重結合部位が隣接した基は好ましくない。
【0058】
およびRとしては、より具体的には、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルおよびアルケニルオキシが挙げられる。
【0059】
これら基中の炭素−炭素結合の鎖は、直鎖であることが好ましい。炭素−炭素結合の鎖が、直鎖であると、液晶相の温度範囲を広くすることができ、粘度を小さくすることができる。また、RおよびRのいずれかが光学活性基である場合には、キラルドーパントとして有用であり、該化合物を液晶組成物に添加することにより、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。
【0060】
これらRおよびRは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびアルケニルが好ましく、アルキル、アルコキシ、およびアルケニルがさらに好ましい。
【0061】
およびRが、アルキル、アルコキシ、およびアルケニルである場合には、化合物の液晶相の温度範囲を広げることができる。
アルケニルには、アルケニル中の二重結合の位置に依存して、−CH=CH−の好ましい立体配置がある。
【0062】
−CH=CHCH3、−CH=CHC25、−CH=CHC37、−CH=CHC49、−C24CH=CHCH3、−C24CH=CHC25などのように奇数位に二重結合を有するアルケニルでは、立体配置はトランス配置が好ましい。
【0063】
一方、−CH2CH=CHCH3、−CH2CH=CHC25、−CH2CH=CHC37などのように偶数位に二重結合を有するアルケニルでは、立体配置はシス配置が好ましい。上述のような好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、液晶相の温度範囲が広く、大きな弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)を有し、化合物の粘度を小さくすることができ、さらに、この化合物を液晶組成物に添加すると、ネマチック相の上限温度(TNI)を高くすることができる。
【0064】
アルキルの具体例としては、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−C715、−C817、−C919、および−C1021を挙げることができ;
アルコキシの具体例としては、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−OC613、−OC715、−OC817、および−OC919を挙げることができ;
アルコキシアルキルの具体例としては、−CH2OCH3、−CH2OC25、−CH2OC37、−(CH22OCH3、−(CH22OC25、−(CH22OC37、−(CH23OCH3、−(CH24OCH3、および−(CH25OCH3を挙げることができ;
アルケニルの具体例としては、−CH=CH2、−CH=CHCH3、−CH2CH=CH2、−CH=CHC25、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH=CHC37、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3、および−(CH23CH=CH2を挙げることができ;
アルケニルオキシの具体例としては、−OCH2CH=CH2、−OCH2CH=CHCH3、および−OCH2CH=CHC25を挙げることができる。
【0065】
よって、RおよびRの具体例の中でも、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−CH2OCH3、−(CH22OCH3、−(CH23OCH3、−CH2CH=CH2、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3、−(CH23CH=CH2、−(CH23CH=CHCH3、−(CH23CH=CHC25、−(CH23CH=CHC37、−OCH2CH=CH2、−OCH2CH=CHCH3、−OCH2CH=CHC25が好ましく、−CH3、−C25、−C37、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49、−(CH22CH=CH2、−(CH22CH=CHCH3、および−(CH22CH=CHC37がより好ましい。
【0066】
環Aは、トランス−1,4−シクロへキシレン、シクロヘキセン−1,4−ジイル、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、トランス−テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルであり、これらの環において水素はフッ素で置き換えられていてもよい。
【0067】
環A1は、1,4−フェニレン、トランス−1,4−シクロヘキシレン、シクロヘキセン−1,4−ジイル、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、トランス−テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルが好ましい。
【0068】
これら環の中でも、1,4−フェニレン、トランス−1,4−シクロへキシレン、トランス−テトラヒドロピラン−2,5−ジイルがより好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレンが最も好ましい。
【0069】
中でも、これら環のうち少なくとも一つの環が、トランス−1,4−シクロヘキシレンであるときには、粘度を小さくすることができ、さらに、この化合物を組成物に添加すると、ネマチック相の上限温度(TNI)を高くすることができる。
【0070】
、L、LおよびLは、独立して水素またはフッ素であり、これらのうち少なくとも3つはフッ素である。
【0071】
およびLまたはLおよびLのうち、一方が水素で他方がフッ素であることが化合物の融点を下げることができるため好ましい。さらに、LおよびLまたはLおよびLのうち、すべてがフッ素であることが化合物の誘電率異方性を大きくすることができるためより好ましい。
【0072】
は、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【0073】
が、単結合、−(CH22−、または−CH=CH−である場合は、化合物の粘度を小さくすることができるため好ましい。
化合物の安定性を考慮すると、単結合、−(CH22−、および−CH=CH−が好ましく、単結合および−(CH22−がさらに好ましい。
【0074】
が−CH=CH−の場合には、二重結合に対する他の基の立体配置は、トランス配置が好ましい。このような立体配置であることにより、この化合物の液晶相の温度範囲を広げることができ、さらに、この化合物を組成物に添加すると、ネマチック相の上限温度(TNI)を高くすることができる。
【0075】
また、Z中に−CH=CH−が含まれている場合には、液晶相の温度範囲を広げること、弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)を大きくすること、および化合物の粘度を小さくすることができ、さらに、この化合物を組成物に添加したときにはネマチック相の上限温度(TNI)を高くすることができる。
【0076】
なお、化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(a)は2H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
これら化合物(a)では、R、R、環AおよびZを適宜選択することにより、誘電率異方性などの物性を所望の物性に調整することが可能である。
【0077】
化合物(a−1)の好ましい化合物は化合物(a−4)〜(a−13)である。
【0078】
化合物(a−4)〜(a−13)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり、Zは、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、または−OCH2−である。
【0079】
化合物(a−4)〜(a−13)は、大きな負の誘電率異方性を有し、熱や光に対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、適切な光学異方性および適切な弾性定数K33を有する。このうち、Zが−CH=CH−である化合物は、液晶相の下限温度をより低く、ネマチック相の上限温度をほとんど下げることなく、粘度をより小さくできるという観点で好ましい。また、Zが−(CH22−である化合物は、液晶相の下限温度をより低く、相溶性をより高く、粘度をより小さくできるという観点でより好ましい。さらに、Zが−CH2O−または−OCH2−である化合物は負の誘電率異方性をより高く、粘度をより小さくできるという観点で最も好ましい。
【0080】
液晶性化合物がこれら化合物(a−4)〜(a−13)で示される構造を有する場合には、大きな負の誘電率異方性を有し、他の化合物との相溶性が極めてよい。さらに、熱、光などに対する安定性を有し、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有している。また、この化合物(a−1)を含有する液晶組成物は、液晶表示素子が通常使用される条件下で安定であり、低い温度で保管してもこの化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。
【0081】
したがって、化合物(a−1)は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの表示モードの液晶表示素子に用いる液晶組成物に好適に適用することができ、IPS、VAなどの表示モードの液晶表示素子に用いる液晶組成物に、特に好適に適用することができる。
【0082】
〔化合物(a−1)の合成〕
化合物(a−1)は、有機合成化学の合成手法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物に目的の末端基、環、および結合基を導入する方法は、例えば、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0083】
<結合基Zの形成>
結合基Zを形成する方法の一例を示す。結合基を形成するスキームを以下示す。このスキームにおいて、MSG1またはMSG2は1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG1(またはMSG2)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1E)は化合物(a−1)に相当する。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
<2重結合の生成>
一価の有機基MSG2を有する有機ハロゲン化合物(a1)とマグネシウムとを反応させ、グリニャール試薬を調製する。これら調製したグリニャール試薬あるいはリチウム塩と、アルデヒド誘導体(a2)とを反応させることにより、対応するアルコール誘導体を合成する。ついで、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒を用いて、得られたアルコール誘導体の脱水反応を行うことにより、対応する化合物(1A)を合成することができる。
【0089】
有機ハロゲン化合物(a1)を、ブチルリチウム、もしくはマグネシウムで処理して得られた化合物を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させて、アルデヒド誘導体(a3)を得る。ついで、得られたアルデヒド(a3)と、ホスホニウム塩(a4)をカリウムt−ブトキシド等の塩基で処理して得られるリンイリドとを反応させ、対応する2重結合を有する化合物(1A)を合成することができる。なお、この反応では、反応条件によってシス体が生成する場合もあるので、トランス体を得る必要がある場合には、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0090】
<−(CH22−の生成>
化合物(1A)を炭素担持パラジウム(Pd/C)のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1B)を合成することができる。
【0091】
<単結合の生成>
有機ハロゲン化合物(a1)とマグネシウム、またはブチルリチウムとを反応させ、グリニャール試薬、またはリチウム塩を調製する。この調製したグリニャール試薬、またはリチウム塩とホウ酸トリメチルなどのホウ酸エステルを反応させ、塩酸などの酸で加水分解することによりジヒドロキシボラン誘導体(a5)を合成する。そのジヒドロキシボラン誘導体(a5)と有機ハロゲン化合物(a6)とを、例えば、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh34)とからなる触媒の存在下で反応させることにより、化合物(1C)を合成することができる。
【0092】
