特許第5653029号(P5653029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653029
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   G01D5/347 110A
【請求項の数】24
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2009-261277(P2009-261277)
(22)【出願日】2009年11月16日
(65)【公開番号】特開2010-122214(P2010-122214A)
(43)【公開日】2010年6月3日
【審査請求日】2012年10月2日
(31)【優先権主張番号】12/273,400
(32)【優先日】2008年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル エム ミルビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ディ トバイアソン
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−242818(JP,A)
【文献】 特開平09−236452(JP,A)
【文献】 特開2010−112784(JP,A)
【文献】 特開2001−343256(JP,A)
【文献】 特開平11−351911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26−5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの要素間の測定軸方向の相対位置の測定に使用可能な、絶対位置感知装置に使用するためのエンコーダ構造であって、
照明部と、
該照明部からの光を受け、各光路に沿って、それぞれ空間的に変調された光を出力するように配置された、測定軸方向に延びる微細トラックパターンと少なくとも第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターンを含むスケール要素と、
前記照明部に対して固定配置され、前記微細トラックパターン及び第1のアブソリュートトラックパターンからの空間的に変調された光パターンを、それぞれ受光するように配置された微細トラック検出器部分と、少なくとも第1のアブソリュートトラック検出器部分を備えた検出器エレクトロニクスとを備え、
前記第1のアブソリュートトラック検出器部分が、測定軸方向と直交するY方向に沿ってY方向エッジ間寸法YDETABS1を有する個別光検出器領域を備え、
前記第1のアブソリュートトラック検出器部分が、受光した空間的に変調された光パターンを空間的にろ波し、それぞれ空間位相を有する、複数の各位置指示信号を出力するように形成され、
前記第1のアブソリュートトラックパターンが、測定軸方向に延びる、幾何学的に合同なサブトラック部分を備え、
該幾何学的に合同なサブトラック部分が、YDETABS1より小さな寸法YCENTだけ、Y方向に離され、
前記幾何学的に合同なサブトラック部分が、それぞれ、YDETABS1より大きな寸法値[YCENT+2(YTOL)]となるような、Y方向寸法YTOLを有し、
前記幾何学的に合同なサブトラック部分の一つが、Y方向に寸法YDETABS1だけ移動すると、該幾何学的に合同なサブトラック部分が名目的に一致するよう、前記幾何学的に合同なサブトラック部分が配置され、
前記第1のアブソリュートトラックパターンが、空間波長L1を有するxの第1の周期関数(ここでxは、測定軸方向のx座標位置を表わし、第1の周期関数は方形波でない)に対応して、パターン信号変化部分の領域が変化するように形成されたパターン信号変化部分を備えたことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1において、前記パターン信号変化部分の積分領域が、xの第1の周期関数に対応して変化し、積分領域が、測定軸方向に沿ってx座標で第1のアブソリュートトラックパターンにわたり位置する信号積分窓にわたって積分することにより決定され、該信号積分窓の寸法及びアライメントが、個別光検出器領域の1つの寸法及び名目上の動作アライメントに対応するように、前記パターン信号変化部分が形成されている光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項2において、前記第1の周期関数が、名目上の正弦波関数である光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1の周期関数が、擬似正弦波関数及び正弦波関数の1つであり、
前記第1のアブソリュートトラックパターンが、xの第1の周期関数に対応して変化するY方向寸法を有する各パターン形状に基づいて形成された複数の各パターン信号変化部分を備え、各パターン形状に対して、前記変化するY方向寸法がYDETABS1よりも小さな最大値を有する光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項4において、前記第1の周期関数が正弦波関数である光学式エンコーダ。
【請求項6】
請求項4において、各パターン形状に基づく複数の各パターン信号変化部分のいくつかが、第1のアブソリュートトラックパターンのY方向限界で切り捨てられている光学式エンコーダ。
【請求項7】
請求項4において、複数のパターン信号変化部分の第1の1つが、第1の最大値を有する、変化するY方向寸法を有する各パターン形状に基づいて形成され、複数のパターン信号変化部分の第2の1つが、第2の最大値を有する、変化するY方向寸法を有する各パターン形状に基づいて形成されている光学式エンコーダ。
【請求項8】
請求項4において、前記第1のアブソリュートトラックパターンの各パターン信号変化部分のそれぞれが、変化するY方向寸法が各場合で同じ最大値を有する同じ共通パターン形状である各パターン形状に基づいて形成されている光学式エンコーダ。
【請求項9】
請求項8において、前記第1のアブソリュートトラックパターンの各空間波長増分内で、
各パターン信号変化部分が、変化するY方向寸法が、Nを整数として、最大で[YDETABS1/N]である最大値を有する共通パターン形状に基づいて形成され、
各パターン信号変化部分が、名目上[YDETABS1/N]のステップでY方向に繰返され、第1のアブソリュートトラックパターンのY方向限界で切り捨てられている光学式エンコーダ。
【請求項10】
請求項9において、前記共通パターン形状で、xの周期関数である変化するY方向寸法が、xの関数としてのY方向のオフセットである中心位置YOffset(x)を有する光学式エンコーダ。
【請求項11】
請求項10において、前記中心位置YOffset(x)がxの線形関数としてのY方向のオフセットであり、中心位置YOffset(x)の組が、測定軸方向に対するパターン角THETAでアラインされている光学式エンコーダ。
【請求項12】
請求項4において、前記第1のアブソリュートトラックパターンの各パターン信号変化
部分のいくつかが、第1のアブソリュートトラックパターンのY方向限界で切り捨てられるよう形成されている光学式エンコーダ。
【請求項13】
請求項1において、
前記第1の周期関数が、不連続な擬似正弦波関数及び不連続な正弦波関数の1つであり、
前記第1のアブソリュートトラックパターンが、xの第1の周期関数に対応して変化する各領域を有する複数の各不連続パターン信号変化部分を備え、各不連続パターン信号変化部分のそれぞれが、Y方向にYDETABS1より小さな最大寸法を有する光学式エンコーダ。
【請求項14】
請求項13において、第1の周期関数が不連続な正弦波関数である光学式エンコーダ。
【請求項15】
請求項13において、複数の各不連続パターン信号変化部分のいくつかが、第1のアブソリュートトラックパターンのY方向限界で切り捨てられている光学式エンコーダ。
【請求項16】
請求項13において、複数の各不連続パターン信号変化部分が、二次元空間グリッドのグリッド単位の中心に対応して配置された中心を有し、全てのグリッド単位が一様な大きさを有し、Y方向に続くグリッド単位の境界が、Nを3以上の整数として、Y方向寸法YGRID=YDETABS/Nだけ離れている光学式エンコーダ。
【請求項17】
請求項16において、前記二次元空間グリッドが、測定軸方向に対してパターン角THETAだけ配向されたグリッドの1つの軸を有し、測定軸方向に沿って続くグリッド単位の境界が寸法XGRIDだけ離れていて、YGRID、XGRID及びTHETAが、Mを整数として、式M*XGRID=[tan(THETA)*(N*YGRID)]を満足
する光学式エンコーダ。
【請求項18】
請求項13において、前記第1のアブソリュートトラックパターンの各不連続パターン信号変化部分のいくつかが、第1のアブソリュートトラックパターンのY方向限界で切り捨てられるように形成されている光学式エンコーダ。
【請求項19】
請求項1において、前記照明部が単一の光源を備え、前記微細トラックパターン及び少なくとも第1のアブソリュートトラックパターンが同一平面上にあり、前記微細トラック検出器部分及び少なくとも第1のアブソリュートトラック検出器部分が同一平面上にある光学式エンコーダ。
【請求項20】
請求項19において、前記微細トラックパターンが、自己像パターン及び干渉パターンの少なくとも1つである、各空間的に変調された光パターンを与えるように形成されている光学式エンコーダ。
【請求項21】
請求項1において、
前記照明部からの光を受け、各光路に沿ってそれぞれ空間的に変調された光パターンを出力するように配置された第2のアブソリュートトラックパターンと、
前記照明部に対して固定された関係に配置され、第2のアブソリュートトラックパターンからの各空間的に変調された光パターンをそれぞれ受けるように配置された第2のアブソリュートトラック検出器部分とを備え、
前記第2のアブソリュートトラック検出器部分が、Y方向エッジ間寸法YDETABS2を有する個別光検出器領域を備え、
前記第2のアブソリュートトラック検出器部分が、受光した空間変調光パターンを空間的にろ波し、各空間位相を有する複数の各位置指示信号を出力するように形成され、
前記第2のアブソリュートトラックパターンが、測定軸方向に延びる幾何学的に合同なサブトラック部分を備え、
該幾何学的に合同なサブトラック部分が、YDETABS2より小さな寸法YCENT2だけY方向に分離され、
前記幾何学的に合同なサブトラックパターンが、それぞれ、寸法値[YCENT2+2(YTOL2)]がYDETABS2より大きなY方向寸法YTOL2を有し、
前記幾何学的に合同なサブトラック部分が、その1つが、Y方向に寸法YDETABS2だけ移動すると、名目上一致するように配置され、
前記第2のアブソリュートトラックパターンが、パターン信号変化部分の領域が、空間波長L2を有するxの第2の周期関数(ここでxは測定軸方向のx座標位置を表わし、第2の周期関数は方形波でない)に対応して変化するように形成されたパターン信号変化部分を備えている光学式エンコーダ。
【請求項22】
