(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明の実施形態における第1の測定手法(測定手法1)として、OFDM信号受信装置は、現在のシンボルのTMCCキャリアの値と、1つ前のシンボルのTMCCキャリアの値とを用いて、1つ前のシンボルのTMCCキャリアの実部の2乗と虚部の2乗との和(電力)を平均した値から、現在及び1つ前のシンボルの実部同士の積と虚部同士の積との和を平均した絶対値の値を減算し、減算結果を雑音電力とする。
【0019】
また、第2の測定手法(測定手法2)として、OFDM信号受信装置は、現在のシンボルのTMCCキャリアの電力と1つ前のシンボルのTMCCキャリアの電力とのシンボル内平均値及びその平方根(振幅のrms(root mean square:二乗平均平方根)値)を求め、現在のシンボルのTMCCキャリアの値に対し、その振幅のrms値で除算し、1つ前のシンボルのTMCCキャリアの振幅のrms値を乗算することにより振幅補正し、補正した現在のシンボルのTMCCキャリアの値と、補正しない1つ前のシンボルのTMCCキャリアの値とを用いて、測定手法1と同様の処理を行い、後者から前者を引いた値を雑音電力とする。測定手法2では、AGC回路等により隣り合うシンボルでレベル変動を受けていたりする場合に、雑音電力を測定するに先立って、TMCCキャリアの振幅を調整するものである。
【0020】
図1は、本発明の実施形態において、雑音電力を測定する手法を説明するためのTMCCキャリアについてのシステムモデルを示すブロック図である。このシステムモデルは、例えばマラソン中継等に用いられているFPU装置(Field Pickup Unit:野外中継装置)等のOFDM信号受信装置において、ARIB標準規格STD−B33のOFDMシステムを例にしたものである。
【0021】
このシステムモデルは、DBPSK変調部20、乗算部21及び加算部22により構成され、TMCC情報d
k,iを入力し、TMCCキャリアをDBPSK変調して送信信号s
k,iを生成し、チャネル応答h
k,i及び雑音n
k,iから受信信号r
k,iを生成して出力する。ここで、kはTMCCキャリアの番号を示し、iはシンボル番号を示す。
【0022】
DBPSK変調部20は、TMCC情報d
k,iを入力し、TMCCキャリアをDBPSK変調して送信信号s
k,iを生成する。乗算部21は、DBPSK変調部20により生成された送信信号s
k,iにチャネル応答h
k,iを乗算する。乗算部21の処理は、TMCCキャリアの送信信号が、伝搬チャネルを通過することにより振幅及び位相の変動を受けたことに相当する。加算部22は、乗算部21の乗算結果s
k,i・h
k,iに雑音n
k,iを加算する。加算部22の処理は、TMCCキャリアの送信信号が、伝搬チャネルを通過後に雑音とともに受信機で受信されたことに相当する。この加算結果s
k,i・h
k,i+n
k,iが受信信号r
k,iとして出力される。
【0023】
FPU装置のOFDMシステムでは、TMCCキャリアがシンボル毎の同じ周波数に10本割り当てられている。この10本のTMCCキャリアには同じTMCC情報が含まれており、DBPSK変調部20においてDBPSK変調される。TMCCキャリアの信号点配置は、(I軸,Q軸)=(0,+4/3)または(0,−4/3)であり、データの信号点配置の平均電力が1であるのに対し、TMCCキャリアの平均電力は(4/3)・(4/3)=16/9である。したがって、TMCCキャリアの平均電力は、データの平均電力よりも大きい。また、10本のTMCCキャリアのうちの1本については、差動の基準が異なるため、他の9本とは異なる信号点に配置される。
【0024】
(測定手法1)
まず、測定手法1について説明する。k=1〜10のTMCCキャリアd
k,iについて、シンボル番号i及びシンボル番号i−1の受信信号r
k,i,r
k,i-1と、送信信号s
k,i,s
k,i-1と、チャネル応答h
k,i,h
k,i-1と、雑音n
k,i,n
k,i-1との間の関係を数式に表すと、以下のとおりになる。以下の式において、jは虚数単位、隣り合うシンボル間でチャネル応答は同一(h
k,i=h
k,i-1=h
k)であるとする。また、添え字のx及びyはそれぞれ実部及び虚部を表す。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0025】