また、一価の有機基MSG1を有する有機ハロゲン化合物(a6)にブチルリチウムを反応させ、さらに塩化亜鉛を反応させた後、得られた化合物を、例えば、ビストリフェニルホスフィンジクロロパラジウム(Pd(PPh32Cl2)触媒の存在下で化合物(a1)と反応させることにより、化合物(1C)を合成することもできる。
【0093】
<−CH2O−または−OCH2−の生成>
ジヒドロキシボラン誘導体(a5)を過酸化水素等の酸化剤により酸化し、アルコール誘導体(a7)を得る。別途、アルデヒド誘導体(a3)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元してアルコール誘導体(a8)を得る。得られたアルコール誘導体(a8)を臭化水素酸等でハロゲン化して有機ハロゲン化合物(a9)を得る。このようにして得られたアルコール誘導体(a8)と有機ハロゲン化合物(a9)とを炭酸カリウムなどの存在下反応させることにより化合物(1D)を合成することができる。
【0094】
<−C≡C−の生成>
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(a6)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(a10)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(a10)を化合物(a1)と反応させて、化合物(1E)を合成する。
【0095】
<環Aの形成>
トランス−1,4−シクロへキシレン、シクロヘキセン−1,4−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0096】
〔化合物(a−1)の合成方法〕
以下、化合物(a−1)の合成例を示す。
【0097】
【0098】
まず、4−ヨード安息香酸エチル(b1)とジヒドロキシボラン誘導体(b2)とを炭酸カリウム、Pd/C等の触媒の存在下、反応させることにより化合物(b3)を得る。次いで、化合物(b3)を水素化リチウムアルミニウム等で還元して化合物(b4)を得る。ついで塩化チオニル等で塩素化することにより(b5)を得る。上述の操作で得られた化合物(b5)とフェノール誘導体(b6)とを炭酸カリウム等の塩基の存在下、エーテル化反応させることにより、化合物(a−1)の一例である(b7)を合成することができる。
【0099】
〔液晶組成物〕
以下、本発明の液晶組成物について説明をする。この液晶組成物の成分は、少なくとも一つの化合物(a−1)を含むことを特徴とするが、化合物(a−1)を2つ以上含んでいてもよく、化合物(a−1)のみから構成されていてもよい。また液晶組成物を調製するときには、例えば、化合物(a−1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することもできる。成分を選択した液晶組成物は、粘度が低く、適切な負の誘電率異方性を有し、適切な弾性定数K33を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度(ネマチック相−等方相の相転移温度)が高く、ネマチック相の下限温度が低い。
【0100】
〔液晶組成物(1)〕
本発明の液晶組成物は化合物(a−1)に加え、第二成分として式(e−1)〜(e−3)で表される液晶性化合物(以下、それぞれ化合物(e−1)〜(e−3)ともいう。)の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する組成物が好ましい(以下、液晶組成物(1)ともいう。)。
【0101】
【0102】
式(e−1)〜(e−3)中、Ra11およびRb11は、独立して、炭素数1〜10のアルキルであるが、アルキルにおいて、相隣接しない−CH2−は−O−で置き換えられていてもよく、相隣接しない−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、水素はフッ素で置き換えられていてもよい。
【0103】
式(e−1)〜(e−3)中、環A11、環A12、環A13、および環A14は、独立して、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0104】
式(e−1)〜(e−3)中、Z11、Z12、およびZ13は、独立して、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、またはCH2O−である。
【0105】
化合物(a−1)に、第二成分を含有させることにより、その液晶組成物の粘度を小さくすることができ、ネマチック相の下限温度を低くすることができる。また、化合物(e−1)〜(e−3)の誘電率異方性はほぼ0であるため、それを含む液晶組成物の誘電率異方性を0に近づくように調整することができる。
【0106】
化合物(e−1)または(e−2)は、それを含有する液晶組成物の粘度を小さく、電圧保持率を高くすることに有効な化合物である。さらに、化合物(e−3)は、それを含有する液晶組成物のネマチック相の上限温度を高くし、電圧保持率を高くすることに有効な化合物である。
【0107】
環A11、環A12、環A13、および環A14において、2つ以上の環がトランス−1,4−シクロヘキシレンの場合は、それを含有する液晶組成物のネマチック相の上限温度を高くすることができ、2つ以上の環が1,4−フェニレンの場合は、それを含有する組成物の光学異方性を大きくすることができる。
【0108】
第二成分の中でもより好ましい化合物は、式(2−1)〜(2−74)で示される化合物である(以下、それぞれ化合物(2−1)〜(2−74)ともいう。)。これらの化合物においてRa11およびRb11は、化合物(e−1)〜(e−3)の場合と同一の意味である。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
第二成分が化合物(2−1)〜(2―74)である場合には、耐熱性、および耐光性に優れ、より高い比抵抗を有し、ネマチック相の広い液晶組成物を調製することができる。
【0114】
特に、第一成分が、化合物(a−4)〜(a−13)から選択される少なくとも1つの化合物であり、第二成分が化合物(e−1)〜(e−3)から選択される少なくとも1つの化合物である液晶組成物(1)は、耐熱性、および耐光性により優れ、より幅広いネマチック相を有し、より電圧保持率が大きく、より粘度が小さく、そして、適切な弾性定数K33を示す。
【0115】
液晶組成物(1)中の第二成分の含有量は特に制限はないが、粘度を低くする観点からは含有量を多くすることが好ましい。ただし第二成分の含有量を多くすると液晶組成物のしきい値電圧が高くなる傾向にあるので、例えば、本発明の液晶組成物をVAモードの液晶素子に使用する場合には、第二成分の含有量は、液晶組成物(1)中に含まれる液晶性化合物の全重量に対して、45〜95重量%の範囲であり、第一成分の含有量は、液晶組成物(1)中に含まれる液晶性化合物の全重量に対して、5〜60重量%の範囲がより好ましい。
【0116】
〔液晶組成物(2)〕
本発明の液晶組成物は、第一成分および第二成分に加えてさらに、第三成分として式(g−1)〜(g−4)で表される液晶性化合物(以下、それぞれ化合物(g−1)〜(g−4)ともいう。)の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有させた液晶組成物も好ましい(以下、液晶組成物(2)ともいう。)。
【0117】
【0118】
式(g−1)〜(g−6)中、Ra21およびRb21は、独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであるが、アルキルにおいて、相隣接しない−CH2−は−O−で置き換えられていてもよく、相隣接しない−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、水素はフッ素で置き換えられていてもよい。
【0119】
式(g−1)〜(g−6)中、環A21、A22、およびA23は、独立して、トランス−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0120】
式(g−1)〜(g−6)中、Z21、Z22、およびZ23は、独立して、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCF2−、−CF2O−、−OCF2CH2CH2−、−CH2CH2CF2O−、−COO−、−OCO−、−OCH2−、または−CH2O−であり、Y1、Y2、Y3、およびY4は、独立して、フッ素または塩素である。
【0121】
式(g−1)〜(g−6)中、q、r、およびsは、独立して0、1、または2であるが、q+rは1または2でありq+r+sは1、2、または3であり、tは0、1、または2である。
第三成分をさらに含有する液晶組成物(2)は誘電率異方性が負に大きい。
【0122】
また、液晶組成物のネマチック相の温度範囲が広く、粘度が小さく、誘電率異方性が負に大きく、比抵抗が大きな液晶組成物が得られ、さらにこれら物性が適切にバランスした液晶組成物が得られる。
【0123】
また、第三成分の中でも、低粘性、耐熱性、および耐光性という観点からは、式(h−1)〜(h−7)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(h−1)〜(h−7)ともいう。)の群から選択される少なくとも1つの化合物が好ましい。
【0124】
【0125】
式(h−1)〜(h−7)において、Ra22およびRb22は、独立して、炭素数1〜8の直鎖アルキル、または炭素数2〜8の直鎖アルケニルまたは炭素数1〜7のアルコキシであり、Z24、Z25、およびZ26は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−であり、Y、およびYは、共にフッ素、または一方がフッ素で他方が塩素である。
【0126】
例えば、化合物(h−1)および(h−2)は、それを含有する液晶組成物の粘度を小さくし、しきい値電圧をより低くすることができ、ネマチック相の下限温度を低くすることができる。化合物(h−2)、(h−3)および(h−4)は、それを含有する液晶組成物のネマチック相の上限温度を下げることなく、しきい値電圧を低くすることができる。
【0127】
化合物(h−3)および(h−6)は、光学異方性を大きくすることができ、化合物(h−4)および(h−7)は、光学異方性をより大きくすることができる。
【0128】
化合物(h−5)、(h−6)および(h−7)は、それを含有する液晶組成物のネマチック相の下限温度を低くすることができる。
【0129】
特に、液晶組成物(2)の中でも、化合物(a−2)〜(a−11)から選択される少なくとも1つの化合物である第一成分と、化合物(e−1)〜(e−3)から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分と、化合物(h−1)〜(h−7)から選択される少なくとも1つの化合物である第三成分を含有する液晶組成物は、耐熱性および耐光性に優れ、ネマチック相の温度範囲が広く、粘度が小さく、電圧保持率が高く、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、適切な弾性定数K33を示す。さらにこれら物性が適切にバランスした液晶組成物という点で好ましい。
【0130】
第三成分の中でもより好ましい化合物は、化合物(3−1)〜(3−118)である。これらの化合物においてRb22、およびRb22は、化合物(h−1)〜(h−7)の場合と同一の意味である。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
例えば、化合物(g−3)〜(g−6)のような縮合環を有する化合物は、しきい値電圧を低くすることができ、耐熱性、または耐光性といった観点から、化合物(3−119)〜(3−143)が好ましい。これらの化合物においてRa22、およびRb22は、化合物(g−3)〜(g−6)の場合と同一の意味である。
【0136】
【0137】
本発明の液晶組成物における第三成分の含有量に特に制限はないが、負の誘電率異方性の絶対値を小さくしないといった観点からは、含有量を多くすることが好ましい。
液晶組成物(2)の第一成分、第二成分、および第三成分の含有割合は特に制限はされないが、液晶組成物(2)の全重量に基づいて、化合物(a−1)の含有割合が5〜60重量%の範囲、第二成分の含有割合が20〜75重量%の範囲、第三成分の含有割合が20〜75重量%の範囲であることが好ましい。
【0138】
液晶組成物(2)の第一成分、第二成分、および第三成分の含有割合がこの範囲にある場合には、耐熱性、耐光性に優れ、ネマチック相の温度範囲が広く、粘度が小さく、電圧保持率が高く、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、適切な弾性定数K33を示す。さらにこれら物性がより適切にバランスした液晶組成物が得られる。
【0139】
〔液晶組成物の態様等〕
本発明に係る液晶組成物では、第一成分、第二成分、および必要に応じて添加する第三成分を構成する液晶性化合物に加えて、例えば液晶組成物の特性をさらに調整する目的で、さらに他の液晶性化合物を添加して使用する場合がある。また、例えばコストの観点から、本発明の液晶組成物では、第一成分、第二成分、および必要に応じて添加する第三成分を構成する液晶性化合物以外の液晶性化合物は添加せずに使用する場合もある。
【0140】