前記スケール要素の少なくとも第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターン及び微細トラックパターンの少なくともいずれか一つが、スケール基材上に備えられた紡錘形の光学格子パターンであって、
この紡錘形の光学格子パターンは測定軸方向に対して傾斜すると共に測定軸方向に対して垂直方向に複数組み合わせて一つの光学格子パターンとされていることを特徴とする請求項1乃至12、19乃至21のいずれかに記載の光学式エンコーダ。
【請求項23】
前記紡錘形の光学格子パターンを測定軸方向に等間隔で配置して、前記微細トラックパターンを構成したことを特徴とする請求項22に記載の光学式エンコーダ。
【請求項24】
前記紡錘形の光学格子パターンを測定軸方向に等間隔で配置したインクリメンタルパターンを、周期を変えて複数配置して、前記第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターンを構成したことを特徴とする請求項22に記載の光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密測定装置に係り、特に、複数の光検知原理に依存する複数のスケールトラックを備えた光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
インクリメンタル方式の位置エンコーダは、スケールに沿う初期位置から開始される、変位の増分単位を蓄積することによって決定される、スケールに対する読取ヘッドの変位を許容するスケール構造を利用している。そのようなエンコーダは、ある適用分野、特に電源線が利用可能な適用分野に好適である。しかしながら、エンコーダが低消費電力装置で用いられるような、ある適用分野では、絶対位置エンコーダ(アブソリュートエンコーダとも称する)を用いることが望ましい。絶対位置エンコーダは、スケールに沿う各位置で、唯一の出力信号又は信号の組合せを与える。それらは、位置を特定するために、インクリメンタルな変位の連続的な蓄積を必要としない。従って、絶対位置エンコーダは、様々な電力節約計画を可能にする。様々な容量、誘導又は光検知技術を用いた、様々な絶対位置エンコーダが知られている。
【0003】
アブソリュートエンコーダで最も重要な利点の象徴は、(測定範囲/分解能)、即ち、意味がある測定分解能及び/又は精度に対する装置の最大許容絶対測定範囲である。これを「測定範囲対分解能比」と称する。
【0004】
いくつかのエンコーダは、スケールに沿って平行に走る多数のバイナリコードトラックを使用することによって、高い測定範囲対分解能比を達成している。この技術の測定範囲は、一般に、製造可能なバイナリトラックの数を決定するスケールの幅によって制限される。更に、未加工のバイナリ検知が、通常、分解能を制限する。この技術は、通常小型のエンコーダにおいて望ましい、狭いスケールに対しては最適でない。最下位ビット(LSB)バイナリコードトラックは、LSBの「微細」空間分解能で繰返し、より上位のコードビットを与えるトラックと組み合わせて使用されない限り、インクリメンタルな変位情報を与える(即ち、単に周期的なアブソリュートでない信号を与える)ので、「微細波長」インクリメンタルトラックと考えることができる。これは、多くの高分解能アブソリュートエンコーダ(例えばμmのオーダーの分解能を与えるもの)で用いられている微細波長トラックの特性である。従って、微細波長トラック(微細トラック)は、多くのアブソリュートエンコーダにおいて、インクリメンタルトラックとも呼ばれている。
【0005】
「全バイナリ」技術に比べて、いくつかのエンコーダは、その波長に関係するアナログ信号を与えて、その測定範囲内のいくつかの部分内でアナログ信号を測定し、微細波長よりも細かい分解能を与え、アブソリュートエンコーダの測定範囲対分解能比を拡張する技術を用いて、微細トラックの分解能を向上している。これは、典型的には信号補間と呼ばれており、微細波長の、結果として生じる測定分解能に対する比は、典型的には補間比と呼ばれている。使われた技術、及び、信号対雑音(S/N)比を支配する精密部品及びアセンブリを与えるのに使われるコストのレベルにより、実用的な信号補間比は、100、300、更には1000以上まで可能である。しかしながら、一般的に言って、ほぼ100より大きな補間比は、必要な精密部品及びアセンブリのためかなりの追加費用を必要とする。更に、μm以下の分解能が必要であれば、微細トラックの波長は、40μm以下のオーダーである。5つの追加のバイナリトラックは、関係する測定範囲を約1.3mmまで広げるだけであり、有用性は限定される。従って、この技術は、通常、狭いスケールに高分解能(例えばμmのオーダー)を組み合わせる場合に最適ではない。
【0006】
この限定を克服するべく、いくつかのエンコーダは、バイナリトラックを捨て、追加のスケールトラック上での信号補間を用いている。そのようなトラックは、アブソリュートスケールトラック(アブソリュートトラック)とも呼ばれる。そのような信号補間は、微細トラックによって与えられる周期信号の曖昧さを解決するため、微細波長の±1半波長内の分解能及び繰返し再現性を持たねばならない。いくつかのエンコーダは、全測定範囲にわたって単調に(例えば直線的に)変化するアブソリュートトラックを使用している。しかしながら、40μm以下のオーダーの微細トラック波長、及び、100以上のオーダーの補間比を仮定すると、そのようなアブソリュートトラックのみでは、2〜10mmまでへの関係する絶対測定範囲の向上をもたらすのみで、有用性が限られる。
【0007】
この制限を克服するため、いくつかのエンコーダは、微細トラックよりもかなり長い空間波長を持つ、少なくとも2つの追加のアブソリュートトラックを使用している。それらの波長は、それらを微細波長から区別し、及び/又は、それらの機能を強調するため、絶対波長、及び/又は、中位波長、及び/又は粗波長と便利に呼ばれる。一例として、公知の検知技術(例えば光検知技術)を用いて、若干異なる中位波長を持つ2つのアブソリュートトラックから、周期的なアナログ信号(例えば正弦波信号又は同様に処理された出力等)が導き出される。公知の関係によれば、2つのアナログ信号間の空間位相差は、中位波長の積に比例し、それらの差の絶対値に反比例する距離にわたって360°変化する。この距離は、装置のほぼ絶対測定範囲である、粗合成波長、又は、粗波長とも呼ばれている。中位トラックからの信号間の位相差は、粗分解能に対する絶対位置を与える。これは、粗位置とも呼ばれる。この粗位置分解能及び/又は精度は、位置に対応する中位波長の特定の周期を高い信頼性で特定するために、中位トラックによって与えられる周期信号の曖昧さを解決するべく、中位波長のほぼ+及び−1半波長以内でなければならない。中位トラックからの周期信号は、粗分解能よりも良い中位分解能に対する絶対位置を与えるために補間される。これは中位位置とも称する。中位位置分解能及び/又は精度は、位置に対応する微細波長の特定の周期を信頼性高く特定するために、微細トラックによって与えられる周期信号の曖昧さを解決するため、ほぼ微細波長の+及び−1半波長以内でなければならない。微細トラックからの周期信号は、最終的な微細分解能及び/又は精度内で装置の絶対位置を与えるために補間される。前記説明により、微細トラック波長が40μm以下のオーダーで、補間比が、粗合成波長及び中位波長の両方に対して100のオーダーであると仮定すると、そのようなアブソリュートトラック構造は、多くの適用分野(例えばインジケータ、リニヤゲージ、ロータリエンコーダ等)で有用な、ほぼ100mmの関係する絶対測定範囲をもたらす。前記の技術は一般的に知られており、様々な関係するエンコーダ構造及び/又は信号処理に関連する追加の詳細が、様々なアブソリュートエンコーダ及びアブソリュート干渉計特許で簡単に利用可能である。前記の技術は、合成粗波長絶対測定技術(Synthetic Coarse Wavelength Absolute Measurement:SCWAM技術)とも呼ばれる。
【0008】
特許文献1〜11は、上記で説明したものを含むアブソリュートエンコーダに関する様々なエンコーダ構造及び/又は信号処理技術を開示しており、ここで、それらの全体を引用して取り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3882482号明細書
【特許文献2】米国特許第5965879号明細書
【特許文献3】米国特許第5279044号明細書
【特許文献4】米国特許第5886519号明細書
【特許文献5】米国特許第5237391号明細書
【特許文献6】米国特許第5442166号明細書
【特許文献7】米国特許第4964727号明細書
【特許文献8】米国特許第4414754号明細書
【特許文献9】米国特許第4109389号明細書
【特許文献10】米国特許第5773820号明細書
【特許文献11】米国特許第5010655号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hewlatt Packard Journal,Vol.31,No.9,Sept.1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、先行技術は、アブソリュートエンコーダのユーザによって望まれている、測定範囲対分解能比、高分解能、小型サイズ、ロバスト性及びコストのある組合せを与える構造を教えてはいなかった。そのような組合せを与えるアブソリュートエンコーダの改良された構造が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここでの要約は、以下で更に説明する単純な形の概念の選択を導入するために与えられる。この要約は、クレームされた主題の鍵となる様相の特定を意図したり、クレームされた主題の範囲を決定する助けとして使用されることを意図するものではない。
【0013】
本発明は、測定範囲対分解能比、高分解能、小型サイズ、ロバスト性、製造及び組立コストの改良された組合せを与える、改良された光学式エンコーダに向けられている。
【0014】