図2は、シンボル番号i−1の送信信号s
k,i-1がシンボル番号iの送信信号s
k,iへ遷移する場合のパターンを説明する図である。
図2に示すように、その遷移のパターンは、パターン(1)〜(4)の4通りある。
【0026】
パターン(1)の場合、送信信号s
k,i=0+j・4/3であり、送信信号s
k,i-1=0+j・4/3であるから、受信信号r
k,i,r
k,i-1は、以下の式で表される。
【数6】
【数7】
【0027】
図3は、パターン(1)〜(4)の受信信号r
k,i,r
k,i-1を示す図である。パターン(2)〜(4)の受信信号r
k,i,r
k,i-1も、前述のパターン(1)と同様の計算により求めることができる。
【0028】
ここで、変数nom及びdenomを、それぞれ以下の式で定義する。
【数8】
【数9】
【0029】
また、チャネル応答には、チャネル応答h
k,x,h
k,yが平均a及び分散σ
r2の独立同分布(h
k,x,h
k,y∈N(a,σ
r2)の独立同分布)であり、チャネル応答の実部と虚部の二乗和のアンサンブル平均値(期待値)がE[h
k,x2+h
k,y2]=C(Cはキャリア電力)であるという性質がある。また、雑音には、雑音n
k,i,x,n
k,i,y,n
k,i-1,x,n
k,i-1,yが平均0及び分散σ
n2の独立同分布(n
k,i,x,n
k,i,y,n
k,i-1,x,n
k,i-1,y∈N(0,σ
n2)の独立同分布)であり、雑音の実部と虚部の二乗和のアンサンブル平均値(期待値)がE[n
k,i-1,x2+n
k,i-1,y2]=2・σ
n2=N(Nは雑音電力)であるという性質がある。
【0030】
このようなチャネル応答及び雑音の性質を利用し、パターン(1)のnom,denomのアンサンブル平均値E[nom],E[denom]を考えると、以下の式で表される。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【0031】
前記式(11)は、前記式(10)において、E[n
k,i,x・n
k,i-1,x]=E[n
k,i,y・n
k,i-1,y]=0・0=0であり、E[n
k,i,x・(4/3)h
k,y]=E[n
k,i-1,x・(4/3)h
k,y]=E[n
k,i,y・(4/3)h
k,x]=E[n
k,i-1,y・(4/3)h
k,x]=0・(4/3)・a=0により導出される。また、前記式(13)は、前記式(12)において、E[2・(4/3)n
k,i-1,x・h
k,y]=E[2・(4/3)n
k,i-1,y・h
k,x]=2・(4/3)・0・a=0により導出される。これは、前述のとおり、チャネル応答h
k,x,h
k,yが平均a及び分散σ
r2の独立同分布(h
k,x,h
k,y∈N(a,σ
r2)の独立同分布)であり、雑音n
k,i,x,n
k,i,y,n
k,i-1,x,n
k,i-1,yが平均0及び分散σ
n2の独立同分布(n
k,i,x,n
k,i,y,n
k,i-1,x,n
k,i-1,y∈N(0,σ
n2)の独立同分布)であり、さらにチャネル応答と雑音が独立で無相関だからである。
【0032】
図4は、パターン(1)〜(4)のアンサンブル平均値E[nom],E[denom]を示す図である。パターン(2)〜(4)のnom,denomのアンサンブル平均値E[nom],E[denom]も、前述のパターン(1)と同様の計算により求めることができる。ここで、パターン(1)とパターン(4)、及び、パターン(2)とパターン(3)は、それぞれ、TMCCキャリアd
i=0,d
i=1に相当し、TMCC情報は同じである。このため、差動の基準が違うTMCCキャリアが1本あったとしても、同一シンボル内のTMCCキャリアについて、アンサンブル平均値E[nom]及びE[denom]は、それぞれ同じ値となる。
【0033】
nomのアンサンブル平均値E[nom]の絶対値を|E[nom]|とすると、全てのパターンにおいて、
【数14】
【数15】
となり、雑音電力N、キャリア電力C及びキャリア対雑音電力比C/Nは、以下の式により計算することができる。
【数16】
【数17】
【数18】
【0034】
このように、測定手法1によれば、チャネル応答h
k,x,h
k,yが、h
k,x,h
k,y∈N(a,σ
