特許第5654025号(P5654025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654025
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】回転コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 35/04 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   H01R35/04 S
   H01R35/04 P
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-534176(P2012-534176)
(86)(22)【出願日】2012年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2012055902
(87)【国際公開番号】WO2012121313
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2013年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-50944(P2011-50944)
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】安達 亮一
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−164005(JP,A)
【文献】 特開平09−045446(JP,A)
【文献】 特開2003−197339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の回転側リング板及び該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成するロテータと、環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成するステータとを、時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に同軸上に嵌合し、
前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで収容空間を構成し、
該収容空間底部に、複数の回転ローラーを軸支する環状のリテーナを載置するとともに、
前記収容空間における前記リテーナ上部に、
前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続し、巻き方向を反転する反転部分を有した少なくとも1本のフラットケーブルを、巻き締め及び巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、
前記収容空間における前記リテーナ上部に、
長手方向の一端をロテータ側に接続固定し、他端をステータ側に接続固定し、前記回転ローラーの1つに対して直接巻き掛けて巻き方向を反転する反転部分を有するとともに、前記回転ローラーに沿って巻き締め及び巻き戻し可能な可撓性及び弾性を有するダミーケーブルと、前記フラットケーブルとを巻き重ねて収容し、
前記リテーナ上に、
前記ダミーケーブルの反転部分の直接押し付けを許容する押付ガイド部を備えるとともに、周方向に等間隔ごとに配置する複数の前記回転ローラーの間に、前記ダミーケーブルあるいは前記フラットケーブルの径方向の動きを規制する径方向規制部を備え、
該径方向規制部を、形状の異なる第1径方向規制部、第2径方向規制部、及び第3径方向規制部で構成するとともに、
前記第1径方向規制部を、前記ダミーケーブルの反転部分の長さ方向凸面側に近接した位置に立設するとともに、前記押付ガイド部と一体に構成し、
前記第2径方向規制部を、前記ダミーケーブルの反転部分を巻き掛けている前記回転ローラーから第1径方向規制部を隔てて周方向に隣接し、前記回転ローラーを挟んで前記第1径方向規制部と周方向において対向する位置に立設し、
前記第3径方向規制部を、前記第2径方向規制部と、前記第2径方向規制部に近接する回転ローラーから第2径方向規制部が立設する周方向に隣接する回転ローラーとの間において、該回転ローラーに近接する位置に立設し、
前記ダミーケーブルの長手方向の長さを、
前記ダミーケーブルの反転部分を前記回転ローラーに巻きかけた状態で、前記フラットケーブルの反転部分が前記第2径方向規制部と前記第3径方向規制部との間における周方向略中間に配置されるように、前記フラットケーブルの長手方向の長さより短く形成し、
前記第2径方向規制部と前記第3径方向規制部とを、
前記ダミーケーブルの反転部分を巻き掛けた回転ローラーと前記押付ガイド部の間隔より大きく、前記回転ローラー近傍の前記リテーナ上において、前記ロテータの回転に追従して前記リテーナが回転を開始する間に、前記フラットケーブルの前記反転部分が周方向に移動する移動範囲以上の間隔隔てて配置した
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記ダミーケーブルを、2枚の前記フラットケーブルの間に重ね合わせて巻き回して収容し、
2枚の前記フラットケーブルのうち前記ダミーケーブルの長手方向の長さより長いフラットケーブルを一方のフラットケーブルとし、他方のフラットケーブルを前記ダミーケーブルの長手方向の長さより短く形成し、
前記径方向規制部として、第4径方向規制部を備え、
前記第3径方向規制部を、前記ダミーケーブルの反転部分を巻き掛けた前記回転ローラーを挟んで前記第1径方向規制部と周方向に対向する位置にさらに立設するとともに、
前記第2径方向規制部を、前記ダミーケーブルの反転部分を巻き掛けた前記回転ローラーから前記第1径方向規制部とは逆方向に隣接する回転ローラーと前記第3径方向規制部との間の前記回転ローラーに近接する位置にさらに立設し、
前記第4径方向規制部を、前記第1径方向規制部、前記第2径方向規制部、及び前記第3径方向規制部を立設していない隣接する前記回転ローラー間に立設し、
前記他方のフラットケーブルを、前記ダミーケーブルの反転部分を巻き掛けた前記回転ローラーから前記第1径方向規制部とは逆方向の前記第2径方向規制部、及び前記第3径方向規制部との間における周方向略中間で反転させた
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動車のステアリングホイール側と車体側との間を電気的に接続するような回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装着される回転コネクタ装置は、主に車体側に固定するステータと、ステアリングホイール側に組み付けるロテータとを相対的に回転可能に同軸上に組み付けて構成している。さらに、ステータとロテータとで構成する収容空間内にフラットケーブルを収容している。
