特許第5652506号(P5652506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652506
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20141218BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20141218BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20141218BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   B32B27/00 D
   B32B27/30 A
   B32B7/02 101
   C08F290/06
【請求項の数】14
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-121215(P2013-121215)
(22)【出願日】2013年6月7日
(62)【分割の表示】特願2012-520460(P2012-520460)の分割
【原出願日】2011年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-212694(P2013-212694A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2013年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-137531(P2010-137531)
(32)【優先日】2010年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】新山 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊一
(72)【発明者】
【氏名】対馬 斉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広茂
【審査官】 河原 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−046620(JP,A)
【文献】 特開2005−281689(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/011353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
C08F283/01
290/00−290/14
299/00−299/08
C09J 1/00− 5/10
9/00−201/10
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の面材が、硬化後の動的粘弾性測定における貯蔵せん断弾性率が5×102.5×10Paであり、かつ損失正接が1.4以下である硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を介して積層一体化されている積層体。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物が、硬化性化合物および非硬化性オリゴマーを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物が、下記硬化性化合物(II)および下記非硬化性オリゴマー(D)を含む、請求項1または2に記載の積層体。
硬化性化合物(II):硬化性樹脂組成物の硬化時に硬化反応する硬化性化合物の1種以上からなり、該硬化性化合物の少なくとも1種は、前記硬化性樹脂組成物の硬化時に反応しない水酸基を有する。
非硬化性オリゴマー(D):硬化性樹脂組成物の硬化時に前記硬化性化合物(II)と硬化反応せず、かつ1分子あたりに0.8〜3個の水酸基を有するオリゴマー。
【請求項4】
前記硬化性化合物(II)が、硬化性基を有しかつ水酸基を有するモノマーを含む、請求項に記載の積層体。
【請求項5】
前記硬化性化合物(II)が、硬化性基を有しかつ分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A’)、および硬化性基を有しかつ分子量が125〜600であるモノマー(B’)を含有し、該モノマー(B’)が水酸基を有するモノマー(B3)を含む、請求項に記載の積層体。
【請求項6】
前記非硬化性オリゴマー(D)がポリオキシアルキレンポリオールであり、かつ前記オリゴマー(A’)が、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーである、請求項に記載の積層体。
【請求項7】
前記オリゴマー(A’)がアクリル基を有し、前記モノマー(B’)の少なくとも一部がメタクリル基を有する、請求項またはに記載の積層体。
【請求項8】
前記モノマー(B3)が水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレートを含む、請求項のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記モノマー(B’)が、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレートからなる群から選ばれるモノマー(B4)を含む、請求項のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記硬化性樹脂組成物が、連鎖移動剤を含まない、または連鎖移動剤を含みその含有量が硬化性化合物(II)の100質量部に対して1質量部以下である、請求項のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記硬化性樹脂組成物が、光硬化性である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
前記一対の面材の少なくとも一方が透明な面材である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
前記一対の面材の一方が透明な面材で、他方が表示デバイスである、請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
前記表示デバイスが液晶表示デバイスである、請求項13に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物を用いて面材を積層した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイス上に接合樹脂層を介して保護板が積層された表示装置にあっては、接合樹脂層を硬化させる際に該接合樹脂層の収縮により発生する応力が、表示デバイスに影響を及ぼすおそれがある。表示デバイスに応力が加わると、下記の問題が生じ得る。
・表示デバイス中の表示形成材料(以下、表示材という。)が応力により影響を受け、表示の均一性が損なわれるおそれがある。例えば、液晶表示デバイスの場合には、表示デバイスに封入されている液晶の配列が外部応力により乱れて表示ムラとして視認されることがある。
・表示デバイスの表示面側の基板表面に、視野角などの表示品位を改善する光学フィルムが形成されている場合、応力により該光学フィルムの光学特性が局所的に変化して表示の均一性が損なわれるおそれがある。
【0003】
また接合樹脂層は表示デバイスの視認側に設けられるため、硬化の接合樹脂層に気泡が存在すると、下記の問題が生じ得る。
・表示デバイスからの出射光または反射光が気泡により乱れ、表示画像の画質を大きく損なうおそれがある。
・表示デバイスが画像を表示していない時には、保護板を通して接合樹脂層に残存する気泡が容易に視認されるため、製品の品質を大きく損なうおそれがある。
・樹脂層と表示デバイスとの界面接着力、または樹脂層と保護板との界面接着力が低下する。
【0004】
表示デバイス上に透明面材が積層された積層構造を有する表示装置を製造する方法として下記の方法が知られている。
(1)樹脂製の保護板上に液体原料を注入して硬化させて接合樹脂を形成後、またはロールシート状の接合樹脂を樹脂製の保護板上に脱気状態にて貼設後、液晶セルを一端から押圧しながら脱気状態で密着させて積層する方法。接合樹脂の原料としては、シリコーンゲルが好ましく用いられている(特許文献1)。
(2)ガラス製の保護板の所定位置に固着部材にて表示パネルを位置決めして仮固定した後、保護板と表示パネルとの間に形成される空間に減圧状態にて液体樹脂材料を注入して硬化させることで積層する方法。液体樹脂材料としてはシリコーン樹脂が好ましく用いられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−209635号公報
【特許文献2】特開2006−58753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等の知見によれば、接合樹脂層を形成する樹脂の極性や分子量を小さくすることで接合樹脂層の弾性率を低下させることができる。表示デバイスと透明面材との間に介在する接合樹脂層の弾性率が低下すると、硬化収縮時に発生する応力が小さくなり表示品位への影響を抑制することができる。
しかしながら、単に接合樹脂層の弾性率を低くしただけでは、表示デバイスと透明面材とを固定する力が不足する場合があり、例えば表示装置を垂直に設置して使用したときに、透明面材から表示デバイスが経時的にずれ落ちたり、脱離するおそれがある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を介して面材を積層一体化する際に、面材どうしを充分に固定できるととともに、樹脂層の硬化時の収縮による応力を低減できる硬化性樹脂組成物、および該硬化性樹脂組成物を用いて面材を積層した積層体を提供することを目的とする。
また本発明は、硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を介して面材を積層一体化する際に、面材どうしを充分に固定でき、樹脂層の硬化時の収縮による応力を低減でき、かつ樹脂層における気泡の発生を充分に抑えることができる、積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層体は、一対の面材が、硬化後の動的粘弾性測定における貯蔵せん断弾性率が5×102.5×10Paであり、かつ損失正接が1.4以下である硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を介して積層一体化されていることを特徴とする。
前記硬化性樹脂組成物は、硬化性化合物および非硬化性オリゴマーを含むことが好ましい。
前記硬化性樹脂組成物は、下記硬化性化合物(II)および下記非硬化性オリゴマー(D)を含むことが好ましい。
硬化性化合物(II):硬化性樹脂組成物の硬化時に硬化反応する硬化性化合物の1種以上からなり、該硬化性化合物の少なくとも1種は、前記硬化性樹脂組成物の硬化時に反応しない水酸基を有する。
非硬化性オリゴマー(D):硬化性樹脂組成物の硬化時に前記硬化性化合物(II)と硬化反応せず、かつ1分子あたりに0.8〜3個の水酸基を有するオリゴマー。
【0009】
前記硬化性化合物(II)が、硬化性基を有しかつ水酸基を有するモノマーを含むことが好ましい。
前記硬化性化合物(II)が、硬化性基を有しかつ分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A’)、および硬化性基を有しかつ分子量が125〜600であるモノマー(B’)を含有し、該モノマー(B’)が水酸基を有するモノマー(B3)を含むことが好ましい。
【0010】
前記非硬化性オリゴマー(D)がポリオキシアルキレンポリオールであり、かつ前記オリゴマー(A’)が、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーであることが好ましい。
【0011】
前記オリゴマー(A’)がアクリル基を有し、前記モノマー(B’)の少なくとも一部がメタクリル基を有することが好ましい。
前記モノマー(B3)が水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレートを含むことが好ましい。
前記モノマー(B’)が、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレートからなる群から選ばれるモノマー(B4)を含むことが好ましい。
【0012】
前記硬化性樹脂組成物は、連鎖移動剤を含まない、または連鎖移動剤を含みその含有量が硬化性化合物(II)の100質量部に対して1質量部以下であることが好ましい。
前記硬化性樹脂組成物は、光硬化性の硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0013】
前記一対の面材の少なくとも一方が透明な面材であることが好ましい。
前記一対の面材の一方が透明な面材で、他方が表示デバイスであることが好ましい。
前記表示デバイスが液晶表示デバイスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、これを面材の間に挟持させて硬化させることにより、一対の面材を充分に固定できるとともに、硬化時の収縮による応力を低減できる。
本発明の積層体によれば、面材と面材とが樹脂層を介して充分に固定され、該樹脂層の硬化時の収縮による応力が低減される。
本発明の積層体の製造方法によれば、一対の面材を本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を介して充分に固定することができ、該樹脂層の硬化時の収縮による応力を低減でき、かつ樹脂層における気泡の発生を充分に抑えつつ、積層体を製造することができる。
【0015】
本発明の積層体は例えば表示装置であり、本発明の製造方法によれば、表示デバイスと保護板との間の樹脂層における気泡の発生が充分に抑えられ、表示デバイスと保護板とが該樹脂層を介して充分に固定されており、かつ硬化収縮時の応力が低減されて、該応力による表示品質の低下が防止された、表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】透明面材により表示デバイスが保護された表示装置の一例を示す断面図である。
図2図1の表示装置の平面図である。
図3】工程(a)の様子の一例を示す平面図である。
図4】工程(a)の様子の一例を示す断面図である。
図5】工程(b)の様子の一例を示す平面図である。
図6】工程(b)の様子の一例を示す断面図である。
図7】工程(c)の様子の一例を示す断面図である。
図8】工程(d)の様子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、下記のように定義する。
表示装置においては、表示デバイスの保護板となる透明面材を「表面材」、表示デバイスを「裏面材」という。
表面材および裏面材を総称して「面材」という。
該面材のうち、本発明の製造方法において、周縁部にシール部が形成され、かつシール部で囲まれた領域に液状の硬化性樹脂組成物が供給される面材を「第1の面材」といい、該硬化性樹脂組成物の上に重ねられる面材を「第2の面材」という。
光透過性を有する面材を「透明面材」という。
ガラスからなる透明面材を「ガラス板」という。
以下、本発明の好適な実施形態として、本発明における積層体が表示装置であり、一対の面材が表面材(保護板となる透明面材)と裏面材(表示デバイス)であり、シール部形成用硬化性樹脂組成物および樹脂層形成用硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物である実施形態について説明する。
【0018】
<表示装置>
図1は、本実施形態の表示装置の一例を示す断面図であり、図2は、平面図である。
表示装置1は、表面材である透明面材10(第2の面材(または第1の面材))と、裏面材である表示デバイス50(第1の面材(または第2の面材))と、透明面材10および表示デバイス50に挟まれた樹脂層40と、樹脂層40の周囲を囲むシール部42と、表示デバイス50に接続された表示デバイス50を動作させる駆動ICを搭載したフレキシブルプリント配線板54(FPC)と、透明面材10の周縁部に形成された遮光印刷部55(遮光部)とを有する。
表示装置1においては、透明面材10の周縁部に遮光印刷部55が設けられ、遮光印刷部55に囲まれた透光部56の面積が、シール部42で囲まれた樹脂層40の面積よりも小さくされ、透明面材10の面積が、表示デバイス50の面積よりも大きくされ、樹脂層40およびシール部42の合計の面積が、透明面材10および表示デバイス50の各面積よりも小さくされている。
【0019】
[表面材]
表面材は、表示デバイスの表示画像を透過する透明面材(保護板)である。
透明面材としては、ガラス板、または透明樹脂板が挙げられ、表示デバイスからの出射光や反射光に対して透明性が高い点はもちろん、耐光性、低複屈折性、高い平面精度、耐表面傷付性、高い機械的強度を有する点からも、ガラス板が最も好ましい。光硬化性樹脂組成物の硬化のための光を充分に透過させる点でも、ガラス板が好ましい。