r2)の独立同分布であり、チャネル応答の二乗和のアンサンブル平均値(期待値)がE[h
k,x2+h
k,y2]=C(Cはキャリア電力)であり、雑音n
k,i,x,n
k,i,y,n
k,i-1,x,n
k,i-1,yが、n
k,i,x,n
k,i,y,n
k,i-1,x,n
k,i-1,y∈N(0,σ
n2)の独立同分布であり、雑音の二乗和のアンサンブル平均値(期待値)がE[n
k,i-1,x2+n
k,i-1,y2]=2・σ
n2=N(Nは雑音電力)であるという性質を利用して、アンサンブル平均値E[nom],E[denom]を求め、前記式(16)〜(18)により、雑音電力N、キャリア電力C及びキャリア対雑音電力比C/Nを計算するようにした。これにより、OFDM信号の雑音電力を精度高く測定することができる。すなわち、OFDMシステム、MIMO−OFDMシステム等のOFDM信号受信装置において、受信したOFDM信号及び復調後のOFDM信号の雑音電力を精度高く測定することができる。
【0035】
尚、キャリア電力Cの計算法は、前記式(17)に限定されるものではなく、全てまたは一部のサブキャリアを用いた平均電力として求めることもできる。また、等化及び合成後のOFDM信号についても同様な計算を行うことにより雑音電力を計算する場合は、前記のキャリア電力C及びキャリア対雑音電力比C/Nは、それぞれ信号電力S及び信号対雑音電力比S/Nとなる。
【0036】
さらに、FPU装置のOFDMシステムをMIMO−OFDMシステムに拡張する場合にも、TMCCキャリアは複数の送信系統で同一の値になるので、前述の手法をそのまま用いることができる。また、地上デジタル放送のOFDMシステムについても、TMCCキャリアの本数は異なるが、TMCCキャリアはDBPSK変調され、振幅が4/3となっており、前述の手法をそのまま用いることができる。
【0037】
(測定手法2)
次に、測定手法2について説明する。前述の測定手法1では、隣り合うシンボル間でチャネル応答が同一(h
k,i=h
k,i-1=h
k)であると仮定して、雑音電力を測定する。これは、OFDM信号のシンボル長が、チャネル応答の変動に対して十分短く設定されているからである。しかしながら、OFDM信号送信装置、OFDM信号受信装置及び変復調器をハードウェアで実現する際に、周波数がずれていて隣り合うシンボルで位相が回転していたり、AGC(Automatic Gain Control:自動利得制御)回路等により隣り合うシンボルでレベル変動を受けていたりする場合は、測定手法1では測定した雑音電力に誤差が生じることになる。そこで、測定手法2では、雑音電力を測定する前に、TMCCキャリアの位相及び振幅の調整を行う。
【0038】
一般に、OFDM信号受信装置はAFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)機能を有しており、AFCが正常に動作している場合は、周波数ずれによる位相回転は補正される。したがって、既知のAFC機能を用いることにより、TMCCキャリアの周波数ずれによる位相を調整することができる。
【0039】
一方、TMCCキャリアの振幅の調整については、以下の処理が行われる。すなわち、以下の式(19)及び(20)に示すように、シンボル番号i−1の受信信号r
k,i-1の電力とシンボル番号iの受信信号r
k,iの電力とのシンボル内平均値p_r
i-1,p_r
iが求められ、それぞれの平方根sqrt_p_r
i-1,sqrt_p_r
iが求められる。この平方根sqrt_p_r
i-1,sqrt_p_r
iは、TMCCキャリアの振幅のrms値に相当する。
【数19】
【数20】
【0040】
そして、受信信号r
k,iの振幅は、以下の式(21)に示すように、受信信号r
k,i-1の振幅を考慮した値(受信信号r
k,i-1の振幅に近い値)に調整される。
【数21】
これにより、シンボル番号iにおけるTMCCキャリアの受信信号r
k,iが調整される。そして、前記式(8)〜(18)により、雑音電力N、キャリア電力C及びキャリア対雑音電力比C/Nが計算される。
【0041】