また本発明に係る液晶組成物には、さらに、光学活性化合物、色素、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加物を添加してもよい。
光学活性化合物を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶にらせん構造を誘起して、ねじれ角を与えることなどができる。
【0141】
光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加する。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0142】
【0143】
色素を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶組成物をGH(Guest host)モードを有する液晶表示素子に適用することなどが可能となる。
消泡剤を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶組成物の運搬中、あるいは該液晶組成物から液晶表示素子を製造工程中で、発泡を抑制することなどが可能となる。
【0144】
紫外線吸収剤、あるいは酸化防止剤を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶組成物や該液晶組成物を含む液晶表示素子の劣化を防止することなどが可能となる。例えば酸化防止剤は、液晶組成物を加熱したときに比抵抗の低下を抑制することが可能である。
【0145】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、トリアゾール系紫外線吸収剤などを挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例は、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンである。
【0146】
ベンゾエート系紫外線吸収剤の具体例は、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートである。
トリアゾール系紫外線吸収剤の具体例は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロキシフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、および2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールである。
【0147】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤などを挙げることができる。
特に、液晶組成物の物性を変化させずに酸化防止効果が高いという観点からは、式(I)で表される酸化防止剤が好ましい。
【0148】

式(I)中、wは1から15の整数を示す。
【0149】
フェノール系酸化防止剤の具体例は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−プロピルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ペンチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘキシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ノニルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−デシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ウンデシルフェノール、2,
6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−トリデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−テトラデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ペンタデシルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルー4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(2−オクタデシルオキシカルボニル)エチルフェノール、およびペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0150】
有機硫黄系酸化防止剤の具体例は、ジラウリル−3,3’−チオプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、および2−メルカプトベンズイミダゾールである。
【0151】
紫外線吸収剤、酸化防止剤などに代表される添加物の添加量は、本発明の目的を損なわず、かつ添加物を添加する目的を達成できる量の範囲で添加して用いることができる。
【0152】
例えば、紫外線吸収剤、あるいは酸化防止剤を添加する場合には、その添加割合は、本発明に係る液晶組成物の全重量に基づいて、通常10ppm〜500ppmの範囲、好ましくは30〜300ppmの範囲、より好ましくは40〜200ppmの範囲である。
【0153】
なお、本発明に係る液晶組成物は、液晶組成物を構成する各化合物の合成工程、液晶組成物の調製工程等において混入する合成原料、副生成物、反応溶媒、合成触媒等の不純物を含んでいる場合もある。
【0154】
〔液晶組成物の調製方法〕
本発明に係る組成物は、例えば、各成分を構成する化合物が液体の場合には、それぞれの化合物を混合し振とうさせることにより、また固体を含む場合には、それぞれの化合物を混合し、加熱溶解によってお互い液体にしてから振とうさせることにより調製することができる。また、本発明に係る液晶組成物はその他の公知の方法により調製することも可能である。
【0155】
〔液晶組成物の特性〕
本発明に係る組成物では、ネマチック相の上限温度を70℃以上とすること、ネマチック相の下限温度は−20℃以下とすることができ、ネマチック相の温度範囲が広い。したがって、この組成物を含む液晶表示素子は広い温度領域で使用することが可能である。
【0156】
本発明に係る組成物では、組成等を適宜調整することで、光学異方性を0.10〜0.13の範囲、0.05〜0.18の範囲とすることもできる。
また、本発明に係る組成物では、通常、−5.0〜−2.0の範囲の誘電率異方性、好ましくは、−4.5〜−2.5の範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物を得ることができる。−4.5〜−2.5の範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物は、IPSモード、およびVAモードで動作する液晶表示素子として好適に使用することができる。
【0157】
〔液晶表示素子〕
本発明に係る液晶組成物は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード等の動作モードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子だけでなく、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモード等の動作モードを有しパッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。
【0158】
これらAM方式、およびPM方式の液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型、いずれの液晶ディスプレイ等にも適用ができる。
また、本発明に係る組成物は、導電剤を添加させた組成物を用いたDS(dynamic scattering)モード素子や、組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【0159】
中でも本発明に係る組成物では、上述のような特性を有するので、VAモード、IPSモードなどの負の誘電率異方性を有する液晶組成物を利用した動作モードで駆動するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができ、特に、VAモードで駆動するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができる。
【0160】
なお、TNモード、VAモード等で駆動する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモード等で駆動する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。なお、VAモードで駆動する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID '97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997)に報告されており、IPSモードで駆動する液晶表示素子の構造は、国際公開91/10936号パンフレット(ファミリー:US5576867)に報告されている。
[実施例]
【0161】
〔化合物(a−1)の実施例〕
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0162】
得られた化合物は、1H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0163】
1H−NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で合成したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数32回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0164】
GC分析
測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を280℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0165】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0166】
なお、試料の希釈溶媒は、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0167】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶性化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶性化合物成分(被検成分)と基準となる液晶性化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0168】
〔液晶性化合物等の物性の測定試料〕
液晶性化合物の物性を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0169】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶性化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記の式に示す外挿法にしたがって、外挿値を計算した。この外挿値をこの化合物の物性値とした。
【0170】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉
)/〈化合物の重量%〉
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶性化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性を測定し、この式にしたがって外挿値を求めて、これを化合物の物性値とした。
【0171】
本測定に用いる母液晶は様々な種類が存在する。例えば、母液晶iの組成は以下のとおりである。
母液晶i:
【0172】
【0173】
なお、液晶組成物の物性を測定する試料は、液晶組成物そのものを用いた。
〔化合物等の物性の測定方法〕
化合物の物性の測定は後述する方法で行った。これらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子またはVA素子には、TFTを取り付けなかった。
【0174】
物性値のうち、化合物そのものを試料として得られた値と、液晶組成物そのものを試料として得られた値は、そのままの値をデータとして記載した。化合物を母液晶に混合し試料として得られた場合には、外挿法で算出した値をデータとした。
【0175】
相構造および転移温度(℃)
以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、転移温度を決定した。
【0176】
以下、結晶はCと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれC1またはC2と表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSB、またはSAと表した。転移温度の表記として、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0177】