本発明の様々な様相は、先行技術の欠点を克服する。本願の先行技術を示す図1(A)−(C)は、特許文献11の図2−4に対応する。特許文献11に記載されているように、単一のアブソリュート制御トラック(例えば、単調に変化するアナログ出力を与えるトラック)が、位置を決定するためのインクリメンタルトラックとの組合せで利用され、図1(A)−(C)は、それぞれ、単一の制御トラックのための可能なパターンを示す。図1(A)は、スケールに沿って延びる横棒のパターンを備えた制御トラックを示し、スケールの左端から右端へのテーパが、このパターンを透過する光が、トラックに沿ってアナログ様式(例えば線形)で変化するようにされている。図1(B)は、同様な効果をもたらすための、スケールに沿ってサイズが変化する点のパターンを備えた制御トラックを示す。図1(C)は、同様な効果をもたらすための、一様な間隔であるが、各々の幅が、スケールに沿って、それらの位置の関数として変化する縦棒のパターンを備えた制御トラックを示す。既に示したように、そのような単一のアナログ制御トラックは、波長40μmを持つインクリメンタルトラックとの組合せで使われた時に、2−3mmのオーダーの測定範囲を与えるだけである。従って、そのような構造は、実用的な高分解能アブソリュートエンコーダには適切でない。特許文献11は、いくつかの場合、測定範囲を拡大するために、制御トラックパターンが繰返されることを示唆している。しかしながら、これに単に示唆しているだけで、実施可能とはされていない。特に、ここでの先の検討によれば、40μmの微細波長との組合せで、図1(A)−(C)のパターンは、測定軸に沿うほぼ2mmの長さを必要とする。これは、特許文献11中で記載されていない、重大な製造、検出及び信号処理上の問題を生じる。例えば、まず第1に、2mm範囲にわたる図1(A)−(C)に近似するパターンは、明らかに小さな様相サイズ(10μmのオーダー)を必要とし、スケールに沿う20μmにつき1%のオーダーのサイズの制御された変化(例えばスケールに沿う20μmにつき0.1μm)を要求する。これは典型的なインクリメンタルスケールトラックの製造上の要求を超えるものであり、スケール製造コストを劇的に増大する。第2に、そのような様相サイズは、望ましくない回折効果を与え、これは信号雑音をもたらしてS/N比を低下させ、特に、各繰り返しパターンの端部近く(急な様相の幅又は密度の移行が行なわれる)での信頼性のある補間比を低める。第3に、そのように小さな様相サイズは、検出器と光源の間隔が注意深く制御されないと、ボケの変化に敏感である。ある量のボケが望まれる。多すぎるボケは、S/N比を低下させ、小さすぎるボケは、検出信号に望まれない空間周波数を導入する。これらの考慮のいずれも、これらの又は同様なアブソリュートトラックパターンによって検討されていない。これらの及び他の理由のため、図1(A)−(C)のパターンは高分解能(例えばμm又はそれ以下のオーダー)との組合せで良好な測定範囲対分解能比を与えるのに十分なほど洗練されていない。
【0015】
アブソリュートトラックに好適なアナログ型信号を与えることが可能な、もう1つの先行技術トラックパターンが、非特許文献1に記載されている。本願の図2が非特許文献1の図7Aに対応している。図2に示されるように、正弦波状トラックパターン200が、角度エンコーダディスク上に配置された、第1のパターン境界TP1と第2の鏡像パターン境界TP2によって拘束されている。一連のフォトダイオードIL1−IL4が、正弦波状トラックパターン200を通して又は周辺で照明される。パターン200の空間波長にわたって等間隔とされたフォトダイオードIL1−IL4のそれぞれに対して、パターン200を通過した照明の量は、異なる光電流を発生し、これは比較されて、例えば周知の「直角位相信号」処理方法により、パターンの1波長内でダイオードアレイに対する位置の絶対決定を可能にする。このパターントラックの問題点は図2に示されている。ライン201と202の外側の各フォトダイオードIL1−IL4の領域は、本質的に無駄な領域である。しかしながら、図2の構造において、この領域は製造及び組立許容差等によるミスアライメントを許すために与えられなければならない。一般的に、フォトダイオードICは単位面積当たりコストが非常に高く、更に、他の理由で、フォトダイオードICのサイズは、所望の正弦波状信号振幅に対して可能な限り減らすことが好ましい。しかしながら、前記の領域が与えられず、フォトダイオードの端部がトラックパターン200内に位置していると、検出器上の照明領域の変化は、位置の正弦波状関数でなく(例えば関数のピークが切り捨てられる)、その結果、出力信号は、位置に対して所望の又は期待される正弦波状変化を呈さず、意味のある信号補間を妨げる。(位置の関数としての)所望の正弦波状出力のこの及び他の歪みは、正弦波状信号の信頼性の喪失、又は、縮めて、正弦波状信頼性の喪失とも称する。
【0016】
一般的に、正弦波状出力信号は、いくつかの望ましい信号処理の利点のため、エンコーダにおける信号補間に用いられる。しかしながら、正弦波信号の信頼性は、光雑音(例えば迷い光、一様でない光、又は望まれない回折効果)、電子雑音、不正確なパターン又はアライメント又は相対運動(例えばY軸に沿う運動又はミスアライメント)、及び空間高調波信号成分(例えば線形検出器を通過する方形波パターンは、位置の関数としての台形状照明領域変化をもたらし、大きな空間高調波成分を含む)によって低められる。いくつかの優れた信号補間方法(例えば周知の直角位相信号補間方法)は、理想的な正弦波信号を仮定しており、正弦波の信頼性の喪失は、その補間精度及び結果として生じる補間比に直接影響する。従って、(例えば非常に少ないアブソリュートトラックを用いることによって)可能な限り小さいサイズで、可能な最高の測定範囲対分解能比を持つアブソリュートエンコーダを高い信頼性で与えるために、あらゆる予想されるミスアライメント及び動作変化の下で、最高の可能な正弦波信頼性を維持することが重要である。他の利点の中で、以下で説明する本発明の構造は、先行技術で記載された技術と比べて、正弦波の信頼性で大きな改良を与え、特に、実用的で経済的な装置で期待される様々なミスアライメント及び動作変化の下で、ロバストで正確な動作を与える。本発明の構造は、特に、非常に優れた測定範囲対分解能比を備えた、経済的で小型の装置を与える。
【0017】
本発明による様々な実施形態において、絶対位置検知装置中で使用するためのエンコーダ構造は、照明部と、微細トラックパターン及び少なくとも第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターンを含むスケール要素と、検出器エレクトロニクスを備えている。様々なトラックパターンは、照明部からの光を受け、各光路に沿うそれぞれ空間的に変調された光パターンを、検出器エレクトロニクスの様々な対応する検出器部分(例えば微細トラック検出器部分及び少なくとも第1のアブソリュートトラック検出器)に出力するように配置される。微細トラックパターン及びその対応する検出器部分は、公知の技術によって構成される。様々な実施形態において、アブソリュートトラック検出器部分は、測定軸方向に垂直なY方向に沿ってY方向エッジ間寸法YDETABSを持つ個別光検出器領域を持つように構成され、これらの光検出器領域は、受光した空間変調光パターンを空間的にろ波して、それぞれ空間位相を持つ複数の各位置指示信号を出力するように構成される。本発明の1つの側面に従えば、アブソリュートトラックパターンは、測定軸方向に延びる幾何学的に合同なサブトラック部分を備え、この幾何学的に合同なサブトラック部分は、その1つがY方向に寸法YDETABSだけ移動すると、名目上一致するように配置される。幾何学的に合同なサブトラック部分は、更に、Y方向に沿って、YDETABSより小さな寸法YCENTだけ離れるよう構成され、前記幾何学的に合同なサブトラック部分は、それぞれ、寸法値[YCENT+2(YTOL)]がYDETABSよりも大きくなるY方向寸法YTOLを持つことができる。従って、アブソリュートトラックを検知するための検出器部分は、Y方向のアブソリュートトラックパターンよりも狭いが、(幾何学的に合同な光パターンを検知するために)光検出器の端部がそれぞれ幾何学的に合同なサブトラック部分にわたって名目上位置されるので、検出信号はY方向の検出器部分のミスアライメントに感じない。幅がより狭い検出器部分は、より経済的であり、小型の装置を可能とする。
【0018】
本発明の更に他の側面に従えば、スケール要素の少なくとも第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターン及び微細トラックパターンの少なくともいずれか一つが、スケール基材上に備えられた紡錘形の光学格子パターンであって、この紡錘形の光学格子パターンは測定軸方向に対して傾斜すると共に測定軸方向に対して垂直方向に複数組み合わせて一つの光学格子パターンとされていることを特徴とする光学式エンコーダが与えられる。
【0019】
更に、前記紡錘形の光学格子パターンを測定軸方向に等間隔で配置して、前記微細トラックパターンを構成することができる。
【0020】
更に、前記紡錘形の光学格子パターンを測定軸方向に等間隔で配置したインクリメンタルパターンを、周期を変えて複数配置して、前記第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターンを構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記で概説した原理は、検出器がアブソリュートトラックよりも狭い場合でも、アブソリュートトラックの個別パターン部分を構成する際に前例のない自由度を与える。様々な実施形態において、アブソリュートトラックパターンは、パターン信号変化部分の面積が、空間波長を持つxの周期関数(ここでxは測定軸方向のx座標位置を示す)に対応して変化するように構成されたパターン信号変化部分を備える。様々な実施形態において、周期関数は、好適には、擬似正弦波関数(例えば三角波関数又は台形波関数等)であり、より好適には名目上の理想的な正弦波関数であることができる。
【0022】
様々な実施形態において、上記で概説したように構成された複数のアブソリュートトラックは、対応する検出器部分と共にアブソリュートスケールパターン中で使用され、結果として生じる信号は、組み合せて所望の絶対測定範囲を与えるのに用いられる。そのような実施形態のいくつかにおいて、アブソリュートスケールパターンは、3.0mmより小さい幅を有し、経済的なエンコーダ構造において、すばらしい測定範囲対分解能比を与えるのに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】アブソリュートスケールトラックを与えるのに用いられる先行技術の制御トラックスケールパターンを示す図
図2】位置の関数として正弦波検出器信号を与える先行技術のスケールパターン及び検出器構造を示す図
図3】本発明によるアブソリュート光学式エンコーダ構造の1つの実施形態の展開図
図4図3のアブソリュート光学式エンコーダ構造で使用可能な、検出器とアブソリュートスケールパターン構造の様々な幾何学的関係を示す図
図5】本発明によるある設計原理を示す、アブソリュートスケールトラックパターンの第1実施形態の図
図6】本発明によるアブソリュートスケールトラックパターンの第2及び第3実施形態を示す図
図7】本発明によるアブソリュートスケールトラックパターンの第4実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図3は、本発明による様々な様相を含むアブソリュート光学式エンコーダ構造100の1つの実施形態を模式的に示す展開図である。図3に示されるように、エンコーダ構造100は、スケール要素110と、電源及び信号結線192によって信号発生及び処理回路190と接続された検出器エレクトロニクス120と、可視又は不可視波長の光を放射するための光源130、レンズ140及び任意の光源格子150を備えた照明システム又は部160を含む。光源130も、電源及び信号結線(図示せず)によって信号発生及び処理回路190に接続されている。スケール要素110は、3つのスケールトラックパターン、即ち、図4を参照して以下で詳細に説明するインクリメンタルトラックパターンTINC、第1のアブソリュートトラックパターンTABS1及び第2のアブソリュートトラックパターンTABS2を含むアブソリュートスケールパターン115を含んでいる。トラックパターンTABS1及びTABS2は、それらの構造によって決定される絶対測定範囲にわたり絶対位置を決定するのに使用可能な信号(例えば信号の組合せ)を与えるので、アブソリュートスケールトラックパターンと呼ばれる。図3は、更に、ここで用いられる約束に従って、直交するX、Y及びZ方向を示す。X及びY方向は、アブソリュートスケールパターン115の面に平行であり、X方向は(例えばインクリメンタルトラックパターンTINCに含まれる格子パターン要素の延びる方向と垂直な)意図される測定軸方向MAに平行である。Z方向は、アブソリュートスケールパターン115の面に垂直である。