【0003】
このフラットケーブルは、ステアリングホイール側に装備したホーンモジュール、エアバックモジュール、あるいはオーディオコントロールモジュールなどの電装品と、車体側電源との電気的な接続を行う。
【0004】
このような回転コネクタ装置として、例えば、特許文献1において、収容空間の底面に配置され、フラットケーブルをステアリングホイールの回転軸回りに回転案内するリテーナを備えたものが提案されている。
【0005】
特許文献1のリテーナについて詳述すると、図7に示すように、リテーナ40には、複数の回転ローラー45と、回転ローラー45の近傍に立設した押付ガイド部46が設けられている。そして、収容空間Sにおいて、このリテーナ40がフラットケーブルCの巻き締め及び巻き戻しを回転補助することで、回転コネクタ装置は、ステアリング操作に追従して円滑に回転動作することができるとされている。
【0006】
より詳しくは、収容空間Sにおいて、フラットケーブルCは、ステータ30の外筒体32の内周面に沿って巻き付けた外側巻き部分Coと、リテーナ40に軸支された1つの回転ローラー45に巻き掛けてUターンする反転部分Crと、ロテータ20の内周筒部22の外周面に沿って巻き付けた内側巻き部分Ciとで構成している。
【0007】
このような構成の回転コネクタ装置において、ロテータ20が時計回り(図7中のX方向)に回転すると、フラットケーブルCの反転部分Crが押付ガイド部46に押し付けられ、その押し付け力によって、リテーナ40は、時計回りに回転することができるとされている。
【0008】
一方、ロテータが反時計回り(図7中のY方向)に回転すると、フラットケーブルCの反転部分Crが回転ローラー45に沿って、反時計回りに引っ張られ、リテーナ40は、反時計回りに回転することができるとされている。
【0009】
ところで、収容空間Sに砂塵等の異物が混入すると、ロテータ20が回転した際、フラットケーブルCの反転部分Crが摩耗して不具合が生じるおそれがある。
例えば、ロテータ20が時計回りに回転した際、フラットケーブルCの反転部分Crと押付ガイド部46との接触部に砂塵等の異物が混入すると、反転部分Crが異物と擦れ動くことで、フラットケーブルCが摩耗して不具合が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−197339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑み、砂塵等の異物が混入しても、ロテータとステータとの電気的な接続を確実に維持することができる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、環状の回転側リング板及び該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成するロテータと、環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成するステータとを、時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に同軸上に嵌合し、前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで収容空間を構成し、該収容空間底部に、複数の回転ローラーを軸支する環状のリテーナを載置するとともに、前記収容空間における前記リテーナ上部に、前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続し、巻き方向を反転する反転部分を有した少なくとも1本のフラットケーブルを、巻き締め及び巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、前記収容空間における前記リテーナ上部に、長手方向の一端をロテータ側に接続固定し、他端をステータ側に接続固定し、前記回転ローラーの1つに対して直接巻き掛けて巻き方向を反転する反転部分を有するとともに、前記回転ローラーに沿って巻き締め及び巻き戻し可能な可撓性及び弾性を有するダミーケーブルと、前記フラットケーブルとを巻き重ねて収容し、前記リテーナ上に、前記ダミーケーブルの反転部分の直接押し付けを許容する押付ガイド部を備えるとともに、周方向に等間隔ごとに配置する複数の前記回転ローラーの間に、前記ダミーケーブルあるいは前記フラットケーブルの径方向の動きを規制する径方向規制部を備え、該径方向規制部を、形状の異なる第1径方向規制部、第2径方向規制部、及び第3径方向規制部で構成するとともに、前記第1径方向規制部を、前記ダミーケーブルの反転部分の長さ方向凸面側に近接した位置に立設するとともに、前記押付ガイド部と一体に構成し、前記第2径方向規制部を、前記ダミーケーブルの反転部分を巻き掛けている前記回転ローラーから第1径方向規制部を隔てて周方向に隣接し、前記回転ローラーを挟んで前記第1径方向規制部と周方向において対向する位置に立設し、前記第3径方向規制部を、前記第2径方向規制部と、前記第2径方向規制部に近接する回転ローラーから第2径方向規制部が立設する周方向に隣接する回転ローラーとの間において、該回転ローラーに近接する位置に立設し、前記ダミーケーブルの長手方向の長さを、前記ダミーケーブルの反転部分を前記回転ローラーに巻きかけた状態で、前記フラットケーブルの反転部分が前記第2径方向規制部と前記第3径方向規制部との間における周方向略中間に配置されるように、前記フラットケーブルの長手方向の長さより短く形成し、前記第2径方向規制部と前記第3径方向規制部とを、前記ダミーケーブルの反転部分を巻き掛けた回転ローラーと前記押付ガイド部の間隔より大きく前記回転ローラー近傍の前記リテーナ上において、前記ロテータの回転に追従して前記リテーナが回転を開始する間に、前記フラットケーブルの前記反転部分が周方向に移動する移動範囲以上の間隔隔てて配置したことを特徴とする。
【0013】
上記ダミーケーブルは、フラットケーブルと略同等の幅に形成して、リテーナとロテータとを電気的に接続しない帯状体、あるいは導体を有するがロテータとステータとを電気的に接続しないフラットケーブルなどとすることができる。なお、ダミーケーブルは、内部に導体を含まず絶縁性を有する絶縁部材のみで形成してもよい。
【0014】
この発明により、砂塵等の異物が混入しても、ロテータとステータとの電気的な接続を確実に維持できる回転コネクタ装置を提供することができる。