このように、測定手法2によれば、AFC機能にてTMCCキャリアの位相を調整し、前記式(19)〜(21)にて振幅を調整し、前記式(8)〜(18)にて雑音電力N、キャリア電力C及びキャリア対雑音電力比C/Nを計算するようにした。これにより、TMCCキャリアの周波数がずれていて隣り合うシンボルで位相が回転していたり、AGC回路等により隣り合うシンボルでレベル変動を受けていたりする場合であっても、OFDM信号の雑音電力を精度高く測定することができる。
【0042】
〔シミュレーション結果〕
図5は、計算機シミュレーション結果を説明する図である。この計算機シミュレーション結果は、所定のフェージングを与えたOFDM信号に対し、前記測定手法1を用いて、64シンボルのシンボル間平均を計算し、C/Nをプロットした結果を示している。横軸は、所定のフェージングを与えたときの設定C/Nであり、縦軸は、測定手法1による計算結果を示す計算C/Nである。
図5から、特に、C/Nが低い範囲において、雑音電力を精度高く測定できることがわかる。
【0043】
次に、前述の測定手法1,2を実際のOFDM信号受信装置に適用した場合の実施例について詳細に説明する。実施例1は、チャネル等化及び合成処理前の雑音電力を、TMCCキャリアを用いて測定する例であり、測定した雑音電力は、チャネル等化及び合成処理のために用いられる。実施例2は、チャネル等化及び合成処理後の雑音電力を、TMCCキャリアを用いて測定する例であり、測定した雑音電力は、誤り訂正の尤度計算のために用いられる。
【0044】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、前述のとおり、チャネル等化及び合成処理前の雑音電力を、TMCCキャリアを用いて測定する例である。
図6は、本発明の実施形態によるOFDM信号受信装置の前段の構成を示すブロック図であり、受信アンテナから等化合成処理部までの構成を示している。このOFDM信号受信装置30はMIMO−OFDMシステムの受信装置であり、OFDM信号受信装置30の前段部(OFDM信号受信装置30(1))は、受信アンテナ1、RF(Radio Frequency:高周波)−IF(Intermediate Frequency:中間周波数)変換部2、直交復調部3、シンボル同期部4、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部5、チャネル推定部6、雑音測定部7及びAFC部15を受信系統数N毎に備えており、さらに、等化合成処理部(復調部)8を備えて構成される。
【0045】
OFDM信号送信装置からRF周波数で送信されたOFDM信号が、マルチパス移動伝搬チャネルを通過後、OFDM信号受信装置30は、OFDM信号の電波を受信する。受信アンテナ1は、OFDM信号の電波を電気信号に変換する。RF−IF変換部2は、受信アンテナ1からRFの電気信号(RF信号)を入力し、RFをIFに変換し、IFの電気信号(IF信号)を生成する。直交復調部3は、RF−IF変換部2からIF信号を入力すると共に、AFC部15から周波数ずれの情報を入力し、IF信号を直交復調し、周波数ずれの情報に基づいて周波数ずれを補正し、I軸成分及びQ軸成分に分離する。
【0046】
シンボル同期部4は、直交復調部3からI軸成分の信号及びQ軸成分の信号を入力し、OFDM信号のGI(Guard Interval:ガードインターバル)期間の信号が有効シンボル期間の終わりの信号のコピーであることを利用して、相関処理によりOFDMシンボルの先頭を検出すると共に、有効シンボル期間の位相のずれ(−π〜+π)を検出する。FFT部5は、シンボル同期部4からOFDMシンボルの先頭が検出されたI軸成分の信号及びQ軸成分の信号を入力し、OFDMシンボルの先頭からGIを除去してFFTを行うと共に、サブキャリアのずれを求め、キャリア単位の周波数のずれを検出する。FFT部5により生成されたFFT出力信号r
x,r
yは、チャネル推定部6、雑音測定部7及び等化合成処理部8へ入力され、キャリア単位の周波数ずれの情報は、AFC部15へ入力される。
【0047】
AFC部15は、シンボル同期部4から有効シンボル期間の位相ずれの情報を入力すると共に、FFT部5からキャリア単位の周波数ずれの情報を入力し、補正すべきトータルの周波数のずれを計算し、周波数ずれの情報を直交復調部3に出力する。
【0048】
チャネル推定部6は、FFT部5からFFT出力信号r
x,r
yを入力し、既知情報で変調されたCP(Continual Pilot)キャリア(既知信号パイロットキャリア)成分を抽出し、この受信CPキャリアの値を既知の送信CPキャリアの値で除算してチャネル応答h