【0025】
検出器エレクトロニクス120は、3つのスケールトラックパターンTINC、TABS1及びTABS2からの光をそれぞれ受光するよう配置された3つの検出器トラックDETINC、DET1及びDET2を備えている。検出器エレクトロニクス120は、更に、信号処理回路126(例えば信号オフセット及び/又はゲイン調整、信号増幅及び組合せ回路等)も含む。1つの実施形態において、検出器エレクトロニクス120は、単一のCMOS ICとして製造することができる。
【0026】
動作に際して、光源130から放射された光134は、レンズ140によって、3つのスケールトラックパターンを照明するのに十分なビーム面積にわたり、部分的又は完全に平行光線化される。図3は、光34の3つの光路134A、134B及び134Cを模式的に示す。光路134Aは、スケールトラックパターンTINCを照明する光を含む代表的な中央光路である。スケールトラックパターンTINCが照明されると、それは、検出器エレクトロニクス120の検出器トラックDETINCに、空間的に変調された光パターン(例えばいくつかの実施形態においては、回折オーダーの干渉縞光)を出力する。光路134B及び134Cは、スケールトラックパターンTABS2及びTABS1をそれぞれ照明する光を含む代表的な光路である。スケールトラックパターンTABS2及びTABS1が照明されると、それらは、検出器エレクトロニクス120の検出器トラックDETABS2及びDETABS1に、それぞれ空間的に変調された光パターン(例えばそれらのパターンに対応するパターン光)を出力する。様々な実施形態において、エンコーダ構造100は、図4−7を参照して以下でより詳細に説明するように、トラックパターンTABS2及びTABS1が、それぞれ検出器トラックDETABS2及びDETABS1上に投影される影像(例えばボケた又はボケていない影像)を生成するように構成される。全ての空間的に変調された光パターンは、スケール110と共に移動する。検出器トラックDETINC、DET1及びDET2のそれぞれにおいて、個別光検出器領域は、それらがそれぞれ受けた空間変調光パターンを空間的にろ波し、所望の位置指示信号(例えば直角位相信号又は信号補間につながる空間位相関係を有する他の周期信号)を与えるよう配置される。検出器トラックDETINC、DET1及びDET2の1つの実施形態が、図4を参照して以下に詳細に説明される。いくつかの実施形態において、個別光検出器領域というよりもむしろ、個別開口を有する空間フィルタマスクが、より大きな光検出器をマスクして、図示される個別光検出器領域と似た受光領域を与え、公知の技術に従って、同様な全体信号効果を与える。
【0027】
(例えば40μm、又は、それ以上のオーダーの微細トラック波長を有する)いくつかの中位の分解能の実施形態において、エンコーダ構造100は、トラックパターンTINCが検出器トラックDETINC上に投影される影像を生成するように構成される。より高い分解能の実施形態において、トラックパターンTINCは、通常、回折光を発生するように構成される。例えば、ほぼ8μm以下の微細トラック波長を持つ、いくつかの実施形態において、エンコーダ構造100は、回折オーダー(例えば+/−1第1オーダー)が、検出器トラックDETINCに到達する干渉縞を生成するように、公知の方法に従って構成される。そのような実施形態において、光源格子150は、通常、省略される。例えばほぼ8−40μmの微細トラック波長を持つ他の実施形態においては、エンコーダ構造100は、いくつかの回折オーダーが相互作用して、検出器トラックDETINCの面で自己像(例えばTalbot像又はFlesnel像)を生成するように、公知の方法に従って構成される。自己像の構成において、光源130はLEDであることができ、この場合、光源格子150は、通常、任意ではない。そのような場合、代表光路134Aの周りの光は、光源格子150の格子構造を通過し、トラックパターンTINCのピッチ又は波長とほぼ適合するようなピッチで配列された格子開口で、部分的にコヒーレントな照明光源のアレイを与え、公知の自己像照明原理に従ってスケールトラックパターンTINCを照明する。図3は、代表光路134B及び134Cが光源格子150の透明基板を通過し、検出器トラックDETABS1及びDETABS2からの信号の質に寄与する、それらの強度及び平行度が、光源格子150の格子構造によって妨げられないようにした光源格子150の実施形態を示す。他の実施形態において、代表光路134B及び134Cは、光源格子150の格子構造を通過することができるが、これは最適な構造ではない。
【0028】
従来技術で知られているように、上記で概説した各微細トラック技術は、通常、照明システム160、スケールトラックパターンTINC、及び検出器トラックDETINC間の間隔にそれぞれ制限を課す。様々な実施形態において、スケール要素110は、公知の技術に従って、エンコーダハウジング又はゲージハウジング又は読取ヘッドアセンブリ(図示せず)内で、照明システム160から、及び、検出器エレクトロニクス120から、通常安定な距離に位置される。本発明によるアブソリュートトラックパターンの1つの利点は、結果として生じる検出器信号中の空間高調波成分が、照明システム160、アブソリュートスケールパターン115、検出器構造125間の様々な間隔で実質的に変化しないということであり、従って、追加の設計拘束条件を課すことなく、単一のアブソリュートトラックパターン設計が、様々な微細トラック技術及び調整に対応できる。従って、いくつかの実施形態において、これは、例えトラックパターンTINCから空間変調光(例えば干渉又は自己像)を形成するのに用いられる技術が、トラックパターンTABS1及びTABS2から空間変調光を形成するのに用いられる技術(例えば影の投影)と異なっていても、単一の照明システム160及び/又は単一の光源130及び/又は単一のレンズ140及び/又は各検出器トラック(DETINC、DETABS1及びDETABS2)を含む単一の検出器エレクトロニクスICが全ての3トラックに用いられることを許容する。アブソリュートトラックパターン(例えばTABS1、TABS2)及びそれらに関係する検出器トラック(例えばDETABS1、DETABS2)の様々な実施形態が、以下で詳細に説明される。
【0029】
様々な適用分野において、検出器エレクトロニクス120及び照明システム160は、例えば読取ヘッド又はゲージハウジング(図示せず)中で互いに固定的な関係で取り付けられ、公知の技術に従って、ベアリングシステムによりスケール110に対する測定軸に沿ってガイドされる。様々な適用分野において、スケールは、移動ステージ又はゲージスピンドル等に取付けられる。図3に示される構成は透過型の構成である。スケールパターン115は、透過により空間的に変調された光パターンを検出器トラックに出力するための(例えば透明基板上に公知の薄膜パターン技術等を用いて製造された)光遮蔽部と光透過部を備える。公知の技術に従って、同様な部品が、照明システム160及び検出器エレクトロニクス120がスケール110の同じ側に配置され、必要であれば角度をつけて照明及び反射されるよう位置された反射型の実施形態に配置され得る。この反射型の実施形態において、スケールパターンは、公知の方法によって製造される、反射により検出器トラックに空間的に変調された光パターンを出力する高反射部と、低反射部(又は検出器トラックから光を逸らす部分)を含む。透過型又は反射型のスケールパターンのいずれにおいても、アブソリュート検出器トラック(例えばDETABS1又はDETABS2)によって検出される光を与えるスケールパターンの部分は、スケールパターンの信号発生部と称し、検出器トラックに可能な限り小さな光を通常与えるスケールパターンの他の部分は、信号消滅部と称する。スケールパターンの信号発生部又は信号消滅部は、様々な実施形態において、ここで述べる技術に従ってパターン化される。言い換えると、互いに「ネガティブ」であるスケールパターンは、使用可能な信号を共に発生し、結果として生じる信号変化も、与えられた反射型又は透過型の配置に対して、互いにほぼ「ネガティブ」である。従って、以下で概観するスケールパターンは、「信号変化部分」と述べ、様々な実施形態において、信号変化部分は、スケールパターンの信号発生部又は信号消滅部を備える。
【0030】
図3中のY軸方向に沿う一連のスケールトラックは、例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。例えば、他の実施形態において、アブソリュートトラックパターンTABS1及びTABS2は、検出器トラック(及び含まれる場合には光源格子150)が上記で説明した技術に従って適切な対応する光路に沿って配置されていれば、微細トラックパターンTINCの片側に互いに近接して配置することができる。
【0031】
図4は、図3のアブソリュート光学位置エンコーダ構造100で使用可能な検出器及びアブソリュートスケールパターン構造の一実施形態における様々な幾何学的又はアライメント関係の図形400である。図4に示されるように、既に述べた公知のSCWAM技術と共に用いるのに適したアブソリュートスケールパターン115′の代表セグメントは、微細トラックパターンTINC、第1アブソリュート又は中位スケールトラックパターンTABS1、及び、第2アブソリュート又は中位スケールトラックパターンTABS2を含む。要するに、中位トラックパターンTABS1及びTABS2は、それらの幾何学的配列にほぼ対応するパターンで空間的に変調された光パターンを透過(又は反射)する信号変化部分SPを含む。各信号変化部分SPは、図5及び6を参照して以下でより詳細に説明するように、「x」の正弦波関数として、即ち、X方向及び/又はスケールパターン115′の測定軸MAに沿う位置の関数として変化する、Y方向「断面」寸法に基づいて形状化される。
【0032】