具体的には、ダミーケーブルは、フラットケーブルと異なり、ロテータ側とステータ側とを非電気的に接続している。そして、ロテータが時計回りに回転すると、ダミーケーブルの反転部分が押付ガイド部に押し付けられ、その押し付け力によって、リテーナは、時計回りに回転することができる。
【0015】
一方、ロテータが反時計回りに回転すると、ダミーケーブルの反転部分が回転ローラーに沿って、反時計回りに引っ張られることにより、リテーナは、反時計回りに回転することができる。
【0016】
つまり、ロテータが回転した際、ダミーケーブルの反転部分が、押付ガイド部あるいは回転ローラーに接触して、砂塵等の異物とともに擦れ動いて摩耗しても、ロテータとステータとは、フラットケーブルによって電気的な接続を確実に維持することができる。
【0017】
また、ダミーケーブルの弾性によって、押付ガイド部に押し付けられたダミーケーブルの反転部分が、座屈したり折れ曲がることを防止することができる。
【0018】
さらに、ダミーケーブルの反転部分の長さ方向両端には、ダミーケーブルの弾性による反発力がステータ及びロテータの径方向に発生する。詳しくは、ダミーケーブルの反転部分におけるステータ側端部には径方向外側に向かって反発力が生じ、一方、ロテータ側端部には径方向内側に向かって反発力が生じる。これにより、ダミーケーブルは、ロテータ側及びステータ側の径方向に押し付けられながら、巻き締め及び巻き戻しが行われるので、ダミーケーブルのたるみなどの発生を抑制することができ、確実に押付ガイド部に当接することができる。
【0019】
よって、ダミーケーブルの弾性により、リテーナを確実にダミーケーブルで回転させることができるとともに、ロテータの回転に追従してよりスムーズに回転させることができる。そして、ダミーケーブルによりリテーナがスムーズに回転するため、フラットケーブルに過度な負荷がかかることなく、巻き締め及び巻き戻しを行うことができ、フラットケーブルの断線などを防止することができる。
【0020】
従って、ロテータとステータとを非電気的に接続したダミーケーブルでリテーナを回転させることにより、砂塵等の異物が混入しても、ロテータとステータとの電気的な接続を確実に維持することができる。
【0021】
また、前記フラットケーブルの反転部分を、前記回転ローラー間の周方向略中間に配置し、前記回転ローラー近傍の前記リテーナ上に、前記ロテータの回転に追従して前記リテーナが回転を開始する間に、前記フラットケーブルの前記反転部分が周方向に移動する移動範囲以上の間隔を設けて、前記ダミーケーブルあるいは前記フラットケーブルの径方向の動きを規制する規制部を立設することにより、ロテータ静止時において、フラットケーブルの反転部分を、リテーナの規制部に対して十分な間隔を確保して配置することができる。よって、ロテータが回転しても、フラットケーブルの反転部分が、リテーナの規制部と接触することを防止できる。
【0022】
つまり、フラットケーブルの反転部分に砂塵等の異物が付着しても、フラットケーブルの反転部分が、リテーナの規制部と擦れながら巻き締め及び巻き戻されることがないため、フラットケーブルの摩耗や損傷を防止することができる。
【0023】
また、ロテータが回転してもフラットケーブルの反転部分が、リテーナの規制部に接触しないことにより、リテーナは、ロテータの回転に追従してスムーズに回転することができる。
【0024】
従って、リテーナの規制部に対して十分な間隔を確保してフラットケーブルの反転部分を配置することにより、砂塵等の異物が混入したままロテータが回転しても、フラットケーブルが摩耗や損傷するおそれがないので、ロテータとステータとの電気的な接続をより確実に維持することができる。
【0025】
また、前記ダミーケーブルの長手方向の長さを前記フラットケーブルの長手方向の長さより短く形成することにより、ダミーケーブルは、フラットケーブルに重ね合わせた状態で、ロテータに巻き付けることができる。これにより、ダミーケーブルの反転部分における反発力によって巻き締め及び巻き戻し時に生じるフラットケーブルのたるみなどを抑制することができ、フラットケーブルがリテーナなどに接触して摩耗や損傷することを防止できる。
【0026】
従って、ダミーケーブルの長手方向の長さを、フラットケーブルの長手方向の長さより短くすることにより、フラットケーブルがリテーナの規制部などに接触することをより確実に防止することで、砂塵等の異物が混入してもロテータとステータとの電気的な接続をさらに確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、砂塵等の異物が混入しても、ロテータとステータとの電気的な接続を確実に維持できる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ステアリングロールコネクタの外観を示す斜視図。
図2】ステアリングロールコネクタの分解状態を示す分解斜視図。
図3】ロテータを外した状態を示すステアリングロールコネクタの平面図。
図4図1中のA−A線矢視断面図。
図5】ロテータ回転時における収容空間内の状態を示す平面図。
図6】別の実施形態におけるロテータを外した状態を示すステアリングロールコネクタの平面図。
図7】従来技術の押付ガイド部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0030】
なお、図1は、ステアリングロールコネクタ10の外観の斜視図を示し、図2は、ステアリングロールコネクタ10の分解状態の分解斜視図を示し、図3は、ロテータ20を外した状態の本実施形態のステアリングロールコネクタ10の平面図を示し、図4は、図1中のA−A線矢視断面図を示している。
【0031】
本実施形態のステアリングロールコネクタ10は、図1から図4に示すように、ケーブルハウジング10aと、リテーナ40と、回転ロック構成体50とで構成している。
【0032】
ケーブルハウジング10aは、図3及び図4に示すように、平面視中央部分にステアリングの回転軸方向(図4中の上下方向)に貫通した差込孔Hが形成された略円筒状に構成している。差込孔Hは、ステアリングコラム(図示省略)から突出するステアリングシャフト(図示省略)の挿入を許容する径で形成している。そして、ケーブルハウジング10aは、互いに相対回転可能なステータ30と、ロテータ20とで構成している。
なお、ステアリングシャフトの上端部には、回転操作を行うためのステアリングホイール(図示省略)を固定している。
【0033】
回転ロック構成体50は、図2に示すように、ロック体51とバネ受けスリーブ53と、ロック体51およびバネ受けスリーブ53との間に介在する戻しバネ52とで構成している。
【0034】
