【実施例】
【0070】
一般的事項
実施例及び比較例を挙げて以下に本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は実施例のみに制限されるものではない。なお、実施例と比較例における各成分の配合部数は、特に断らない限り重量部を示すものである。
【0071】
本発明では以下に示す分析方法や測定方法を使用した。
エポキシ当量:JIS K−7236に記載の方法。即ち、試料をクロロホルム10mLに溶解し、無水酢酸20mL、20%の臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mLを各々加えて、電位差滴定装置を用いて0.1mol/L過塩素酸酢酸標準液で滴定を行い、各試薬の濃度と添加量ならびに滴定量から、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ当量を測定した。
【0072】
全塩素量:JIS K−7243−3に記載の方法。即ち、試料をジエチレングリコールモノブチルエーテル25mLに溶解し、1mol/L水酸化カリウムの1,2−プロパンジオール溶液25mLを加えて、ホットプレート上にて10分間加熱還流下で反応させる。室温まで冷却後、50mLの無水酢酸を加えて、電位差滴定装置を用いて0.01mol/L硝酸銀溶液で滴定を行い、各試薬の濃度と添加量ならびに滴定量から、エポキシ樹脂に含まれる全塩素量を測定した。
【0073】
リン含有率:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子を正リン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、 生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン原子含有量を重量%で表し、エポキシ樹脂に含まれるリン含有率を測定した。
【0074】
窒素含有率:JIS M−8819の元素分析測定法に準じて、窒素含有量を測定した。
【0075】
分子量分布測定:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC)を用いて測定した。
【0076】
溶融粘度:コーンプレート型粘度計(東亜工業株式会社製、MOEDL CV−1S)を用い、ローターは5〜40ポアズコーンを使用して、100℃の測定温度で測定した。
【0077】
貯蔵後粘度:50℃の熱風循環式オーブン中で30日間貯蔵後、溶融粘度を上記コーンプレート型粘度計とローターコーンを使用して、100℃の測定温度で測定した。
【0078】
組成物の性状:無溶剤であるエポキシ樹脂を入れたガラス瓶を100℃において倒した時に、10秒以内に目視で流動するものを液状と示し、流動のないものを固形とする。また、溶剤を含むワニスは判断の実施をせず、−として示す。
【0079】
難燃性:UL(Underwriters Laboratories Inc.)規格、UL94垂直試験法に準じて測定を行い、同規格の判定基準である、V−0、V−1、V−2、NG(難燃性なし)の4水準で判定した(後になるほど難燃性が悪い)。
【0080】
ガラス転移温度:TMA装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS120U)を使用したJIS C−6481に準じて測定した。
【0081】
銅箔引き剥がし強さ:JIS C6481 5.7に準じた方法、即ち、成形基板から幅10mmの銅箔を直角方向に50mm/minの速度で剥離を行い測定した。
【0082】
吸水率:JIS C6481 5.14に準じた方法、即ち、銅箔を除去した乾燥処理を施した一辺が50mm幅の成形基板を、23℃の蒸留水中に24時間浸漬する前後の重量変化を測定して算出した。
【0083】
リン含有エポキシ樹脂の合成に先立ち、次の合成例1と合成例2によって3官能エポキシ樹脂類(A)であるエポキシ樹脂AP(4−アミノフェノール型エポキシ樹脂)とエポキシ樹脂AC(4−アミノ−m−クレゾール型エポキシ樹脂)の2種類を合成した。
【0084】
合成例1
撹拌機、温度計、滴下装置、窒素導入管、油水分離器付きコンデンサーを装置した4つ口のガラス製セパラブルフラスコにエピクロロヒドリン6,790部 及び1−ブタノール1,090部を仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら75℃まで加熱した。75℃を保ちながら4−アミノフェノール80部(東京化成工業株式会社製、試薬)を4分割して30分毎に添加した。4−アミノフェノールの投入開始から4時間、75℃でクロロヒドリン化反応を行った後、フラスコ内を110torr〜120torrまで減圧し、溶液の温度が60℃の温度で還流状態を保った。次に49%水酸化ナトリウム水溶液1,800部を4時間かけて滴下した。滴下中、油水分離器の上層の水を除去、下層のエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、60℃、110torr〜120torrで1時間反応を続けた。反応終了後、120℃、5torrまで減圧してエピクロロヒドリンを回収した。内容物にメチルイソブチルケトン2,030部を加えて溶解し、次に49%水酸化ナトリウム水溶液290部及び水1,150部を加え、80℃で2時間反応を行った。反応終了後、水3,310部に副生食塩を溶解し、分液により除去した後、水層のpHが中性になるまで水洗を繰り返した。加熱減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した後、n−ヘキサン、トルエン混合溶液を5,920部加え加熱溶解して重合成分を沈降分離し、最後に溶剤を除去してエポキシ当量:97g/eq、全塩素:0.56重量%、窒素含有率:5.05%、25℃粘度:710mPa・sなる茶褐色液状のエポキシ樹脂APを1,560部得た。