各トラックパターンTINC、TABS1及びTABS2の空間的に変調された光パターンは、それぞれ対応する検出器トラックDETINC、DETABS1及びDETABS2上に(例えば図3を参照して説明したように全エンコーダ構造に基づいて)中心となるように、名目上アラインされている。本発明の一側面によれば、アブソリュート検出器トラックDETABS1及びDETABS2の検出器は、対応するY方向スケールトラックパターン寸法YTABS1及びYTABS2よりも小さい各Y方向検出器エッジ間寸法YDETABS1及びYDETABS2のそれぞれの上で空間的に変調された光を検知するように構成されている。これは、図5を参照して以下で詳細に説明するように、中心又は名目上のアライメント中心サブトラックの各側上の測定軸MAに沿って延びるミスアライメント許容ゾーン又はサブトラックTOLを許容する。参考及び説明のため、図4は、それぞれ、アブソリュートトラックパターンTABS1及びTABS2の中心サブトラックとアラインされて示される、代表的な検出器窓領域DWABS1及びDWABS2を模式的に示す。検出器窓領域DWABS1及びDWABS2は、それぞれ検出器トラックDETABS1及びDETABS2の個別検出器要素の検出領域に対応し、名目上の動作アライメントに対応する位置で示されている。図4に示された検出器及びアブソリュートスケールパターン構造は、図2の先行技術を参照して先に説明した無駄な検出器領域の問題を克服している。
【0033】
図4の実施形態において、検出器トラックDETINC、DETABS1及びDETABS2のそれぞれは、公知の直角位相型検出器レイアウトで配置された個別検出器要素のアレイを備えている。要するに、各アレイにおいて、4つの近接する検出器要素が、それらが受光する空間変調光パターンの4つの空間位相(即ち0、90、180、270°)を検出する空間ろ波を与えるよう均等に間隔が空けられている。4つのそのような近接検出器要素の複数のグループが与えられ、図4に示されるように、そのような信号の寄与を合計するように同じ空間位相を検出する検出器を接続しても良い。従って、各空間的に変調された光パターンがその対応する検出器トラック上を移動するので、この正弦波直角位相信号は、位置の関数として与えられる。直角位相信号は、公知技術に従って、局所的な波長内の各トラックの空間位相位置を決定するように処理される。これらの決定された空間位相位置は、絶対位置を決定するために、先に述べたような公知のSCWAM技術により処理される。
【0034】
いくつかの実施形態において、スケールパターン115′の全幅は、約3.0mm以下であり、寸法YTIC、YTABS1及びYTABS2は、それぞれ約1.0mm以下であり、寸法YDETINC、YDETABS1及びYDETABS2は、それぞれ、対応する寸法YTINC、YTABS1及びYTABS2よりも小さくすることができる。1つのある実施形態において、寸法YTINC、YTABS1及びYTABS2は、それぞれ0.8mm、寸法YDETINC、YDETABS1及びYDETABS2は、0.508mmであり、様々なサブトラックTOLは、ミスアライメントを許容すると共に、ボケた空間変調光が近接トラックの検出器上に漏れるのを防止するため、寸法YDETINC、YDETABS1及びYDETABS2を越えてY方向に約0.146mmだけ延びることができる。アブソリュートトラックパターンTABS2の波長L2はL2=720μmであり、アブソリュートトラックパターンTABS1の波長L1はL1=700μmであることができる。微細トラックパターンTINCの波長は20μmであることができる。SCWAM技術を用いると、これは、約25.2mmの絶対測定範囲を与え、合理的な補間比が使われるのを許容する。この実施形態の例において、スケールパターン115′の全Y方向寸法は約2.4mm、検出器エレクトロニクス120上に含まれる全ての検出器トラックにわたる全Y方向寸法は約2.1mmであることができる。このような小型の寸法は、多くの適用分野(例えばリニアゲージ等)において、サイズ及びコストの両方に関して、特に有益である。勿論、上記の例で述べた構成及び寸法は、例示であり、本発明を限定するものではない。例えば、より大きな信号、及び/又は、より広い許容寸法のサブトラック、及び/又は、1つのトラックから他に漏れるボケ光を防止するための追加のスペースを与えるために、様々なY方向寸法を大きくしたり、あるいは、(例えばより長い波長を持つ追加のアブソリュートトラックでSCWAM技術を用いることにより)絶対測定範囲を増やすために追加のアブソリュートトラックを与えることができる。更に、図4に示される実施形態において、各検出器要素のY方向エッジ間寸法は、各検出器要素の端部がY方向に垂直であり、検出器要素端部が互いにX方向に沿ってアラインされているため、それに対応する検出器トラックの全Y方向寸法と同じである。しかしながら、より一般的に、いくつかの実施形態において、アブソリュートトラックパターンは、Y方向に垂直でない平行端部(例えば「斜めの」端部)を持つ検出器要素と共同して動作することができ、この場合、そのような検出器要素は、X方向に沿う各点で一定のY方向エッジ間寸法(例えばYDETABS1)を有することができる。このような実施形態において、斜めの平行端部の結果生じる「平行四辺形」形状のため、検出器要素の全Y方向寸法は、対応する検出器トラックの全Y方向寸法と同様に、そのY方向エッジ間寸法よりも大きいであろう。更に、与えられた検出器トラック内の検出器要素がX方向に沿って互いに完全にアラインされていることは、厳密な要請ではない。原理的に、それらの配置は、互いにY方向に沿って少し曲がって、全Y方向検出器トラック寸法を更に増加させていても良い。そのような実施形態は、全トラック寸法及び与えられたミスアライメント許容範囲に合うトラックパターンを与えるため、より広いアブソリュートトラックパターン(又は逆に、検出器要素のより狭いY方向エッジ間寸法)を要求する。それらも拘らず、ここで開示した教えによるトラック構造により、上記及び下記の様々な他の利点が得られる。
【0035】
図5は、本発明によるある設計原理を示す、アブソリュートトラックパターンTABSの一実施形態の図500である。アブソリュートトラックパターンTABSは、ここに開示したアブソリュートトラックパターンのいずれにも置き換えることができる。図5に示すように、アブソリュートトラックパターンTABSの代表セグメント(1波長Ltrack)は、各Y方向寸法YCENT、及び、各Y方向寸法Y−TOL1、Y−TOL2、Y−TOL1及びY−TOL2を持つミスアライメント許容サブトラックSTR−TOL1、STR−TOL2、STR−TOL1′及びSTR−TOL2′を有する中央サブトラックSTR−CENTを含む。それと共に、サブトラックSTR−TOL1及びSTR−TOL2は、全許容サブトラックSTR−TOLを補い、サブトラックSTR−TOL1′及びSTR−TOL2′は、全許容サブトラックSTR−TOL′を補う。各サブトラックは、測定軸MAの方向に沿って続くことを理解されたい。
【0036】
説明のため、図5は更にトラックパターンTABSによって与えられた空間変調光を検知するのに使われる個別検出器要素の検出領域に対応する名目上アラインされた代表検出器窓領域DWABSも示す。図示されるように、アブソリュートトラックパターンTABSは、正弦波信号の信頼性を維持しつつ、アブソリュートトラックパターンTABSのY方向寸法YTABSよりも小さいY方向エッジ間寸法YDETABS(及び全Y方向寸法)を持つ検出器(例えばアブソリュート検出器トラック内の検出器)の使用を許容するように構成される。エンコーダの適用分野において、YTOL2は、検出器窓領域DWABS(及び/又は対応する検出器トラック)及びアブソリュートトラックパターンTABS間の第1のY方向に沿って許容されるミスアライメント許容量であり、YTOL1は、反対側のY方向に沿って許容されるミスアライメント許容量である。例え検出器窓領域DWABSが、許容サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL1′を制限するようにミスアラインされても、パターン部分SP−CENTからのほぼ全ての光が、常に検出器窓領域DWABSに落ちるように、中央サブトラックSTR−CENTは各Y方向寸法YCENTを持つ寸法とされる。従って、SP−CENTからの結果として生じる信号の寄与は、ミスアライメントに拘わらず、正弦波信頼性を持つパターン部分SP−CENTの正弦波形状に対応する。
【0037】
図5に示されるように、検出器窓領域DWABSが、許容サブトラックSTR−TOL2内に落ちるようY方向にミスアラインされると、パターン部分SP−TOL1からのほぼ全ての光が、ミスアラインされた検出器窓領域DWABS上に落ち続け、その結果生じるサブトラックSTR−TOL1からの信号の寄与が、正弦波信頼性を持ってパターン部分SP−TOL1の正弦波形状に対応する。これに対して、サブトラックSTR−TOL2′内のパターン部分SP−TOL2′からの光のいくらかは、ミスアラインされた検出器窓領域DWABS上に落ちない「損失光」となる。しかしながら、本発明の1つの側面によれば、パターン部分SP−TOL2′からの損失光が、常に、サブトラックSTR−TOL2のパターン部分SP−TOL2から得られる同様な光の量によって補償されるよう、アブソリュートトラックパターンTABSが構成される。従って、パターン部分SP−TOL2及びSP−TOL2′からの結果として生じる組合せ信号の寄与は、ミスアライメントに拘わらず、正弦波信頼性を持ってパターン部分SP−TOL2及びSP−TOL2′の正弦波形状に対応する。これは、パターン部分SP−TOL2及びSP−TOL2′が幾何学的に合同で、1つがY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ他方に向かって移動すると一致する時に達成される。同様に、パターン部分SP−TOL1及びSP−TOL1′が幾何学的に合同で、1つがY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ移動した時に一致すれば、反対のY方向のミスアライメントは同様に補償される。以下に更に説明するいくつかの実施形態では、サブトラック要素STR−TOL1、STR−TOL2、STR−TOL1′及びSTR−TOL2′は、パターン様相によってそれほど容易に区別されない。従って、これまでの説明から、全許容サブトラックSTR−TOL及びSTR−TOL′も、幾何学的に合同で、1つがY方向に距離YDETABSだけ移動すると一致する。これは、本発明により使用可能な許容サブトラック構造の望ましい特性を述べる、もう1つの、より一般的な方法である。これまでの説明に基づいて、図5の構造では、YDETABSは、常に、変化する寸法YSPCENT(s)、YSPTOL1(s)及びYSPTOL2(s)に対応する3つの正弦波パターン部形状の均等範囲にわたる。上記で述べた原理に基づいて、Y方向ミスアライメントに拘わらず、Y方向エッジ間寸法YDETABSを持つ検出器窓領域DWABSからの信号成分の和(即ち合計信号)は、良好な正弦波信頼性を有する。
【0038】
図5に示されるように、信号変化パターン部分SP−CENTは、ACENTの最大Y方向寸法、及び、YMINCNTの最小Y方向寸法に対応して形作られる。Ltrackは、アブソリュートトラックパターンTABSの波長である。信号変化パターン部分SP−CENTの形状を規定する寸法変数YSPCENT(x)は、次のように規定することができる。
【数1】
【0039】
同様に、信号変化パターン部分SP−TOL2及びSP−TOL1の形状をそれぞれ規定する寸法変数YSPTOL2(x)及びYSPTOL1(x)は、次のように規定される。
【数2】