バネ受けスリーブ53を戻しバネ52の付勢力に抗して押し上げることでステータ30に対してロテータ20が相対回転しないようロック体51でロックすることができ、或いは、ステアリングホイールの芯金のボス部(図示省略)を挿入することで自由に相対回転することを許容するようロック体51によるロックを解除することができる。
【0035】
ロテータ20は、図2に示すように、環状に形成された天板として機能する回転側リング板21と、この回転側リング板21の内周縁から下方に向かって延びる円筒状の内周筒部22とで構成している。
【0036】
そして、ロテータ20は、ステアリングホイールに固定され、ステアリングホイールとともに一体的に回転する構成である。詳しくは、ロテータ20は、ステアリングホイールの回転軸と同一の軸回りに回転することができる。
【0037】
また、ロテータ20には、ロテータ20の回転に伴って一体的に回転するロテータ側コネクタ23を備えている。
ロテータ側コネクタ23は、第1ロテータ側コネクタ23aと第2ロテータ側コネクタ23bとで構成している。第1ロテータ側コネクタ23aと第2ロテータ側コネクタ23bとは、回転側リング板21の周方向において、所定間隔を隔ててコネクタ接続口が上向きになるように配置している。
【0038】
そして、ロテータ側コネクタ23(23a、23b)は、例えば、ステアリングホイールに配置されるホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続している。
【0039】
ステータ30は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラム内部に配設しているコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定して、ステアリングホイールに対して相対回転可能に取り付けている。ステータ30は、図2に示すように、環状に形成した底板として機能する固定側リング板31と、この固定側リング板31の外周縁から上方に向かって延びる円筒状の外周筒部32とで構成し、固定側リング板31の外周縁と外周筒部32の下端とを嵌合することで一体に構成している。
【0040】
外周筒部32は、図3及び図4に示すように、円筒状の外側外周筒部32oと、外側外周筒部32oよりも僅かに小径である円筒状の内側外周筒部32iとで構成し、外側外周筒部32oと内側外周筒部32iとが半径方向において近接して対向するよう同心円状に配置した径方向の2層構造で構成している。
【0041】
また、内側外周筒部32iの上部には、図4に示すように、半径方向の内側(径内方向)へ向けて突出し、後述するフラットケーブルC及びダミーケーブルDを上方からガイドするガイド突出片33を鍔状に形成している。
【0042】
また、ステータ30には、ステータ側コネクタ34を備えている。
ステータ側コネクタ34は、第1ステータ側コネクタ34aと第2ステータ側コネクタ34bとで構成している。第1ステータ側コネクタ34aと第2ステータ側コネクタ34bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒部32(外側外周筒部32o)の外側に配置している。
【0043】
そして、ステータ側コネクタ34(34a、34b)は、ロアコラムカバー(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続している。
【0044】
このようなステータ30とロテータ20とをステアリングシャフトの回転軸と同軸上に組み付けたケーブルハウジング10aの内部において、図2から図4に示すように、ステータ30の固定側リング板31が、ロテータ20の回転側リング板21と回転軸方向で対面するとともに、ステータ30の外周筒部32が、ロテータ20の内周筒部22に対して半径方向外側で対面して収容空間Sを構成している。
【0045】
この収容空間Sには、リテーナ40と、フラットケーブルC及びダミーケーブルDとを収容している。
リテーナ40は、図2から図4に示すように、複数の回転ローラー45とベースリング41とで構成し、収容空間Sを構成するステータ30の底面にロテータ20の回転軸を中心にして回転可能に載置している。
【0046】
ベースリング41は、平面視環状をした板状のベースリング本体部42とローラー支持突部43と径方向規制部44と押付ガイド部46とで構成している。
ベースリング本体部42は、固定側リング板31に対して回転方向に摺動可能に載置し、ステータ30に対して相対回転可能に構成している。
ローラー支持突部43は、ベースリング本体部42の周方向に等間隔ごとに回転ローラー45を軸支可能に上方に向けて突出している。
【0047】
径方向規制部44は、周方向に隣接するローラー支持突部43の間において、フラットケーブルC及びダミーケーブルDの経路によって異なる形状に形成した第1径方向規制部44a、第2径方向規制部44b、第3径方向規制部44c、及び第4径方向規制部44dで構成し、ベースリング本体部42に対して上方に向けて立設している。
【0048】
第1径方向規制部44aは、複数のローラー支持突部43に軸支した回転ローラー45のうち1つにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させたダミーケーブルD(後述するダミーケーブルDの反転部分Dr)の長さ方向凸面側に近接した位置に立設している。
【0049】
そして、第1径方向規制部44aは、平面視においてロテータ20の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれたフラットケーブルC(後述するフラットケーブルCの内側巻き部分Ci)及びダミーケーブルD(後述するダミーケーブルDの内側巻き部分Di)を径外側からガイドするように径外側に開口を有する平面視略凹状に形成している。
【0050】
さらに、第1径方向規制部44aには、ダミーケーブルDの反転部分Drと対面する端面に、押付ガイド部46を一体に形成している。
この押付ガイド部46は、平面視においてダミーケーブルDの反転部分Drに沿うように略弓形に湾曲して形成している。
【0051】
第2径方向規制部44bは、ダミーケーブルDの反転部分Drを巻き掛けているローラー支持突部43から第1径方向規制部44aを隔てて周方向に隣接するローラー支持突部43に近接し、該ローラー支持突部43を挟んで第1径方向規制部44aと周方向において対向する位置に立設している。
【0052】
そして、第2径方向規制部44bは、平面視において近接するローラー支持突部43側に開口を有する平面視略凹状に形成している。また、第2径方向規制部44bは、フラットケーブルCの内側巻き部分Ci及びダミーケーブルDの内側巻き部分Diを径外側からガイドしている。