得られたエポキシ樹脂APは、分子量分布測定の結果より単量体成分を96.0面積%以上含有する3官能エポキシ樹脂であることを確認した
(図1)。
分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC、カラム:TSK−gel GMH
XL、TSK−gel GMH
XL、TSK−gel G2000H
XLの直列配置、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、流速:1ml/min、カラム温度:40℃、検出:RI検出器、標準ポリスチレン検量線)を用いた測定において、溶出される全分子量分布中での単量体成分の分子量が占める溶出分布の面積比率(面積%)を求めた。図のAで示される単量体成分は、測定により95%以上で有ることが確認された。
【0085】
合成例2
実施例1と同様な装置に、にエピクロロヒドリン6,380部 及び1−ブタノール1,020部を仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら75℃まで加熱した。75℃を保ちながら4−アミノ−m−クレゾール850部(東京化成工業株式会社製、試薬)を4分割して30分毎に添加した。アミノ−m−クレゾールの投入開始から4時間、75℃でクロロヒドリン化反応を行った後、フラスコ内を110torr〜120torrまで減圧し、溶液の温度が60℃の温度で還流状態を保った。次に49%水酸化ナトリウム水溶液1,690部を4時間かけて滴下した。滴下中、油水分離器の上層の水を除去、下層のエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、60℃、110torr〜120torrで1時間反応を続けた。反応終了後、120℃、5orrまで減圧してエピクロロヒドリンを回収した。内容物にメチルイソブチルケトン2,010部を加えて溶解し、次に49%水酸化ナトリウム水溶液280部及び水1,080部を加え、80℃で2時間反応を行った。反応終了後、水3,120部に副生食塩を溶解し、分液により除去した後、水層のpHが中性になるまで水洗を繰り返した。加熱減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した後、n−ヘキサン、トルエン混合溶液を5,850部加え加熱溶解して重合成分を沈降分離し、最後に溶剤を除去してエポキシ当量:107g/eq、全塩素:0.46重量%、窒素含有率:4.81%、25℃粘度:1,350mPa・sなる茶褐色液状のエポキシ樹脂ACを1,540部得た。実施例1と同様に得られたエポキシ樹脂ACも、分子量分布測定の結果より単量体成分を95.1面積%以上含有する3官能エポキシ樹脂であることを確認した。
【0086】
以下に本発明のリン含有エポキシ樹脂の実施例および比較例について、それら合成方法
の詳細を記し、表1にはそれら実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例5で合成された樹脂の性状について示す。
【0087】
実施例1
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、合成例1で得たエポキシ樹脂APを257.7部、有機リン化合物としてHCA(三光株式会社製、DOPO、リン含有率:14.2%、活性水素当量:216.2g/eq)42.3部を仕込み、反応発熱に注意しながら反応温度を130℃〜135℃に保ちながら4時間反応して、リン含有率2重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−1)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0であった。リン含有エポキシ樹脂(E−1)のGPCチャートをフーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製 Spectum One)を用い、液膜法(KBr)により測定した。リン含有エポキシ樹脂(E−1)のGPCチャートを図
2に示す。
【0088】
実施例2
実施例1と同様な装置に、合成例1で得たエポキシ樹脂APを131部、有機リン化合物としてHCAを169部仕込み、実施例1と同様な反応条件により、リン含有率8重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−2)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0であった。