x,h
yを求める。チャネル推定部6により算出されたチャネル応答h
x,h
yは、等化合成処理部8へ入力される。
【0049】
雑音測定部7は、FFT部5からFFT出力信号r
x,r
yを入力し、FFT出力信号r
x,r
yからTMCCキャリア成分を抽出し、前述の測定手法1,2にて雑音電力Nを測定する。詳細については後述する。等化合成処理部8は、各受信系統のFFT部5、チャネル推定部6及び雑音測定部7から、FFT出力信号r
x,r
y、チャネル応答h
x,h
y及び雑音電力Nをそれぞれ入力し、CPキャリアを基準信号としてチャネル等化、最大比合成及びMMSE合成等の等化合成処理である復調処理を行う。
【0050】
(雑音測定部の処理/測定手法1)
図7は、等化合成処理前における雑音測定部7の処理を示すフローチャートであり、この処理は、前述の測定手法1に相当する。前述のとおり、FPU装置のOFDMシステムでは、1シンボルにおいてTMCCキャリアが10本割り当てられている。この10本のTMCCキャリアを用いて、以下に示す手順により雑音電力Nを測定する。
【0051】
まず、雑音測定部7は、FFT出力信号r
x,r
yからTMCCキャリア成分を抽出し、前記式(1)に示した、現在のシンボル番号iにおけるTMCCキャリアの受信信号r
k,i,x,r
k,i,y、及び前記式(2)に示した、1つ前のシンボル番号i−1におけるTMCCキャリアの受信信号r
k,i-1,x,r
k,i-1,yを用いて、10本のTMCCキャリアのそれぞれについて、前記式(8)に示した変数nom及び前記式(9)に示した変数denomを計算する(ステップS701,ステップS702)。
【0052】
雑音測定部7は、10本のTMCCキャリアについて計算したそれぞれの変数nom,denomに対し、1シンボルにおける平均値(シンボル内平均値)nom_mean,denom_meanを計算し(ステップS703,ステップS704)、変数nomのシンボル内平均値nom_meanについては、絶対値nom_mean_absを計算する(ステップS705)。そして、雑音測定部7は、所定数の複数のシンボルにわたって、変数nomにおけるシンボル内平均値の絶対値nom_mean_abs及び変数denomにおけるシンボル内平均値denom_meanを平均化し、複数シンボルの平均値(シンボル間平均値)nom_mean_abs_mean,denom_mean_meanを求める(ステップS706,ステップS707)。ここで、シンボル間平均を行うときのシンボル数については、ノイズ電力が変動しない範囲で十分多くする。
【0053】
雑音測定部7は、変数denomにおけるシンボル間平均値denom_mean_meanから変数nomにおけるシンボル間平均値nom_mean_abs_meanを減算し、雑音電力Nを求める(ステップS708)。さらに、雑音測定部7は、前記式(17)により、C=(9/16)・nom_mean_abs_meanにてキャリア電力Cを求め、前記式(18)により、雑音電力N及びキャリア電力Cからキャリア対雑音電力比C/Nを求める。これにより、等化合成処理前のOFDM信号の雑音電力Nを精度高く測定することができる。
【0054】
(雑音測定部の処理/測定手法2)
図8は、等化合成処理前における雑音測定部7の他の処理を示すフローチャートであり、この処理は、前述の測定手法2に相当する。
図7に示したフローチャートと同様に、1シンボルにおいて10本のTMCCキャリアを用いて、以下に示す手順により雑音電力Nを測定する。まず、雑音測定部7は、FFT出力信号r
x,r
yからTMCCキャリア成分を抽出し、10本のTMCCキャリアのそれぞれについて、その位相及び振幅の調整を行う。具体的には、位相の調整については、前述のとおりAFCにより行う。また、雑音測定部7は、現在のシンボル番号iにおけるTMCCキャリアの受信信号r
k,iの振幅が、1つ前のシンボル番号i−1におけるTMCCキャリアの受信信号r
k,i-1の振幅と同じになるように(近くなるように)、前記式(19)〜(21)により振幅調整を行う(ステップS801)。
【0055】
雑音測定部7は、10本のTMCCキャリアのそれぞれについて、位相及び振幅調整した現在のシンボル番号iにおけるTMCCキャリアの受信信号r