ガラス板の材料としては、ソーダライムガラス等のガラス材料が挙げられ、鉄分がより低く、青みの少ない高透過ガラス(白板ガラス)がより好ましい。安全性を高めるために表面材として強化ガラスを用いてもよい。
透明樹脂板の材料としては、透明性の高い樹脂材料(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等)が挙げられる。
【0020】
透明面材には、樹脂層との界面接着力を向上させるために、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、透明面材の表面をシランカップリング剤で処理する方法や、フレームバーナーによる酸化炎を介して酸化ケイ素の薄膜を形成する処理等が挙げられる。
透明面材には、表示画像のコントラストを高めるために、樹脂層との接合面の裏面に反射防止層を設けてもよい。反射防止層は、透明面材の表面に無機薄膜を直接形成する方法、反射防止層を設けた透明樹脂フィルムを透明面材に貼合する方法によって設けることができる。
また、画像表示の目的に応じて、透明面材の一部または全体が、着色していたり、すりガラス状に光を散乱させたり、または表面の微細な凹凸等により透過時の光を屈折させたり、反射させるようにしておくこともできる。また、上記のような様態を示す光学フィルム、偏光フィルム等の光学変調を行う光学フィルム等を透明面材に貼合したものを一体物として透明面材として用いることもできる。
【0021】
透明面材の厚さは、機械的強度、透明性の点から、ガラス板の場合は通常0.5〜25mmである。屋内で使用するテレビ受像機、PC用ディスプレイ等の用途では、表示装置の軽量化の点から、0.7〜6mmが好ましく、屋外に設置する公衆表示用途では、3〜20mmが好ましい。透明面材として強化ガラスを用いてもよく、透明面材が薄い場合には、化学強化ガラスを用いることができる。透明樹脂板の場合は、2〜10mmが好ましい。
【0022】
[裏面材]
裏面材は、表示デバイスである。
図示例の表示デバイス50は、カラーフィルタを設けた透明面材52とTFTを設けた透明面材53とを貼合し、これを一対の偏光板51で挟んだ構成の液晶表示デバイスの一例であるが、本実施形態における表示デバイスは、図示例のものに限定されない。
【0023】
表示デバイスは、少なくとも一方が透明電極である一対の電極に、外部の電気信号によって光学様態が変化する表示材を挟持したものである。表示材の種類によって、液晶表示デバイス、EL表示デバイス、プラズマ表示デバイス、電子インク型表示デバイス等がある。また、表示デバイスは、少なくとも一方が透明面材である一対の面材を貼り合わせた構造を有しており、透明面材側が樹脂層と接するように配置する。この際、一部の表示デバイスにおいては、樹脂層と接する側の透明面材の最外層側に偏光板、位相差板等の光学フィルムが設置されていることがある。この場合、樹脂層は表示デバイス上の光学フィルムと表面材とを接合する様態となる。
【0024】
表示デバイスの樹脂層との接合面には、シール部との界面接着力を向上させるために、表面処理を施してもよい。表面処理は、周縁部だけであってもよく、面材の表面全体であってもよい。表面処理の方法としては、低温加工可能な接着用プライマー等で処理する方法等が挙げられる。
表示デバイスの厚さは、TFTによって動作させる液晶表示デバイスの場合は通常0.4〜4mmであり、EL表示デバイスの場合は通常0.2〜3mmである。
【0025】
[樹脂層]
樹脂層は、本発明の硬化性樹脂組成物(以下、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物ということもある。)を硬化してなる層である。
本発明の硬化性樹脂組成物(本実施形態の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)は、硬化後の弾性率を低減でき、硬化に際して発生する応力を低減できる。したがって、かかる応力による表示デバイスの表示性能への悪影響を抑えることができる。また該硬化性樹脂組成物の未硬化時の粘度が低く、したがって面材表面への硬化性樹脂組成物の供給を短時間で行うことができるため、表面材と裏面材の積層後に気泡が残留するのを防止しやすい。
【0026】
樹脂層の厚さは、0.03〜2mmが好ましく、0.1〜0.8mmがより好ましく、0.2〜0.6mmが特に好ましい。樹脂層の厚さが0.03mm以上であると、透明面材側からの外力による衝撃等を樹脂層が効果的に緩衝して、表示デバイスを保護できる。特に、表示デバイスが外力に対して鋭敏であり表示品位への影響がでやすい場合には、0.2mm以上の厚みとすることが好ましい。また、本実施形態の製造方法において、透明面材と表示デバイスの間に樹脂層の厚さを超える異物が混入しても、樹脂層の厚さが大きく変化することなく、光透過性能への影響が少ない。樹脂層の厚さが2mm以下であると、樹脂層に気泡が残留しにくく、また、表示装置の全体の厚さが不要に厚くならない。樹脂層の弾性率が小さい場合には、表示デバイスの経時的な接合位置のずれなどを抑えるために0.6mm以下の厚みとすることが好ましい。
樹脂層の厚さを調整する方法としては、後述するシール部の厚さを調節するとともに、第1の面材に供給される液状の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の供給量を調節する方法が挙げられる。
【0027】
[シール部]
シール部は、後述する液状のシール部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化してなるものである。表示デバイスの画像表示領域の外側の領域が比較的狭いため、シール部の幅は狭くすることが好ましい。シール部の幅は、0.5〜2mmが好ましく、0.8〜1.6mmがより好ましい。
【0028】
[遮光印刷部]
必要に応じて、透明面材の周縁部に遮光印刷部を設けることができる。遮光印刷部は、表示デバイスの画像表示領域以外が透明面材側から視認できないようにして、表示デバイスに接続されている配線部材等を隠蔽するものである。遮光印刷部は、透明面材の樹脂層との接合面、またはその裏面に設けることができ、遮光印刷部と画像表示領域との視差を低減する点では、透明面材の樹脂層との接合面に設置するのが好ましい。透明面材がガラス板の場合、遮光印刷部に黒色顔料を含むセラミック印刷を用いると遮光性が高く好ましい。遮光印刷部を表面または裏面に設けた透明フィルムを透明面材に貼合することで遮光印刷部を形成することもできる。遮光印刷部のない透明面材を用いてもよい。
【0029】
[形状]
表示装置の形状は、通常矩形である。
表示装置の大きさは特に限定されないが、本実施形態の製造方法が比較的大面積の表示装置の製造に特に適していることから、液晶表示デバイスを用いた、PCモニターの場合、0.3m×0.18m、テレビ受像機の場合、0.4m×0.3m以上が適当であり、0.7m×0.4m以上が特に好ましい。表示装置の大きさの上限は、表示デバイスの大きさで決まることが多い。また、あまりに大きい表示装置は、設置等における取り扱いが困難となりやすい。表示装置の大きさの上限は、これらの制約から、通常2.5m×1.5m程度である。小型ディスプレイの場合、0.14m×0.08m以上が好ましい。
保護板となる透明面材と表示デバイスの寸法は、ほぼ等しくてもよいが、表示装置を収納する他の筺体との関係から、透明面材が表示デバイスより一回り大きくなる場合も多い。また逆に、他の筺体の構造によっては、透明面材を表示デバイスより若干小さくしてもよい。
【0030】
<表示装置の製造方法>
本実施形態の表示装置の製造方法は、下記の工程(a)〜(d)を有する方法である。
(a)第1の面材(裏面材(または表面材))の表面の周縁部に、硬化性化合物(I)および光重合開始剤(C1)を含む、液状のシール部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化のシール部を形成する工程(ただし、第1の面材が表示デバイスである場合は、画像表示される側の表面にシール部を形成する)。
(b)未硬化のシール部で囲まれた領域に、硬化性化合物(II)および光重合開始剤(C2)を含む、液状の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を供給する工程。
(c)100Pa以下の減圧雰囲気下にて、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の上に第2の面材(表面材(または裏面材))を重ねて、第1の面材、第2の面材および未硬化のシール部で樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が密封された積層前駆体を得る工程(ただし、第2の面材の表面に反射防止膜が設けられている場合は、その裏面側の表面が、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に接するように重ねる。また、第2の面材が表示デバイスである場合は、画像表示される側が、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に接するように重ねる)。
【0031】
(d)50kPa以上の圧力雰囲気下に積層前駆体を置いた状態にて、未硬化のシール部および樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に光を照射して硬化させる工程。
透明面材に遮光部が形成されていない場合は、積層前駆体の透明面材の側から透光部を通してシール部および樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に光を照射する。
透明面材の周縁部に遮光部が形成されている場合には、該遮光部に囲まれた透光部の面積が、シール部で囲まれた樹脂層の面積よりも小さくされ、上記樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C2)が、上記シール部形成用光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C1)の吸収波長域(λ1)よりも長波長側に存在する吸収波長域(λ2)を有し、上記工程(d)にて積層前駆体の側方から照射される光が、吸収波長域(λ1)内の波長の光および吸収波長域(λ2)内の波長の光を含むようにする。
【0032】
本実施形態の製造方法は、減圧雰囲気下で第1の面材と第2の面材との間に液状の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を封じ込め、大気圧雰囲気下等の高い圧力雰囲気下で封じ込められている樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を硬化させて樹脂層を形成する方法(減圧積層方法)である。減圧下における樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の封じ込めは、第1の面材と第2の面材との間隙の狭く広い空間に樹脂層形成用光硬化性樹脂を注入する方法ではなく、第1の面材のほぼ全面に樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を供給し、その後、第2の面材を重ねて第1の面材と第2の面材との間に樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を封じ込める方法である。
【0033】
減圧下における液状の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の封じ込め、および大気圧下における樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化による透明積層体の製造方法の一例は公知である。たとえば、国際公開第2008/81838号パンフレット、国際公開第2009/16943号パンフレットに透明積層体の製造方法および該製造方法に用いられる光硬化性樹脂組成物が記載されており、本明細書中に組み入れられる。
【0034】
[工程(a)]
まず、第1の面材の一方の表面の周辺部に沿って未硬化のシール部を形成する。第1の面材として裏面材を用いるか表面材を用いるかは任意である。
第1の面材が、表示デバイスの保護板となる透明面材である場合、未硬化のシール部を形成する面は、2つ表面のいずれか任意である。2つの表面の性状が異なる場合等では必要な一方の表面を選択する。たとえば、一方の表面に樹脂層との界面接着力を向上させる表面処理を施した場合、該表面に未硬化のシール部を形成する。また、一方の表面に反射防止層が設けられている場合、その裏面に未硬化のシール部を形成する。
第1の面材が、表示デバイスである場合、未硬化のシール部を形成する面は、画像表示される側の表面である。
【0035】
未硬化のシール部は、後述の工程(c)において、未硬化のシール部と第1の面材との界面、および未硬化のシール部と第2の面材との界面から液状の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が漏れ出さない程度以上の界面接着力、および形状を維持できる程度の固さを有することが重要である。よって、未硬化のシール部は、粘度の高いシール部形成用光硬化性樹脂組成物を、印刷、ディスペンス等によって塗布して形成することが好ましい。
また、第1の面材と第2の面材との間隔を保持するために、所定の粒子径のスペーサ粒子をシール部形成用光硬化性樹脂組成物に配合してもよい。
シール部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布した直後に、シール部を硬化させるための光を照射してシール部を部分的に半硬化させることでシール部の形状を更に長時間維持することもできる。
【0036】
[シール部形成用光硬化性樹脂組成物]
シール部形成用光硬化性樹脂組成物(以下、シール材ということもある。)は、光硬化性の硬化性化合物(I)および光重合開始剤(C1)を含む液状の組成物である。
シール部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度は、500〜3000Pa・sが好ましく、800〜2500Pa・sがより好ましく、1000〜2000Pa・sがさらに好ましい。粘度が500Pa・s以上であると、未硬化のシール部の形状を比較的長時間維持でき、シール部の高さを充分に維持できる。粘度が3000Pa・s以下であると、シール部を塗布法によって形成できる。
シール部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定する。
【0037】
(硬化性化合物(I))
硬化性化合物(I)は、シール部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度を前記範囲に調整しやすい点から、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が30000〜100000であるオリゴマー(A)の1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマー(B)の1種以上とを含むことが好ましい。
【0038】
オリゴマー(A)またはモノマー(B)の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高いシール部が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる基が好ましい。
オリゴマー(A)における硬化性基と、モノマー(B)における硬化性基とは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。比較的高分子量のオリゴマー(A)における硬化性基は、比較的低分子量のモノマー(B)における硬化性基よりも反応性が低くなりやすいため、モノマー(B)の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり硬化反応が不均質となるおそれがある。両者の硬化性基の反応性の差を小さくし、均質なシール部を得るために、オリゴマー(A)の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とし、モノマー(B)の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とすることがより好ましい。
【0039】
オリゴマー(A)の数平均分子量は、30000〜100000であり、40000〜80000が好ましく、50000〜65000がより好ましい。オリゴマー(A)の数平均分子量が該範囲であると、シール部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度を前記範囲に調整しやすい。
オリゴマー(A)の数平均分子量は、GPC測定によって得られた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、GPC測定において、未反応の低分子量成分(モノマー等)のピークが現れる場合は、該ピークを除外して数平均分子量を求める。
【0040】