ネマチック相の上限温度(TNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶性組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0178】
低温相溶性
母液晶と化合物とを、化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0179】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0180】
回転粘度(γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料(液晶性組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。なお、この計算に必要な誘電率異方性は、下記誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0181】
光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶性組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0182】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
誘電率異方性は以下の方法によって測定した。
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
【0183】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。得られたガラス基板の配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
【0184】
得られたVA素子に試料(液晶性組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0185】
また、得られたTN素子に試料(液晶性組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
【0186】
電圧保持率(VHR;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料(液晶性組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を、高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率(%)で表現したものである。
【0187】
弾性定数(K11、K33;25℃で測定)
測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向セルに試料を入れた。このセルに20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を『液晶デバイスハンドブック』(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【実施例1】
【0188】
4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニル(No.678)の合成
【0189】
【0190】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−ヨード安息香酸エチル(1) 25.0g、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルボロン酸(2) 20.1g、炭酸カリウム 25.0g、Pd/C 0.25g、トルエン 100ml、エタノール 100mlおよび水 100mlを加え、2時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 500mlおよびトルエン 500mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させた。有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)により精製した。さらにエタノールからの再結晶により精製し、乾燥させ、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−ビフェニルカルボン酸エチル(3) 18.8gを得た。化合物(1)からの収率は67.9%であった。
【0191】
第2工程
水素化リチウムアルミニウム 1.4gをTHF 100mlに懸濁した。この懸濁液に化合物(3) 18.8gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、減圧下濃縮をして、(4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−ビフェニル)メタノール(4) 12.0gを得た。化合物(3)からの収率は74.0%であった。
【0192】
第3工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(4) 12.0g、トルエン 50mlおよびピリジン 0.12mlを加え、45℃で1時間攪拌した。その後、塩化チオニル 3.6mlを45℃から55℃の温度範囲で加え、2時間加熱還流させた。反応液を25 ℃まで冷却後、水 200mlおよびトルエン 200mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層をて、飽和重曹水で2回、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、トルエンとヘプタンとの混合溶媒(体積比 トルエン:ヘプタン=1:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;体積比 トルエン:ヘプタン=1:1)で精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、4’−クロロメチル−4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−ビフェニル(5) 9.4gを得た。化合物(4)からの収率は73.2%であった。
【0193】
第4工程
窒素雰囲気下、DMF 100mlに4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノール(6) 1.5g、およびリン酸三カリウム(KPO) 7.5gを加え、70℃で攪拌した。そこへ化合物(5) 2.0gを加え、70℃で、7時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、ろ過によって固形物と分離した後、トルエン 100ml、および水 100mlを加え混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させた。有機層への抽出を行った。得られた有機層を、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;体積比 ヘプタン:トルエン=1:2)で精製した。さらにソルミックスA−11とヘプタンの混合溶媒(体積比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)からの再結晶により精製し、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニル(No.678)2.2gを得た。化合物(5)からの収率は74.0%であった。
【0194】
得られた化合物(No.678)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 123.7 (N 113.4) I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニルであることが同定できた。
【0195】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);7.49(dd,4H),7.09(td,1H),6.80(td,1H),6.67(td,1H),6.62(td,1H),5.12(s,2H),4.16(q,2H),4.05(q,2H),1.47(t,3H),1.41(t,3H).
【実施例2】
【0196】
4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルエチル)−1,1’−ビフェニル(No.378)の合成
【0197】
【0198】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルボロン酸(7) 14.4g、4−ブロモヨードベンゼン(8) 20.0g、炭酸カリウム 29.3g、Pd(PhP)Cl 1.49g、トルエン100ml、ソルミックスA−11 100mlおよび水 100mlを加え、2時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 500mlおよびトルエン 500mlへ注ぎ込み、混合した。その後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)で精製した。さらに再結晶(ソルミックスA−11)により精製し、4−エトキシ−4’−ブロモ−2,3−ジフルオロ−1,1'−ビフェニル(9) 20.8gを得た。化合物(8)からの収率は94.0%であった。
【0199】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、乾燥させたマグネシウム 0.83gとTHF 20mlとを加えて、50℃まで加熱した。そこへ、THF 50mlに溶解した4−エトキシ−4’−ブロモ−2,3−ジフルオロ−1,1'−ビフェニル(9) 10.0gを、40℃から60℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。その後、THF 20mlに溶解したN,N−ジメチルホルムアミド 3mlを、50℃から60℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却した後、1N HCl水溶液 100mlと酢酸エチル 50mlとが入った容器中に添加して混合した後、有機層と水層に分離させ抽出を行った。得られた有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)で精製させ、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4'−ビフェニルカルボキシアルデヒド(10) 8.3gを得た。化合物(9)からの収率は99.2%であった。
【0200】
第3工程
窒素雰囲気下、乾燥させた4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(11) 9.4gとTHF 200mlを混合し、−30℃まで冷却した。その後、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 2.1gを−30℃〜−20℃の温度範囲で投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF 50mlに溶解した化合物(10) 8.3gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。−10℃で30分攪拌した後、反応液を水 100mlとトルエン 100mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)による分取操作で精製した。得られた溶離液を減圧下、濃縮し、トルエン 50ml、ソルミックスA−11 50mlとの混合溶媒に溶解させた。さらにPd/Cを0.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;体積比 ヘプタン:トルエン=3:7)で精製し、さらに再結晶(体積比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)により精製し、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニル(No.378) 5.9gを得た。化合物(10)からの収率は44.6%であった。
【0201】
得られた化合物(No.378)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 99.0 N 112.1 I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニル(No.378)であることが同定できた。
【0202】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);7.42(d,2H),7.24(d,2H),7.08(td,1H),6.77(qd,2H),6.62(td,1H),4.15(q,2H),4.08(q,2H),2.92(s,4H),1.48(t,3H),1.44(t,3H).