【0040】
様々な実施形態において、寸法YMINCENT、YMIN1及びYMIN2は、(例えば40μmのオーダーの)望ましくない回折効果を最小化するのに十分な大きさに選ぶのが有利である。様々な実施形態において、寸法YMIN1′及びYMIN2′は、ほぼ、信号変化パターン部分の端部と関係付けられたエッジボケの量(例えばいくつかの実施形態においては50μmのオーダー)以上に選ぶことが有利である。しかしながら、様々な他の実施形態においては、寸法YMIN1′及びYMIN2′は、この量よりも小さくても良く、その場合でも十分な正弦波信号信頼性が得られる。いくつかの実施形態において、YTOL1=YTOL2及び/又はYMIN1=YMIN2、及び/又は、YMIN1′=YMIN2′である。しかしながら、これらの等式は、一般的には必要でない。
【0041】
図6は、かなり異なる見掛けに拘わらず、図5を参照して先に説明したある設計原理に従うアブソリュートトラックパターンTABS′及びTABS″の第2及び第3実施形態の図形600及び650を含む。図形600及び650は、比較を容易にするため、ある寸法線及び/又はサブトラック境界線を共有する。図5の構成と比較して図形600及び650の構成中における意味のある違いのみが、以下で強調される。図5及び6の類似する設計構造及び/又は類似する機能を持つ様相は、同様にラベル又は符号が付けられ(例えば同一の参照ラベル又は数字、又は1以上のプライム記号が付加され)、同様に理解される。アブソリュートトラックパターンTABS′及びTABS″は、ここで開示されるアブソリュートトラックパターンの任意のもので置き換えられ得る。
【0042】
図形600に示されるように、アブソリュートトラックパターンTABS′の代表セグメント(1波長)は、各Y方向寸法YCENT、各Y方向寸法Y−TOL1、Y−TOL2、Y−TOL1及びY−TOL2を持つミスアライメント許容サブトラックSTR−TOL1、STR−TOL2、STR−TOL1′、及びSTR−TOL2′を有する中央サブトラックSTR−CENTを含む。各サブトラックは、測定軸MAの方向に沿って続くことを理解されたい。名目上アラインされた代表検出器窓領域DWABSは、トラックパターンTABS′によって与えられる空間変調光を検知するのに用いられる個別検出器要素の検出領域に対応する。アブソリュートトラックパターンTABS′は、正弦波信号信頼性を維持しつつ、アブソリュートトラックパターンTABS′のY方向寸法YTABSよりも小さいY方向エッジ間寸法YDETABS(及び全Y方向寸法)を持つ検出器の使用を許すように構成される。
【0043】
図5に示されるトラックパターンと比べて、トラックパターンTABS′は、2方向に繰返される1つの型又は形状のパターン信号変化部分SP−UNIV(信号変化要素とも称する)を備える。トラックパターンTABS′はX方向に沿って波長Ltrackを有する。パターン信号変化要素SP−UNIVは、以下に詳細に説明するように、X方向に対するパターン角θによって規定される第1の方向に沿って繰り返され、図示されるY方向に沿っても繰返される。中央サブトラックSTR−CENTは、例え検出器窓領域DWABSが許容サブトラックSTR−TOL2またはSTR−TOL1′の限界にミスアラインされても、サブトラックSTR−CENT内に位置するパターン信号変化要素SP−UNIVの部分からの全ての光が常に検出器窓領域DWABSに落ちるようなY方向寸法YCENTを持つと理解される。図5に示されるアブソリュートトラックパターン構造に対して、パターン信号変化要素SP−UNIVが、検出器窓領域DWABSからの全積分信号が、以下で詳細に説明するように、良好な正弦波信頼性を持つような形状とされ、配置されているため、分離されたサブトラックSTR−CENTからの信号の寄与は、サブトラックSTR−CENTに限定される正弦波形状に対応する必要はない。
【0044】
図6に示されるように、検出器窓領域DWABSが、許容サブトラックSTR−TOL2内に落ちるようにミスアラインされても、サブトラックSTR−TOL1内に位置するパターン信号変化要素SP−UNIVの部分からのほぼ全ての光が、ミスアラインされた検出器窓領域DWABS上に落ち続ける。これに対して、サブトラックSTR−TOL2′内に位置するパターン信号変化要素SP−UNIVの部分からの光のいくらかは、ミスアラインされた検出器窓領域DWABS上に落ちない「損失光」である。しかしながら、パターン信号変化要素SP−UNIVのサイズ及び繰返し配置が、サブトラックSTR−TOL2′内に位置するパターン信号変化要素SP−UNIVの部分からの損失光が、常に、サブトラックSTR−TOL2内に位置するパターン信号変化要素SP−UNIVの部分から得られる同様な光の量によって補償されるようになっている。即ち、パターン信号変化要素SP−UNIVは、以下で詳細に説明するように、サブトラックSTR−TOL2及びSTR−TOL2′のパターン信号変化要素SP−UNIVの部分から結果として生じる組合せ信号の寄与が、検出器窓領域DWABSのY方向ミスアライメントに不感となるようなサイズと繰返し配置を持つようにされる。これが達成されるための1つの条件は、サブトラックSTR−TOL2及びSTR−TOL2′のパターン信号変化要素SP−UNIVの部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の1つのパターン信号変化要素SP−UNIVの部分が、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の他方に向けてY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSのY方向寸法)だけ移動したときに一致することである。
【0045】
同様に、サブトラックSTR−TOL1及びSTR−TOL1′のパターン信号変化要素SP−UNIVの部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の一つのパターン信号変化要素SP−UNIVの部分が、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の他方に向けてY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ移動したときに一致すれば、Y方向のミスアライメントは同様に補償される。即ち、パターン信号変化要素SP−UNIVは、サブトラックSTR−TOL1及びSTR−TOL1′のパターン信号変化要素SP−UNIVの部分から生じる組合せ信号の寄与が、検出器窓領域DWABSのY方向ミスアライメントに不感となるようなサイズ及び繰返し配置を持つ。
【0046】
これまでの説明から、全許容サブトラックSTR−TOL及びSTR−TOL′も幾何学的に合同であり、1つがY方向に距離YDETABSだけ移動したときに一致する。既に示したように、これは、本発明により使用可能な許容サブトラック構造の望ましい特性を述べる、もう1つの、より一般的な方法である。これまでの説明に基づいて、図形600の構造で、対応する検出器要素のY方向エッジ間寸法である検出器窓領域DWABSのエッジ間寸法YDEYABSは、パターン信号変化要素SP−UNIVの均等範囲の3つの単位にわたることが理解される。従って、上記で述べた原理に基づいて、Y方向ミスアライメントに拘わらず、検出器窓領域DWABSからの信号成分の和(即ち、合計信号)は、良好な正弦波信頼性を有する。より一般的には、上記の説明から、図形600と同様な構造において、検出器窓領域DWABSのエッジ間寸法YDETABSが常に正弦波パターンの単位の整数倍と均等範囲にわたっていれば、Y方向ミスアライメントに拘わらず、そのような検出器窓領域DWABSからの信号成分の和(即ち合計信号)が良好な正弦波信頼性を持つことが理解される。
【0047】
パターン信号変化要素SP−UNIVのサイズ及び繰返し配置について以下説明する。図6に示すように、パターン信号変化要素SP−UNIVは、Aの最大Y方向寸法、及び、YMINの最小Y方向寸法を有するパターン形状に基づいている。Ltrackは、アブソリュートトラックパターンTABS′の波長である。パターン信号変化要素SP−UNIVのそれぞれの形状を部分的に規定するY方向寸法変数YSPUNIV(x)は、次のように規定される。
【数3】
【0048】
各パターン信号変化要素SP−UNIV内で、各パターン信号変化要素SP−UNIVの形状を更に規定するY方向寸法変数YSPUNIV(x)の中心位置YOffset(x)は次のように規定される。
【数4】
【0049】
適切に選ばれたゼロでないパターン角θは、パターン角θがゼロの場合に比べて、アライメントが大きく変化した場合でも、正弦波信頼性を維持し易い。いくつかの実施形態において、少なくとも10°、20°又は30°以上のパターン角が有利である。しかしながら、いくつかの実施形態において、パターン角0°を用いて、十分な正弦波信頼性を得ることができる。
【0050】
A及びYMIN′及びYDETABSのY方向寸法は、次の条件を満足するように選ばれる。
【数5】
【0051】
ここでNは整数(例えば図形600ではN=3)である。いくつかの実施形態において、YMIN′がほぼゼロであれば、最大Y方向寸法Aは、最大で(YDETABS1/N)となる。いずれの場合でも、YMIN′の値に拘わらず、パターン信号変化要素SP−UNIVは、正弦波信頼性を維持するため、上記で説明した原理に従って、Y方向に沿って名目上[YDETABS1/N]のステップで繰返されることができる。勿論、パターン中の様々な信号変化要素SP−UNIVは、第1アブソリュートトラックパターンのY方向限界で切り捨てられることができるが、トラックパターン限界で切り捨てられたパターン信号変化要素の下敷きとなる形状は、本質的にここで説明したものであることを理解されたい。
【0052】
整数Nが大きくなるほど、照明の非一様性に拘わらず、正弦波信頼性を維持し易くなる。しかしながら、より小さい整数Nは、より大きいパターン要素を与え、より小さなパターン要素に比較して、空間変調光における全体的により優れたコントラストを与える。狭いトラック(例えば1−2mmのオーダー)を使用するいくつかの実施形態において、これらの要因間の有利なバランスは、Nが3から7の範囲であるときに与えられる。しかしながら、様々な実施形態(例えばより広いトラック又はより少ないボケ等)において、Nがこの範囲外にあっても有利である。
【0053】