モノマー(B)の分子量は、125〜600であり、140〜400が好ましく、150〜350がより好ましい。モノマー(B)の分子量が125以上であると、後述の減圧積層方法によって表示装置を製造する際のモノマー(B)の揮発が抑えられる。モノマー(B)の分子量が600以下であると、高分子量のオリゴマー(A)に対するモノマー(B)の溶解性を高めることができ、シール部形成用光硬化性樹脂組成物としての粘度調整を好適に行うことができる。
【0041】
(オリゴマー(A))
オリゴマー(A)としては、シール部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、シール部の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり平均1.8〜4個有するものが好ましい。
オリゴマー(A)としては、ウレタン結合を有するウレタンオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン鎖の分子設計等によって硬化後の樹脂の機械的特性、面材との密着性等を幅広く調整できる点から、ポリオールおよびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーが好ましく、後述のウレタンオリゴマー(A1)がより好ましい。ポリオールはポリオキシアルキレンポリオールがより好ましい。
【0042】
(ウレタンオリゴマー(A1))
数平均分子量が30000〜100000の範囲のウレタンオリゴマー(A1)は、高粘度となるため、通常の方法では合成が難しく、合成できたとしてもモノマー(B)との混合が難しい。
そのため、ウレタンオリゴマー(A1)を、モノマー(B)(下記のモノマー(B1)および(B2))を用いる合成方法で合成した後、得られた生成物をそのままシール部形成用光硬化性樹脂組成物として用いる、または得られた生成物をさらにモノマー(B)(下記のモノマー(B1)、モノマー(B3)等)で希釈してシール部形成用光硬化性樹脂組成物として用いることが好ましい。
・モノマー(B1):モノマー(B)のうち、硬化性基を有し、かつイソシアネート基と反応する基を有さないモノマー。
・モノマー(B2):モノマー(B)のうち、硬化性基を有し、かつイソシアネート基と反応する基を有するモノマー。
・モノマー(B3):モノマー(B)のうち、硬化性基を有し、かつ水酸基を有するモノマー。
【0043】
ウレタンオリゴマー(A1)の合成方法:
希釈剤としてモノマー(B1)の存在下、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、該プレポリマーのイソシアネート基に、モノマー(B2)を反応させる方法。
ポリオール、ポリイソシアネートとしては、公知の化合物、たとえば、国際公開第2009/016943号パンフレットに記載のウレタン系オリゴマー(a)の原料として記載された、ポリオール(i)、ジイソシアネート(ii)等が挙げられ、本明細書に組み入れられる。
【0044】
ポリオール(i)としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレンジオール等のポリオキシアルキレンポリオールや、ポリエステルポリオール、ポリカードネートポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましく、特にポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。また、ポリオキシプロピレンポリオールのオキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換すると、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の他の成分との相溶性を高めることができ、さらに好ましい。
ここで、オキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換してもよい、とは、ポリオキシプロピレンポリオール分子を構成するオキシプロピレン構造の一部がオキシエチレン構造に置き換わった分子構造であることを意味する。これ以降の同様の記載についても、同じ意味を表す。オキシエチレン構造はポリオキシプロピレンポリオール分子中に、ランダムまたはブロックで存在して良い。またオキシエチレン構造はポリオキシプロピレンポリオール分子の内部にあっても、末端水酸基の直前にあってもよい。オキシエチレン構造が末端水酸基の直前にある場合、ポリオキシプロピレンポリオールに、エチレンオキシドを付加することで得ることができる。
ジイソシアネート(ii)としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式のジイソシアネートおよび無黄変性芳香族ジイソシアネートから選ばれるジイソシアネートが好ましい。そのうち、脂肪族ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。無黄変性芳香族ジイソシアネートとしてはキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
モノマー(B1)としては、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ベヘニル(メタ)アクリレート等)、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。
【0046】
モノマー(B2)としては、活性水素(水酸基基、アミノ基等)および硬化性基を有するモノマーが挙げられ、具体的には、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等)等が挙げられ、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートが好ましい。
【0047】
(モノマー(B))
モノマー(B)は、シール部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、シール部の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1〜3個有するものが好ましい。
シール部形成用光硬化性樹脂組成物は、モノマー(B)として、上述したウレタンオリゴマー(A1)の合成方法において希釈剤として用いたモノマー(B1)を含んでいてもよい。また、モノマー(B)として、上述したウレタンオリゴマー(A1)の合成方法に用いた未反応のモノマー(B2)を含んでいてもよい。
【0048】
モノマー(B)は、面材とシール部との密着性や後述する各種添加剤の溶解性の点から、水酸基を有するモノマー(B3)を含むことが好ましい。
水酸基を有するモノマー(B3)としては、水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレート(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等)が好ましく、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0049】
シール部形成用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B)の含有割合は、硬化性化合物(I)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A)とモノマー(B)との合計(100質量%)のうち、15〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましく、25〜40質量%がさらに好ましい。モノマー(B)の割合が15質量%以上であると、シール部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、面材とシール部との密着性が良好となる。モノマー(B)の割合が50質量%以下であると、シール部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度を500Pa・s以上に調整しやすい。
なお、ウレタンオリゴマー(A1)の合成において、プレポリマーのイソシアネート基と反応したモノマー(B2)は、オリゴマー(A)の一部として存在するため、シール部形成用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B)の含有量に含まれない。一方、ウレタンオリゴマー(A1)の合成において、希釈剤として用いたモノマー(B1)、およびウレタンオリゴマー(A1)を合成した後に添加されたモノマー(B)はシール部形成用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B)の含有量に含まれる。
【0050】
(光重合開始剤(C1))
シール部形成用光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C1)としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられ、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインエーテル系の光重合開始剤が好ましい。短波長の可視光による硬化を行う場合は、吸収波長域の点から、フォスフィンオキサイド系の光重合開始剤がより好ましい。吸収波長域の異なる2種以上の光重合開始剤(C1)を併用することによって、硬化時間をさらに速めたり、シール部における表面硬化性を高めることができる。また、透明面材に遮光印刷部が設けられ、面材の側面からの光照射により遮光印刷部に挟持される未硬化のシール部と樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を硬化させる場合には、未硬化のシール部に隣接する部分の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化を阻害しない範囲内において、後述の光重合開始剤(C2)を併用してもよい。併用する場合、重合開始剤(C1)と重合開始剤(C2)との含有割合は、硬化を効率的にかつ有効に行える点から、(C1):(C2)の質量比で50:1〜5:1が好ましい。遮光印刷部に挟持される樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を、未硬化のシール材を介して面材の側面から照射する光で短時間に硬化させるためには、シール部形成用光硬化性樹脂組成物が光重合開始剤(C2)を含まないようにすることが好ましい。
【0051】
シール部形成用光硬化性樹脂組成物における光重合開始剤(C1)の含有量(光重合開始剤(C2)を含む場合は(C1)と(C2)との合計量)は、硬化性化合物(I)の全体、すなわちオリゴマー(A)とモノマー(B)との合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0052】
(添加剤)
シール部形成用光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合禁止剤、光硬化促進剤、連鎖移動剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、光安定剤を含むことが好ましい。特に、重合禁止剤を重合開始剤より少ない量含むことによって、シール部形成用光硬化性樹脂組成物の安定性を改善でき、硬化後の樹脂層の分子量も調整できる。面材の側面から照射される光によりシール材を硬化させる場合には、硬化反応を遅延させる効果のある、重合禁止剤や連鎖移動剤、光安定剤、顔料や染料などはできるだけ用いない、または含有量を低減させることが好ましい。
【0053】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン系(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等)、カテコール系(p−t−ブチルカテコール等)、アンスラキノン系、フェノチアジン系、ヒドロキシトルエン系等の重合禁止剤が挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチレート系等)、ラジカル捕獲剤(ヒンダードアミン系)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、リン系、イオウ系の化合物が挙げられる。
これらの添加剤の合計量は、硬化性化合物(I)の全体、すなわちオリゴマー(A)とモノマー(B)との合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0054】
[工程(b)]
工程(a)の後、未硬化のシール部で囲まれた領域に液状の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を供給する。
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の供給量は、シール部、第1の面材および第2の面材によって形成される空間が樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物によって充填され、かつ第1の面材と第2の面材との間を所定の間隔とする(すなわち樹脂層を所定の厚さとする)だけの分量にあらかじめ設定する。この際、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化収縮による体積減少をあらかじめ考慮することが好ましい。よって、該分量は、樹脂層の所定厚さよりも樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の厚さが若干厚くなる量が好ましい。硬化収縮が小さい場合には、樹脂層の所定厚さと樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の厚さをほぼ等しくしてもよい。
供給方法としては、第1の面材を平置きにし、ディスペンサ、ダイコータ等の供給手段によって、点状、線状または面状に供給する方法が挙げられる。
【0055】
[樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物]
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物は、硬化後の動的粘弾性測定における貯蔵せん断弾性率が5×10〜1×10Paであり、かつ損失正接(tanδ)が1.4以下である液状の光硬化性樹脂組成物である。
該貯蔵せん断弾性率および損失正接の測定方法は、後記に詳述するように、動的粘弾性測定装置を用い、未硬化の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に動的せん断歪を印加しながら光を照射して樹脂組成物を硬化させる方法で行う。
硬化後のせん断弾性率が5×10Pa以下であると硬化時の樹脂の収縮により発生する応力を充分に低減でき、表示パネルの表示品位への影響を抑えることができる。該せん断弾性率が5×10Pa以上であると樹脂層の弾性変形が生じにくく、表示デバイスと透明面材の位置ずれを防止しやすい。また、損失正接が1.4以下であると、表示装置を垂直に設置して使用したときにも表示デバイスが透明面材に充分に固定され、表示デバイスの自重によって樹脂層が塑性変形するなどして、経時的に表示デバイスの位置がずれるのを良好に防止できる。
該貯蔵せん断弾性率は8×10〜5×10Paが好ましく、1×10〜3×10Paがより好ましい。また該損失正接は1.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0056】
後述するIPSタイプの液晶表示デバイスのように、樹脂層の硬化時の収縮による応力などにより表示性能に影響を受けやすい表示デバイスを用いる場には、硬化後に貯蔵せん断弾性率が5×10〜5×10Pa、かつ損失正接(tanδ)が0.2より小さい液状の光硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。該せん断弾性率を5×10Pa以下とすることで硬化時の樹脂の収縮より発生する応力を充分小さく抑えることができるとともに、損失正接(tanδ)を0.2より小さくすることで、低いせん断弾性率の樹脂層であっても、表示デバイスの自重による樹脂層の経時的な塑性変形をおさえることができる。この場合、損失正接(tanδ)が0.1以下とするとより好ましい。
損失正接の下限値は特に限定されず、製造上とり得る範囲とすることができるが、比較的柔軟な樹脂層の場合、通常0.01以上である。
【0057】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の粘度は、0.05〜50Pa・sが好ましく、1〜20Pa・sがより好ましい。粘度が0.05Pa・s以上であると、後述するモノマー(B’)の割合を抑えることができ、樹脂層の物性の低下が抑えられる。また、低沸点の成分が少なくなるため、後述する減圧積層方法に好適となる。粘度が50Pa・s以下であると、樹脂層に気泡が残留しにくい。
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定する。