【0089】
実施例3
実施例1と同様な装置に、合成例2で得たエポキシ樹脂ACを257.7部、有機リン化合物としてHCAを42.3部仕込み、実施例1と同様な反応条件により、リン含有率2重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−3)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0であった。
【0090】
実施例4
実施例1と同様な装置に、HCAを250部、トルエン582.5部を仕込み加熱して溶解した後、1,4−ナフトキノン186部を反応発熱に注意しながら投入し、還流温度で2時間保持して反応を終了させた。その後、生成したスラリーの乾式濾過と熱トルエンによる洗浄を数回繰り返し、最後にメチルエチルケトンによる洗浄を経た後、80℃で乾燥を行い白色結晶のDOPO−NQ(リン含有率:8.2%、活性水酸基当量:187.2g/eq)を得た。その後、再び実施例1と同様な装置に合成例1で得たエポキシ樹脂APを254.7部、有機リン化合物としてHCAを38.0部と、先の合成で得たDOPO−NQを7.3部仕込み、トリフェニルホスフィン0.007部を触媒に用いて、反応温度を150℃〜155℃に保ちながら6時間反応し、リン含有率2重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−4)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0.1である。
【0091】
実施例5
実施例1と同様な装置に、合成例2で得たエポキシ樹脂ACを254.7部、有機リン化合物としてHCAを38.0部と、実施例4で得たDOPO−NQを7.3部仕込み、トリフェニルホスフィン0.007部を触媒に用いて、実施例4同様な反応温度条件で6時間反応し、リン含有率2重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−5)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0.1である。
【0092】
実施例6
実施例1と同様な装置に、合成例1で得たエポキシ樹脂APを242.3部、有機リン化合物としてHCAを21.1部と、実施例4で得たDOPO−NQを36.6部仕込み、トリフェニルホスフィン0.037部を触媒に用いて、実施例4と同様な反応温度条件で6時間反応し、リン含有率2重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−6)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0.5である。
【0093】
実施例7
実施例1と同様な装置に、実施例1と同様なエポキシ樹脂APを278.9部、有機リン化合物としてHCAを21.2部仕込み、実施例1と同様な反応条件により、リン含有率1重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−7)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0である。
【0094】
比較例1
実施例1と同様な装置に、実施例1と同様なエポキシ樹脂APを109.9部、有機リン化合物としてHCAを190.1部仕込み、実施例1と同様な反応条件により、リン含有率9重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−8)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0である。
【0095】
比較例2
実施例1と同様な装置に、エポキシ樹脂として、オキシメチレン鎖を有するエポキシ樹脂TX−0929(新日鐵化学製、パラキシリレングリコール型エポキシ樹脂、エポキシ当量:142g/eq、全塩素:0.14重量%、25℃粘度:49mPa・s)を205.3部、有機リン化合物としてHCA−HQ(三光株式会社製、商品名:DOPO−HQ、リン含有率:9.5%、活性水素当量:162.1g/eq)を94.8部仕込み、トリフェニルホスフィン0.095部を触媒に用いて、反応温度を150℃〜155℃に保ちながら4時間反応して、リン含有率3重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−9)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は1.0である。
【0096】
比較例3
実施例1と同様な装置に、エポキシ樹脂としてYH−434L(新日鐵化学製、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:118g/eq、全塩素:0.71重量%、窒素含有率:6.6%、50℃粘度:8500mPa・s)を257.8部、有機リン化合物としてHCAを42.3部仕込み、実施例3と同様な反応条件により、リン含有率2重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−10)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0である。