k,i,x,r
k,i,y、及び1つ前のシンボル番号i−1におけるTMCCキャリアの受信信号r
k,i-1,x,r
k,i-1,yを用いて、ステップS802〜ステップS809により、雑音電力Nを求める。ここで、
図8のステップS802〜ステップS809は、
図7に示したステップS701〜ステップS708にそれぞれ相当する。
【0056】
これにより、TMCCキャリアの周波数がずれていて隣り合うシンボルで位相が回転していたり、AGC回路等により隣り合うシンボルでレベル変動を受けていたりする場合であっても、等化合成処理前のOFDM信号の雑音電力Nを精度高く測定することができる。
【0057】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、前述のとおり、チャネル等化及び合成処理後の雑音電力を、TMCCキャリアを用いて測定する例である。
図9は、本発明の実施形態によるOFDM信号受信装置の後段の構成を示すブロック図であり、等化合成処理部から誤り訂正部までの構成を示している。このOFDM信号受信装置30はMIMO−OFDMシステムの受信装置であり、OFDM信号受信装置30の後段部(OFDM信号受信装置30(2))は、等化合成処理部(復調部)9、尤度計算部11、デインターリーブ部12及び誤り訂正部13を備え、さらに、送信系統数M毎の雑音測定部10を備えて構成される。
【0058】
等化合成処理部9は、
図6に示した等化合成処理部8と同一の構成部であり、受信系統数N毎のFFT出力信号r
x,r
y、チャネル応答h
x,h
y及び雑音電力Nを入力し、CPキャリアを基準信号としてチャネル等化、最大比合成及びMMSE合成等の等化合成処理である復調処理を行い、送信系統数M毎の等化合成出力信号r’
x,r’
yを生成し、送信系統数M毎に対応する雑音測定部10に出力すると共に、全ての送信系統数Mの等化合成出力信号r’
x,r’
yを尤度計算部11に出力する。
【0059】
雑音測定部10は、等化合成処理部9から等化合成出力信号r’
x,r’
yを入力し、等化合成出力信号r’
x,r’
yからTMCCキャリア成分を抽出し、前述の測定手法1,2にて雑音電力N’を測定する。詳細については後述する。
【0060】
尤度計算部11は、等化合成処理部9から送信系統数M毎の等化合成出力信号r’
x,r’
yを入力すると共に、送信系統数M毎の雑音電力N’を入力し、誤り訂正に必要な尤度を計算する。尚、尤度の計算手法については既知であるから、ここで説明を省略する。デインターリーブ部12は、尤度計算部11から尤度を入力し、OFDM信号送信装置によるインターリーブの処理とは逆の方法で、尤度をデインターリーブする。誤り訂正部13は、デインターリーブ部12から尤度を入力し、誤り訂正を行う。
【0061】
(雑音測定部の処理/測定手法1)
図10は、等化合成処理後における雑音測定部10の処理を示すフローチャートであり、この処理は、前述の測定手法1に相当する。前述のとおり、例えばFPU装置のOFDMシステムの1シンボルにおける10本のTMCCキャリアを用いて、以下に示す手順により雑音電力N’を測定する。
【0062】
まず、雑音測定部10は、等化合成処理部9により出力された等化合成出力信号r’
x,r’
yから10本のTMCCキャリア成分(番号k=1〜10)を抽出し、現在のシンボル番号iにおけるTMCCキャリアの信号r’
k,i =r’
k,i,x+j・r’
k,i,y(前記式(1))、及び1つ前のシンボル番号i−1におけるTMCCキャリアの信号r’
k,i-1=r’
k,i-1,x+j・r’
k,i-1,y(前記式(2))を用いて、10本のTMCCキャリアのそれぞれについて、変数nom=r’
k,i,x・r’
k,i-1,x+r’
k,i,y・r’
k,i-1,y(前記式(8))、及び変数denom=|r’
k,i-1,x|
2+|r’
k,i-1,y|
2(前記式(9))を計算する(ステップS1001,ステップS1002)。
【0063】
雑音測定部10は、
図7に示したステップS703〜ステップS708と同様の処理を行い、変数denomにおけるシンボル間平均値denom_mean_meanから変数nomにおけるシンボル間平均値nom_mean_abs_meanを減算し、雑音電力N’を求める(ステップS1003〜ステップS1008)。さらに、雑音測定部10は、S=(9/16)・nom_mean_abs_meanにて信号電力Sを求め(前記式(17))、雑音電力N’及び信号電力Sから信号対雑音電力比S/Nを求める(前記式(18))。