【0053】
第3径方向規制部44cは、第2径方向規制部44bと、第2径方向規制部44bに近接するローラー支持突部43から第2径方向規制部44bが立設する周方向に隣接するローラー支持突部43との間において、該ローラー支持突部43に近接する位置に立設している。
【0054】
そして、第3径方向規制部44cは、平面視において近接するローラー支持突部43側に開口を有する平面視略凹状に形成している。また、第3径方向規制部44cは、フラットケーブルCの内側巻き部分Ci及びダミーケーブルDの内側巻き部分Diを径外側からガイドしている。
【0055】
第4径方向規制部44dは、第1径方向規制部44a、第2径方向規制部44b、及び第3径方向規制部44cを立設していない隣接するローラー支持突部43間に立設している。
【0056】
そして、第4径方向規制部44dは、平面視においてロテータ20の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれたフラットケーブルCの内側巻き部分Ci及びダミーケーブルDの内側巻き部分Diを径外側からガイドするように径外側に開口を有する平面視略凹状に形成している。
【0057】
回転ローラー45は、それぞれローラー支持突部43に軸支され、それぞれがロテータ20の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けている。
【0058】
フラットケーブルCは、複数の扁平な導体を所定のピッチで平行に配列し、絶縁被覆体で被覆した可撓性を有する帯状の伝送線であって、収容空間Sにおいて巻き回した状態で収容し、第1ロテータ側コネクタ23aと第1ステータ側コネクタ34aとを相互に電気的に接続している。
【0059】
詳述すると、フラットケーブルCにおける長さ方向の一端を第1ロテータ側コネクタ23aに接続し、他端を第1ステータ側コネクタ34aに接続している。
そして、フラットケーブルCは、ケーブルハウジング10aの内部の収容空間Sにおいて、固定側リング板31に対して回転自在に載置されたリテーナ40によって支持され、巻回した状態で収容している。
【0060】
より詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1ステータ側コネクタ34aから収容空間Sへ引き込まれ、図3及び図4に示すように、リテーナ40の外側でステータ30の外周筒部32(内側外周筒部32i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Coを構成している。
【0061】
そして、図3中の二点鎖線で示すように、フラットケーブルCは、長さ方向の途中で、第2径方向規制部44bに近接する回転ローラー45にU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crを構成している。なお、反転部分Crは、第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cの間において、それぞれに対して十分な間隔を確保できるように周方向略中間に配置している。
【0062】
さらに、フラットケーブルCは、反転部分Crより長さ方向の先端側によって、リテーナ40の内側でロテータ20の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Ciを構成している。フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23aに接続している。
【0063】
また、ダミーケーブルDは、絶縁被覆体で被覆した弾性を有する可撓性の帯状ケーブルであって、その長さ方向においてフラットケーブルCの長さよりも短く形成している。そして、ダミーケーブルDは、収容空間Sにおいて、フラットケーブルCに重ね合わせた2本一組の状態で巻き重ねて収容し、ロテータ20とステータ30とを非電気的に接続している。
【0064】
詳述すると、ダミーケーブルDにおける長さ方向の一端を第1ロテータ側コネクタ23a近傍に接続固定し、他端を第1ステータ側コネクタ34a近傍に接続固定している。
【0065】
そして、ダミーケーブルDは、収容空間Sにおいて、フラットケーブルCに重ね合わせた2本一組の状態で第1ステータ側コネクタ34aから収容空間Sへ引き込まれ、図3及び図4に示すように、リテーナ40の外側でステータ30の外周筒部32(内側外周筒部32i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Doを構成している。
【0066】
そして、図3中の二点鎖線で示すように、ダミーケーブルDは、長さ方向の途中で、押付ガイド部46に近接する回転ローラー45にU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Drを構成している。
【0067】
さらに、ダミーケーブルDは、反転部分Drより長さ方向の先端側によって、フラットケーブルCに重ね合わせた2本一組の状態で、リテーナ40の内側でロテータ20の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Diを構成している。ダミーケーブルDは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23a近傍に接続固定している。
【0068】
なお、フラットケーブルC及びダミーケーブルDは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回しているが、図3及び図4では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0069】
次に、このような構成のステアリングロールコネクタ10において、ロテータ20が時計回り及び反時計回りに回転した際、収容空間SにおけるフラットケーブルC及びダミーケーブルDの動作について図5を用いて説明する。
【0070】
なお、図5は、ロテータ20の回転時における収容空間S内の状態の平面図を示し、図5(a)は、ロテータ20が時計回り(図5中のX方向)に回転した状態を示し、図5(b)は、ロテータ20が反時計回り(図5中のY方向)に回転した状態を示している。
【0071】
また、図5中において、ロテータ20の静止時におけるフラットケーブルCの反転部分Cr及びダミーケーブルDの反転部分Drの状態を二点鎖線で示している。さらに、フラットケーブルC及びダミーケーブルDは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回しているが、図5では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0072】