【0058】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物は、好ましくは光硬化性の硬化性化合物(II)、光重合開始剤(C2)、および非硬化性オリゴマー(D)を含む液状の組成物である。非硬化性オリゴマー(D)は、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化時に組成物中の硬化性化合物(II)と硬化反応しない、1分子当たり0.8〜3個の水酸基を有するオリゴマーである。
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に非硬化性オリゴマー(D)を含有させることにより、硬化後の樹脂層の損失正接(tanδ)の上昇を抑えつつ、貯蔵せん断弾性率を低下させることができるため、動的粘弾性測定における貯蔵せん断弾性率と損失正接(tanδ)のそれぞれの好ましい範囲を同時に達成することができる。
また、連鎖移動剤を少量含有させることで、硬化後の樹脂層の分子量を調整して樹脂層の貯蔵弾性率を低減することができるが、硬化速度が遅くなる場合が多い。
本発明の非硬化性オリゴマー(D)を比較的多く含む樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物においては、オリゴマー(D)の含有量で弾性率を調整することができるため、連鎖移動剤の含有量を少なくするか、含まないようにすることが好ましい。具体的には、硬化性化合物(II)の全体、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計100質量部に対して、連鎖移動剤の添加量が1質量部以下が好ましく、0.5質量部未満がより好ましい。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0059】
(硬化性化合物(II))
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中の硬化性化合物(II)は、該樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化時に硬化反応する硬化性化合物の1種以上からなり、該硬化性化合物の少なくとも1種は、前記樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化時に反応しない水酸基を有する化合物(IIa)であることが好ましい。
硬化性化合物(II)が該化合物(IIa)を含有すると、硬化性化合物(II)を単独で硬化反応させた硬化物中には水酸基が存在する。かかる水酸基の存在は、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中における非硬化性オリゴマーの安定化に寄与する。
したがって、前記硬化時に反応しない水酸基を有する化合物(IIa)は、硬化反応後に未反応の水酸基が存在するものであればよく、例えば化合物(IIa)の水酸基の一部が硬化反応しても、他部が硬化反応せずに未反応の状態で残ればよい。
かかる硬化時に反応しない水酸基を有する化合物(IIa)は、硬化反応に寄与する硬化性基を有するとともに、水酸基を有するものであればよく、モノマーであってもよく、繰り返し単位を有するオリゴマーであってもよい。未硬化時の光硬化性組成物の粘度を調整しやすくする点では、硬化性基を有し、かつ水酸基を有するモノマーを化合物(IIa)として用いることが好ましい。水酸基を有するモノマーである化合物(IIa)の具体例としては、水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等)が好ましく、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0060】
硬化性化合物(II)としては、粘度を前記範囲に調整しやすい点から、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A’)の1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマー(B’)の1種以上とを含むことが好ましい。
この場合、モノマー(B’)の少なくとも一部として、硬化性基を有するとともに、水酸基を有する、分子量が125〜600であるモノマー(B3)を用いることが好ましい。
【0061】
オリゴマー(A’)またはモノマー(B’)の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い樹脂層が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる基が好ましい。
オリゴマー(A’)における硬化性基と、モノマー(B’)における硬化性基とは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。比較的高分子量のオリゴマー(A’)における硬化性基は、比較的低分子量のモノマー(B’)における硬化性基よりも反応性が低くなりやすいため、モノマー(B’)の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり硬化反応が不均質となるおそれがある。両者の硬化性基の反応性の差を小さくし、均質な樹脂層を得るために、オリゴマー(A’)の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とし、モノマー(B’)の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とすることがより好ましい。
【0062】
(オリゴマー(A’))
オリゴマー(A’)の数平均分子量は、1000〜100000であるのが好ましく、10000〜70000であるのがより好ましい。オリゴマー(A’)の数平均分子量が該範囲であると、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の粘度を前記範囲に調整しやすい。
オリゴマー(A’)の数平均分子量は、GPC測定によって得られた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、GPC測定において、未反応の低分子量成分(モノマー等)のピークが現れる場合は、該ピークを除外して数平均分子量を求める。
【0063】
オリゴマー(A’)としては、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、樹脂層の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり平均1.8〜4個有するものが好ましい。
オリゴマー(A’)としては、ウレタン結合を有するウレタンオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ウレタン鎖の分子設計等によって硬化後の樹脂の機械的特性、面材との密着性等を幅広く調整できる点から、ウレタンオリゴマー(A2)が好ましい。
ウレタンオリゴマー(A2)は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、該プレポリマーのイソシアネート基に、前記モノマー(B2)を反応させる方法で合成されるものが好ましい。
ポリオール、ポリイソシアネートとしては、公知の化合物、たとえば、国際公開第2009/016943号パンフレットに記載のウレタン系オリゴマー(a)の原料として記載された、ポリオール(i)、ジイソシアネート(ii)等が挙げられ、本明細書に組み入れられる。
ウレタンオリゴマー(A2)としては市販されているものを用いてもよく、例えばEB230(ダイセル・サイテック社製、官能基数2、ポリプロピレングリコール/IPDI/2−ヒドロキシエチルアクリレートの反応生成物と認められる)、U−200AX(新中村化学社製、官能基数2、脂肪族ポリエステルポリオール/脂肪族または脂環族ポリイソシアネート/2−ヒドロキシエチルアクリレートの反応生成物と認められる)が挙げられる。
【0064】
オリゴマー(A’)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計(100質量%)のうち、20〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。該オリゴマー(A’)の割合が20質量%以上であると、樹脂層の耐熱性が良好となる。該オリゴマー(A’)の割合が90質量%以下であると、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、面材と樹脂層との密着性が良好となる。該オリゴマー(A’)は、硬化性基1個あたりの分子量が大きいため、硬化時の収縮を特に抑えるためには、該オリゴマー(A’)の割合を70〜90質量%とすることがより好ましい。
【0065】
(モノマー(B’))
モノマー(B’)の分子量は125〜600であるのが好ましく、140〜400であるのがより好ましい。モノマー(B’)の分子量が125以上であると、後述の減圧積層方法によって表示装置を製造する際のモノマーの揮発が抑えられる。モノマー(B’)の分子量が600以下であると、面材と樹脂層との密着性が良好となる。
モノマー(B’)は、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、樹脂層の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1〜3個有するものが好ましい。
モノマー(B’)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計(100質量%)のうち、10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0066】
モノマー(B’)は、硬化性基を有し、かつ水酸基を有するモノマー(B3)を含むことが好ましい。モノマー(B3)は非硬化性オリゴマー(D)の安定化に寄与する。またモノマー(B3)を含有させると面材と樹脂層との良好な密着性が得られやすい。モノマー(B3)の1分子中の水酸基の数は、非硬化性オリゴマー(D)が安定化できる数を任意に選ぶことができるが、入手の容易性の点で1分子中に1〜2個であることが好ましい。
水酸基を有するモノマー(B3)としては、シール部形成用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B3)と同様のものが挙げられ、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが特に好ましい。
モノマー(B3)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計(100質量%)のうち、10〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。該モノマー(B3)の含有割合が10質量%以上であると、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の安定性向上、および面材と樹脂層との密着性向上の効果が十分に得られやすい。モノマー(B3)の含有割合が60質量%以下であると、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物よりなる硬化物の硬さが高くなりすぎず好ましい。
【0067】
モノマー(B’)は、樹脂層の機械的特性の点から、下記のモノマー(B4)を含むことが好ましい。モノマー(B4)は硬化後の樹脂層のガラス転移温度(Tg)を低下させるため、硬化後の樹脂層の弾性率の低下に寄与し、該樹脂層の柔軟性を向上させる。
ただし、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性を高めて硬化に要する時間を短くする場合など、モノマー(B4)の含有量を小さくするか、あるいは含有させない方が好ましい場合もある。
モノマー(B4):炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレートからなる群から選ばれる1種以上。炭素数が8以上であると、硬化物のガラス転移温度を低下させることができる点で好ましく、炭素数が22以下であると原料のアルコールを天然物経由にて容易に入手することができる点で好ましい。
モノマー(B4)としては、n−ドデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、n−ベヘニルメタクリレート等が挙げられ、n−ドデシルメタクリレート、またはn−オクタデシルメタクリレートが好ましい。
モノマー(B4)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計(100質量%)のうち、5〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。該モノマー(B4)の含有割合が5質量%以上であると、モノマー(B4)の充分な添加効果が得られやすい。
【0068】
(光重合開始剤(C2))
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C2)としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられ、フォスフィンオキサイド系、チオキサントン系の光重合開始剤が好ましく、光重合反応後に着色を抑える面ではフォスフィンオキサイド系が特に好ましい。
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物における光重合開始剤(C2)の含有量は、硬化性化合物(II)の全体、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0069】
面材の側方から照射する光により、シール材に隣接する樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の一部を硬化させる場合には、光重合開始剤(C2)は、前記光重合開始剤(C1)の吸収波長域(λ1)よりも長波長側に存在する吸収波長域(λ2)を有するものが好ましい。光重合開始剤(C2)は、吸収波長域(λ2)のみを有するものであってもよく、吸収波長域(λ1)と重複する吸収波長域(λ1’)および吸収波長域(λ2)を有するものであってもよい。
【0070】
(非硬化性オリゴマー(D))
非硬化性オリゴマー(D)は、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中において良好に相溶し、かつ硬化に寄与しないので、透明性および均質性を損なうことなく樹脂層の硬化時の収縮による応力を低減することができる。
非硬化性オリゴマー(D)は、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化時に組成物中の硬化性化合物(II)と硬化反応しない、1分子当たり0.8〜3個の水酸基を有するオリゴマーである。1分子あたりの水酸基は2〜3個がより好ましい。1分子当たりの水酸基が0.8個以上であると非硬化性オリゴマー間、または非硬化性オリゴマーと硬化性化合物(II)より得られる硬化物との間で水酸基間の相互作用により非硬化性オリゴマーを安定に保持することができる点で好ましく、1分子あたりの水酸基が3個以下であると、非硬化性オリゴマーが樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中において良好に相溶できる点で好ましい。
非硬化性オリゴマー(D)の水酸基1個あたりの数平均分子量(Mn)は400〜8000が好ましい。水酸基1個あたりの数平均分子量が400以上あると、非硬化性オリゴマー(D)の極性が高くなりすぎず、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中の硬化性化合物(II)との良好な相溶性が得られやすい。水酸基1個あたりの数平均分子量が8000以下であると、硬化性化合物(II)に由来する水酸基と、非硬化性オリゴマー(D)の水酸基との間の相互作用によって、硬化後の樹脂層中で非硬化性オリゴマー(D)を安定化させる効果が得られやすい。かかる相互作用には水素結合が関与すると推測される。
非硬化性オリゴマー(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
水酸基を含有する非硬化性オリゴマー(D)の例としては、高分子量のポリオールなどが挙げられ、ポリオキシアルキレンポリール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、炭素数2〜4個のオキシアルキレンの繰り返し単位を有する、ポリオキシアルキレンモノオール、ポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオールが挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレンジオール(以下ポリプロピレングリコールとも記載する)、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1個あたりの数平均分子量(Mn)は400〜8000が好ましく、600〜5000がより好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオールの残基とグルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸の残基とを有する脂肪族系ポリエステルジオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては1,6−ヘキサンジオールなどのジオール残基を有する脂肪族ポリカーボネートジオール、脂肪族環状カーボネートの開環重合体などの脂肪族ポリカーボネートジオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールの水酸基1個あたりの数平均分子量(Mn)は400〜8000が好ましく、800〜6000がより好ましい。