【実施例3】
【0203】
2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニルエテニル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.228)の合成
【0204】
【0205】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、乾燥させたマグネシウム 6.1gとTHF 20mlとを加えて、40℃まで加熱した。そこへ、THF 300mlに溶解した1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(12) 59.2gを、40℃から60℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。その後、THF 150mlに溶解した1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オン(13)30.0gを、50℃から60℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却した後、0℃に冷却した3% 塩化アンモニウム水溶液 900mlとトルエン 500mlとが入った容器中に添加して混合した後、有機層と水層とに分離させ抽出を行った。得られた有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、8−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−オール(14) 86.2gを得た。得られた化合物(14)は黄色油状物であった。
【0206】
第2工程
化合物(14) 86.2g、p−トルエンスルホン酸 2.4g、およびトルエン 250mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 500mlとトルエン 900mlとを加え混合した後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)で精製した。それを、トルエン 150ml、ソルミックスA−11 150mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを3.0g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)で精製し、さらに再結晶(ソルミックスA−11)により精製し、8−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(15) 59.7gを得た。得られた化合物(15)は黄色油状物であった。
【0207】
第3工程
化合物(15) 59.7g、87%ギ酸 20ml、およびトルエン 200mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 500mlとトルエン 1000mlとを加え混合した後、有機層と水層の2層に分離させた。有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)による分取操作で精製し、さらに再結晶(ヘプタン)により精製し、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサン−4−オン(16)27.5gを得た。化合物(13)からの収率は56.4%であった。
【0208】
第4工程
窒素雰囲気下、乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 26.3gとTHF 100mlを混合し、−30℃まで冷却した。その後、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 8.6gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF 100mlに溶解した化合物(16) 15.0gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。−10℃で30分攪拌した後、反応液を水 200mlとトルエン 200mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)で精製した。得られた溶離液を減圧下、濃縮し、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−メトキシメチレンシクロヘキサン(17)21.8gを得た。得られた化合物(17)は無色油状物であった。
【0209】
第5工程
化合物(17) 16.6g、87%ギ酸 6.2g、およびトルエン 100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 100mlとトルエン 200mlとを加え混合した後、有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、淡黄色固体 19.0gを得た。この残渣をトルエン50mlに溶解し、7℃に冷却した95%水酸化ナトリウム 0.5gとメタノール 200mlの混合液へ添加し、10℃で2時間攪拌した。その後、2N 水酸化ナトリウム水溶液 20mlを添加し、5℃で2時間攪拌した。得られた反応液を水 500mlとトルエン 500mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)で精製し、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(18)11.9gを得た。化合物(16)からの収率は75.2%であった。
【0210】
第6工程
窒素雰囲気下、乾燥させた4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(11) 24.9gとTHF 100mlを混合し、−10℃まで冷却した。その後、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 5.4gを−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(18) 10.0gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。0℃で30分攪拌した後、反応液を水 100mlとトルエン 50mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)による分取操作で精製し、溶離液を減圧下、濃縮した。得られた淡黄色結晶にソルミックス A−11 20mlを添加し、攪拌している中、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム二水和物 2.6gを添加し、続いて6N−塩酸 2.2mlを添加し、5時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 100mlとトルエン 100mlとを加え混合した後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水、0.5N−水酸化ナトリウム水溶液、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;体積比 ヘプタン:トルエン=2:3)で精製し、溶離液を減圧下、濃縮した。得られた残渣を再結晶(体積比 ヘプタン:ソルミックス=3:2)により精製し、2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニルエテニル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.228)10.6gを得た。化合物(18)からの収率は67.5%であった。
【0211】
得られた化合物(No.228)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 110.1 I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニルエテニル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.228)であることが同定できた。なお、測定溶媒はである。
【0212】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);7.07(td,1H),6.85(td,1H),6.68(td,2H),6.43(d,1H),6.17(dd,1H),4.10(q,4H),2.79(tt,1H),2.20(m,1H),1.94(td,4H),1.59−1.43(m,10H).
【実施例4】
【0213】
2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニルエチル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.528)の合成
【0214】
【0215】
第1工程
トルエン 150ml、ソルミックスA−11 150mlとの混合溶媒に化合物(No.228) 15.6gを溶解させ、さらにPd/Cを1.0g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン/トルエン=2/3(体積比))で精製し、さらに得られた残渣を再結晶(体積比 ヘプタン:ソルミックス=3:2)により精製し、2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニルエチル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.528) 8.8gを得た。化合物(No.228)からの収率は56.8%であった。
【0216】
得られた化合物(No.528)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 114.3 (N 109.6) I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニルエチル)シクロヘキシル]ベンゼンであることが同定できた。
【0217】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);6.81(m,2H),6.65(m,2H),4.10(q,2H),4.08(q,2H),2.75(tt,2H),2.63(t,2H),1.91(d,2H),1.86(d,2H),1.57−1.38(m,9H),1.38−1.26(m,1H),1.19−1.07(m,2H).
【実施例5】
【0218】
2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェノキシメチル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.828)の合成
【0219】
【0220】
第1工程
水素化リチウムアルミニウム 4.2gをTHF 300mlに懸濁した。この懸濁液に1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(18) 50.0gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに再結晶(ヘプタン)により精製し、減圧下濃縮をして、4−ヒドロキシメチル−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロ)シクロヘキサン(19) 47.6gを得た。化合物(18)からの収率は94.5%であった。
【0221】
第2工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(19) 47.6g、トルエン 300mlおよびピリジン 0.5mlを加え、45℃で1時間攪拌した。その後、塩化チオニル 14.0mlを45℃から55℃の温度範囲で加え、2時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 300mlおよびトルエン 300mlへ注ぎ込み、混合した。その後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、飽和重曹水で2回、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン/トルエン=1/1(体積比))で精製した。さらに再結晶(ソルミックスA−11)により精製し、4−クロロメチル−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサン(20) 47.6gを得た。化合物(19)からの収率は93.6%であった。
【0222】
第3工程
窒素雰囲気下、DMF 100mlに4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノール(6) 2.2g、およびリン酸三カリウム(KPO) 11.0gを加え、70℃で攪拌した。そこへ化合物(20) 3.0gを加え、70℃で、7時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、ろ過によって固形物と分離した後、トルエン 100ml、および水 100mlを加え混合した。その後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン/トルエン=1/2(体積比))で精製した。さらに再結晶(体積比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)により精製し、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−シクロヘキサン(No.828)2.2gを得た。化合物(20)からの収率は74.0%であった。
【0223】
得られた化合物(No.828)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 97.0 N 102.5 I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェノキシメチル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.828)であることが同定できた。
【0224】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);6.84(td,1H),6.67(td,1H),6.63(d,2H),4.09(q,2H),4.06(q,2H),3.83(d,2H),2.80(tt,1H),2.06−2.00(m,2H),1.97−1.83(m,3H),1.51(qd,2H),1.42(q,6H),1.25(qd,2H).