ロテータ20が時計回り(図5中のX方向)に回転すると、図5(a)に示すように、収容空間Sの内部において、フラットケーブルC及びダミーケーブルDは、ロテータ20がステータ30に対して回転することにより、フラットケーブルCの外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間、及びダミーケーブルDの外側巻き部分Doと内側巻き部分Diとの間で、それぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
【0073】
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ40とともに適宜回転する。
【0074】
同様に、ダミーケーブルDは、外側巻き部分Doと内側巻き部分Diとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Drがリテーナ40とともに適宜回転する。
【0075】
詳述すると、ロテータ20が時計回り(図5中のX方向)に回転すると、図5(a)に示すように、フラットケーブルCの内側巻き部分Ci及びダミーケーブルDの内側巻き部分Diが巻き解かれる。
【0076】
このとき、リテーナ40の周方向において、ダミーケーブルDの反転部分Drを巻き掛けた回転ローラー45と押付ガイド部26の間隔に対して、第2径方向規制部44bと第3径方向規制部44cの間隔が大きく確保されている。
【0077】
さらに、フラットケーブルCの反転部分Crを第2径方向規制部44bと第3径方向規制部44cとの間において周方向略中間に配置しているため、ダミーケーブルDの反転部分Drは、図5(a)に示すように、フラットケーブルCの反転部分Crが第3径方向規制部44cに接触する前に、押付ガイド部46に押し付けられる。
【0078】
ダミーケーブルDの反転部分Drが押付ガイド部46に押し付けられると、その押し付け力によって、リテーナ40は、ロテータ20の回転に追従するように時計回り(図5中のX方向)に回転する。
【0079】
そして、フラットケーブルCの反転部分Cr及びダミーケーブルDの反転部分Drは、リテーナ40とともに回転しながら、それぞれフラットケーブルCの外側巻き部分Coと、ダミーケーブルDの外側巻き部分Doに巻き付けられる。
【0080】
このとき、フラットケーブルCの反転部分Crは、第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cに対して、一定の間隔を保ったままリテーナ40とともに回転する。
【0081】
一方、ロテータ20が反時計回り(図5中のY方向)に回転すると、図5(b)に示すように、収容空間Sの内部において、フラットケーブルC及びダミーケーブルDは、ロテータ20がステータ30に対して回転することにより、フラットケーブルCの外側巻き部分Coと内側巻き部分Ci及びダミーケーブルDの外側巻き部分Doと内側巻き部分Diとの間で、それぞれ巻き解きと巻き付けのいずれかが行われる。
【0082】
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ40とともに適宜回転する。
【0083】
同様に、ダミーケーブルDは、外側巻き部分Doと内側巻き部分Diとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Drがリテーナ40とともに適宜回転する。
【0084】
詳述すると、ロテータ20が反時計回り(図5中のY方向)に回転すると、図5(b)に示すように、フラットケーブルCの反転部分Cr及びダミーケーブルDの反転部分Drがロテータ20の内周筒部22の外周面に巻き付けられる。
【0085】
このとき、リテーナ40の周方向において、ダミーケーブルDの反転部分Drを巻き掛けた回転ローラー45と押付ガイド部26の間隔に対して、第2径方向規制部44bと第3径方向規制部44cの間隔が大きく確保されている。
【0086】
さらに、フラットケーブルCの反転部分Crを第2径方向規制部44bと第3径方向規制部44cとの間において周方向略中間に配置しているため、ダミーケーブルDの反転部分Drは、図5(b)に示すように、フラットケーブルCの反転部分Crが第2径方向規制部44bに接触する前に、回転ローラー45に接触する。
【0087】
そして、ダミーケーブルDの反転部分Drが回転ローラー45に沿って、反時計回り(図5中のY方向)に引っ張れることにより、リテーナ40は、ロテータ20の回転に追従するように反時計回りに回転する。
【0088】
その後、フラットケーブルCの反転部分Cr及びダミーケーブルDの反転部分Drは、リテーナ40とともに回転しながら、それぞれフラットケーブルCの内側巻き部分Ciと、ダミーケーブルの内側巻き部分Diに巻き付けられる。
【0089】
このとき、フラットケーブルCの反転部分Crは、第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cに対して、一定の間隔を保ったままリテーナ40とともに回転する。
【0090】
以上のような動作を実現できる上述の構成のステアリングロールコネクタ10は、砂塵等の異物が混入しても、ロテータ20とステータ30との電気的な接続を確実に維持することができる。
【0091】
具体的には、フラットケーブルCと異なり、ロテータ20側とステータ30側とを非電気的に接続しているダミーケーブルDにより、ロテータ20が時計回りに回転すると、ダミーケーブルDの反転部分Drが押付ガイド部46に押し付けられ、その押し付け力によって、リテーナ40は、時計回りに回転することができる。
【0092】
一方、ロテータ20が反時計回りに回転すると、ダミーケーブルDの反転部分Drが回転ローラー45に沿って、反時計回りに引っ張られることにより、リテーナ40は、反時計回りに回転することができる。
【0093】
つまり、ロテータ20が回転した際、ダミーケーブルDの反転部分Drが、砂塵等の異物とともに、押付ガイド部46あるいは回転ローラー45に接触しながら擦れ動いて摩耗しても、ロテータ20とステータ30とは、フラットケーブルCによって電気的な接続を確実に維持することができる。
【0094】
また、ダミーケーブルDの弾性によって、押付ガイド部46に押し付けられたダミーケーブルDの反転部分Drが、座屈したり折れ曲がることを防止することができる。
【0095】