本明細書における非硬化性オリゴマー(D)の数平均分子量は、JISK1557−1(2007年版)に準拠して測定した水酸基価A(KOH mg/g)と非硬化性オリゴマー(D)1分子内の水酸基の数Bより下記式(1)にて算出した値である。
非硬化性オリゴマー(D)の分子量=56.1×B×1000/A …(1)
【0072】
硬化後の樹脂層の弾性率がより低くなりやすい点で、非硬化性オリゴマー(D)としてポリオキシアルキレンポリオールを用いることが好ましく、特にポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。また、後述するように、非硬化性オリゴマー(D)の極性を調節するためにポリオキシプロピレンポリオールのオキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換してもよい。オキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換してもよい、とは前述のポリオール(i)における同様の説明と同じである。
例えば、オリゴマー(A’)が、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーであり、非硬化性オリゴマー(D)がポリオキシアルキレンポリオールであることが相溶性の点で好ましい。
【0073】
本発明において、未硬化時の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を安定にし、硬化後の樹脂層から非硬化性オリゴマー(D)が分離することを抑えるために、オリゴマー(A’)と非硬化性オリゴマー(D)とが、同一構造のまたは類似構造の分子鎖を有することが好ましい。
具体的には、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中のオリゴマー(A’)を合成する際の原料に、例えばポリオール等の水酸基を有する化合物(以下、水酸基含有化合物ということもある。)を用いるとともに、該、同じ水酸基含有化合物を非硬化性オリゴマー(D)として用いることが好ましい。
例えばオリゴマー(A’)が、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーである場合、該ポリオキシアルキレンポリオールを非硬化性オリゴマー(D)として用いることが好ましい。
【0074】
または、オリゴマー(A’)の原料としての水酸基含有化合物と、非硬化性オリゴマー(D)として用いる水酸基含有化合物が同一でない場合には、両者の分子鎖が、共通の繰り返し単位を有するなど、部分的に共通の構造を有するとともに、両者の極性を同程度とすることが好ましい。極性の調整方法は、例えば極性基を導入することにより極性を上げる方法、オキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換することにより極性を上げる方法、水酸基1個あたりの分子量を小さくすることによって極性を上げる方法などが挙げられる。これらの方法は組み合わせてもよい。
例えばオリゴマー(A’)が、オキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換したポリオキシプロピレンポリオール(a’)およびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーである場合、オキシエチレン基を有しないポリオキシプロピレンポリオールであって、水酸基1個当たりの分子量が前記ポリオール(a’)よりも小さいポリオキシプロピレンポリオールを非硬化性オリゴマー(D)として用いることが好ましい。
【0075】
最も好ましい樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の一例として、オキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換したポリオキシプロピレンジオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、前記モノマー(B2)と反応させて得られるウレタンオリゴマー(A2)をオリゴマー(A’)として含み、該ウレタンオリゴマー(A2)の原料と同じ、オキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換したポリオキシプロピレンジオールを非硬化性オリゴマー(D)として含み、かつモノマー(B’)として水酸基を有するモノマー(B3)を含む組成物が挙げられる。
このように、オリゴマー(A’)が非硬化性オリゴマー(D)と同一の分子構造を部分的に有すると、組成物中の非硬化性オリゴマー(D)の相溶性がより高まり、さらにモノマー(B’)が水酸基を有することで、硬化性化合物(II)の硬化後の分子構造中の水酸基と非硬化性オリゴマー(D)の分子構造中の水酸基との相互作用により、硬化物中で非硬化性オリゴマー(D)が安定に存在することができると考えられる。
【0076】
また他の例として、オキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換したポリオキシプロピレンジオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、前記モノマー(B2)と反応させて得られるウレタンオリゴマー(A2)をオリゴマー(A’)として含み、オキシエチレン基で置換されていないポリオキシプロピレンジオールであって、ウレタンオリゴマー(A2)の原料のポリオキシプロピレンジオールよりも分子量が小さいものを非硬化性オリゴマー(D)として含み、かつモノマー(B’)として水酸基を有するモノマー(B3)を含む組成物においても、組成物中の非硬化性オリゴマー(D)の良好な相溶性を得ることができ、硬化物中で非硬化性オリゴマー(D)を安定に存在させることができる。
【0077】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中の非硬化性オリゴマー(D)の含有量は、10〜90質量%が好ましい。非硬化性オリゴマーの含有量が10質量%以上であると、硬化時の樹脂の収縮により発生する応力を低減させる効果が充分に得られやすい。90質量%以下であると面材どうしが充分に固定されやすく、表面材と裏面材の接合後に経時的な位置ずれが良好に防止されやすい。非硬化性オリゴマー(D)の含有量は、硬化性化合物(II)の組成等に応じて、貯蔵せん断弾性率と損失正接の好ましい値が得られるように設定するのが好ましい。より好ましい範囲は30〜80質量%である。
【0078】
(添加剤)
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合禁止剤、光硬化促進剤、連鎖移動剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、または光安定剤を含むことが好ましい。特に、重合禁止剤を重合開始剤より少ない量含むことによって、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の安定性を改善でき、硬化後の樹脂層の分子量も調整できる。
【0079】
[工程(c)]
工程(b)の後、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が供給された第1の面材を減圧装置に入れ、減圧装置内の固定支持盤の上に硬化性樹脂組成物の面が上になるように第1の面材を平置きする。
減圧装置内の上部には、上下方向に移動可能な移動支持機構が設けられ、移動支持機構に第2の面材が取り付けられる。第2の面材が表示デバイスの場合、画像を表示する側の表面を下に向ける。第2の面材の表面に反射防止層が設けられている場合、反射防止層が形成されていない側の表面を下に向ける。
第2の面材は、第1の面材の上方かつ樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物と接しない位置に置く。すなわち、第1の面材の上の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物と第2の面材とを接触させることなく対向させる。
【0080】
なお、上下方向に移動可能な移動支持機構を減圧装置内の下部に設け、移動支持機構の上に硬化性樹脂組成物が供給された第1の面材を置いてもよい。この場合、第2の面材は、減圧装置内の上部に設けられた固定支持盤に取り付けて、第1の面材と第2の面材とを対向させる。
また、第1の面材および第2の面材の両方を、減圧装置内の上下に設けた移動支持機構で支持してもよい。
【0081】
第1の面材および第2の面材を所定の位置に配置した後、減圧装置の内部を減圧して所定の減圧雰囲気とする。可能であれば、減圧操作中または所定の減圧雰囲気とした後に、減圧装置内で第1の面材および第2の面材を所定の位置に位置させてもよい。
減圧装置の内部が所定の減圧雰囲気となった後、移動支持機構で支持された第2の面材を下方に移動し、第1の面材の上の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の上に第2の面材を重ね合わせる。
【0082】
重ね合わせによって、第1の面材の表面(表示デバイスの場合は、画像表示する側の表面)、第2の面材の表面(表示デバイスの場合は、画像表示する側の表面)、および未硬化のシール部で囲まれた空間内に、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が密封される。
重ね合わせの際、第2の面材の自重、移動支持機構からの押圧等によって、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が押し広げられ、前記空間内に樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が充満し、その後、工程(d)において高い圧力雰囲気に曝した際に、気泡の少ないまたは気泡のない樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の層が形成される。
【0083】
重ね合わせの際の減圧雰囲気は、100Pa以下であり、10Pa以上が好ましい。減圧雰囲気があまりに低圧であると、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に含まれる各成分(硬化性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、光安定剤等)に悪影響を与えるおそれがある。たとえば、減圧雰囲気があまりに低圧であると、各成分が気化するおそれがあり、また、減圧雰囲気を提供するために時間がかかることがある。減圧雰囲気の圧力は、15〜40Paがより好ましい。
【0084】
第1の面材と第2の面材とを重ね合わせた時点から減圧雰囲気を解除するまでの時間は、特に限定されず、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の密封後、直ちに減圧雰囲気を解除してもよく、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の密封後、減圧状態を所定時間維持してもよい。減圧状態を所定時間維持することによって、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が密閉空間内を流れて第1の面材と第2の面材と間の間隔が均一となり、雰囲気圧力を上げても密封状態を維持しやすくなる。減圧状態を維持する時間は、数時間以上の長時間であってもよいが、生産効率の点から、1時間以内が好ましく、10分以内がより好ましい。
【0085】
本実施形態の製造方法においては、粘度が高いシール部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化のシール部を形成した場合、工程(c)で得られた積層前駆体における樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の厚さを10μm〜3mmと比較的厚くすることができる。
【0086】
[工程(d)]
工程(c)において減圧雰囲気を解除した後、積層前駆体を雰囲気圧力が50kPa以上の圧力雰囲気下に置く。
積層前駆体を50kPa以上の圧力雰囲気下に置くと、上昇した圧力によって第1の面材と第2の面材とが密着する方向に押圧されるため、積層前駆体内の密閉空間に気泡が存在すると、気泡に樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が流動していき、密閉空間全体が樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物によって均一に充填される。
圧力雰囲気は、通常80kPa〜120kPaである。圧力雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、それよりも高い圧力であってもよい。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化等の操作を、特別な設備を要することなく行うことができる点から、大気圧雰囲気が最も好ましい。
【0087】
積層前駆体を50kPa以上の圧力雰囲気下に置いた時点から樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化を開始するまでの時間(以下、高圧保持時間と記す。)は、特に限定されない。積層前駆体を減圧装置から取り出して硬化装置に移動し、硬化を開始するまでのプロセスを大気圧雰囲気下で行う場合には、そのプロセスに要する時間が高圧保持時間となる。よって、大気圧雰囲気下に置いた時点ですでに積層前駆体の密閉空間内に気泡が存在しない場合、またはそのプロセスの間に気泡が消失した場合は、直ちに樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。気泡が消失するまでに時間を要する場合は、積層前駆体を気泡が消失するまで50kPa以上の圧力の雰囲気下で保持する。また、高圧保持時間が長くなっても通常支障は生じないことから、プロセス上の他の必要性から高圧保持時間を長くしてもよい。高圧保持時間は、1日以上の長時間であってもよいが、生産効率の点から、6時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、さらに生産効率が高まる点から、10分以内が特に好ましい。
【0088】
ついで、積層前駆体を50kPa以上の圧力雰囲気下に置いた状態で、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、表示デバイスと保護板とを接合する樹脂層が形成され、表示装置が製造される。
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物およびシール部形成用光硬化性樹脂組成物は、光を照射して硬化させる。たとえば、光源(紫外線ランプ、高圧水銀灯、ブラックライト、ケミカルランプ、UV−LED等)から紫外線または短波長の可視光を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる。
また、この際に、シール部形成用光硬化性樹脂組成物から形成される未硬化のシール部は、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化と同時に硬化させてもよく、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化の前にあらかじめ硬化させてもよい。また、透明面材の一部に遮光印刷部が形成されており、遮光印刷部に挟持されてシール部が形成される場合には、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化に用いられる、透明面材の透光部を通る光によってシール部を硬化させることは難しいため、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化の後にシール部を硬化させてもよい。
例えば、積層前駆体の第1の面材および第2の面材のうち、光透過性を有する側から樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に光を照射し、また、積層前駆体の側方から遮光部および表示デバイスに挟まれた未硬化のシール部および樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に光を照射する。