【0064】
これにより、雑音電力N’を測定する際に、等化合成処理にて用いた基準信号のCPキャリアではなく、TMCCキャリアを用いるようにし、このTMCCキャリアの雑音成分は抑圧されていないから、等化合成処理後の雑音電力N’を精度高く測定することができる。
【0065】
(雑音測定部の処理/測定手法2)
図11は、等化合成処理後における雑音測定部10の他の処理を示すフローチャートであり、この処理は、前述の測定手法2に相当する。
図10に示したフローチャートと同様に、1シンボルにおいて10本のTMCCキャリアを用いて、以下に示す手順により雑音電力N’を測定する。まず、雑音測定部10は、等化合成出力信号r’
x,r’
yからTMCCキャリア成分を抽出し、10本のTMCCキャリアのそれぞれについて、その位相及び振幅の調整を行う。具体的には、位相の調整については、前述のとおりAFCにより行う。また、雑音測定部10は、現在のシンボル番号iにおけるTMCCキャリアの信号r’
k,iの振幅が、1つ前のシンボル番号i−1におけるTMCCキャリアの信号r’
k,i-1の振幅と同じになるように(近くなるように)、前記式(19)〜(21)により振幅調整を行う(ステップS1101)。
【0066】
雑音測定部10は、10本のTMCCキャリアのそれぞれについて、位相及び振幅調整した現在のシンボル番号iにおけるTMCCキャリアの信号r’
k,i,x,r’
k,i,y、及び1つ前のシンボル番号i−1におけるTMCCキャリアの受信信号r’
k,i-1,x,r’
k,i-1,yを用いて、ステップS1102〜ステップS1109により、雑音電力N’を求める。ここで、
図11のステップS1102〜ステップS1109は、
図10に示したステップS1001〜ステップS1008にそれぞれ相当する。
【0067】
これにより、雑音電力N’を測定する際に、等化合成処理にて用いた基準信号のCPキャリアではなく、TMCCキャリアを用いるようにし、このTMCCキャリアの雑音成分は抑圧されていないから、等化合成処理後の雑音電力N’を精度高く測定することができる。また、TMCCキャリアの周波数がずれていて隣り合うシンボルで位相が回転していたり、AGC回路等により隣り合うシンボルでレベル変動を受けていたりする場合であっても、AFCにより位相調整が行われ、隣り合うシンボルにおける振幅の変動を吸収するように振幅調整が行われるから、OFDM信号の雑音電力N’を一層精度高く測定することができる。
【0068】
このように、OFDM信号受信装置30は、現在のシンボル番号iにおけるTMCCキャリアの信号r
k,i,x,r
k,i,y、及び1つ前のシンボル番号i−1におけるTMCCキャリアの受信信号r
k,i-1,x,r
k,i-1,yを用いて、すなわち2シンボルの受信信号を用いて雑音電力Nを求める。これに対し、前述の特許文献3に示した従来の装置では、4シンボルの受信信号を用いて雑音電力を求めている(特許文献3の段落0022〜0027を参照)。これにより、実施例1のOFDM信号受信装置30の方が特許文献3の従来の装置よりも少ないシンボル数にて雑音電力を求めることができ、処理負荷の低減及び雑音電力算出の高速化を実現することができる。
【0069】
以上、実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、OFDM信号受信装置30は、チャネル等化及び合成処理前の場合、チャネル等化及び合成処理の基準信号であるCPキャリアを用いて、雑音電力Nを測定するようにしてもよい。これは、チャネル等化及び合成処理前であれば、CPキャリアは雑音成分が抑圧されておらず、精度の高い雑音電力Nを測定することができるからである。
【0070】
また、前記実施例1,2では、MIMO−OFDMシステムを例にしたOFDM信号受信装置30について説明したが、本発明は、MIMO−OFDMシステムのOFDM信号受信装置30だけでなく、OFDMシステムのOFDM信号受信装置30にも適用がある。要するに、本発明は、OFDM信号を受信し、その受信信号に含まれる雑音電力を測定する装置に適用があり、例えば、雑音電力測定装置にも適用がある。