式(6)は、サブトラックSTR−TOL1及びSTR−TOL1′中のパターン信号変化要素SP−UNIVの部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の1つのパターン信号変化要素SP−UNIVの部分が、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の他方に向かってY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ移動したときに一致するような繰り返し配置を与える。この繰り返し配置は、又、サブトラックSTR−TOL2及びSTR−TOL2′中のパターン信号変化要素SP−UNIVの部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の1つのパターン信号変化要素差SP−UNIVの部分が、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の他方に向かってY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ移動したときに一致することを保証する。前記の記載から、全許容サブトラックSTR−TOL及びSTR−TOL′も幾何学的に合同であり、1つがY方向に距離YDETABSだけ移動したときに一致することを理解されたい。先に示したように、これは、本発明により使用可能な許容サブトラック構造の望ましい性質を記載するもう一つの、より一般的な方法である。ここで説明した繰り返し配置は、Y方向エッジ間寸法YDETABSを有する検出器窓領域DWABSからの信号成分の和(即ち、合計信号)が、Y方向ミスアライメントに拘わらず、良好な正弦波信頼性を持つことを保証する。
【0054】
様々な実施形態において、寸法YMINは、信号変化要素中で最も狭い様相であり、望ましくない回折効果を最小とするのに十分な大きさ(例えば少なくとも30又は40μmのオーダー)に選ばれることが有利である。しかしながら、様々な他の実施形態において、寸法YMINは、この量より小さくても、十分な正弦波信号信頼性が獲得される。様々な実施形態において、寸法YMIN′は、パターン信号変化要素SP−UNIVで変化する信号のエッジと関係するエッジボケの量(例えばいくつかの実施形態において50μmのオーダー)以上に選ぶことが有利である。しかしながら、様々な他の実施形態において、寸法YMIN′は、この量よりも小さくても、十分な正弦波信号信頼性が獲得できる。いくつかの実施形態において、YTOL1=YTOL2である。しかしながら、この等式は一般的な場合に必ずしも必要でない。
【0055】
これまでの記載に基づいて、任意の位置xで、検出器窓領域DWABS内に入るパターン信号変化要素SP−UNIVのY方向寸法YPIECEi(x)(例えば図形600中に示される例の部分YPIECEL1(x)…YPIECE4(x))の和が次の条件を満足することに注意されたい。
【数6】
【0056】
式(7)は、xの正弦波関数として変化する(信号変化要素の組合せの)合計Y方向寸法を与える。従って、先に述べた原理により、アブソリュートトラックパターンTABS′の信号変化パターン変化要素の部分からの信号寄与の結果の組合せ又は積分は、Y方向ミスアライメントに拘わらず、良好な正弦波信頼性を与える。
【0057】
図形650は、1つの完全なパターン信号変化要素SP−UNIVの均等物がサブトラックSTR−CENT内で除かれている点を除き、図形600に示されるサブトラックパターンTABS′と同一である。これまでの記載に基づいて、図形650において、任意の位置xで、検出器窓領域DWABS内に入るパターン信号変化要素SP−UNIVのY方向寸法YPIECEi′(x)(例えば図形650中に示される例の部分YPIECE1′(x)及びYPIECE2′(x))の和は次の条件を満足する。
【数7】
【0058】
図形650において(N−1)=2である。式(8)は、xの正弦波関数として変化する合計Y方向寸法を与える。言い換えると、その見掛けの不連続性に拘わらず、パターン信号変化要素は、検出器窓領域DWABSのような信号積分窓にわたってそれらの領域が積分されると、それらの積分領域が、xの正弦波関数として変化するように構成されている。従って、先に説明した原理により、アブソリュートトラックパターンTABS″のパターン信号変化要素の部分からの信号の寄与の組合せは、Y方向ミスアライメントに拘わらず、良好な正弦波信頼性を与える。この例は、そのパターン形状が可能な最高のS/N比を与えるものではないが、本発明による様々なアブソリュートトラックパターンが先に述べた原理に従って決定されることを示している。従って、ここで開示したアブソリュートトラックパターンの実施形態は、例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0059】
図7は、そのかなり異なる見掛けに拘わらず、図5及び図6を参照して先に説明したある設計原理に従うアブソリュートトラックパターンTABS′′′の第4実施形態の図形700を含む。図5及び6の構造と比べて図形700中の構造の大きな違いのみが以下で強調される。図7、5及び6で類似する設計考慮及び/又は類似する機能を持つ様相は、同様にラベル又は符号付けされ(例えば同じ引用ラベル又は数字、又は1以上の追加プライム記号)、同様に理解される。アブソリュートトラックパターンTABS′′′は、ここで開示したアブソリュートトラックパターンの任意のものと置き換えられる。
【0060】
図形700に示すように、アブソリュートトラックパターンTABS′′′の代表セグメント(1波長)は、各Y方向寸法YCENT、及び、各Y方向寸法Y−TOL1、Y−TOL2、Y−TOL1及びY−TOL2を持つミスアライメント許容サブトラックSTR−TOL1、STR−TOL2、STR−TOL1′及びSTR−TOL2′を有する中央サブトラックSTR−CENTを含む。各サブトラックは、測定軸MAの方向に沿って続くことを理解されたい。名目上アラインされた代表検出器窓領域DWABSは、トラックパターンTABS′′′によって与えられる空間変調光を検知するのに用いられる個別検出器要素の検出領域に対応する。アブソリュートトラックパターンTABS′′′は、正弦波信号信頼性を維持しつつ、アブソリュートトラックパターンTABS′′′のY方向寸法YTABSよりも小さなY方向エッジ間寸法YDETABS(及び全Y方向寸法)を持つ検出器の使用を許すように構成される。
【0061】
連続正弦波関数に基づいて一般的に生成された図5及び6中に示されるトラックパターンに比べて、トラックパターンTABS′′′は、以下で詳細に説明するように、X方向に沿って波長Ltrackを有する不連続な正弦波関数に基づいて発生されたパターン信号変化要素SP−GRID(xi)(例えば図7中に示されるSP−GRID(x9))を備える。この信号変化要素SP−GRID(xi)は、図7中に破線で示したグリッド線GLによって示されるグリッド単位又は均一サイズのセルを規定する二次元空間グリッドに基づいて、ある間隔で繰返されている。このグリッドは、以下に詳細に説明するように、図7中に示される如く、あるパターン角θに沿って、Y方向に沿う寸法YGRID、及び、X方向に沿う寸法XGRIDでアラインされている。Y方向に沿って、信号変化要素SP−GRID(xi)は、中心間間隔YCtoC=YGRIDで中心線CLに沿って繰返されている。信号変化要素SP−GRID(xi)は、以下に詳細に説明するように、検出器窓領域DWABSからの合計積分信号が、Y方向ミスアライメントに拘わらず十分な正弦波信頼性を持つような、形状、向き、サイズ及び(例えばグリッド間隔による)繰返し配置を有する。
【0062】
中央サブトラックSRT−CENTは、例え検出器窓領域DWABSが許容サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL1′の限界までミスアラインされても、サブトラックSTR−CENT内に位置する信号変化要素SP−GRID(xi)の部分からのほぼ全ての光が、常に検出器窓領域DWABS上に落ちるようなY方向寸法YCENTを持つと理解される。図7に示すように、検出器窓領域DWABSが許容サブトラックSTR−TOL2内に落ちるようにミスアライメントされると、サブトラックSTR−TOL1内に位置する信号変化要素SP−GRID(xi)の部分からのほぼ全ての光が、ミスアラインされた検出器窓領域DWABS上に落ち続ける。これに対して、サブトラックSTR−TOL2′内に位置する信号変化要素SP−GRID(xi)の部分からの光のいくらかは、ミスアラインされた検出器窓領域DWABS上に落ちない「損失光」となる。しかしながら、信号変化要素SP−GRID(xi)のサイズ及び繰返し配置は、サブトラックSTR−TOL2′内に位置する信号変化要素SP−GRID(xi)の部分からの損失光が常にサブトラックSTR−TOL2内に位置する信号変化要素SP−GRID(xi)の部分から得られる光の同様な量によって補償されるようにされている。即ち、以下で詳細に説明するように、信号変化要素SP−GRID(xi)は、サブトラックSTR−TOL2及びSTR−TOL2′中の信号変化要素SP−GRID(xi)の部分から生じる信号寄与の組合せが検出器窓領域DWABSのY方向ミスアライメントに不感となるようなサイズ及び繰返し配置を持つようにされている。これを達成するための一つの条件は、サブトラックSTR−TOL2及びSTR−TOL2′の信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の1つの信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の他方に向けてY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSのY方向寸法)だけ移動したときに一致することである。
【0063】
同様に、サブトラックSTR−TOL1及びSTR−TOL1′中の信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の1つの信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の他方に向かってY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ移動したときに一致すれば、反対側のY方向のミスアライメントも同様に補償される。即ち、信号変化要素SP−GRID(xi)は、以下で詳細に説明するように、サブトラックSTR−TOL1及びSTR−TOL1′の信号変化要素SP−GRID(xi)の部分から生じる信号の寄与の組合せが、Y方向ミスアライメントに不感となるようなサイズ及び繰返し配置を有する。これまでの説明から、全許容サブトラックSTR−TOL及びSTR−TOL′も幾何学的に合同であり、1つがY方向に距離YDETABSだけ移動すると一致する。これまでの説明に基づいて、図形700の構造において、検出器窓領域DWABSのエッジ間寸法YDETABSは、常に、トラックパターンTABS′′′がY方向に繰返す寸法であるY方向に沿う4つのグリッド単位の均等範囲(例えば4*YGRID)にわたっている。従って、上記で説明した原理に基づいて、Y方向ミスアライメントに拘わらず、検出器窓領域DWABSからの信号成分の和(即ち合計信号)は、Y方向ミスアライメントに不感である。更に、信号変化要素SP−GRID(xi)のサイズ及び繰返し配置は、以下で説明するように、Y方向ミスアライメントに拘わらず、そのような検出器窓領域DWABSからの信号成分の和(即ち合計信号)が十分良好な正弦波信頼性を持つようにされる。
【0064】