【0089】
第1の面材および第2の面材のうち、表示デバイスは、動作させない状態では光透過性を有さないため、保護板となる透明面材の側から透光部を通して光を照射する。
また、透明面材の周辺部に遮光印刷部が設けられていて、遮光印刷部と表示デバイスに挟持される領域に、未硬化のシール部や樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が存在すると、透明面材の透光部からの光だけでは充分に硬化できない。よって、表示デバイスの側方から光を照射する。
【0090】
光としては、紫外線または450nm以下の可視光が好ましい。特に、透明面材に反射防止層が設けられ、反射防止層または反射防止層を形成した透明樹脂フィルムやその反射防止フィルムと透明面材間に設けられた粘着層などが紫外線を透過しない場合には、可視光による硬化が必要となる。
側方からの光照射の光源としては、透明面材の側からの光照射に用いる光源を用いてもよいが、紫外線または450nm以下の可視光を発光するLEDを用いることが光源の配置スペースや特定個所への効率的な光照射に適している点から好ましい。
光照射のステップとしては、透明面材の側からの光照射の後に側方から光照射してもよいし、その逆、または同時に光照射してもよいが、遮光印刷部における未硬化のシール部や樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の光硬化をより促進するためには、先に側方から光を照射するか、側方と同時に透明面材の側から光照射することが好ましい。また、光照射後に経時的に樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化が進むなど、光硬化性樹脂組成物の硬化に時間を要する場合などに、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化がほぼ終了した後に、側方からの光照射によりシール部を硬化させることもできる。
【0091】
〔具体例〕
本実施形態の製造方法において、第1の面材として裏面材を用いるか表面材を用いるかは任意である。よって、表示装置は、第1の面材の選択に応じて、それぞれ以下の2種類の方法によって製造できる。
(α−1)第1の面材として表示デバイス(裏面材)を用い、第2の面材として保護板となる透明面材(表面材)を用いる方法。
(α−2)第1の面材として保護板となる透明面材(表面材)を用い、第2の面材として表示デバイス(裏面材)を用いる方法。
【0092】
以下、方法(α−1)の場合を例にして、図1の表示装置の製造方法を、図面を用いて具体的に説明する。
【0093】
(工程(a))
図3および図4に示すように、表示デバイス50(第1の面材)の周縁部に沿ってディスペンサ(図示略)等によってシール部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化のシール部12を形成する。
表示デバイスの外周部には、表示デバイスを動作させるための電気信号を伝達するFPC等の配線部材が設置されていることがある。本実施形態の製造方法において各面材を保持する際に、配線部材の配置を容易にする点では、表示デバイスを第1の面材として下側に配置することが好ましい。
【0094】
(工程(b))
ついで、図5および図6に示すように、表示デバイス50の未硬化のシール部12に囲まれた矩形状の領域13に樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14を供給する。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14の供給量は、未硬化のシール部12と表示デバイス50と透明面材10(図7参照)とによって密閉される空間が樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14によって充填されるだけの量にあらかじめ設定されている。
【0095】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14の供給は、図5および図6に示すように、表示デバイス50を下定盤18に平置きにし、水平方向に移動するディスペンサ20によって樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14を線状、帯状または点状に供給することによって実施される。
ディスペンサ20は、一対の送りねじ22と、送りねじ22に直交する送りねじ24とからなる公知の水平移動機構によって、領域13の全範囲において水平移動可能となっている。なお、ディスペンサ20の代わりに、ダイコータを用いてもよい。
【0096】
(工程(c))
ついで、図7に示すように、表示デバイス50と透明面材10(第2の面材)とを減圧装置26内に搬入する。減圧装置26内の上部には、複数の吸着パッド32を有する上定盤30が配置され、下部には、下定盤31が設けられている。上定盤30は、エアシリンダ34によって上下方向に移動可能とされている。
透明面材10は、吸着パッド32に取り付けられる。表示デバイス50は、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14が供給された面を上にして下定盤31の上に固定される。
【0097】
ついで、減圧装置26内の空気を真空ポンプ28によって吸引する。減圧装置26内の雰囲気圧力が、たとえば15〜40Paの減圧雰囲気に達した後、透明面材10を上定盤30の吸着パッド32によって吸着保持した状態で、下に待機している表示デバイス50に向けて、エアシリンダ34を動作させて下降させる。そして、表示デバイス50と透明面材10とを、未硬化のシール部12を介して重ね合わせて積層前駆体を構成し、減圧雰囲気下で所定時間積層前駆体を保持する。
【0098】
なお、下定盤31に対する表示デバイス50の取り付け位置、吸着パッド32の個数、上定盤30に対する透明面材10の取り付け位置等は、表示デバイス50および透明面材10のサイズ、形状等に応じて適宜調整する。この際、吸着パッドとして静電チャックを用い、特願2008−206124に添付された明細書(本明細書に組み入れられる)に記載の静電チャック保持方法を採用することで、ガラス基板を安定して減圧雰囲気下で保持できる。
【0099】
(工程(d))
ついで、減圧装置26の内部をたとえば大気圧にした後、積層前駆体を減圧装置26から取り出す。積層前駆体を大気圧雰囲気下に置くと、積層前駆体の表示デバイス50側の表面と透明面材10側の表面とが大気圧によって押圧され、密閉空間内の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14が表示デバイス50と透明面材10とで加圧される。この圧力によって、密閉空間内の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14が流動して、密閉空間全体が樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14によって均一に充填される。
【0100】
ついで、透明面材に遮光印刷部が設けられ、遮光印刷部に挟持される未硬化のシール部と樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を先に硬化させる場合には、図8に示すように、積層前駆体の側方から遮光印刷部55および表示デバイス50に挟まれた未硬化のシール部12および樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14に光(紫外線または450nm以下の可視光)を表示デバイスの全周に照射し、かつ透明面材10の側から透光部56を通して樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14に光(紫外線または450nm以下の可視光)を照射し、積層前駆体内部の未硬化のシール部12および樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14を硬化させることによって、表示装置1が製造される。
透明面材に遮光印刷部がない場合には、透明面材10の側から積層前駆体の全面に光を照射し、積層前駆体内部の未硬化のシール部12および樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物14を硬化させることによって、表示装置1が製造される。
【0101】
以上、方法(α−1)の場合を例にして本実施形態の表示装置の製造方法を具体的に説明したが、他の方法(α−2)の場合も同様にして表示装置を製造できる。
【0102】
[作用効果:表示装置の製造方法]
以上説明した本実施形態の表示装置の製造方法によれば、比較的大面積の表示装置を樹脂層中に気泡を発生させることなく製造できる。仮に、減圧下で密封した樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中に気泡が残存しても、硬化前の高い圧力雰囲気下では密封した樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物にもその圧力がかかり、その気泡の体積は減少し、気泡は容易に消失する。たとえば、100Pa下で密封した樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物中の気泡中の気体の体積は100kPa下では1/1000になると考えられる。気体は樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に溶解することもあるので、微小体積の気泡中の気体は樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に速やかに溶解して消失する。
【0103】
また、密封後の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に大気圧等の圧力がかかっても、液状の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物は流動性の組成物であることから、表示デバイスの表面にその圧力は均一に分布し、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に接した表示デバイスの表面の一部にそれ以上の応力がかかることはなく、表示デバイスの損傷のおそれは少ない。
【0104】
また、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化による樹脂層と表示デバイスや透明面材との界面接着力は、熱融着による界面接着力よりも高い。しかも、流動性の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を加圧して表示デバイスや透明面材の表面に密着させ、その状態で硬化させるため、より高い界面接着力が得られるとともに、表示デバイスや透明面材の表面に対し均一な接着が得られ、部分的に界面接着力が低くなることが少ない。
したがって、樹脂層の表面にて剥離が発生するおそれが低く、また界面接着力が不充分な部分から水分や腐食性ガスが浸入するおそれも少ない。
【0105】
また、2枚の面材間の狭くかつ広い面積の空間に流動性の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を注入する方法(注入法)と比較すると、気泡の発生が少なくかつ短時間に樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を充填できる。しかも、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の粘度の制約が少なく、高粘度の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を容易に充填できる。したがって、樹脂層の強度を高められる比較的高分子量の硬化性化合物を含む高粘度の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0106】
また、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の光重合開始剤(C2)として、未硬化のシール部の光重合開始剤(C1)の吸収波長域(λ1)よりも長波長側に存在する吸収波長域(λ2)を有する光重合開始剤(C2)を用い、そして、積層前駆体の側方から照射される光として、吸収波長域(λ1)内の波長の光および吸収波長域(λ2)内の波長の光の両方を用いることにより、未硬化のシール部の光重合開始剤(C1)に吸収されなかった吸収波長域(λ2)内の波長の光が、遮光部における表示デバイスに挟まれた樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に充分に到達し、吸収波長域(λ2)を有する光重合開始剤(C2)によって、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化を充分に行うことができる。
【0107】
[作用効果:硬化性樹脂組成物]
表示デバイスと透明面材(保護板)との接合においては、硬化性樹脂の硬化時の収縮率を低減させたり、硬化後の樹脂層の弾性率を低減させることで、表示デバイスに及ぼす応力を低減して表示ムラなど表示品位が損なわれるのを効果的に防止することができる。一方、樹脂層の弾性率が低すぎると、該樹脂層の弾性変形により表示デバイスと透明面材の位置ずれが生じるおそれがある。さらに、本発明者等の知見によれば、樹脂層の弾性率が充分に高くても、表示装置を垂直に配置して使用する場合など表示デバイスの自重が長時間樹脂層に加わると、樹脂層が経時的に塑性変形して表示デバイスの接合位置の精度が低下するおそれがある。
これに対して本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後の動的粘弾性測定における貯蔵せん断弾性率を5×10〜1×10Paとし、かつ損失正接を1.4以下とすることにより、樹脂層の弾性変形による面材どうし(表示デバイスと保護板)の位置ずれを防止しつつ、樹脂層の硬化収縮による応力を低減できるとともに、樹脂層の経時的な塑性変形による面材どうし(表示デバイスと保護板)の位置ずれを効果的に防止することができる。
【0108】
特に、表示デバイスが液晶表示デバイスであり、更にIPS(In−plane Switching)タイプや、視角改善する光学フィルムを表示面に貼合したTN(Twisted Nematic)タイプの液晶表示デバイスの場合には、表示デバイスに加わる応力が表示品位に悪影響を及ぼしやすいため、接合樹脂層が低弾性率であることが好ましい。
したがって、本発明の硬化性樹脂組成物を適用する表示装置における表示デバイスとしては、液晶表示デバイスが好ましく、IPSタイプの液晶表示デバイスまたはTNタイプの液晶表示デバイスがより好ましい。
【0109】
また、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物に、硬化時に硬化性化合物(II)と硬化反応しない非硬化性成分として、1分子あたりに0.8〜3個の水酸基を有する非硬化性オリゴマーを含有させるとともに、硬化性化合物(II)中に、硬化時に反応しない水酸基を存在させると、硬化後の樹脂層の損失正接(tanδ)の上昇を抑えつつ、貯蔵せん断弾性率を低下させることができるとともに、未硬化時の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の安定性が良好で、粘性を低くでき、硬化時の硬化反応の均一性も得られる。
未硬化時の安定性が良好で、硬化時の硬化反応の均一性が良好であると、透明性が良好な樹脂層が得られやすい。未硬化時の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の粘性が低いと、気泡の発生が充分に抑えられやすく、面材と樹脂層との良好な界面接合力が得られやすい。
【0110】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、表示装置に限らず、一対の面材を樹脂層を介して積層した積層体に適用することができ、同様の効果が得られる。
また本発明の硬化性樹脂組成物は熱硬化性の樹脂組成物であってもよく、この場合は、硬化性化合物の硬化性基として公知の熱硬化性基を用いる。また必要に応じて公知の熱重合開始剤を含有させる。上記実施形態において、樹脂層形成用硬化性樹脂組成物が熱硬化性である場合は、シール部形成用硬化性樹脂組成物も熱硬化性とすることが好ましい。
特に、光硬化性の樹脂組成物は、硬化の際に高い温度を必要としないことから、高温による面材等への悪影響のおそれが少ない点で好ましい。
光重合開始剤と熱重合開始剤を併用するなどして、光硬化と熱硬化を同時に、あるいは個別に行い硬化性を高めることもできる。
また本発明の硬化性樹脂組成物を用いて積層体を製造する方法は、上記実施形態の方法に限らず、公知の方法を適宜用いることができる。
【実施例】
【0111】
以下に、本発明の有効性を確認するために実施した例について示す。例1〜4、8および9が実施例であり、例5〜7が比較例である。