さらに、ダミーケーブルDの反転部分Drの長さ方向両端には、ダミーケーブルDの弾性による反発力がロテータ20及びステータ30の径方向に発生する。詳しくは、ダミーケーブルDの反転部分Drにおけるステータ30側の端部には径方向外側に向かって反発力が生じ、一方、ロテータ20側の端部には径方向内側に向かって反発力が生じる。これにより、ダミーケーブルDは、ロテータ20及びステータ30に押し付けられながら、巻き締め及び巻き戻しが行われるので、ダミーケーブルDのたるみなどを抑制でき、確実に押付ガイド部46に当接することができる。
【0096】
よって、ダミーケーブルDの弾性により、リテーナ40を確実にダミーケーブルDで回転させることができるとともに、ロテータ20の回転に追従してよりスムーズに回転させることができる。そして、ダミーケーブルDによりリテーナ40がスムーズに回転するため、フラットケーブルCに過度な負荷がかかることなく、巻き締め及び巻き戻しを行うことができ、フラットケーブルCの断線などを防止することができる。
【0097】
加えて、フラットケーブルCの上にダミーケーブルDを重ね合わせているため、ダミーケーブルDの反転部分Drにおける反発力により、巻き締め及び巻き戻し時に生じるフラットケーブルCのたるみなどを抑制することができ、フラットケーブルCがリテーナ40などに接触して摩耗や損傷することを防止できる。
【0098】
従って、ロテータ20とステータ30とを非電気的に接続したダミーケーブルDでリテーナ40を回転させることにより、砂塵等の異物が混入しても、ロテータ20とステータ30との電気的な接続を確実に維持することができる。
【0099】
また、ロテータ20の回転に追従してリテーナ40が回転を開始する間に、フラットケーブルDの反転部分Drが周方向に移動する範囲以上の間隔を確保して径方向規制部44を立設したことにより、ロテータ20の静止時において、フラットケーブルCの反転部分Crを、リテーナ40の第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cに対して十分な間隔を確保して配置することができる。よって、ロテータ20が回転しても、フラットケーブルCの反転部分Crが、リテーナ40の第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cと接触することを防止できる。
【0100】
つまり、フラットケーブルCの反転部分Crに砂塵等の異物が付着しても、フラットケーブルCの反転部分Crが、リテーナ40の第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cと擦れながら巻き締め及び巻き戻されることがないため、フラットケーブルCの摩耗や損傷を防止することができる。
【0101】
これにより、リテーナ40がロテータ20の回転に追従してスムーズに回転することができ、フラットケーブルCに過度な負荷がかかることなく、巻き締め及び巻き戻しが行うことができる。
【0102】
従って、リテーナ40の第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cに対して十分な間隔を確保してフラットケーブルCの反転部分Crを配置することにより、砂塵等の異物が混入したままロテータ20が回転しても、フラットケーブルCが摩耗や損傷するおそれがないため、ロテータ20とステータ30との電気的な接続をより確実に維持することができる。
【実施例2】
【0103】
次に、別の実施形態として、フラットケーブルが2本の場合について図6を用いて説明する。
なお、図6は、実施例2におけるロテータ20を外した状態のステアリングロールコネクタ10の平面図を示している。
また、上述した実施例1と同じ構成要素は、同じ符号を付与して、その詳細な説明を省略する。
【0104】
実施例2におけるステアリングロールコネクタ10は、図6に示すように、収容空間Sにおいて、上述した実施例1にフラットケーブルFを加えた構成としている。また、フラットケーブルFを加えたことにより、実施例1に対して、リテーナ40の径方向規制部44の構成が異なる。
【0105】
詳述すると、リテーナ40には、ダミーケーブルDの反転部分Drを巻き掛けた回転ローラー45に近接して、該回転ローラー45を挟んで第1径方向規制部44aと周方向に対向する位置に第3径方向規制部44cを立設している。
【0106】
さらに、該第3径方向規制部44cと、ダミーケーブルDの反転部分Drを巻き掛けた回転ローラー45と周方向に隣接する回転ローラー45との間において、該回転ローラー45に近接する位置に第2径方向規制部44bを立設している。
【0107】
また、フラットケーブルFは、複数の扁平な導体を所定のピッチで平行に配列し、絶縁被覆体で被覆した可撓性を有する帯状の伝送線であって、その長さ方向においてダミーケーブルDの長さよりも短く形成している。そして、フラットケーブルFは、収容空間SにおいてダミーケーブルD及びフラットケーブルCとともに3本を重ね合わせて巻き回した状態で収容し、第2ロテータ側コネクタ23bと第2ステータ側コネクタ34bとを相互に電気的に接続している。
【0108】
詳述すると、フラットケーブルFにおける長さ方向の一端を第2ロテータ側コネクタ23bに接続し、他端を第2ステータ側コネクタ34bに接続している。
【0109】
そして、フラットケーブルFは、ケーブルハウジング10aの内部の収容空間Sにおいて、固定側リング板31に対して回転自在に載置されたリテーナ40によって支持され、フラットケーブルC及びダミーケーブルDと重ね合わせて巻回した状態で収容している。
【0110】
より詳しくは、フラットケーブルFは、収容空間Sにおいて、第2ステータ側コネクタ34bから収容空間Sへ引き込まれ、図6に示すように、フラットケーブルC及びダミーケーブルDに重ね合わせた3本一組の状態でリテーナ40の外側でステータ30の外周筒部32(内側外周筒部32i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Foを構成している。
【0111】
このとき、フラットケーブルC、ダミーケーブルD、フラットケーブルFの順に重ね合わせた3本一組の状態において、フラットケーブルCがステータ30の内側外周筒部32iの内周面に接触するように巻き付けている。
【0112】
そして、図6中の二点鎖線で示すように、フラットケーブルFは、長さ方向の途中で、ダミーケーブルDの反転部分Drを巻き掛けている回転ローラー45から第1径方向規制部44aとは周方向に逆方向に隣接する回転ローラー45にU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Frを構成している。なお、反転部分Frは、第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44c間において、それぞれに対して十分な間隔を確保するように周方向略中間に配置している。