信号変化要素SP−GRID(xi)のサイズ及び繰返し配置は、以下のようである。信号変化要素SP−GRID(xi)は、最大面積Amax及び/又は対応する最大寸法(例えば最大面積Amaxに近い代表信号変化要素710によってほぼ示される)、及び、最小面積Amin及び/又は代表最小面積信号変化要素715によって示される対応する最小寸法を持つ。一般的に、任意の便利な形状が、パターン信号発生要素に用いられる。最大面積及び/又は最大信号変化要素寸法は、所望の信号変化要素間隔及び/又はパターン発生及び/又はスケール製造条件を満足するようにグリッド寸法YGRID及びXGRIDに関係して選ばれる。一般的に、最小面積及び/又は最小信号変化要素寸法も、同様の拘束条件を満足し、更に、正弦波信頼性を妨げる望ましくない回折効果を抑制するのに十分な大きさ(例えば様々な実施形態において、少なくとも30、40又は50μm)の信号変化要素の最も狭い様相(例えば最も狭い様相の境界に対して垂直な方向の幅又は直径寸法)を与えるように選ばれる。
【0065】
より一般的には、上記で説明した最大及び最小面積又は寸法限界内で、各信号変化要素SP−GRID(xi)は、以下で説明するように、(xi)の不連続な正弦波関数に従って決定される面積ASP(xi)を持つことができる。Ltrackは、アブソリュートトラックパターンTABS″″の波長である。パターン信号変化要素SP−GRID(xi)のそれぞれのサイズを規定する面積変数ASP(xi)は、次のように規定される。
【数8】
【0066】
様々な実施形態において、各パターン信号変化要素SP−GRID(xi)は、そのパターン信号変化要素の面積ASP(xi)を決定するのに用いられる不連続なxの値(xi)を規定するグリッド単位の中心を持つグリッドの単位の中心に対応してセンタリング又は配置される。勿論、パターン中の様々な信号変化要素SP−GRID(xi)は、アブソリュートトラックパターンのY方向限界で切り捨てられるが、トラックパターンの限界で切り捨てられる任意のパターン信号変化要素の下敷きとなる形状又は領域は、上記で説明したようであることが理解される。
【0067】
適切に選ばれた0でないパターン角θは、パターン角θが0である場合に比べて、アライメントの大きな変化に拘わらず正弦波信頼性を維持するのに役立つ。いくつかの実施形態において、少なくとも10、20又は30°以上のパターン角が好適である。しかしながら、いくつかの実施形態において、パターン角0が用いられ、特に各信号変化要素が、そのエッジの重要な部分がY方向にアラインされないような各信号変化要素の形状(例えば信号変化要素が「回転された」正方形又は長方形、円、六角形又はそれらの組合せ等)であり及び/又は向きとされている時には、十分な正弦波信頼性が獲得される。
【0068】
様々な実施形態において、Y方向寸法YGRID及びYDETABSは、次の条件を満足するように選ばれる。
【数9】
ここでNは整数(例えば図形700ではN=4)である。様々な実施形態において、パターン角θ及びX方向寸法XGRIDは、次の関係を満足するように選ばれる。
【数10】
【0069】
又は、より一般的には、他の実施形態においては、次の関係を満足するように選ばれる。
【数11】
ここでMは整数である。
【0070】
上記の説明に基づいて、式(10)及び(11)は、サブトラックSTR−YOL1及びSTR−TOL1′中の信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の1つの信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が、サブトラックSTR−TOL1又はSTR−TOL1′の他方に向かってY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ移動したときに一致するような繰返し配置を与えることを理解されたい。この繰返し配置は、又、サブトラックSTR−TOL2及びSTR−TOL2′中の信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が幾何学的に合同であり、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の1つの信号変化要素SP−GRID(xi)の部分が、サブトラックSTR−TOL2又はSTR−TOL2′の他方に向かってY方向に距離YDETABS(検出器窓領域DWABSの寸法)だけ移動したときに一致することを保証する。これまでの説明から、全許容サブトラックSTR−TOL及びSTR−TOL′も幾何学的に合同であり、1つがY方向に距離YDETABSだけ移動すると一致することを理解されたい。先に示したように、これは、本発明により使用可能な許容サブトラック構造の望ましい特性を記述する、もう1つの、より一般的な方法である。従って、Y方向ミスアライメントに拘わらず、検出器窓領域DWABSからの信号成分の和(即ち、合計信号)は、Y方向ミスアライメントに不感である。更に、式(9)の不連続な正弦波関数に従って選ばれた信号変化要素領域により、アブソリュートトラックパターンTABS″″の信号変化領域を、測定軸方向に沿って分配し、(例えば窓で平均化された信号変化領域密度に基づき)検出器窓領域DWABS内にほぼ正弦波状の信号変化を与え、測定軸に沿って検出器窓領域DWABSが動いたときに十分な正弦波信頼性を与える。1つの実施形態において、図7で示されると同様なアブソリュートトラックが、ほぼYDETABS=1.0mm、YGRID=XGRID=0.250mm、パターン角θ=14°、N=4、Amin=0.0025mm2、Ltrack=0.8mmである。しかしながら、この実施形態は例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0071】
より大きなNは、照明の不均一性に拘わらず正弦波信頼性を保持する傾向にあり、与えられた正弦波信号変化を円滑にし易い。しかしながら、より小さな整数Nは、より大きな信号変化要素を与え、より小さい信号変化要素に比べて、空間変調光中のより優れた全体コントラストを与える。狭いトラック(例えば1−2mmのオーダー)を用いるいくつかの実施形態において、これらの要因間の有利なバランスは、Nが3から7の範囲であるときに与えられる。しかしながら、様々な実施形態(例えばより広いトラック、又はより大きな又は少ない期待されるボケ等)において、Nがこの範囲を外れる場合にも有利である。
【0072】
様々な実施形態において、本発明に従って形成されたエンコーダは、検出器寸法が、検出信号を与えるスケールトラックの幅よりも狭いにも拘わらず、測定軸方向に沿う良好な正弦波信頼性を有する信号と、Y方向に沿うミスアライメントに不感な信号を与える。いくつかの実施形態において、これは、検出器寸法に対して整数の関係に従うパターン繰返し配置及び/又は様相サイズ間の任意の整数の関係を含むスケールパターンを用いることによって達成される。様々な実施形態において、本発明に従って形成されたエンコーダは、検出信号が、与えられた検出器窓内に分布する複数の同様なスケールパターン要素に基づいているので、光の非一様性に比較的不感である。様々な実施形態において、本発明に従って形成されるエンコーダは、小さな、回折を生じる様相を避けたアブソリュートスケールトラックパターンを含む。様々な実施形態において、エンコーダは、エンコーダ中で自己像又は干渉型スケールトラックに用いられる同じ平行光線化された部分的にコヒーレントな光源に直接対応できる絶対測定トラックを含むことができ、高分解能を有する絶対測定装置を経済的に与えることができる。様々な実施形態において、エンコーダは、(例えば検出器ギャップ変動等による)検出器上の測定トラックパターンのボケの変化量に拘わらず結果として生じる測定信号中の空間的な高調波成分の変化が少ない、基本的に正弦波信号変化領域変動を与えるように構成された絶対測定トラックを含む。
【0073】
上記で説明した実施形態は、領域及び/又は形状が正弦波周期関数に基づく、強調された特に有利な構成を有し、他の実施形態は、領域及び/又は形状が、擬似正弦波関数に基づく、様々な適用分野において十分な正弦波信頼性を持つ有利な構成を生じる。特に、適切な擬似正弦波関数は、精密なギャップ制御の必要性等を伴なうことなく、十分なレベルの正弦波信頼性及び信号安定性を与えるために、方形波よりも高周波空間高調波成分が十分に少ない。様々な実施形態において、適切な擬似正弦波関数は、三角波関数又は台形波関数を含むことができる。様々な実施形態において、擬似正弦波パターンから出力された空間的に変調された光パターンは、(例えば少しコリメートされていない照明又は他の公知の技術によって)単純に少しボケており、結果として生じる正弦波信頼性を様々な適用分野に十分なレベルに増強する。
【0074】
本発明の好適な実施形態が示され説明されていたが、この開示に基づく当業者に明らかな様々な変形が、示され説明された様相の配列及び一連の動作に基づいて可能である。従って、本発明の精神及び範囲を離れることなく、様々な変化がなされることが理解される。
【0075】
例えば、スケール要素の少なくとも第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターン及び微細トラックパターンの少なくともいずれか一つが、スケール基材上に備えられた紡錘形の光学格子パターンであって、この紡錘形の光学格子パターンは測定軸方向に対して傾斜すると共に測定軸方向に対して垂直方向に複数組み合わせて一つの光学格子パターンとされていることを特徴とする光学式エンコーダを構成することができる。又、この紡錘形の光学格子パターンを測定軸方向に等間隔で配置して、前記微細トラックパターンを構成することができる。更に、前記紡錘形の光学格子パターンを測定軸方向に等間隔で配置したインクリメンタルパターンを、周期を変えて複数配置して、前記第1のアブソリュートトラックパターンを備えたアブソリュートスケールパターンを構成することもできる。
【符号の説明】
【0076】
100…アブソリュート型光学エンコーダ構造
110…スケール要素
115…アブソリュートスケールパターン
120…検出器エレクトロニクス
125…検出器構造
126…信号処理回路
130…光源
134…光
134A、134B、134C…光路
140…レンズ
150…光源格子
160…照明システム又は部
190…信号発生及び処理回路
192…電源及び信号結線
200…正弦波状トラックパターン
201、202…ライン
TP1…第1のパターン境界
TP2…第2の鏡像パターン境界
IL1−IL4…フォトダイオード
TINC…インクリメンタルトラックパターン(微細トラックパターン)
TABS1…第1のアブソリュートトラックパターン(中位トラックパターン)
TABS2…第2のアブソリュートトラックパターン(中位トラックパターン)
MA…測定軸方向
DETINC、DET1、DET2…検出器トラック
SP…信号変化部分
DWABS1…検出器窓領域
DWABS2…検出器窓領域
STR−CENT…中央サブトラック
STR−TOL…ミスアライメント許容サブトラック
YDETABS…エッジ間寸法
SP−UNIV…パターン信号変化要素
YMIN…最小Y方向寸法
YSPUNIV…Y方向寸法変数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7