【0112】
(貯蔵せん断弾性率、およびその損失正接の測定方法)
硬化後の樹脂層の貯蔵せん断弾性率とその損失正接(tanδ)は、レオメーター(アントンパール社製、Physica MCR301)用いて、未硬化の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を、ソーダライムガラス製のステージと測定用スピンドル(アントンパール社製、D−PP20/AL/S07)の間の0.4mmの隙間に挟持し、窒素雰囲気下35℃でステージの下部に設置したブラックライト(日本電気社製、FL15BL)により30分間2mW/cm2の光を照射しながら、1%の動的せん断ひずみ印加して樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物を硬化させて測定した。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の硬化時に、スピンドルの法線方向に応力が発生しないようにスピンドルの位置を自動追従調整させた。
照射強度は、照度計(ウシオ電機社製、紫外線強度計ユニメーターUIT−101)を用いて、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物が設置されるステージ上で測定した。
【0113】
(数平均分子量)
オリゴマーの数平均分子量は、GPC装置(TOSOH社製、HLC−8020)を用いて求めた。
(粘度)
光硬化性樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業社製、RE−85U)にて測定した。
(ヘイズ値)
ヘイズ値は、東洋精機製作所社製のヘイズガードIIを用い、ASTM D1003に準じた測定によって求めた。
【0114】
〔例1〕
(表示デバイス)
市販の17型液晶モニター(Acer社製、V137b)から液晶表示デバイスを取り出した。液晶表示デバイスは、表示モードがTN(Twisted Nematic)タイプで、表示部の大きさは、長さ338mm、幅270mmであった。液晶表示デバイスの両面には偏光板が貼合されており、長辺の片側に6枚、短辺の片側に3枚の駆動用のFPCが接合されており、長辺側のFPCの端部にはプリント配線板が接合されていた。該液晶表示デバイスを表示デバイスAとした。
【0115】
(ガラス板)
長さ355mm、幅290mm、厚さ2.8mmのソーダライムガラスの一方の表面の周縁部に、透光部が長さ340mm、幅272mmとなるように黒色顔料を含むセラミック印刷にて額縁状に遮光印刷部を形成して、保護板となるガラス板Bを作製した。
【0116】
(シール部形成用光硬化性樹脂組成物)
分子末端にエチレンオキシドを付加した1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000、ポリプロピレングリコール分子中のエチレンオキシド含有量24質量%)と、ヘキサメチレンジイソシアネートとを、6対7となるモル比で混合し、ついでイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、IBXA)で希釈した後、錫化合物の触媒存在下で70℃で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加え、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.03質量部を添加して70℃で反応させることによって、30質量%のイソボルニルアクリレートで希釈されたウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UC−1と記す。)溶液を得た。UC−1の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約55000であった。UC−1溶液の60℃における粘度は約580Pa・sであった。
【0117】
UC−1溶液の90質量部および2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の10質量部を均一に混合して混合物を得た。該混合物の100質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 184)の3質量部を均一に混合し、シール部形成用光硬化性樹脂組成物Cを得た。
【0118】
シール部形成用光硬化性樹脂組成物Cを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。シール部形成用光硬化性樹脂組成物Cの25℃における粘度を測定したところ、約1300Pa・sであった。
【0119】
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
分子末端にエチレンオキシドを付加した1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000、ポリプロピレングリコール分子中のエチレンオキシド含有量24質量%)と、イソホロンジイソシアネートとを、4対5となるモル比で混合し、錫化合物の触媒存在下で70℃で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加え、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.03質量部を添加して70℃で反応させることによって、ウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UA−2と記す。)を得た。UA−2の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約24000であり、25℃における粘度は約830Pa・sであった。
【0120】
UA−2の40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の30質量部、n−ドデシルメタクリレートの30質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.5質量部、n−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤、花王社製、チオカルコール20)の0.5質量部を均一に溶解させて、光硬化性樹脂組成物PDを得た。
【0121】
次に、PDの60質量部と、UA−2の合成時に用いたものと同一の、分子末端をエチレンオキシドで変性した1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000、ポリプロピレングリコール分子中のエチレンオキシド含有量24質量%)の40質量部を均一に溶解させて樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dを得た。
【0122】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dの25℃における粘度を測定したところ、1.7Pa・sであった。
なお、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dに用いた光重合開始剤(前記IRGACURE 819)は、シール部形成用光硬化性樹脂組成物Cに用いた光重合開始剤(前記IRGACURE 184)の吸収波長域(約380nm以下)より長波長側にも吸収波長域(約440nm以下)を有する。
次に、レオメーターを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dの光硬化後の粘弾性特性を測定したところ、貯蔵せん断弾性率は1.0×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.83であった。
【0123】
(工程(a))
表示デバイスAの画像表示領域の外側の約4mmの位置の全周にわたって、幅約1mm、塗布厚さ約0.6mmとなるようにシール部形成用光硬化性樹脂組成物Cをディスペンサにて塗布し、未硬化のシール部を形成した。
【0124】
(工程(b))
表示デバイスAの画像表示領域の外周に塗布された未硬化のシール部の内側の領域に、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dを、ディスペンサを用いて総質量が38gとなるように複数個所に供給した。
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dを供給する間、未硬化のシール部の形状は維持されていた。
【0125】
(工程(c))
表示デバイスAを、一対の定盤の昇降装置が設置されている減圧装置内の下定盤の上面に、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dの面が上になるように平置した。
ガラス板Bを、遮光印刷部が形成された側の表面が表示デバイスAに対向するように、減圧装置内の昇降装置の上定盤の下面に静電チャックを用いて、上面から見た場合にガラス板Bの遮光印刷部のない透光部と表示デバイスAの画像表示領域とが約1mmのマージンをもって同位置となるように、垂直方向では表示デバイスAとの距離が30mmとなるように保持させた。
【0126】
減圧装置を密封状態として減圧装置内の圧力が約10Paとなるまで排気した。減圧装置内の昇降装置にて上下の定盤を接近させ、表示デバイスAとガラス板Bとを樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dを介して2kPaの圧力で圧着し、1分間保持させた。静電チャックを除電して上定盤からガラス板Bを離間させ、約15秒で減圧装置内を大気圧に戻し、表示デバイスA、ガラス板Bおよび未硬化のシール部で樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dが密封された積層前駆体Eを得た。
積層前駆体Eにおいて未硬化のシール部の形状は、ほぼ初期の状態のまま維持されていた。
【0127】
(工程(d))
積層前駆体Eの表示デバイスAの周縁部に設けられた未硬化のシール部(シール部形成用光硬化性樹脂組成物C)に、表示デバイスAの側方から、紫外線LEDを線状に配した紫外線光源(Spectrum Illumination社製 LL146−395)を用いて、未硬化のシール部の全周にわたって約10分間光を照射し、シール部を硬化させた。照射光の強度を、照度計(オーク製作所社製、UV−M02、受光器UV−42)で測定したところ、約1mW/cmであった。シールを硬化させた後、積層前駆体Eを水平に保って約10分静置した。
【0128】
積層前駆体Eのガラス板B側の面から、ブラックライトからの紫外線および450nm以下の可視光を均一に30分間照射して、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Dを硬化させることによって、樹脂層を形成し、表示装置Fを得た。表示装置Fは、従来の注入法による製造時に要する気泡除去の工程が不要であるにもかかわらず、樹脂層中に残留する気泡等の欠陥は確認されなかった。また、シール部からの樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物の漏れ出し等の欠陥も確認されなかった。また、樹脂層の厚さは、目標とする厚さ(約0.4mm)となっていた。
【0129】
表示デバイスAに代えてほぼ同じサイズのガラス板を用いて同様に透明積層体を作製し、印刷遮光部のない部分でのヘイズ値を測定したところ1%以下であり、透明度が高い良好なものであった。
【0130】
表示装置Fを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の全面にわたって均質で良好な表示画像が得られ、更に、当初より表示コントラストの高いものであった。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、ガラス板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
ついで、同様にして表示装置Fを設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0131】
〔例2〕
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
例1で用いたUA−2の40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の30質量部、n−ドデシルメタクリレートの30質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.5質量部を均一に溶解させて、光硬化性樹脂組成物PGを得た。
【0132】
次に、PGの40質量部と、UA−2の合成時に用いたものと同一の、分子末端をエチレンオキシドで変性した1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000、ポリプロピレングリコール分子中のエチレンオキシド含有量24質量%)の60質量部を均一に溶解させて樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Gを得た。
【0133】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Gを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Gの25℃における粘度を測定したところ、1.3Pa・sであった。
次に、レオメーターを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Gの光硬化後の粘弾性特性を測定したところ、貯蔵せん断弾性率は3.7×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.61であった。
【0134】
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Gを用いた以外は例1と同様にして表示装置Hを得た。
表示装置Hを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の全面にわたって均質で良好な表示画像が得られ、更に、当初より表示コントラストの高いものであった。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、ガラス板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
ついで、同様にして表示装置Hを設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0135】
〔例3〕
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
分子末端にエチレンオキシドを付加した1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000、ポリプロピレングリコール分子中のエチレンオキシド含有量24質量%)と、イソホロンジイソシアネートとを、3対4となるモル比で混合し、錫化合物の触媒存在下で70℃で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加え、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.03質量部を添加して70℃で反応させることによって、ウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UA−3と記す。)を得た。UA−3の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約21000であり、25℃における粘度は約350Pa・sであった。
【0136】
UA−3の80質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の20質量部に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.5質量部を均一に溶解させて、光硬化性樹脂組成物PIを得た。
【0137】
次に、PIの30質量部と、1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:2000、ポリプロピレングリコール中のEO含有量0質量%)の70質量部を均一に溶解させて樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Iを得た。
【0138】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Iを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Iの25℃における粘度を測定したところ、2.0Pa・sであった。