【実施例6】
【0225】
4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニル(No.681)の合成
【0226】
【0227】
第1工程
窒素雰囲気下、水 300mlに2,3−ジフルオロフェノール(21) 100.0g、および水酸化ナトリウム(NaOH) 36.9gを加え、70℃で攪拌した。そこへ1−ブロモブタン 158.0gを加え、70℃で、2時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、ヘプタン 100ml、および水 100mlを加え混合した。その後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下分別蒸留を行い、4−ブトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(22)114.4gを得た。得られた化合物(22)は無色液体、沸点は109〜110℃/20mmHgであり、化合物(21)からの収率は80.0%であった。
【0228】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(22) 84.6gとTHF 500mlとを加えて、−74 ℃まで冷却した。そこへ、1.65M n−ブチルリチウム,n−ヘキサン溶液 303.0mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて、ホウ酸トリメチル 56.7gのTHF 200ml溶液に−74℃から−65℃の温度範囲で滴下し、25 ℃に戻しつつ、さらに8時間攪拌した。その後、反応混合物を1N塩酸 100ml氷水 500mlとが入った容器中に注ぎ込み、混合した。酢酸エチル 300mlを加えて、有機層と水層とに分離させ抽出を行った。得られた有機層を、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニルボロン酸(23) 6.4gを得た。化合物(22)からの収率は69.2%であった。
【0229】
第3工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(23) 40.0gと酢酸 100mlとを加えて、室温下、31%過酸化水素水 40.4mlを25℃から30℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。その後、反応混合物を亜硫酸水素ナトリウム水溶液100ml、酢酸エチル300mlが入った容器中に注ぎ込み、混合した。その後、有機層と水層とに分離させ抽出を行った。得られた有機層を、水、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェノール(24) 31.7gを得た。化合物(23)からの収率は90.2%であった。
【0230】
第4工程
窒素雰囲気下、DMF 100mlに4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェノール(24) 3.6g、およびリン酸三カリウム(KPO) 11.3gを加え、70℃で攪拌した。そこへ化合物(5) 3.0gを加え、70℃で、7時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、ろ過によって固形物と分離した後、トルエン 100ml、および水 100mlを加え混合した。その後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーシリカゲル;ヘプタン/トルエン=1/2(体積比))で精製した。さらに再結晶(体積比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)により精製し、1−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロ)−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−シクロヘキサン(No.681)3.62gを得た。化合物(5)からの収率は76.1%であった。
【0231】
得られた化合物(No.681)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 115.7 (N 106.7) I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニルであることが同定できた。
【0232】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);7.51(d,2H),7.48(d,2H),7.08(td,1H),6.79(td,1H),6.66(td,1H),6.62(td,1H),4.16(q,2H),3.98(t,2H),1.77(tt,2H),1.53−1.43(m,5H),0.97(t,3H).
【実施例7】
【0233】
2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ブトキシフェノキシメチル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.831)の合成
【0234】
第1工程
窒素雰囲気下、DMF 100mlに4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェノール(24) 4.6g、およびリン酸三カリウム(KPO) 14.0gを加え、70℃で攪拌した。そこへ化合物(20) 3.0gを加え、70℃で、7時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、ろ過によって固形物と分離した後、トルエン 100ml、および水 100mlを加え混合した。その後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン/トルエン=1/2(体積比))で精製した。さらに再結晶(体積比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)により精製し、2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ブトキシフェノキシメチル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.831)4.02gを得た。化合物(20)からの収率は85.1%であった。
【0235】
得られた化合物(No.831)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 72.4 N 92.8 I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ブトキシフェノキシメチル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.831)であることが同定できた。
【0236】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);6.84(td,1H),6.67(td,1H),6.62(d,2H),4.09(q,2H),3.99(t,2H),3.82(d,2H),2.80(tt,1H),2.03(dd,2H),1.96−1.82(m,3H),1.77(quin,2H),1.57−1.45(m,4H),1.43(t,3H),1.25(qd,2H),0.97(t,3H).
【実施例8】
【0237】
4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(2−フルオロフェニルエチル)−1,1’−ビフェニル(No.497)の合成
【0238】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(5) 20.0g、トリフェニルホスフィン 37.1g、およびトルエン 200mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物をろ過し、トルエンで3回し未反応の原料を洗い流した後、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−1,1’−ビフェニルメチルトリフェニルホスホニウムクロリド(25)38.5gを得た。化合物(5)からの収率は99.9%であった。
【0239】
第2工程
窒素雰囲気下、乾燥させた化合物(25) 26.3gとTHF 200mlを混合し、−30℃まで冷却した。その後、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 5.4gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF 100mlに溶解した3−フルオロベンズアルデヒド(26) 5.0gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。−10℃で30分攪拌した後、反応液を水 200mlとトルエン 200mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)で精製した。得られた溶離液を減圧下、濃縮し、さらに再結晶(体積比 ソルミックスA−11:ヘプタン=2:1)により精製し、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−1,1’−ビフェニルエチル−3−フルオロベンゼン(No.497)13.0gを得た。化合物(26)からの収率は90.5%であった。
【0240】
得られた化合物(No.497)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 59.0 C 61.2 I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−1,1’−ビフェニルエチル−3−フルオロベンゼン(No.497)であることが同定できた。
【0241】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);7.43(dd,2H),7.24(m,3H),7.09(td,1H),7.00(d,1H),6.90(m,2H),6.79(td,1H),4.15(q,2H),2.95(s,4H),1.48(t,3H).
【実施例9】
【0242】
1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキセン(No.77)の合成
【0243】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、1−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(27) 7.0gとTHF 200mlとを加えて、−74 ℃まで冷却した。そこへ、1.57M n−ブチルリチウム,n−ヘキサン溶液 31.0mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。その後、THF50mlに溶解した1−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサン−4−オン(28)12.5gを、50℃から60℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却した後、0℃に冷却した3% 塩化アンモニウム水溶液 400mlとトルエン 200mlとが入った容器中に添加して混合した後、有機層と水層とに分離させ抽出を行った。得られた有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキサン−1−オール(29) 19.0gを得た。得られた化合物(29)は黄色油状物であった。
【0244】
第2工程
化合物(29) 19.0g、p−トルエンスルホン酸 0.57g、およびトルエン 200mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 200mlとトルエン 200mlとを加え混合した後、有機層と水層に分離させて、有機層への抽出を行った。得られた有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)で精製した。さらに再結晶(体積比 ソルミックスA−11:酢酸エチル=2:1)により精製し、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキセン(No.77) 10.3gを得た。化合物(27)からの収率は55.0%であった。
【0245】
得られた化合物(No.77)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 61.8 C 67.5 N 105.8 I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキセン(No.77)であることが同定できた。
【0246】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);6.90(dd,2H),6.69(dd,2H),5.99(m,1H),4.12(q,2H),4.03(t,2H),3.18(m,1H),2.63−2.38(m,3H),2.35−2.25(m,1H),2.04−1.98(m,1H),1.98−1.88(m,1H),1.80(quin,2H),1.54−1.43(m,5H),0.98(t,3H).
【実施例10】
【0247】
1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキサン(No.78)の合成
【0248】
第1工程
トルエン 150ml、ソルミックスA−11 150mlとの混合溶媒に化合物(No.77) 9.0gを溶解させ、さらにラネーニッケルを0.90g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、ラネーニッケルを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;体積比 ヘプタン:トルエン=1:2)で精製し、さらに得られた残渣を再結晶(体積比 酢酸エチル:ソルミックス=1:2)により精製し、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキサン(No.78)6.2gを得た。化合物(No.77)からの収率は68.3%であった。
【0249】
得られた化合物(No.78)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 85.6 N 124.2 I
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキサン(No.78)であることが同定できた。
【0250】
化学シフトδ(ppm;CDCl3);6.89(dd,2H),6.70(dd,2H),4.10(q,2H),4.03(t,2H),2.88(m,2H),1.97(d,4H),1.80(quin,2H),1.70−1.59(m,4H),1.55−1.48(m,2H),1.45(t,3H),0.98(t,3H).