【0097】
比較例4
実施例1と同様な装置に、エポキシ樹脂としてYD−128(新日鐵化学製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:188g/eq、全塩素:0.16重量%、25℃粘度:13400mPa・s)を90部、YDPN−638(新日鐵化学製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:177g/eq、全塩素:0.14重量%)を150.1部、BPA(新日鐵化学製、ビスフェノールA)を4.5部、エタキュアー100(エチルコーポレーション製、ジエチルトルエンジアミン、25℃粘度:155mPa・s、活性水素当量:44.6g/eq、窒素含有率:15.7%)を9.0部、HCAを46.4部仕込み、トリフェニルホスフィン0.005部を触媒に用いて、150℃で4時間反応し、リン含有率2.2重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−11)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は0である。
【0098】
比較例5
実施例1と同様な装置に、エポキシ樹脂としてYDF−170(新日鐵化学製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:168g/eq、全塩素:0.15重量%、25℃粘度:3000mPa・s)を205.3部、有機リン化合物としてHCA−HQを94.8部仕込み、トリフェニルホスフィン0.095部を触媒に用いて、反応温度を150℃〜155℃に保ちながら5時間反応して、リン含有率3重量%のリン含有エポキシ樹脂(E−12)を得た。ここでの有機リン化合物類(B)の総和モル数に対しての有機リン化合物(B2)の使用モル比は1.0である。
【0099】
【表1】
【0100】
リン含有エポキシ樹脂を用いた実施例8〜実施例18の配合処方と、それら組成物から得られた各々の積層板についての各物性試験の結果を表2に示す。
【0101】
これら配合処方や積層板の成形方法としては、リン含有エポキシ樹脂等とその硬化剤、さらに必要に応じて硬化促進剤等を配合して下記の方法により硬化物の作製を行った。
【0102】
実施例8〜実施例11
実施例で得られたE−1、E−3〜E−5のリン含有エポキシ樹脂に対して、硬化剤H−1(日本化薬製、商品名:カヤハードAA、ジエチルジアミノジフェニルメタン、活性水素当量:63.5g/eq、窒素含有率:11.0%、25℃粘度:2,500mPa・s)を配合して、60℃〜80℃で均一に脱泡混合を行った。その後、これをガラスクロス(日東紡績製、WEA2116 106 S136、厚さ:100μm)一枚ずつに含浸させたものを4枚用いて銅箔(三井金属鉱業製、3EC−III、厚さ:35μm)間に積ね、更に金型間にそれらを挟み込んでから真空脱泡を実施して、150℃で2時間、更に180℃で1時間の硬化により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0103】
実施例12
実施例で得られたE−2のリン含有エポキシ樹脂に対して、硬化剤H−2(明和化成製、商品名:MEH−8000H、アリル化フェノールノボラック、フェノール性水酸基当量:141.0g/eq、25℃粘度:1,600mPa・s)を80℃において加熱溶融配合し、冷却後、硬化促進剤C−1(2E4MZ:四国化成株式会社製、2エチル4メチルイミダゾール、窒素含有率:25.4%)を加えてゲル化時間を調整した。その後その液状樹脂組成物を脱泡した後、ガラスクロス(日東紡績製、WEA2116 106 S136、厚さ:100μm)一枚ずつに含浸させたものを4枚用いて銅箔(三井金属鉱業製、3EC−III、厚さ:35μm)間に積ね、更に金型間にそれらを挟み込んでから真空脱泡を実施して、150℃で2時間、更に180℃で1時間の硬化により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0104】
実施例13
実施例で得られたE−2のリン含有エポキシ樹脂に対して、硬化剤H−3(日立化成工業製、商品名:HN−2200R、メチル化テトラヒドロキシフタル酸無水物、酸無水物当量166g/eq、粘度61mP・s)を60℃において加熱溶融配合し、冷却後、硬化促進剤C−1(2E4MZ:四国化成株式会社製、2エチル4メチルイミダゾール、窒素含有率:25.4%)を加えてゲル化時間を調整した。その後その液状樹脂組成物を脱泡した後、ガラスクロス(日東紡績製、WEA2116 106 S136、厚さ:100μm)一枚ずつに含浸させたものを4枚用いて銅箔(三井金属鉱業製、3EC−III、厚さ:35μm)間に積ね、更に金型間にそれらを挟み込んでから真空脱泡を実施して、150℃で2時間、更に180℃で1時間の硬化により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0105】
実施例14〜実施例17