次に、レオメーターを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Iの光硬化後の粘弾性特性を測定したところ、貯蔵せん断弾性率は2.5×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.06であった。
【0139】
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Iを用いた以外は例1と同様にして表示装置Jを得た。
表示装置Jを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の全面にわたって均質で良好な表示画像が得られ、更に、当初より表示コントラストの高いものであった。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、ガラス板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
ついで、同様にして表示装置Jを設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0140】
〔例4〕
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
例3で用いたPIの20質量部と、1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:2000、ポリプロピレングリコール中のEO含有量0質量%)の80質量部を均一に溶解させて樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物I2を得た。
【0141】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物I2を容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物I2の25℃における粘度を測定したところ、1.0Pa・sであった。
次に、レオメーターを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物I2の光硬化後の粘弾性特性を測定したところ、貯蔵せん断弾性率は4.0×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.07であった。
【0142】
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物I2を用いた以外は例1と同様にして表示装置J2を得た。
表示装置J2を液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の全面にわたって均質で良好な表示画像が得られ、更に、当初より表示コントラストの高いものであった。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、ガラス板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
ついで、同様にして表示装置J2を設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0143】
〔例5〕
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
例1で用いたUA−2の40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の20質量部、n−ドデシルメタクリレートの40質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.3質量部、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.04質量部、n−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤、花王社製、チオカルコール20)の0.5質量部、紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、TINUVIN 109)の0.3質量部を均一に溶解させて、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Kを得た。
【0144】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Kを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Kの25℃における粘度を測定したところ、2.0Pa・sであった。
次に、レオメーターを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Kの光硬化後の粘弾性特性を測定したところ、貯蔵せん断弾性率は1.6×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.44であった。
【0145】
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Kを用いた以外は例1と同様にして表示装置Lを得た。
表示装置Lを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の一部に表示ムラが発生しており、特に中間調の表示においての表示画面の周縁部に視認された。表示ムラのない部分においては、初期より高いコントラストの画像が得られた。
ついで、同様にして表示装置Lを設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0146】
〔例6〕
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
例2で用いた光硬化性樹脂組成物PGを樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Mとして用いた。
【0147】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Mを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Mの25℃における粘度を測定したところ、2.2Pa・sであった。
次に、レオメーターを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Mの光硬化後の粘弾性特性を測定したところ、貯蔵せん断弾性率は3.1×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.32であった。
【0148】
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Mを用いた以外は例1と同様にして表示装置Nを得た。
表示装置Nを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の一部に表示ムラが発生しており、特に中間調の表示においての表示画面の周縁部に顕著に視認された。表示ムラのない部分においては、初期より高いコントラストの画像が得られた。
ついで、同様にして表示装置Nを設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0149】
〔例7〕
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
例1で用いたUA−2の40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の20質量部、n−ドデシルメタクリレートの40質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.3質量部、n−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤、花王社製、チオカルコール20)の1.5質量部を均一に溶解させて、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Oを得た。
【0150】
樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Oを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Oの25℃における粘度を測定したところ、1.9Pa・sであった。
次に、レオメーターを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Oの光硬化後の粘弾性特性を測定したところ、貯蔵せん断弾性率は7.5×10Pa、その損失正接(tanδ)は1.8であった。
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Oを用いた以外は例1と同様にして表示装置Pを得た。
表示装置Pを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。約1時間後に表示デバイスの接合位置を確かめたところ、数mm程度ガラス板からずれ落ちており、表示デバイスをガラス板に良好に保持することができなかった。
そこで、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが水平となるように表示装置Pを設置し、5日間静置した後に電源を入れたところ、表示デバイスのずれに変化はなく、表示画面の中央部においては均質で良好な表示画像が得られ、更に、当初より表示コントラストの高いものであった。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、ガラス板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
【0151】
〔例8〕
例1において、UA−2の合成に、分子末端にエチレンオキシドを付加した2官能のポリプロピレングリコールの代わりに、分子末端にエチレンオキシドを付加しない1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価により算出した数平均分子量5500)と、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネートとをほぼ同量含む混合物とを、1:2のモル比で混合した以外は例1と同様にして、ウレタンアクリレートオリゴマー(UA−4)を合成した。UA−4の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約16000であり、25℃における粘度は約39Pa・sであった。
例1において、UA−2の代わりにUA−4を用いて、例1と同様にして樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物PQを得る。PQの40質量部と、UA−4の合成に用いたものと同一の、分子末端にエチレンオキシドを付加しない1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価により算出した数平均分子量5500)を用いて、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Qを得る。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Qの25℃における粘度は、0.8Pa・sであった。
レオメーターによる樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Qの光硬化後の粘弾性特性は、貯蔵せん断弾性率は2.4×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.13であった。
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Qを用いた以外は例1と同様にして表示装置Rを得た。
表示装置Rを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の全面にわたって均質で良好な表示画像が得られ、更に、当初より表示コントラストの高いものであった。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、ガラス板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
ついで、同様にして表示装置Rを設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0152】
〔例9〕
分子末端にエチレンオキシドを付加しない1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価により算出した数平均分子量2000)と、イソホロンジイソシアネートとを、5:6のモル比で混合した以外は例1と同様にして、ウレタンアクリレートオリゴマー(UA−5)を合成した。UA−5の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約18000であり、25℃における粘度は約620Pa・sであった。
例1において、UA−2の代わりにUA−5を用いて、例1と同様にして樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物PSを得る。PSの40質量部と、UA−5の合成に用いたものと同一の、分子末端にエチレンオキシドを付加しない1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価により算出した数平均分子量2000)の30質量部と、UA−5の合成に用いたものより分子量の大きい分子末端にエチレンオキシドを付加しない1分子中に水酸基を2個有する、2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価により算出した数平均分子量5500)の30質量部とを用いて、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Sを得る。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Sの25℃における粘度は、0.9Pa・sであった。
レオメーターによる樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Sの光硬化後の粘弾性特性は、貯蔵せん断弾性率は2.0×10Pa、その損失正接(tanδ)は0.15であった。
例1と同様にシール部形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Cを用い、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物として組成物Sを用いた以外は例1と同様にして表示装置Tを得た。
表示装置Tを液晶表示デバイスを取り出した液晶モニターの筺体に戻し、配線を再接続した後に、ガラス板Bに接合された表示デバイスAが垂直になるように液晶モニターを設置した。5日間静置した後に電源を入れたところ、表示画面の全面にわたって均質で良好な表示画像が得られ、更に、当初より表示コントラストの高いものであった。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、ガラス板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
ついで、同様にして表示装置Tを設置して、1ヵ月後に表示デバイスの接合位置を確かめたが、位置ずれなどはなく、良好にガラス板に保持されていた。
【0153】
本発明の硬化性化合物(II)および、非硬化性オリゴマー(D)を含み、当該(D)の含有量が硬化性樹脂組成物中10〜90質量%である、例1〜4、8および9は、樹脂層の硬化時の収縮による応力の低減ができ、液晶表示画面の全面にわたって均質で良好な表示画像が得られることがわかる。
本発明の硬化性化合物(II)を含むが、非硬化性オリゴマー(D)を含まない例5および6は液晶表示画面の周縁部に表示ムラが発生しており、特に中間調の表示において顕著に視認された。また特に、連鎖移動剤を硬化性化合物(II)100質量部に対して1.0質量部を超えて含む例7は、表示デバイスをガラス板に良好に保持することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の硬化性樹脂組成物は、表示装置に用いる積層体の製造に有用である。
なお、2010年6月16日に出願された日本特許出願2010−137531号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0155】
1 表示装置
10 透明面材
12 未硬化のシール部
13 領域
14 樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物
40 樹脂層
42 シール部
50 表示デバイス
55 遮光印刷部(遮光部)
56 透光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8