【実施例11】
【0251】
実施例1〜10に記載された合成方法と同様の方法により以下に示す、化合物(No.1)〜(No.1410)を合成することができる。付記したデータは前記した手法に従い、測定した値である。転移温度は化合物自体の測定値であり、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物を母液晶(i)に混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値である。
なお、化合物No.228、678、681は母液晶95重量%、化合物5重量%とからなる組成物を調製し、得られた液晶組成物の物性を測定し、測定値を外挿したもの、
化合物No.528は母液晶90重量%、化合物10重量%とからなる組成物を調製し、得られた組成物の物性を測定し、測定値を外挿したもの、
残りのデータを付記した化合物は母液晶85重量%、化合物15重量%とからなる組成物を調製し、得られた組成物の測定値からを外挿した物性値である。
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
【0278】
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
〔比較例1〕
比較例として化合物C類似の化合物である、4−エトキシ−4’ ’−プロピル−2,3,3’ ’−トリフルオロ−1,1’−ターフェニル(E)を合成した。
【0300】
【0301】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−4’ ’−プロピル−2,3,3’ ’−トリフルオロ−1,1’−ターフェニル(E)であることが同定できた。
化学シフトδ(ppm;CDCl3);7.63(d,2H),7.58(d,2H),7.34(dd,1H),7.28(dd,1H),7.26(t,1H),6.82(td,2H),4.17(q,2H),2.66(t,2H),1.68(sex,2H),1.49(t,3H),0.99(t,3H).
【0302】
化合物(E)の転移温度は以下の通りであった。
転移温度 :C 131.3 N 132.4 I
【0303】
前述した母液晶iとして記載された5つの化合物を混合し、ネマチック相を有する母液晶iを調製した。この母液晶iの物性は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=74.6℃;粘度(η20)=18.9mPa・s;光学異方性(Δn)=0.087;誘電率異方性(Δε)=−1.3。
【0304】
この母液晶i 90重量%と、合成した4−エトキシ−4’ ’−プロピル−2,3,3’ ’−トリフルオロ−1,1’−ターフェニル(E)の10重量%とからなる液晶組成物iiを調製した。得られた液晶組成物 iiの物性を測定し、測定値を外挿することで比較化合物(E)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−5.38;
粘度(η)=77.8mPa・s
【実施例12】
【0305】
化合物(No.528)の物性
母液晶i 90重量%と、実施例3で得られた2,3−ジフルオロ−4−エトキシ−[トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニルエテニル)シクロヘキシル]ベンゼン(No.528)の10重量%とからなる液晶組成物iiiを調製した。得られた液晶組成物iiiの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No.528)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−8.97;
粘度(η)=69.8mPa・s
【0306】
このことから化合物(No.528)は、融点が低く、誘電率異方性(Δε)を負に大きく、粘度が小さい化合物であることがわかった。
【0307】
また、比較化合物(E)と比較して、誘電率異方性(Δε)が負に大きく、融点が低く、粘度が小さい化合物であることがわかった。
【0308】
〔比較例2〕
比較例として、4−エトキシ−4’ ’−ペンチル−2,2’ ’,3,3’’−テトラフルオロ−1,1’−ターフェニル(F)を合成した。
【0309】
【0310】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−4’ ’−ペンチル−2,2’ ’,3,3’’−テトラフルオロ−1,1’−ターフェニル(F)であることが同定できた。
化学シフトδ(ppm;CDCl3);7.60(dd,4H),7.18−7.12(m,2H),7.01(td,1H),6.82(td,1H),4.17(q,2H),2.70(t,2H),1.69−1.61(m,2H),1.50(t,3H),1.42−1.24(m,8H),0.89(t,3H).
【0311】
化合物(F)の転移温度は以下の通りであった。
転移温度 :C 124.3 N 132.4 I
【0312】
母液晶i 95重量%と、合成した4−エトキシ−4’ ’−ペンチル−2,2’ ’,3,3’’−テトラフルオロ−1,1’−ターフェニル(F)の5重量%とからなる液晶組成物ivを調製した。得られた液晶組成物 ivの物性を測定し、測定値を外挿することで比較化合物(F)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
光学異方性(Δn)=0.179;
誘電率異方性(Δε)=−5.13;
また、液晶組成物ivの弾性定数K33は14.70 pNであった。
【実施例13】
【0313】
化合物(No.678)の物性
母液晶i 95重量%と、実施例6で得られた4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノキシメチル)−1,1’−ビフェニル(No.678)の5重量%とからなる液晶組成物vを調製した。得られた液晶組成物vの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No. 678)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
光学異方性(Δn)=0.187;
誘電率異方性(Δε)=−10.90;
また、液晶組成物vの弾性定数K33は14.91 pNであった。
【0314】
このことから化合物(No. 678)は、融点が低く、光学異方性(Δn)を大きく、誘電率異方性(Δε)を負に大きくすることができる化合物であることがわかった。
【0315】
また、比較化合物(F)と比較して、融点が低く、光学異方性(Δn)が大きく、誘電率異方性(Δε)が負に大きく、弾性定数K33が大きい化合物であることがわかった。
【0316】
〔組成物の実施例〕
以下、本発明で得られる液晶組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例で用いる液晶性化合物は、下記表1の定義に基づいて記号により表す。なお、表1中、1,4−シクロへキシレンの立体配置はトランス配置である。各化合物の割合(百分率)は、特に断りのない限り、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。各実施例の最後に得られた組成物の特性を示す。
【0317】
なお、各実施例で使用する液晶性化合物の部分に記載した番号は、上述した本発明の第一成分から第三成分に用いる液晶性化合物を示す式番号に対応をしており、式番号を記載せずに、単に「−」と記載をしている場合には、この化合物はこれら成分には対応をしていないその他の化合物であることを意味している。
【0318】
化合物の記号による表記方法を以下に示す。
【0319】
【0320】
特性の測定は以下の方法にしたがって行った。これらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0321】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。以下、ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略することがある。
【0322】
(2)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦−20℃と記載した。以下、ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0323】
(3)光学異方性(Δn;25℃で測定)
波長が589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により測定した。まず、主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。そして、偏光の方向がラビングの方向と平行であるときの屈折率(n‖)、および偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときの屈折率(n⊥)を測定した。光学異方性の値(Δn)は、(Δn)=(n‖)−(n⊥)の式から算出した。
【0324】
(4)粘度(η;20℃で測定;mPa・s)
測定にはE型粘度計を用いた。
【0325】
(5)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
【0326】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。得られたガラス基板の配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
【0327】
得られたVA素子に試料(液晶性組成物、または液晶化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0328】
また、得られたTN素子に試料(液晶性組成物、または液晶化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
この値が負である組成物が、負の誘電率異方性を有する組成物である。
【0329】
(6)電圧保持率(VHR;25℃と100℃で測定;%)
ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が6μmであるセルに試料を入れてTN素子を作製した。25℃において、このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。TN素子に印加した電圧の波形を陰極線オシロスコープで観測し、単位周期(16.7ミリ秒)における電圧曲線と横軸との間の面積を求めた。TN素子を取り除いたあと印加した電圧の波形から同様にして面積を求めた。電圧保持率(%)の値は、(電圧保持率)=(TN素子がある場合の面積値)/(TN素子がない場合の面積値)×100の値から算出した。
【0330】
このようにして得られた電圧保持率を「VHR−1」として示した。つぎに、このTN素子を100℃、250時間加熱した。このTN素子を25℃に戻したあと、上述した方法と同様の方法により電圧保持率を測定した。この加熱試験をした後に得た電圧保持率を「VHR−2」として示した。なお、この加熱テストは促進試験であり、TN素子の長時間耐久試験に対応する試験として用いた。
【0331】
〔比較例3〕
根拠は、この組成物が特許文献3記載の化合物(C)およびその類似化合物を含有するからである。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
5−B(2F)BB(2F,3F)−O8 (C) 5%
3−B(2F)BB(2F,3F)−O4 (C)類似化合物 5%

5−HB−3 7%
3−HB−O1 7%
3−HB−O2 12%
3−HHB−1 10%
3−HHB−3 10%
3−H2B(2F,3F)−O2 12%
5−H2B(2F,3F)−O2 12%
3−HBB(2F,3F)−O2 10%
3−HHB(2F,3Cl)−O2 4%
4−HHB(2F,3Cl)−O2 3%
5−HHB(2F,3Cl)−O2 3%
NI=81.4℃;Δn=0.111;η=26.8mPa・s;Δε=−2.8.