【0113】
さらに、フラットケーブルFにおいて、反転部分Frより長さ方向の先端側によって、フラットケーブルC及びダミーケーブルDに重ね合わせた3本一組の状態で、リテーナ40の内側でロテータ20の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Fiを構成している。フラットケーブルFは、最終的には収容空間Sから引き出されて第2ロテータ側コネクタ23bに接続している。
【0114】
このとき、フラットケーブルC、ダミーケーブルD、フラットケーブルFの順に重ね合わせた3本一組の状態において、フラットケーブルCがロテータ20の内周筒部22の外周面に接触するように巻き付けている。
【0115】
なお、フラットケーブルC、F及びダミーケーブルDは、収容空間Sにおいて、上述したように3本一組として重ね合わせて巻き回しているが、図6では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0116】
このようなフラットケーブルC、F及びダミーケーブルDを有するステアリングロールコネクタ10において、ロテータ20が時計回りに回転すると、フラットケーブルCの反転部分Crと同様に、フラットケーブルFの反転部分Frを第3径方向規制部44cに対して周方向に十分な間隔を確保して配置しているので、フラットケーブルFの反転部分Frが第3径方向規制部44cに接触する前に、ダミーケーブルDの反転部分Drは、押付ガイド部46に押し付けられる。
【0117】
ダミーケーブルDの反転部分Drが押付ガイド部46に押し付けられると、その押し付け力によって、リテーナ40は、ロテータ20の回転に追従するように時計回りに回転する。
【0118】
このとき、フラットケーブルFの反転部分Frは、第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cに対して、一定の間隔を保ったままリテーナ40とともに回転する。
【0119】
一方、ロテータ20が反時計回りに回転すると、フラットケーブルCの反転部分Cr及びフラットケーブルFの反転部分Frが第2径方向規制部44bに接触する前に、ダミーケーブルDの反転部分Drが回転ローラー45に接触する。
【0120】
そして、ダミーケーブルDの反転部分Drが回転ローラー45に沿って、反時計回りに引っ張れることにより、リテーナ40は、ロテータ20の回転に追従するように反時計回りに回転する。
【0121】
このとき、フラットケーブルFの反転部分Frは、第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cに対して、一定の間隔を保ったままリテーナ40とともに回転する。
【0122】
以上のように、フラットケーブルが複数本あるステアリングロールコネクタ10においても、フラットケーブルC、Fが第2径方向規制部44b及び第3径方向規制部44cに接触する前に、ダミーケーブルDが押付ガイド部46に押し付けられることにより、砂塵等の異物が混入しても、ロテータ20とステータ30との電気的な接続を確実に維持することができる。
【0123】
また、フラットケーブルFの反転部分Frの長さ方向両端には、導体の弾性による反発力がロテータ20及びステータ30の径方向に発生する。この反発力により、フラットケーブルFの巻き締め及び巻き戻し時に生じるたるみなどを抑制することができる。
【0124】
さらに、ダミーケーブルDの上にフラットケーブルFを重ね合わせているため、フラットケーブルFの反転部分Frにおける反発力により、ダミーケーブルD及びフラットケーブルCの巻き締め及び巻き戻し時に生じるたるみなどを抑制することができる。
従って、フラットケーブルC及びフラットケーブルFがリテーナ40の径方向規制部44などに接触して摩耗や損傷することを防止できる。
【0125】
また、フラットケーブルCとフラットケーブルFとの間に、ダミーケーブルDを重ね合わせたことにより、ダミーケーブルDをフラットケーブルCとフラットケーブルFとの間における絶縁体として機能させることができる。
【0126】
これにより、フラットケーブルC及びフラットケーブルFの絶縁被覆体を、より薄膜に形成して、ステアリングロールコネクタ10の軽量化やコストダウンを図ることができる。
【0127】
なお、上述の実施例2において、ダミーケーブルDをフラットケーブルC、Fの間に重ね合わせたが、フラットケーブルC、FとダミーケーブルDとの重ね合わせ方はこれに限定せず、フラットケーブルC、FにダミーケーブルDを重ね合わせるなどしてもよい。
【0128】
また、リテーナ40上の円周方向において、ダミーケーブルDの反転部分Drを挟んで、フラットケーブルFの反転部分Fr、フラットケーブルCの反転部分Crを配置したが、リテーナ40上の円周方向における各反転部分の配置はこれに限定しない。
【0129】
例えば、リテーナ40上の円周方向において、ダミーケーブルDの反転部分Dr、フラットケーブルCの反転部分Cr、フラットケーブルFの反転部分Frの順に配置するなどしてもよい。
【0130】
また、上述の実施例1及び実施例2において、ダミーケーブルDは、長さ方向の一端を第1ロテータ側コネクタ23a近傍に、他端を第1ステータ側コネクタ34a近傍に接続固定したが、これに限定しない。
【0131】
例えば、ダミーケーブルDの長さ方向の端部を、ロテータ20の内周筒部22やステータ30の外周筒部32に接続固定するなどしてもよい。あるいは、フラットケーブルC、Fの長さ方向における端部のコネクタ端子などに接続するようにしてもよい。
【0132】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の回転コネクタ装置は、実施形態のステアリングロールコネクタ10に対応し、
以下同様に、
規制部は、第2径方向規制部44b、第3径方向規制部44cに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0133】
10…ステアリングロールコネクタ
20…ロテータ
21…回転側リング板
22…内周筒部
30…ステータ
31…固定側リング
32…外周筒部
40…リテーナ
45…回転ローラー
44b…第2径方向規制部
44c…第3径方向規制部
46…押付ガイド部
C、F…フラットケーブル
Cr、Fr…反転部分
D…ダミーケーブル
Dr…反転部分
S…収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7