実施例で得られたE−1、E−2、E−4、E−6のリン含有エポキシ樹脂に対して、硬化剤H−4(日本カーバイド工業製、ジシアンジアミド、活性水素当量:21.0g/eq、窒素含有率:66.6%)をメチルセロソルブとジメチルホルムアミド、メチルエチルケトンに溶解して配合し、硬化促進剤C−1(2E4MZ:四国化成株式会社製、2エチル4メチルイミダゾール、窒素含有率:25.4%)を加えてゲル化時間を調整し、不揮発分が80重量%になるように液状の樹脂組成物ワニスを配合した。その後、このワニスを基材であるガラスクロスに含浸させた後、これを150℃の熱風循環式オーブンで8分間乾燥を行い、プリプレグを得た。次いで得られたプリプレグ4枚を銅箔2枚間に重ね130℃で15分及び170℃×2.0MPa×70分間の条件で加熱と加圧を行い、厚み0.55mmの積層板を得た。
【0106】
実施例18
実施例で得られたE−7のリン含有エポキシ樹脂に対して、実施例8と同様な硬化剤、方法により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0107】
【表2】
【0108】
表1に示される比較例1〜比較例5でのリン含有エポキシ樹脂を用いた比較例6〜比較例12での配合処方と、それら組成物から得られた各々の積層板についての各物性試験の結果を表3に示す。
【0109】
これら配合処方や積層板の成形方法としては、リン含有エポキシ樹脂等とその硬化剤、更に必要に応じて硬化促進剤等を配合して下記の方法により硬化物の作製を行った。
【0110】
比較例6
比較例1で得られたE−8のリン含有エポキシ樹脂に対して、実施例12と同様な硬化剤、方法により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0111】
比較例7
比較例1で得られたE−8のリン含有エポキシ樹脂に対して、実施例13と同様な硬化剤、方法により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0112】
比較例8
比較例1得られたE−8のリン含有エポキシ樹脂に対して、実施例14と同様な硬化剤、方法により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0113】
比較例9
比較例2で得られたE−9のリン含有エポキシ樹脂に対して、実施例8と同様な硬化剤、方法により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0114】
比較例10
比較例3で得られたE−10のリン含有エポキシ樹脂に対して、実施例8と同様な硬化剤、方法により厚み0.56mmの積層板を得た。
【0115】
比較例11〜比較例12
比較例4、比較例5で得られたE−11、E−12のリン含有エポキシ樹脂に対して、不揮発分が50重量%になるように樹脂組成物ワニスを調製した以外は、実施例14と同様な硬化剤と硬化促進剤、方法により厚み0.55mmの積層板を得た。
【0116】
【表3】
【0117】
実施例1〜実施例7で示す様に一般式1で示されるリン含有エポキシ樹脂は低粘度であり、実施例8〜18で示す様に接着力の向上、難燃性の付与をすることが出来る。特に実施例8〜実施例13に示す液状エポキシ樹脂組成物の硬化物は比較例6,比較例7で示す液状リン含有エポキシ樹脂組成物の硬化物と比較して高いガラス転移温度が得られている。また、比較例1に示すリン含有エポキシ樹脂は本願の一般式1と同様な化学構造であるが、エポキシ当量が本願請求項の範囲よりも大きくなっており、本願の特徴である低粘度エポキシ樹脂、低粘度エポキシ樹脂組成物とは異なる高い粘度となっている。また、
比較例1のエポキシ樹脂を用いた比較例6〜比較例8の
エポキシ樹脂組成物はガラス転移温度も低くなっている。また、比較例2〜比較例5で示される本願と異なる構造のリン含有エポキシ樹脂は、比較例2、比較例3のエポキシ樹脂が低粘度であるもののその他は固形である。比較例2のエポキシ樹脂を用いた比較例9のエポキシ樹脂組成物は液状であるもののその硬化物のガラス転移温度は低く限定的な使用とならざるを得ない。また、
比較例3のエポキシ樹脂は全塩素が高いことから貯蔵安定性が非常に悪いことがわかり
、50℃で30日の促進試験下でゲル化を生じた。また、硬化物のガラス転移温度は非常に高く良好であるが、組成物としても粘度安定性に乏しく、加熱保温作業時での高粘度化によって硬化物の含浸不良に伴う難燃性悪化や銅箔の接着不良が顕著に確認された
(比較例10)。比較例
4〜比較例
5でのリン含有エポキシ樹脂は、何れも溶融粘度の高い室温下で固形のエポキシ樹脂であるため、基材であるガラスクロスへの含浸は、エポキシ樹脂組成物の低粘度化として有機溶剤を用いて50%程度の不揮発分に調整を図らないと使用不可能であった。また十分な硬化物の難燃性は得られているが、高分子化したエポキシ樹脂成分による影響でガラス転移温度が低下した(比較例11〜比較例12)。
【0118】
上記の様に本願発明のリン含有エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物は難燃性を確保しながら良好な接着性と高いガラス転移温度が得られ、無溶剤あるいは揮発分の少ない組成物として積層板作成における取り扱いが可能である。