【実施例14】
【0332】
実施例14の組成物は、比較例3の組成物と比較して、負に大きな誘電率異方性(Δε)および低い粘度(η)を有している点で優れていることがわかった。
2O−B(2F,3F)2BB(2F,3F)−O2 (a−11) 5%
4O−B(2F,3F)2BB(2F,3F)−O2 (a−11) 5%

5−HB−3 7%
3−HB−O1 7%
3−HB−O2 12%
3−HHB−1 10%
3−HHB−3 10%
3−H2B(2F,3F)−O2 12%
5−H2B(2F,3F)−O2 12%
3−HBB(2F,3F)−O2 10%
3−HHB(2F,3Cl)−O2 4%
4−HHB(2F,3Cl)−O2 3%
5−HHB(2F,3Cl)−O2 3%
NI=79.5℃;TC≦−20℃;Δn=0.107;η=25.8mPa・s;Δε=−3.2.
【実施例15】
【0333】
2O−B(2F,3F)O1HB(2F,3F)−O2 (a−6) 5%
2O−B(2F,3F)O1BB(2F,3F)−O2 (a−11) 5%

3−HB−O2 14%
5−HB−O2 15%
3−HHB−1 10%
3−HHB−3 10%
3−HB(2F,3F)−O2 12%
5−HB(2F,3F)−O2 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 8%
5−HHB(2F,3F)−O2 9%
NI=82.3℃;Δn=0.099;η=25.4mPa・s;Δε=−3.3.
【実施例16】
【0334】
4O−B(2F,3F)O1BB(3F)−O2 (a−9) 4%
4O−B(2F,3F)O1BB(2F)−O2 (a−10) 4%
4O−B(2F,3F)O1BB(2F,3F)−O2 (a−11) 3%

3−HB−O2 15%
5−HB−O2 15%
3−HHB−3 7%
3−HHB−O1 3%
3−HHEH−5 5%
5−H2B(2F,3F)−O2 15%
3−HB(2F,3Cl)−O2 5%
2−HHB(2F,3F)−1 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 7%
5−HHB(2F,3F)−O2 7%
NI=83.8℃;Δn=0.103;η=25.6mPa・s;Δε=−3.2.
【実施例17】
【0335】
4O−B(2F,3F)O1HB(3F)−O2 (a−4) 7%
4O−B(2F,3F)O1HB(2F,3F)−O2 (a−6) 5%

2−H2H−3 6%
3−HB−O1 16%
3−HB−O2 10%
3−HHB−O1 3%
2−BB(3F)B−3 6%
5−HBB(3F)B−2 5%
3−HHEBH−3 4%
3−HHEBH−5 3%
3−H2B(2F,3F)−O2 20%
3−HB(2Cl,3F)−O2 3%
5−HH2B(2F,3F)−O2 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 7%
NI=82.2℃;TC≦−20℃;Δn=0.111;η=25.6mPa・s;Δε=−3.1.
【実施例18】
【0336】
2O−B(2F,3F)VHB(2F,3F)−O2 (a−6) 3%
4O−B(2F,3F)VHB(2F,3F)−O2 (a−6) 3%
4O−B(2F,3F)VHB(2F,3F)−O4 (a−6) 5%

3−HH−4 5%
3−HB−O2 15%
5−HB−O2 15%
3−HHB−1 5%
3−HHB−3 7%
2−BB(3F)B−5 5%
V−HB(2F,3F)−O2 15%
V−HHB(2F,3F)−O2 10%
2−HBB(2F,3F)−O2 7%
3−HBB(2F,3Cl)−O2 5%
NI=83.2℃;Δn=0.113;η=25.6mPa・s;Δε=−3.1.
【実施例19】
【0337】
2O−B(2F,3F)2HB(2F,3F)−O2 (a−6) 4%
4O−B(2F,3F)O1HB(2F,3F)−O2 (a−6) 8%

2−H2H−3 5%
3−HB−O1 12%
3−HB−O2 3%
3−HHB−1 7%
3−HHB−3 7%
3−HBB−2 5%
2−BBB(2F)−5 5%
3−HHEBH−3 5%
3−H2B(2F,3F)−O2 14%
5−H2B(2F,3F)−O2 14%
3−HBB(2F,3F)−O2 5%
2−BB(2F,3F)B−3 3%
3−HBB(2Cl,3F)−O2 3%
NI=81.9℃;Δn=0.110;η=25.7mPa・s;Δε=−3.1.
【実施例20】
【0338】
4O−B(2F,3F)O1HB(3F)−O2 (a−4) 7%
4O−B(2F,3F)O1HB(2F)−O2 (a−5) 7%

3−HB−O1 11%
5−HB−O2 20%
3−HHB−1 3%
3−HBBH−5 5%
1O1−HBBH−4 5%
3−H2B(2F,3F)−O2 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 15%
5−HHB(2F,3F)−O2 12%
NI=81.9℃;TC≦−20℃;Δn=0.101;η=25.8mPa・s;Δε=−3.3.
【実施例21】
【0339】
4O−B(2F,3F)1ODhB(2F,3F)−O2 (a−1) 7%
4O−B(2F,3F)O1DhB(2F,3F)−O2 (a−1) 7%

3−HH−5 5%
3−HB−O1 17%
3−HB−O2 10%
3−HHB−1 10%
3−HHB−3 10%
5−H2B(2F,3F)−O2 16%
3−HH2B(2F,3F)−O2 9%
5−HH2B(2F,3F)−O2 9%
NI=81.8℃;Δn=0.091;η=25.6mPa・s;Δε=−3.1.
【実施例22】
【0340】
2O−B(2F,3F)2HB(2F,3F)−O2 (a−6) 5%
2O−B(2F,3F)2BB(2F,3F)−O2 (a−11) 5%

3−HB−O2 15%
5−HB−O2 15%
3−HHB−3 10%
3−HHEBH−3 5%
3−HHEBH−5 3%
3−H2B(2F,3F)−O2 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 15%
3−HBB(2F,3F)−O2 6%
5−HBB(2F,3Cl)−O2 6%
NI=82.0℃;TC≦−20℃;Δn=0.106;η=25.4mPa・s;Δε=−3.4.
【実施例23】
【0341】
2O−B(2F,3F)O1HB(2F,3F)−O2 (a−6) 5%
2O−B(2F,3F)2BB(2F,3F)−O2 (a−11) 5%
2O−B(2F,3F)O1BB(2F,3F)−O2 (a−11) 3%

5−HB−3 10%
3−HB−O1 13%
3−HHB−1 10%
3−HHB−3 7%
2−BB(3F)B−3 5%
3−H2B(2F,3F)−O2 10%
5−H2B(2F,3F)−O2 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 10%
3−HH2B(2F,3F)−O2 12%
NI=83.1℃;Δn=0.107;η=25.5mPa・s;Δε=−3.3.
上記組成物100部に光学活性化合物(Op−5)を0.25部添加したときのピッチは61.2μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0342】
熱、光などに対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有し、さらに、適切な負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する新規な化合物であり、組成物として液晶表示素子に使用した場合には、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、大きなコントラストを有し、広い温度範囲で使用可能であるので、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用される。